フィリピンのエネルギー省(DOE)のS. ガリン長官は10月3日、マニラで開催されたフィリピン国際原子力サプライチェーンフォーラム(PINSCF)2025において講演し、国内のエネルギーミックスに原子力を組み入れる包括的枠組みに関する省令に、前日に署名したことを明らかにした。この枠組みの下、商業的に開発・運転される同国初となる原子力発電所は、導入される原子力技術に係わらず、ベースロード電源となり、優先的な送電が認められるなど、大統領令に基づく優遇措置と迅速な手続きの対象となる国家重要エネルギープロジェクトに認定されるという。DOEは、原子力発電所への競争力ある投資環境を整備し、先行開発事業者による円滑な電力販売を促進させ、国の長期的なエネルギー安全保障を強化したい考え。省令の公布から90日以内に、DOE職員と財務省、経済計画開発省、政府系ファンドのマハルリカ投資公社、その他関連機関が、政府参加モデルや資金調達オプションを検討。エネルギー規制委員会が、規制資産ベース型モデルまたは類似の資本回収メカニズムを実施する任務を負っているという。さらに送電システムへの原子力発電の円滑な統合を確保するため、送電網整備の作業を優先するとしている。ガリン長官は、「原子力をエネルギーミックスに組み入れる明確なルールを確立することで、投資家、パートナー、関係者に対して、フィリピンがクリーンエネルギー移行の一環として原子力を責任ある戦略的導入の準備が整っているという確信を与える。原子力は信頼性が高く安定したベースロード電源となって再生可能エネルギーを補完し、気候目標を達成しながら、経済成長に必要なエネルギー安全保障を確保するものだ」と述べた。また同長官は、政府による支援政策と投資家の強い関心から、2032年までに国内初の原子力発電所の運転に期待を寄せつつも、その実現は投資家の決定など多くの要因に左右されると言及。さらに地域社会の受け入れが原子力発電所を建設する際の主要な要件の一つであると強調した。PINSCF 2025には、米国、韓国、カナダ、UAE、アルゼンチン、フランス、フィンランド、ハンガリー、フィリピンの政策立案者、原子力技術部門や規制当局の専門家が参加し、フィリピンのエネルギー転換を支える戦略的かつ適応性のあるサプライチェーン構築に焦点を当て、議論された。昨年11月に開催された第1回フォーラムでは、国際的に活躍する原子力専門家、政策立案者、エネルギー関係者、外交官らが出席。原子力産業における最新の動向、ベストプラクティス、安全とセキュリティ、および資金調達メカニズムなどについて協議されている。フィリピンでは2022年2月、大統領令により原子力をエネルギーミックスに加えるという方針が確定し、昨年には原子力ロードマップが発表された。2032年までに同国初の原子力発電所の稼働を目指し、少なくとも出力120万kWeをエネルギーミックスに組み入れ、2035年までに240万kWeに倍増、2050年までに480万kWeまで増強する方針である。今年9月には、国家原子力安全法を制定。原子力の平和利用を規定し、原子力安全および放射線活動を監督する、独立した原子力規制機関(PhilATOM)の設立を定めており、原子力の導入にむけた諸準備が本格化している。なお同国では、1985年に東南アジア初の原子力発電所となるバターン原子力発電所(=BNPP、米ウェスチングハウス社製PWR、62万kWe)がほぼ完成したが、1986年に発足したアキノ政権は、同年のチョルノービリ原子力発電所事故の発生を受け、安全性及び経済性を疑問視し、運転認可の発給を見送った。その後、急速なエネルギー需要が国産エネルギーの開発や輸入エネルギーの増加でも賄えない場合に備え、1995年から原子力発電の導入について検討が始まったが、2011年3月の福島第一原子力発電所事故により、再度原子力発電開発を断念した。現在、韓国水力・原子力の支援を受け、BNPP稼働に係わる包括的な実行可能性調査を実施中である。
22 Oct 2025
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ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は10月8日、仏電力大手フランス電力(EDF)グループ傘下の2社と、チェルナボーダ原子力発電所(CANDU6、70万kW級×2基)の運転期間延長ならびに医療用ラジオアイソトープ(RI)製造にかかる協力協定を締結した。SNNの発表によると、原子力発電所向けの蒸気タービン事業を手掛けるアラベル・ソリューションズ社とはチェルナボーダ1号機の改修・運転延長プロジェクトで協力し、燃料製造大手フラマトム社とは医療用RIの製造で協力する。SNNは、同1号機(1996年運転開始)の運転期間を30年間延長する改修工事を計画しており、2027年に運転を停止。2029年の再稼働を目指して、現在は、設計や資金調達、インフラ整備などを進めている。アラベル社はこれまでも1、 2号機の保守や部品改修を手掛けており、長年の協力関係をさらに発展させる形で協力関係を結ぶ。改修作業は工学研究から製造、既存システムの解体、新設備の設置、長期的な保守作業まで多岐にわたる。1号機の改修が完了し運転再開すれば、年間約50億kWhの発電が可能となり、年間約500万トンのCO₂排出削減に寄与する見通し。一方、フラマトム社とは、同発電所での医療用RIの一つであるルテチウム177の製造の協力体制を構築する。ルテチウム177はがん治療に不可欠なRIで、欧州では年間約1,500万件の治療で使用されている。医療用RIの提供はSNNの長期戦略の一環。2024年にはフラマトム社と覚書(MOU)を締結しており、今回の契約は2028年のサービス開始に向けた実施段階への移行を意味する。なお、SNNは2024年にもカナダ、イタリア、韓国の企業と1号機改修のための協力契約を締結するなど、国際協力を強化している。今回のフラマトム社との協力が実施段階に入ったことで、1号機の改修プロジェクトの進行とともに、エネルギー供給にとどまらない原子力利用の拡大の動きが本格化している。
22 Oct 2025
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ウズベキスタン東部のジザク州ファリシュ地区において10月9日、ロシア製SMR建設プロジェクトの初号機の原子炉建屋の基礎掘削工事が開始された。同サイトでは2基のSMRに加えて、大型炉2基を建設する。ウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)のA. アフメドハジャエフ長官とロシア国営原子力企業ロスアトムのA. リハチョフ総裁が、オンラインで掘削工事開始の式典に参加した。建設されるロシア製SMRはRITM-200N。舶用炉を陸上用に改良したPWRで、熱出力19万kW、電気出力5.5万kW。設計運転年数は60年。ロシア製SMRの海外輸出プロジェクトは、これが初めて。ロシア国内では、サハ共和国北部のウスチ・クイガ村で建設プロジェクトが進行中である。ジザク・サイトでの建設作業では、広範囲に地元企業が参画している。掘削工事では、150万㎥の土砂が掘削され、掘削深度は13mに達するという。並行して、エンジニアリング調査や設計、準備作業が進行中。今年末までにSMRの設計文書が作成され、2026年3月には初号機の初コンクリート打設を予定している。同プロジェクトは段階的に実施され、SMRに続いて大型炉の稼働を計画しており、今後、大型炉の設計作業にも取り掛かる予定である。当初、ジザク州には2024年5月の建設契約に基づき、RITM-200N×6基の建設を予定していたが、9月26日、モスクワで開催されたロスアトム主催の国際フォーラム「世界原子力ウィーク」(WNW)において、RITM-200N×2基ならびに大型炉VVER-1000×2基を建設する原子力発電所プロジェクトとし、同プロジェクトへの燃料供給も含めて合意された。近代的な低出力の先進炉と実績ある高出力の原子炉の両方が同じサイトで稼働することになる。
21 Oct 2025
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米エネルギー省(DOE)は9月30日、先進燃料製造ラインを構築する新たなパイロットプログラムの対象として、4社を選定した。原子燃料の国内サプライチェーン強化に向けたトランプ政権の取組みを、さらに一歩前進させた。今回の選定により、米国の国家安全保障を強化し、海外の濃縮ウラン資源への依存を低減させ、2026年7月4日(独立記念日)までに少なくとも3基の先進試験炉を臨界状態にすることを目指すDOEによる原子炉パイロットプログラムを支援する。選定されたのは、以下の4社。Oklo(カリフォルニア州サンタクララ): オーロラ(Aurola)炉とプルート(Pluto)炉、および場合によってはその他の高速炉を支援するための3つの燃料製造施設の建設と運営。Terrestrial Energy(ノースカロライナ州シャーロット): 段階的アプローチで熔融塩製造プロセスを実証するTerrestrial Energy燃料ラインの開発。TRISO-X(テネシー州オークリッジ): 商業用TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料製造施設TX-1を支援する燃料製造実験施設の建設と運営。Valar Atomics(カリフォルニア州ホーソーン): Ward 250炉およびその他の高温ガス炉のためのTRISO燃料製造を支援。今回の措置は、DOEによる先進試験炉向けの燃料製造ラインのパイロットプログラム下において2度目となる条件付き選定となる。DOEは今年8月、テネシー州オークリッジに拠点のある、Standard Nuclearを先行して選定済み。同社は独自の原子炉開発事業を持たない国内唯一の独立系TRISO燃料製造事業者で、製造施設をテネシー州ならびにアイダホ州に建設、運営する計画である。上記5社は、DOEによる原子炉パイロットプログラムの参加対象として初回に選定された11種の原子炉の研究、開発、実証に向けて、DOEの認可プロセスを活用して、確実に燃料を供給していく方針だ。なお今回の選定企業のうち、Oklo、Terrestrial Energy、Valar Atomicsの3社は、今年8月にDOEの原子炉パイロットプログラムの対象として選定された10社に含まれている。今回の選定により、設計のテストに必要となる高度な燃料の供給力が拡大し、実証から配備への移行が加速することが期待されている。選定企業は、燃料製造施設の建設、運転、廃止措置に関連するすべてのコストを負担し、核物質の原材料を調達する。またDOEのHALEU利用可能プログラムを通じて、HALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)の割り当ての申請が可能。これらのパイロット事業は、民間投資の呼び込みと、商業化に向けた規制認可の迅速化を後押しすると見込まれている。DOEのJ. ダンリー副長官は、「国内の燃料供給体制を確実に立て直し、先進炉の設計段階から建設・運転へと迅速に移行できるようにする。先進炉向けの燃料製造能力は、原子力分野での米国のリーダーシップを維持し、信頼性の高い電力需要に応えるために不可欠だ」と述べた。
21 Oct 2025
368
OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は9月18日、石炭火力発電所から小型モジュール炉(SMR)へ移行する可能性について、市場規模や導入課題、政府と産業界の役割などを分析した報告書「SMRs for Replacing Coal―― Opportunities and Challenges for Small Modular Reactors」を公表した。報告書は、老朽化や脱炭素化の進展に伴い石炭火力が段階的に廃止されるなか、SMRが石炭火力発電所のインフラや立地許可など、既存の許認可を可能な範囲で活用できる有力な代替手段になり得ると指摘。ベースロード電源として系統インフラや労働力を維持しつつ、今後数十年にわたり、手頃な価格でクリーンかつ信頼性の高い電力供給を支えることができるとしている。まず、対象市場や実現可能性について、報告書は、石炭火力から原子力への移行可能性は地域によって異なると分析。最大の要因は石炭火力発電所の老朽化で、さらに政府の政策方針や既存の原子力インフラ、石炭火力の段階的廃止計画も導入を左右する要素とした。なかでも北米、特に米国は老朽化した石炭火力が多く、原子力の経験も豊富なことから、SMR導入の先行地域として位置付けられた。欧州もまた、石炭火力から原子力への代替によって大きな恩恵を受ける地域と分析されている。NEAによると、世界の石炭火力発電設備容量(約22億kWe)のうち、2035年までにSMRによるリプレースが見込まれる潜在市場は1億4,300万kWe に達し、主に米国を中心に市場が形成される見通し。さらに2040年には潜在市場が3億8,100万kWeへと拡大し、欧州やアジアでも移行が本格化するとみられる。報告書は、2050年までに世界全体で4億5,000万kWeの石炭火力が原子力へ移行する可能性が高いと結論づけた。なおアジアでは、インドネシアや日本、韓国、フィリピンが潜在市場として挙げられている。また、報告書は電力会社や大規模ユーザーなど専門家への調査やインタビューも実施。その結果、多くが石炭火力から原子力への移行に関心を示す一方で、「ファーストムーバー(先駆者)」として初めて建設に取り組むことには慎重な姿勢を見せた。初号機建設のリスクや、他社の実績を見極めてから導入する姿勢が背景にあり、こうした状況をふまえ回答者は、リスク軽減やリプレースの加速・実証において、政府が重要な役割を果たすべきと強調している。そのうえで報告書は、石炭火力から原子力への持続可能な移行には、原子力の開発・導入を後押しする効果的な政策枠組みと強力な国内政策が不可欠と強調。具体的には、明確な脱炭素方針や直接的な財政インセンティブ、合理化された規制プロセスを通じて、原子力導入が促進できるとした。さらに、官民パートナーシップにより、初期の原子力プロジェクトに伴うリスクを共有し、石炭火力がもたらしてきた地域経済への貢献を維持するための財政支援を提供し、移行を支援することも可能としたほか、職業訓練や地域経済支援の政策は、石炭火力依存地域の「公正な移行」を後押しするものと指摘している。
20 Oct 2025
679
英国で建設が進むサイズウェルC(SZC)原子力発電所プロジェクト(欧州加圧水型炉EPR-1750×2基、各172万kWe)を手掛けるサイズウェルC(SZC)社は10月12日、ウラン濃縮を手がける英ウレンコ社および仏の燃料製造大手フラマトム社と、長期燃料供給契約を締結したと発表した。運転開始に備え、燃料の安定調達に向けた重要な一歩となった。ウレンコ社とのウラン濃縮サービス契約は、原子炉2基の運転開始から6年間を対象としており、運転初期段階の燃料供給を担う。英国北西部チェスター近郊カーペンハーストにあるウレンコ社の濃縮施設では現在約1,000人の熟練技術者が働いており、今回の契約が地域の雇用維持にもつながると見込まれている。一方フラマトム社との契約は、発電所の運転開始時に必要な燃料とその後の定期的な燃料交換に使う分までを長期的に製造・供給する内容となっている。またフラマトム社は2023年11月、SZCを含む英国の原子力発電所向けに燃料を供給する計画の一環として、英国内での原子燃料製造施設の建設計画を発表している。燃料は当初、仏・ロマンの工場で製造されるが、英国の新施設が稼働すれば、将来的に国内生産に切り替わる見通しだ。SZCの共同マネージングディレクターであるJ. パイク氏は、今回の契約が「英国のエネルギー安全保障と原子力サプライチェーンを強化する重要な節目」と強調した。SZC発電所は、稼働後に最大600万世帯分の電力を60年以上にわたり供給できる見込みで、英国の電力システム全体で年間平均20億ポンド(約4,000億円)のコストが節約できると期待されている。建設のピーク時には約1万人の直接雇用を生み出し、サプライチェーンを含めると数万人規模の雇用創出が期待される。
20 Oct 2025
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米国の投資銀行JPモルガン・チェースは、10月13日、米国の国家安全保障および経済のレジリエンス(回復力・弾力性)を強化するため、今後10年間で総額1.5兆ドル(約225兆円)規模の資金支援と投融資を実行する計画を発表した。この計画には、自社資金による最大100億ドル(約1.5兆円)の直接投資も含まれており、対象には原子力分野も含まれることが明らかになった。同社のJ.ダイモン会長兼CEOは、「米国は国家安全保障に不可欠な鉱物や製品、製造能力を信頼性の低い供給源に過度に依存してしまっていることが明らかになった」と述べ、米国の安全保障と経済のレジリエンスを確保するためには、より迅速な行動と積極的な投資が不可欠であると強調している。計画では、以下の4分野を重点課題として掲げており、これらに対して助言、資金提供、時には投資を通じて支援を行うとしている。サプライチェーンと先進製造業:鉱物・製造部材、医療原料、ロボティクス等防衛・宇宙産業:防衛技術、自律システム、ドローン、次世代通信、セキュア通信等エネルギー自立とレジリエンス:送電網強化、分散型エネルギー、蓄電池、再生可能エネルギー等先端・戦略技術:AI(人工知能)、サイバーセキュリティ、量子コンピューティング等このうち「エネルギー自立とレジリエンス」分野では、送電網のレジリエンス強化のほか、分散型エネルギー、太陽光発電、蓄電池もサブ領域として明記されている。またダイモン氏は、AIの進展に伴う電力需要の急増に対応するため、半導体やデータセンターを支える強固なエネルギーシステムの構築が不可欠であると指摘した。これらの取り組みを推進するため、同社は今後、銀行や投資部門の人員を拡充するとともに、官民の有識者による外部諮問委員会を設置し、専門知識を結集して支援体制を強化する方針だ。
20 Oct 2025
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米X-エナジー社傘下のX-エナジー・カナダ社は9月25日、加アルバータ州にあるTransAlta社の火力発電所のサイトにX-エナジー社が開発する小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」を導入する実現可能性を確認できたことを明らかにした。これにより、さらなる計画策定および規制当局との協議の基盤が築かれたとしている。実現可能性調査は、アルバータ州政府のTIER(Technology Innovation and Emissions Reduction)基金を原資に、州政府系機関ERA(Emissions Reduction Alberta)から助成を受け、カナダを拠点とする電力事業者のTransAlta社、エネルギー・エンジニアリング会社のHatch社、建設会社のPCL社、原子力サービス会社のKinectrics社と共同で実施した。調査の結果、アルバータ州特有のエネルギーおよび産業構造とXe-100の特性との間に高い親和性があることが確認され、同州のエネルギー経済と長期的な競争力強化に直接貢献できる分野を特定できたという。Xe-100は、出力8万kWeの高温ガス冷却炉。電力供給に加え、565℃の熱および蒸気を安定供給可能で、同州の産業や石油・ガス分野で幅広く応用できる。また、Xe-100では空冷システムの効率的利用により、水使用量が大幅に削減できる見込みで、従来の軽水炉と比較して立地選定の柔軟性を高めるという。燃料には、米エネルギー省から「地球上で最も堅牢な燃料」とされるTRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用。運転時や事故時を含むあらゆる状況での極端な高温にも耐えられるよう設計されており、次世代型の固有安全性を確保する。アルバータ州にはサプライチェーンが確立されており、X-エナジー社の技術の製造および建設を支える体制が整っている。X-エナジー社のB. レインキ上級副社長は、「Xe-100の利点を最大限に活かせる地域である」と指摘している。X-エナジー社は、電力会社、産業顧客、ハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)向けにXe-100を系統連系と同規模のエネルギーソリューションとして推進しており、米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社、大手テック企業のAmazon社や英国のエネルギ―供給会社のセントリカ(Centrica)社とすでに導入や投資、電力購入をめぐって合意している。X-エナジー社の最初の計画としては、ダウ社のテキサス州シードリフト・サイトにXe-100×4基の発電所を建設。北米で初めて産業サイト向けに導入され、クリーンな電力と高温蒸気を供給する。ダウ社とのプロジェクトに続き、Amazon社と2039年までに合計500万kWeの導入を計画しており、その一環としてワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社と協働。同社が運転するコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kWe)の傍に「カスケード先進エネルギー施設」と称するSMRの施設を建設する。その第1フェーズでXe-100を4基(合計32万kWe)設置し、続く第2、第3フェーズと併せて、最大12基(合計出力96万kWe)を設置するオプションを有する。2020年代末までに建設を開始し、2030年代に運転を開始したい考えだ。今年8月にはAmazon社とともに、米国内でのXe-100展開の加速を目的に、韓国水力・原子力(KHNP)および斗山エナビリティ社と協力合意を交わし、翌9月には、英国のセントリカ社とイングランド北東部のハートルプールにXe-100を最大12基建設することで合意している。燃料部門では、自社開発のTRISO-X燃料の製造施設TX-1をテネシー州オークリッジに建設するプロジェクトを進めており、米原子力規制委員会が許認可の審査中である。
17 Oct 2025
519
インド原子力発電公社(NPCIL)は、9月29日、バーラト小型炉(BSR、バーラトはヒンディ語で「インド」の意)の建設に向けた民間企業からの提案依頼書の提出期限を、2026年3月31日まで延長すると発表した。より多くの企業からの参加を促すことが狙い。この募集は2024年12月から始まり、当初の締め切りは2025年3月末だったが、6月末、9月末と延長を重ね、今回で3度目の延期となる。NPCILによると、参加を検討している企業から「建設候補地の評価や設備投資、運転保守管理コストの算定などに時間が必要」との声が寄せられたほか、新たに参入を希望する企業も増えているため、期限を延長したという。これまでに提案書を提出したのは、ヒンダルコ・インダストリーズ、ジンダル・スチール・アンド・パワー、タタ・パワー、リライアンス・インダストリーズ、JSWエナジー、アダニ・パワーの6社。すでにそれぞれが建設候補サイトを選び、16サイトの予備調査報告書を提出している。NPCILは、候補地として挙がったうちのグジャラート州、マディヤ・プラデーシュ州、オリッサ州の3州に対し、現地調査や土地・水資源の確保などで協力を求めている。BSRは出力22万kWの小型加圧重水炉(PHWR)で、自家発電用に設計されている。インド政府は2047年までに原子力発電設備の容量を今の10倍以上に拡大し、2070年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする(ネットゼロ)目標を掲げ、これまで国の独占だった原子力部門の民間参入を進めている。
17 Oct 2025
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スロバキアのR. フィツォ首相は10月7日、欧州委員会(EC)、産業界、エネルギー業界の代表者が参加した第18回原子力エネルギーフォーラム(ENEF)で講演を行い、スロバキアと欧州の将来にとって競争力を維持し、増加するエネルギー需要に対応するために原子力が重要な役割を果たすと強調。また、ボフニチェ原子力発電所に米国製炉を増設することを念頭に、政府が米国との政府間協定本文を承認したことを明らかにした。スロバキアでは、電気自動車、データセンター、バッテリー貯蔵施設の発展に伴い、電力需要が増加。フィツォ首相は、2040年までにエネルギー需要が40~60%増加すると予想される中、新たなエネルギー源とインフラの近代化が必要になるとし、「安定かつ安価で、環境に優しいエネルギー源を望むならば、原子力を維持するだけでなく、さらに発展させなければならない」と語った。そのうえで、ボフニチェ発電所に出力100万kWe以上の原子炉1基の新設に向けて、政府が米国との政府間協定を9月10日に承認したと紹介した。今年8月には欧州委員会(EC)が同政府間協定について承認しており、これに合わせ、同首相は自身のソーシャルメディアで、新設には米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する考えを表明している。なお政府は、2024年5月に同発電所5号機(最大120万kWe)の新設を承認している。今年9月中旬の国際原子力機関(IAEA)総会の会期中、スロバキアのD. サコバ副首相兼経済大臣は、米エネルギー省のC. ライト長官と、エネルギー分野における両国間の協力の可能性について協議。サコバ大臣は会談後、両国間の交渉は進んでおり、協定の署名に徐々に近づいていると明らかにした。新設プロジェクトには、スロバキアの産業界とサプライヤーが参加し、多くの雇用と機会の創出が期待されるという。またフィツォ首相はENEFでの講演の中で、モホフチェ3-4号機のプロジェクトとボフニチェ1-2号機の廃止措置の進捗を紹介。スロバキアの廃止措置会社JAVYS社と先進炉開発企業の英ニュークレオ社との、小型鉛冷却高速炉の開発および使用済み燃料を再利用するための処理プロジェクトについても触れ、「このプロジェクトが成功すれば、スロバキアは原子力分野におけるイノベーションのリーダーとなるだろう」と述べた。一方で同首相はECに対し、エネルギー価格に対処し、欧州産業の競争力を維持するための条件を整えるよう求め、ECのロシア産化石燃料や原子燃料依存からの脱却を推進する政策コミュニケ「REPowerEU」について、「EU加盟国のエネルギー安全保障を脅かす無意味なイデオロギー的措置」と批判した。EUの決定は、政治的な動機ではなく、合理的かつ技術的に実現可能なものでなければならず、経済に悪影響を与えるイデオロギー的な決定をしてはならないと訴え、スロバキアは今後も、エネルギーの安定供給、利用可能性、競争力を確保する主権的で現実的なエネルギー政策を推進していく方針を示した。スロバキアは、エネルギー調達先や輸送ルートの多様化に取組むもののその進展は遅く、ロシアの化石燃料への依存度(特に原油)は今なお高い。スロバキアでは現在、モホフチェ発電所で3基(1~3号機、VVER-440)、ボフニチェ発電所で2基(3~4号機、VVER-440)の計5基が運転中で、同国の電力需要の約6割を賄う。建設中は、モホフチェ4号機(VVER-440)の1基。両発電所の運転者はスロバキア電力で、2024年3月には石炭火力発電所をすべて閉鎖し、原子力発電、水力発電、太陽光発電による脱炭素電源100%を達成している。
16 Oct 2025
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米グローバル・ニュークリア・フューエル(GNF、GEベルノバ社が主導する日立製作所とのアライアンス)は10月6日、次世代の原子炉燃料「GNF4」を発表した。これは、60年にわたる沸騰水型炉(BWR)燃料設計を基盤に開発されたもの。11×11構造の「GNF4」は、これまでの「GNF2」および「GNF3」で培われた運転実績を踏まえ、米原子力規制委員会(NRC)によって認可された2つの先進的な構成要素―「ザイロン(Ziron)製被覆管」と「アルミナシリケート(Aluminosilicate)を添加した二酸化ウランペレット」を備えている。ザイロン製被覆管は、腐食への耐性を高めるために開発され、これまでに世界中で17万5,000体以上のGNF燃料集合体に使用されてきたジルカロイ(Zircaloy)-2被覆管の改良版。アルミナシリケート((アルミニウムとシリコンを含む化合物で耐熱性や化学的安定性に優れる。))を添加した二酸化ウランペレットで、さらに高い信頼性を実現。このほかGNF4では、GNF独自のNSF(Zr-Nb-Sn-Fe合金)チャンネルボックスおよびDefender+異物除去フィルターも採用している。GNF4は、ノースカロライナ州ウィルミントンのGNF製造施設で製造。性能と信頼性の向上により、メガワット時あたりの燃料コストを低減できるよう設計されている。先行使用の燃料集合体は2026年に配備予定で、2030年には全面的に利用可能になる予定であるという。
15 Oct 2025
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インドのN. モディ首相は9月25日、ラジャスタン州のバンスワラで、アヌシャクティ・ヴィデュット・ニガム(Anushakti Vidhyut Nigam Ltd = ASHVINI)社のマヒ・バンスワラ原子力発電所建設プロジェクトの定礎式のほか、太陽光発電、送電プロジェクトなどを含む、総額1兆2210億インドルピー(約2.1兆円)以上のインフラ開発プロジェクトの開始を記念する式典を開催した。ASHVINIは、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)とインド国営火力発電会社(NTPC)による合弁会社(NPCIL: 51%、NTPC: 49%)。両社の財務、技術、プロジェクトの専門知識を統合し、原子力発電所を建設、所有、運転することを目的に設立され、2024年9月に政府が承認。政府はPHWR技術に基づくマヒ・バンスワラ建設プロジェクトの実施権を、NPCILからASHVINIへの移転することも承認した。2025年5月には、原子力規制委員会(AERB)から同発電所のサイト許可が発給されている。ASHVINI社は今後、国内の様々な地域で他の原子力プロジェクトも推進していくとしている。マヒ・バンスワラ発電所建設プロジェクトは、雇用と投資の機会を提供し、ラジャスタン州内の電力不足を緩和し、地域を活性化することを目的としている。同プロジェクトには約4,200億インドルピー(約7,140億円)が投資され、国内最大級の原子力発電所の1つとなる。同発電所は、原子力発電所を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)が設計・開発した70万kWe級加圧重水炉(PHWR)4基で構成。いずれも2031~2032年にかけて稼働させる予定である。サイト面積は約600 ha、マヒ川から冷却水を取水する。ラジャスタン州では、すでにラジャスタン原子力発電所でPHWR×7基(計188万kWe)が運転中で、1基(PHWR、70万kWe)が建設中である。マヒ・バンスワラ建設プロジェクトは、インド全土に70万kWe級PHWRを10基建設する計画の一環。マヒ・バンスワラのほか、カイガ5-6号機(カルナータカ州)、ゴラクプール3-4号機(ハリヤナ州)、チャッカ1-2号機(マディヤ・プラデシュ州)が計画されている。これらシリーズ建設により、コスト効率の向上、迅速な導入、運用ノウハウの習得を目指している。現在のインド国内の原子力発電設備容量は、25基の計888万kWe。総発電電力量に原子力が占める割合はわずか3.3%である。政府は戦略的な政策介入とインフラ投資を実施、特に国産原子力技術の開発・導入と官民連携に重点を置き、2047年までに原子力発電設備容量を1億kWeに拡大、2070年までに排出量ネットゼロの達成を目指している。
15 Oct 2025
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スウェーデンのブリカラ(Blykalla)社、Evroc社、スタズビック(Studsvik)社の3社は10月6日、同国初となる原子力発電を利用したデータセンターの開発を検討するため、覚書(MOU)を締結した。これら3社の技術、インフラ、サイト運営の専門知識を組み合わせ、原子力発電所を併設したデータセンターの導入を目指している。本プロジェクトは、スタズビック社がスウェーデン南部バルト海沿岸ニショーピング(Nyköping)に所有する原子力施設の認可済みサイトを活用して進められる。サイトには原子力に適したインフラがあり、2005年まで研究炉が稼働していた。MOUにより、同サイトにデータセンターと小型モジュール炉(SMR)を併設する商業的・技術的な実現可能性を評価、自治体や土地所有者との協議を行い、将来的な電力購入契約(PPA)の枠組みを定義。共同運営委員会を設立し、サイトおよびビジネスモデルを評価、年内に正式なパートナーシップ交渉に入ることを目標としている。ブリカラ社は、SMRの鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発中。出力拡大が可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)のSMR年次ダッシュボードでは、同社は欧州で最も成熟した先進炉コンセプトを有する企業として評価されている。今年9月には、米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社と共同技術開発、材料、コンポーネント、非原子力サプライチェーンの構築や許認可のベストプラクティスに関する知見を共有し、高度な原子力の商業化を加速するための戦略的パートナーシップを締結。オクロ社は米国のサイトへの展開に重点を置き、最大出力7.5万kWeのナトリウム冷却高速炉のオーロラ発電所を開発中だ。Evroc社は、ヨーロッパのハイパースケールクラウドおよび重要AIインフラ構築を手掛けており、2030年までに欧州各地で10のハイパースケールデータセンターを運営し、数千人規模の雇用を創出することを目指している。スタズビック社は、世界の原子力発電業界向けに、燃料・材料技術、炉解析ソフトウェア、除染および放射線防護、そして放射性廃棄物の処理・減容化などの技術サービスを提供している。AI利用と電化による需要拡大で、原子力発電を活用したデータセンターへの関心が国際的に高まる中、これら3社は、スタズビック社のライセンスサイト、Evroc社のデジタルインフラ、ブリカラ社の先進的SMR技術を活用して、スウェーデンをデジタルインフラ分野の世界的リーダーに押し上げることを目指している。ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOはMOU締結に際し、「3社の連携は、スウェーデンがデジタルインフラ分野のリーダーとなるための大きなチャンス。SMRがAI革命に必要な安定した化石燃料フリーのエネルギーを提供できることを実証できる。スタズビック社のサイトとEvroc社のビジョンは、画期的なプロジェクトを実現するための理想的な条件を備えている」と語った。
14 Oct 2025
613
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9月30日、2024年のウラン市況年次報告書(Uranium Marketing Annual Report)を公表した。報告書によると、米国の民間原子力発電事業者によるウランの調達量と価格はともに上昇傾向にあり、価格は2012年以来の高値を記録した。海外依存は依然として高いが、国内供給の割合がやや回復している。2024年に米国の民間原子力発電事業者が購入したウランは、U₃O₈換算で5,590万ポンド(約2万5000トン)。前年の5,160万ポンド(約2万3000トン)から約8%増加した。平均購入価格は1ポンドあたり52.71ドル(約7,996円)と、前年の43.8ドル(約6,644円)から約20%上昇し、2012年以来の最高水準となった。ウランの最大の調達先はカナダで、全体の36%を占めている。次いでカザフスタン24%、オーストラリアが17%。2024年の総供給量に占める米国産の割合は8%で、前年の5%から増加した。依然として海外依存が高いものの、国内生産の回復傾向が見られる。ウラン燃料の製造過程で必要な濃縮役務については、全体の81%が海外起源だった。このうちロシアが20%を占め、304万SWUを供給。米国内の濃縮量(289万SWU)を上回り、ロシア依存が依然として続いている。2024年、米国の民間原子力発電事業者が結んだ新規ウラン購入契約は21件だった。実際に納入されたウラン量は300万ポンド(約1,361トン)で、加重平均価格は1ポンドあたり86.20ドル(約1万3,000円)に上った。2023年は契約数26件、納入量549万ポンド(約2,490トン)、平均価格61.93ドル(約9,400円)だったことから、価格が上昇傾向にあることがうかがえる。また、報告書では今後10年間に見込まれる潜在的なウラン需要も示されており、2025年から2034年までの最大総需要は約4億1,800万ポンド(約19万トン)に達すると推計している。
14 Oct 2025
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米国の先進原子力エネルギー企業であるナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は10月7日、イリノイ州商務省経済機会局(DCEO)と連携し、米イリノイ州に製造・研究開発施設を新設すると発表した。イリノイ州のクリーンエネルギー政策支援プログラムより680万ドル(約10億円)の支援を受け、総額1,200万ドル(約18億3,000万円)以上を投資する計画だ。同社は7月にシカゴ近郊に約2万3,500平方フィート(約2,200平方メートル)の実証施設とオフィスを取得している。新施設では約50人のフルタイム雇用が新たに創出される見通しで、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)と共同で進める小型モジュール炉「KRONOS MMR」の構築・実証・商業化に向けた拠点として機能する。また、原子力技術者をはじめ部品メーカー、研究者らの人材育成・技術支援にも活用される見込みとなっている。今回のプロジェクトは、イリノイ州が推進する「REVイリノイ法(Reimagining Energy and Vehicles in Illinois)」プログラムの一環。ナノ・ニュークリア・エナジー社は対象企業に選定されており、制度を通じて680万ドル(約10億円)の奨励金を受ける見込みとなっている。なお、REVイリノイ法は、電気自動車や再生可能エネルギーなど次世代クリーンエネルギー産業のサプライチェーン強化を目的としている。同社のジェームズ・ウォーカーCEOは、「本施設を活用して全米から優秀な人材を惹きつけ、目標達成に向けて全力を尽くしていきたい」とコメントした。また、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事は、「イリノイ州はクリーンエネルギー生産への投資企業にとって最適な州である。この重要な投資は、州民に新たな雇用を創出し、クリーンエネルギー産業における革新的な進歩を促進するだろう」と述べ、歓迎の意を示した。
10 Oct 2025
734
カザフスタン原子力庁(KAEA)のA. サトカリエフ長官は10月1日、アルマティ州の2サイトで原子力発電所の建設が計画されていることを明らかにした。同長官によると、原子力産業の発展に関する省庁間委員会において、2番目の建設候補サイトが特定され、第1発電所と同じく、アルマティ州のジャンブール地区に決定されたという。同国南部に2サイトを設置し、電力不足に対応する方針。現在は国際南北連系線を介して同地域に電力が送電されているが、これにより、エネルギー供給の信頼性と安定性が生まれる、と記者会見で述べた。長官は、競争に参加するすべてのベンダー候補者との交渉が現在進行中であると述べる一方で、「最終決定ではないが、提出された提案に基づいて、我々は中国核工業集団公司(CNNC)を優先契約者と考えている」と語った。ロシアの国営原子力企業ロスアトムが建設プロジェクトを進める、同地区の第1発電所サイトでは今年8月、エンジニアリング調査が開始されている。K.-J. トカーエフ大統領は今年3月の国民会議における演説で3サイトでの原子力発電所の建設について言及。先のベンダー選定作業における潜在的な候補には、露ロスアトム、CNNC、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力(KHNP)が含まれており、KAEAはロスアトムの提案の採用に次いで、CNNCの提案を2番手とした。サトカリエフ長官は、「中国は間違いなく必要な技術をすべて備えており、完全な産業基盤を持っているため、次の優先事項は中国との協力だ」と述べ、中国側との交渉が行われることを強調。カザフスタンのR. スクリャル第一副首相は今年7月末の合同記者会見で、第2および第3発電所のサイト候補を評価中であり、今年後半にも評価結果が明らかになるとし、CNNCが第2発電所に続き、第3発電所も建設するだろうと述べている。
10 Oct 2025
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米国の新興企業ディープ・フィッション(Deep Fission)社は9月18日、自社が開発する小型モジュール炉(SMR)を地下1マイル(約1.6km)、幅30インチ(約76cm)のボーリング孔に設置する最初の3サイトとして、テキサス州、ユタ州、カンザス州を選定。共同開発プロジェクトを推進するために各拠点のパートナーと基本合意書(LOI)を締結したことを明らかにした。ディープ・フィッション社の開発する原子炉「DFBR-1」(PWR、1.5万kWe)は、原子力、石油・ガス、地熱分野での実証をベースに設計。発生した熱は地下深部にある蒸気発生器に伝わり水を沸騰させ、非放射性の蒸気が急速に地表に上昇、そこで標準的な蒸気タービンを回して発電する。検査が必要と判断された場合、原子炉に取り付けられたケーブルにより、原子炉を地表に持ち上げることが可能。モジュール設計により、出力を最大150万kWeまで拡張可能で、産業現場、データセンター、遠隔送電網、成長する商業ハブ全体を対象に柔軟に展開できるという。また既製部品と低濃縮ウラン(LEU)を利用し、サプライチェーンの合理化を追及。原子炉は地下1マイルに設置され、地下深部の地質が自然封じ込めの役目を果たす、革新的な立地アプローチにより、安全性とセキュリティを強化、地表フットプリントを最小限に抑え、コストの削減をねらう。同社のコストモデルでは、オーバーナイトコスト(金利負担を含まない建設費)の比較で、従来の原子力技術の70~80%減となり、発電コスト(LCOE)はkWhあたり5~7セントと見込んでいる。2026年にはライセンスを申請予定。2028年には取得し、想定6か月の建設期間を経て、2029年秋には営業運転の開始を予定している。ディープ・フィッション社は今年8月、米エネルギー省(DOE)の先進炉の実用化に向けた「原子炉パイロットプログラム」の対象に選定され、DFBR-1の2026年7月4日(独立記念日)までの臨界達成を目指している。なお同社は、現CEOのエリザベス・ミュラー氏とリチャード・ミュラー氏の父娘が共同で2023年に設立。E. ミュラーCEOは以前、深部ボアホール放射性廃棄物処理事業を手掛けるディープ・アイソレーション(Deep Isolation)社の共同創設者兼元CEOを務めていた。ディープ・フィッション社はディープ・アイソレーション社と今年4月、先進的な地下原子炉の使用済み燃料と放射性廃棄物の管理で協力するための覚書(MOU)を締結。ディープ・アイソレーション社が特許取得済みの地下処分技術の使用許諾などについて検討する。両社は、ディープ・アイソレーション社の革新的な深部ボアホール処分技術をディープ・フィッション社の最先端の原子炉技術と統合し、顧客に長期的に実用的かつ拡張性のある廃棄物ソリューションを提供したい考え。ミュラーCEOは、「深地層処分は世界的に好まれるアプローチで、海外諸国は地下処分場の計画を進めているが、米国はこの方向でさらなる進展を図る」と指摘。ディープ・アイソレーション社のR. バルツァーCEOは、「新たな原子力技術が登場する中、廃棄物処理に対する先見的なアプローチが不可欠。原子力発電設備容量は2050年までに3億kWe以上増加すると予測されているが、過去70年間に発生した使用済み燃料を未だ永久処分していない。信頼性が高く恒久的な放射性廃棄物の処分方法の確立は、業界の長期的な成功に必要」と強調し、放射性廃棄物を地下深くに安全かつ永久に処分する深部ボアホール技術がソリューションとなるとの考えを示した。
10 Oct 2025
642
米GEベルノバと日立製作所の共同出資会社である米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)と、韓国の建設大手サムスンC&T社(サムスン物産)は10月7日、北米を除くグローバル市場での「BWRX-300」(BWR、出力30万kWe)の導入推進に向けた戦略的提携を発表した。GVHによると、両社は小型モジュール炉(SMR)であるBWRX-300のサプライチェーンの構築や、プロジェクト実施に向けたソリューションなどの共同開発に取り組む。GVHは今年4月、カナダ・オンタリオ州のダーリントン原子力発電所でBWRX-300初号機についてカナダ原子力安全委員会(CNSC)から建設許可を取得しており、2030年末までの運転開始を目指している。一方、サムスンC&T社も今年4月、エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社とSMR導入で提携し、同国でのSMR2基の配備に協力するなど、欧州での小型原子炉導入事業を加速させている。GVHの電力部門CEO、M.ジンゴーニ氏は、「当社はカナダでBWRX-300の初号機を建設中であり、SMR産業の展開と規模拡大をリードする立場にある」と述べた。サムスンC&T社の原子力分野とインフラ建設プロジェクトにおける豊富なプロジェクト実施経験を活かし、両社はSMR産業分野での世界的な地位確立を目指すという。両社はスウェーデンで計画されている5基のBWRX-300導入計画についても協力することになっている。
09 Oct 2025
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米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は9月25日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)の大規模拡張計画を明らかにした。低濃縮ウラン(LEU)ならびに高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の生産を増強し、濃縮分野での米国のリーダーシップを取り戻す考えだ。拡張計画には、連邦政府からの資金提供を含めて数十億ドル規模の官民投資が必要。同社は最近、既存炉向けのLEUならびに次世代炉向けHALEUの国内生産拡大に向けた米エネルギー省(DOE)の資金提供対象の選定プロセスに提案書を提出した。連邦政府による資金提供の決定を条件に、ACPに数千台の遠心分離機を追加導入する計画だ。この拡張を見据え、セントラス社は過去12か月間に2回の転換社債取引で10億ドル以上を調達し、国内外の電力会社顧客から20億ドル以上の条件付き購入契約を締結している。この他、韓国の韓国水力・原子力ならびにPOSCOインターナショナル社による投資協力の可能性も示した。またセントラス社は、官民パートナーシップを見越して、連邦政府による選定に先立ち、採用活動を開始。建設段階で1,000人の雇用と操業段階で300人の新規雇用の創出を見込んでいる。さらに、同社がテネシー州オークリッジに有する遠心分離機製造工場における数百の雇用に加え、全米の製造サプライチェーン全体で数千の間接雇用を生み出すと予想されている。同社のA. ベクスラーCEOは、「米国がウランを大規模に濃縮する能力を回復する時が来た。今まさにその目的のため、オハイオ州で数十億ドル規模の歴史的投資を計画している。外国の国有企業への依存をやめ、米国人労働者によって構築された米国技術への投資が始まる」と強調した。オハイオ州のM. デウィン知事は、「パイクトンの施設の拡張・更新への取組みは、米国経済と国家安全保障を支える、オハイオ州の重要性を強調している。パイクトンにおけるウラン濃縮事業は冷戦初期から国防に重要な役割を果たしてきた。セントラス社の施設は、産業規模での国内濃縮体制を構築できる、現時点で唯一の技術を提供している」と拡張計画に期待を寄せた。世界の濃縮能力のほぼ100%が外国の国有企業に属しており、それらの企業は海外で独占的に製造された遠心分離技術を使用している。パイクトンの濃縮施設は、国内製造の遠心分離機と関連機器を用いて稼働する唯一の米国施設。セントラス社の遠心分離機は、オークリッジにある敷地約4万㎡の技術製造センターで独占的に製造されており、13州の米企業14社の主要サプライヤーと数十の小規模サプライヤーが製造を支えている。製造された遠心分離機と関連機器は最終組立て、設置のためにパイクトンに送られている。連邦資金拠出の選定先となった場合、その資金は海外製造ではなく国内製造に向けられることになる。
09 Oct 2025
605
仏フラマトム社と伊ENEA(国立新技術・エネルギー・持続可能な経済開発庁)は9月25日、将来の月面居住用の動力源となる原子炉設計の開発にむけて協力覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。過酷な環境条件で動作する能力と耐久性により、特に地球の約15日間にあたる長い月の夜の間に信頼性が高く、持続的なエネルギーを供給し、月面での人類の持続的な居住を可能にする原子炉を両者が協力して開発。特に、効率性と安全性を最適化した燃料に関する研究、宇宙での過酷な環境に耐える新素材の開発、原子炉部品の製造に向けた積層造形(3Dプリンティング)利用の3分野で協力する。両者の専門知識を統合する今回の提携により、さらに競争力のある技術ソリューションの開発が可能となり、月面利用の原子炉の技術的成熟度を高めて、宇宙開発競争における欧州のプレゼンスを拡大したい考え。フラマトム社はこの提携を機に、宇宙関連事業に携わるフラマトム・スペース社を設立した。原子力エネルギーは、特に光が長期間存在しない場合、太陽光などの再生可能エネルギー源の信頼性が低下する宇宙での継続的な供給を保証できる数少ないエネルギー源。宇宙原子炉は、将来、月面での人類の持続的な居住のために必要かつ重要な技術であり、さらに野心的な火星へのミッションへの道を切り開く資産になると期待されている。
08 Oct 2025
670
原子力電池の大手開発会社である米ゼノ・パワー(Zeno power)社は9月24日、仏オラノ社とフランスのノルマンディーにあるオラノ社のラ・アーグ再処理工場から回収された放射性同位体のアメリシウム241(Am-241)の供給を確保し、宇宙用途に使用する戦略的合意を締結したことを明らかにした。この契約に基づき、ゼノ社は数百万ドルを投資し、オラノ社から大量のAm-241を優先的に確保する。Am-241は長寿命同位体であり、ゼノ社は米航空宇宙局(NASA)向けに宇宙用途に開発する放射性同位体電源(Radioisotope Power System=RPS)の燃料として使用される。ゼノ社がNASA向けに開発しているAm-241燃料のRPSは、月面探査車、着陸船、月面のインフラ向けに電力を供給する。ゼノ社によると、歴史的にプルトニウム238(Pu-238)が宇宙用途のRPSに使用されているが、その供給制限や高い製造コストが課題であり、その代替となるAm-241が注目されているという。Am-241は、半減期が430年以上と長く、熱電システムを数十年にわたって持続させることができる宇宙用途の動力として魅力的な燃料源であり、使用済み燃料の再処理から得られる。月の約15日間という長い夜を乗り切り、恒久的に影となる地域で動作して信頼性の高い電力を供給するため、ゼノ社は、NASAが主導する有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」とその先の火星探査に不可欠な機能性を有すると指摘。オラノ社と提携してAm-241の商業サプライチェーンの確立を進める方針である。ゼノ社は2022年からオラノ社と協力し、ラ・アーグ施設でAm-241粉末の工業規模の回収を検討開始。2023年7月には、アルテミス計画の一環として、NASAから1,500万ドルの資金提供を受け、長期の月面ミッションに熱電供給可能なAm-241燃料のスターリング発電機(RSG)の開発を行っている。さらに同社は、米国防総省との契約に基づき、米エネルギー省ならびにオークリッジ国立研究所との連携によりストロンチウム90(Sr-90)を取得し、海洋用途向けの燃料電池を開発する他、ウィスコンシン州に拠点を置く核融合エネルギーのスタートアップ企業であるシャイン・テクノロジーズ社とも提携して、Sr-90の供給確保に取り組んでいるという。ゼノ社のT. バーンスタインCEOは、「宇宙ミッション用のAm-241と海洋および地上展開用のSr-90を組み合わせ、ゼノ社の原子力電池は深海から深宇宙まで、フロンティアでの運用が可能」と指摘。仏オラノ社の米国法人であるオラノUSA社のJ.-L. パレイヤーCEOは、「Am-241は、使用済み燃料リサイクルの価値を実証する。ゼノ社との協力は、貴重な同位体の工業規模の回収が、まったく新しい市場を生み出し、革新的なアイデアを実現する方法を示している」と語った。
08 Oct 2025
610
米国の原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は9月23日、米国中西部のミズーリ州カンザスシティを拠点とする電力会社エバジー(Evergy)社ならびにカンザス州商務省と覚書(MOU)を締結した。テラパワー社が開発するナトリウム冷却高速炉「Natrium」(34.5万kWe)と付随するエネルギー貯蔵システムをカンザス州におけるエバジー社の供給区域内に建設を検討する。本MOU締結により、先進的な原子力発電所のサイト固有の特性を共同で評価するほか、Natrium炉の技術設計およびエバジー社の顧客に向けたサービス能力を調査する。サイト選定は、地域社会の支援、サイトの物理的特性や米原子力規制委員会からの許認可取得可能性、既存インフラへのアクセスなどの要素を評価した上で実施される。カンザス州のL. ケリー知事は、「カンザス州の市民と企業のエネルギー需要を満たすにあたり、常にあらゆる手段を講じる方針を支持してきた。州の未来を支える、利用可能なあらゆるエネルギー源を探求する必要があるため、革新的な手法の活用を歓迎する」と述べ、D. トーランド州副知事兼商務長官も、「カンザス州の驚異的な経済成長を継続するためには、競争力を強化しながら消費者のコストを抑制する、あらゆる革新的な選択肢を検討する必要がある。このプロジェクトは両方を実現し得るものだ」と語った。エバジー社のD. カンプベルCEOは、「原子力発電は何十年にもわたって当社の発電ミックスを構成している。信頼性が高く、無炭素電源の原子炉をカンザス州に追加導入するにあたり、そのコスト、技術、実現可能性を評価していく」と述べた。エバジー社はカンザス州とミズーリ州に電力を供給しており、発電電力量の約半分を炭素排出ゼロの電源から供給。カンザス電力共同組合と共同所有するウルフ・クリーク原子力発電所(PWR、128.5万kWe)は1985年に運転を開始し、カンザス州の発電電力量の約20%を占めている。Natrium炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えており、貯蔵技術は必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現すると言われている。ワイオミング州ケンメラーにおける建設に向けて、現在、米原子力規制委員会は建設許可申請の審査を加速して実施中。テラパワー社はNatrium炉の送電開始を2030年と見込んでいる。
07 Oct 2025
606
欧州委員会の域内市場産業・起業家精神・中小企業総局は9月12日、ブリュッセルで開催された欧州小型モジュール炉(SMR)産業アライアンスの第2回総会において、初の「戦略行動計画(Strategic Action Plan)」が採択されたことを明らかにした。本計画は、今後5年間の活動計画を包括的かつ詳細に示し、2030年代初頭までに欧州におけるSMRの開発・実証・展開を促進することを目的としている。SMRの迅速な展開は、欧州産業の競争力の維持、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けたエネルギー移行の推進、さらにエネルギー分野におけるEUの戦略的自律性を高める上で極めて重要とし、戦略行動計画では今後5年間で実施する10の具体的かつ重点的な行動を提示した。SMR展開に関する主要課題として、発電以外での市場需要の開拓、サプライチェーンの再活性化、研究開発と人材育成の推進、資金調達の機会を創出、規制枠組みの簡素化などに焦点を当てている。10の重点行動と目標とする達成時期は以下のとおり。SMR実証プロジェクトの枠組みづくり(~2026年6月)データセンター、エネルギー多消費産業、地域暖房などの用途でSMR実証プロジェクトを企画。公共部門・開発者・産業界の三者協定を検討。研究・実験施設の整備計画(~2026年12月)SMRの研究開発に必要な試験施設を特定・評価し、既存設備の改修や新設に向けた計画と資金計画を策定。規格・標準化と技術交流の促進(~2028年6月)SMR向けの共通規格・基準を提案し、EU域内での技術・データ交換を円滑化する制度を整備。サプライヤー連携プラットフォーム構築(~2026年12月)各国の有資格サプライヤーとSMR開発プロジェクトを結ぶマッチング機能を備えた支援プラットフォームを構築。EUサプライチェーン強化策の提言(~2026年6月)サプライチェーンの現状を評価し、NZIA(ネットゼロ産業法)やIPCEI(欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)を活用した強化方策を提案し、能力拡大を継続的に推進。欧州「ネットゼロ・アカデミー」構想(~2027年1月)SMR・AMR(先進モジュール炉)開発に必要な専門スキルを特定し、欧州全体で人材育成を担う教育アカデミーの設立を計画。公衆・関係者向けエンゲージメントツール(試行:2026年3月/完成:2026年12月)地域社会や関係者との対話を促進するためのツールキットを開発し、早期計画段階で導入。共通安全評価の推進(2025年以降継続)規制当局間の協力を促し、安全性に関する「業界ポジションペーパー」を作成。早期審査を支援する体制を構築。標準化燃料設計の支援(~2027年10月)軽水炉型SMRならびにAMR向けの標準化燃料の仕様策定を支援し、安全性と互換性の向上を図る。投資リスク低減と資金支援策の提案(~2026年3月、以降毎年更新)初号機(FOAK)開発リスクを軽減するための資金支援・保証制度を提案し、EU基金・金融機関と連携して投資環境を整備。同アライアンスは2024年2月に設立され、産業界のリーダー、研究者、政策立案者など、350を超える幅広いSMR関係者が結集。共通のビジョンと行動計画の下で協働することを目的としている。運営面では、EC、Nucleareurope(欧州原子力産業協会)、欧州の100名以上の科学者や環境専門家のグループの欧州持続可能な原子力技術プラットフォーム(SNETP)が主要パートナーとしてアライアンスを支え、複数の具体的なSMRプロジェクト支援や戦略行動計画に基づく施策の実施を主導。アライアンスの運営は理事会が指揮し、戦略的助言や重要な意思決定を行っている。戦略行動計画を成功裏に実施するには、産業界および公共部門の強力なコミットメントと、多様な関係者間の協力が不可欠であるとし、同アライアンスは、加盟団体、EC関連部局、他のEU機関、国際機関と緊密に連携し、欧州におけるSMRの迅速かつ円滑な展開を確実に行っていく方針である。
07 Oct 2025
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ブルガリアのR. ジェリャズコフ首相とZ. スタンコフ・エネルギー相は第80回国連総会に出席するために米国を訪問。9月24日、GEベルノバのR. マルテラCCOと会談し、小型モジュール炉(SMR)の導入の可能性について協議した。スタンコフ大臣は、「ブルガリアは、安全保障と適正価格でのエネルギーへのアクセスを確保するために、近代的なエネルギーインフラと戦略的パートナーシップに積極的に投資している欧州諸国の1つであり、世界のクリーンエネルギーソリューションの地図上でますます認知されるようになっている」と指摘。南東欧地域において、エネルギーリーダーの地位を強化すべく、現在進行中のコズロドイ原子力発電所7-8号機に米ウェスチングハウス社製AP1000を2基増設するプロジェクトに加えて、長期的な安定性、予測可能性、低コスト、低排出の実現に貢献する小型モジュール炉(SMR)をブルガリアに導入する可能性についても言及。ブルガリアがエネルギー安全保障、脱炭素化、経済成長という戦略的目標を達成する上で、GEベルノバ社との協力に期待を寄せた。さらに同大臣は9月26日、カナダのオンタリオ州を訪問し、同州のS. レッチェ・エネルギー・鉱業相とも会談。SMRに焦点を当て、両国間のエネルギー協力の深化について討議した他、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製SMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)の建設プロジェクトが進むダーリントン・サイトも視察した。これらの会談に先立ち、国際原子力機関(IAEA)総会期間中の9月16日、スタンコフ大臣は米エネルギー省のC. ライト長官とも会談。民生用原子力協力を強化するという両国間の政府間協定の目的を再確認する共同声明に署名し、革新的な原子力技術の開発と展開で協力することを確認した。これを機に、ブルガリアは米国研究所の専門知識を活用して、SMRの展開を加速するための候補サイトの立地可能性と適合性評価を事前に調査し、ブルガリア政府当局とプロジェクト会社であるコズロドイ原子力発電所-New Build EADは革新的技術の導入に向けた準備を進める。米国貿易開発庁は既に、ブルガリアの条件に最適なSMRを特定するため、様々な炉型の評価に資金提供する用意があることを表明している。原子力発電分野で50年以上の経験を持つブルガリアは、SMR導入により原子力をさらに拡大し、将来のデータセンター立地のためのプラットフォームを構築したい考え。スタンコフ大臣は、「他の国ではそのようなセンターの建設には10年かかるが、ブルガリアは大幅に短い期間で提供可能であり、国際的な投資家やパートナーにとって魅力的である」と強調。ブルガリアは将来へのビジョン、安定したインフラ、地域のエネルギー移行を主導し、信頼できるエネルギー輸出国であり続けるとの展望を示した。
06 Oct 2025
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