
欧州投資銀行(EIB)は10月30日、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ(TVO)社とオルキルオト1-2号機(BWR、各92万kWe)のバックフィット作業に向け、9,000万ユーロ(約162億円)相当の長期融資契約を締結した。今回のバックフィットでは、複数年にわたり、自動制御系のアップグレード、ならびに同1-2号機の原子炉気水分離器の交換を実施する。1号機は1979年、2号機は1982年に営業運転を開始。当初の計画運転期間は40年間だったが、両機とも2018年9月に、2038年12月末まで20年間の運転期間延長を認可されている。今回のバックフィット作業により、TVO社はさらに2048年または2058年までの運転期間延長と、出力(ネット値)を現状の89万kWeから97万kWeへの増強を想定している。EIBは本プロジェクトについて、フィンランドのエネルギー自立を高め、大規模な低炭素電源を支援するという融資政策と合致すると評価。欧州連合(EU)の気候目標に貢献するものとして位置づける。EIBのK. ネハンマー副総裁も、「オルキルオト発電所の安全性向上を後押しすることで、フィンランドが信頼性の高い低炭素電源により、エネルギーミックスを強化するのを支援する」と語った。一方、TVOのL. ピエッカリ財務担当上級副社長は、「EIBからの長期資金調達は、資本市場ベースの債務調達を補完する優れた手段」と評価。借り手の資金源の多様化に資するとともに、プロジェクトの実行可能性に対する信頼を示すものとして、地元の資金調達市場への好影響に期待を示した。本プロジェクトの総費用は1.9億ユーロ(約342億円)と見込まれ、今年4月、TVO社は北欧投資銀行(NIB)と7,500万ユーロ(約135億円)の長期融資を受けている。同社は2016年にも、EIBから1億ユーロの長期融資を受け、非常用ディーゼル発電機や原子炉内部ポンプの交換、緊急給水システムの新設導入など、安全性向上対策を実施した。オルキルオト発電所では1-2号機のほか、3号機(EPR、166万kWe)が2023年5月より営業運転を開始。2024年にはフィンランドの総発電電力量830億kWhの約28%を占める、同国最大の発電所。TVO社は欧州の原子力運転事業者の中でグリーンボンドを発行した最初の企業の一つである。なお同国には、オルキルオト発電所の他、フォータム社のロビーサ発電所(VVER-440×2基、各53.1万kWe)が稼働しており、両発電所による発電量のシェアは、約40%に達する。ElBは、加盟国が出資する欧州連合の長期融資機関。気候変動対策と環境、デジタル化と技術革新、安全保障と防衛、農業とバイオ経済、社会インフラなど、EUの政策目標に貢献する投資に資金提供する。欧州投資基金(EIF)を含むEIBグループは、2024年に900件を超える大規模プロジェクトに対する約890億ユーロの新規融資に署名し、欧州の競争力と安全保障の強化に貢献している。
14 Nov 2025
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英国で原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「Great British Energy – Nuclear(GBE-N)」は11月13日、北ウェールズのアングルシー島ウィルヴァを英国初の小型モジュール炉(SMR)の建設地として正式に選定したと発表した。本件は12日付の本紙既報(FT報道)を裏付けるもので、英国の次世代原子力政策が実行段階へ移行する大きな節目となる。GBE-Nによれば、同プロジェクトは出力最大150万kWeの原子力発電所を送電網に接続し、ネットゼロ目標およびエネルギー安全保障の強化を狙う。建設ピーク時には約3,000人の雇用創出が見込まれ、政府はSMRプログラムに25億ポンド(約4,700億円)を投じて民間投資と国内サプライチェーンの強化を図るとしている。GBE-NのS.ボウエン会長は声明で、「英国にとって歴史的な瞬間であり、原子力分野で世界をリードするという英国の潜在力を具現化する、もう一つの大きな一歩である」と述べ、ウィルヴァを中心とした“フリート(fleet)型”開発への移行が本格化すると強調した。同日、ロールス・ロイスSMR社もウィルヴァに自社設計SMR(PWR、47万kWe)×3基を建設する計画を正式に発表した。同社のC.チョラトンCEOは、「英国初のSMRフリート計画として、ウィルヴァに3基を建設できることは光栄である。今回の決定は、ウィルヴァにおける100年規模のクリーンエネルギー、技術革新、地域連携の始まりだ」と述べ、長期的な地域投資への強い意欲を示した。同氏は、SMRはモジュール化が進み工場生産方式が確立していることから、現地工事の負荷を最小化し、地域への影響を抑えた導入が可能になると説明した。ウィルヴァ・プロジェクトでは、関連産業を含め英国全体で年間平均約8,000人規模の高レベルの雇用を支える見込みとしている。このフリート構想は海外展開も見据えており、最初の輸出先としてチェコ(Czechia)が挙げられている。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のE. ミリバンド大臣は、「この歴史的投資は、英国がいまなお息の長い大規模プロジェクトを実行する力を持つことを証明した。北ウェールズの若者に新たな機会が生まれ、英国全体の家庭にクリーンな電力を供給することになる」と述べるとともに、SMRを英全土に展開する政府方針を改めて示した。ウィルヴァはマグノックス炉を採用した旧原子力発電所の閉鎖(2015年)以降、日立製作所によるリプレース計画が2019年に中止され、以降長らく停滞していた。今回の正式決定により、同地域は再び英国の原子力拠点として再生する見通しが開けた。英国では大型炉建設プロジェクトとしてヒンクリーポイントC(EPR-1750、172万kWe×2基)の建設が進み、サイズウェルC(EPR-1750、172万kWe×2基)の資金手当てのメドがつきつつある中、SMRはフリート展開を前提にした次世代戦略の要として位置づけられている。英国政府およびGBE-Nは今後、地域コミュニティとの対話を継続し、透明性の確保と社会的受容性の向上に努めるとしている。今回の正式決定は、英国がSMR導入を軸に“新たな原子力フリート時代”へ踏み出した象徴的な動きといえる。金融・政策面での評価については、本紙既報にてハントン・アンドリュース・カース法律事務所のG.ボロバス氏のコメントを紹介している。Great British Energy – Nuclear(GBE-N)は、英国「エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)」のアームズ・レングス機関((政府方針の下で業務を行うが、専門的判断について一定の独立性を持つ公的実行機関のこと))であり、2023年に設立した「Great British Nuclear(GBN)」が前身。DESNZの後援を受け、英国の次世代原子力政策を実務面で支える中核組織となっている。
14 Nov 2025
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スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo=CNAT)は10月30日、環境移行・人口問題省(MITECO)に対し、アルマラス原子力発電所(PWR, 100万kW級×2基)の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請した。現行の閉鎖予定時期は1号機が2027年11月、2号機が2028年10月となっている。CNATは声明で、同発電所の安全性や信頼性、効率性を確保しつつ、運転を継続する姿勢を強調。「世界でも高い運転水準を維持しており、引き続きその基準を維持していく」としている。同発電所は、世界原子力発電事業者協会(WANO)のパフォーマンス指標でも、最高評価にあたる「レベル1(エクセレンス)」を獲得。年間約5,000万ユーロ(約90億円)をバックフィットに投資している。発電所は、イベルドローラ(53%)、エンデサ(36%)、ナチュルジー(11%)の3社が共同所有する。アルマラス原子力発電所は、ポルトガル国境に近いエストレマドゥーラ州カセレス県に位置し、スペインの電力消費量の約7%(約400万世帯分)を供給。同発電所および関連事業を含め約4,000人が就業し、燃料交換時期には約1,200人の雇用が追加されるなど、地域経済を支える重要な雇用基盤となっている。スペインでは現在、5サイト・計7基、合計出力計739.7万kWeが運転中で、全基が40年超の運転認可を取得済み。2024年の原子力シェアは約20%を占め、稼働率は約84%。一方で、政府の脱原子力政策のもと、現行計画では2027~2035年までに順次閉鎖が予定されており、2030年までに約320万kWに縮小し(現在運転中の7基中4基が閉鎖)、2035年には0となる見込み。こうしたなか、今年2月、スペイン国会(下院)は中道右派の国民党(PP)が提出した、同国の原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める決議を可決。さらに同月には、スペイン原子力産業界が、長期運転を支持するマニフェストを発表し、原子力の段階的廃止政策が与える産業競争力と社会への悪影響について懸念を表明した。また4月にイベリア半島で発生した大規模停電を機に、国内では2035年までの原子力廃止計画の是非をめぐる議論が再燃。スペインの原子力産業団体であるForo NuclearのI. アラルース理事長は、「原子力は電力系統の信頼性にとって不可欠であり、段階的廃止方針を再考すべき」と主張している。
13 Nov 2025
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カナダのオンタリオ州とノバスコシア州は10月23日、小型モジュール炉(SMR)の導入に向けた覚書(MOU)を締結した。クリーンエネルギー移行を進めるノバスコシア州が、原子力先進州であるオンタリオ州の技術・制度運用のノウハウを活用し、SMR導入の可能性を具体的に検討する体制を整える。今回のMOUでは、SMR技術、サプライチェーン、規制制度、廃棄物管理といった幅広い分野で両州が協力を深めることを規定。また、カナダ政府に対し、SMR開発・導入に必要な手続きの迅速化を働きかけることも盛り込まれている。実務面では、両州のエネルギー担当省が協議を進め、進捗を年次で共有する体制も構築する。ノバスコシア州は2023年、カナダ政府および隣接するニューブランズウィック州と共同で、2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止し、クリーンで安価な電源に移行する方針を発表した。風力や太陽光など再生可能エネルギーの拡大を進める一方で、安定供給を確保するためのバックアップ電源の確立が課題となっており、SMRの導入も検討項目として位置づけている。2024年には「エネルギー改革法(Energy Reform Act)」を制定し、州営電力会社が将来的に原子力発電所を所有・運転できるよう法的制約を撤廃した。同法に基づき、送電網を担う独立系統運用機関(IESO)の設立が進められており、2025年末の発足を予定している。一方、オンタリオ州はこれまで同国内の原子力運転実績と規制対応の中心を担ってきた原子力先進州。現在はG7諸国で初となる商業用SMRの建設計画「ダーリントン新原子力プロジェクト(DNNP)」も進行中で、SMR建設をリードする存在でもある。また、このプロジェクトにはカナダ政府や州系基金が総額30億カナダドル(約3,300億円)を出資する。オンタリオ州との協力枠組みには、すでにニューブランズウィック州、サスカチュワン州、アルバータ州も同様に署名している。参加する州が広がったことで、SMR導入をめぐる連携の枠組みが全国的に広がりを見せている。カナダ政府は既に複数の州でSMR開発を支援しており、次世代原子力の活用を軸としたクリーンエネルギー移行が、今後さらに加速するか注目される。
13 Nov 2025
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英フィナンシャル・タイムズ紙は11月11日、英国政府が北ウェールズのアングルシー島ウィルヴァを、国内初となる小型モジュール炉(SMR)の建設候補地として選定する見通しだと報じた。報道によれば、政府はロールス・ロイス社製SMR×3基の建設を承認し、グロスターシャー州オールドベリーではなくウィルヴァを優先する方針だという。ただし、英政府は現時点でこの報道内容を否定しており、正式発表は行っていない。英国では労働党政権が、老朽化した大型炉に代わる電源としてSMR導入を推進しており、3年間で25億ポンド(約4,700億円)規模の開発支援を掲げている。政府は、FTSE100(ロンドン主要株価指数)に上場するロールス・ロイス社のSMRを中心に、「世界をリードするSMR開発国」を目指している。同SMRは電気出力が47万kWの加圧水型炉で、他のSMRより規模が大きいのが特徴。ウィルヴァでの建設が実現すれば、ピーク時には約3,000人の雇用を創出する見込みとされる。旧ウィルヴァ原子力発電所は2015年に閉鎖され、その後、日立製作所による後継プラント計画が2019年に中止となっていた。今回の動きは、同地で停滞していた原子力新設プロジェクトが再び動き出す可能性を示すものとなる。国際的な原子力法務の専門家であるハントン・アンドリュース・カース法律事務所のジョージ・ボロバス氏は、本件について次のようにコメントしている。「ヒンクリーポイントC(HPC)の建設が進み、サイズウェルC(SZC)プロジェクトの金融契約が締結された流れを受け、今回の報道は、英国の原子力新設プログラムにおけるもう一つの重要な節目を示すものとなる。英国は“初号機(FOAK)”となるSMRプロジェクトの開発に着手することになり、これは将来の英国および他国の新設計画におけるレファレンスプラント(参照モデル)となる可能性が高い。 HPCとSZCが、それぞれ差金決済(CfD)と規制資産ベース(RAB)の資金スキームを採用したように、SMRプロジェクトも官民パートナーシップ(PPP)型の枠組みを採用し、民間と政府が開発・資金調達・リスクを分担する形になるだろう。 こうした英国発の資金スキームは、各国が自国の原子力新設戦略を構築していく中で、日本を含む他国にも展開・応用される可能性が高い」地域の反応として、FT紙によると、プライド・カムリ党のリーノス・メディ議員が「高レベルな雇用と地域のサプライチェーンを確保し、環境・文化・ウェールズ語((ウェールズ全域で若者の流出が顕著であり、文化だけでなくウェールズ語の存続も危ぶまれている))を尊重する形で進められることを期待する」とコメントしたという。英政府はコメントを控えているが、正式発表は今週中にも行われる見通し。今回のウィルヴァ選定は、英国の原子力産業復興における次の段階を象徴する動きとして注目されている。
12 Nov 2025
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米国の先進原子力エネルギー企業であるナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は10月22日、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)社の関連会社から、カナダを基盤とするグローバル・ファースト・パワー(GFP)社の買収を完了したことを明らかにした。NANO社は、米国とカナダで並行して建設および許認可プロセスを進めることで、北米におけるマイクロ炉分野のリーダーシップ確立を目指す。本買収によりNANO社は、カナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー研究所サイト(オンタリオ州)におけるマイクロモジュール炉「KRONOS MMR」実証プロジェクトをGFP社から引き継ぐ。これには、カナダ原子力安全委員会(CNSC)へのサイト準備許可(LTPS)取得に関する手続きも含まれる。GFP社は、CNSCによるベンダー設計審査(VDR)の第1段階を完了し、第2段階を開始しており、2019年3月にはLTPSの初期部分を提出するなど、重要な許認可前ステップを一部完了していた。NANO社はこの既存の基盤を活かして開発を再開する方針である。USNC社は2024年10月、米国破産法第11章第363条に従い、自社技術の売却プロセスを実施することを発表。競売により同年12月、NANO社はUSNC社のMMRを含む、原子力技術資産の一部を買収し、MMRをKRONOS MMRに改称した。KRONOS MMRは、TRISO燃料とヘリウム冷却を使用する第4世代の小型モジュール式の高温ガス炉。設置面積は5エーカー(約0.02平方キロメートル)未満とコンパクトで、最大4.5万kWt(1.5万kWe)の出力により、地域グリッドや再生可能エネルギーシステム、プロセス熱供給などと柔軟に連携可能。運転員の介入や外部電源なしに自動的に停止し安全状態を維持する(walk-away safe)設計であり、停電時にも独立して稼働できる完全自律マイクログリッド機能の確立を目指している。NANO社の最高技術責任者兼原子炉開発責任者であるF. ハイデット博士は、「今回の買収は、北米のマイクロ炉開発においてリーダーシップの地位を確立するという当社の目標にとって重要な進展。GFP社が中断していたカナダでの許認可取得の取組みを再開し、設計と規制対応の両面からKRONOS MMRの開発の継続に集中する。このプロセスの合理化により、許認可取得に伴う財務上およびスケジュール上の負担が大幅に軽減され、開発と導入を加速するための資本と技術的専門知識をより戦略的に割り当てることができる」として、GFP社の買収の意義を強調した。なお、NANO社によると、USNCは約10年間にわたりMMR開発と許認可に総額1.2億ドルを投じており、今回の取引に際し、GFP社がCNSCに対して負っていた約64万ドルの債務もNANO社が引き受けた。米UIUCでの建設準備も進行カナダにおける進展と並行して、NANO社は10月24日、米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)のサイトで研究用・商業用プロトタイプとなるKRONOS MMRの建設に向けた、サイト特性評価と地盤調査のための掘削作業を開始した。同施設が、エネルギーシステムの実用化における前例のない実証実験の場となり、将来的には北米および世界中の大学、政府関係、商業施設などにおける展開モデルとなると期待されている。同社は、サイト特性評価および掘削活動から得られる地質工学的データを活用し、2026年第1四半期にもKRONOS MMRの建設許可を申請予定である。さらにNANO社は、将来的な顧客候補として米国の技術・製造・インフラ企業であるBaRupOn社が、約15基のKRONOS MMRの導入に向けた実現可能性調査を開始すると発表した。BaRupOn社は、テキサス州ヒューストン近郊で、AIデータセンターと先進製造施設を備えた700エーカー(約2.8㎢)規模のキャンパスを建設予定で、必要電力は100万kWe超に達する見通しである。
12 Nov 2025
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米サウスカロライナ州営電力であるサンティー・クーパー社の取締役会は10月24日、同州で建設が中断されているバージル・C・サマー原子力発電所2-3号機の建設プロジェクト再開に向けて、カナダの資産運用会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社との独占交渉に関する意向表明書(LOI)を承認した。同プロジェクトはウェスチングハウス社(WE)製の大型炉AP1000を採用しており、ブルックフィールド社はWE社の大口株主である。LOIでは、6週間の初期プロジェクト実現可能期間を設定。同期間中に、両当事者は共同でプロジェクトマネージャーを選定し、2基の建設再開を行う建設業者を評価。同発電所が発電する電力購入に関心のある事業体とも事前協議の実施を計画する。サンティー・クーパー社のP. マッコイ会長は、「当社の目標は、民間資金で原子炉を完成させ、料金支払者や納税者に負担をかけずに、サウスカロライナ州に大幅な発電設備を追加すること。ブルックフィールド社の提案はまさにそれを実現するものであり、その提案を支える財務能力がある」と語り、J. ステートンCEOは、「過去8年間にわたって設備を維持するという当社の戦略的な決定により、2基の完成をより迅速かつ低コストで完成させることができる」と指摘。建設が停止された2基の保存状態と、ジョージア州のA. W. ボーグル3-4号機および海外で運転実績のあるAP1000は、原子力産業にとって非常に魅力的な資産であるとし、同2基の完成により、初期投資を行った顧客に利益を還元していく考えを示した。家庭用および産業用の電力需要の急増と州の支援を受けて、サンティー・クーパー社は昨年、未完成の原子炉を完成させるために第三者に資産の売却を検討。2025年1月に提案依頼書(RFP)の募集を実施し、当初、70社以上から関心表明と15件の正式な提案を受けたという。2基の完成プロジェクトにより、数千人の建設雇用の創出、数百人の高度なスキルを持つ常勤雇用のほか、送電網の信頼性の向上、新たな産業誘致に伴うより多くの雇用と経済的利益が見込まれている。なお、この完成プロジェクトの権益を売却する競争プロセスにおいて、米投資銀行のセンタービュー・パートナーズ社やJPモルガン社がサンティー・クーパー社の財務アドバイザーを務めている。同発電所の建設プロジェクトの過半数(55%)を所有していたスキャナ(SCANA)社傘下のSCE&G社(2019年1月にドミニオン・エナジー社が買収)は、2-3号機の建設・運転一括認可(COL)を、2008年3月に米原子力規制委員会(NRC)に申請。COLは2012年3月に発給され、2013年3月に2号機、2013年11月に3号機が着工した。同じAP1000を採用したA. W. ボーグル3-4号機の着工とほぼ同時期である。しかし、長年にわたるコスト超過およびスケジュール遅延と、その後に続く2017年3月のWE社の破産申請を受け、SCE&G社は建設プロジェクトの残り45%の所有者であったサンティー・クーパー社とともに、2017年7月に2-3号機の建設中止を決定した。SCE&G社はその後、2018年12月に納入されていた機器の所有権をサンティー・クーパー社に譲渡。ほどなくサンティー・クーパー社とWE社との間で、プロジェクトに係る設備・機器所有権をめぐり係争に発展したが、和解が成立している。なおNRCは、SCE&G社とサンティー・クーパー社の合意により、2019年3月にCOLを失効させた。新たに建設・運転を希望する場合、再申請が必要となる。
11 Nov 2025
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米大手電力会社ネクストエラ・エナジー社は10月27日、米IT大手のGoogle社と共同で、アイオワ州のデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR, 62.4万kWe)の再稼働に向けた協定を締結したと発表した。Google社は同発電所の再稼働後、供給される電力を25年間にわたり購入する電力購入契約(PPA)を結び、AIやクラウドサービスの拡大に伴い急増する電力需要を、エネルギー企業とIT企業が協力して支える新たなモデル構築を目指す。このPPAにより、Google社が25年間にわたり電力を固定価格で購入することで、ネクストエラ社は再稼働に必要な巨額投資を長期収益で回収できる見通しを得た。再稼働にかかる費用は州の電力料金に転嫁されず、一般家庭や地域企業への負担は生じない。電力需要家と発電事業者が直接契約を結ぶ仕組みは再生可能エネルギー分野では一般化しているが、原子力に適用されるのは異例であり、政府補助に依存しない「民間資金による原子力再稼働」として注目を集めている。アイオワ州唯一の原子力施設であるデュアン・アーノルド発電所は、1975年に運転開始。45年以上にわたり稼働したのち、経済性の悪化を理由に2020年に閉鎖された。当初は2034年までの運転が認可されていたが、地域電力会社との売電契約期間短縮と同年の自然災害による設備損傷により、閉鎖が前倒しされた。AIやデータセンター需要の急拡大により電力不足が顕在化し、ネクストエラ社は再稼働の可能性を模索。今年1月に米原子力規制委員会(NRC)への運転再開を申請しており、現在は2029年の運転再開を目指して審査が進められている。今回のGoogle社との契約は、同計画の実現に向けた“決定打”と位置付けられる。Google社にとってアイオワ州は、米国中西部におけるデータセンター運営の中核拠点である。同社は2007年に最初のデータセンターを開設し、AIやクラウドサービスの主要拠点として運営。今年5月には約70億ドル(約1兆円)の追加投資計画を発表し、データセンター新設や既存施設の拡張、人材育成プログラムなどを進めている。今回のPPAは、こうしたインフラ投資を持続可能に支えるクリーンで安定した電力確保策として位置づけられる。これまで民間企業による原子力投資は次世代炉の開発支援が中心だった。Google社が既存の大型炉に対し長期的なPPAを結ぶのは異例であり、投資の焦点が「新技術の開発」から「既存炉の再評価・再活用」へと移りつつあることを象徴している。AI時代の電力需要に応えるため、既存原子力資産を“クリーンで即応性の高い電源”として再評価する動きは、今後他の地域や事業者にも波及する可能性がある。
11 Nov 2025
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ウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)のA. アフメドハジャエフ長官率いる代表団は10月20日、イタリアのジェノバで、同国のアンサルド・エネルギア(Ansaldo Energia)社およびその原子力専門の子会社であるアンサルド・ヌクレアーレ(Ansaldo Nucleare)社と会談し、原子力分野での協力具体化に向けた協議を行った。協議では、ウズベキスタン初となる原子力発電所建設プロジェクトに関し、アンサルド・グループを技術コンサルタントとして起用し、同国の気候条件(高温・乾燥・砂塵など)に適応した補助システムの技術統合を進める可能性について検討した。また、放射性廃棄物処理の分野では、アンサルド・ヌクレアーレ社が独自開発した使用済み燃料管理システムの導入についても詳細な意見交換が行われた。さらにアンサルド・グループが関心を寄せるウズベキスタンの法規制基盤整備やライセンス取得支援、原子力分野における技術改良と人材育成を目的とした共同研究開発の実施についても協議された。アンサルド・グループは、蒸気タービンやガスタービンなどのエネルギー機器の設計・製造・供給を手掛ける、欧州有数のエネルギー企業であり、安全システム構築やソフトウェア開発、原子力発電所向け主要・補助設備の供給に豊富な実績を有する。中国、ベルギー、スロベニア、ハンガリー、ウクライナなどの原子力発電所向け評価・技術保守にも参画してきた。両者は今年5月、ウズベキスタンのS. ミルジヨーエフ大統領とイタリアのJ. メローニ首相立ち会いの下、先進的な原子力技術と小型モジュール炉(SMR)の開発に関する協力覚書(MOU)を締結。次世代原子力発電所の設計と建設、放射性廃棄物管理、専門家育成などの分野で戦略的に協力していく方針を確認していた。ウザトムは現在、ウズベキスタン東部のジザク州でロシア舶用炉を陸上用に改良したSMRの「RITM-200N」(PWR、5.5万kWe)×2基の建設を進めているほか、ロシア製大型炉VVER-1000×2基の建設も計画している。10月にはSMR初号機の原子炉建屋の基礎掘削工事が開始されており、同国における原子力開発は着実に次の段階へと進んでいる。
10 Nov 2025
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シンガポール通商産業省(MTI)は10月27日、報告書「シンガポールの原子力評価能力の構築(Developing Singapore’s Nuclear Energy Assessment Capability)」を発表した。報告書はMTI、持続可能性・環境省(MSE)、エネルギー市場庁(EMA)、国家環境庁(NEA)の4機関が共同で作成。原子力導入の可能性を科学的・客観的に評価するための手順と視点を体系化している。同国は再生可能エネルギー資源に乏しく、総発電電力量の約95%を天然ガスに依存している。太陽光発電の導入を進めても10%程度にとどまる見通しで、水素、地熱、先進原子力の3つを将来有望な低炭素エネルギー源として位置づけている。同国は2012年にも原子力発電の実現可能性を調査したが、国土が狭く人口密度が高いことを理由に、導入が見送られた経緯がある。その後小型モジュール炉(SMR)など安全性と柔軟性を高めた次世代技術が進展したことから、政府は検討を再開。報告書では、原子力が同国のエネルギー政策の三本柱である「エネルギー安全保障・経済性・環境の持続可能性(エネルギートリレンマ)」に対応し得ると評価している。同日開幕したシンガポール国際エネルギー週間(SIEW)の開会スピーチでタン・シー・レン大臣(人材大臣兼 通産省エネルギー・科学技術担当大臣)は、「SMRなどの新技術を含む原子力エネルギーは、安全で信頼性が高く、コスト競争力のある選択肢になり得る」と述べた。さらに、米国やフランスとの協定締結、米アイダホ国立研究所や米バテル記念研究所との協定を例示し、ノウハウ共有と人材育成を通じた評価体制の整備を進める方針を示した。
10 Nov 2025
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日本原子力産業協会(JAIF)は、2025年11月4~6日、フランスのパリで開催されたWNE2025(世界原子力展示会)に出展。同展示会の主催者である仏原子力産業協会(GIFEN)や、カナダ原子力協会(CNA)、韓国原子力産業協会(KAIF)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、ブラジル原子力産業協会(ABDAN)などとともに、最終日の11月6日、第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)に向けて、各国の政治指導者や金融関係者に対し、エネルギーミックスにおいて重要な役割を果たす原子力へのより一層の支援を求める共同声明に署名した。声明では、気候変動対策における原子力の役割をあらためて強調するとともに、全人類が持続可能で安定したエネルギーにアクセスするためには、原子力を含むあらゆる低炭素技術への即時かつ協調的な投資が不可欠であると強調している。国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により、原子力は気候目標達成に不可欠な低炭素電源の一つとされた。アラブ首長国連邦のドバイで開催されたCOP28の最終合意では、初めて原子力が「排出量削減のための重要なアプローチの1つ」として正式に明記され、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍とする目標が設定された。現在、31か国で約440基(総出力4.2億kWe)の原子炉が稼働中で、60基以上が建設中であり、約30の新興国が原子力開発を検討している。IAEAの最新予測では、2050年までに原子力発電容量が最大2.5倍に拡大する可能性があるとされ、この実現には、年間の新規導入を500~600万kWeから2,500万kWe以上に増加させる必要がある。そのうえで、原子力が、過去50年間で約700億トンのCO₂排出を削減した実績があり、2050年までにさらに900億トンの排出削減が可能であること、高いエネルギー密度により最小限の資源で大量の電力生産を可能にするほか、医療・水素・熱供給・宇宙分野など非電力用途も拡大し、地域の雇用・経済発展にも大きく寄与するなど、環境・社会的にも貢献すると指摘。特に、小型モジュール炉(SMR)や先進炉(AMR)、いわゆる第4世代炉の開発が、循環型エネルギー経済の構築と産業の脱炭素化を推進する技術革新の中心になると位置づけている。声明では、世界の指導者や金融界に対し、2050年までに原子力設備容量の3倍化目標の再確認のほか、既存炉の長期運転の政策支援と新規プロジェクトや研究開発を促進するグリーンファイナンス制度の整備を求めるなど、原子力の経済的・環境的利点を訴求し、気候目標の達成と安価でクリーンな電力の安定供給を両立させるため、原子力へのより一層の支援を訴えた。共同声明に署名した17原子力産業団体((署名17原子力産業団体: GIFEN(フランス)、 WNA、Nucleareurope、NIA(英国)、FinNuclear(フィンランド)、ABDAN(ブラジル)、BNF(ベルギー)、AIN(イタリア)、Nucleair Nederland(オランダ)、CNA(カナダ)、SNF(スイス)、JAIF(日本)、KAIF(韓国)、IGE OS(ポーランド)、CNEA(中国)、ROMATOM(ルーマニア)、Foro Nuclear(スペイン)))は、「原子力はクリーンで信頼性が高く、エネルギー安全保障と経済の安定を確保するための重要な資産。我々は、責任ある技術革新を通じて、気候変動や全人類のエネルギーアクセスなどの課題を克服し、人類の発展に貢献する」と力強くメッセージを発している。
07 Nov 2025
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脱炭素化を掲げるカナダにおいて、これまで原子力発電を導入していなかった2州で新設への動きが具体化しつつある。サスカチュワン州政府は10月20日、同州初となる「エネルギー安全保障戦略」を公表し、原子力を含む長期的な電源多様化方針を示した。一方、隣接するアルバータ州と米ウェスチングハウス(WE)社は10月21日、とAP1000(PWR, 125万kWe)の導入可能性を探る覚書(MOU)を締結。サスカチュワン州政府の新戦略は、エネルギー安全保障を最優先課題とし、単一電源への依存を避ける多様な電源構成の確立を目的とする。公式資料によると、州の発電量の約50%を天然ガスが占めており、石炭火力も依然として安定供給を支える重要な電源となっている。再生可能エネルギーの比率は35%に上るが、出力変動や土地利用の制約が課題とされる。同州は世界有数のウラン産出地でありながら、これまで原子力発電所は建設されてこなかった。新戦略では今後のエネルギー需要の拡大を見込み、2050年まで石炭火力の運転を認め、原子力導入までの「橋渡し電源」として活用する方針を示している。州電力会社のサスクパワー社は、SMR「BWRX-300」の導入を軸とした開発計画を進めており、エステバン近郊2地点を候補サイトに絞り込み、2026年中の立地決定を目指している。また、州内3大学に対してそれぞれ300万~400万ドル(約3.5~4.6億円)を投資し、原子力工学・安全・先端研究分野での人材育成や拠点整備を予定。ウラン資源と研究機関を活かし「採掘から発電まで」を一貫させた産業クラスターの形成も視野に入れる。一方、アルバータ州では、同州北部で「ピースリバー原子力発電プロジェクト」を推進するエナジー・アルバータ社が10月21日、WE社とAP1000の導入可能性を検討するMOUを締結した。同プロジェクトは最終的に4基、合計480万kW規模の原子炉建設を目指している。当初はCANDU炉の採用を前提としていたが、米国型PWRの適用可能性についても検討を進める。サスカチュワン州とアルバータ州は、2024年5月には原子力技術の導入や規制分野での協力に関するMOUも締結している。
07 Nov 2025
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南アフリカのK. ラモホパ電力・エネルギー相は10月19日の記者会見で、同月15日に閣議決定された統合資源計画(IRP)2025を発表した。公開協議の段階で4,000人以上の利害関係者の意見を反映した、国の電力構成を計画的に策定するための長期計画で、電力供給と需要のバランスを図りつつ、環境影響と電力コストを考慮したもの。同IRP-2025により、2030年までに国内総生産(GDP)を3%成長させることを目指しており、原子力発電については2039年までに520万kWを新たに導入する計画が示された。IRP-2025によると、政府は今後、GDPの約30%に相当する2.2兆ランド(約19.3兆円)を投じ、2039年までに1億500万kWeの発電設備容量の増強を計画。これは、国営電力会社のエスコム(Eskom)が現在保有する発電設備容量の2.5倍に相当する。具体的には、太陽光発電: 2,500万kWe、風力発電: 3,400万kWe、ガス火力発電: 1,600万kWe、エネルギー貯蔵: 850万kWe、分散型発電: 1,600万kWe、原子力発電: 520万kWeとなっている。同国では、総発電電力量に占める石炭火力発電の割合が約80%と高く、2050年のネットゼロ目標達成に向けて、石炭火力の割合を減少させ、再生可能エネルギー、ガス火力、原子力の拡大により、エネルギーミックスを推進していく方針。現在の原子力発電規模は計194万kWe(クバーグ発電所で2基運転中)、総発電電力量に占める割合は約4%である。ラモホパ大臣は、慢性的な電力不足が経済発展と雇用に深刻な影響を及ぼしていると指摘。「原子力がエネルギーソリューションとしてだけでなく、南アフリカ経済に何の利益をもたらすか、燃料サイクルのどの要素を国産化できるかが重要」と述べ、燃料サイクルにおける国内調達可能な要素の特定のほか、小型モジュール炉(SMR)技術の開発、地元産業の能力開発、原子力部門の雇用機会の創出に向けて、原子力産業化計画の策定に意欲を示した。また、原子力発電利用に対する世界的な気運の高まりに応え、世界の多くの金融機関が原子力プロジェクトへの融資を約束しはじめていることも、原子力部門への追い風になっているとした。さらに同大臣は、原子力発電の拡大にあたり、「国が先走ることはない。非常に慎重に、透明性をもつことを保証する」とプロセスを重要視する姿勢を強調。また、「新規原子力開発計画の停滞が、建設業界や科学者たちの能力を損なった。原子力産業化計画では、将来に向けてスキルをどのように生み出していくかが重要」として、大学、技術職業教育訓練カレッジ、特に建築と原子力に関連する工学部門と協力していく方針を示した。エスコムは声明で、南アフリカのエネルギー移行において、エネルギー安全保障、価格の手頃さ、環境の持続可能性、社会経済的配慮のバランスを重視するIRP-2025の策定を歓迎。同国の失業率が30%、若年層の失業率が50%を超える状況において、経済成長と社会的包摂(インクルージョン)を加速させるために必要な電力供給のための明確な投資枠組みを提供するものだと評価した。
06 Nov 2025
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米国で一度閉鎖された原子力発電所が、再稼働に向けて大きな節目を迎えた。米ホルテック・インターナショナル社は10月20日、ミシガン州のパリセード原子力発電所(PWR, 85.7万kWe)に68体の燃料集合体を受け入れたと発表した。同発電所は2022年5月に経済性の悪化を理由に閉鎖され廃止段階に移行していたが、ホルテック社は米エネルギー省(DOE)の最大15億2,000万ドル(約2,300億円)の融資保証や州政府の支援を受けながら、運転再開に向けた整備作業を本格化している。再稼働が実現すれば、米国で閉鎖後に再び運転を開始する初の事例となる。今回受け入れた燃料は米国製で、炉心装荷されるまでの間は使用済み燃料プール建屋内に保管される。設備の復旧作業も進んでおり、主要機器の検査や保守を1年以上にわたり実施。現在は主要タービン発電機の再組立てが進行中で、一次冷却ポンプモーターの2基目の設置が完了した。今夏初めには、蒸気発生器の伝熱管改修も完了している。運転再開の目標は2025年末だが、具体的な時期は未定としている。パリセード発電所は1971年に営業運転を開始。2022年5月の永久閉鎖後、翌6月に当時の所有・運転者であったエンタジー社からホルテック社に売却された。当初は廃止措置を前提とした取得だったが、新たに電力販売契約が成立したことなどにより採算性の見通しが立ち、方針を転換した。米原子力規制委員会(NRC)が今年7月24日、技術審査を完了し運転再開に必要な主要許認可を承認した。これにより、燃料の受け入れが可能となっていた。米国ではエネルギー需要の増加や気候変動対策への対応を背景に、かつて経済性を理由に閉鎖されたプラントを再稼働させる動きが見られる。パリセードのほか、2019年に閉鎖したスリーマイル・アイランド1号機(PWR, 89.0万kW, 現クレーン・クリーン・エネルギー・センター)や2020年に閉鎖したデュアン・アーノルド1号機(BWR, 62.4万kW)でも、運転再開に向けた検討が進められている。
05 Nov 2025
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ポーランド国営エネルギーグループ(PGE)は10月16日、民間エネルギー企業ZE PAK社から、PGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa= PGE PAK EJ)社の株式50%を取得し、同国の第2原子力発電所建設プロジェクトを完全管理下におくこととなった。これは、M. モティカ・エネルギー相の決定により成立したもの。PGEのD. マルゼックCEOは、「PGE PAK EJ社を完全子会社化し、その運営を一元的に管理することで、第2原子力発電所に関する調査や分析、意思決定を行うことができる。これには、モティカ大臣の決定を含む、正式な政府の承認が必要だったが、プロセス全体は円滑に進んだ」と述べた。モティカ大臣は、「PGEによるPGE PAK EJ社の全株取得は、PGEだけでなく、政府も推進する戦略の実現である」と強調した。政府は、原子力はポーランドのエネルギー移行における戦略的柱であり、安定かつ安全なエネルギーシステムの構築、化石燃料からの脱却、気候目標の達成に資するものとしている。ポーランド初の原子力発電所は国営の特別目的会社(SPV)のPEJが同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノに、米ウェスチングハウス社製のAP1000を3基建設する予定。現在、現地では準備作業が進められており、2028年に建設開始、初号機の運転開始は2036年、2、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を予定している。政府の原子力開発計画(PPEJ)では、2番目の原子力発電所の建設候補地として、石炭・褐炭火力発電所のある同国中央部のベウハトフ地区やコニン地区の2か所が挙げられている。PGEグループの戦略でも、同地区での立地分析の実施や、トゥルフにある石炭火力発電所での小型モジュール炉(SMR)建設準備も検討されている。PGEと国有財産省が一部出資する民間のエネルギー企業のZE PAK社は2023年4月、合弁の特別プロジェクト企業であるPGE PAK EJ社を設立。韓国水力・原子力(KHNP)との協力により、コニン地区で韓国製140万kW級PWR「改良型加圧水型炉(APR1400)」を少なくとも2基(合計出力280万kW)建設を計画し、ポーランドの気候環境省は2023年11月、PGE PAK EJ社に対し、原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給している。一方でKHNPのJ. ファンCEOは今年8月、韓国国会の委員会で、スウェーデン、スロベニア、オランダに続き、ポーランドの原子力発電プロジェクトからの撤退について言及。ポーランド政府と国営企業によるそれぞれの原子力建設プロジェクトが、新政権発足後に政府のプロジェクトに一本化されたことを理由に挙げていた。これに対し、モティカ大臣は、KHNPの決定はポーランド政府のいかなる行動にも起因するものではないと指摘。エネルギー省は今年7月、韓国側に対し、第2原子力発電所の競争手続きに参加するよう正式に招待し、この問題に関する公式の立場を待っていると説明した。また、すべての決定権が半分民間企業である投資家にあるため、政府はコニン地区でのプロジェクトを停止する決定もしていないと補足した。なお、ポーランドのD. トゥスク首相は今年7月下旬、内閣改造を実施し、エネルギー省を新設。産業省を吸収するとともに気候・環境省の所掌の一部を引き継ぎ、原子力部門(SMRを含む)と鉱山部門はエネルギー省に移管されている。
04 Nov 2025
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カナダのM. カーニー首相は10月23日、国営投資機関カナダ成長基金(CGF)がオンタリオ州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社による小型モジュール炉(SMR)4基の建設計画「ダーリントン新原子力プロジェクト(DNNP)」に、20億カナダドル(約2,200億円)を出資すると発表した。併せて、D. フォード・オンタリオ州首相も、州のビルディング・オンタリオ基金(BOF)を通じて、10億ドル(約1,100億円)を投資すると表明。両基金により、総額30億ドル(約3,300億円)を出資。CGFとBOFはそれぞれ15%と7.5%を取得、OPG社が過半を保有する。DNNPはG7諸国で初となる商業用SMRの建設計画で、オンタリオ州にとっても約40年ぶりの新設プロジェクトとなる。米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社が開発した「BWRX-300」(BWR、30万kWe)を4基建設する計画で、1号機については、今年4月初旬にカナダ原子力安全委員会(CNSC)が建設許可を発給。続く5月には州政府が建設計画を承認し、現在建設に向けた準備工事が進められている。同機は、2030年末の送電開始をめざしており、2〜4号機は2030年代半ばに完成予定。総建設費は209億ドル(2.3兆円)で、完成すれば約120万世帯分の電力供給が可能となる見通しだ。今回の出資スキームでは、政府系資金が初号機段階の建設・技術リスクを一時的に吸収し、将来的な民間投資の呼び水とする狙い。CGFのY. ボードワン社長兼CEOは「今回のスキームを足掛かりに、オンタリオ州をはじめカナダ各地で、低炭素エネルギーインフラの開発に取り組む民間投資家の参入を一層促していきたい」と述べた一方、BOFのM. フェドチシンCEOは「州のエネルギー部門への投資活性化や競争力強化、雇用創出、産業基盤のイノベーション支援につながる」と期待を示した。カナダでは、連邦政府が2020年12月にSMR開発の国家行動計画を策定して以降、複数の州で導入に向けた検討が進められている。オンタリオ州のほか、中西部のサスカチュワン州では、州営電力のサスクパワー社がBWRX-300の採用を検討しており、 2030年代初頭の建設開始をめざしている。既に、米国との国境に近い、州南東部エステバン地域の2か所を候補地として絞り込んでいる。また、東部のニューブランズウィック州では、ARCクリーン・テクノロジー社の第4世代ナトリウム冷却・プール型高速炉「ARC-100」(10万kWe )を、モルテックス・エナジー社の第4世代の燃料ピン型熔融塩炉「Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W」(30万kWe)のそれぞれの先進炉を導入する動きが進んでいる。このように、カナダ全体で複数のSMRの並行展開が検討されており、こうした取組みは、脱炭素化とエネルギー安全保障の両立を図るカナダの「次世代原子力戦略」の中核に位置づけられている。カナダ産業審議会(Conference Board of Canada)の試算によると、DNNPの建設段階では年間最大1万8,000人の雇用が創出され、今後65年間で国内総生産(GDP)に約385億ドル(約4.2兆円)を寄与する見込み。OPG社のN. ブッチャー社長兼CEOは「DNNPはカナダ全体の低炭素電力需要に応えると同時に、SMR輸出のプラットフォームにもなる」と述べ、国内外展開への意欲を示した。
04 Nov 2025
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北極海航路(Northern Sea Route=NSR)を経由した中国発、欧州向けのコンテナ輸送が10月13日、出港から20日間で到着、完了した。所要日数は従来の南部ルート(スエズ運河経由)の約半分の日数。既存のルートを補完するアジアと欧州を結ぶ、持続可能な物流回廊となり、大幅に移動時間と輸送コストを削減、海上物流の脱炭素化という世界的な課題に応える。約25,000トンのコンテナ貨物を積んだ「イスタンブール・ブリッジ」号は、9月23日に中国浙江省の寧波舟山港を出港し、10月1日にNSRの海域に入った。ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下のグラヴセブモルプチ(NSR総局)から航行ルートの情報やナビゲーションのサポートを得て、10月13日に英国サフォークス州にある同国最大のコンテナ港フェリクストウ港に入港。氷況が穏やかな時期であったため、原子力砕氷船の支援を受けずに航行したという。ロスアトムのV. パノフ北極圏開発担当特別代表は、「NSRは急速に発展しており、実用的で効率的なグローバル物流ルートとなりつつある。先進技術の開発、新世代原子力砕氷船の建造、グローバルビジネスの荷主からの関心の高まりが背景にある。北極圏での作業は困難だが、NSRにおける航行の安全確保という最優先課題に加え、航路の通過速度と所要時間の管理といった重要な任務を担っていく」と語った。現在、北極圏におけるインフラと海運の開発は、ロスアトムの重要な活動の1つである。ロスアトムは2018年、ロシア政府からNSRインフラ運営の権限を正式に付与された。ユーラシア大陸西部とアジア太平洋地域を結ぶ航路としては、NSR利用が最短。NSRは全長約5,600kmのロシアの国家輸送の動脈である。ロスアトムによると、2024年のNSR利用貨物量は、昨年を160万トン以上上回る約3,790万トンに達し、過去最高を更新した。また、ロシアと中国間のコンテナ輸送量は増加しており、2024年の夏から秋の航海シーズン中の国際コンテナ航海は前年の2倍の14回が実施。今年は予定の22回の内、すでに17回のコンテナ航海が行われ、輸送貨物は28万トンを達成、昨年全体の貨物輸送量(17.6万トン)の59%増となっている。ロシアにとり、北極圏地域の開発は戦略的優先事項の一つとなっており、NSR輸送の強化は不可欠。この物流回廊は、定期的な貨物輸送、新型原子力砕氷船の建造、関連インフラの近代化によって発展しており、ロスアトムはこれらの取組みに積極的に関与していく方針である。中国においても、NSR経由の欧州までの航路は、「一帯一路」(The Belt and Road)イニシアチブ下の「氷上シルクロード」として、中国の先端製造、越境EC(Cross-Border E-Commerce)、新エネルギーなどの産業に、より迅速で低炭素の国際物流手段の選択肢と位置づけられている。10月14日、中国黒竜江省ハルビンで開催された第2回ロシア・中国政府間NSR協力小委員会では、ロシア側からはロスアトムのA. リハチョフ総裁、中国側からは劉偉・交通運輸部長が出席し、輸送効率の向上や近代的な物流および技術ソリューションの導入などを盛り込んだ行動計画に合意した。リハチョフ総裁は、両国の協力により、世界の貿易ルートの多様化を可能にするだけでなく、特殊な条件を持つ高緯度地域の開発への先進技術の導入にもつながる、と期待を寄せた。地球温暖化の影響で近年、北極海の海氷の融解によるNSRの開通期間が長期化する傾向にある。NSRには海賊行為の脅威がなく、政治的不安定な中東海域とは異なり安全かつ安定した航行が可能とされる。砕氷船による先導のコストはかかるが、航行距離の短縮と燃料コスト節約、海上物流の脱炭素化に向けて、今後、NSRの利用が一層、進むことが予想されている。
31 Oct 2025
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米マイクロ炉開発企業ラスト・エナジー社は10月15日、テキサス州の州立大学群を統括するテキサスA&M大学システムと提携し、同システム傘下の応用研究キャンパス「テキサスA&M-RELLIS」敷地内にマイクロ炉「PWR-5」を設置し、共同研究を行うと発表した。同社にとって米国内で初のマイクロ炉の配備となる。テキサスA&M大学システムは2024年11月、大学キャンパス近郊に位置する約9.7平方キロメートルの敷地を複数企業の小型原子炉の試験・建設に提供すると発表し、米原子力規制委員会(NRC)許認可手続きを開始した。プロジェクトにはこれまでケイロス・パワー、ナチュラ・リソース、テレストリアル・エナジー、アーロ・アトミックスの4社が参画。ラスト・エナジー社は5社目となる。PWR-5は、同社の商用炉PWR-20(PWR 、2万kWe)と同一設計を採用し、出力を5000kWeにスケールダウンした実証モデル。来年夏の開始を目指して低出力臨界試験を実施し、その後送電網への接続や発電試験に移行する計画だ。同社はすでに大学と土地のリース契約を締結し、燃料も確保している。PWR-20は米エネルギー省(DOE)が今年8月に開始した先端原子炉パイロットプログラム(AAP)の11炉型の一つ。モジュール設計で、工場生産から輸送、現地組立を24か月以内で完了できるという。2024年7月にはマイクロ炉開発企業として初めて英国での予備設計審査(PDR)を完了し、原子力サイト許可(NSL)の正式手続きを開始している。ラスト・エナジー社のCEO、B.クーゲルマス氏は「燃料の確保、立地の確定、関連する認可も取得済みだ。マイクロ炉の実証に理想的な条件が整っている」と期待を寄せた。同社は今年2月、テキサス州ハスケル郡で最大30基のマイクロ炉を建設する計画を発表し、事前サイト許可(ESP)の申請準備を進めている。この計画をはじめ、同社の商業契約の約半分はデータセンター向けだという。テキサスでの実証を足がかりに、商用炉の早期展開を目指す。
31 Oct 2025
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米ウェスチングハウス(WE)社はこのほど、カナダのウラン供給大手カメコ社および資産運用会社ブルックフィールド社とともに、米商務省と原子力発電所の新設を推進する戦略的提携を結んだ。米政府の支援を受け、国内で複数の原子炉建設計画を進める方針で、総投資額は少なくとも800億ドル(約12兆円)に上る見通しだ。WE社は今年7月、トランプ大統領に対し、大型炉AP1000(PWR、125万kWe)10基の米国で建設する計画を報告。2030年までの着工を目指している。今回の提携により、米政府は資金調達や許認可支援を行う。投資スキームには、米政府が「参加持分」と呼ばれる権利を保有し、利益が175億ドルを超えた場合、その20%を受け取る仕組みを盛り込む。H.ラトニック米商務省長官は、「このパートナーシップは、トランプ大統領が掲げる“原子力ルネッサンス”を具体化するものだ」と強調。トランプ政権は2050年までに米国の原子力発電設備容量を現在の4倍に拡大する目標を掲げており、今回の協定はその中核に位置付けられる。資金面では、日本の政府系金融機関による対米投融資も活用される見通し。10月28日に日米両政府が発表した「日米間の投資に関する共同ファクトシート」では、5,500億ドル(約84兆円)規模の対米投資枠が設けられ、エネルギーやAIインフラ関連プロジェクトの支援が想定されている。日本の国際協力銀行(JBIC)などが、米国側が承認したプロジェクトに対し出資や融資保証を行う仕組みで、現在21件の案件が候補に挙がっている。
29 Oct 2025
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ウクライナ・エネルギー省のA. ネクラーソフ第一次官は10月9日、ウクライナ最高会議におけるエネルギー・住宅・公共サービス委員会で、小型モジュール炉(SMR)の導入は、ウクライナのエネルギー安全保障を強化し、脱炭素電源に移行するための有望策であると発言。SMR導入の行動計画(ロードマップ)を策定するため、幅広い利害関係者を含む省庁間の作業部会を設立したことを明らかにした。なお、同委員会は同日、ウクライナにおけるSMR導入の原則に関する一部法律の改正法案を議会に提出しており、同第一次官は、法案の条項の策定に積極的に貢献する意向を表明した。エネルギー省主導による同作業部会では、ウクライナ初のSMRプロジェクトを実施するための制度的および技術的枠組みの確立を目的に、包括的なロードマップを策定。以下の側面から詳細な分析を実施するという。国際標準なベストプラクティス潜在的なリスクSMR設置の候補地エンジニアリング、社会、産業インフラ人的資源と科学的潜在力財務能力と投資手段なお、エネルギー・住宅・公共サービス委員会による法案は、民間投資を誘致し、設計と建設の手続きを合理化するための法的枠組みの確立を目指すもの。ネクラーソフ第一次官は、14日に開催された省庁間作業部会において「ロードマップの策定は、最高会議で現在検討されている法案と調整されている。ロードマップと併せて、2050年までのウクライナのエネルギー戦略を実行するための実用的なツールとなる」と述べた。エネルギー省は、SMRは有望であるが比較的新しい技術であり、世界的には研究と実証段階のものが多く、実用化に着手している国はわずかであると指摘。SMRの導入には、経済的実行可能性、技術的能力、使用済み燃料および放射性廃棄物の管理を慎重に評価しつつ、最高水準の原子力および放射線安全の確保が不可欠であり、広範な科学者および専門家の参加を得ながら取り組んでいく方針を示している。ウクライナは現在、米国務省と協力して、「SMRの責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラムの下で、①フェニックス・プロジェクト(ウクライナのエネルギー部門を石炭火力発電からSMRに移行させ、より広範な脱炭素化およびエネルギー安全保障を支援)、②ヘパイストス・プロジェクト(SMR導入により、ウクライナの鉄鋼産業を近代化し、排出量の削減、エネルギー効率を向上)の2つのプロジェクトを実施している。
29 Oct 2025
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英国に本拠を置くウラン濃縮大手、ウレンコ社(Urenco)は10月20日、オランダ・アルメロのウラン濃縮工場において新たな能力拡張計画を発表した。今回の計画は、2023年12月に発表された第1段階(約75万SWU/年の増強)に続くもので、同規模となる約75万SWU/年の能力をさらに追加し、2030年の運転開始を目指す。両段階を合わせると、合計で約150万SWU/年の増強となり、同社にとって最大規模の拡張となる見込みだ。アルメロ工場では現在「SP4」と「SP5」の2つの濃縮プラントが稼働している。このうち生産能力の約8割以上を担うSP5は2000年に開設され、2012年まで段階的に拡張された。現在7棟が稼働しており、2024年からは8棟目の建設が進む。今回の拡張では、これと同規模を新設し、生産能力のさらなる向上を図る。ウレンコ・アルメロのマネージングディレクター、A.ルーター氏は「このプロジェクトは当社にとって最大規模の能力拡張であり、燃料供給の安定化と地域の雇用創出の両立を図るものだ」と述べ、将来的な追加拡張の可能性にも言及した。ウレンコはアルメロに加え、独グローナウおよび米ニューメキシコ州ユーニスの各拠点でも能力拡張を進めている。ユーニス工場は北米で唯一の商業規模のウラン濃縮施設として2010年に操業を開始。2025年5月には増設した新型遠心分離機カスケードの運転を開始し、濃縮ウランの生産を拡大している。これらを合わせ、ウレンコは世界全体で約250万SWU規模の新たな濃縮能力の確保を目指している。関連して、9月30日にはウレンコUSAが、ユーニス工場でU-235濃度最大10%以下のウランを生産する認可を米原子力規制委員会(NRC)から取得した。これにより、米国で初めて商業用の低濃縮ウランプラス(LEU+)を生産可能な施設となった。LEU+の生産は年内に開始され、初回納入は2026年を予定。LEU+は、小型炉向けの先進燃料HALEU(濃縮度5~20%)の原料としても活用できることから、将来的なHALEUの生産への布石となる。一連の拡張の背景にはロシア製原子燃料への依存低減やエネルギー安全保障の強化、脱炭素化に伴う原子力の再評価などがある。欧州委員会(EC)は2022年3月、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア産化石燃料からの脱却を目指す「REPowerEU」計画を発表。2025年5月には新たなロードマップを策定し、ロシア産ウランや濃縮ウランなどの新規契約締結を制限した。欧州や北米では安定かつ多様な原料供給体制の確立が急務となっており、ウレンコがその中核的役割を果たしつつある。
28 Oct 2025
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米国のホルテック・インターナショナル社は10月10日、エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)とのサイト購入契約を相互の合意により解約したことを明らかにした。ホルテック社はニューメキシコ州のELEA所有サイトで、使用済み燃料の中間貯蔵施設「HI-STORE CISF」の立地を計画していたが、今後は他の自治体との交渉が可能になる。ELEAとのサイト購入契約では、他自治体との協力が禁止されていた。ホルテック社は、ニューメキシコ州南東部のエディ郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社であるELEAと2015年に協力覚書を締結。ELEAが州の南東部、リー郡内に共同保有するサイトで、ホルテック社製の「HI-STORM UMAX」((地下部分に使用済み燃料を安全に乾式貯蔵するためのシステム))を備えたCISFを建設・操業することを目的に、2017年3月に同施設の建設・操業許可申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出。NRCは2023年5月に許可を発給した。同サイトから約19kmの場所には軍事利用で発生した超ウラン元素の高レベル・長半減期放射性廃棄物を処分する米国初の地層処分施設「放射性廃棄物隔離試験施設(WIPP)」がある。HI-STORE CISFでは、その建設から廃止措置に至るまで全20段階の工程が設定されている。その第1段階として、ホルテック社は合計8,680トンの使用済燃料を封入したキャニスター500台を発電所から輸送して同施設で受け入れ、最終処分場が完成するまで貯蔵するため、40年間有効な許可を取得。残りの19段階で最大1万台のキャニスターを暫定貯蔵する計画だった。その一方で、ニューメキシコ州のM. グリシャム知事(2019年~、民主党)は同施設の建設・操業に反対し、2023年3月、恒久的な処分場が存在しない限り、州による承認のない貯蔵・処分施設の建設を禁止する州法案に署名。さらにHI-STORE CISF建設に対する反対派からの訴えにより、米国第5巡回区控訴裁判所は2024年3月、NRCに対し、ホルテック社のHI-STORE CISFに対する許可を取り消すよう指示した。ホルテック社は、控訴裁の決定は使用済み燃料貯蔵施設の認可と規制に対するNRCの権限を含む、連邦法と明らかに矛盾しているとし、NRCおよび連邦政府と共同で米最高裁判所に対し、2024年3月の控訴裁の判決を覆し、HI-STORE CISFに対する許可を回復するよう求める請願書を提出していた。今年6月には最高裁において、Interim Storage Partners(ISP)がテキサス州アンドリュース郡で計画するCISF建設・操業に反対するテキサス州の主張が却下されたため、ホルテック社は、ニューメキシコ州においてもHI-STORE CISFの建設および操業許可の回復に期待を表明していた。
27 Oct 2025
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英国発の先進炉開発企業ニュークレオ社(Newcleo)と、米国の先進炉・燃料サイクル開発企業オクロ社(Oklo)は10月17日、米国内での先進燃料製造・供給インフラ開発に関する共同契約を締結し最大20億ドル(約3,000億円)規模を投資する計画を発表した。スウェーデンの先進原子力技術企業ブリカラ社(Blykalla)も、今後の参画を検討している。欧米が連携することで西側主導の燃料サイクル確立を目指す動きと言えるだろう。ニュークレオ社は2033年までに小型の鉛冷却高速炉(LFR、電気出力20万kWe)の商業化を目指しており、フランスでMOX燃料製造工場の建設計画も進めている。今回の提携では、米国における燃料製造施設への共同投資や立地検討、余剰プルトニウムの米国安全基準に基づく再利用の取り組みなどが盛り込まれる見通しだ。オクロ社の共同創業者兼CEO、J.デウィット氏は、「余剰プルトニウムを再利用することは、過去の負債を解消しつつ、豊富な燃料源を確保する最良の方法」と期待を寄せた。オクロ社は2025年9月、米エネルギー省(DOE)の先進燃料製造AFFプログラムに採択され、DOEの支援を受け燃料製造施設の建設を進めている。今回の提携の背景には世界のウラン濃縮能力の約44%をロシア企業が占め、特に先進炉向け燃料加工分野でロシアが市場を独占している現状がある。こうした状況に対応するため、2025年5月、トランプ政権は原子力産業の活性化を目的とした大統領令に署名し、燃料供給拡大や余剰プルトニウム処理方法の見直しを柱とした政策を打ち出した。ニュークレオ社とオクロ社は政策の後押しも受けながら、自前の燃料供給網を整備してエネルギー安全保障強化を図っている。
24 Oct 2025
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スウェーデン政府は10月9日、より多くの沿岸地域と群島で新規原子力発電所の建設を可能にするため、特定の沿岸地域と群島で原子力施設の建設を禁止している規定の撤廃に向けて環境法の改正を提案した。現在、この法改正に関してパブリック・コンサルテーション(意見公募)が進行中である。政府は、国内の電力システムを強化し、カーボンフリー電力を必要な時に必要な場所で供給できるようにするため、同国全沿岸で原子力施設の建設を認めることを提案しており、今回の法改正の提案により、環境法の原子力施設の建設を禁止・制限している規定(第4章第3節および第4節)の撤廃を目指す。法改正は、原子力施設の許認可プロセスそのものを変更するものではなく、沿岸地域の自然・文化遺産の保護は維持しつつ、「自然が比較的手つかずの地域」および「高度に開発された沿岸地域」において新たにサイト適地と判断される場所での原子力施設の建設を可能にするものと強調している。原子炉、研究炉、バックエンド施設など、政府の許認可審査対象となるすべての原子力施設が対象となる。R. ポルモクタリ気候・環境相は、「原子力施設は、適切な条件を備えた場所に建設される必要があるが、現行法では立地の適地となり得る場所を排除している。法改正によって、事業者が沿岸部での原子力施設の建設・投資を検討する新たな機会が生まれる」と期待を表明。N. ウィクマン金融市場担当大臣は、「経済成長と雇用創出、エネルギー移行の実現には、堅牢でカーボンフリーのベースロード電源への投資が不可欠」と強調した。政府は法改正の施行日を2026年7月1日と提案。パブリック・コンサルテーションの意見提出の締め切りは今年12月15日としている。スウェーデンでは、新規建設に向けた事業環境整備が進められているが、原子力発電はリードタイムが長く、原子力の役割が時間の経過とともに政治的に変化し、投資が実施されなくなるリスクを伴う。これに対応するため政府は10月2日、将来の政治的決定により原子力発電の段階的廃止が余儀なくされる場合(いわゆる政治リスク)、国からの補償金をどのように支払うべきかを調査・提案する特別調査官(A. ニルソン氏)を任命した。特別調査官は、補償を受ける対象、補償を受ける権利となる政治的決定、政治的決定によって稼働前に中止されたプロジェクトへの投資に対する補償金の支払い、補償金の計算モデル、補償金の調達方法、必要な法改正案やその他の規制に関する事項などについて調査・提案を行う。中間報告を2026年6月29日までに、最終報告を遅くとも2026年12月1日までに提出することになっている。ブッシュ副首相兼エネルギー・企業・産業担当相は、「原子力発電所の所有者が、政治が新しい原子力発電所の下から敷物を引き抜くことを心配する必要はない。補償制度の確立は、原子力発電への投資拡大につながる可能性がある」と、今回の新規建設への投資を確保するさらなるイニシアチブの決定を評価した。
24 Oct 2025
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