米国 熔融塩実証炉が着工
12 May 2025
米原子力新興企業のケイロス・パワー社は5月8日、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」において、フッ化物塩冷却高温実証炉「ヘルメス」(非発電炉、熱出力3.5万kW)を着工したことを明らかにした。
ヘルメスは2023年12月に、米原子力規制委員会(NRC)が半世紀ぶりに建設を許可した非水冷却炉。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。2024年7月に土木工事(掘削工事)に着手していた。
ヘルメスの基礎部分における安全対策工事は5月1日に開始。構造の安全性確保のため、地面から約12メートル下まで延びる直径約1.8メートルの杭穴51本を掘削、杭穴に鉄筋のケージを降下させた後、最初のコンクリートを打設した。
ヘルメスは、DOEにより2020年12月、「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定された。また、ヘルメスに隣接し、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」(発電炉、2万kWe)の建設許可が2024年11月に発給されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。
なお、ケイロス社はIT大手のGoogle社と2024年10月、2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結。ケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを建設し、Google社のデータセンターへ電力を供給する計画だ。初号機を2030年までに運転開始させた後、後続機を順次建設していくという。