約14年の停止期間を経て再稼働した女川原子力発電所2号機。長期間停止したプラントでは、技術継承や設備維持への懸念も聞かれる。
保全部部長の遠藤雅彦氏は、その期間を「空白ではなかった」と振り返る。
2026.08.20
停止期間は「空白」ではなかった
「停止中に行ってきた工事や点検経験がかなり蓄積されている。設備屋としては、むしろ濃い経験を積んでスキルアップにつながったと思っています」
保全部は機械設備や電気設備、計測制御設備などの工事や保守・点検を担う。原子炉が停止していた期間も、使用済み燃料プールの冷却設備をはじめとする多くの設備が継続して運用されており、保全業務がなくなることはなかった。
加えて、新規制基準対応工事では、新たな設備の設計や既設設備の改良にも携わった。設備を設置する際には、近傍の設備への影響を検討することや、保守・点検のしやすさまで考慮し設計を進めることで、これまでの保守・点検以上の経験を得ることができたという。
「再稼働までの期間は、難易度の高い検討や、工事・点検を行ったといえる。点検するべき設備は膨大であり、保全部門の担当に『空白の期間』や『経験不足』という言葉はそぐわない」
一方で、発電所内の技術継承とは別に、協力会社を含むサプライチェーンでは人材確保が課題となっている。
遠藤氏は、福島第一原子力発電所事故以降、協力会社で新入社員の確保が難しくなったことに加え、ベテラン作業員の引退も進む中で、人材不足を感じているという。再稼働に向けた工事や定期事業者検査では、西日本の原子力発電所で実績を持つ協力会社とも連携しながら要員を確保した。
また設備面では、製造中止品への対応も課題となった。
プラントメーカーとも連携しながら、製造中止や事業撤退の情報を早期に把握し、代替品の確保や製造中止前の調達など注力するなどし対応を進めてきた。
場合によっては、設備や系統の健全性を確認した上で隣接プラントの同型品を活用するなど、限られた資源を有効活用しながら設備維持を行ってきたという。
再稼働後初の定事検で見えたこと
遠藤氏は「今回の定期事業者検査(定事検)では再稼働時とは異なる難しさがあった」と話す。
再稼働前は、設計や工事、点検において異常が確認されたり、見直すべき点が見つかれば立ち止まって検討する時間に一定の裕度があった。定事検では、発電停止から発電再開までの工程が短く、安全を最優先としたうえでの工程管理に、より一層のスピード感が求められるということを改めて感じたという。
「担当者や、それをリードする管理職には苦労を掛けたなという気持ちはあります」
再稼働後初となる定事検では、初めて本格的に分解・点検した設備もある。その結果、想定以上に補修に時間を要する箇所も確認された。
また、点検を進めていく中で修繕が必要な設備も確認されたが、その都度タイムリーに復旧対応を行ってきた。当初計画していた工程に影響が生じる場面もあったが、安全確保を最優先に、必要に応じて工程を見直しながら対応を進めた。
そのような中でも、大きなヒューマンエラーや労働災害がなく、定事検を終えることができた。
こうした経験が、保全の現場の更なる改善と知見の蓄積につながっていく。
止まっているプラントしか知らなかった世代
2021年入社の平塚雄斗氏は、保全部で主に放射性廃棄物処理系設備の施設管理を担当する。
女川町出身で、「仕事をするなら地元に貢献できる仕事がしたい」と、県外の大学で機械工学を学んだ後、東北電力へ入社した。
入社以来、停止中のプラントしか知らないまま再稼働を迎えた世代でもある。
運転中の現場に初めて入った際は、停止中とは全く異なる環境に驚いたという。
「室温も全然違いますし、音も振動もすごい。暑いです。映像で見ていただけなので、どんな空気感なのかなと思っていたんですが」
再稼働に向けた準備期間中は、設備の不具合対応や点検工程の調整にも追われた。
「安全対策工事との干渉で長期間実施できなかった案件を前任者から引き継ぎ、関係者と工程調整を重ねながら対応しました」
こうした業務を通じて、先輩社員の知識や経験の大きさも実感したという。
若手が感じた「戦力になれた瞬間」
定期事業者検査から設備立ち上げの時期にかけて、平塚氏は現場対応のため急遽招集される機会があった。
「上司から『今から来られるか』と連絡をもらい、出社して現場対応にあたったことがありました」
その経験は、自身の成長を実感する出来事にもなった。
「自分に声をかけてもらえたことが、戦力になっていると感じた瞬間でした」
停止期間を支えてきたベテランの知見と、再稼働後の経験を積み始めた若手の実感。その両方が、女川2号機の運転を支えている。
※所属・役職は5月取材時のものです









