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ポーランド:導入計画中の原子炉6基のうち2033年に初号機の運転開始

10 Sep 2020

ポーランドのM.クルティカ気候相©WNA

英国ロンドンに本拠地を置く世界原子力協会(WNA)は9月9日から11日まで、原子力関係の政府高官や原子力産業界の幹部を招いたパネル討論会「Strategic eForum」をネット上で開催しており、その中でポーランドのM.クルティカ気候相が発表した「2040年に向けたエネルギー政策案(PEP2040)」の概要を9日付けで公表した。同国では建設・導入を計画している原子炉6基(合計出力600万~900万kW)のうち、初号機については2033年の運転開始を目指すとしている。

同相の発表によると、ポーランドは原子炉6基によって国内電力システムの基盤を強化するとともに、エネルギー部門からのCO2排出量を削減。これと同時に、石炭火力など効率性の低い発電所を高効率のものと取り換える考えで、2040年までにCO2を排出しない強靭な電力供給システムを作り上げる方針である。原子力の導入初号機では出力100万~160万kWを想定しており、2033年に同炉が運転開始した後は2~3年毎に後続の原子炉を起動、2043年までに原子力プログラム中の6基すべての建設を終える。

同相の考えでは2043年という区切りは、電力需要量の増加にともない電力不足が発生することを考慮したもの。原子力発電を導入すれば、大気汚染の原因となるCO2を排出せずに安定したエネルギー供給が可能になるほか、エネルギー供給構造を合理的なコストで多様化することも可能だと述べた。

同相はまた、近年の原子力産業界では第3世代と第3世代+(プラス)の原子炉技術が主流であり、そうした技術と国際的に厳しい基準で発電所の安全性を確保していると指摘。同相としては原子力プログラムの大半に国内企業を参加させる方針だが、その前に関係する法の整備や資金調達モデルの決定が必要になるほか、原子力発電所の建設サイトを選定し、また低・中レベル廃棄物の処分場も操業させねばならない。さらには、発電所の建設や運転、また監督のために必要な人材の養成活動も実施すると表明した。

同相はこのほか、大型軽水炉の建設計画とは別に、ポーランドでは高温ガス炉を導入する計画があると説明。高温ガス炉は将来的に、化学産業などの産業用熱供給源として使われる可能性が高いとしている。

ポーランドでは石炭や褐炭など化石燃料資源が豊富だが、欧州連合(EU)がCO2排出量の削減目標を設定したこともあり、石油と天然ガスの輸入量を削減するとともにエネルギー源の多様化を推進中。チェルノブイリ事故によって一度は頓挫した原子力発電導入計画も復活しており、2009年に原子力を導入するための開発ロードマップを作成した。その後、2014年に計画全体を4~5年先送りする改訂を行った。この段階で合計600万kWの原子力発電設備建設を目標に掲げていたが、2015年に発足した政権は経費が掛かりすぎるとして見直しを行った模様である。2017年以降は現首相のM.モラビエツキ氏が政権を握っており、原子力導入計画を維持した上で新たなエネルギー政策を模索している。

クルティカ気候相が今回発表した「PEP2040」はそうしたエネルギー政策案の最新版で、①クリーン・エネルギーへの移行、②CO2排出量ゼロのエネルギー供給システム、③大気汚染の改善、が主な柱。ポーランド経済は現在、天候に左右されない電源も含め確実な発電技術を必要としており、今後20年間で新たなエネルギー供給システムを構築しなければならない。同相は「顧客にエネルギーを供給する際の安定性と持続性は、そのための投資を引き寄せる不可欠の要素だ」と明言。2040年時点で国内発電設備の半分以上を無炭素電源にする予定だが、それに至る過程のなかで洋上風力発電の導入と原子力発電所の起動は重要な役割を担う。これら2つの分野こそ、ポーランドがこれから構築する新しい戦略的産業であると同相は強調している。

(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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