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英ウレンコ アルメロ工場の濃縮能力を段階的に倍増へ

28 Oct 2025

佐藤敦子

ウレンコ社 アルメロ工場
©URENCO Nederland

英国に本拠を置くウラン濃縮大手、ウレンコ社(Urenco)は1020日、オランダ・アルメロのウラン濃縮工場において新たな能力拡張計画を発表した。

今回の計画は、202312月に発表された第1段階(約75SWU/年の増強)に続くもので、同規模となる約75SWU/年の能力をさらに追加し、2030年の運転開始を目指す。両段階を合わせると、合計で約150SWU/年の増強となり、同社にとって最大規模の拡張となる見込みだ。

アルメロ工場では現在「SP4」と「SP5」の2つの濃縮プラントが稼働している。このうち生産能力の約8割以上を担うSP52000年に開設され、2012年まで段階的に拡張された。現在7棟が稼働しており、2024年からは8棟目の建設が進む。今回の拡張では、これと同規模を新設し、生産能力のさらなる向上を図る。

ウレンコ・アルメロのマネージングディレクター、A.ルーター氏は「このプロジェクトは当社にとって最大規模の能力拡張であり、燃料供給の安定化と地域の雇用創出の両立を図るものだ」と述べ、将来的な追加拡張の可能性にも言及した。

ウレンコはアルメロに加え、独グローナウおよび米ニューメキシコ州ユーニスの各拠点でも能力拡張を進めている。ユーニス工場は北米で唯一の商業規模のウラン濃縮施設として2010年に操業を開始。20255月には増設した新型遠心分離機カスケードの運転を開始し、濃縮ウランの生産を拡大している。これらを合わせ、ウレンコは世界全体で約250SWU規模の新たな濃縮能力の確保を目指している。

関連して、930日にはウレンコUSAが、ユーニス工場でU-235濃度最大10%以下のウランを生産する認可を米原子力規制委員会(NRC)から取得した。これにより、米国で初めて商業用の低濃縮ウランプラス(LEU+)を生産可能な施設となった。LEU+の生産は年内に開始され、初回納入は2026年を予定。LEU+は、小型炉向けの先進燃料HALEU(濃縮度520%)の原料としても活用できることから、将来的なHALEUの生産への布石となる。

一連の拡張の背景にはロシア製原子燃料への依存低減やエネルギー安全保障の強化、脱炭素化に伴う原子力の再評価などがある。欧州委員会(EC)は20223月、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア産化石燃料からの脱却を目指す「REPowerEU」計画を発表。20255月には新たなロードマップを策定し、ロシア産ウランや濃縮ウランなどの新規契約締結を制限した。欧州や北米では安定かつ多様な原料供給体制の確立が急務となっており、ウレンコがその中核的役割を果たしつつある。

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