GX脱炭素電源法が、6月6日に全面的に施行された。同法案は、脱炭素電源の利用促進を進めながら電力の安定供給を保つために整備された法案で、計5本の法改正を束ねて2023年5月に成立した。このうち、原子力発電に関連する「電気事業法」や「原子炉等規制法」の改正により、実質的に「60年超」運転が可能となった。運転期間の原則40年、最大60年という枠組みは維持されたが、新規制基準の審査や司法判断など、事業者が予見しがたい事由による停止期間が、運転期間のカウントから除外されることになった。例えば、関西電力の高浜発電所1号機(PWR、82.6万kWe)は、審査等で約12年半稼働していないため、運転開始から72年後の2047年頃まで稼働可能となる。一方で、高経年化炉に対する安全規制は強化された。運転開始から30年を超える原子炉については、10年以内ごとに「長期施設管理計画」を策定し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられた。
06 Jun 2025
282
関西電力とフランス電力(EDF)は6月3日、美浜発電所(PWR、82.6万kWe×1基、ほか2基が閉鎖)とビュジェイ発電所(PWR、94.5万kWe×2基、91.7万kWe×2基、ほか1基が閉鎖)との間で「姉妹発電所交流協定」を締結した。協定の締結期間は5年で、当日は福井県美浜町の美浜原子力PRセンターにて調印式が実施された。双方の発電所長らが年に1回程度、交互にプラントを訪問し、設備運用、技術、人材育成など幅広い分野で知見を共有することが目的。両社はすでに、2010年から原子力分野における包括協力協定を締結しており、今回の協定はその関係をさらに深めることになる。両発電所は、ともに40年超運転や廃止措置を実施しており、安全性や信頼性向上に向けた情報交換の強化が期待されている。
05 Jun 2025
578
九州電力は6月3日、川内原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)で設置工事を進めてきた「廃棄物搬出設備」の工事が完了し、運用開始したことを発表した。同設備は、原子力発電に伴って発生する低レベル放射性廃棄物のうち、雑固体廃棄物と呼ばれる金属類などを、安全かつ効率的に処理・搬出するためのもの。「圧縮固化処理棟」と「固体廃棄物搬出検査棟」から構成され、廃棄物を圧縮した後、モルタルで固化し、「充填固化体」として搬出する仕組み。年間約1,500本のドラム缶を処理する計画だ。搬出先は、青森県六ケ所村にある日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターで、2027年度以降の搬出開始を予定している。なお、液体の低レベル放射性廃棄物については、川内原子力発電所の運転開始当初から固化設備を導入し、アスファルトで均質・均一に固化した上で搬出を行ってきた。今回の新設備の導入により、固体廃棄物についても、発電所のサイト内で充填固化体として搬出できるようになり、廃棄物の処理体制が強化される。九州電力は運用を開始するにあたり、「地域の皆さまに安心し、信頼していただけるよう、引き続き、低レベル放射性廃棄物の計画的な搬出に取り組んでまいります」とコメントしている。
04 Jun 2025
641
原子力規制委員会(NRA)は5月28日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)と関西電力高浜発電所構内における、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画を許可した。東北電力は2024年2月に、関西電力は2024年3月に、乾式貯蔵施設設置に向けた原子炉設置変更許可をそれぞれ申請していた。乾式貯蔵施設とは、プールで一定期間冷却した使用済み燃料を、「キャスク」と呼ばれる金属容器に収容し、空気の自然対流によって冷却する方式の貯蔵施設である。水や電源を用いないため、維持管理が比較的容易であり、米国やスイスをはじめとした海外で多くの実績がある。貯蔵はあくまで一時的なものであり、使用済み燃料の再処理を前提に行われているが、燃料の搬出先となる日本原燃の再処理工場の完成が延期(2026年度竣工予定)となっており、使用済み燃料の保管能力の確保は各電力会社にとって喫緊の課題であった。日本国内では、すでに日本原電東海第二発電所で乾式貯蔵が実施されているほか、東京電力と日本原電が共同出資したリサイクル燃料備蓄センター(青森県むつ市)にも昨年、使用済み燃料の搬入が開始されている。また、今回認可を受けた女川および高浜は、発電所構内の乾式貯蔵施設としては新規制基準施行後、四国電力伊方発電所、九州電力玄海原子力発電所に続き、3、4か所目の合格となった。
03 Jun 2025
775
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は5月30日、定例の記者会見を行い、4月に開催された「第58回原産年次大会」の総括をはじめ、最近の海外出張の報告や今後の取組みについて説明した。増井理事長はまず、4月8日、9日に開催された原産年次大会の総括が30日に公表されたことを受け、その概要を報告。「原子力利用のさらなる加速―新規建設の実現に向けて」を基調テーマとして掲げた同大会について、「安定したサプライチェーンと人材確保、国による明確なビジョンと戦略が不可欠という認識が改めて共有された」と総括した。さらに、海外登壇者を招いたセッションでは、海外の成功事例や教訓を踏まえた課題と対応策の議論を通じて、「新規建設の重要性を改めて発信する機会となった」と振り返った。記者から、「国内外の若手技術者による講演や、学生パネリストを交えたグループディスカッションに特に大きな盛り上がりを感じたが、この熱気をどのように一般の人に伝えていくか」と問われたのに対し、増井理事長は、「当協会が長年実施している出前授業が果たす役割は大きい。エネルギー問題への関心が高まるような施策を、これからも進めていきたい」と今後に意欲を示した。 また、増井理事長は、4月15日~17日にカナダ・オタワで開催されたカナダ原子力協会(CNA)の年次大会に参加。さらに、4月29日~30日に韓国・ソウルで開催された「第40周年記念韓国原子力産業協会(KAIF)年次大会」にも出席し、それぞれの参加概要を報告した。韓国では、日本の原子力発電の現況を発信するとともに、国際展開を志向する会員企業を海外企業に紹介したことなどを説明した。このほか、中国核能行業協会(CNEA)主催の「中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春(CNESDS)」や、同時開催された「第16回中国原子力産業国際展示会(CIENPI)」にも参加。JAIFブースの出展に加え、CNEA協力のもと、中国の原子力関係施設への視察を行ったことも明らかにした。
02 Jun 2025
514
IHIは5月27日、神奈川県横浜市の自社工場で、原子炉建屋の壁として使われる鋼製構造物の試作品を報道陣に公開した。これは、米国のニュースケール社がルーマニアで建設予定のSMRプロジェクトに使用されるもの。SMRは従来の原子炉よりも小型で、1基あたりの電気出力が30万kW以下。機器やシステムは工場で製造し、モジュール化して立地サイトに搬送することで、プレハブのように現地で組み立てることができる。そのため、量産化が容易で、工期短縮やコスト削減が期待されている。データセンターの急増などで電力需要が高まる中、CO₂を出さない脱炭素電源として世界的に注目されている。同社はこれまでの原子炉圧力容器の製造などで、高い技術を保有しており、同社はこうした海外案件を通じて技術継承や人材育成を図る狙いがある。また、国際的な原子力サプライチェーンの構築にも取り組む。同社は「これらの事業を通じて、技術力の維持・強化や、国内サプライチェーンの拡大にも貢献していきたい。さらに次世代革新炉に対するグローバル展開を推進し、国内外の原子力の安全・事業の発展と、2030年代には売上1,000億円を目指していく。」とコメントを発表している。
30 May 2025
939
電気事業連合会は、5月20日、俳優の今田美桜さんが出演する新テレビCM「電気とひとの物語・冷蔵庫あけたら」篇、「電気とひとの物語・この撮影も」篇(各30秒)を、全国で放映開始した。また、5月27日から、新Webムービー「伝わるのは今だ-episode1-」の配信をスタートさせている。先行して公開されたテレビ CM では、日常のなかにある電気のありがたさや、そこに込められた人の思いをやさしく伝える内容となっている。新Webムービーでは、今後の電力需要の増加を見据え、CO₂を排出しない原子力や再生可能エネルギーの活用、火力の脱炭素化といった課題への取り組みを、ドラマ仕立てで紹介。日本のエネルギー自給率が約15%と低い現状を背景に、各電源をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を訴える内容となっている。今田さんがシリアスな表情を崩さずに、若干強引気味に説明するシーンがコミカルで、SNS上では早くも話題になっているようだ。Webムービーの最後には「エネルギーのこと、知ってほしいのは今だから」というメッセージが添えられており、若い世代をはじめ、多くの人にエネルギー問題を身近に感じてもらいたいという思いが込められている。また、電事連では安全性を最優先に、「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」の3要素を同時に満たす「S+3E」の実現を掲げており、新しいテレビCMとWebムービーを通じて、こうした取り組みを伝えている。
28 May 2025
641
日本原燃は5月21日、青森県六ヶ所村にあるウラン濃縮工場について、設備の設計および工事計画の認可申請を原子力規制委員会(NRA)に提出した。申請の対象は、年間150トンSWU(分離作業単位)の処理能力を持つ「2号カスケード設備(RE-2C)」を含む複数の設備。今後、老朽化した機器を新型の遠心分離機などへ更新し、安全性と効率の向上を図る。今回の申請では、新型遠心分離機の導入に加えて、耐震評価、追加の安全対策を実施。また、ウラン化合物を取り扱う六フッ化ウラン処理設備や高周波電源設備、放射線監視設備、非常用設備についても同様に設備更新や追加の安全対策が行われる予定だ。今回、申請分の設備は2028年度中の完成を見込んでいる。
23 May 2025
1218
中国電力は5月21日、運転中の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)に係る「長期施設管理計画」が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同機は、2024年4月に、高経年化技術評価制度に基づき長期運転に関する認可を受けた。その後、原子炉等規制法の改正に伴い、運転開始から30年を超えて原子力発電所を運転する場合、経年劣化に関する評価を行い、今後実施すべき具体的な保全活動をとりまとめた長期施設管理計画を申請し、原子力規制委員会から認可を受けることとなった。今回は、原子力規制委員会が2025年5月14日までに行った審査内容に基づく補正を経て、正式に認可されたもの。島根2号機は1989年2月に営業運転を開始。すでに運転開始から36年が経過しており、長期施設管理計画の対象期間は、制度施行日である2025年6月6日から、運転40年目を迎える前日である2029年2月9日までとなっている。
22 May 2025
834
日本原子力発電は5月19日、廃炉作業中の敦賀発電所1号機(BWR、35.7万kWe)の廃止措置工程について、完了時期を当初計画の2040年度より7年延期し、2047年度の完了を目指す方針を明らかにした。あわせて、同発電所が立地する福井県及び敦賀市に報告するとともに、原子力規制委員会(NRA)に廃止措置計画の変更届を提出した。敦賀1号機は、1970年3月に営業運転を開始した国内初の商業用軽水炉で、2017年から廃炉作業が進められている。廃止措置は3段階で構成されており、現在は第1段階にあたる「原子炉本体等解体準備期間」にある。すでに、解体で発生する廃棄物を効率的に移送するルート確保のため、原子炉建屋、タービン建屋内の設備や軽油貯蔵タンク等の解体、撤去工事を実施中で、2026年度から原子炉本体の解体に着手する計画だった。しかし、原子炉格納容器の一部であるサプレッション・チェンバの解体を予定していたメーカーが、事情により受注を辞退。その後、別のメーカーを選定したが、解体用装置の開発に時間を要することから、廃止措置の完了時期を延期することになった。日本原子力発電は「引き続き安全確保を最優先に、敦賀1号機の廃止措置を着実に進めるとともに、丁寧な情報発信に努めていく」とのコメントを発表している。
21 May 2025
874
九州電力は、5月19日、2035年度までの長期経営計画を説明する記者会見の場で、従来の原子力発電所より安全性を高めた「次世代革新炉」の開発・建設を検討することを発表した。6月に代表取締役社長に就任予定の西山勝取締役常務執行役員は、「原子力を検討していくことは、エネルギー事業者として必須。ただ、具体的に検討していくためには、(資金調達など)さまざまな前提条件が揃わなくてはいけない」と説明し、慎重に判断する姿勢を示した。同社は現在、川内原子力発電所1・2号機(PWR、89.0万kWe×2基)と玄海原子力発電所3・4号機(PWR、118.0万kWe×2基)の計4基を所有、運転している。政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、廃炉を決めた原子力発電所の代替として、同一事業者が発電所のサイト内に新設することを「建て替え」として容認。玄海原子力発電所1・2号機(PWR、55.9万kWe×2基)の廃炉を進める同社にとって、新設への道が開かれた形となっていた。具体的な新規建設サイトへの言及はなかったが、川内原子力発電所3号機(APWR、159.9万kWe)の建設予定サイトが次世代革新炉の設置場所の候補とみる向きも多い。
20 May 2025
1507
九州電力は5月19日、玄海原子力発電所(PWR、118万kWe×2基)において、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置工事を開始した。既存の燃料プールに加え、乾式貯蔵方式を導入することで、中間貯蔵手段の多様化と貯蔵余裕の確保を図る。2027年度の運用開始を目指している。同施設では、15年以上冷却した使用済み燃料を金属製の乾式貯蔵容器に封入し、専用の建屋に貯蔵する。最大960体の燃料集合体を貯蔵可能で、施設は地中構造を含む高さ約30メートル、幅約50メートル、奥行き約60メートルの規模となる。使用済み燃料を封入する貯蔵容器は、金属製の多重構造となっており、空気の循環によって冷却される設計だ。乾式貯蔵方式は、冷却に水や電源を必要としない構造から、地震や津波などの自然災害時にも高い安全性を確保できるとされ、国内外での導入が進んでいる。玄海発電所の乾式貯蔵施設については、2019年1月に原子炉設置変更許可を申請。2021年4月に許可されると、その後2024年6月に設計・工事計画の認可を申請し、今年4月30日には最終的な認可を得ていた。
20 May 2025
1062
新潟県は5月16日、柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)において事故が発生した場合の、被ばく線量シミュレーションを公表した。シミュレーションは、原子力規制委員会(NRA)の検討チームが実施した手法をもとに、気象条件など柏崎刈羽地域の実情に合わせて行った。7日後のベント実施や、6・7号機が同時に事故を起こすケースなど、計6通りのシナリオを想定。事故発生後の時間経過に伴う被ばく線量の変化や、防護措置の実施タイミングをそれぞれのケースごとに分析し、IAEAが定める各種基準と比較評価した。今回のシミュレーションでは、発電所から2.5キロメートル圏内では、避難や屋内退避を必要とする100ミリシーベルト/週の実効線量に達する可能性があること、また、4.5キロメートル圏内では、安定ヨウ素剤の服用が推奨される50ミリシーベルト/週に達する場合があることが示された。いずれもフィルタベントを使用した複数のケースで確認されている。一方、発電所から概ね30キロメートル圏内のUPZ(緊急時防護措置準備区域)では、被ばく線量が、IAEAの基準値には達しないことが確認された。屋外にいた場合でも被ばく線量は十分低く、特に鉄筋コンクリート造の施設など屋内退避を行うことでさらに被ばく線量が低減されると分析した。今回の結果は、6月1日、7日に開催する県民への説明会にて説明される予定となっている。
19 May 2025
852
原子力規制委員会(NRA)が4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認めた審査書案を了承したことを受け、同電力は5月15日、札幌市で開催された道の原子力専門有識者会合で、同審査書案について説明を行った。今後、北海道電力は、有識者の指摘を踏まえ、3号機の再稼働に向けて必要な対策を盛り込んだ、一般向け説明資料をとりまとめ、公開する方針だ。なお、審査書案は、5月30日までパブリックコメントに付せられている。会合では、前回有識者から要望があった道民向けの説明資料について、北海道電力が、基準津波、対津波設計方針、基礎地盤と周辺斜面の安定性評価、重大事故等対処施設などの項目ごとに、より分かりやすく、内容を充実させた説明を実施。一方で、一部有識者からは、更なる情報の深掘りを求める声が上がった。津波の年超過確率、制御棒の自重落下やホウ酸水を使った原子炉出力抑制、審査対応状況に関する記載などに関して、さらに分かりやすい説明を求める意見が出された。現在、北海道では、次世代半導体の量産を目指す新工場建設や、国内最大級のデータセンターが建設予定。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。
16 May 2025
1212
「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協、会長=米澤光治・敦賀市長)の年次総会が5月12日、都内で開催された。全国の原子力発電所などを立地する会員25市町村の首長らが一堂に会し、国に対して原子力・エネルギー政策に係る提言を行うもの。2025年度の活動として、「被災地の復興」、「安全規制・防災対策」、「原子力政策」、「立地地域対策」の分野で、計67の重点項目を掲げ、国・関係機関に要請していくことが了承された。総会には、政府より、竹内真二・経済産業大臣政務官、赤松健・文部科学大臣政務官他、内閣府、原子力規制庁、国土交通省も含め、関係省庁の幹部らが出席。立地地域との質疑応答に臨んだ。米澤会長は、政府関係者との意見交換に先立ち、「立地地域は様々な課題を抱えている」とした上で、2月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画で「原子力を最大限活用」と明記されたことに鑑み、「今だからこそ、原子力政策の最前線に立つ立地地域の声を今後の政策に反映させて欲しい」と強調。さらに、「できるだけ地元の国会議員にも聴いてもらいたい」とも要望した。今回は、政界から、メーカーで原子力技術に携わっていた経験のある衆議院議員の森英介氏や、自民党政調会長などを歴任した同・稲田朋美氏らが出席。地域の声に耳を傾けた。今回の意見交換では、8市町村が発言。原子力防災に関し、大間町の野﨑尚文町長は、半島特有の課題に鑑み、大間町と函館市を結ぶフェリー「大函丸」の更新に言及。道路に限らない「防災インフラ」の充実化が図られるよう航路維持に係る補助金の創設を要望した。先般原子力規制委員会が策定した屋内退避の考え方に係る意見もあり、BWRとして再稼働した東北電力女川原子力発電所を立地する石巻市の渡邉伸彦副市長は、市内全域がUPZ圏内にあることを踏まえ、市民に分かりやすいQ&A資料の制作・公開を要望。人材育成の関連では、美浜町の戸嶋秀樹町長が、エネルギー環境教育体験館「きいぱす」、福井県内高校生による全国意識調査やクリアランス金属の利活用など、次世代層への原子力に対する理解に向けた取組を紹介した。また、現在、再稼働に向け地元の理解が焦点となっている柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市の櫻井雅浩市長は、エネルギー政策、原子力規制、原子力防災のそれぞれについて意見を陳述。特に、いわゆる「地元の合意」に関し、「法に基づかないものであるが、実質法のごとく拘束力を有している現状は是正されるべき」と主張した。
14 May 2025
1160
三重大学、海洋研究開発機構、帝塚山大学らによる研究チームはこのほど、高輝度レーザーを活用し、コンクリート中にセシウムを閉じ込めてガラス体を形成する「その場固定化」技術の実証に成功したと発表した。〈三重大他発表資料は こちら〉現在、進められている福島第一原子力発電所廃炉に関しては、汚染水対策や燃料デブリ取り出しの他、放射性廃棄物の処理処分も長期的な課題となっており、日本原子力学会など、アカデミアでは、廃炉の最終的姿、いわゆる「エンドステート」に向け検討を行っている。今回の研究成果は、これにも関連し、廃炉に伴う廃棄物の減容に資することが期待されそうだ。発表によると、福島第一原子力発電所で発生するコンクリート・がれきの総量は、将来的に建物の解体や燃料集合体から生じる推定量として、低表面線量率(0.005~1mSv/h)のコンクリート廃棄物で約130,000㎥、中表面線量率(1mSv/h超)の廃棄物で約60,000㎥。これらの廃棄物を効果的に管理し、長期保管することが重要なことから、より効率的な減容技術の開発が不可欠となっている。今回の研究では、放射性廃棄物の減容に向け、セシウム137(放射性同位体)を効果的に固定化することに着目。福島第一原子力発電所原子炉建屋と同じ組成のセシウム133(安定同位体)を混ぜたコンクリートに、高輝度レーザーを照射し、セシウムを固定化。物性調査・分析の結果、セシウムは、レーザー照射されたコンクリート中でガラス化されていることが示された。さらに、「電子プローブマイクロアナライザー」と呼ばれるX線分析手法により、セシウム捕捉率は実験値で99%と、従来手法による57%より遥かに高い値を確認。つまり、廃コンクリートの表面を、高輝度レーザーでガラス化し、溶融コンクリート内部の放射性物質をガラス体の中に固定化した後、ガラス体とそれ以外の物質を分離することで、効率的な減容が可能となる。研究チームは、「福島第一原子力発電所の廃炉を支援する優れた可能性を秘めている」と、期待を寄せている。なお、今回の研究開発には、東電設計や、産業廃棄物処理で実績のある太平洋コンサルタントからも協力を得ているという。
12 May 2025
897
日立GEニュークリア・エナジーは5月9日、カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が推進している小型モジュール炉(SMR)4基を建設するダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)の初号機向けに、パートナーであるGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GEベルノバ日立)と連携し、原子炉の主要機器を供給することを発表した。〈日立GE発表資料は こちら〉DNNPは北米初のSMRプロジェクトだ。OPG社は2021年12月、最速で2029年の運転開始を目指し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)と日立GEが共同開発するSMR「BWRX-300」(BWR、30万kW)を選定。今年4月4日には、カナダ原子力安全委員会(CNSC)により、建設が承認された。〈既報〉合わせて日立GEは、5月8日にその初号機が建設開始されたことも発表。「BWRX-300」は、自然循環の利用によりポンプを排除し、受動的冷却システムにより電源・注水設備・運転員操作なしで7日間の冷却が可能だ。また、圧力容器に隔離弁を直付けすることで、冷却材喪失事故の発生確率の削減につなげている。日立GEでは今後、「BWRX-300」の主要機器で、安全上重要な機器となるRIN(Reactor Internals 炉内構造物の一つで、原子炉圧力容器内に組み込まれ、炉心の支持や炉内の冷却材流路形成などの機能を持つ)、制御棒駆動水圧ユニットを供給する計画だ。日立GEの原子力国際技術本部長の森脇正直氏は、「この先駆的なプロジェクトに貢献できることを誇りに思う。当社は、BWRにおける豊富な経験および確かな技術力により、DNNPの成功を支援していく」と述べ、先進的なSMR開発の実現に期待を寄せた。同社では、DNNP2~4号機についても、初号機の知見を活かし機器の受注を目指す。
09 May 2025
1578
資源エネルギー庁は5月2日、新潟県内で行ってきたエネルギー・原子力政策に関する広報事業の調査結果を発表した。2025年3月6~10日、県内在住の15~89歳を対象にオンラインを通じたアンケート調査を実施し、576人から回答を得たもの。〈エネ庁発表資料は こちら〉エネ庁では、2024年末から25年2月までに新潟県内の28市町村で「THINK!ニッポンのエネルギー」と題する説明会を開催した(参加者数は計562名)。説明会と合わせ、エネ庁では、新潟県内および電力消費地の首都圏において、新聞広告、テレビCM、交通広告など、多様なメディアを活用し「エネルギー情勢や原子力発電等」について、集中的に広報事業を展開。昨春リニューアルしたJR新潟駅バスターミナルでも動画広告が流れ、バスを待つ乗客らの注目を集めていた。今回のアンケート結果は、こうした理解活動の成果に関し、地元を対象として調査したもの。それによると、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に係る考えについては、「再稼働すべき」が18.2%、「規制許可と避難対応があれば認めざるを得ない」が31.4%で、両者を合わせ49.6%が「再稼働を容認」と回答。一方で、「安全対策が強化され、規制許可と避難対応があっても再稼働を認めることはできない」が8.2%、「再稼働すべきでない」が22.7%と、両者を合わせ30.9%が「再稼働を容認できない」と回答した。また、「わからない、どちらでもない」との回答は19.4%。さらに、地域別にみると、立地自治体(柏崎市・刈羽村)では、「再稼働を容認」が66.7%で、他の地域と比較して高くなっていた(30km圏内自治体では48.0%)。理解活動の認知度では、「テレビCM」(26.0%)、「新聞広告」(17.5%)、「WEBCM」(12.80%)の順に高かった。年齢層でみると、高年層(60~89歳)では「テレビCM」と「新聞広告」の回答割合が、若年層(15~34歳)では「交通広告」と「WEBCM」の回答割合がそれぞれ高くなっており、昨今の若者の活字・テレビ離れが浮き彫りとなっているようだ。また、「広告を見たことで、原子力発電や柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に対する考え方は変化したか」については、「変化した」が10.4%、「参考になった」が32.8%。両者の合計は全体で43.2%に上り、特に若年層では54.1%と、顕著に高くなっていた。一方で、「変化していない」との回答割合は全体で42.6%。特に、高年層では53.2%と、半数を超えていた。さらに、「再稼働を容認」を選んだ理由として、複数回答を認め尋ねたところ、「エネルギー自給率の向上や安定供給につながると思うから」が最も高く52.1%、次いで「電気料金の抑制につながると思うから」が48.3%となった。一方で、「再稼働を容認できない」に関しては、「事故が起きた場合に避難するのが困難」が60.7%と最も高く、「いかなる安全対策を取っても人間の想定では対応できず、事故が起きた場合の影響が大きい」の51.7%、「使用済み燃料の再処理は開始しておらず、最終処分地も決まっていないまま、原子力を活用すべきでない」の42.7%がこれに次いだ。現在、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は地元の判断が焦点となっている。新潟県の花角英世知事は、5月8日の定例記者会見で、同2日に内閣府(原子力防災)の作業部会で取りまとめられた「柏崎刈羽地域の緊急時対応」に言及。知事は、昨年元旦に発生した能登半島地震に鑑み、複合災害に対する住民の不安感にも触れた上で、今回の取りまとめについては「大雪時の対応についてもしっかり取り込んでもらったと理解している」と評価。さらに、エネ庁によるアンケート調査結果については、「年齢層によって随分とバラツキがある」などと所感を述べた上で、これまで度々記者より問われてきた県民の意見集約に関しては、「できるだけ意識を上手に把握していきたい」と応えた。県議会では、再稼働の是非を問う住民投票条例案が審議されたが、4月18日に否決となっている。
08 May 2025
945
東京電力の小早川智明社長は4月30日、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた考えとして、「まずは現場、しっかりと安全が維持されることに尽きる」と強調。加えて、昨年初頭に発生した能登半島地震にも鑑み、地元が抱く複合災害への懸念に対応するよう、発電所が立地する柏崎市・刈羽村にとどまらず、広域的に説明を行っていく考えを述べた。同社本店で行われた2024年度決算発表に関する記者会見の場で述べたもの。 現在、最も再稼働が見込まれる柏崎刈羽7号機では、既に燃料装荷が完了した。一方で、現在、再稼働に向けては地元判断が焦点となっており、再稼働に関して、4月18日には新潟県議会で住民投票条例案が否決されるなど、新たな動きがみられている。小早川社長は、会見の場で、地元の理解を大前提とした上で「一日も早くご判断いただけるように最善を尽くしていきたい」と述べた。 また、7号機の他、新規制基準適合性審査をクリアした6号機でも、6月に燃料装荷開始が予定されている。東京電力では、6・7号機に関しては、テロ対策となる「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成時期を、4〜5年先延ばしすると発表した。設置期限は、7号機が2025年10月、6号機が29年9月と、仮に今夏の電力応需に向け7号機が再稼働しても10月には停止となる。 特重施設は、セキュリティ上、整備に関する詳細が明らかにされていない。小早川社長は「安全にオペレーションできるかが非常に重要だ」と語っている。
02 May 2025
2744
政府は4月29日、春の叙勲を発表。桐花大綬章を元衆議院議長の大島理森氏が受章する。大島氏は、中央省庁再編(2001年1月施行)の準備が佳境にあった2000年7~12月、文部相兼科学技術庁長官を務めた。当時、1999年に発生したJCO臨界事故、1998~99年に行われたH-ⅡAロケット打上げの2度に及ぶ失敗などを受け、科学技術行政の建て直しで手腕を発揮。原子力安全行政については、臨界事故の教訓を踏まえ、所管する試験研究炉や核燃料施設などにおける保安検査制度の新設を含む原子炉等規制法改正の立案をリード。同法は2000年7月に施行された。宇宙輸送の基盤技術に係る相次ぐ失敗に対しては、就任記者会見上で、「何をやっとるのか」と、声を荒げたこともある。この他、国際協力関連では、原子力委員会が主宰するASEAN諸国を中心とした政策対話の枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の第1回会合(2000年、タイ・バンコク)に臨席。将来的に原子力開発を標榜する新興国の代表らに対し、原子力政策に係る人材育成、損害賠償制度整備の重要性を訴えかけた。現在、FNCAは、発足から四半世紀を迎え、加盟国は当初、9か国だったが、2024年末にはシンガポールが加わり13か国に達しており、IAEAやOECD/NEAなど、国際機関との連携も強化し活動を拡大させている。旭日大綬章では、内閣府経済再生担当相などを歴任した甘利明氏が受章。同氏は、2006年9月~08年2月に経済産業相を務め、当時、総合資源エネルギー調査会が取りまとめた「原子力立国計画」に基づき、2007年4~5月には、産業界同行のもと、カザフスタンやサウジアラビアなど、中央・中東アジアの諸国・地域を訪れ、資源外交を積極的に推し進めた。また、同氏は、原子力発電所における過去の不適切事案発覚に端を発した発電設備の総点検をリード。原子力発電に関しては、「特別な保安検査」を実施し、原子力安全に関する企業文化や組織風土の定着に結び付けた。この他、旭日重光章を元電源開発社長の北村雅良氏、瑞宝重光章を元東京工業大学(現、東京科学大学)学長の三島良直氏が受章。在職中、原子力関連では、それぞれ、大間原子力発電所計画の推進、原子燃料サイクルの研究も行う「科学技術創成研究院」創設で手腕を発揮した。
02 May 2025
886
原子力規制委員会は4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。パブコメを経て、今夏にも審査書が決定され、正式に合格となる。 2013年7月に北海道電力が新規制基準への適合性審査を申請して以来、「合格」までに要した審査期間は過去最長の12年近くに及んだ。特に審査過程では、敷地内に活断層がないことの証明に手間取った。安全対策工事はほぼ完了しているが、現在津波対策として、高さ19メートルの防潮堤の設置工事が進行(2024年3月28日に着工)している。 泊3号機の合格により、規制基準への適合審査を終えた国内原子炉は計18基となった。しかし実際の再稼働に至るまでは、「保安規定」の認可や地元自治体の同意など、課題が残っている。今後は地元自治体である泊村、共和町、岩内町、神恵内村および北海道の同意手続きが再稼働への焦点となる。 規制委員会の 山中伸介委員長は、会合終了後の定例記者会見で、記者より長きにわたった審査に関し「効率化の重要性を象徴するものだったのでは」と問われたのに対し、これまで通りに厳正な審査を行っていく姿勢を示した上で、「審査の根本的なあり様」に関し改善を図っていく必要性を示唆した。現在、北海道では次世代半導体の量産を目指す国策会社ラピダスが、千歳市で新工場の建設を進めているのに加え、ソフトバンクが苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設予定だ。次世代半導体は、人工知能(AI)、自動運転、5G通信、量子コンピューティングなどの先端分野での活用が期待されており、国際的な競争力の源泉とされている。データセンターはソフトバンク以外にも北海道への立地を計画する事業者が多い。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。泊3号機の再稼働が、北海道エリアの電力安定供給において重要な役割を果たすことは間違いないだろう。
01 May 2025
1283
東京電力は4月24日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。〈東電発表資料は こちら〉2号機については、4月15日より着手したテレスコ式装置(釣り竿を引き伸ばすイメージ)による2回目の燃料デブリの試験的取り出しを4月23日に完了。今回は、昨秋に試験的取り出しを完了した1回目の取り出し場所とは異なる原子炉格納容器内の中心付近に近い箇所にアクセスできるものと判断し、燃料デブリを把持するとともに、その周囲の映像撮影に成功した。今回、2号機より取り出された燃料デブリは約0.2g。同機原子炉建屋内に設置のグローブボックスにおいて線量率や重量などの測定を行っており、1回目の取り出しと同様、日本原子力研究開発機構大洗工学研究所における詳細分析に向けて、構外輸送の準備が現在進められている。分析結果は、引き続き今後の燃料デブリ取り出し工法および安全対策や保管方法の検討に活用される運びだ。福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは4月24日の月例記者会見で、2024年10月の前回作業時より「奥側にアクセスできた」と、進捗の意義を強調。分析結果を通じペデスタル下の状況把握に努めていく考えを述べた。2号機における燃料デブリの試験的取り出しに関しては、テレスコ式装置による作業はこれで終了となる見込み。引き続き、英国との協同で開発されたロボットアームを用いた取り出し作業が2025年度内に予定されており、現在、準備中となっている。今回取り出された燃料デブリは4月25日、放射線を遮る容器に収納され、午前9時50分に福島第一原子力発電所を出発。午後1時半に原子力機構の施設に到着した模様。
25 Apr 2025
1250
東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は京浜事業所で4月22日、アラブ首長国連邦(UAE)のクリーブランドクリニックアブダビ(CCAD)との間で、同国初となる重粒子線がん治療装置の機器供給契約調印式を開催した。同装置の導入は中東初でもある。調印式には、東芝ESSの竹内努パワーシステム事業部長、駐日UAE大使のアル・ファヒーム閣下、CCADを傘下に収めるM42グループのアル・ノワイスCEO、量子科学技術研究開発機構(QST)の小安重夫理事長、経済産業省の渡辺信彦医療・福祉機器産業室長らが出席した。竹内事業部長は挨拶で、「重粒子線がん治療装置の導入は、中東地域における医療イノベーションの推進とがん治療向上への共通のコミットメントを示すもの」と指摘。1988年以来、ガス火力発電所建設やインフラ整備などを通じてUAEで培った信頼関係に触れつつ、今回のプロジェクトがUAEおよび中東地域における持続可能な発展への重要な節目になると強調した。また、「重粒子線治療により、より少ない回数と短時間の治療で、より効果的な治療を実現する」と語った。アル・ノワイスCEOは「今日は単なる契約の調印ではなく、人々の命を変える大きな一歩だ」と述べ、最新の重粒子線治療装置が導入されることで、これまで遠方への治療で経済的・精神的な負担を強いられてきた患者たちが、地元で高度な治療を受けられるようになると、その意義を強調。東芝の最先端技術とQSTの協力に感謝を表し、「ともに未来のがん治療に新たな1ページを!」と呼びかけた。小安理事長は、2023年の岸田文雄首相(当時)訪問時にUAEのアブダビで締結した研究協力覚書を振り返り、「QSTで重粒子線治療が始まって30年、16,000人を超える患者を治療してきた。今回アブダビでこの技術がさらに発展することを喜ばしく思う」と語った。今後もQSTとM42およびCCADの間で研究・人的交流を進め、世界的な治療普及を推進していく意向を示した。経産省の渡辺室長は、「重粒子線の導入に関しては、長年の議論を経て今回の契約締結に至った」と述べ、特に東芝の回転ガントリー型技術が患者負担の軽減につながることを評価。「アブダビでの治療が発展していくことを期待している」とエールを送った。アル・ファヒーム大使も、医師がたった一人だった1960年代のアブダビの医療事情から、現在までの大きな発展を紹介し、今回のプロジェクトが両国の協力関係をさらに深める節目になると期待を表明した。東芝ESSは今後も積極的に国内外での重粒子線治療装置の普及に取り組み、最先端医療の提供を通じて世界各地のがん治療水準向上に貢献する考えだ。
25 Apr 2025
870
新潟県議会は4月18日の本会議で、知事提出の議案「直接請求に係る東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民条例の制定について」を否決した。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けては、現在、県の判断が焦点となっている。花角英世知事は、県内28市町村で開催された国による説明会が2月までに終了したのを受け、国の対応に一定の理解を示す一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆していた。再稼働の判断材料の一つとされる県の技術委員会からも最終報告書が提出されたほか、住民避難の課題に関しても、4月2日に原子力規制委員会の検討チームによる「原子力災害対策指針」改正に係る報告書が了承されたところだ。県議会に提出された議案は、市民団体が14万人超の署名を集め請求されたもの。これを受け、県議会は4月16日に臨時会を招集。特別委員会を設置し有識者からのヒアリングも行い審議を行ってきた。18日の特別委員会では同議案を否決。続く本会議では、修正案が提出されたが反対多数で否決となった。自由民主党の県議会議員は「原発再稼働の是非の県民投票という手段は、あまりにも多くの総合的な判断が必要で、一般有権者の判断を超える。政策判断は専門的な立場による意思決定がなければ、責任も安全も、公平性も保てない」として、二者択一のいわゆる「マル・バツ形式」で国策に対し住民の考えを示すことについて反対の考えを主張。これに対し、住民投票実施を求める議員からは、憲法の地方自治に関する規定に立脚し「間接民主主義を補完するものとして意義があり、広く県民の意思を確認することになる。知事が県民の意思を確認する方法を明らかにしない以上、県民投票の実施を求めることは妥当だと考える」と述べた。この他、住民投票実施に要する数億円の費用負担に関する意見も出された。23日には花角知事の定例記者会見が予定されており、今回の議会判断に対する発言が注目されそうだ。原子力発電所の再稼働をめぐる住民投票条例案に関して、最近では、茨城県議会で2020年6月に日本原子力発電東海第二発電所について議論となった経緯がある。いわゆる「NIMBY」施設に関する住民判断の事例として、沖縄県の辺野古米軍基地の前例が俎上にあがったものの、「国策である原子力発電は国が責任を持って判断すべき」といった意見が大勢を占め否決となった。
22 Apr 2025
1405