米国で約30年ぶりの新設計画として、A.W.ボーグル原子力発電所で3、4号機(各110万kWのPWR)を増設中のジョージア・パワー社、およびその親会社のサザン社は4月15日、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、増設サイトの労働力を約20%削減する方針を明らかにした。これは、米証券取引委員会に対する同日付報告書のなかで両社が表明したもの。増設サイトでは協力会社などを中心に約9,000人が作業中と伝えられているが、ジョージア・パワー社によると、このうち多数の作業員がこれまでにPCR検査で陽性と判定されており、その影響から現場の労働生産性が悪化している。労働力の削減はそうした影響を緩和するための措置であり、夏まで数か月間継続されるものの、ジョージア・パワー社は引き続き新型コロナウイルスによる感染の影響を監視。建設プロジェクトの総資本費や、両炉の現行の完成日程である2021年11月と2022年11月に影響が及ぶことはないと強調している。報告書によるとジョージア・パワー社は、現場の労働力は削減されるが残りの労働力でも生産性改善の工夫により、作業員の疲労や欠勤率が下がると指摘。これによって、増設工事全体の作業効率を向上させることができるとした。また、作業員間のソーシャルディスタンスの確保という副次効果も生まれ、連邦疾病管理予防センター(CDC)が推奨している最新項目の順守促進にもつながるとしている。このプロジェクトでジョージア・パワー社は45.7%出資しているため、今回の措置により同社が負担する経費は合計1,500万~3,000万ドルほどとなる。そのほかの出資企業は、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%となっている。2013年の3月と11月に始まった3、4号機増設プロジェクトでは、昨年7月に3号機の初装荷燃料が発注されたほか、同年12月には遮へい建屋に円錐形の屋根を設置。4号機についても、今年3月に格納容器に上部ヘッドを設置する作業が完了しているが、サザン社は証券取引委員会に対する4月1日付け報告書の中で、新型コロナウイルスによる感染の拡大により、同社とその子会社は増設プロジェクトの遅れや混乱といった様々なリスクにさらされているとの懸念を表明していた。(参照資料:サザン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
17 Apr 2020
3927
フランス電力(EDF)は新型コロナウイルス感染の拡大にともなう影響について4月14日に新たな経過報告を公表し、EDFグループが2020年の減価償却・控除前利益(EBITDA)の目標額を3月23日の報告で下端値の175億ユーロ(約2兆500億円)と設定していたことも含め、同年および2021年の財務目標をすべて撤回すると発表した。感染の拡大が引き起こした経済的混乱により電力需要量が低下しており、原子力発電や原子力発電所の新規建設プロジェクト、その他のサービスも含めたEDFグループによる事業の多くが深刻な影響を受けていると説明。原子力による総発電量についても、予測値を下方修正する方向だとしている。全開3月23日に公表された経過報告では、EDFグループは新型コロナウイルス感染の拡大という危機的状況の中、グループの重要活動を維持するために関係企業を全面的に動員、仏国内で予見され得るシナリオすべてで必要な電力を供給する経営能力や財務能力が備わっているとしていた。すなわち、一貫した金融ニーズの予測方針により、同グループは2019年末時点の流動性資産として換金価値228億ユーロ228億ユーロ(約2兆6,800億円)を保有。これに加えて、いつでも融資を受けられる金額の上限(極度枠)として総額103億ユーロ(1兆2,000億円)が確保されている点を明らかにしていた。この時点でEDFは、電力需要量の低下が同社の電力供給事業に及ぼす影響は限定的だとしており、零細な小規模企業に対する電気料金面の一時的な救済策についても、年末時点で大きな影響が及ぶことはないと予測していた。しかしその一方で、外出禁止令が発令されたことにより発電設備のメンテナンス作業が中断し、EDFグループは定期検査日程の再調整を迫られることになった。これにともない、3月23日の段階で原子力発電による2020年の発電量は、当初予測していた3,750億~3,900億kWhから大幅に下方修正する見通しになっていた。2020年のEBITDA目標額である175億~180億ユーロ(約2兆500億円~2兆1,130億円)も、(この時点では)下端値を維持するとしたものの、設備の稼働率や関連コストの予測が明確になった時点で改訂される可能性があるとした。同グループはまた、(3月23日の段階で)2021年の財務目標に及ぶ影響についても正確に評価できないと表明。定期検査日程の再調整は、2020年末から2021年にかけての冬季に設備の稼働率を最大とするのが目的だが、2021年の全体的な発電量には悪影響が及ぶかもしれないと予測していた。同様に、電力卸売市場における電力価格の低下も、年末時点の負債比率に大きく影響する可能性があると指摘していた。仏国では2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」により、原子力による発電シェアを2025年までに50%まで削減するほか、原子力発電設備も当時のレベルである6,320万kWに制限することが義務づけられた。現在、フラマンビル原子力発電所で163万kWの3号機(PWR)を建設中であることから、EDFは今年2月、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所1号機(92万kWのPWR)を永久閉鎖とした。同型設計の2号機についても、6月30日に永久閉鎖することが決まっている。(参照資料:EDFの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Apr 2020
4563
仏国のフラマトム社は4月8日、ロシアにおけるクルスク原子力発電所Ⅱ期工事の1、2号機(各125.5万kWのPWR)建設計画に対し、デジタル計装・制御(I&C)安全システム「TELEPERM XS」45台で構成される保護システムの納入契約を、ロシアのルスアトム・オートメテッド・コントロール・システムズ(RASU)社から受注したと発表した。これは2018年5月、RASU社を傘下に収めるロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が、仏国の原子力・代替エネルギー庁(CEA)と結んだ「原子力平和利用分野における戦略的連携の強化合意書」に基づいている。RASU社はI&C系供給や電気工事を専門とするロシア企業だが、この合意にともない同社とフラマトム社はI&C系分野で双方が利益を得られるよう、国際的なロシア型PWR(VVER)の建設計画やフラマトム社の原子力発電所建設計画にお互いが参加する枠組みの構築等で協力覚書を締結していた。クルスクII-1、2号機は、第3世代+(プラス)の120万kW級VVER「AES-2006」をベースに、技術面と経済面の性能をさらに最適化したという最新設計「VVER-TOI」をロシアで初めて採用。運転期間は60年に設定されており、両炉ともそれぞれ2018年4月と2019年4月から建設を開始した。RASU社はこれら2基の建設プロジェクトでI&C系の全体的開発と供給、起動等を担当しているほか、同発電所に330kVのガス絶縁型開閉器や変圧器も納入する。一方のフラマトム社は、「AES-2006」設計を採用してロシアで稼働中のノボボロネジII-1号機とレニングラードII-1号機にも、すでに「TELEPERM XS」を納入済み。この納入実績により今回の契約獲得に至ったと説明している。今回の契約で、フラマトム社はクルスク発電所用にI&C系を設計・製造し、モスクワにあるRASU社の統合センターに納入する。設置と起動ではテスト室での監督サービスも提供、安全保護システムの設置が完了するのは2025年末になる計画である。同社はまた、関係する機器・システムをロシア企業が製造可能になるよう協力する方針。フラマトム社でI&C系の販売を担当する上級副社長は、「クルスクII期工事には最高レベルの技術で貢献しており、当社とRASU社のパートナーシップは今後ますます拡大する」と述べた。またほかで建設中の新しいVVERにも同社の先進的技術を提供するため、引き続き前進していきたいとしている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Apr 2020
4506
米原子力規制委員会(NRC)は4月10日、ドミニオン・エナジー社がバージニア州で操業するサリー原子力発電所1、2号機(各87.5万kWのPWR)について、運転期間を追加で20年延長するための2回目の審査で環境影響声明書(EIS)の最終版を発行したと発表した。同審査では安全性評価報告書(SER)の最終版が今年3月に発行済みであることから、NRCは今年6月にも、送電開始以降の両炉の運転期間をそれぞれ80年に延長するかの最終的な判断を下す。NRCはすでに、フロリダ・パワー&ライト(FPL)社のターキーポイント3、4号機(各76万kWのPWR)とエクセロン社のピーチボトム2、3号機(各118.2万kWのBWR)について、それぞれ2019年12月と2020年3月に2回目の運転期間延長を承認。サリー1、2号機でも承認されれば、米国内で3件目ということになる。1972年と1973年に送電開始したサリー1、2号機に対して、NRCは2003年3月に運転開始当初の運転期間40年に20年追加して、それぞれ2032年5月と2033年1月までとすることを承認。これにさらに20年間追加する申請書は、ドミニオン・エナジー社が2018年10月にNRCに提出していた。今回の最終EISでNRCスタッフは、両炉の運転期間延長を阻むほどの有意な環境影響の可能性は低いと判断した。これによりNRCスタッフによる技術面の審査が完了したことになり、同文書や最終SERをNRC委員が承認すれば、両炉はそれぞれ2052年5月と2053年1月まで延長運転することが可能になる。これらに続き2回目の運転期間延長が検討されている商業炉としては、同じくドミニオン・エナジー社が2017年11月にバージニア州のノースアナ原子力発電所1、2号機(99.8万kWと99.4万kWのPWR)についても申請を行う予定だと発表。デューク・エナジー社も2019年9月、南・北カロライナの両州に立地する6サイト・11基(合計出力約1,123万kW)に関して申請書の提出方針を明らかにした。NRCはこれらのうち、ノースアナの2基の申請書が今年10月~12月の期間に、デューク・エナジー社のオコニー1~3号機(1、2号機は88.7万kW、3号機は89.3万kWのPWR)の申請書が2021年10月~12月に提出されると予想している。なお、NRCは今回のサリー1、2号機のEIS報告書やドミニオン・エナジー社による申請書をウェブサイト上に公開しているが、CDなど物理的な媒体の送付は現在、新型コロナウイルス感染による緊急事態のため行えない状況。入手希望者に対しては、NRCウェブサイトからコピーを直接ダウンロードすることを推奨している。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
14 Apr 2020
4356
米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は4月7日、小型モジュール炉(SMR)など費用対効果の高い新世代の先進的原子炉設計をテネシー州クリンチリバー・サイトで建設することについて実証・評価を行うため、テネシー大学(UT)と了解覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、クリンチリバー・サイトについて原子力規制委員会(NRC)から「事前サイト許可(ESP)」を取得したが、審査を受ける際に採用する予定の炉型を特定しておらず、「2基以上のSMRで合計の電気出力が80万kWを超えないもの」を想定。ニュースケール・パワー社やホルテック・インターナショナル社、ウェスチングハウス社などが開発している4種類の軽水炉型SMR設計のパラメーターを技術情報として示していた。ESPは20年間有効だが、実際に原子炉を建設すると決定した場合、TVAは別途NRCに対して建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。今回の連携協力でTVAは、UT原子力工学部の専門的知見を活用して、原子炉設計の経済的な実現可能性を軽水炉型にこだわらず評価する方針。この協力を通じて同社はまた、将来の原子力産業を担う同部の学生達と交流する機会も得られるとした。TVAのJ.ライアシュ総裁兼CEOは、「原子力発電における技術革新という当社のミッション遂行において、UTはそれを支える特殊な能力を提供してくれる」とコメント。UTの先進的なモデリングやシミュレーションのツールを活用して、新たな原子力技術を模索したいと述べた。UTのW.ハインズ工学部長も、「我が学部の原子力部門は1957年に創設された米国で最も古く権威あるものであり、高度に効率的な先進的原子炉の建設に向けたTVAとの戦略的連携により、クリーンで信頼性の高い将来エネルギーの活用に道を拓きたい」としている。TVAはすでに今年2月、米エネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所と同様の協力覚書を締結。経済性や安全性、柔軟性の高い次世代技術を採用した先進的原子炉設計を検討するとしており、今回の覚書と併せて、TVAが最新の原子炉設計の建設見通しで初期段階の評価を下す重要なステップになると述べた。(参照資料:TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Apr 2020
5135
経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のW.マグウッド事務局長(=写真)は4月8日に声明文を発表し、新型コロナウイルスによる感染が拡大するなかで、NEAとしては加盟する33か国がこのような状況に対応できるよう支援する覚悟であり、有効な措置に関する情報や良好事例、アイデア等の迅速な交換を可能にする手段を構築中であると説明した。仏国パリにあるNEAの事務局では3月12日から全スタッフがテレワークに入ったが、同事務局長は「パンデミックの脅威が速やかに終息することを望む一方、多くの専門家は5月から6月にかけても、あるいは9月から10月にかけて第二波の感染発生のリスクがあると予想している」と指摘。NEAでは緊急の事態に対応するだけでなく、このように長期的な対応の準備も進めていると強調している。マグウッド事務局長によると、グローバリゼーションや相互連携の時代に人類が直面している今回の危機は、これまでに経験したことのないものであり、すべての経済大国が影響を受け人々は脅威にさらされている。大方の予測では、この危機はあと数か月間続くと見られているが、短期的に見て如何なる国においてもパンデミック対応戦略で重要な柱となるのは信頼性の高い電力供給である。これなくしては、近代生活における重要インフラの大部分が機能できないが、パンデミックによって発電施設の職員が長期にわたって直接的、間接的な影響を受け、その施設の操業が脅かされることになる。同事務局長の認識では、近代社会におけるその他すべての分野と同様、原子力発電部門は感染者数の削減に貢献している。すなわち、世界中の原子力発電所が安全かつ効率的に稼働することで、テレワーク中の膨大な数の人々や自宅待機中の人々、対応キャパシティを超えて活動中の医療施設に対しても信頼性の高い電力が供給される。しかし、原子力発電部門自体もパンデミックの影響を受けるため、絶え間なく変化する前例のない不確かな状況にも臨機応変に対処しなければならないとした。原子力発電部門では、慎重に分析した結果や膨大な数の見解を考慮した上でプロセスや手順を変更するのが常であるが、同事務局長によれば、今現在直面している危機はすべてにおいて迅速な対応を必要としている。規制当局は発電所の点検計画の妥当性を審査しなければならないし、事業者は発電所の定期検査や改修日程を延期せざるを得ない。通常とは異なる作業環境で使われる技術は全く新しい方法で適用する必要があり、原子力発電所における安全性の確保は、今後もすべてに優先する事項であると述べた。同事務局長はまた、今回のパンデミックはNEA自身の安全文化をも評価する試金石になったと指摘。NEAは原子力施設の運転に関する出版物の中で運転員や住民の安全と健康を第一とする文化を強調しているが、今回はこれと同様の安全文化がNEA自身にも適用されている。NEA全体は3月12日からテレワーク体制に入っているが、職務に混乱が生じることはほとんどなく、重要な業務のいくつかは延期となったものの、複数の委員会の活動業務は続けられている。パンデミック関連のイベントも近々ウェブ上で主催する予定だが、これらは皆NEAスタッフが加盟国と緊密な連携の上、主導している献身的業務の賜物であり、現時点でどれほどの問題に直面しようと、明るい未来が必ず来るというNEAの原子力部門のメンバーすべての確信に基づくものだと説明している。(参照資料:OECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Apr 2020
3462
フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は4月8日、オルキルオト原子力発電所で建設中の3号機(OL3)について、燃料の装荷許可を放射線・原子力安全庁(STUK)に申請したと発表した。建設プロジェクトの最新スケジュールでは、2020年6月に燃料を装荷した後11月に送電を開始、2021年3月から営業運転入りすることになっていた。しかし、新型コロナウイルスによる感染の拡大にともない、建設サイトではプロジェクトへのリスクを最小限に留める膨大な対策作業を実施中。この対応により、建設プロジェクトの進行状況には不透明感が増してきており、工事を請け負った仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合はTVOに対し、2020年6月の燃料装荷が難しくなり定常的な発電の開始も遅延する可能性を伝えている。同企業連合はパンデミックの拡大状況や影響が判明し次第、OL3の完成スケジュールを更新する方針。プロジェクト完了まで資金が十分確保されるよう、関係機関から支援を受けつつ取り組むプランを作成中だとしている。TVOの燃料装荷許可申請書には、装荷前にサイトで必要とされる作業などOL3の準備状況が盛り込まれており、STUKの審査は数か月を要する見通し。残っている機能試験の結果分析や原子炉の性能確認結果等に基づいて、燃料の装荷許可が発給される予定である。OL3の建設工事は2005年8月、世界で初めて欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して始まったものの、初号機であるが故に規制関係文書の確認作業や土木工事、品質検査等に予想外の時間を費やした。同炉の完成は当初、2009年に予定されていたが、フィンランド政府が同炉に運転認可を発給したのは2019年3月のことである。TVOは最終的にOL3に対する総投資額を約55億ユーロ(約6,508億円)と見積もったが、同企業連合とのターンキー契約額は約30億ユーロ(約3,550億円)。2018年3月に両者が結んだ包括的な和解契約により、同企業連合は工事の遅延にともなう超過コストおよび損害賠償金として、TVOに合計4億5,000万ユーロ(約532億円)を支払うことが決定している。仏国で初めてEPR設計を採用したフラマンビル3号機の建設工事も、原子炉容器鋼材や主蒸気配管溶接部の品質問題等により完成が遅れている。一方、同じ設計で2009年と2010年に中国でそれぞれ着工した台山1、2号機については、建設工事が比較的順調に進展。それぞれ2018年12月と2019年9月に営業運転を開始している(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
09 Apr 2020
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は4月7日、バングラデシュ初の原子力発電所サイトで建設工事に従事する4,000名以上の作業員のうち、新型コロナウイルスの感染拡大にともないロシアへの一時帰国を希望する178名にチャーター機を手配したと発表した。同国では、首都ダッカの北西160kmの地点でルプール原子力発電所1、2号機(各120万kW)がそれぞれ2017年11月と2018年7月に本格着工。これらでは国際的な安全要件をすべて満たした第3世代+(プラス)のロシア型PWR(VVER)設計「ASE-2006」を採用しており、同国の原子力導入初号機となる1号機は2023年、2号機は2024年の営業運転開始を予定している。今回、下請け企業社員を含む一部の作業員が一時的に帰国するものの、建設プロジェクトをスケジュール通り遂行する上で支障はないとロスアトム社は強調している。同工事はロスアトム社傘下のASEエンジニアリング社が請け負っており、同社の本拠地ニジニ・ノブゴロドには6日夜、ロシア連邦政府の許可を受けた最初のチャーター機がダッカから帰国希望者を乗せて到着した。これらの帰国者すべてにコロナウイルス検査が義務付けられ、その後は2週間にわたって地元の医療管理付き診療所で隔離されることになる。発表によると、建設サイトではコロナウイルス感染の蔓延を防ぐために様々な対策が講じられている。サイトの正面玄関や事務所ビルの入口、食堂など複数の場所で作業員の体温を遠隔検温する体制を導入したほか、すべての事務所スペースを消毒、雇用者全員に対してマスクを支給した。ロスアトム社としては、ウイルス感染の世界的拡大がサプライチェーンに及ぼす悪影響を最小限にとどめるとともに、契約書に明記された完成日程を順守するため、あらゆる手段を講じるとしている。同社のA.リハチョフ総裁による4月1日付の声明文では、ロスアトム社関係の感染者はこれまでに4例報告されており、1名は同社がハンガリーで進めているVVER建設計画の関係者(ハンガリー人)。残り3名はロスアトム社傘下の民生用原子力発電公社の職員だが、同社が関わるすべての都市では追加的な医療措置や組織的対策が取られている。同総裁はまた、国外の原子力発電所建設計画に携わるロシア人で、一時帰国を希望する者には数日以内にその機会が与えられるとも述べていた。なお、在バングラデシュの日本大使館によると、同国政府は感染の拡大防止目的で国際線フライトの乗り入れ停止措置を4月14日まで延長したが、対象国・地域のなかにロシアは含まれていない。また、日本貿易振興機構(JETRO)の現地通信は、バングラデシュにおける6日時点の感染者数は合計123名で、このうち12名が死亡したことを伝えている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①(英語)、②(ロシア語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)
08 Apr 2020
3717
ロシアの民生用原子力発電公社のロスエネルゴアトム社は4月1日、同国中央部スベルドロフスク州のベロヤルスク原子力発電所で、3号機として1980年から稼働しているナトリウム冷却高速原型炉「BN-600」(FBR、60万kW)の運転期間が2025年まで5年間延長されたと発表した。同発電所で実施した研究の結果から、BN-600は技術的に2030年まで運転継続可能であることが実証されたと所長のI.シドロフ氏は明言している。ロスエネルゴアトム社と同じく、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社傘下の設計会社アトムプロエクト社が現在、同炉の運転をさらに延長するための投資プロジェクトを策定中であり、2024年にこの作業を完了する予定。ロスエネルゴアトム社はこれを受けた後、同炉の運転を2025年以降2040年までの期間、運転継続するための申請書を連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)に提出する方針である。ロシアは国内のエネルギー需要を満たしつつ、天然ウランと使用済燃料の有効活用が可能な核燃料サイクルを確立するため、高速中性子炉の実用化を進めている。「BN-600」に加えて電気出力1.2万kWの高速実験炉「BOR-60」が1969年12月からディミトロフグラードで稼働しているほか、80万kW級の高速実証炉「BN-800」もベロヤルスク4号機として2016年10月から営業運転中。120万kW級の商業用高速炉「BN-1200」(ベロヤルスク5号機)についても建設準備が進行中である。また、これらのナトリウム冷却高速炉開発と並行して、鉛冷却高速炉の研究開発も進めるという「ブレークスルー(PRORYV)」プロジェクトでは、出力30万kWの鉛冷却高速実証炉「BREST-300」をトムスク州セベルスクのシベリア化学コンビナート(SCC)で建設することになっている。「BN-600」の運転開始当初に許された運転期間は30年間で、ロスエネルゴアトム社は30年目に当たる2010年に運転期間を2025年まで15年間延長することを計画。2009年に、安全性関係すべてをカバーする大規模な設備の最新化プログラムを開始した。空気熱交換器を使った緊急冷却システムやバックアップ用の制御盤を設置するなど、機器類の点検とアップグレードで膨大な作業を実施。2010年には最新の安全基準に完全に適合していることが確認されており、同社はこれに基づき運転期間の15年延長が可能と考えていた。しかしROSTECHNADZORは、交換できない機器の能力実証を追加で要求した後、2020年まで10年間だけ運転の延長を認める許可を発給。ロスエネルゴアトム社によると、その後これらの関係作業はすべて完了しており、同国のエンジニアリング企業で元実験機械製造設計局のOKBMアフリカントフ社や構造材中央研究所「プロメティ」は、同炉で運転をさらに継続することは技術的に可能との結論を明示。これに基づき、ROSTECHNADZORが2025年までの延長を承認している。(参照資料:ロスエネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Apr 2020
4320
米国で約30年ぶりの新設計画としてA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(PWR、各110万kW)増設計画を進めているサザン社は4月1日、新型コロナウイルスによる感染の発生にともない、同増設工事の混乱や遅れなど、同社とその子会社は様々なリスクにさらされているとの認識を表明した。これは、米証券取引委員会に対する2019年末の年次財務報告におけるリスク要因補足文書の中で同社が明らかにしたもの。これまでに世界保健機関(WHO)と連邦疾病管理予防センター(CDC)が感染の世界的流行(パンデミック)を宣言し、全米を含む多くの国にウイルス感染が広がるなか、その対応として各国は旅行や人の密集の禁止、特定のビジネスの自粛など数多くの制限を設けている。複数の電気事業子会社の供給区域にも経済活動の混乱という深刻な影響が生じてきており、資本市場では株価が乱高下した。このコロナウイルス感染拡大に関連して、サザン社の電気事業子会社は電気代を滞納中の一部顧客に対して、電気の使用停止を一時的に解除している。感染が拡大し続けていることや政府の対応等によってサプライチェーンや資本市場にも混乱が広がり、労働力や生産性の低下、経済活動の縮小といった状況が継続、サザン社は同社とその子会社にも様々な悪影響が及ぶことになると指摘した。具体的にはエネルギー需要量の低下、特に法人需要が少なくなり、営業権や長期性資産が減損、同社と子会社が施設を設計・建設・操業したり、金融機関や資本市場から資金調達する運用にも陰りが出てくる。とりわけボーグル3、4号機に関しては、建設工事や試験の実施、その監督・支援活動にも遅れの生じる可能性も出ている。子会社の一つであるサザン・ニュークリア・オペレーティング社はこれまで、建設サイトでウイルスの伝染リスクを軽減するため、感染症状が出た人員や感染者と濃厚接触した人員を隔離したり、作業者間で距離を取るなどの措置や手続きを実行してきた。しかし、感染者の急激な増加で建設工事のスケジュールや予算にどのような影響が及ぶか、見極めるのは今のところ時期尚早との見方を示している。サザン社は現時点で、ボーグル3、4号機の稼働開始日程をそれぞれ、2021年11月と2022年11月に設定。3号機については昨年7月に初装荷燃料を発注したほか、同年12月には遮へい建屋に円錐形の屋根を設置した。また、4号機についても今年3月、格納容器に上部ヘッドを設置したと発表している。(参照資料:サザン社の報告資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Apr 2020
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国際原子力機関(IAEA)は3月30日、新型コロナウイルスによる感染の拡大時に取られる支援方策として「国際緊急時対応演習(ConvEx)」を同月24日から26日まで実施したと発表した。ConvExの中で、支援の要請と提供の仕組みを試験する演習「ConvEx-2b」に35のIAEA加盟国と世界気象機関(WMO)の2つの地区特別気象センター(RSMC)が参加。コロナウイルス感染の世界的流行(パンデミック)にともない原子力事故または放射線緊急事態が発生したことを想定し、IAEAの「事故・緊急事態対応センター(IEC)」が中心となってウィーンから遠隔操作で支援方策を行った。IAEAは「この種の緊急事態対応で準備し過ぎるということはない。だからこそ、その演習シナリオには発生確率は低くてもリスクが高く、能力を試されるような事象が含まれるべきなのだ」と指摘した。IAEAのR.M.グロッシー事務局長も、「自然災害やパンデミック、その他の危機にともなう事象から、原子力事故や放射線緊急事態が発生する可能性に備えなくてはならない」と強調した。「コロナウイルスにより、我々の生活すべてが深刻な混乱に陥っている時期に今回の演習を行ったことで、緊急時の対応能力を絶えず維持するというIAEAの強い決意が示された」と指摘。如何なる事由や危機的状況の下におかれても、IAEAは効果的な国際対応を調整するため迅速に行動するとしている。ConvExの実施は、チェルノブイリ事故を契機に1986年のIAEA総会で採択された2つの条約「原子力事故早期通報条約」と「原子力事故援助条約」に基づいている。「ConvEx-2b」では、支援要請する発災国の役割を演じる国とそれを提供する役割の国それぞれが、関係活動と情報交換の効率性と有効性を試されことになっており、IECのE.ブグロバ・センター長は「世界中で同時発生する様々な危機への対応で、迅速かつ効率的な支援を加盟国に提供することは戦略的に重要な要件になる」とした。今回の演習では、IAEAの17加盟国が発災国役を演じる一方、18加盟国と2つのRSMCが支援提供国役を務め、パンデミック対応の安全・セキュリティ対策に集中的に取り組んだ。発災国役が仮想の緊急事態に必要な支援をIAEAに要請した後、IECは支援提供国役の所管官庁に指定されている機関および関係する国際機関に要請内容を伝達。これにより、発災国に対してどのように支援提供していくか決定する手続きが発動され、IECは発災国役と支援提供国役双方と協議した上で「支援行動計画」を作成、これには双方の役割と責任、および両者間で合意・調印した活動内容が記された。また、このような環境下での初期対応は非常に困難との認識から、発災国役は支援提供国役が派遣する現地支援チームに対して追加で予防的な防護プランを提示。また、IECの「支援行動計画」には、現地支援チームの到着と同時にウイルス検査を実施することや、個人用防護装備の提供等が盛り込まれたとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Apr 2020
3327
チェコ国営電力のCEZ社グループは3月25日、経年化が進んでいるドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で、ネット出力が最大120万kWのPWRをⅡ期工事として新たに2基増設するための立地許可申請書を原子力安全庁(SUJB)に提出した。準備作業にCEZ社が5年を費やした増設計画であり、これにより同計画は許認可プロセスへの移行準備が整う。包括的環境影響評価(EIA)についてはすでに昨年9月に、環境省が承認済みとなっている。A.バビシュ首相は昨年11月、チェコのエネルギー自給を維持するためにドコバニⅡ期工事の最初の1基について2022年末までにプラント供給企業の選定を終え、遅くとも2029年までに建設工事を開始、2036年までに運転開始を目指すと発表していた。SUJBは今後原子力法の条項に則り、12か月以内に立地許可発給の是非について判断を下すとしている。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、原子力発電シェアを当時の約30%から2040年までに60%近くまで上昇させる必要があると明記。同戦略のフォロー計画としてその翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減していくのにともない、既存のドコバニとテメリン両原子力発電所で1基ずつ、可能であれば2基ずつ増設する準備を進める必要があるとしていた。A.バビシュ首相はまた、地球温暖化防止のためCO2排出量の実質ゼロ化に向けた動きが欧州で活発化している点を指摘。チェコ政府内では、「石炭火力に代わる新規電源としては再生可能エネルギーでは不十分であり、原子炉を建設することが論理的」との認識が定着している。CEZ社の発表によると、申請書に添付された文書は約1,600ページに達する膨大なもので、作成にはCEZ社のほかに水研究所や国立マサリク大学、原子力研究機関(UJV Rez)などの専門家30名以上が従事した。建設を支持する論拠として200以上の専門的な分析・調査結果が活用され、申請書を構成する重要部分として広範な「入札保証」報告書も付け加えられている。内容は主に建設サイトの特性を評価・説明するもので、発電所近郊の自然状態や給水設備、人的活動などを検証。建設プロジェクトのコンセプトや質、周辺の住民と環境および将来的な廃止措置に関する影響なども評価している。 建設用地そのものについては最も入念な分析が行われており、底土の状態を見極めるため専門家らは全長4km以上にわたる部分で170本以上の地層掘削を行った。これに加えて、最大深度150mの深井戸を30本掘削して地下水の状態を観察。周辺エリアにおいても66か所で試験掘削を実施したため、得られた岩石試料のコンテナは1,300本以上に達したとしている。(参照資料:CEZ社グループ、チェコ原子力安全庁の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Apr 2020
3176
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は3月26日、新型コロナウイルスによる感染への対応についてA.リハチョフ総裁の声明文を発表し、原子力発電所における安全確保と同社傘下の全組織の従業員およびロシア一般国民の生命と健康の防護で最優先の対策を取っていると表明した。安全性の確保はロスアトム社にとって重要な価値基準であり、従業員の健康に影響するコロナウイルス感染の世界的流行(パンデミック)など、様々な筋書きに応じて如何なる緊急事態についても常に対応策を敷いている点を強調している。同総裁によると、ロスアトム社は現在、国内すべての原子力発電所で従業員の定期健診など複数の追加的措置を導入した。出来るだけ多くの従業員が互いに距離を置いて作業できるよう手配したほか、個人用のウイルス防護製品や保護具を大量に調達。関係する生産設備や車両を繰り返し消毒しており、すべての出張/旅行を原則キャンセルとした。また、従業員の健康状態については、施設が立地する地元当局との緊密な連携によりモニターしている。同総裁はまた、多くの国でコロナウイルスによる感染が拡大しているものの、輸出原子炉を建設中の国のすべてで同様の措置を取っていると説明。作業員を防護するため建設サイトでは最も厳しい対策が敷かれており、ロスアトム社はその国の政府や疾病管理サービス当局の勧告に従っている。また、地元の当局が隔離対策や従業員の退避策を導入した場合に備えて、感染拡大防止策を強化する準備も全面的に進めている。さらに、この健康上の危機がサプライチェーンに及ぼす悪影響を最小限に抑えるとともに、契約書に規定されたスケジュールを完璧に順守できるよう、あらゆる事前の注意対策を取っていると述べた。ロスアトム社は現在、ロシア国内で3基の大型商業炉を建設中であるほか、2基の小型炉を搭載した海上浮揚式原子力発電所が昨年12月から試運転中。海外ではバングラデシュやベラルーシ、トルコ、フィンランド、ハンガリー、インド等で請け負った合計36基の原子炉建設プロジェクトが様々な段階に達している。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Mar 2020
3091
国際原子力機関(IAEA)は3月25日、超小型炉を含む小型モジュール炉(SMR)の経済性評価に特化した3年計画の協働研究プロジェクト(CRP)を開始すると発表した。現在世界中で開発されている様々なコンセプトのSMR(約50設計)を実際に建設する際、必要となる経済性評価の枠組みや背景情報を加盟各国に提供することが目的。参加希望者は4月30日までに、研究契約や協定書の案をIAEAの研究契約管理部に提出するよう義務付けられている。IAEAが定義するSMRはモジュール毎の電気出力が最大30万kWであり、一部のものは予め製造したシステムや機器類を工場で組み立てるなどして建設コストや工期を削減。その安全性や設置方法、利用分野などで様々な設計が存在し、近年これらへの関心は急速に高まっている。また、新しい世代の原子炉は従来の100万kW級原子炉と比べて設計がコンパクトであり、1,000kW規模の超小型炉ならトラックや鉄道、船舶、航空機で容易に輸送することが可能。送電網の規模が小さい地域や遠隔地域にも信頼性の高い熱電供給を実現できるほか、出力が変化しやすい再生可能エネルギーや様々なエネルギー貯蔵システムに対応する進化型の送電網に、発電設備系統連系(アンシラリー)サービスを提供することも可能だとした。IAEAの認識では、現在開発中のSMR技術の成熟度はそれぞれ異なっており、建設に際してコストや納期を適切に評価・分析し、合理化する必要がある。市場のニーズに応えるにはSMR用のビジネスモデルを構築しなければならず、市場そのものについても、機器の需要や産業支援サービスが維持されるような規模の大きさが求められる。SMRの開発と建設にともなう経済面の効果を数値化し、社会的支援が得られるよう伝えていく必要があるとした。このためIAEAは今回のCRPで、①採用されている技術の成熟度の違い、②採用技術の詳細、③各設計コンセプトの潜在的なユーザー、および付随するリスク特性と収益への道筋――に集中的に取り組む方針。CRP参加者は以下の分野の調査を通じて、SMR開発プロジェクトの経済的評価に資する系統的アプローチを共同で開発することになる。調査分野とはすなわち、SMRの市場、SMRと非原子力による代替選択肢間の競争力分析、価値の高いプロジェクトの提案とその戦略的位置づけ、プロジェクト全体の企画経費予測と分析、プロジェクトの構成とリスク配分および財政評価額、経営計画とビジネス事例の実証、経済的な費用便益の分析-—など。評価の枠組みが完成した後は特に、SMRの量産に関する経済性評価に適用される予定で、既存の工場で量産する際の条件設定や、サプライ・チェーンを現地化する機会や影響の評価に使われる。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月26日付け「ワールド・ニュークリ ア・ニュース(WNN)」)
30 Mar 2020
3907
仏国資本のEDFエナジー社は3月26日、英国南東部のサフォーク州で進めているサイズウェルC原子力発電所(PWR、163万kW×2基)建設計画について、新型コロナウイルスによる感染の拡大に配慮し、今月末までに予定していた「開発合意書(DCO)」の申請書提出を数週間延期すると発表した。「開発同意」は、申請された原子力発電所等の立地審査で合理化と効率化を図るための手続きである。「国家的に重要なインフラプロジェクト(NSIP)」に対して取得が課せられているもので、コミュニティ・地方自治省の政策執行機関である計画審査庁(PI)が審査を担当、諸外国の環境影響に関する適正評価もPIの担当大臣が実施する。本審査が完了した後は、PIの勧告を受けてビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の大臣がDCOの発給について最終判断を下すことになる。EDFエナジー社は今回、DCO審査プロセスが公開協議段階に入った場合は、国民の参加登録期間に余裕をもたせると明言。これにより、地元住民が十分な時間をかけて申請書を検討できるとした。同社の原子力開発担当常務も、「地元コミュニティを含むサフォーク州民の多くが、現在コロナウイルス感染への対応に追われている。DCO申請書の提出は延期するものの、過去8年以上にわたる関係協議で当社はプロジェクトの透明性に配慮するとともに、プロジェクトに関心を持つ国民一人一人が意見を言えるよう努力を重ねており、今の難しい局面に際してもこの努力を続けたい」と述べた。同プロジェクトに関して、EDFエナジー社は2012年以降すでに4段階の公開協議を実施しており、1万人以上の地元住民や組織がこれに参加した。サイズウェルC発電所では、南西部サマセット州で建設中のヒンクリーポイントC(HPC)発電所と同じ欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用しているため、同社は建設コストをある程度削減することが出来ると説明。サフォーク州のみならず英国全土に雇用や投資の機会をもたらすとともに、常時発電可能な低炭素電源として英国政府が目指すCO2排出量実質ゼロへの移行を後押しするとしている。なお、EDFエナジー社は3月24日にHPCプロジェクトの現状を公表し、作業員や地元コミュニティの安全を最優先に、新型コロナウイルスによる感染拡大から防護する措置を広範に取っていると強調した。(参照資料:EDFエナジーの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Mar 2020
3419
米原子力エネルギー協会(NEI)のM. コースニック理事長は3月20日、エネルギー省(DOE)のD. ブルイエット長官に書簡を送り、新型コロナウイルスによる感染が世界的な流行(パンデミック)となる中、国内原子力発電所でこの春に燃料交換やメンテナンスを実施する際、必要となる支援の提供を要請した。同理事長はまず、「パンデミック対応時に特に重要となる送電網の維持で原子力発電所は必須のインフラである」と国土安全保障省が位置付けている点に言及。実際に国内の原子力発電所では、パンデミック時にも運転を継続できるよう複数段階のプランを設定し、地元の状況に応じてすでに実行中である。これまでのところ全国の原子力発電所は順調に運転を続けているが、これらは18か月毎あるいは24か月毎に取替用の新燃料を装荷する必要があり、その他のメンテナンスも含めて2~4週間、稼働できない期間があるという点をDOE長官に伝えておきたいとした。燃料交換は通常、電力需要量が最も少なくなる春や秋頃に行われ、発電所毎に数100人規模の専門作業員が30~60日間動員されるが、これらの作業員が宿泊するホテルや地元住民宅、食事のためのレストラン等が必要である。また、このような作業に使われる医療用レベルの手袋やマスク、使い捨ての消毒布や体温計といった放射線防護のための個人用装備がパンデミック時には不足することが予想される。コースニック理事長によると、米国では今春、21州に立地する32の原子力発電所が燃料交換を予定しており、これらを含めた原子力発電所ではすでに、このような作業期間中にコロナウイルスのリスクを最小限に抑える予防的措置が取られている。具体的には、具合の悪い従業員を自宅待機とすることや感染者数の多い国に最近渡航した従業員の除外、発電所ゲートにおける従業員や契約請負作業員等の健康チェック、カフェテリアなど従業員が集まる場所の閉鎖や入場制限などを挙げた。その上で同理事長は、国内の原子力部門が発電所の運転や経済活動を途絶させないために、DOEの支援を緊急に必要とする個別のアクションを以下のように特定した。国内のエネルギー需要を、今日だけでなく明日以降も長期的に、また、安全で信頼性が高く価格も適正な原子力発電で満たせるよう、これらに対する政府の助力が不可欠だと訴えている。・原子力発電所の運転や燃料交換など、重要業務の担当従業員を連邦政府が確認する、・これらの重要業務の履行にともない作業員の発電所への移動を許可する、・これらの重要業務の履行に必要な宿泊所や飲食物の提供サービス等を維持する、・発電所サイトや宿泊所、飲食物のサービス施設などへ移動で、作業員が州境やコミュニティの境界を自由に越えることを許可する、・放射線防護のための個人用装備や新型コロナウイルスの検査キットなどを原子力作業員が優先的に入手できるようにする、・高度に特殊な技能を有する外国人作業員が米国に入国することを許可する、である。(参照資料:NEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Mar 2020
2028
仏国の商業用原子炉57基すべてを所有・運転するフランス電力(EDF)は3月23日、新型コロナウイルスによる感染影響について現状を公表し、2020年の「金利・税金・償却前利益(EBITDA)」は現段階で目標とする金額幅175億~180億ユーロ(2兆1,000億~2兆1,700億円)の低い方の数値に留めるものの、原子力発電所における目標発電量については下方修正中であることを明らかにした。発表によるとEDFグループは、感染影響下においても発電事業者としての重要な活動を維持するため全精力を傾注中。国内で予期される発電シナリオすべてに対応可能な運転能力と資金力があり、昨年末時点の現金同等物と売却可能な短期金融資産の総額は228億ユーロ(2兆7,400億円)にのぼるなど、健全な状態にあるとした。電力需要量の低下が送配電事業に及ぼす財政上の影響も限定的だと見ており、脆弱な小規模企業の電気料金で一時的な救済措置を取るため同グループの必要運転資金が暫時増加するものの、その影響は年末までに解消されるとした。その一方、E.マクロン大統領が3月17日に発表した2週間の「外出禁止令」により、発電設備のメンテナンス作業が中断され、EDFでは定期検査日程の再調整を余儀なくされている。2020年に予定していた原子力発電所による発電量3,750億~3,900億kWhも下方修正に向けた見直し作業中であり、設備利用率の見通しや関連コストが明確になってからこれらの目標数値の改定版を作成するとしている。2021年の影響見通しについては、現段階では正確に評価できないとEDFは述べた。現在進めている定期検査日程の再調整は、2020年末から2021年にかけて冬季の利用率を最大限にすることが主な目的だが、発電量は2021年もマイナス影響を受けると予想される。同様に電力卸市場においても価格の低下が見込まれており、これによって同年末時点の負債比率に深刻な影響が及ぶ可能性があるとしている。なお、EDFが運転するフェッセンハイム、ベルビル、カットノン3つの原子力発電所について、3月11日付のロイター電は「新型コロナウイルス検査で各1名ずつ合計3名の従業員に陽性反応が出た」と報道した。これに関してEDFからの発表はなかったが、濃厚接触があったその他の従業員とともにこれら3名を14日間の自宅待機とし、通常通りの運転を続けた模様。EDFが国家計画に沿って2009年に策定したという「パンデミック時に人員を削減して運転を継続するプラン」は、発動されなかったと伝えている。(参照資料:EDFの発表資料、ロイター電、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Mar 2020
2245
国際エネルギー機関(IEA)のF.ビロル事務局長(=写真)は3月22日に「LinkedIn」に投稿し、「新型コロナウイルスがもたらした危機によって、電力の供給保証がこれまで以上に重要欠くべからざるものであることが再認識された」とコメントした。原子力発電の設備容量に関しても「確実な電力供給を支える重要要素」と位置付けており、「電力供給保証に対する貢献など、様々な電源がもたらす恩恵に見返りを与えられるような市場を政策立案者が設計する必要があり、これによって実行可能なビジネスモデルの構築も可能になる」と説明。クリーン・エネルギー経済に移行する中で、あらゆる発電オプションを維持することが重要だと強調している。ビロル事務局長によると、コロナウイルス危機による経済活動の大規模な途絶は、近代社会がどれほど電力に依存しているか明確に示した。数百万の人々が自宅に閉じこもってテレワークで仕事をこなし、買い物は電子商取引サイトが頼り。このようなサービスのすべてが信頼性の高い電力供給によって支えられているが、これを当然のことと思い込んではならない。アフリカでは今なお、数億もの人々が電力を使用できない環境にあり、病気その他の危険に対し非常に脆弱な状態にさらされている。我々の生活の中で電力の果たす重要な役割が、今後数年先あるいは数十年先にどの程度大きく拡大・進化していくか、コロナウイルス危機は手がかりを提供している。多くの経済圏がこの危機に対し強力な封じ込め対策を取っているが、工場や事業活動が停止したことにより電力需要量は約15%低下。そうした経済圏のなかで、スペインや米国のカリフォルニア州は風力と太陽光の発電シェアが世界でも最も高いが、気象条件が普段と変わらないなかで電力需要が急落すると、これらの発電シェアは通常より高まることになる。 ビロル事務局長は、「需要量が低下すれば発電設備は十分だと見なされがちだが、実際に近年、最も注目された停電のいくつかは需要量が低い時期に発生している」と指摘。風力や太陽光からの発電量で需要量の大半が満たされていても、電力系統の運用者は日没など電力供給パターンの変化に備えて、その他の電源による発電量を素早く増やせるよう柔軟性を維持しなければならない。このため、風力や太陽光からの発電シェアが常に高い状態になれば、送電網の安定性を維持することは一層難しくなると説明した。今回のように、大規模なパンデミックで国全体が封鎖されるような事態においては、欧州の大部分で経済活動が突然停止し電力需要量も低下。これは、電力系統から柔軟性のある主要電源を取り除くことにもなるため、政策立案者は極限の状況下で柔軟性の高い電源を利用できるか注意深く評価する必要がある。同事務局長の認識では、現状で多くの電力系統運用者が頼りとしているのは天然ガス(LNG)火力発電所だが、これらが仮に送電システムにおける需要量の調節のみに使われれば、多くのLNG発電所が赤字を出すことになる。今般のコロナウイルス危機においても、電力需要量が低下したことでこのようなプレッシャーが加わっていると警告した。ビロル事務局長はまた、「コロナウイルス危機によって、電力関係のインフラやノウハウの持つ重要な価値が明確に示されたが、これらはまた、クリーン・エネルギー技術の台頭で将来の電力システムが変化した場合においても、その信頼性を維持するために政策立案者が何をすべきか等について極めて重要な示唆をもたらした」と指摘。各国政府は国民の健康上の緊急事態に対応するため適切な策を取っているが、これらの政府はまた電力の供給保証についても警戒を怠らず、市場が乱高下するなかでも生命維持に必要な資産を守らねばならない。このように異常な事態において人々は、「他のものはどうでも、電力なしではどうにも生きられないのだ」と強調している。(参照資料:IEAビロル事務局長の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Mar 2020
2592
英国のロールス・ロイス社は3月19日、開発中の小型モジュール炉(SMR)をトルコ国内で建設する際の技術面と経済面、および法制面の適用可能性評価を実施するため、関連企業や団体8社と結成した国際企業連合を代表して、トルコ国営発電会社(EUAS)の子会社のEUASインターナショナルCC(EUAS ICC)社と協力する了解覚書を締結した。同覚書ではまた、SMRをトルコ側と共同生産する可能性も探ると明記。トルコは大型原子炉に加えてSMRも建設し、クリーン・エネルギーによる経済成長を支えていく考えだ。ロールス・ロイス社とトルコ政府エネルギー部門との協力は2013年に遡り、その際はエネルギー天然資源省およびイスタンブール工科大学とともにサプライチェーンの調査に着手した。今回の発表はトルコに低炭素なエネルギーシステムを導入する一助となるほか、トルコと英国間の強力な連携関係構築に向けて新たな1ページが刻まれると強調しているロールス・ロイス社の企業連合には、仏国を拠点とする国際エンジニアリング企業のアシステム社、米国のジェイコブス社、英国の大手エンジニアリング企業や建設企業のアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社のほか、溶接研究所と国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)が参加している。今回の覚書で同企業連合は具体的に、SMR建設に関わる技術や許認可、投資等の状況および建設プロセスの見通しなどを重点的に調査、トルコのみならず世界中の潜在的な市場についても検討する。SMR用の機器はサイト内の全天候型施設で迅速に組み立てられるよう、規格化して工場内で製造する方針で、天候によって作業が中断されなければコストの削減につながるほか、作業員にも良好な作業条件が保証されると述べた。合理化された先進的な製造工程により効率性も徐々に改善されていき、結果的に初期費用の大幅削減と迅速かつ予測可能な建設と起動が確保されるとしている。ロールス・ロイス社のD.オル理事(=写真左)は、「地球温暖化への取組は最も差し迫った長期的課題であるとともに、経済的には重要なチャンスにもなり得る」と指摘。同社製SMRであれば迅速かつ適正価格で建設が可能であり、数万規模の雇用を創出する魅力的な投資機会となるほか、今後数十年間にわたってトルコの繁栄と生活の質の向上が約束されると述べた。EUAS ICC社のY.バイラクタルCEO(=写真右)は、「原子力で電源の多様化を図ることが我々の展望であり、そのためにトルコの社会経済に貢献する持続可能な原子力産業を開発したい」とコメント。トルコはすでに、パートナーであるロシアと大型原子力発電所(120万kW級PWR×4基)を地中海沿岸のアックユで建設中だが、価格面での競争力は重要な指標になるとした。またSMRの実行可能性については、その研究開発を継続的にモニターしていくとしている。なお、ロールス・ロイス社はすでに2017年11月、同社製SMRをヨルダンで建設する技術的実行可能性調査の実施に向け、ヨルダン原子力委員会と了解覚書を締結済みである。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Mar 2020
2422
欧州委員会(EC)の持続可能な金融に関する技術専門家グループ(TEG)は3月9日、2050年までに気候中立(CO2排出量が実質ゼロ)を達成するための行動計画で、中心となるグリーン事業の分類(タクソノミー)を最終報告書(=写真)で公表した。しかし、原子力を同タクソノミーに含めるべきとの勧告がなかったことから、チェコ電力公社(CEZ)など欧州で原子力発電所を操業する電気事業者など7社は12日に声明文を発表し、CO2を出さない原子力が持続可能な電源であると適切に評価されるよう、科学者など独立の立場の専門家グループを設置することをECに要請した。EUタクソノミーは見せかけの環境配慮を装った事業を廃し、環境上の持続可能性を満たす真にグリーンな事業に正しく投資が行われるよう、明確に定義づけるための枠組。今回の報告書でTEGは、原子力を付属文書中の1項目として取り上げており、まず「発電中にCO2をほとんど排出しない原子力発電は気候変動の影響緩和に貢献し得るため、TEGはこの観点から原子力を検討した」と述べた。グリーン事業をタクソノミーに含める重要な基準として、TEGは「環境への十分な貢献」と「(資源循環や生態系といった)他の環境分野に悪影響を及ぼさないこと(DNSH)」の2点を設定。「原子力で環境上かなりの貢献が可能になるという証拠は明確かつ広範囲に及び、低炭素なエネルギー供給で原子力が果たす潜在的役割もデータ等で十分に裏付けられている」とした。しかし、放射性廃棄物の管理などで他の環境分野に悪影響が及ばないかという点について、TEGは原子力関係の証拠は非常に複雑で評価が難しいと指摘。原子力利用の全体体系が生態系等に及ぼすリスクに関しては、ピアレビューの結果や科学的な証拠を入手するとともに、悪影響を抑える先進的リスク管理の手続や規制についても証拠を得ている。しかし、TEGは高レベル放射性廃棄物深地層処分場の例を挙げ、現状ではまだ世界のどこにも安全で長期的に利用可能な地下処分場が存在していないなど、実験等に裏付けられた確固たるデータが不足していると述べた。このためTEGとしては、原子力の全体体系が環境に深刻な悪影響を及ぼさないと結論付けることはできず、現段階で原子力をタクソノミーに含めるよう勧告することはできないが、今後、原子力技術や環境影響について深い専門知識を有するグループが、原子力について一層幅広い技術評価を実施することを推奨するとしている。 これに対してCEZは、仏国のフランス電力(EDF)とオラノ社、フィンランドのフォータム社、ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)、ポーランドの国営エネルギー・グループ(PGE)、スロバキア電力(SE)社とともに欧州の主要エネルギー企業が直面する課題に挑戦し、原子炉の新規建設や既存炉の運転期間延長などで、原子力産業界が今後も持続的な投資を受けるべきとの点でECの合意を得たいと表明。CEZ社のD. ベネシュCEOは、ECやその直属の科学研究組織である「共同研究センター(JRC)」がこの分野の専門的知識に乏しいのであれば、独立の専門家による評価が論理的に必要になると述べた。同CEOはまた、持続可能性の評価でタクソノミーのような新基準を導入することは、欧州の既存の法的枠組に違反すると指摘。「原子力によって如何なる被害も及ばないよう、EUではすでに非常に広範な規制や法律、指令が敷かれている」とした。このことは放射性廃棄物にも適用されており、欧州指令に基づいて管理されているほか、各国の規制当局や国際機関の監視下にも置かれている点を強調している。(参照資料:CEZの発表資料(チェコ語)、TEGの最終報告書と付属文書、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Mar 2020
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米カリフォルニア州を本拠地とする原子炉開発企業のオクロ(Oklo)社は3月17日、同社製の小型高速炉設計「オーロラ」(電気出力0.15万kW)について、先進的な小型原子炉としては初となる建設・運転一括認可(COL)を、子会社のオクロ・パワー社が原子力規制委員会(NRC)に申請したと発表した。「オーロラ」では今のところ、COLの取得と実際の建設に必要な設計認証(DC)審査が申請されていないが、同設計の初号機についてはエネルギー省(DOE)が昨年12月、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可。オクロ社は2020年代初頭から半ばにかけて、「オーロラ」の着工を目指しており、それまでにDCを取得する考えと見られている。NRCでは現在、小型モジュール炉(SMR)として唯一、ニュースケール社製「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のDC審査を実施中である。発表によると、「オーロラ」では米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。原子炉の冷却用に水を使わず、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることができる。また、究極的には燃料のリサイクルや、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すことも可能だとしている。同社は2016年11月、許認可審査の円滑な進展を期すためNRCスタッフと申請前の諸活動を開始した。2018年には、現行規制に基づくCOL申請書の新たな内容構成についてNRCと協議しており、同社は今回、新方式を適用して申請を行った最初の例となった。従来方式では申請書の長さが数千ページ規模だったのに対し、新方式では千ページ以下に留まった模様。このやり方は今後の同様の申請書審査にフィードバックされ、効率性の改善に役立てられるとしている。同社はまた、今回のCOL申請書を初めてインターネット経由で提出した。「数十年前の古いプラント用ガイダンスに縛られることなく、これまでと根本的に異なる核分裂技術の申請書で規制基準を満たす方針であり、当社が先駆けとなった近代的な申請は、米国で先進的技術の商業化を進める重要な一歩になった」と強調している。同社はさらに、非軽水炉型原子炉技術の審査を効率的・効果的に実施するため、NRCが過去数年間にわたって数多くの措置を講じてきたと説明。世界をリードする原子力規制当局として、NRCは今後、先進的原子炉設計の評価を滞りなく進めていくことになると述べた。(参照資料:オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
18 Mar 2020
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米国のエナジー・ハーバー社(旧ファーストエナジー・ソリューションズ社)は3月13日、ペンシルベニア州で運転中のビーバーバレー原子力発電所(100万kW級PWR×2基)について、2018年3月に発表した「2021年中に早期閉鎖するための予告通知」を撤回すると同地域の地域送電機関(RTO)「PJMインターコネクション(PJM)」に伝えたと発表した。早期閉鎖を予告した際、同社はビーバーバレー発電所に加えて、オハイオ州のデービスベッセとペリー2つの原子力発電所についても2020年と2021年に永久に機能停止させるとしていた。しかし、オハイオ州では昨年7月、CO2を排出しない原子力発電所への財政支援を盛り込んだ法案が立法化され、ファーストエナジー・ソリューションズ社(当時)はこれら2つの原子力発電所の早期閉鎖方針を撤回。デービスベッセ発電所では、2020年春の停止期間中に燃料交換するための準備を直ちに開始すると表明している。ビーバーバレー発電所の早期閉鎖方針を撤回する理由についてエナジー・ハーバー社は、ペンシルベニア州のT.ウルフ知事が昨年の10月以降、米北東部地域における州レベルの発電部門CO2排出量(上限設定型)取引制度「地域温室効果ガスイニシアチブ(RGGI)」に同州を参加させる方針である点に言及した。同州がRGGIに参加した場合、炭素を出さないエナジー・ハーバー社の原子力発電設備にも他の電源と平等な機会が与えられ、同社の小売り成長戦略に沿って環境・社会面の目標や持続可能性等の達成が促進される。ただし、目標とする2022年初頭までにRGGIの手続が開始され、期待した効果が出なかった場合は、同社はビーバーバレー発電所の永久的機能停止を改めて検討しなければならないとしている。2009年に制度として始まったRGGIには現在、マサチューセッツ州やコネチカット州などニューイングランド地方の6州に、中部大西洋岸地域のニューヨーク州、ニュージャージー州などを加えた合計10州が参加している。参加地域全体のCO2排出量の上限を設定した上で、排出量オークションにより各排出源に最大許容排出量を配分。発電事業者は所有する発電設備に排出枠を当てるだけでなく、排出枠を売買することや余剰を貯蓄することも可能である。エナジー・ハーバー社は今のところ、ビーバーバレー発電所の早期閉鎖撤回決定を原子力規制委員会(NRC)に口頭で伝えたのみだが、手続きとして30日以内に書面でも連絡する方針。また今回の決定は、原子力発電運転協会(INPO)と原子力エネルギー協会(NEI)にも通知済みだとした。CO2を実質的に排出しない信頼性の高い原子力発電所等により、同社は長期的な価値の創生や将来的な低炭素経済における競争力の増強など体制を整え、顧客や関係者が環境面や社会面の目標を達成できるよう努力を傾注していきたいとしている。(参照資料:エナジー・ハーバー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Mar 2020
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米国のホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で進めている使用済燃料集中中間貯蔵(CIS)施設の建設・操業計画について、米原子力規制委員会(NRC)は3月10日、同施設が周辺住民や環境に及ぼす影響に問題なしと同委スタッフが結論付けた「環境影響表明書(EIS)」の案文を公表し、パブリック・コメントに付した。NRCは同社が2017年3月末に提出した建設許可申請書を約1年後に正式に受理し、技術的な評価審査を実施中。同審査は安全・セキュリティ面と環境影響面の両方について詳細に行われており、EIS案に関しては連邦官報に掲載後、60日にわたって一般からコメントを募集する。NRCはこの間、同案について複数回の公聴会を同州内で開催予定で、収集したコメントを検討した上でEISの最終版を作成、2021年3月に公表することになっている。これと並行して、安全・セキュリティ面の技術評価結果をまとめた「安全性評価報告書(SER)」最終版も同じく2021年3月の公表が予定されており、最終的に実施許可を発給するか否かの判断がこれらに続いて下される。米国では1982年放射性廃棄物政策法に従って、エネルギー省(DOE)が1998年1月から全米の原子力発電所の使用済燃料の引き取りを開始し、深地層処分することになっていた。しかし、2009年にB.オバマ政権がネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場建設計画を打ち切った後、2012年に政府の有識者(ブルーリボン)委員会は「地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数のCIS施設の建設」を政府に勧告。DOEは翌2013年、(1)中間貯蔵パイロット施設の操業を2021年までに開始し、(2)規模の大きい中間貯蔵施設を2025年までに利用可能にする、これらに続いて(3)最終処分場を2048年までに利用可能にする――などの管理処分戦略を公表していた。ホルテック社の計画は、NM州エディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」と結んだ協力覚書に基づき、ELEAがリー郡で共同保有する敷地内でホルテック社が同社製の乾式貯蔵システム「HI-STORM UMAX」を建設・操業するというもの。操業は当初、約8,680トンの使用済燃料を封入した専用の銅製キャニスター500個を地下施設に貯蔵するが、最終的にこの数は1万個に達する見通し。これらのキャニスターは、全米の閉鎖済みないしは廃止措置中の原子力発電所から鉄道で輸送することになる。NRCのEISでは、対象施設の建設から廃止措置までプロジェクト全体の環境影響を評価。具体的には、土地の利用や使用済燃料の輸送、地層と土壌、地表水、湿地帯、地下水、生態学的資源、歴史的文化的資源、環境正義等の側面について評価を行ったとしている。NRCはこのほか、米国のウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社が仏オラノ社との合弁企業「中間貯蔵パートナー(ISP)社」を通じてテキサス州アンドリュース郡で進めているCISの建設計画についても、2018年8月に改定版の建設許可申請書を受理。ホルテック社のCIS計画と同様に申請書審査を実施中である。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
16 Mar 2020
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米バージニア州のBWXテクノロジーズ(BWXT)社は3月10日、エネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)が開発している超小型炉「トランスフォーメーショナル・チャレンジ・リアクター(TCR)」(=図)用として、3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造契約を子会社のBWXTニュークリア・オペレーションズ・グループ(NOG)社が獲得したと発表した。BWXT社は昨年10月、民生用の先進的原子炉や国防総省の超小型原子炉利用計画、宇宙探査機器の電源用原子炉など、近年浮上した様々な顧客の需要に応えるため、同州リンチバーグにあるTRISO燃料製造ラインの再稼働を決めたところ。今秋中にTCR用TRISO燃料の製造を完了するだけでなく、TCR本体の製造についてもORNLの継続的な開発に協力していく方針である。粒子核を黒鉛やセラミックスで被覆するというTRISO燃料技術は元々DOEが開発したもので、粒子核にはHALEU(U235濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用。今回の契約でBWXT NOG社が請け負ったのは、代用物質を3重に被覆したものとHALEUの粒子核、およびHALEU粒子核を3重被覆した燃料粒子の3種類を製造・納入することであり、ORNLはこれらの物質を使って引き続き、様々な分野の科学技術を活用した先進的な短期間製造アプローチと原子炉の試作設計を開発する。今回の受注についてBWXT NOG社のJ.デュリング社長は、「先進的原子力技術で新たな市場を開拓するという当社の戦略上、非常に重要だ」と説明。材料の「付加的加工」(3Dプリンティング)等により製造した全く新しい低コストの原子炉で、DOEやORNLとともに安全かつクリーンな発電を実証していきたいと述べた。TCR実証プログラムは、ORNLが2019年に開始したもの。CO2を出さずに国内電力需要の約20%を賄い、50万人規模の雇用を支える原子力発電の将来を見据え、新規建設の最大ネックとなっている莫大な建設コストや長期間の工期という課題の克服を目指している。このためORNLは、原子炉の先進的な製造プロセスにより超小型炉を設計、建設、運転する方針で、ヘリウム冷却式で受動的安全性を備えた熱出力0.3万kWのTCR実証炉を2023年までにORNLの建屋内で建設するとしている。(参照資料:BWXT社、ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Mar 2020
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