インド原子力省(DAE)に常設されている「科学技術、環境、森林および気候変動に関する議会委員会」は3月6日、同省の2020年~2021年の助成金案審議に関する報告書を議会に提出し、同常設委としては現時点で、米仏製の軽水炉よりもDAEが国産の標準型70万kW級加圧重水炉(PHWR)を建設する方が賢明と考えていることを明らかにした。インドは2030年までに、現在約3%の原子力発電シェアを少なくとも2倍に拡大する計画だが、同常設委は「米仏両国の原子力企業との交渉が10年以上続いているにも拘わらず、これらから支援を受けた新規の軽水炉建設プロジェクトがまったく実現していない」点を指摘。意欲的な目標を達成するには熟慮と予算上の手当てが必要であり、原子力拡大計画では差し当たり国産標準設計を採用して積極的に進めてくことを勧告している。インドは2006年のエネルギー政策で、2032年までに原子力発電設備で6,300万kWの導入目標を定めているが、現在稼働中の原子力発電設備は22基、678万kWである。このうち2基、200万W分がロシアから導入したPWR(VVER)であるほか、2基、32万kW分は1960年代に米GE社が建設したBWR。残りはすべて国産のPHWRで、追加4基のPHWR建設計画と後続2基のVVER建設計画が比較的順調に進められている。しかし、仏国製の欧州加圧水型炉(EPR)をジャイタプールで6基建設するという2009年の了解覚書については、2016年と2018年にフランス電力(EDF)とインド原子力発電公社(NPCIL)が改定版の覚書や新たな協定に調印をしたものの、その後の動きは発表されていない。また、米国とインドは2008年に米印原子力協力協定を締結。GE日立・ニュクリアエナジー社製BWRの建設に向け、インド内閣が2009年に暫定指定した東海岸コバダのサイトでは、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を6基建設することが2016年に正式決定した。しかし、翌2017年のWH社の倒産法適用申請等により、この計画は進展していない。今回、DAE常設の議会委員会は2020年~2021年の助成金案で、国内すべての原子力発電所を維持するための追加予算を最小限に抑えるようDAEに要請。同委によると、インドの原子力プログラムは現在、非常に微妙な岐路にさしかかっており、CO2を排出しない一方でそのコストは下がっていない。福島第1原子力発電所事故後はむしろ、安全性への懸念からコストが上昇しており、価格が大きく下落した太陽光発電との総体的な経済性の差も大きく変化。インドには、原子力のように戦略的側面を持つベースロード電源を諦める余裕はないが、太陽光の間欠性や効率性の悪さを別にしても全体として見過ごすわけにはいかないとした。同委はまた、カルパッカムで2004年から建設中の高速増殖炉原型炉(PFBR)について、DAEが2021年末までに起動させることを期待すると述べた。起動段階に達するまで20年近くかかっているが、インドが誇るパイオニア的イニシアチブであることに間違いはなく、同炉によってインドの原子力プログラムは転換期を迎えるとしている。これに加えて同委は、先進的トリウム炉を工学規模で展開するための計画を進めるようDAEに要請。国内に豊富にあるトリウム資源を背景に、重水炉を中心とした三段階の独自のトリウム・サイクルによる原子力発電開発計画を進めていくことを再確認している。 (参照資料:DAE常設委員会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Mar 2020
3868
米国の国防総省(DOD)は3月9日、今後の軍事作戦に使用する先進的な可動式超小型炉の原型炉建設と実証に向けて、ウェスチングハウス(WH)社、BWXテクノロジーズ(BWXT)社、X-エナジー社の3チームを選定し、それぞれが開発中の小型炉で設計を開始する契約を締結したと発表した。この計画では、DOD戦略的能力室(SCO)が可動式超小型炉の開発で実施中のイニシアチブ「プロジェクトPele」から資金が提供される。DODが遠隔地の作戦基地で様々なミッションを遂行する際、必要となる電力を供給するため、SCOは同イニシアチブの第1段階で、約2年をかけて安全かつ先進的な可動式の超小型炉設計をまとめ上げる。その後の第2段階(2年間)で3社のうち1社の設計を選定し、実際に原型炉を建設する可能性が高いとした。今回の契約で3社がそれぞれ受け取る資金総額は、WH社が約1,195万ドル、BWXT社が1,350万ドル、X-エナジー社が約1,431万ドルとなっている。SCOは2019年1月、「プロジェクトPele」の下で開発する技術について産業界からの情報提供を依頼(RFI)。同イニシアチブで実際に機能する原型炉を迅速に開発するには、エネルギー省(DOE)や傘下の国家核安全保障局(NNSA)、原子力規制委員会(NRC)、および産業界のパートナーとの連携・調整は不可欠。また、その設計の評価や安全性解析が進み、最終的な建設と実証試験に繋がるとSCOは見ている。SCOはまた3月2日付けの連邦官報に、DOE原子力局との連携により超小型炉の原型炉建設と実証で環境影響声明書(EIS)を作成すると発表しており、4月1日まで一般からのコメントを募集中である。そこでは、検討中の超小型炉は、HALEU(U235の濃縮度が5~20%程度の低濃縮ウラン)の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を用いた先進的な超小型ガス冷却炉(AGR)になるとしている。今回の発表でSCOは、超小型炉の技術的な実行可能性を評価するため、高品質のエンジニアリング設計を完成させて安全性や信頼性を確認するとともに、技術面や規制面、製造面のリスクを削減することが必要になると述べた。DOE原子力局と協力してSCOはこれまでに、課題の克服が可能になるような最先端技術や近代的な設計概念を審査してきたが、DODの作戦活動では年間約300億kWhの電力と1日あたり1,000万ガロン以上の燃料が必要であり、この量は今後拡大していく見通し。小型で安全かつ輸送も可能な原子炉によって、無限量に近いクリーン・エネルギーを確保し、地球上のいかなる場所でも長期にわたって作戦活動を維持・拡大したいとしている。©WH社WH社の9日付の発表によると、同社は開発中の超小型モジュール炉(SMR)「eVinci」に輸送可能な機能を加えて、DOD用の「defense-eVinci(DeVinci)」(=写真)の原型炉設計を完成させる。電気出力が最大2.5万kWの「eVinci」は10年以上燃料交換が不要であるほか、革新的な受動的安全性能を備えた次世代の原子炉設計になる予定。DOEは昨年3月、先進的原子力技術の研究開発に対する約1,900万ドルの支援の第4弾として、同設計を対象プロジェクトの1つに選定している。BWXT社は、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が2014年に分社化した原子力機器・燃料サービス事業と連邦政府の原子力事業対応の専門企業。DOEの「新型ガス冷却炉(AGR)用燃料開発プログラム」の下、バージニア州リンチバーグの設備で3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を製造してきたほか、2017年8月には、有人火星ミッションに使用する熱核推進式原子炉の概念設計契約を米航空宇宙局(NASA)から受注している。X-エナジー社は、小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」(電気出力7.5万kW)を独自に開発中。これに使用するTRISO燃料の商業規模の製造加工工場「TRISO-X」を2025年までに完成させるため、ウラン濃縮企業のセントラス・エナジー社や日本の原子燃料工業と協力する契約や覚書を締結した。「Xe-100」については、ヨルダンが2030年までに国内で4基建設することを希望しており、2019年11月に同社とヨルダン原子力委員会が基本合意書を交わしている。DODの今回の発表について米原子力エネルギー協会(NEI)は、「原子炉設計の開発業者が商業炉を建設するのに先立ち、その技術を実証するとともに設計した能力の確認もできるという官民連携の最新例だ」と指摘。選定された3社は、超小型炉開発に数百万ドルもの資金を投じている様々な開発業者の、ほんの一握りだと説明している。(参照資料:DOD、WH社、NEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Mar 2020
6793
米原子力規制委員会(NRC)は3月5日、国内全96基の商業炉における2019年の年間運転実績評価で、すべてのユニットを最良のパフォーマンス・カテゴリーに分類したと発表した。NRCの「原子炉監督プロセス(ROP)」で各原子力発電所の運転データを安全・セキュリティ分野のパフォーマンス指標に基づいて評価したところ、すべての商業炉が設定目標を全面的に達成していたもの。過去20年間における監督プロセスの中で初めてと伝えられており、これらの炉で適用される検査プログラムも最低限実施する通常のベースライン検査に留まることになる。NRCは今後、春から夏にかけて、このような年間評価結果の詳細を議論する公開討論会やイベントを各原子力発電所の近郊で開催する予定。年間評価の結果に関する書簡はすでに各発電所の事業者宛てに送付したほか、今後の点検プランについても通達済みだとしている。ROPの実施にともなう運転データの提出は四半期毎に各原子力発電所事業者に義務付けられており、NRCスタッフは評価結果を事業者に伝えるとともに、追加検査が必要と判断したものについては検査官を送るなどの対応をとっている。原子力発電の利用に際する住民の健康と安全性確保を最大目標に、(1)原子炉安全、(2)放射線安全、(3)テロ等に対する予防措置、という3つの主要な戦略的パフォーマンス分野を特定。これらを評価するため、安全性に関わる7つの重要側面(起因する初期事象、事象の影響緩和システム、バリアの健全性、緊急時対策、公衆の放射線防護、所内の放射線防護、物理的な防護措置)について検査を実施している。また、これらの重要側面に影響する3つの分野横断的要素――人的パフォーマンス、問題点の特定と解決、安全性を重視した作業環境――についても監督を行っている。前回、2018年末現在のROPでNRCは、全98基中4基の商業炉について「安全上の重要度の低い1~2項目について課題を解決する必要あり」と判定したほか、1基については「監視活動を大幅に強化する必要あり」と評価していた。今回、ベースライン検査プログラムからの逸脱基数が最少になったことについて、米原子力エネルギー協会(NEI)のD.トゥルー副理事長は、地元紙のインタビューで「原子炉の適切なレベル評価において、NRCが安全性に関わる事象に一層の重きを置くようプロセスを変更したから」と指摘。各原子炉で性能の改善が図られたことも、安全性関係の課題が少なくなった一因だと説明している。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
10 Mar 2020
2293
米原子力規制委員会(NRC)は3月6日、ペンシルベニア州のピーチボトム原子力発電所2、3号機(各118.2万kWのBWR)(=写真)でそれぞれ2回目の運転期間延長20年間を認め、運転開始以降の通算では2号機が1973年9月から2053年8月まで、3号機は1974年8月から2054年7月までとなる、各80年間稼働することを許可すると発表した。NRCは昨年12月、米国では初となる「2回目の運転期間延長」をフロリダ州のターキーポイント3、4号機(各76万kWのPWR)で承認しており、今回のピーチボトムは2件目。これらに続いて、NRCはサリー1、2号機(各87.5万kWのPWR)の申請についても審査中であるほか、今年10月から12月までにノースアナ1、2号機(99.8万kWと99.4万kWのPWR)で、また2021年10月以降はオコニー1~3号機(1、2号機は88.7万kWのPWR、3号機は89.3万kWのPWR)で、事業者が現行で許されている60年間の運転に追加で20年間、期間延長を申請する見通しだとしている。米国では運転開始当初の商業炉の認可運転期間は40年だが、これは技術的な制限ではなく経済性と独占禁止の観点によるもの。40年間稼働することにより、原子力発電所では電気料金を通じて費用の回収が完了するとされており、減価償却の観点から議会がこの期限を定めた。最初の40年が経過するのに備えて、希望する事業者は追加の運転期間を20年ずつNRCに申請することになっており、NRCはすでに約100基の商業炉のうち94基(このうち6基は早期閉鎖済み)に対して40年プラス20年の運転継続を承認。米国では今や、合計60年の稼働が一般的となっている。ピーチボトム2、3号機はそれぞれ、2013年と2014年に最初の運転期間延長20年が認められており、事業者のエクセロン・ジェネレーション社は2018年7月に両炉で2回目の運転期間延長をNRCに申請した。同社のB.ハンソン最高原子力責任者は、過去7年間に実施した広範なアップグレードにより、両炉では安全かつ信頼性と効率性の高い運転継続が可能になったと紹介。出力を約12%向上させるために新しい機器と技術に相当額の投資を行っており、具体的には低圧と高圧両方のタービン、蒸気乾燥機、主発電機や変圧器で取り替えや機能向上を行ったことを明らかにした。同氏は一方で、「原子力発電所を運転し続けていくには今後も継続的に収益を上げていかなければならない」と明言。原子力が提供する「炭素排出量ゼロ」という恩恵が環境や経済、信頼性の側面から高く評価されるよう、政策的な改革を推し進めることが重要だとした。ピーチボトム発電所が2054年まで稼働すれば、そのクリーン・エネルギーによって5億3,600万トン以上のCO2排出が抑えられるが、これは毎年330万台の自動車を34年にわたって削減したのと同じ効果があると述べた。同発電所はさらに、地域経済を支援する施設でもあると同氏は説明した。常勤職員として雇用する750名には年間合計で8,460万ドルの給与が支払われるほか、燃料交換時には追加で年平均1,800名の臨時雇用者や職人を雇用している。彼らがホテルやレストラン、ショップに支払いを行うことで、地元の経済が潤うとしている。(参照資料:NRC、エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
09 Mar 2020
3906
米国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)と国防長官府は3月2日、エネルギー省(DOE)原子力局との連携により、先進的な可動式超小型原子炉の原型炉建設と実証に向けて、環境影響声明書(EIS)を作成すると同日付け連邦官報に掲載した。EISは国家環境政策法の要件に基づき、計画された活動が周辺住民の健康や環境に及ぼす可能性のある悪影響を軽減、最小化することを目的としている。SCOは同EISでカバーする範囲について、一般からのコメントを同日から4月1日までの期間に募集。それらを斟酌した上でEIS案を作成し、最終的には同炉を建設、様々な実証活動に加えて運転終了後の処分も行うという提案を実行に移す。SCOの説明によると、DODは世界でも最大規模のエネルギーを消費するユーザーの1つであり、今後の軍事作戦を遂行するにあたり、必要なエネルギー量は大幅に増加する見通し。作戦行動の実施地で配電網への依存を軽減することがDOD設備に求められているが、こうした配電網の多くは、様々な脅威にともない機能停止が長期化しやすく、DODの重要ミッションを「エネルギー供給の途絶」という高いリスクにさらしている。バックアップ電源としては主にディーゼル発電機が用いられているが、これらは現地での燃料備蓄が限られるほか、母国の新たな防衛ミッション用としては小さ過ぎて持続性と信頼性に乏しい。先進的な原子力発電であれば、エネルギー供給保証や(送電網の一時的機能停止からの)回復力などの点でDODのニーズを満たせるものの、技術面と安全面の仕様を全面的に実証する必要があるとした。このため、DODが今回提案した超小型炉では、通常運転時や異常時も含めて放射線被ばくを「合理的に達成可能な限り低く」抑えることが必須条件。具体的な仕様は、HALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料を使用する先進的な超小型ガス冷却炉(AGR)となる。予定している活動としては、同炉の原型炉を候補地となっているDOE傘下のアイダホ国立研究所など2か所で建設するが、1つは既存インフラ施設内部での建設となる一方、もう1つは屋外とする計画。その上で、プロジェクトの対象物質の試験と照射後試験、原子炉の起動時と過渡変動時の試験を行うほか、サイト・バウンダリ内における同炉と専用機器の可動性評価や運転試験も実施する。また、これに付随する活動として、燃料の製造加工や試験モジュールの組み立て、放射性廃棄物と使用済燃料の管理などが含まれるとしている。(参照資料:3月2日付連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Mar 2020
2223
中国核工業集団公司(CNNC)は3月2日、世界初の「華龍一号」設計採用炉として2015年5月に着工した福建省の福清原子力発電所5号機(PWR、115万kW)で、温態機能試験が概ね完了したと発表した。「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代設計を一本化して開発したPWR設計で、中国が知的財産権を保有。現在、福清5号機を含め中国国内で合計5基が建設中であるほか、輸出用の主力設計として国外の原子力市場で積極的な売り込みが進められている。温態機能試験が完了したことで、CNNCは同炉の年内の送電開始に向けて盤石な基盤が築かれたと指摘。同じ設計を採用して5号機の7か月後に着工した同6号機、およびCGNが2015年12月から2016年12月にかけて、CGN版の「華龍一号」設計で着工した広西省の防城港3、4号機(PWR、各118万kW)は、いずれも同設計の実証炉プロジェクトと位置付けられており、これらすべてが年内に送電開始可能と見られる。さらに、これらに続いてCNNC傘下の中核国電漳州能源公司が昨年10月、「華龍一号」設計による漳州1号機(PWR、115万kW)を福建省で本格着工している。機能試験は、系統毎の機能やプラント全体の出力上昇等を試験するために行われる。プラント系統の構成や流量などを可能な限り模擬する常温・常圧の冷態機能試験と、これに続いて原子炉冷却系を高温・高圧状態にした上で実施する温態機能試験があり、福清5号機では1次系と2次系および補助システムの機能を全面的に確認。CNNCは動的と静的両方の安全システムや蒸気タービンなど、原子炉系統とタービン系統の機器すべてで設計要件通りのパラメーターが得られたとしている。中国国内では建設中の5基に続いて、CGNの寧徳5、6号機(PWR、各108.9万kW)建設計画、および漳州2号機(PWR、115万kW)の建設計画で「華龍一号」の採用が決まっている。国際展開については、パキスタンで2015年8月と2016年5月にそれぞれ着工したカラチ2、3号機(PWR、各110万kW)に同設計が採用されており、2号機ではすでに昨年6月、格納容器にドーム屋根が設置された。 また、EDFエナジー社が英国で建設予定のブラッドウェルB原子力発電所(PWR、110万kW×2基)も同じ設計になることから、同国の規制当局は2017年1月から「華龍一号」設計の英国版について「包括的設計審査(GDA)」を実施中。同審査は今年2月に最終段階の第4ステップに進展しており、2021年後半に設計容認確認書(DAC)が発給される見通しである。(参照資料:CNNCの発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Mar 2020
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米エネルギー省(DOE)は2月26日、ポーランド政府の代表とエネルギーに関する第三回目の戦略的対話をワシントンで開催した。同省のD.ブルイエット長官はこの中で、ポーランドのエネルギー供給保証強化に向けた協力方策として、クリーンで信頼性が高く、送電網の一時的な機能不全からの回復力(レジリエンス)も高い原子力発電所をポーランドで建設することに、米国の原子力産業界が引き続き関心を抱いていると表明した。この認識はポーランド代表側も確認・共有しており、この対話に出席したポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官は自身のホームページで、「ポーランドとしてはCO2を排出しない原子力は国内のエネルギー供給ミックスにおける重要要素になると考えている」と説明。これは地球温暖化防止のための欧州連合(EU)目標とも合致していると述べた。同特任長官はまた、リンク付けした現地報道記事の中で「わが国との長期的な協力を望む数社の潜在的パートナーが米国におり、我々は原子力発電所の建設で現実的な解決策に近づきつつある」と指摘。大型原子力発電所の導入を目指して早ければ数か月以内、遅くとも一年ほどで建設パートナーを選定すると伝えている。ポーランドでは石炭や褐炭といった化石燃料資源が豊富である。しかし、EUが2020年までのエネルギー政策目標の中でCO2排出量を2005年比で14%削減などを設定したため、ロシアからの石油と天然ガスの輸入量削減とエネルギー源の多様化を推進中。チェルノブイリ原子力発電所事故により、一度は頓挫した原子力発電の導入計画も進めている。ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官によると、ポーランドの現在の原子力導入プログラムでは、2040年から2045年頃に出力100万kW以上の大型炉を少なくとも6基、合計設備容量で900万kW分を約20年間に3段階に分けて建設する計画。これらの原子炉によって安全かつ安定的なエネルギーを20数%程度、60年にわたって確保する方針であり、いずれ同プログラムのパートナー企業を正式に招聘すると述べた。両国のエネルギーに関する戦略的対話は、2018年9月に米国のD.トランプ大統領とポーランドのA.ドゥダ大統領が定期的に開催することで合意した。これを受けてDOEのR.ペリー長官(当時)は同年11月、ポーランドのK.トゥホジェフスキ・エネルギー相と会談し、この対話構想の下で民生用原子力協力に向けた作業グループの設置を決めるなど、先進的原子力技術を含めた両国間のエネルギー供給保証協力の強化で共同宣言に署名。その後、2019年中にすでに二回、戦略的対話を実施している。(参照資料:DOEの発表資料、ナイムスキ長官HP(ポーランド語)、同リンク付け記事(1)、(2)(ポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Mar 2020
2028
米ホワイトハウスは2月28日、原子力規制委員会(NRC)で昨年5月から空席となっている委員1名として、エネルギー政策の専門家で米議会上院・歳出委員会の専門家スタッフでもあるクリストファーT.ハンソン氏をD.トランプ大統領が指名する方針だと発表した。定員5名のNRCは現在、K.スビニッキ委員長(共和党支持派)、J.バラン委員(民主党支持派)、A.カプト委員(共和党支持派)、D.ライト委員(共和党支持派)で構成されている。ハンソン氏の指名が上院で承認された場合、昨年4月末に辞任したS.バーンズ委員に代わって、差し当たり2024年6月末まで務めることになる。また、共和党支持派の委員がすでに3名いることから、原子力法の規定によりハンソン氏は民主党支持派あるいは中立派と見られている。発表によるとハンソン氏は、インディアナ州のバルパライゾ大学で宗教学の学士号を取得。その後、イエール大学のイエール神学校および林学・環境学大学院で倫理学や天然資源経済学を専攻し、修士号を取得した。原子力や原子燃料サイクル、放射性廃棄物問題等に関しては20年以上の経験を有しており、米エネルギー省(DOE)原子力局で上級アドバイザーを務めたほか、コンサルティング企業のブーズ・アレン・ハミルトン社でコンサルタントとして勤務するなど、政府と産業界の両方を経験している。(参照資料:ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュースほか)
02 Mar 2020
1964
カナダ原子力研究所(CNL)は2月26日、昨年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する最初の小型モジュール炉(SMR)研究プロジェクトとして、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)のSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(=右図)を選定し、同社の子会社であるUSNC-パワー社と協力協定を締結したと発表した。この協力では主に、MMRで使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造研究やMMR用黒鉛炉心の照射プログラム策定、CNLチョークリバー・サイトにおける燃料分析検査室の設置などをカバー。カナダのプロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに昨年4月、USNC社のパートナー企業として、MMRをCNLチョークリバー・サイト内で建設するための「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。今回の協力では、チョークリバー・サイトでのFCM製造施設建設に向けた実行可能性調査の準備活動や、MMRの炉心や燃料の設計妥当性を確認する試験プログラム開発が含まれる。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにオンタリオ州にあるチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を設定。関連企業からは、SMR原型炉や実証炉の建設で15件以上の関心表明書を受け取った。これに続いてCNLは2018年4月、チョークリバーを含むCNLの管理サイトで実際にSMR実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集。第1回目となるこの募集で、同年6月にはスターコア・ニュークリア社やU-バッテリー・カナダ社など国内外のSMR開発企業4社から提案があったという。CNLはこのほか、SMR開発を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブとして、CNRIを2019年に設置している。1年単位のCNRIプログラムを通じて、CNLは世界中のSMRベンダーにCNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供。カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、SMR技術の商業化を加速する計画である。USNC社はCNLが昨年11月、CNRIの初回の支援対象候補に選定した4社の1つで、残り3社(英モルテックス・エナジー社、米Kirosパワー社、加テレストリアル・エナジー社)の提案に関してCNLは現在、審査と交渉の様々な段階にあるとした。今回の協力取り決めにより、USNC社とCNLはMMRの多様な側面の中でも特に、燃料の開発・試験を検討。CNL側からは150万カナダドル(約1億2,000万円)相当の現物出資が行われ、2021年春までに完了する予定である。CNLとの協力に関してUSNC社のF.ベネリCEOは、「当社製SMR設計の実行可能性とFCM燃料の特殊な優位性を実証する重要な機会になる」と説明している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Feb 2020
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フィンランドの国立技術研究センター(VTT)は2月24日、地域暖房用の熱供給を目的に国内で小型モジュール炉(SMR)の開発に乗り出すと発表した。同国では2019年に、地域熱供給用の設備だけでCO2排出量が400万トンを越えたが、政府は2029年までに発電部門で脱石炭火力を達成する方針。熱供給システムの脱炭素化は地球温暖化防止に向けた最も重要な課題の1つであり、VTTは第一段階として国内の熱供給ネットワークに適したSMRの概念設計を開発する。また、これに必要な機器類の製造技術で新たな産業部門を国内に創出するとしている。VTTは雇用経済省が管轄する北欧最大の研究機関で、エネルギー分野を含む幅広い科学技術分野で最先端の技術的知見を蓄積。独自の研究施設と海外に幅広いネットワークを保有しており、過去5年間はSMRの導入機会を探る複数のプロジェクトに携わってきた。欧州レベルでは特に、欧州原子力共同体(ユーラトム)が資金提供して昨年始まった「ELSMOR」プロジェクトで、VTTはリーダーとして欧州における軽水炉型SMRの許認可手続きに向けた調整作業を進めている。発表によると、原子力は国内総発電量の約3分の1を賄うフィンランド最大規模の電源であり、CO2排出量は風力発電などと同程度。発電部門におけるCO2排出量は少ないとしても、「実質ゼロ化」を達成するにはエネルギー産業の他の分野で排出量を大幅に削減する必要があり、SMRは低炭素な原子力発電を熱供給に利用拡大するのに適した設備である。これに関してVTTのV.トゥルッキ研究チームリーダーは、「スケジュールがタイトな上、低コストな代替選択肢はわずかだ」と指摘。その上で、目標の達成に向けて新たな技術革新と新しい技術の導入が必要であるとし、原子力による地域熱供給はCO2排出量の大幅な削減に繋がると強調した。VTTはまた、海外で多くのSMR開発プロジェクトが許認可段階に達したものの、それらの多くは発電用あるいは産業プロセス用の高温エネルギー源だと説明。約100度Cの熱湯を必要とする地域熱供給では、一層経済的でシンプルなソリューションを利用できるため、VTTとしてはこの目的に合わせたプラントを開発し、都市部の一般家庭や人口密集エリアの暖房用としてコスト面の効果が高いものを目指す方針である。実際のSMR開発にあたり、VTTとしては保有する計算コード等、多分野の総合的能力を活用する。VTT原子炉安全分野のJ.レッパネン研究教授は、「炉心のモデリングを例に取るなら、ハイファイ数値シミュレーション手法が適用できる」と指摘。同教授が開発した「連続エネルギー・モンテカルロコードSERPENT」は、すでに44か国・250もの大学や研究機関における原子炉のモデリング等に活用されている点を強調した。(参照資料:VTTの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Feb 2020
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米国で約30年ぶりの新設計画としてA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)をジョージア州で建設中のサザン社は2月19日、3号機の格納容器内では最後となる大規模なコンクリート打設が完了したと発表した。翌20日には2019年第4四半期の収益報告書を公表し、同社としては規制手続で承認された3、4号機の稼働開始日程の2021年11月と2022年11月を達成する十分な自信があるものの、「挑戦的作業計画」を進めることにより3号機は2021年5月に、4号機では2022年3月に前倒しすることも可能だと強調している。この建設プロジェクトではサザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社が主要な出資企業となり、2013年3月と11月に3、4号機をそれぞれ本格着工。ほぼ同時期に着工したV.C.サマー2、3号機と同じく、ウェスチングハウス(WH)社製のAP1000設計を採用したが、初号機建設にともなう様々な問題やWH社による倒産申請などにより、両炉の完成日程は当初計画から約4年先送りされている。ジョージア・パワー社を含む出資企業4社は2017年5月、プロジェクトのエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を放棄したWH社と新たな取り決めに基づく「サービス協定」を締結。この協定により、サザン社のもう一つの子会社で、両炉の運転を担当する予定のサザン・ニュークリア社が建設プロジェクトの管理業務を引き継いだ。2019年3月には、米エネルギー省(DOE)が同プロジェクトに対し、追加で37億ドルの政府融資保証適用を決定。ジョージア・パワー社は同年7月、3号機に装荷する157体の燃料集合体を発注した。サザン社の昨年第4四半期の収益報告によると、3号機では原子炉容器の蓋を開けた状態で行う試験が11月に始まったほか、中央制御室での試験準備も12月に完了するなど、予定していた主な作業項目がすべて成功裏に完了した。現在、3、4号機の建設進捗率はそれぞれ85%と63%で、プロジェクト全体の作業は84%完了している。同社は2019年4月、建設サイトにおける「挑戦的作業計画」を策定したが、これは基準となる現行の稼働開始日程(2021年11月と2022年11月)に余裕をもたせることが目的となる。同計画では、今年の末までに3号機の建設工事を90%完了という目標が設定されているが、同社のT.ファニング会長兼CEOによると、この計画を進めたことにより、2019年は結果的に主要な作業が大幅に進展した。また、プロジェクトのコストと日程を定期的に見直すなかで、同社は今月初頭、3つの重要な結論を導き出している。すなわち、(1)現行の稼働開始日程を達成する能力が同社に十分あることを確認、(2)「挑戦的作業計画」に示された3号機の稼働開始目標日程(2021年5月)と4号機の目標日程(2022年3月)を変更せず、同計画を継続的に活用していく戦略を支持、(3)プロジェクト全体の資本コスト予測に変更がないことを確認――である。同社はさらに、2020年の「挑戦的作業計画」に一層の改善を加えており、これによって、年末までに3号機で燃料を装荷し2021年5月に稼働開始するという目標の達成が可能になると説明している。(参照資料:サザン社の発表資料(1)(2)、2019年第4四半期収益報告の電話会議記録、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Feb 2020
3212
仏国内すべての原子力発電所を所有・運転するフランス電力(EDF)は2月22日、昨年9月に公表していた通り、稼働中の商業炉としては最も古く1977年に運転開始したフェッセンハイム原子力発電所(=写真)1号機(PWR、92万kW)を永久閉鎖したと発表した。2月19日の官報ではすでに、同炉の運転認可を無効化する政令が22日付けで発効すると発表されており、これに続いて2号機(PWR、92万kW)も6月30日に永久閉鎖する予定。仏国政府はこれにより、原子力と再生可能エネルギーの間で発電電力量のバランスを取っていく戦略の第一歩を踏み出したと指摘。これと同時に、2022年までに石炭火力発電所の全廃を目指すなど、発電部門からのCO2排出量の削減努力も継続するとしている。同発電所の閉鎖は、2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」を受けて、約75%の原子力発電シェアを2025年までに50%まで削減するとともに、原子力発電設備を2015年当時のレベルの6,320万kWに制限するための施策となる。元々はF.オランド大統領(当時)が公約していたものだが、2025年までに削減するのは実質的に不可能との判断から、E.マクロン大統領は2018年11月、「エネルギーと地球温暖化に関する仏国戦略」の中で目標の達成を10年先送りし、2035年にすると表明。フェッセンハイムの2基を含め、2035年までに合計14基の90万kW級原子炉を永久閉鎖する方針である。仏国では現在、フラマンビル3号機(PWR、163万kW)が同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中であるため、EDFはこれと引き替えにフェッセンハイム1、2号機を早期閉鎖する条件として、「運転認可の無効化はFL3が起動した日にのみ有効にすること」などを2017年に理事会決定していた。しかしFL3では2018年7月、主蒸気管を含む2次系配管の溶接部に品質のバラ付きが認められたため、燃料の初装荷はさらに遅れて2022年末になる見通し。このためEDFは2019年9月、FL3の完成を待たずにフェッセンハイムの2基を閉鎖すると決定。1、2号機をそれぞれ、2020年2月と6月に永久閉鎖するため申請書を規制当局と環境連帯移行省に提出していた。なお、仏国政府はフェッセンハイム発電所の閉鎖が地元の不利益につながることがないよう、2018年から地元自治体の職員らとフェッセンハイムの将来プロジェクトを検討。地元のコミュニティや企業、組合などとも協力し、発電所職員の再教育や地域の再活性化を盛り込んだ戦略を2019年2月に完成させた。同発電所が立地するオー=ラン県を欧州規模の低炭素経済基準地区とするため、技術革新部門を基盤とする経済によって持続的な雇用を生み出し、社会経済的な転換を図るとしている。(参照資料:EDF(仏語)、仏国政府(仏語)、環境連帯移行省(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Feb 2020
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米テネシー州にあるエネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)とテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月19日、TVAが州内のクリンチリバー・サイト(=写真)で建設する小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉設計について、コスト面での有効性などを評価するため、協力覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、同サイトで2基以上、合計電気出力80万kW以下のSMR建設を想定した「事前サイト許可(ESP)」を米原子力規制委員会(NRC)から取得。ESPは20年間有効だが、現時点で採用設計が確定していないため、今回の覚書の下で両者は協力して、可能性のある先進的原子炉設計について許認可手続と建設、運転・維持にともなう経済的実行可能性の改善方法を探る。実際に原子炉建設が決まった場合、TVAはNRCに対して別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。両者の今回の協力は、双方の原子力関係能力や資産を活用するこれまでの協力関係に基づいている。TVAのワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始した際、ORNLはコンピューターのモデリング技術を用いて同炉における最初の6か月間の運転をシミュレートした実績がある。両者の発表によると、評価対象とする原子炉設計は具体的に、工期が短くて柔軟な運転が可能、かつ低コストでCO2を排出しないもの。評価を行う重要分野としては、先進的な建設技術の開発やサイト・インフラ支援のための総合的開発能力、経済的な建設を促進する様々な機能の基盤、先進的製造技術における技術革新、規制要件や安全要件を一層効果的に遵守できる技術基盤を挙げている。ORNLはこれまでDOEの国家プログラムの中で、新しい材料物質やプロセス、最先端技術の開発と活用によって、多くの電気事業者が発電技術を改良したり技術革新を図れるようにする研究活動を続けてきた。今回の覚書を通じてTVAは、ORNLの保有する科学的知見のほかに、「高中性子束・同位体生産炉」や世界最速のスーパーコンピューターが置かれている「オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング施設(OLCF)」、「製造実証施設(MDF)」といった世界最先端の施設を利用することが可能になる。ORNLのT.ザカリア所長は、「世界を牽引するORNLの研究能力とTVAの運転経験を組み合わせて、コスト面の効率性が高い次世代の原子力発電を促進したい」と表明。「原子力は長年にわたって米国のエネルギー構成における重要な要素であり、CO2を出さない発電技術への要望の高まりは、我々が今後も安全で効率的かつ価格も適切な原子力発電を取り入れることを求めている」と述べた。(参照資料:ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Feb 2020
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仏国すべての商業炉を運転・管理するフランス電力(EDF)は2月18日、同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として2007年12月から建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(PWR、163万kW)(FL3)で温態機能(ホット)試験が完了したと発表した。同国で最も新しいシボー2号機のホット試験が行われて以降、20年以上が経過しているため、EDFは社内とパートナー企業から1千名以上の職員を動員した。燃料を装荷する前に冷却系や安全システムが設計通りに機能しているか1万件以上の設計基準について試験を実施したところ、達成率は95%を越えていたと強調。EDFの担当理事は、「このような良好な結果が得られたことに満足しており、EPR建設プロジェクトにおける決定的な一歩になった」と評価している。 同炉は国内で初めて第3世代の最新設計を採用したことから、土木エンジニアリング作業の見直しや福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価の実施などで、当初2012年に予定していた完成は再三にわたり繰り延べられた。また、2015年にアレバ社(当時)傘下のクルーゾー・フォルジュ社が製造した原子炉容器で構造組成に異常のあることが判明。2018年には主蒸気配管の溶接部で品質上の欠陥が認められ、仏原子力安全規制当局(ASN)は昨年6月、FL3の運転を開始する前に溶接部の修理を終えるよう命じていた。これらの対応により、EDFの最新スケジュールでは2022年末にFL3に燃料を装荷する予定。運転開始は2023年にずれ込むと予想されている。FL3の冷態機能試験は2018年1月に完了しており、2019年9月からは高温高圧に対する1次系の健全性等を確認するため温態機能試験が開始された。EDFの発表によると、その多くが初めて行う操作だったが、通常運転時の条件の再現で1次系冷却水の温度303度Cと圧力154バールを達成したほか、2次系を使って1次系を冷却。蒸気発生器の起動や停電試験、タービンを毎分1,500回転させる試験も実施したという。これらの試験を通じて、FL3では偶発的な事象や事故が発生した場合でも機器が適切に機能することが確認されたとEDFは指摘。そのような状況下で、発電所の職員が原子炉を安全に運転する能力も確認できたとしている。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Feb 2020
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ウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)は2月14日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(=断面図)を建設・運転する際の規制上、設計上の課題を評価するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。 覚書の調印式は今年1月、ニュースケール社の事務所があるオレゴン州コーバリスで行われており、これには両者の代表者に加えて米国務省やエネルギー省(DOE)、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)の代表者らが参加した。ウクライナはすでに2018年3月、国内で米ホルテック・インターナショナル社製SMRの建設計画を進めつつ同技術の一部国産化を目指すため、ウクライナの原子力発電公社(エネルゴアトム社)がホルテック社との協力覚書に調印。2019年1月には、これらにSSTC NRSを交えた3者が国際企業連合を正式に結成し、国内でSMRの建設計画を促進している。 ただし、ホルテック社のSMRは今の所、米国内の設計認証(DC)手続が正式に始まっていない。これに対してニュースケール社製のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)がSMRに関して唯一実施している全6段階の設計認証審査のフェーズ4まで終了。すでにカナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書が結ばれているほか、2020年代半ばには米国初のSMRとしてDOE傘下のアイダホ国立研究所内での運転開始が見込まれている。 今回の覚書によりSSTC NRSは具体的に、米国で行われているニュースケール社製SMRのDC審査経験に基づき、ウクライナの建設・運転許認可プロセスにおける米国との隔たりについて分析・調査を実施する。SSTC NRSはウクライナでSNRIUが新たな原子力技術を審査・承認する際、主要アドバイザーとして機能している。SNRIUが原子力安全の基準や規制・規則に対するコンプライアンスを確認し、データ分析や報告を行うにあたり、独立の立場の評価結果や技術的助言をSNRIUに提示していることから、SSTC NRSは同覚書を通じてSMR技術がウクライナのエネルギー需要を満たす上でどれほど有効であるかなど、関連する様々な疑問に答える一助になると指摘。評価結果をSMRの許認可プロセスに統合して、国内での将来的な建設につなげたいと述べた。 ニュースケール社も「SSTC NRSは経験豊富かつ評判の高い科学技術支援組織」と評価した上で、「当社のSMR技術をウクライナの将来エネルギーに組み込む最良の方法を探し出してくれるはずだ」とコメント。ウクライナとの覚書は、同社がSMR技術の開発リーダーであるとともに技術革新企業であることを示しており、今後も潜在的顧客となり得る世界中の組織と同様の合意を得るべく協議を続けていきたいとしている。(参照資料:ニュースケール社、SSTC NRS(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Feb 2020
2494
アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電設備となるバラカ発電所で2018年3月に完成した1号機(韓国製140万kW級PWR)について、連邦原子力規制庁(FANR)は2月17日、運転管理会社のNAWAHエナジー社に60年間有効な運転許可を発給したと発表した。アラブ諸国にとっても初の商業炉である同炉で安全な運転を保証するため、FANRは1万4千ページにおよぶ運転許可申請書を審査。その際、原子炉の設計や安全性その他に関して、すべての規制要件との完璧な適合性確保を目指して、185件以上の広範な点検を行うとともに約2千件の追加情報を請求している。この申請書は、UAEで原子力発電の導入を担当する首長国原子力会社(ENEC)が2015年3月、当時の建設進捗率が約70%だった1号機について、発足前のNAWAHエナジー社に代わって提出していたものである。審査の結果、FANRは1号機の運転・保守に関する要件がすべて満たされていると承認。NAWAHエナジー社は今後、FANRによる24時間体制の点検の下、起動プロセスの第一段階として、同炉に燃料集合体を安全に装荷するための最終的な準備作業を進めるとした。年内の営業運転開始を目指して、数か月間にわたって出力上昇試験を含む試運転を実施すると見られている。同発電所では現在、1号機と同型設計の2号機~4号機の建設工事が同時並行で行われている。2号機の進捗率がすでに95%以上に達しているほか、3号機は92%以上、4号機も83%以上となっている。4基すべてが送電を開始すれば、UAEでは総電力需要量の約25%が賄われる見通しである。1号機の完成以降、NAWAHエナジー社および同社の親会社であるENECは、燃料の初装荷日程を先送りして運転員の訓練など営業運転の準備作業を進めつつ、国際原子力機関(IAEA)を始めとする国内外複数の規制関連機関に1号機の安全性評価を依頼。先月下旬には、世界原子力発電事業者協会(WANO)の専門家チームが同炉で起動前審査(PSUR)を行い、安全な起動と運転を保証する要件すべてが遵守されていると結論付けていた。1号機の運転許可発給について、アブダビ首長国のムハンマド皇太子兼UAE軍副最高司令官はTwitterで、「原子力の平和利用開発を推進するという我が国の政策方針の中で新たな章が刻まれた」とコメントした。IAEAに常駐するUAEのH.アル・カービ大使も、「今回の判断はIAEAや韓国、その他の国際的な規制機関との集中的な共同作業と協力の賜物だ」と評価。UAEの原子力発電プログラムと規制の枠組には、IAEAの安全基準と国際的な良好事例に則して進めることが明記されている点を指摘した。FANRのC.ヴィクトールソン事務局長は、UAEが安全・セキュリティや核不拡散関係の厳しい国際基準を満たすため、過去10年間にIAEAから11もの大型ピアレビュー・ミッションを受け入れ、原子力インフラや法・規制システム、緊急時対策に至るまで、様々な側面から評価を受けた事実に言及している。(参照資料:NAWAHエナジー社、FANRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Feb 2020
2423
トルコ初となるアックユ原子力発電所(120万kWのロシア型PWR×4基)の建設プロジェクトで、4基分すべての機器とタービン系の製造を担当するロシアのアトムエネルゴマシ(AEM)社は2月12日、同社のボルゴドンスク支部(AEMテクノロジー社)が1号機の原子炉容器(RV)となる上下2つの容器胴で最終溶接作業を完了したと発表した。この建設プロジェクトは2010年5月にトルコとロシアが結んだ政府間協力協定(IGA)に基づいて進められており、2018年4月に地中海沿岸のメルシン地区で着工した1号機の運転開始は2023年に予定されている。2019年7月に同炉用の最初の大型機器としてコア・キャッチャーが建設サイトに到着したほか、同年12月には、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社がトルコで設置したプロジェクト企業が、同発電所をトルコの送電グリッドと接続するための契約を国営送電会社(TEIAS)と締結している。発表によると、10日間にわたったこの作業では、溶接部を150度C~300度Cに加熱した上で最終的な溶接作業を実施した。これに続いて、円筒型になった重さ約320トンのRVをクレーンで高炉の中に入れ、機械的強度を得るための熱処理を2日間行うほか、専門家がX線検査も含めて、幅広い分野の点検を実施するとしている。RVではまた、炉心内のモニタリング・センサーから出力するケーブルや制御棒駆動機構を上蓋の上部に設置する。また、容器胴の上半分には、冷却材を供給・排出するノズルや緊急時に回路が減圧された際に冷却材を注入するノズルも取り付けるため、上蓋と容器胴の接続部分はスタッド(植え込み)ボルトで固定する予定。RVの製造作業と並行して、AEM社は炉内構造物やRV上蓋なども製造中だとしている。(参照資料:AEM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2020
2360
英国の原子力規制庁(ONR)は2月13日、中国製の第3世代原子炉設計「華龍一号」の英国版(UK HPR1000)で実施中の包括的設計審査(GDA)で第3ステップが完了し、最終段階の第4ステップに進展することになったと発表した。GDAは英国で初めて建設される原子炉設計に対して行われる事前設計認証審査で、100万kW級の「UK HPR1000」設計についてはEDFエナジー社による複数の新規原子炉建設プロジェクトに協力する中国広核集団有限公司(CGN)が中心的役割を担い、エセックス州のブラッドウェルB原子力発電所として2基建設する予定である。同設計のGDAは2017年1月に開始され、その第3ステップでは19の技術分野と分野横断的課題に関する詳細な評価作業が行われた。その結果、ONRは「次の段階に進むのに十分な情報が、審査活動の管理会社としてCGNらが設置したジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社から得られており、これまでところ同設計への設計容認確認書(DAC)発給を阻むような安全・セキュリティ上の根本的欠陥は見受けられない」と結論付けた。最終的に同設計にDACが発給されるのは、2021年後半頃になると見られている。同審査では、ONRが対象設計の安全・セキュリティ面について英国の厳しい基準が満たされているか、約5年をかけて評価するほか、環境庁(EA)が環境保護と放射性廃棄物管理の側面について評価作業を実施。現在サマセット州のヒンクリーポイントC原子力発電所として建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」設計については、ONRとEAが2012年12月にそれぞれ、初のDACと設計容認声明書(SoDA)の発給を決定した。また、東芝がNuGen社を通じてカンブリア州のムーアサイドで建設を計画していたウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」設計に対しては、WH社が米国で破産申請を行った2017年3月29日の翌日にONRらがDACとSoDaを発給。同年12月には、日立製作所がホライズン社を通じてウェールズ地方アングルシー島で建設予定だった日立GE社製の「英国版ABWR」設計にも、これらを発給済みとなっている。「UK HPR1000」の今後のGDAに関してONRは、「これまでの作業は順調に進展中だが、GNS社の出資企業であるCGNとその子会社およびEDFエナジーの親会社には未だ成すべき作業が山積しており、ステップ4でも引き続き同設計の安全・セキュリティ面を厳しく評価していく」としている。(参照資料:ONR、GNS社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Feb 2020
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米国のD.トランプ大統領は2月10日に2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の予算教書を公表し、エネルギー省(DOE)予算として2020年度で成立した予算レベルから8.1%減の354億ドルを要求していることを明らかにした。このうち13億6,000万ドルが原子力局(NE)予算で、新型炉の開発支援費用や「多目的試験炉(VTR)」の建設費用、国産ウランの備蓄経費などを含める一方、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料等の最終処分場関連では、同政権による例年の予算教書と異なり建設許可申請書の審査手続予算が含まれていない。原子力規制委員会(NRC)の2021会計年度予算要求でも同様で、DOE予算ではその代わりに、「(廃棄物の)中間貯蔵と放射性廃棄物基金の管理」プログラムに2,750万ドルを計上。放射性廃棄物を一時的に集中貯蔵する施設の開発・実行プログラムを進めるほか、原子力発電事業者から徴収した「放射性廃棄物基金」が他目的に流用されないよう監督を継続する。この中で、ユッカマウンテンの維持およびその環境要件とセキュリティ関連の活動も行うとしている。ユッカマウンテン関係でトランプ大統領は、2月7日のTwitterに「ネバダ州の意見を尊重する。これまでの政権は長年、持続的な解決策を見つけられなかったが、私の政権は革新的な解決アプローチを必ず探し出す」と投稿。これに対して、ネバダ州のS.シソラック州知事は2月10日、ユッカマウンテン関係費用が予算教書に含まれなかったことを歓迎する内容の書簡を担当官に手渡している。原子力に関して予算教書は、その他のエネルギー源と同様、国内エネルギー・ミックスにおける重要要素だとしており、様々な先進的原子力技術開発プログラムへの支援を約束。国内原子力産業の再生と諸外国に対する技術的競争力の強化に向けて、12億ドルを原子力研究開発(R&D)に充当した。この中では、高速中性子の照射施設となるVTRの建設費用として2億9,500万ドルを計上。民間セクターにおける新技術の開発・実証を支援する高速炉としては、最初のものになる。また、原子燃料サイクルの能力拡充を支援するため、予算教書は市場でウラン供給が途絶した場合の追加保証として、国内でウランの生産・転換・供給を行う制度の設置経費1億5,000万ドルを計上。これはトランプ大統領が昨年7月、「米国はウランの約93%を輸入するなど国産ウランの供給面で大きな課題に直面しており、これは国家的な安全保障問題だ」と判断、作業グループを設置したことに端を発している。予算教書はさらに、米国の原子力産業界が今なお苦慮している大きな課題の1つが使用済燃料の処分問題だと指摘。この課題は余りにも長期にわたり膠着状態にあるが、トランプ政権は使用済燃料の法的な引取・管理義務を全面的に履行する考えであり、ユッカマウンテンの足踏み状態をいつまでも傍観しているつもりはない。新たな推進力を得て前進するため、代わりとなる解決策や直ぐにでも実行可能な道筋の開発を始めていると強調した。予算教書ではこれと並行して、盤石な中間貯蔵プログラムの実施を支援する方針。国内の放射性廃棄物を貯蔵・輸送・処分する代替技術の研究開発、地元の受け入れ意欲が高まるような処分システムの開発を進めていくとしている。(参照資料:DOE、予算教書(DOE分)、NRC、ネバダ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Feb 2020
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国際エネルギー機関(IEA)は2月11日、世界のエネルギー部門から排出されるCO2の量が2019年は過去2年続いた増加傾向が停止し、2018年実績とほぼ同レベルの約330億トンだったと発表した。世界経済が2.9%拡大するなか、CO2排出量がさらに増加するとの予想に反して「横ばい」となったのは、主に先進経済諸国で発電にともなう排出量が減少したからだと説明。これらの国では、風力や太陽光など再生可能エネルギーの役割が強化されるとともに、石炭火力から天然ガス火力への転換、原子力発電所の高稼働などが功を奏した。日本については特に、近年再稼働を果たした商業炉により原子力発電量が40%拡大し、石炭や天然ガス、石油による発電量を押し下げたと指摘。CO2排出量も対前年比4,500万トン(4.3%)減の10億3,000万トンになったが、これは2009年以降最速の削減ペースであるとともに、発電部門での最大下げ幅になったと強調している。「横ばい」の他の要因として、IEAはいくつかの国で気候が穏やかだったことと、新興国市場の一部で経済成長が鈍化したことなどを挙げた。このような結果についてF.ビロル事務局長は、「CO2排出量の増加傾向が一時的にただ停止したと言うよりも、2019年に決定的なピークを迎えたと後々に記憶されるよう、今こそ最大限の努力を傾注する必要がある」と明言。世界にはそのためのエネルギー技術が存在することから、それらはすべて活用しなければならない。IEAとしては、排出量の削減に向けて各国政府や企業、投資家、温暖化防止に純粋に取り組んでいるリーダー達との協力体制を構築中だとした。同事務局長はまた、排出量の増加が止まったことは、この10年間で地球温暖化に立ち向かえるとする根拠になっていると説明。クリーン・エネルギーへの移行が進んでいる証であり、一層意欲的な政策や投資によってCO2の排出量に有意な変化をもたらすことができると示された。このような目標の達成支援で、IEAは今年6月に「世界エネルギー見通し(WEO)特別報告書」を刊行する予定。2030年までにエネルギー関係のCO2排出量を3分の一削減し、世界を長期的な温暖化防止目標の達成に向かわせる方策を策定する。7月6日にはさらに、「クリーン・エネルギーへの移行サミット」をパリで開催し、主要各国の閣僚や関係企業のCEO、投資家などとともに意欲的な解決策を探るとしている。IEAによると、先進経済諸国におけるCO2排出量の実質的な低下は、他の国で排出量が引き続き増加するのを相殺する結果になった。米国は国ベースの下げ幅が最大値を記録し、2019年は1億4,000万トン(2.9%)の削減となった。これにより、米国では2019年の排出量がピーク時の2000年から約10億トン削減されたことになる。欧州連合(EU)諸国の排出量も、2019年は発電部門の排出量が下がったため、全体で1億6,000万トン(5%)の排出量が削減された。原因としては天然ガスの発電量が初めて石炭火力を抜いたほか、風力発電量も石炭火力と肩を並べるまでに増加したとしている。一方、残りの国々では2019年にCO2排出量が合計4億トン近くまで増大。増加分の約80%は、石炭火力発電量が引き続き上昇したアジア諸国のものだと指摘した。先進経済諸国では各国ともに発電部門からの排出量が1980年代の後半レベルまで低下したが、この当時の電力需要量は現在の3分の一程度だった。これらの国々では、再生可能エネルギーや原子力による発電量の増加、石炭火力からガス火力への転換、電力需要量の低下などにともない、石炭火力の発電量が約15%低下している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Feb 2020
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仏原子力安全規制当局(ASN)は2月6日、国内で稼働する8基の130万kW級PWRで、地震発生時に非常用ディーゼル発電機を動かす機器の一部に不具合があると報告された件について、国際原子力機関(IAEA)の国際原子力事象評価尺度(INES)で下から3番目の「レベル2:異常事象」に判定したと発表した。この事象は、仏国内すべての原子炉を所有・運転するフランス電力(EDF)が1月31日にASNに伝えたもので、外部からの電力供給途絶につながるような地震が発生した際、機器の耐震面の脆弱性により所内に電力を供給する非常用発電機の稼働を保証できないという内容。これらの不具合は昨年2月の点検時にASNが確認しており、具体的には(1)弾性パイプを接続する金具の接続不良、(2)パイプとその支持構造の一部における腐食、(3)電源盤の一部の接続不具合、――の3タイプだとしている。 ASNによると、この事象が周辺住民や環境に影響を及ぼすことはないが、1つの原子炉で地震発生時に非常用発電機が2つとも機能不全に陥った場合、影響が出る可能性が懸念される。このため、INESの「レベル0:安全性に影響を与えない」から福島第一原子力発電所事故の「レベル7:深刻な事故」まで、8段階評価のうち「2」に判定したと説明。対象となる原子炉としては、フラマンビル1、2号機、パリュエル1、3、4号機、ベルビル1号機、ノジャン・シュール・セーヌ1号機、およびパンリー2号機の8基を挙げた。ASNはまた、不具合がそれほど深刻ではなく、2つの発電機が同時に機能しなくなる心配がない別の8基の130万kW級PWRについては「レベル1:運転制限範囲からの逸脱」に指定。これらは、パリュエル2号機、サンタルバン・サンモーリス2号機、ベルビル2号機、カットノン1、3号機、パンリー1号機、ショーB2号機、シボー1号機となっている。これらの不具合はすべて、原子炉関係のものはEDFが修理するほか、弾性パイプ接続金具の不適切な組立に関しては、次回の定検時までモニタリングを強化した上で取替を実施する。なお、フラマンビル2号機は現在定検に入っていることから、すでに修理作業を実施中だとしている。(参照資料:ASN(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
10 Feb 2020
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国際原子力機関(IAEA)で昨年12月、故天野事務局長の後任に就任したばかりのR.M.グロッシー事務局長は2月5日、米ワシントンDCで開催されたカーネギー国際平和財団のイベントで講演し、「原子力の安全・セキュリティからガン治療、IAEA内での男女比平等化に至るまで、幅広い分野に特別な注意を払いIAEA業務の再調整を図りたい」との抱負を述べた。同事務局長は「福島第一原子力発電所の事故後も数多くの国が原子力発電を拡大、あるいは自国のエネルギー・ミックスへの導入に関心を抱いており、地球温暖化防止策として果たす役割も注目されている」と説明。拡大国として中国やインド、ロシアを、新規導入国としては初号機を建設中のベラルーシ、アラブ首長国連邦(UAE)の例を挙げ、原子力専門家や外交官、ジャーナリスト等の聴衆を前に「原子力発電事業は確実に成長している」との認識を強調した。IAEA予算の最大拠出国である米国への公式訪問は、同事務局長が昨年12月にエジプトおよび国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP25)の開催国スペインを訪問したのに続くもの。前日の4日にはM.ポンペオ国務長官やR.オブライエン(国家安全保障担当)大統領補佐官を含む複数の米国政府高官と協議し、世界の平和と発展に向けたIAEAの使命遂行に対し引き続き強力な支援が約束されたとした。また、米原子力規制委員会(NRC)のK.スビニッキ委員長とも会談の場を設けたとしている。今回の講演のなかでグロッシー事務局長は、原子力エネルギーとその他の分野における原子力技術の利用が拡大した結果、世界では部分的に核物質の使用量が継続して増大していると指摘。これにより、安全・セキュリティ面の国際協調を強化する必要性が高まりつつあると述べた。同事務局長は「セキュリティ上の注意を払わずに、原子力ビジネスを行うことは出来ない」とした上で、IAEAはこの分野でさらに思い切った努力を払う必要があると明言。原子力テロの防止対策に向けた国際協力でIAEAが果たす重要な役割を強調するとともに、IAEAが翌週の10日から14日までウィーンに閣僚級の出席者50名以上を招き、核セキュリティ国際会議(ICONS)を開催予定であることを明らかにした。また、IAEAのその他の活動分野に関して事務局長は、「171加盟国の多くが、ガン治療や水質管理、食糧安全保障などの面でIAEAから恩恵を受けている」とした。この関係で、アフリカ大陸における28か国以上の人々が、未だに放射線によるガン治療を受けられないことは「恥ずべきこと」だと指摘。IAEAがこの部分でやれることは、まだまだ沢山あるとの認識を示している。 (参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2020
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フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月30日、一般に「小型モジュール炉(SMR)」と呼称される原子炉の安全な運転条件について取りまとめた報告書を公表した。SMRに対して国内外の関心が高まっていることから、その安全性評価など特有の課題を議論する内容であり、許認可体制についても原子力法の改正等を対象項目とすることを検討中だとしている。 フィンランドでは今のところSMRを建設する具体的な計画は存在しないものの、STUKは今後のことを考慮した準備体制を整える方針である。STUKのP.ティッパナ長官は「我々は新型の原子力プラントに適用される安全要件についても関係者に考慮すべき内容を通達できるようにしておかねばならない」と説明。そうしたプラントの安全評価に関してもSTUKが状況に応じて対応できるようにしておく必要があると述べた。 発表によると、この件については現在、同国の経済雇用省が作業部会を設置して調査を実施中。課題の1つは原子力施設に関する既存の法定許認可システムを、どのようにしてSMRの許認可や放射線安全モニタリング等に適合させるかであるとした。また、世界では近年、SMR開発に莫大な投資が行われており、伝統的な原子力発電企業に加えて市町村の自治体、プロセス産業なども新たにSMRの電力とプロセス熱の利用に関心を表明しているとした。STUKは今後10年以内に、国内市場にもSMRなどの新型原子力プラントの投入が予想されることから、今回の報告書ではSMRの安全性評価や許認可、モニタリング等で持続可能な条件を設定するため、当局や政策立案者、科学コミュニティ、エネルギー企業らが行う議論に対してガイドラインを提示。技術の進展にともない、当局の規制環境では社会の期待に直ちに応えられないようなリスクも生じることを想定した上で、そうした状況への対策については次のような認識の共有を図りたいとしている。すなわち、(1)SMR向けに法体系を修正する必要性を見極める:既存の許認可手続きや安全要件は主に軽水冷却方式の大型炉向けに設定されている。今こそ政府が原子力法を包括的に改正する準備を進め、これらとは大幅に異なるSMR用の許認可システムを策定する好機である。(2)関連の国際協力に参加することが重要:SMR製造業者の主な目的は国際市場向けにSMRを量産することにあるが、ここでの課題は国毎の安全要件が少しずつ異なる点。様々な国の安全規制当局が協力してSMRの安全要件を調和させれば、適切な許認可システムや実行可能な良好事例が明確になるため、STUKはこの作業に積極的に関わっている。(3)研究と経験に基づく知見がSMRの安全性の基盤になる:SMRの性質はそれぞれに異なり、いくつかのSMRでは現在世界で稼働中の原子炉とも違っている。このため、SMRの安全性は実地で証明しなければならず、それぞれの安全確保対策を設計・評価する際も、膨大な量の研究や経験に基づく知見、実験・計算などが必要になる。(4)SMRの安全性は全体的な評価が必要:SMRは地域暖房用のプロセス熱を供給する目的のものがあるため、住宅地に比較的近い地点での設置がしばしば検討されるが、緊急時に備えた予防的防護措置の準備区域については適切に配慮する必要がある。(5)放射性廃棄物の管理を確実に:フィンランドでは世界に先駆けて放射性廃棄物の地層処分場を建設中であり、軽水炉方式のSMRについては同様の措置が有効と考えられる。ただし、SMRの放射性廃棄物管理用に新たな責任体制や組織モデルが必要になるかも知れない。 (参照資料:STUKの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Feb 2020
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米ノースカロライナ州ウィルミントンを本拠地とするGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は2月3日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」をチェコで建設した場合の経済的・技術的な実行可能性を探るため、チェコの国営電力会社(CEZ)と覚書を締結したと発表した。CEZ社はすでに昨年9月、SMR設計として唯一米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査が行われているニュースケール・パワー社製パワー・モジュール(NPM)について、国内での建設可能性を模索する覚書を同社と結んでいる。「BWRX-300」では今のところDC審査の日程が発表されていないものの、同設計の建設に向けた実行可能性調査の実施でGEH社はバルト三国のエストニア、東欧のポーランドと覚書を締結済み。先月30日には、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた同設計の技術文書(トピカルレポート)をNRCに初めて提出したと発表、NRCの正式な許認可プロセスとして先行安全審査が始まったことを強調している。チェコではテメリンとドコバニの2つの原子力発電所で総発電電力量の約3分の1を賄っているが、国営送電会社は昨年秋、これらの運転期間満了や経年化した石炭火力発電所の閉鎖にともない、同国は2030年初頭から次第に電力を輸入するようになるとの予測報告書を公表した。チェコ政府は近い将来、このような石炭火力発電所を新規の原子炉や再生可能エネルギーで代替することを計画しており、同国のA.バビシュ首相は昨年11月、ドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR×4基)(=写真)で2036年にも新たな原子炉を完成させる方針を表明した。GEH社による今回の発表の中でも、チェコのK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易相が「チェコ政府にとって技術革新は最優先事項であり、SMRは原子力発電の将来を担う可能性がある」と強調。原子力発電分野の研究開発におけるCEZ社の集中的な取り組みに満足の意を表するとともに、「GEH社との協力により世界でも最高レベルにあるわが国の原子力研究がさらに進展する」との見方を示した。また、CEZ社のD.ベネシュCEOは「新たなエネルギー技術やソリューションには、当社も重点的に取り組んでいる」とした。その上で、同社グループの中でも特に「主要な関係機関の国立原子力研究機関(UJV Rez)がSMR関係の研究を進めており、SMRは将来的に無視できない重要選択肢になり得る」と指摘。このような背景から、GEH社との共同作業は同社にとって自然な展開だと説明している。 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Feb 2020
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