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米TVA、クリンチリバーでのSMR建設に向けた新たな原子力プログラムを発表

15 Feb 2022

クリンチリバー・サイトにおけるSMRの完成予想図 ©TVA

米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月10日、テネシー州のクリンチリバー・サイトやその他のサイトで軽水炉型の小型モジュール炉(SMR)を建設することを念頭に、「新たな原子力プログラム(New Nuclear Program)」を作成したと発表した。

これは脱炭素化の達成に向けて、同社が革新的技術を用いた先進的原子炉の建設を牽引していくには、採用設計や建設サイトの特定等で計画的かつシステマチックなアプローチが必要と判断したため。先進的原子炉技術の建設オプションの検証に2億ドルを投じるという同プログラムは、TVAの理事会が同日承認済みとなっている。

TVAは2019年12月、クリンチリバー・サイトに関する「事前サイト許可(ESP)」を原子力規制委員会(NRC)から取得したが、その際、採用予定の炉型を特定しておらず、「2基以上のSMRで合計出力が80万kWを超えないもの」としていた。CO2排出量の実質ゼロ化を目指していくのに当たり、同社は先進的原子炉が有効な手段の一つになると認識。このことは同社の「戦略的意図と基本的理念」にも明記されている。現在、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を始めとする様々なSMR設計について、潜在的な環境影響等を評価中である。 

発表によると、今回の「新たな原子力プログラム」は、提案されている複数のSMRの中からTVAが特定の設計を選定し、このような設備を将来必要とする地域の中から立地点を特定する際、整合性のとれた「ロードマップ」として機能する。候補地点での建設が実行不能になった場合や、その地点に最善の利益をもたらさないと判断された場合など、TVAが計画から手を引く際の条件も「決定ポイント」として盛り込まれている。

同プログラムはまた、TVAが先進的原子炉技術の推進でその他の電力会社や政府機関、研究組織と協力していくための調整機能も担う。これらの組織との協力により、TVAは開発にともなう財政面や技術面のリスクを軽減する方針。同プログラムはさらに、軽水炉型SMRの建設許可申請に向けた準備作業の中で、環境影響評価等の作業を監督することになる。

TVAによると、同プログラムにおける最初のタスクは、軽水炉型SMRをクリンチリバーで建設するための許可申請書の作成。TVAのJ.ライアシュ総裁兼CEOは、「建設実施の最終判断をTVA理事会はまだ下していないが、GEH社やその他の企業との協力で得られた知見を、近い将来に公表予定の環境影響声明書の案文を併せて同理事会にかける計画だ」と述べた。

同CEOはまた、「数あるSMR設計の中でも、軽水炉型SMRはTVAが運転している従来の大型原子炉と非常に似通っており、今後10年以内の商業建設が可能なレベルまで成熟している」と指摘。このような理由から、「BWRX-300」の建設に関する協議を開発企業のGEH社と実施中だと説明している。

(参照資料:TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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