原子力産業新聞

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米国の濃縮プラント拡張 生産開始

06 Jun 2025

桜井久子

ニューメキシコ州ユーニスの濃縮プラントで働く、ウレンコUSA社の従業員 Ⓒ Urenco

英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社は519日、米ニューメキシコ州ユーニスにあるウレンコUSA社の濃縮プラントにおいて、拡張プロジェクトの第1段階として増設した新型遠心分離機のカスケードで濃縮ウランの生産を開始した。

このカスケードは、2027年初めまでに稼働する予定の複数のカスケードの内、最初のもの。すべてのカスケードが完成すれば、生産能力が約15%増強される。

ウレンコUSA社のJ. カークパトリック取締役は、「当社の経験豊富なチームは、濃縮プラントの拡張プロジェクトを引き続き実行し、長期的かつ信頼性の高い濃縮ウランを国内へ供給し、電力会社を支援していく」と述べた。

ウレンコUSA社のプラントは、北米で唯一稼働する商業規模の濃縮施設。同社は2010年から米国でウラン濃縮を行っている。同プラントは、米国の重要な戦略資産であり、米国の国家エネルギーインフラと原子燃料サプライチェーンにおいて不可欠な存在。440SWU/年(202412月時点)の生産能力により、米国の商業用原子力発電所の濃縮ウラン需要の約1/3をまかなっている。また、これまでに米国の遠心分離機などの製造分野に50億ドル(約7,143億円)以上の投資を行ってきたという。

濃縮プラントの拡張の背景には、脱炭素化やロシア製原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを反映した、濃縮役務の需要増がある。ウレンコUSA社は202410月、生産能力を約15%増とする約70SWU/年の拡張プロジェクトを発表。同プラントで、生産能力をさらに1,000SWU/年規模まで拡張できるスペースとライセンスを有し、市場ニーズに応じて、米国での生産能力をさらに拡大する用意があるとしている。同社は英国、ドイツ、オランダでも濃縮プラントを所有・操業するが、米国のプラントで最初の拡張プロジェクトを実施し、2027年の完成後、国内外向けに供給、燃料サプライチェーンを強化する計画だ。また、ドイツとオランダのプラントを含め、3プロジェクトで合計180SWU/年規模を追加する拡張計画を示している。

ウレンコ社の傘下にある、ルイジアナ・エナジー・サービス社は2024年10月、米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局により、U235の濃縮度が5~20%の高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の国内サプライチェーン確立に向け、濃縮役務の提供に係る契約をする国内4社のうちの1社に選定されている。202412月には、新たなウラン生産能力の拡大を目的に、低濃縮ウラン (LEU) の調達に係る契約をする6社のうちの1社に選定された。さらに同月、ウレンコUSA社は、米原子力規制委員会(NRC)からU235濃縮度を最大10%に引き上げるライセンス修正が承認されている。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。但し、NRCによるライセンス修正要件の審査の必要があり、今年7月末までに完了予定である。

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