米国で原子力モラトリアム撤廃進む 2016年以降6州が規制解除
03 Jun 2026
米国では近年、電力需要の増加や脱炭素化の進展を背景に、原子力発電所の新設を制限してきた州レベルの「原子力モラトリアム(禁止・制限措置)」を見直す動きが広がっている。米エネルギー省(DOE)は5月19日、全米の原子力モラトリアムの現状を整理した資料を公表し、近年相次ぐ規制撤廃の動向を紹介した。
米国では1970年代以降、使用済み燃料の最終処分問題などを理由に、16州が何らかの形で新規原子力開発を制限してきた。しかし近年は、AIの急速な普及にともなう電力需要の増加に加え、エネルギー安全保障や脱炭素化への対応を背景として、原子力を再評価する動きが強まっている。
実際に2016年以降、ウィスコンシン州、ケンタッキー州、モンタナ州、ウェストバージニア州、イリノイ州、ニュージャージー州の6州がモラトリアムを撤廃した。
このうちイリノイ州は2023年に30万kW以下の先進炉に限定して新設を認めた後、2026年1月には出力制限そのものを撤廃し、大型炉を含む新規建設を可能とした。また、ニュージャージー州も2026年4月、約50年間続いた新規原子力発電所建設禁止措置を解除している。
一方で、カリフォルニア州、ハワイ州、メイン州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州の8州では現在も州全域を対象としたモラトリアムが維持されている。ただし、これらの州でも原子力への姿勢に変化がみられる。3月にはニューイングランド 6 州(コネティカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州)の知事らが共同声明を発表し、電力需要の増加への対応策として先進炉導入の可能性を共同で検討する方針を打ち出した。
また、ニューヨーク州では州全域のモラトリアムは存在しないものの、一部地域に制限が残る一方で、ホークル知事が州営ニューヨーク電力公社(NYPA)に対し、州北部で少なくとも100万kW規模の先進炉建設を検討するよう指示している。さらに同州は今年1月、「Nuclear Reliability Backbone」構想を公表し、州内の新規原子力発電設備を500万kW規模まで拡大する方針を示した。
DOEは、全米で電力需要の拡大が見込まれる中、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)や国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)などを通じて先進炉の実証・商業化を支援している。トランプ政権も原子力産業の拡大を掲げており、州レベルの規制見直しと合わせて、米国では新規原子力開発に向けた環境整備が進みつつある。





