原子力産業新聞

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原産協会が総会開催、今井会長「温室効果ガスを排出しない原子力発電」の必要性を強調

04 Aug 2020

挨拶に立つ今井会長

原産協会は8月3日、2020年度の定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2019年度の決算案および任期満了に伴う役員選任の承認とともに、2020年度の事業計画・予算の報告がなされた。

開会に先立ち挨拶に立った今井敬会長はまず、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い深刻さを増した日本の医療や工業の現場における供給不足の現状に触れた上で、「社会を支える重要なインフラの一つである電力供給も同様のリスクを抱えている」として、エネルギー自給率の改善が喫緊の課題となっていることを強調。また、地球温暖化問題への対応も含め、「温室効果ガスを排出せず安定した電力供給が可能な原子力発電の最大限の活用が必要不可欠」として、可能な限り早期に再稼働が進展する必要性を述べた。その上で、政府において今後検討が行われる次期エネルギー基本計画については、「将来にわたる原子力の活用が明確に示されるもの」と期待。さらに、原子力産業界による安全性向上の取組に成果を認める一方、「『もう十分』というゴールはない」と、継続的な改善の重要性を強調し、これにより再稼働、運転期間延長、設備利用率の向上など、既存炉の活用が実現するとした。新たな技術開発による新増設・リプレースや、先般原子力規制委員会より新規制基準に係る変更許可が発出された六ヶ所再処理工場についても核燃料サイクルの完結に向け着実な進展を期待。原子力技術の有望性に関し、今井会長は、「何世代にもわたって人類の動力源となるほか、医療、工業、農業などでも大きな恩恵をもたらす」と強調し、産官学連携を通じた人材育成ネットワークの取組を通じて優秀な若者たちを惹きつける魅力的なイノベーション創出を図っていく必要性を述べた。

総会では11名の理事の交替が承認。その中で、副会長には、車谷暢昭氏(東芝取締役代表執行役社長CEO)に替わり、宮永俊一氏(三菱重工業取締役会長)が、理事長には、高橋明男氏に替わり、新井史朗氏(東京電力ホールディングス理事/原子力・立地本部副本部長が就任することとなった。

退任する副会長の車谷氏は在任中の2年間における福島第一原子力発電所廃炉に向けた技術開発の取組を振り返り、新任の宮永氏はBWRも含めた再稼働や核燃料サイクルが進展していく必要性を述べるなど、それぞれ今後の原子力産業発展への期待を語った。また、退任する理事長の高橋氏は、5年前の就任当時にまだ再稼働した原子力発電プラントがゼロだったことを振り返った上で、引き続き原子力産業界が抱える課題の解決に向け連携がさらに深まるよう期待。新任の新井氏は、東京電力東通原子力建設所に従事した経験を活かし「力を尽くしていきたい」と抱負を述べた。

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