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チェコで新規原子炉の建設支援法案が成立

22 Sep 2021

ドコバニ原子力発電所©CEZ

チェコの産業貿易省は9月16日、新規原子炉の建設を支援する枠組の設置法案について議会下院が前日の15日に表決を行い、100対8の賛成多数で可決したと発表した。

この「低炭素エネルギーへの移行法案」は、新規の原子炉やその他の無炭素電源の建設に投資を行う刺激策が市場に無いという現状を踏まえ、同省の関係議員が2020年に超党派法案として議会に提出した。完成した発電所の発電電力を政府の保証価格で買い取るメカニズムが盛り込まれており、現状の市場不備を補うとともに、ドコバニ原子力発電所(51万kWのPWR×4基)でⅡ期工事を建設する前提条件の1つでもある。同法はM.ゼマン大統領が署名した後、2022年1月1日に発効する見通しで、産業貿易省は同法を通じて低炭素な電力やエネルギーの安定供給を確保し、エネルギーの自給を図る方針である。

K.ハブリーチェク副首相兼産業貿易大臣は今回、「この法律によってチェコのエネルギー供給保証と脱炭素化、無炭素電力の比率向上に向けたプロセスが強化され、原子力でコスト面の効率性の高い電力を生産する基盤が築かれる」とコメントした。

同省の説明によると、このメカニズムは再生可能エネルギーの支援策と類似のもので、同省あるいは政府所有の機関が発電所に投資した者と協議の上で電力の買い取り上限価格を設定。購入した電力は卸売市場に転売されるが、これらの価格差は消費者の電気代を通じて調整される。政府と投資家との電力売買契約は30年間有効で、満了後は延長することも可能である。こうした内容は、経済協力開発機構(OECD)や国際原子力機関(IAEA)の勧告に基づいているため、同省は欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)にも、このメカニズムがEU域内の市場規則に適合することを説明中である。

チェコの国営電力(CEZ)は、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づき、ドコバニ原子力発電所で出力が最大120万kWの原子炉を2基増設することを計画。産業貿易省は増設初号機(5号機)を通じて、増加する国内電力需要の約10%を賄う方針である。この計画を支援する政府の財政モデルでは、建設コストの約70%を無利子・返済条件付きの財政支援で賄い、残りと追加コストをCEZ社が支払うとしている。

CEZグループのドコバニⅡ原子力発電会社は2020年3月、プラント供給企業の選定や建設工事の実施に先立つ重要な準備手続として、同計画の立地許可を申請した。原子力安全庁(SUJB)は今年3月に同許可を発給しており、産業貿易省は入札の事前資格審査に向けて、供給企業の絞り込み作業を実施中。プロジェクトに関心表明した5社のうち、これまでに中国広核集団有限公司(CGN)とロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が候補から除外された。現在は、韓国水力・原子力会社(KHNP)とフランス電力(EDF)、米国のウェスチングハウス(WH)社を対象に審査中と見られている。

(参照資料:チェコ議会の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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