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露ロスアトム社と仏EDF、グリーン水素の製造で協力 

28 Apr 2021

Hynemics社の電気分解による水素製造説明資料©EDF

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は4月26日、製造過程でCO2を排出しないという「グリーン水素」の製造分野でフランス電力(EDF)グループと協力するため、戦略的協力合意文書に調印したと発表した。

原子力技術の世界的リーダーである両社の協力によって多大な相乗効果を生み出し、ロシアや欧州のみならず世界中で水素の共同製造プロジェクトを進めると表明。具体的には、交通分野や産業コンビナートの脱炭素化で戦略構想を開発し、地球温暖化の防止に資する新たなCO2フリー水素の研究開発・協力につなげる考えである。

ロスアトム社によると、水素エネルギーの製造は同社の研究開発における優先項目の1つ。また、ロシアの原子力産業界は環境に最も優しい水素製造技術である「電気分解」と、「メタンの水蒸気改質」で水素を得つつその過程で排出されるCO2を回収・貯蔵(CCS)するという技術の研究開発で大きな可能性を有している。こうした背景から、ロスアトム社はCO2フリー水素の製造・貯蔵技術の開発と、同技術に関する世界中の試験プロジェクトへの参加に強い意欲を抱いている。同社はまた、この技術の開発は世界の平均気温上昇を2100年までに2度未満に抑えることを目指した「パリ協定」の目標達成にも重要な役割を担うと考えている。

一方のEDFグループは、再生可能エネルギー等を使った低炭素な水素の製造・販売子会社、Hynamics社を2019年4月に設立。これによってクリーンエネルギーへの移行を促進し、低炭素な水素の製造でEDFが仏国や国際社会の中心的存在になることを目指している。

ロスアトム社で国際事業を担当するK.コマロフ第一副総裁は、「エネルギー源としての水素の将来性を信じている」と表明。ロシアでは天然資源が豊かなほか、技術面や産業面、エネルギー部門でも輸出に向けた大きなポテンシャルを有していることから、ロスアトム社は今後、この無炭素エネルギーの製造技術を組織的に開発していく。「世界規模の水素製造や輸送、消費の市場において当社が中心的企業の1つとなる準備は出来ており、脱炭素化という世界的な目標を達成する上で、エネルギー源としての水素製造は国際協力の最重要課題である」と指摘した。

EDFで国際部門を担当するB.ブッフォン上級副社長も、「(この協力における)当社の目的は電力や革新的技術とサービスによって、CO2排出量が実質ゼロという未来を構築することだ」と明言。この技術を通じて地球環境を保全するとともに、人々の生活の向上や経済成長も促すとしており、低炭素な水素の製造はエネルギーの移行を実現する重要ファクターだと指摘した。また、CO2フリー水素の製造分野でロスアトム社がロシアの中心的存在であることから、「同社との協力合意により、世界中のいかなる国や地域においても低炭素なエネルギー・モデルを構築したいというEDFの目標が如実に示された」としている。

(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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