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ドイツ元原子力発電所所長ら 政府に閉鎖発電所の運転再開を要請

08 Jul 2026

桜井久子

© Radiant Energy Group

ドイツの親原子力NGOであるNuklearia625日、自身のウェブサイトにドイツの元原子力発電所の所長や原子力専門家らが、F. メルツ首相、K. ライヒェ経済・エネルギー相、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のJ. シュパーン院内総務に宛てた共同書簡の全文を公開した。書簡の中で、ドイツの脱原子力政策は戦略的な誤りだったとする政権幹部の見解や最近の世界的な原子力回帰への潮流も踏まえ、国内の原子力発電所の運転再開の後押しを要請している。

共同書簡は同国のタブロイド新聞BILDで報じられたもの。署名には、原子力発電所の計画や建設、運転、安全に関して数十年の経験を持つ、エムスラント、ビブリス、フィリップスブルクの元原子力発電所の所長や責任者、経験豊富な原子力技術者、科学者らが連なる。

彼らは書簡の中で、最近閉鎖された原子力発電所の運転再開は技術的観点から可能であり、合理的であると主張。運転再開がドイツに再び競争力のある産業用電力価格を提供し、供給の安定性を強化すると同時に、気候目標を支える機会になるとみている。既存プラントの改修と運転再開は国内での原子力産業基盤の維持に加え、小型モジュール炉(SMR)や核融合などの将来の技術との互換性に不可欠であると指摘している。さらに、同様のドイツ設計の原子炉がスペイン、スイス、オランダ、ブラジル、アルゼンチンで稼働・建設中で、関連するノウハウや経験は維持されており、発電所の閉鎖後も人材や送電網などのインフラなどが残っているため、必要に応じて再整備・拡充可能としている。

なお、運転再開の可能性に関する技術的根拠として、米国のエネルギーコンサルタント会社ラディアント・エナジー・グループ社が取りまとめた報告書「ドイツの原子炉運転再開: 実現可能性と展望」を参照したと紹介。同報告書では直近に閉鎖された原子力発電所の運転再開の実現可能性やスケジュール、収益性を検証しており、Nukleariaも報告書の作成に協力している。

報告書では、「ドイツにおける原子力の段階的廃止は不可逆的だと言われているが、それは事実ではない」と明言、閉鎖された14基の原子炉について設備の状態や運転再開費用、必要期間を評価した。その結果、閉鎖が直近の5基は約4150か月で運転を再開でき、最初の運転再開は2031年頃に可能と分析している。最適なプラントでは、発電コスト(LCOE)は平均約37ユーロ/MWhと試算。既存設備や一部の人材・インフラを活用できるため、新設よりも安価かつ迅速に電源を確保し、政府による補助金を必要とせずに国際競争力のある電力価格の実現が可能であり、運転再開は投資対象としても魅力的なものになると分析している。また、設備の近代化や場合によっては、出力増強したうえで数十年にわたる運転継続ができ、将来的な大型炉やSMR、核融合開発に向けた人材・産業基盤の形成にもつながると主張。さらに、ドイツ国民の大多数がエネルギーミックスにおける原子力発電の維持を支持していると強調している。

一方で、運転再開の実現には政治判断が不可欠であるとし、原子炉の解体が進む前に解体作業を一時停止し、原子力法の改正や規制手続きの見直しが必要であるとしている。

運転再開の実現性やコスト、法制度上の課題について今後も政府機関や独立した研究機関による検証の必要があるものの、技術的・経済的に実現可能であり、政策転換があれば比較的短期間で実現できると結論付け、その決定は、解体による損傷を避けるために速やかに下すべきと勧告している。

2000年、当時のG. シュレーダー政権はドイツの原子力発電の段階的廃止を決定。2011年の福島第一原子力発電所事故後、A. メルケル首相は原子力発電所の段階的廃止を再確認した。2022年、O. ショルツ政権は冬季のエネルギー供給不足を乗り切るために3基(エムスラント、イザール2、ネッカー2)の短期間の運転期間延長を決定し、20234月には全閉鎖、脱原子力政策が完了した。

以後、ドイツでは太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電能力の不安定さ、ウクライナ問題や中東情勢に起因する石油・ガスの供給不安、エネルギー価格の高騰を踏まえ、原子力への復帰が合理的かどうかについて繰り返し議論が続いている。

2026年3月、パリ近郊で開催された原子力エネルギーサミットで、欧州委員会(EC)のU. フォンデアライエン委員長は、欧州が信頼性の高い廉価な低排出電源である原子力に背を向けたのは戦略的な誤りだった、と述べた。ライヒェ経済・エネルギー相も、脱原子力の選択は戦略的誤りであったと同月末の米国での国際会議で発言。メルツ首相も過去に、脱原子力の選択は重大な誤りであったとの見解を表明、今回のEC委員長の発言に個人的に同意はしつつも脱原子力の決定を今から覆すことはできないとし、エネルギー政策の最適化に取り組んでいくとの意向を示した。共同書簡は、エネルギー供給の安定性や競争力、ドイツの産業拠点としての地位をめぐる議論が新たな勢いを得ている時期に提出された。「脱工業化が続くか、原子力発電が再び手頃で信頼性が高くクリーンな電力を供給するかは政治判断の問題」として、政府に対し、経済的にも技術的にも、現実的かつ合理的な運転再開の必要性を訴えている。

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