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エストニアがSMR導入に向け米GEH社、英ロールス・ロイス社と協力

09 Mar 2021

エストニアにおける「BWRX-300」の完成予想図 ©GE Hitachi Nuclear Energy

バルト三国の1つエストニアの新興エネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は3月8日、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製・小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のエストニアでの建設に向け、実施中の適性評価をさらに進展させるため、同社と協力チームの結成協定を結んだと発表した。

フェルミ社はまた、これに先立つ3月2日、英ロールス・ロイス社製・SMRの国内建設の可能性を探る目的で、同社と協力覚書を締結したことを明らかにしている。

フェルミ社は、エストニアで第4世代の原子炉を導入することを目指して、同国の原子力産業界でSMRの開発と建設を支持する原子力科学者やエネルギーの専門家、起業家などが設立した企業である。同社はすでに、英モルテックス・エナジー社の燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W300」、加テレストリアル・エナジー社の「一体型溶融塩炉(IMSR-400)」、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」、米ニュースケール・パワー社の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」について、エストニアへの導入可能性を調査中。これらの設計がデベロッパーそれぞれの国で認可を受け次第、採用技術を最終決定する方針である。

GEH社との協力について、フェルミ社はすでに2019年10月、「BWRX-300」の国内建設に関する経済面の実行可能性調査で同社と覚書を締結しており、今回のチーム結成協定はこれに続くもの。GEH社側が発表したリリースによると、両社の協力チームはエストニアにおけるSMRの許認可、人材育成とサプライチェーンの構築、建設に必要な情報の収集・分析の継続などでフェルミ社を支援していく。

GEH社のJ.ボール執行副社長は「両社の連携を一層深めることで、エストニアがエネルギーの供給保証と地球温暖化の防止目標を達成する手助けをしたい」とコメント。革新的な技術を採用した「BWRX-300」であれば、エストニアが無炭素エネルギーを確保する理想的な解決策になると述べた。

フェルミ社のK.カレメッツCEOも「今回の合意を通じて、2019年の覚書から始まった両社の協力を一層拡大していく」と表明。採用技術の最終決定に向けて一層詳細なデータを収集し、エストニアの国土政策計画に役立てたいとしている。

一方、ロールス・ロイス社との協力についてフェルミ社は、同社製SMRの国内建設に関わるすべての側面を調査すると説明。具体的には、適性な送電網や緊急時計画区域の指定、人材育成計画、許認可体制、SMR発電所の経済性、サプライチェーンなどをカバーするとした。同社製SMRでは、規格の標準化により工場製作が可能な機器を装備するため、従来の大型炉と比べて建設費の大幅な削減と工期の短縮が可能。これにより、建設工事の遅れとそれにともなうコストの増加リスクを抑えられるとフェルミ社は考えている。

「英国SMR企業連合」を率いるロールス・ロイス社は、英国政府との連携により今後10年以内に出力44万kWのSMRを英国内で複数建設し、英国がパリ協定の下で目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を支援する方針。ロールス・ロイス社の企業連合には、仏国を拠点とする国際エンジニアリング企業のアシステム社、米国のジェイコブス社、英国の大手エンジニアリング企業や建設企業のアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社のほか、溶接研究所と国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)が参加している。

(参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)の発表資料GEH社ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月4日付け、8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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