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仏電力、ポーランドに4~6基のEPR建設を提案 

18 Oct 2021

「フランス2030」を発表するマクロン大統領
©elysee

フランス全土の原子力発電所をすべて保有するフランス電力(EDF)は10月13日、原子力発電の導入を計画しているポーランド政府に対し、2~3サイトで4~6基(660万~990万kW)のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)を建設することを提案した。

この提案は予備的なもので、EDFは建設計画の見積もりコストとスケジュール、発電所内の配置やポーランド国内におけるサプライチェーンの構築に至るまで、計画の主要パラメーターをEPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた幅広いオプションとしてポーランド側に提示。この規模の計画であれば、ポーランドは電力需要の40%までを少なくとも60年間満たせるほか、同国のエネルギー自給にも貢献する。ポーランド経済に対しては、数え切れないほど多くの恩恵がもたらされると強調している。

EDFによると今回の提案は、ポーランド政府が2020年10月に策定した原子力開発計画(PPEJ)の主要目的の達成を意識した内容である。欧州連合(EU)が掲げた「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」目標に合わせ、ポーランド政府の意欲的なエネルギー移行計画を下支えできるよう、EDFはこの提案で両国の戦略的パートナーシップにおける原則を設定。EPRという安全かつ信頼性と効率性に優れた無炭素電源により、年間に最大5,500万トンのCO2が排出されるのを回避し、実質ゼロ化に向けた道筋を付けるのに役立つと明言している。

ポーランドにおける大型炉の建設計画には、フランスのほかに米国もウェスチングハウス(WH)社とともに参加を働きかけている。また、これに加えてポーランドでは複数の小型モジュール炉(SMR)の建設も検討されており、GE日立・ニュクリアエナジー社やニュースケール社のSMRが候補に挙がっている。

 「フランス2030」で原子力分野の革新的技術開発を促進

EDFの今回の発表は、E.マクロン大統領が新たな産業投資政策として「フランス2030」を公表した翌日に行われた。

同大統領はこの政策の第一番目の目標として、2030年までに10億ユーロ(約1,324億円)を投じて、SMRや先進的原子炉の技術を実証、放射性廃棄物のより良い管理で世界市場への参入を目指すと表明した。また、少なくとも2つの大規模電解槽を建設してグリーンな水素を大量生産するほか、この年までにCO2排出量を2015年比で35%削減して産業全体の脱炭素化を図るとしており、これら3つの目標だけで80億ユーロ(約1兆590億円)以上を投資する。さらに、200万台の電気自動車とハイブリッド自動車を生産し、低炭素航空機の初号機を開発。これらの輸送部門には、約40億ユーロ(約5,295億円)を投じる方針である。

同大統領の演説動画を英訳したメディア報道によると、大統領は原子力について「フランスの基幹製造技術であるため、その再編成を政策目標の第一番目に位置付けた」と説明。「今後も必要な技術であり、継続的に開発していくことは非常に重要だ」と述べた。同大統領はさらに、政策目標の二番目に挙げた水素製造と原子力部門は近い関係にあると指摘。国内の商業炉56基が発電したクリーン電力で水素を製造することは、フランスが世界の水素製造部門でリーダーになる可能性を意味すると強調している。

(参照資料:EDFの発表資料、仏大統領府の発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13、14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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