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スロバキア ボフニチェに米国製炉導入を計画

16 Oct 2025

桜井久子

© Government of the Slovak Republic

スロバキアのR. フィツォ首相は107日、欧州委員会(EC)、産業界、エネルギー業界の代表者が参加した第18回原子力エネルギーフォーラム(ENEF)で講演を行い、スロバキアと欧州の将来にとって競争力を維持し、増加するエネルギー需要に対応するために原子力が重要な役割を果たすと強調。また、ボフニチェ原子力発電所に米国製炉を増設することを念頭に、政府が米国との政府間協定本文を承認したことを明らかにした

スロバキアでは、電気自動車、データセンター、バッテリー貯蔵施設の発展に伴い、電力需要が増加。フィツォ首相は、2040年までにエネルギー需要が4060%増加すると予想される中、新たなエネルギー源とインフラの近代化が必要になるとし、「安定かつ安価で、環境に優しいエネルギー源を望むならば、原子力を維持するだけでなく、さらに発展させなければならない」と語った。そのうえで、ボフニチェ発電所に出力100kWe以上の原子炉1基の新設に向けて、政府が米国との政府間協定を910日に承認したと紹介した。今年8月には欧州委員会(EC)が同政府間協定について承認しており、これに合わせ、同首相は自身のソーシャルメディアで、新設には米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する考えを表明している。なお政府は、20245月に同発電所5号機(最大120kWe)の新設を承認している。

今年9月中旬の国際原子力機関(IAEA)総会の会期中、スロバキアのD. サコバ副首相兼経済大臣は、米エネルギー省のC. ライト長官と、エネルギー分野における両国間の協力の可能性について協議。サコバ大臣は会談後、両国間の交渉は進んでおり、協定の署名に徐々に近づいていると明らかにした。新設プロジェクトには、スロバキアの産業界とサプライヤーが参加し、多くの雇用と機会の創出が期待されるという。

またフィツォ首相はENEFでの講演の中で、モホフチェ3-4号機のプロジェクトとボフニチェ1-2号機の廃止措置の進捗を紹介。スロバキアの廃止措置会社JAVYS社と先進炉開発企業の英ニュークレオ社との、小型鉛冷却高速炉の開発および使用済み燃料を再利用するための処理プロジェクトについても触れ、「このプロジェクトが成功すれば、スロバキアは原子力分野におけるイノベーションのリーダーとなるだろう」と述べた。

一方で同首相はECに対し、エネルギー価格に対処し、欧州産業の競争力を維持するための条件を整えるよう求め、ECのロシア産化石燃料や原子燃料依存からの脱却を推進する政策コミュニケ「REPowerEU」について、「EU加盟国のエネルギー安全保障を脅かす無意味なイデオロギー的措置」と批判した。EUの決定は、政治的な動機ではなく、合理的かつ技術的に実現可能なものでなければならず、経済に悪影響を与えるイデオロギー的な決定をしてはならないと訴え、スロバキアは今後も、エネルギーの安定供給、利用可能性、競争力を確保する主権的で現実的なエネルギー政策を推進していく方針を示した。スロバキアは、エネルギー調達先や輸送ルートの多様化に取組むもののその進展は遅く、ロシアの化石燃料への依存度(特に原油)は今なお高い。

スロバキアでは現在、モホフチェ発電所で3基(1~3号機、VVER-440)、ボフニチェ発電所で2基(3~4号機、VVER-440)の計5基が運転中で、同国の電力需要の約6割を賄う。建設中は、モホフチェ4号機(VVER-440)の1基。両発電所の運転者はスロバキア電力で、2024年3月には石炭火力発電所をすべて閉鎖し、原子力発電、水力発電、太陽光発電による脱炭素電源100%を達成している。

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