カナダの可搬型原子力発電所 BWXTのマイクロ炉を選定
15 Oct 2026
米BWXテクノロジーズ(BWXT)社は10月5日、カナダのプロディジー・クリーン・エナジー社、先住民族のパビノー・ファースト・ネーションおよびイール・リバー・バー・ファースト・ネーションがカナダ東部ニューブランズウィック州のベルデューンに設置を計画する、洋上の可搬型原子力発電所(Transportable Nuclear Power Plant, TNPP)の商用パイロット事業に、自社のマイクロ炉「BANR」が採用されたことを明らかにした。同事業では、ベルデューンに最大5万kWeの発電能力を持つTNPPを建設し、2030年代初めの運転開始をめざす。
TNPPは先住民族が所有する計画で、ニューブランズウィック州政府はTNPPの電力を購入する意向をプロディジー社と先住民族側に示している。本事業を通じて、TNPPの輸送・設置や運転に必要な要件を実証するほか、カナダ北部や海外市場で可搬型原子力発電所を大規模展開するための商業モデルの確立をめざす。同国の北部地域や僻地では、鉱山、港湾、空港などに安定した電熱供給が必要とされており、ディーゼル発電に代わる、より低炭素で経済性に優れたエネルギー源が求められている。
今回採用されたマイクロ炉BANR(BWXT Advanced Nuclear Reactor)は、熱出力7.5万kWt、電気出力2.2万kWeの高温ガス炉。高純度低濃縮ウラン(HALEU)を用いたTRISO(3重被覆層燃料粒子)燃料を採用し、受動的冷却機能を備えるほか、需要に応じて柔軟な発電で対応する設計となっている。BWXT社は従来、CO2を排出するエネルギー源に依存してきた産業用の熱・電力需要などに応える技術として、BANRの開発を進めている。
プロディジー社のTNPPは、単一または複数のBANRを組込んだ輸送可能な発電設備で、工場で製造・組立てた後、現地へ輸送・設置する。製造から現地への輸送・設置までを約18か月で完了することをめざし、設置後には燃料装荷を経て運転を開始できるという。工場での製造・組立てにより、現地工事の負担を抑え、複数地域への展開を容易にするねらいがある。
本事業には、BWXTカナダ社とBWXT社傘下のカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社が参加し、設計・エンジニアリング、規制対応、製造、サプライチェーンの整備などを支援する。ベルデューン向けのBANR×2基と関連設備は、主にカナダ・オンタリオ州にあるBWXT社の施設で製造予定。カナダ国内のCANDU炉の改修や新設計画を通じて拡大している原子力産業の人材・製造基盤も活用する。カナダの原子力技術と国内製造能力を活用し、輸送可能なマイクロ炉の商用化を実証する先行事業の位置づけである。
プロディジー社は9月下旬、採用する炉型選定の方針として、安全性や環境保護の観点に加え、早期商用化に向けた準備状況、特に2030年代初めまでに運転を開始できる見通しや、カナダ国内のサプライチェーンの活用、先住民族や地域住民への長期的な利益を重視すると示していた。当初はTNPPへの搭載炉として、米ニュースケール社の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(PWR, 7.7万kWe)および米ウェスチングハウス社のマイクロ炉「eVinci」(ヒートパイプ冷却炉, 0.5万kWe)が検討されていた。
プロディジー社は現在、共同開発、設計、許認可、サプライチェーン、資金調達、建設・展開に関する正式契約の締結に向けて、BWXT社と協議している。今後は商業・産業分野に加え、防衛分野も対象として、世界市場への展開をめざす考え。





