米DOEが塩化物熔融塩実験炉開発に追加資金 2027年に初臨界達成をめざす
23 Oct 2026
米大手電力会社のサザン・カンパニーと海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英コアパワー社は10月14日、米エネルギー省(DOE)が「塩化物熔融塩実験炉(Molten Chloride Reactor Experiment, MCRE)」開発の最終段階を加速するため、費用分担型の追加資金支援を承認したことを明らかにした。MCREの開発はDOEの先進炉実証プログラム(ARDP)の下で実施され、アイダホ国立研究所(INL)サイト内にある国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)の試験ラボに設置する計画。サザン・カンパニー、コアパワー社、DOEが共同で取組む官民プロジェクトで、早ければ2027年に初臨界達成が予想されている。MCREが臨界に達すれば、塩化物熔融塩実験としては世界初。
高速中性子を利用するMCRE(150kWth)は、液体塩を燃料および冷却材として使用。液体燃料塩は、従来炉の固体燃料棒と比べて高温運転が可能で燃料効率が高く、また安全性の強化が期待されている。INLはこうした特性により、船舶用の小型原子力システムや遠隔地など、新たな応用分野が開かれる可能性を指摘している。2020年12月にDOEの先進炉実証プログラム(ARDP)の将来実証炉リスク低減プロジェクトの枠組みの支援対象に選定され、7年間の事業総額1億1,300万ドルのうち、DOEが80%に当たる9,040万ドルを支援する。今回の追加支援額は公表されていない。
MCREの目的は、燃料の挙動、原子炉の運転特性、システム性能などに関するデータを取得し、テラパワー社およびサザン・カンパニーが開発を進める塩化物熔融塩高速炉(MCFR)の2030年代の商業化に資すること。これまで計算モデルに依存していた炉の挙動について、実際に核分裂連鎖反応が持続する状態で測定したデータを得ることが重要となる。INLの原子力科学・技術部門の責任者J. ゲーヒン氏は、実測データによって計算モデルの精度を高め、将来の原子炉設計者や規制当局が抱える技術的不確実性を低減できると説明。一方、サザン・カンパニーは産業界と政府、研究機関の連携によって技術開発を加速させる意義を強調している。また、コアパワー社のM. ボーCEOは、実験結果は、商業展開に向けた炉設計や許認可手続き、新たなサプライチェーンの構築に役立つとし、将来的には大型商用船舶への導入を視野に入れている。
MCFRは、産業用熱源や医療用放射性同位体の製造、使用済み燃料から回収したアクチノイドの再利用などへの応用も期待される。燃料は液体塩化物に溶解されるため、将来のシステムでは新しい固体燃料集合体を繰り返し製造することなく、長寿命核種のアクチノイド元素をリサイクルし、最終処分を必要とする廃棄物量の低減や管理期間の短縮が可能となる見込み。燃料のクローズド・サイクルと船舶用原子炉の融合により、持続可能で排出ゼロの動力源が海上における世界貿易の輸送方法を一変させる可能性がある。





