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ポーランドの電力大手、国内でのSMR建設に向け米企業と協力合意

27 Jun 2022

両者の基本合意書調印式 ©Enea

ポーランド政府所有の電力会社であるエネア(Enea)・グループは6月22日、米国の小型モジュール炉(SMR)開発企業であるラスト・エナジー社と基本合意書を締結。SMRのポーランドへの導入を目指す。

同設計の経済面と技術面の実行可能性を検証した後、エネア・グループが実施した市場分析等に基づいて、さらなる協力の範囲を定めるとしている。

基本合意書によると、ラスト・エナジー社はSMRの設計・建設から、資金調達、設置とメンテナンス、燃料供給、廃棄物の回収、廃止措置に至るまで、開発プロジェクトの全般にわたりエネア・グループに協力する。一方、ポーランド側では、この合意で石炭や輸入天然ガスへの依存度を下げ、クリーンで価格も手ごろな電力の利用拡大を目指しており、エネア・グループは共同建設を担当する合弁会社の設立も想定している。自社の発電設備としてSMRを活用するだけでなく、将来的には産業界への熱供給も計画。同グループの開発戦略に沿って原子力関係の新しい事業を創出するほか、2050年までにポーランドがCO2排出量を実質ゼロ化する一助としたい考えだ。

ラスト・エナジー社のSMR(電気出力2万kW、熱出力6万kW)は、実証済みのPWR技術を用いたモジュール式の設計で、ベースロード用電源として活用が可能。同社によると、従来の大型炉と比べて製造に必要なコストと時間が大幅に削減される見通しで、最終投資判断が下されてから24か月以内に納入することを目指す。同設計は運転期間42年を想定している。

同社はすでに、欧州のみならず南米やアジア諸国の政府や規制当局、およびエネルギー企業などと同社製SMRに関する協議を実施。今年3月には、ルーマニアのN.チューカ首相が、同社と協力して同社製SMRをルーマニア国内に導入する意欲を表明している。

基本合意書の調印は、ポーランド大統領の後援で2016年から毎年開催されている大型の経済イベント「コングレス590」で行われた。調印式に同席したポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相は、「国家のエネルギー供給を長期的に保証していくため、従来の大型炉や全く新しい小型炉設計など、その規模に関わらず原子力発電を導入していきたい」と表明。今後、未知の多難な方向へ歩を進めるエネア・グループが、信頼できる案内役をパートナーとして見つけたことを祝福すると述べたほか、「ポーランドがエネルギー供給を維持していけるか決定づける時が来た」と強調した。

ポーランドではこのほか、化学素材メーカーのシントス社と石油精製企業のPKNオーレン社が昨年12月、合弁事業体を設立してSMRの中でも米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設に重点的に取り組むと表明。また、ポーランド鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘(KGHM)会社は今年2月、米ニュースケール・パワー社の先進的SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を複数備えた「VOYGR」発電設備を、2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を同社と締結している。

また、フランス電力(EDF)は昨年10月、ポーランド政府に対し2~3サイトで4~6基のフラマトム社製「欧州加圧水型炉(EPR)」(合計660万~990万kW)の建設を提案していたが、今月22日に「この提案を再確認するため、ポーランド国内でこの計画に参加する資格がある5つの企業と、新たに協力協定を締結した」ことを明らかにしている。

(参照資料:エネア・グループラスト・エナジー社EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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