
量子科学技術研究開発機構(QST)は6月16日、英国原子力公社(UKAEA)との核融合分野の協力強化を目的とした協力覚書(MOU)を締結した。今回のMOUは核融合のプラント技術や燃料サイクルと安全性、人材育成、経済性など幅広い範囲を網羅しており、両者はこれに基づいて共同プロジェクトや共同研究の立ち上げ、施設の共同利用、専門的な知識の共有が可能になる。QSTの小安重夫理事長は「今回のUKAEAとの連携は、日本と英国が築いてきた長年のフュージョンエネルギー開発に関わる連携を一層深化させるとともに、発電実証に向けた重要課題に挑むために双方の知見を結集する新たな機会」とコメントした。QSTは先日、国際核融合プロジェクトITERでも技術的な実績を評価され、仮設プラグ用溶接・切断ツールの開発及び調達に関する新規タスク取決め((一般的な企業間における契約にあたる))を締結するなど、国際的な存在感を強めている。
23 Jun 2026
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電気事業連合会の森望会長は6月19日の定例会見で、政府の「今後の原子力政策の方向性と行動指針改正案」について、「国として、将来にわたり原子力を活用していくという力強いメッセージ」と評価し、「極めて重要な一歩」との認識を示した。同改正案は6月5日の原子力小委員会でも議論され、現在はパブリックコメントを募集している。2040年代までに大型炉約2~5基分、2050年代までに同約11~14基分の建て替え需要を見込み、原子力の長期利用や次世代革新炉の開発・設置や、バックエンドプロセスの加速化、サプライチェーン・人材基盤の維持強化を明記している。森会長は事業者として繰り返し求めてきた「原子力の将来の開発規模・見通し」が、今回初めて盛り込まれたことに言及。今回示された建て替えに対する方針に向かって、産官学が一体となって取組みを進めることが重要であると述べた。また改正案に示されている原子力の長期利用に向けて、事業者として現在進めているものとしてオンラインメンテナンスの実施や、運転期間の柔軟化に向けた取組みに加え、定期検査中の作業の輻輳の回避や作業負荷を平準化することで、熟練作業員の適正な配置に繋げていると説明した。原子力発電所の建て替えについては、電力業界の設備投資額の拡大傾向や、電気事業者各社のフリーキャッシュフローが低水準であることに触れ、新規投資促進のための迅速な制度構築を国に求めた。会見の最後に森会長は、原子力を持続的に活用していくためには将来的な新増設が必要になるとの認識を示し、次期エネルギー基本計画の策定に向けた議論の中で、新増設の検討を求めた。
23 Jun 2026
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は6月29日と30日に父島で、7月1日と3日に母島で、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分や文献調査に関する説明会を開催する。今年3月に続く開催で、今回は専門家との質疑応答の時間も設ける。今回は、前半2時間に地層処分や文献調査の基本的な内容を中心にした説明会を行い、その後2時間、京都大学複合原子力科学研究所の黒﨑健所長・教授がリモートで講演を行い、参加者からの質問に答える。NUMOは今年5月20日、東京都小笠原村の南鳥島で文献調査を開始した。調査期間は約2年を見込んでいる。NUMOは今後、最終処分事業への関心を高め、理解を深めるために「対話型全国説明会」の実施に取り組むとしている。説明会への参加は事前申込不要。また、父島では6月27・28・30日に、母島では7月1日~3日に少人数での意見交換会も開催する。こちらは、各役場への事前申し込みが必要。
23 Jun 2026
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株式会社クフウシヤはこのほど、高線量環境下での調査・作業支援を目的としたフィジカルAIロボット技術((センサーで現実空間の状況を捉え、AIが自ら判断して動くロボットの技術))の開発に着手すると発表した。同社の6月18日の発表によると、今回のプロジェクトは、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)、東京大学工学系研究科 趙研究室、株式会社EQUES、株式会社デジラボホールディングス、株式会社アイプランツ・システムズとの共同開発。福島第一原子力発電所の廃炉作業で調査や作業を安全かつ効率的に進めるために、フィジカルAIを活用したロボット技術の開発を目指し、まずは実現可能性の検証に取り組むという。各社はロボットシステム統合、データ基盤、シミュレーション環境構築などを分担する。
22 Jun 2026
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日本原子力研究開発機構(JAEA)、英国国立原子力研究所(UKNNL)が進めてきた高温ガス炉開発協力に、ロールス・ロイス社が加わることになった。3者は6月14日、高温ガス炉技術及び高温ガス炉燃料技術に係る協力覚書(MOU)を締結した。正式な調印は高市首相の英国訪問に合わせて、英国首相官邸で行われた。<JAEAによる発表はこちら ロールスロイス社による発表はこちら>今回のMOUは英国における高温ガス冷却型先進モジュールの早期社会実装、および被覆燃料粒子の許認可・製造の本格化に向け、研究開発を加速させることが目的。JAEAの小口正範理事長は「我々の高温ガス炉(HTGR)技術に関する専門知識を通じて、この協力が同技術の早期導入につながり、ネットゼロに向けた重要な一歩となることを期待しています」とのコメントを発表した。JAEAは高温工学試験研究炉「HTTR」(熱出力30MW、2021年7月に再稼働)の開発実績があり、英国では脱炭素化に向けた先進モジュール炉(AMR)の開発を進めており、その一つに高温ガス炉が挙げられてる。JAEAとUKNNLはこれまで英国政府の高温ガス炉実証プログラムや燃料開発プログラムに共同で参画してきた。今回のMOU締結で、JAEAは英国での高温ガス炉技術及び高温ガス炉燃料技術の確立・実用化を目指す一方、英国を日本の高温ガス炉実証炉の燃料調達オプションのひとつにし、英国における許認可対応の経験や社会実装の過程で得られる社会科学的知見を日本における高温ガス炉実証炉計画に活かす狙いがある。
19 Jun 2026
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琉球大学教育学部(沖縄県)で6月16日、理科教員を志望する学生約50人を対象に、「原子力と科学リテラシー」をテーマとした特別授業が行われた。授業では放射線の観察実験と講演、質疑応答が実施され、学生たちは科学的な知識だけでなく、科学技術をめぐる社会的課題についても理解を深めた。授業を企画した教育学部の濱田栄作教授は、理科教員を目指す学生たちに対し、放射線や原子力を単なる知識として学ぶのではなく、科学的な事実と社会的な議論を結び付けて考える力を身につけてほしいとの思いから今回の企画を実施した。授業前半では、静岡大学の大矢恭久准教授が霧箱を用いた放射線観察実験を実施。放射線は人間の五感では直接感じることができない。そのため大矢准教授は、「まず放射線が飛んでいることを実感することが重要」と説明。飛行機雲が発生する原理を応用した霧箱を用いて、放射線の飛跡を可視化する実験を行った。学生たちは自ら霧箱を組み立て、アルファ線やベータ線が飛跡として現れる様子を観察した。将来、学校現場で放射線教育を行う際の教材活用についても紹介され、放射線を「見えないもの」としてではなく、観察可能な自然現象として捉える視点が示された。後半では、科学技術と社会の関係をテーマとした講演が行われた。講演では、原子力発電をはじめ、食品照射、遺伝子組換え作物、AIやデータセンターなど、現代社会で議論の対象となる科学技術を例に挙げながら、科学的な評価と社会的な受け止め方が必ずしも一致しないことが紹介された。また、SNSや生成AIの普及によって情報が大量に流通する時代においては、単に知識を覚えるだけでなく、情報の出所や根拠を確認し、自ら判断する力が重要になることも説明された。質疑応答では、学生から活発な質問が相次いだ。「原子力発電にはどのようなメリットがあるのか」という問いに対しては、安定した電力供給やエネルギー安全保障の観点が紹介された。また、AIやデータセンターの普及に伴い、世界的に電力需要が増加している現状についても説明が行われた。さらに、「地震や津波の多い日本で原子力を利用することをどう考えるべきか」「基準値以下であれば安全と言える根拠は何か」といった質問も寄せられた。講師陣は、福島第一原子力発電所事故後に強化された安全対策や、国際的な放射線防護の考え方について解説し、科学的なリスク評価の重要性を説明した。また、「原子力発電所が自宅の近くに建設された場合、不安にどう対処すればよいのか」という率直な質問も出された。これに対しては、科学的な安全性と心理的な安心感は必ずしも一致しないことを踏まえ、社会的な合意形成の難しさについて議論が行われた。濱田教授は、学習指導要領に放射線教育が位置付けられている一方で、教員養成課程において原子力や放射線を体系的に学ぶ機会は決して多くないと指摘する。また、学生の多くが原子力を「科学の話」というよりも「社会問題」として捉える傾向があり、科学的知識と社会的文脈が切り離されていることを課題として挙げている。そのため今回の授業では、放射線を実際に観察する体験を出発点とし、その後に原子力やエネルギー問題、情報リテラシーへと議論を広げる構成を採用した。科学的事実を理解した上で、多様な価値観や立場が存在する社会的課題について考えることが狙いだという。濱田教授は、「原子力に限らず、社会で議論されている科学的なテーマについて、教員自身が考え、生徒と語れる状態でいることが重要だ」と語る。質疑応答では予定時間いっぱいまで質問が続き、終了後も講師を囲んで議論する学生の姿が見られた。濱田教授は「ここまで質問が続くとは思わなかった」と話し、「沖縄には原子力発電所がないため遠いテーマと思われがちだが、学生たちはエネルギーや科学技術をめぐる課題に高い関心を持っていることが分かった」と手応えを語った。今回の特別授業は、放射線の観察実験から始まり、原子力やエネルギー問題をめぐる議論へと発展した。将来教壇に立つ学生たちにとって、科学的な事実を理解するだけでなく、それを社会の中でどのように伝え、どのように考えていくべきかを学ぶ機会となった。理科教育に求められるのは知識の伝達だけではない。複雑な科学技術をめぐる情報を読み解き、生徒とともに考え続ける姿勢を育むこと――。今回の授業は、その重要性を改めて示す実践となった。
19 Jun 2026
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は6月3日、カザフスタン共和国国立原子力センター(NNC RK)と、高速炉実証炉のシビアアクシデント対策に関する共同研究計画「EAGLE-4」の実施に向けた協力覚書を締結した。調印はカザフスタン・アルマトイ市で行われ、NNC RKのバティルベコフ総裁とJAEAの小口正範理事長が署名した。次世代革新炉の一つである高速炉の安全性強化に係る試験研究の推進が目的。両機関は2000年代初頭から20年以上にわたり、高速炉の炉心安全性試験「EAGLE計画」を進めてきた。これまで実施した第1期から第3期までの計画(EAGLE-1~3計画)では、シビアアクシデント(原子力施設の設計想定を大幅に超えて炉心の溶融などを伴う過酷な状態に至る事故)時に溶融した燃料が炉心から速やかに排出されることで事故の拡大を回避できることを、NNC RKが保有する試験用原子炉IGR(黒鉛減速型パルス型試験炉)を用いた実験により確認できたという。IGRを用いた試験では、シビアアクシデント時を模擬し、IGR炉心からの中性子照射により試験燃料を溶融させ、排出経路を通じて炉心外へ流出する現象を確認することで、安全機能の有効性を検証している。今回JAEAとNNC RKは、EAGLE-1~3計画に続く第4期目の共同研究計画(EAGLE-4)を実施することに合意し、高速炉の社会実装に向けた炉心安全性試験を着実に進めるために、今後、両機関の連携を一層深める方針だ。EAGLE-4では、試験用原子炉IGRとその関連施設を活用し、高速炉実証炉向けの炉心安全性試験を実施し、実証炉への導入が検討されている「溶融燃料排出機構」の有効性を裏付けるデータや知見の取得を目指す。今後、試験内容の詳細を定める実施取決めを締結し、共同研究を本格化させる方針だ。
18 Jun 2026
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福島県の内堀雅雄知事は6月9日、経済産業省を訪問し、「ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望」を赤沢亮正経済産業大臣に手交した。政府が2026年度からの5年間を「第3期復興・創生期間」と位置付ける中、福島第一原子力発電所の廃炉の着実な推進、帰還困難区域の復興と再生、県内の産業振興等について国の支援と取組みの強化を求めた。なお、今回の要望は、福島県が国に対して行っている復興・創生に関する総合的な要望活動の一環として実施されたもの。経済産業省だけでなく、復興庁ら他の関係省庁にも、さまざまな施策の推進や財源確保などを求めている。内堀知事は同要望書の中で、東京電力福島第一原子力発電所事故から15年が経過した現在も、約2万人の県民が避難生活を続けており、多くの課題を抱えていると指摘。また、人口減少や物価高騰への対応に加え、中東情勢の緊迫化に伴う燃料価格の上昇など全国的な課題にも直面しているとし、福島の復興・再生に向けた取組みを切れ目なく進める必要性を強調した。その上で、福島県の浜通り地域の産業基盤の再構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の更なる推進に向けた支援継続を要望。さらに、今後5年間の「第3期復興・創生期間」は、避難者の帰還・移住促進や生活環境の整備、産業基盤の再生を一層進める重要な期間だと指摘したほか、これら期間が過ぎた後も、福島復興再生計画に基づく十分な財源の確保と制度的支援、地域の実情に応じたきめ細かな対応を求めた。 これに対し赤沢大臣は、「福島の復興はいまだ途上にある」とし、福島の復興と福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉を経済産業省の最重要課題として取り組んでいく考えを強調。今年3月には双葉町の帰還困難区域を視察した赤沢大臣は、「震災から15年近くが経過した今なお荒廃した農地が残る現状を確認した」と述べた上で、将来的には帰還困難区域全域の避難指示解除を目指し、復興・再生に取組む決意を示した。また、福島第一原子力発電所については、廃炉現場へのAIの導入など先端技術の活用を進め、「福島を我が国のAX(AIトランスフォーメーション)の始まりの地にしたい」との考えを明かした。
17 Jun 2026
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日本原子力産業協会は6月12日、2026年度定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2025年度決算および事業計画、2026年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計318名の会員が出席した。新理事には三菱重工業の泉澤清次氏、丸紅の市ノ川覚氏、日本原燃の大柿一史氏、中部電力の豊田哲也氏、三菱原子燃料の大和矢秀成氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「国際的な地政学リスクが高まる中で、我が国では現在15基、約1,260万kWの原子力発電所が安定的に運転し、電力供給をしっかりと支えている事実は誇るべきことだ」と述べた。その上で、エネルギー安全保障や電力需要の観点から原子力の重要性が一層高まっているとして、業界一丸となって原子力の最大限活用に向けた施策に取組む必要性を強調した。三村会長は、原子力の最大限活用に向けた課題として、①事業予見性向上に向けた事業環境整備、②サプライチェーンの維持・強化と人材育成、③最終処分を含むバックエンド対策、④福島復興への継続的な取組み―の4点を挙げた。特に、先般の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で示された2040年代までに最大5基、2050年代までに最大14基の建て替え目標案に言及し、その早期具体化に期待を示した。また、安全で高品質なプラント建設を実現するためには、サプライチェーンの維持・強化と人材育成が不可欠だと強調。あわせて、日米間の戦略的エネルギープロジェクトに複数の原子力案件が盛り込まれたことに触れ、国内産業基盤や人材確保への波及効果にも期待を示した。さらに、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の竣工、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組みの重要性を強調した。また、福島復興への取組みについては、今年度の原産年次大会で若い世代から「廃炉は失敗の後始末ではなく、未来への責任をどう果たすかという挑戦だ」との発言があったことを紹介し、「新鮮な感動を覚えた」と述べた。その上で、「これからも福島とともにあり続け、地域の復興に貢献していく」と強調した。また、来賓として挨拶に立った清水真人文部科学大臣政務官は、次世代革新炉の研究開発や人材育成の推進について言及。日本原子力研究開発機構(JAEA)による革新軽水炉や小型モジュール炉(SMR)の安全性・経済性向上に向けた研究開発機能の強化や、ANEC(未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム)を中心とした人材育成機能の強化を進める考えを示した。一方、赤沢亮正経済産業大臣の挨拶を代読した資源エネルギー庁の龍﨑孝嗣次長は、人材育成や産業基盤強化、技術開発支援、海外展開の促進などを通じて次世代革新炉への建て替えや再稼働を後押ししていく考えを示した。また、若い世代の原子力分野への参画が重要との認識を示し、産業界と緊密に連携しながら原子力政策を着実に推進していく方針を示した。
16 Jun 2026
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自民党の原子力規制に関する特別委員会は6月8日、「原子力安全規制・原子力防災の充実・強化等に関する提言(中間報告)2026」を取りまとめ、高市首相に提出した。今回の提言は①規制の合理化と改善、②将来を見据えた環境整備、③原子力防災と有事への備え④信頼確保・基盤強化――の4本柱と12の提言で構成。規制に関して、IAEAのIRRSでも指摘された、リスクや重要度に応じたグレーデッドアプローチを取り入れることや、リスク評価を踏まえた定期検査の間隔延長などが盛り込まれている。AI等新たな技術の活用の検討も進言した。小型モジュール炉(SMR)、高温ガス炉、高速炉などの次世代革新炉に対する安全審査や規制制度の予見性向上については、世界の開発動向を見ながら、事業者が開発・設計を進める上で必要な安全規制の考え方を、適切な時期に示すことを求めた。更に、原子力立地地域振興特措法の道路に対する補助率の問題について指摘。2018年の道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(道路財特法)改正により、一般道路に比した優遇措置が実質的に失われたため、避難道路整備への補助率引き上げを求めた。また、原子力専門人材育成の維持・強化を喫緊の課題とし、人材育成に関する政策が分野ごとに縦割りになっている現状を解消すべく、産官学全体での原子力人材育成を担う司令塔機能の整備や、長期的な人材確保策の策定を求めた。提言の最後では、2012年に設立された原子力規制委員会(規制委)のこれまでの努力を評価しつつ、世界情勢の変化から原子力の重要性がより一層高まる中、規制委・原子力規制庁ともに、設立当初の「信頼回復を最優先する行政組織」から「効率的かつ実効的な行政機関」へと進化すべき時期であるとした。
16 Jun 2026
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原子力規制委員会(規制委)は6月5日、「令和7年度年次報告」を公開した。原子力規制委員会設置法第24条により、規制委は毎年、国会に所掌事務の処理状況の報告を行う義務がある。資料の中で規制委は、昨年度の活動を①独立性・中立性・透明性の確保と組織体制の充実、②原子力規制の厳正かつ適切な実施と技術基盤の強化、③核セキュリティ対策の推進と保障措置の着実な実施、④東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の安全確保と事故原因の究明、⑤放射線防護対策及び緊急時対応の的確な実施――の5項目に分けて報告。分かりやすい情報発信や双方向コミュニケーションの実施例として、美浜発電所および川内発電所の周辺地域住民との対話活動や山中委員長と福島県立安積高校の生徒との対話を紹介した。更に先日行われたIAEAによるIRRSミッションの報告についてまとめ、ミッションでも指摘されたグレーデッドアプローチ(施設や活動が持つリスクや安全上の重要度に応じて、規制や審査の程度を合理的に調整する考え方)に関して、原子力規制に適用するための討議や意見交換を行ってきたが、今後も引き続き検討を進めるとしている。福島第一発電所の廃炉については、これまでの10年以上の経験を審査効率化に繋げる取り組みを紹介し、改善を強調した。また、核融合発電の規制について、国内のみならず米国・フランスなどの海外の関係者とも意見を交換。トリチウムの「閉じ込め」機能について放射線影響を評価する考え方を検討。今後の開発の進捗に応じて意見交換などを行う。このほか、核物質防護への取り組みをより効果的・効率的なものにするための規制の見直しや、六ヶ所再処理施設およびMOX燃料加工施設を対象とした保障措置活動の検討、放射線モニタリングプラットフォームの運用開始なども報告されている。
15 Jun 2026
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新潟県の花角英世知事は6月9日、経済産業省を訪問し、柏崎刈羽原子力発電所の安全対策の徹底と実効性ある原子力防災対策の構築などを求める要望書を、赤沢亮正経済産業大臣へ手交した。同要望は、新潟県が国に提出している2026年度の「政府に対する新潟県の要望」の一環。花角知事は冒頭、昨年12月に、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働同意の前提として国へ要請した7項目について改めて対応を求めた。要望書では、約14年ぶりに営業運転を再開した柏崎刈羽6号機の安全対策や原子力防災への県民理解は依然十分ではないと指摘。東京電力の信頼性確保や安全対策の徹底、防災対策の実効性の向上に向け、国の責任下で着実に対応するよう求めた。具体的には、原子力発電の必要性や安全性に関する分かりやすい情報発信の継続、安全性向上に向けた不断の取組み、避難計画の実効性向上などを要請。また、避難路の整備促進や除排雪体制の強化、屋内退避施設の整備促進など、原子力災害と自然災害の複合災害を見据えた防災インフラ整備の加速も求めた。そして、使用済み燃料対策や風評被害対策、原子力発電所への武力攻撃対策など県民の関心が高い課題についても、国が責任を持って取り組むよう要望。東京電力に設置された「監視強化チーム」についても、実効性ある運用と活動状況の周知を求めた。また、今年4月に「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」において、立地地域の指定範囲がUPZの市町村(柏崎市、刈羽村、長岡市、小千谷市、十日町市、見附市、燕市、上越市、出雲崎町)に拡大された一方で、財政上の特例措置が適用される特定事業の対象は未だ限定的であると指摘し、対象事業の拡充や財源確保を要請した。さらに、近年の豪雨災害の激甚化や複合災害リスクの高まりを踏まえ、防災・減災対策に加え、地域振興や産業基盤整備に対する支援の強化を求めた。これに対し赤沢大臣は、新潟県から示された7項目の要望を重く受け止め、関係省庁と連携しながら対応を進めていると説明。柏崎刈羽原子力発電所に関しては、政府の監視強化チームを通じて東京電力の取組状況を確認するとともに、地域への丁寧な説明を続ける考えを表明。あわせて、立地地域振興や避難路整備についても、関係省庁と連携しながら着実に進める方針を示した。さらに、自身が4月に柏崎刈羽原子力発電所を視察したことに触れ、「緊張感を持った訓練や高いレベルのセキュリティ対策を確認できた。原子力発電は安全確保と地域理解が大前提だ」と述べ、東京電力に対して継続的な信頼向上の取組みを求めた。
12 Jun 2026
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福井県の石田嵩人知事は6月2日、経済産業省を訪問し、「令和9年度政府予算に対する要望書」を越智俊之経済産業大臣政務官に手交した。要望書では、全8項目のうちエネルギー政策・原子力分野に関する要望を2項目に盛り込み、第7次エネルギー基本計画に基づく原子力政策の着実な実行や将来像の明確化、エネルギー教育の推進、原子力発電所立地地域の振興、使用済み燃料対策や原子燃料サイクルの推進などを求めた。また同要望書には、「もんじゅ」の廃止措置を契機に敦賀エリアを原子力研究・人材育成の拠点として発展させるため、新試験研究炉の早期整備や研究開発・人材育成基盤の維持強化についても言及。新試験研究炉を軸とした同地域の活性化へつなげていく考えを示した。福井県は15基(7基が運転中、7基が廃止措置中、1基が停止中)の原子炉が立地する全国有数の原子力発電所立地地域であり、原子力政策の動向が同県の地域経済や産業基盤に大きく影響することから、これまでも国に対し、継続的な要望を行ってきた。石田知事は4月に赤沢亮正経済産業大臣へ要望書を手交した際も、半世紀以上にわたり国策である原子力政策に積極的に協力してきた県の首長として、現場の声や課題を踏まえたエネルギー政策の推進を要望していた。また石田知事は、会談の公開部分で、政府が進める地域未来戦略の推進に向けた産業人材の育成・確保や産業クラスター形成への支援を要請したほか、中東情勢の影響による燃料費や原材料価格の高騰への継続的な支援を国に求めた。これに対し越智政務官は、地域未来戦略について、関係省庁と連携しながら投資促進策とインフラ整備を一体的に進め、地域全体の発展につながる施策を推進していく考えを示した。また、中東情勢への対応については、燃料価格高騰対策を継続しながら、原材料調達やサプライチェーンへの影響も注視し、引き続き必要な支援に取り組む考えを示した。
11 Jun 2026
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東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が6月9日、再稼働後初の定期検査を完了し、営業運転を再開した。同機は2024年11月に再稼働(発電再開)し、同年12月に営業運転に復帰していた。定期検査は今年1月14日から行われ、発電を停止して原子炉本体、原子炉冷却系統施設、原子炉格納施設などの点検に加え、燃料集合体や制御棒の一部取替えを行った。同機は1995年7月に営業運転を開始。2010年10月に定期検査入りし、2011年3月の東日本大震災により起動作業中のところ、自動停止した。2013年12月に新規制基準適合性に係る審査を申請し、2020年2月に原子炉設置変更許可を取得。2024年5月の安全対策工事完了を経て、同年11月に新規制基準施行後初のBWRとして発電を再開し、同年12月から営業運転を再開した。特定重大事故等対処施設(特重施設)などの設置期限が、現行制度では本体施設の「設計及び工事の計画認可(設工認)」取得日から5年以内とされている。同機は期限の2026年12月までに特重施設の設置が間に合わず、東北電力が完成を見込む2028年8月まで再度運転停止を余儀なくされる状況にあった。しかし、原子力規制委員会による規則改正が現在進んでおり、改正されれば、設置期限は2029年12月となるため、次回の定期検査が始まる2027年6月頃まで運転を継続できる見通しだ。
10 Jun 2026
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経済産業省・資源エネルギー庁の原子力小委員会は6月5日、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の改定案を議論。改定案では、既設炉の運転終了を見据え、2040年代までに大型炉約2~5基分、2050年代までに同約11~14基分の建て替え需要が生じるとの試算を提示した。既存炉の活用だけでは2040年以降に供給力の大幅な低下が見込まれることから、改定案では原子力発電の見通しや将来像を新たに前段に位置づけ、原子力産業界における長期的な投資判断や人材確保、サプライチェーンの維持・強化に向けた事業予見性の向上を図った。同改定案では、原子力発電が2040年代から2050年代にかけて総発電電力量の約20%を担うケースを前提に、必要な設備容量を試算。その場合、2040年代までに約220万~550万kW(約2基~5基)、2050年代までに累計約1,270万~1,600万kW(約11基~14基)分が不足する見込みだという。なお、建て替え基数は大型炉換算で算出しており、SMRの場合はさらに必要な基数が増加する。また、試算には建設中の3基(大間、島根3号機、東京・東通1号機)を含む一方、電気事業法に基づく運転延長認可制度は考慮しておらず、年途中で運転開始から60年を迎えるプラントについては、当該年の設備容量に含めていない。改定案では、行動指針の6本柱という基本構造は維持しながらも、再稼働が一定程度進捗してきたことを受け、原子力の長期利用を前提とした構成へ見直した。具体的には、「原子力を長期的に活用していく上での大前提」を新たな柱として設けるとともに、再稼働関連施策を「再稼働の加速・既設炉の最大限活用」に集約。さらに、次世代革新炉の開発・設置や、バックエンドプロセスの加速化、サプライチェーン・人材基盤の維持強化などを明記している。各委員からは、原子力発電の見通し・将来像を具体的に示した点を評価する意見が相次いだ一方、ファイナンス支援の具体化やバックエンド施策、燃料サプライチェーン整備、人材・技術継承等について、さらなる検討を求める意見も出された。バックエンド分野では、竹下委員(東京科学大学)が同改定案を評価した上で、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の本格稼働を見据えた保障措置体制の強化を要望。併せて、プルトニウム管理や核燃料サイクルの実効性向上、ウラン燃料供給の安定化に向けた国内基盤整備の必要性を指摘した。また、水田専門委員(関西電力/電気事業連合会)は、中長期的な原子力の将来像や見通しが具体化されたことについて、「事業予見性の向上や業界の活性化、技術継承、人材確保の好循環につながる」と評価。その上で、次世代革新炉の開発・建設を着実に進めるための事業環境整備の継続的な見直し、また、バックエンドを含む人材・サプライチェーン基盤の強化を着実に進める必要性を訴えた。そして、日本原子力産業協会の増井理事長(専門委員)は、同改定案について「原子力産業を巡る現状や本委員会での議論を踏まえ、適切に取りまとめられている」と評価。特に、2040年と2050年を見据えた原子力発電の見通し・将来像が示されたことについて、「産業界として未来への希望と長期的な展望を持つことができる」と述べた。あわせて、日米間で検討が進む大型原子力案件は日本企業にとって大きな機会になるとの認識を示す一方、過度な負担が生じないよう政府の適切な対応を求めた。また、同志国との連携やサプライチェーン強化など国際協力の重要性を強調し、原子力国際協力センター(JICC)等と連携し、海外産業界との連携強化に引き続き取り組む考えを示した。
09 Jun 2026
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原子力規制委員会は6月4日、特定重大事故等対処施設(特重施設)および所内常設直流電源設備(3系統目)の設置期限に関する規則改正案を公表。パブリックコメントの募集を開始した。特重施設は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故後に導入された新規制基準に基づき整備が求められている施設で、航空機衝突やテロ攻撃などによって原子炉の制御機能が失われた場合でも、炉心損傷や放射性物質の大量放出を防ぐためのバックアップ機能を担う。現行制度では、特重施設などの設置期限は、本体施設の「設計及び工事の計画認可(設工認)」取得日から5年以内とされている。しかし、実際には設工認取得から運転開始までに長期間を要するケースが多く、規制委によると5年以内の完成が困難となる事例が相次いでいる。改正案では、この5年間の経過措置期間の起算点を、現行の設工認認可日から「使用前確認日」に変更する。規制委は、5年間という猶予期間そのものは維持しつつ、実際の運転開始時期に合わせた制度へ見直すとしている。安全面について規制委は、使用前確認が行われる時点では原子炉内の使用済み燃料が十分に冷却されており、特重施設が必要となるような事態が発生する可能性は低いと説明。現行制度と比較しても安全上の大きな差異はないとしている。今回の改正案は、現時点で経過措置期間が満了していない実用炉が対象となる。このため、すでに期限を迎えている柏崎刈羽7号機や東海第二は対象外となる。一方、大間、島根3号機、東京・東通1号機など建設中のプラントについては、施設全体の使用前確認日が起算点となる。規制委は4月、現在経過措置期間中にある女川2号機と島根2号機を有する、東北電力と中国電力からヒアリングを行った。両社は、制度改正が行われた場合でも特重施設の早期完成に向けて取り組む方針を示しているという。パブリックコメントはwebか郵送で受け付けており、募集期間は7月3日まで。
08 Jun 2026
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原子力・放射線利用分野で働く女性で構成される「WiN-Japan」の2026年度総会・年次大会が5月29日、都内で開催された。総会には約100名が出席し、最新の会員動向と2025年度の活動・収支報告、そして2026年度の活動計画と予算案、また、役員改選などを行った。総会後に開かれた年次大会では、「原子力とともに拓く、私たちのキャリアと挑戦」をテーマに、女性活躍やジェンダーバランスの向上をテーマとした講演や意見交換が行われ、参加者が今後のキャリア形成について考える場となった。WiN-Japanは、「原子力の価値向上」「原子力専門家としてのネットワーク構築」「原子力分野におけるジェンダーバランスの向上」の3つを柱に活動している団体で、「WiN Global」の日本支部に該当する。WiN Globalは世界各地に約80の支部、約35,000名の会員を擁する団体で、原子力産業界、規制当局、医療機関、大学、研究機関など、原子力や放射線に関わる幅広い分野で専門的に活動する女性によって構成されている。総会の冒頭、WiN-Japanの石橋すおみ会長(電気事業連合会広報部部長)は、3月30日から4月3日の日程で韓国・慶州にて開催された直近のWiN Globalの年次大会への参加を報告。同大会でWiN Globalのメリーナ・ベリンコ会長が「原子力業界の未来はイノベーションだけでなく、社会との信頼を築く能力にかかっている。だからこそWiNが必要とされている」と発言したことを紹介し、石橋会長は「この言葉に深く共感した」と語った。その上で、WiN-Japanとしても原子力分野における女性活躍の推進や社会との対話を通じた信頼醸成に、引き続き取り組んでいく考えを示した。来賓として出席した国民民主党の竹詰仁参議院議員(エネルギー調査会長)は、国民民主党が原子力発電所のリプレースや新増設、次世代革新炉の開発推進を掲げていることに触れ、「原子力に携わる皆さんには誇りを持ってほしい」と激励。「原子力を応援する立場として、今後も皆さんとともに学び、支えていきたい」と述べ、WiN-Japan会員らにエールを送った。続く年次大会の冒頭、原子力発電環境整備機構(NUMO)の山口彰理事長が登壇し、原子力分野における女性活躍の重要性に言及。「多様な考え方やバックグラウンドを持つ人々がともに働くことが、より良い技術や組織につながる」と述べ、WiN-Japanの活動にさらなる期待を寄せた。その後の基調講演では、文部科学省原子力課長の有林浩二氏が「文部科学省のリケジョ支援策から考える今後の原子力人材育成」と題して講演し、女子中高生の理系進学支援や原子力人材育成に向けた文部科学省の取り組み等を紹介したほか、産学官が連携した人材育成の重要性を強調した。また、原子力分野における女性人材の確保・育成のあり方について問題提起し、参加者との活発な意見交換を行った。続いて、関西電力執行役常務の野地小百合氏は、「多様な視点が、組織の判断を変える~女性活躍の本当の意味」と題して講演を行い、同業界が抱える女性活躍を阻む構造的な課題にも触れながら、多様な視点を生かした組織変革の必要性を訴えた。
05 Jun 2026
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6月5日に開催された総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会において、朝野賢司委員(電力中央研究所 社会経済研究所 副研究参事)は、経済産業省が示した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」改定案について、事業環境整備の具体化を歓迎する一方、「なお不十分」と指摘。自由化された電力市場では、原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であり、民間企業の投資判断を後押しするためには、国によるリスク分担の明確化が必要との考えを示した。朝野委員はまず、行動指針案について、原子力投資に伴うリスク要因を明確に整理したことや、事業環境整備を政策の柱として位置付けたことを評価した。具体的には、初期投資負担の大きさやリードタイムの長期化、市場価格変動による収入見通しの不確実性、バックエンドや許認可に関するリスクなどが明記されたことを評価。また、長期脱炭素電源オークションの改善に加え、英国サイズウェルC建設プロジェクト(SZC)で導入された規制資産ベース(RAB)モデルの教訓、原子力損害賠償制度の見直し、地元合意形成や許認可手続きの円滑化などが盛り込まれたことについても、「これまでの小委員会での議論を受け止めた内容」と述べた。一方で、将来像として示された原子力利用の見通しを実現するための事業環境整備としては、なお不十分との認識を示した。朝野委員は、政府の信用力を活用した融資制度の検討は重要としながらも、「借入を増やすだけでは原子力への投資判断には足りない」と指摘。その理由として、自由化された電力市場において原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であると説明した。具体的には、1兆円を超える初期投資、10年以上に及ぶ建設期間、運転開始まで収益を生まない事業構造に加え、規制変更に伴う追加投資、バックエンド対策、原子力損害賠償制度、地域合意形成など、多様なリスクが重層的に存在すると指摘。「他産業を見渡しても、これほど巨大かつ長期にわたり、政治・社会・技術のリスクが一体となった資産はほとんどない」と述べた。さらに、こうしたリスクに見合う収益を市場で確保することが難しい点も問題視した。電力市場では電気は電源を問わずすべて同質の商品として取引されるため、原子力特有のリスクを、販売価格へ反映させることが困難であると説明。脱炭素の価値や容量としての価値の評価制度は存在するものの、「原子力特有の巨大なリスクを十分に価格化できているわけではない」と指摘した。その結果として、「発電事業者が競争環境の中で自社のバランスシートにこうしたリスクを抱え込む動機は極めて乏しい」ことから、むしろ投資を見送る方が、取締役会や株式市場に対して合理的に説明しやすい状況にあるとの見方を示した。また朝野委員は、エネルギー安全保障や脱炭素、電力システムの強靱化、経済安全保障といった公益的価値が原子力に期待されている一方で、それらの価値を事業者の収益として十分に評価されていないことが問題の本質であると指摘。「公益的には必要だが、民間企業の投資対象としては合理的な投資判断を行いにくい。このギャップを埋めることこそ事業環境整備の核心だ」と強調した。その上で、必要なのは旧来の総括原価方式への回帰ではなく、「民間の事業者にとって原子力を、巨大なリスク資産として放置するのではなく、エネルギー安全保障や脱炭素、レジリエンス、経済安全保障に資する国家インフラ資産として位置付け直す制度設計」であると提言。建設期間中の費用回収や規制変更リスク、バックエンド対策、原子力損害賠償法など、民間では負いきれないリスクについては、一定の範囲を超えた部分を、国が引き受ける仕組みを明確化すべきとの考えを示した。そして、「原子力を含む大規模かつ安定的な電源については、民間企業に使命感で投資を求めるのではなく、投資することが合理的だと説明できる制度を整えることが重要だ」と述べた。 ※同小委会合については、後日詳報
05 Jun 2026
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日本原燃の増田尚宏社長は5月28日の定例会見で、再処理工場の設工認審査について、次回審査会合で全項目の説明完了を目指す考えを示した。また、MOX燃料工場では第3回設工認の認可を受けて設備据付工事に着手したほか、低レベル放射性廃棄物埋設センターでは覆土作業を開始するなど、核燃料サイクル施設の整備が進展していることを説明した。再処理工場の設工認審査について増田社長は、全体約700項目のうち未説明となっている26項目について原子力規制庁とのヒアリングを進めており、次回審査会合で全項目の説明を終える考えを示した。説明完了後は、審査で示した設計方針を現場設備へ反映するとともに、補正申請に向けた準備を進める。また、高レベル放射性廃液をガラス固化体に加工するガラス溶融炉の検査について、使用前事業者検査で「模擬廃液」を用いて安全機能を確認する新たな日本原燃の方針に対し、直近の原子力規制委員会において、委員から特段の異論は示されなかったと報告した。日本原燃が、2024年8月に示した工程では実廃液を用いた検査を前提としていたが、今回新たに、使用前事業者検査では「模擬廃液」を、操業までに「実廃液」を用いて、生産機能を含む確認運転を実施する方針。増田社長は、「模擬廃液による検査が可能となれば、工程上の裕度が高まる」との認識を示した。一方で、規制委からは、高レベル放射性廃液の保有リスク低減や操業後の安全管理について指摘があった。それを踏まえ日本原燃では、安全に管理するための手段や方法、保安規定への反映を含め検討していく考えを示した。次に、MOX燃料工場について増田社長は、第3回設工認が5月26日に認可され、MOX粉末を焼き固めてペレットに加工する設備の据付工事着手を報告。今後は、重大事故等対処設備や溢水防護対策設備などを対象とする第4回設工認申請に向け、再処理工場での審査結果を反映しながら準備を進めるという。増田社長は、設工認審査は2024年8月時点の工程と比べてやや遅れているものの、第3回までで主要設備の設計方針は認可されており、第4回認可後の工事を効率的に進めることで、竣工目標(2027年度中)への影響はないとの見通しを示した。また、低レベル放射性廃棄物埋設センター1号埋設施設では、5月25日に覆土を開始。青森県産の砂やベントナイトを活用し、2035年度までに施設全体の覆土完了を目指すという。同施設はモルタルやコンクリート構造、難透水性覆土などによる多重バリア機能を備えており、覆土完了後も放射線量や地下水中の放射性物質濃度の監視を継続しながら、長期にわたり安全管理を行う方針だ。
04 Jun 2026
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青森県下北半島のむつ市・六ケ所村・大間町・東通村の首長らは5月27日、経済産業省の井野俊郎副大臣と会談し、原子力災害時の住民避難に必要な道路整備を国の責任で推進するよう求める要請書を手交した。2024年の能登半島地震を踏まえ、原子力災害と自然災害が同時に発生する複合災害への備えが重要だとして、避難道路や接続道路の整備促進に向けた財源確保を要望した。下北半島には、東通原子力発電所や建設中の大間原子力発電所、六ヶ所村の燃料サイクル施設など、国内有数の原子力関連施設が集積している。4市町村は、原子力防災の実効性を高めるためには、住民避難を支える道路網の整備が不可欠だとして、地方負担を伴わない形で国が責任を持って財源を確保し、整備を推進するよう求めた。要請では、①下北半島縦貫道路の全線早期整備、②三沢空港や東北縦貫自動車道と接続する上北沿岸高規格道路の整備促進、③国道338号バイパスや国道279号バイパスなど主要避難道路の整備促進、④各地域集落から主要避難道路へ接続する避難道路の整備――の4項目を重点事項として掲げた。4市町村は要請の中で、能登半島地震によって半島地域における防災インフラの重要性が改めて浮き彫りになったと指摘。下北半島では避難道路の整備が進められているものの、依然として代替ルートが十分とは言えず、災害時の交通確保に課題が残るとしている。さらに、日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震の発生が懸念される中、下北半島内の多くの道路が津波浸水想定区域に位置していることから、原子力災害と自然災害が複合的に発生した場合の住民避難に強い危機感を示した。むつ市の山本知也市長は、「下北半島には原子力関連施設が集中している。避難道路整備について国として前向きに支援してほしい」と述べ、原子力防災の実効性向上のため、下北半島全体の避難ネットワークの多重化を求めた。六ケ所村の橋本隆春村長は、再処理工場など燃料サイクル施設が立地する地域として、住民の安心・安全の確保が重要だと指摘。国道338号沿線の道路整備など、同村周辺の道路網の強化を要望した。また、大間町の野﨑尚文町長は、2021年の豪雨災害で実際に国道279号沿線の地域が孤立した経験に触れ、早急な道路整備の必要性を強調。東通村の畑中稔朗村長は、村人口の約半数が東通原子力発電所から5km圏内に居住し、村全体が30km圏内にあると指摘した上で、実効性ある避難計画の前提として避難道路や接続避難路の整備が不可欠との認識を示した。これに対し井野副大臣は、能登半島地震の教訓を踏まえ避難道路整備の重要性に理解を示した上で、地元住民らの要望にしっかり応え、国の原子力政策を着実に進めていくとの考えを示した。なお、同要請書は、内閣総理大臣、国土交通省、財務省にも提出されている。
03 Jun 2026
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は5月29日の定例記者会見で、世界各地で計画が進む小型モジュール炉(SMR)について、日本企業が部品・機器供給や設計面で重要な役割を担っているとの認識を示した。その上で、海外SMRプロジェクトへの参画は日本の原子力サプライチェーン維持につながると評価する一方、技術基盤を将来にわたって維持するためには国内での原子力発電所建設も重要との考えを強調した。増井理事長は最初に、4月に行われた原産年次大会の総括を行った。今回のテーマ、「原子力の最大限活用を支える人材戦略」を踏まえ、人材の課題に対して、産官学が一体となって取り組むべきものであるという理解を示し、人口減少の局面における省人化技術の必要性について言及した。また、初の取り組みである会員企業による学生支援キャンペーンによって100人を超える学生が年次大会に参加し、これまで以上に活気ある会場であったと語った。次に、原産年次大会の約1週間後に行われた第41回韓国原子力産業協会年次大会(KAP2026)および国際原子力産業展示会(INEX2026)への参加を報告。原産年次大会と比較して、企業が数多く出展する国際展示会の役割が強く、ロボットやVRを取り扱う企業が多かったと述べた。その後、「世界の原子力発電開発の動向」に関連して、世界各国におけるSMR開発・導入の動向について説明した。各国のSMRを取り巻く状況や日本企業が関わっているBWRX-300 やVOYGR などが各地で採用されていることに触れ、原子力利用国が約30か国なのに対し、約20か国がSMRについて何らかの検討を進めていることに触れ、その注目度の高さを評価した。会見後半、記者との質疑応答ではSMRと日本の関わりについての質問が相次いだ。その中で増井理事長は、日本企業が関与している海外のSMR について、短期的な視点と中期的な視点があると言及。短期的な視点としては、日本から部品や機器を供給する機会が増えることで、日本の原子力サプライチェーンの持続可能性向上につながるのではないかと述べた。例としてGE ベルノバ日立製のSMRについて挙げ、計画されている数百億ドル以上の投資額が実現すれば、日本の産業界に大きく貢献する可能性を指摘した。中期的には、海外で運転実績を積んだSMRが日本に逆輸入される可能性に言及した。また、日本企業のSMRの関わりについては、主要な案件としてBWRX-300(GVH)、VOYGR(NuScale Power)、SMR-300(Holtec International)を挙げ、設計の一部と、部品・機器のサプライヤーとして関わっている現状を説明。一方でその影響について、日本の技術基盤を維持するためには海外案件への参画だけでなく、国内での原子力発電所建設も重要であると訴えた。国が将来の原子力発電の見通しを示す意義についても触れ、国民に分かりやすい形で、いつまでにどの程度必要なのかを示すことは、国民への強いメッセージになるとともに、原子力産業にとっても将来への展望を示すことにつながるとの考えを示した。
02 Jun 2026
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経済同友会は5月29日、「エネルギー自立を国策の根幹へ~S+3Eの高度化に向けた意見~」を公表し、原子力利用の拡大に向けた「原子力規制のアップグレード」を提言した。AIの普及にともなうデータセンター需要の増加や、地政学リスクの高まりを背景に、原子力を「現実的な主力電源オプション」と位置付けた上で、審査の効率化・合理化や予見性向上、革新炉への対応、人材・体制強化などを求めている。提言では、エネルギー安全保障の観点から、自立性の高いエネルギー供給体制の構築が不可欠と指摘。AIの急速な普及にともなうデータセンター需要の増加や国際情勢の不安定化を踏まえ、「安全性・安定供給・経済性・環境適合」(S+3E)の同時達成を、日本の国力の基盤と位置付けた。「S+3E」の実現に向けて同友会は、原子力、再生可能エネルギー、移行期における化石燃料を適切に組み合わせたエネルギーミックスの構築が必要と提言。原子力については、「長期にわたる自立性の向上や安定供給、脱炭素を支えるとともに、電力系統の安定運用に不可欠な機能を提供する現実的な主力電源オプションの一つ」と評価した。そして原子力利用拡大には、安全性向上と社会的理解の確保が前提とした上で、現行の規制体系について、福島第一原子力発電所事故後の高い安全水準の実現に貢献してきた反面、審査の長期化や判断プロセスの見通しにくさが、再稼働や新増設、関連投資の制約要因になっていると指摘した。このため、同友会は「原子力規制のアップグレーディング」として、案件の重要度に応じた審査資源の重点配分による審査の効率化・合理化を提案。加えて、審査期間や評価の考え方に関する予見性向上、小型モジュール炉(SMR)など革新炉の、従来の大型軽水炉とは異なる特性を踏まえた規制運用の検討、規制当局の人材・体制強化などを求めた。また同友会は、原子力や再生可能エネルギー、蓄電池、送電網などを一体的に捉えた「電力システム最適計画」の制度化も提言。原子力発電所の立地地点には一定の社会的制約があるとの認識の下、楽観的な新増設シナリオに依存しない電力システムの構築を求めた。再生可能エネルギーについても用地制約などを踏まえた現実的な導入計画を求めた。さらに、原子力を系統安定性を支える「アンカー電源」と位置付けた上で、再生可能エネルギーや蓄電池、高効率火力などを組み合わせた現実的な電源ポートフォリオの構築を提言した。一方、エネルギー政策の持続性を確保するためには国民理解と信頼の再構築が不可欠とし、原子力などエネルギー問題について、立地地域と電力消費地の相互理解を促進する必要性を強調。学校教育や社会人教育を通じ、エネルギーの選択肢やトレードオフを整理し、比較・判断するための基礎的なリテラシーを高めていくことが重要と指摘した。経済同友会は、今後も関係省庁や地方自治体、研究機関、教育界、産業界などとの議論を通じ、長期的な視点からエネルギー自立の実現に向けた提言を継続していくとしている。
01 Jun 2026
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独立行政法人都市再生機構(UR)は8月より、学生向け福島県浜通り地域のスタディツアー「キモチ、あつまるプロジェクト2026」を開催する。参加者は8月19~22日に福島県大熊町、双葉町、浪江町を訪問し、福島第一原子力発電所の事故と復興の現状について学び、現地の方々との交流会やワークショップに参加する。原子力災害伝承館、復興祈念公園、中間貯蔵情報センターなどを訪れる予定。その後、現地の方と協働し、実施する企画内容を検討。12月に現地で企画発表会を行い、2027年2月には実際に企画を実施する予定。URがスタディツアーを行うのは4回目だが、再訪や企画実施は今回が初めての試み。参加費用は無料。交通費、食費、宿泊費などをURが負担する。申込時点で18歳以上の学生で、6月18日開催のプレイベントに参加、もしくはプレイベントのアーカイブ動画を視聴可能で、条件を満たせば応募可能。定員は15人で、申込は6月30日まで。URは2011年の東日本大震災発生直後から、復旧・復興活動に取り組んできた。大熊町、双葉町、浪江町についても、ハード・ソフトの両面から支援を行っており、今回のツアーはその一環。
01 Jun 2026
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東京電力は5月20日、昨年度の実績と今年度の計画をまとめた「福島第二原子力発電所廃止措置実行計画2026」を公開した。東京電力はこの廃止措置実行計画を毎年更新し、計画の進捗や今後の予定を明らかにしている。2021年6月23日から始まった福島第二の廃止措置は、44年間で完了する計画となっており、四段階に分けられた工程のうち、現在は第一段階、10年かけて行う解体工事準備が進行中。第一段階の工程は、①汚染状況の調査、②核燃料物質による汚染の除去、③管理区域外設備の解体撤去、④核燃料物質の搬出、⑤廃棄物の処理処分から構成されている。昨年度は①汚染染状況の調査、③管理区域外設備の解体撤去、⑤廃棄物の処理処分で進展があった。汚染状況の調査に関して、4号機の放射化汚染の現場調査が行われ、格納容器の鋼材とコンクリート材13か所から計37試料を採取。今年度に外部の分析機関で分析が行われる予定。そのほか、2~4号機の炉内試料採取なども今年度予定されている。管理区域外設備については、3-4号機の薬液タンクが解体・撤去された。そのほか2号機軽油タンク・4号機主変圧器の解体撤去準備も行われた。今年度は2・4号機軽油タンクの解体撤去およびその準備作業、2~4号機ボンベ建屋の解体撤去が計画されている。廃棄物の処理処分では、ドラム缶に入れた固体廃棄物をモルタルで固型化するためのモルタル供給装置と、埋設される固体廃棄物ドラム缶が埋設基準を満たしているかの確認に使用する、低レベル放射性廃棄物搬出検査装置が昨年度竣工した。今年度以降、濃縮廃液や使用済樹脂の処分計画が進められる見込み。同社によると、一部工程の見直し等はあるものの、概ね計画通りに作業は進行しているという。
29 May 2026
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