英原子力規制庁(ONR)による起訴を受け10月2日、セラフィールド社は4年間のサイバーセキュリティー上の不備により332,500ポンド(約6,500万円)の罰金を科された。英国原子力廃止措置機関(NDA)の傘下にある同社は、カンブリア州で広大な原子力施設を運営している。具体的には、旧原子力施設から発生した放射性廃棄物などの回収、プルトニウムやウランを含む特殊核物質の貯蔵、使用済み燃料の管理、サイト内の施設の解体処理などを実施している。ONRは、2019年から2023年にかけてのセラフィールド社のITシステムのセキュリティー管理が、2003年の原子力産業セキュリティ規則に違反していると認定。ONRによると、セラフィールド社はサイバーセキュリティーと機密性の高い原子力情報の保護に関し、定められた基準、手順、取決めを満たしておらず、かなりの期間にわたり重大な不備があったことが判明したという。セラフィールド社はこの状態を放置し、実際に脆弱性が悪用されたという証拠はないものの、同社のITシステムが不正アクセスやデータ損失に対して脆弱であったとONRは判断した。ONRの検査官は2023年、ランサムウェア攻撃が成功した場合、現場での重要な「危険性の高いリスク軽減」作業に影響を与え、IT運用がその後通常の状態に戻るまでに最大18か月かかる可能性があると指摘。セラフィールド社内でも、フィッシング攻撃や悪意のある内部関係者が、重要なデータシステムの損失や情報漏洩を引き起こす可能性があることを認識していたという。攻撃が成功した場合、業務は中断され、施設損傷もしくは、重要な廃止措置作業が遅延する可能性があった。今年6月にウェストミンスター治安判事裁判所で行われた審問で、セラフィールド社は情報技術ネットワーク上の機密核情報の適切な保護の確保を怠り、承認されたセキュリティ計画の遵守をしなかった罪状を認めた。同裁判所は10月2日、セラフィールド社に対し、違反が中程度の過失と裁定し、332,500ポンドの罰金と訴訟費用53,253.2ポンド(約1,033万円)を支払うよう命じた。ONRのP. ファイフ規制担当シニアディレクターは、「2003年の原子力産業セキュリティ規則の下での義務を遵守する同社の能力が不十分であったことが認められた。欠陥はかなり長い間知られていたが、我々の介入と指導にもかかわらず、セラフィールド社は効果的に対応できず、セキュリティ侵害とシステムの侵害に対して脆弱な状態となった。ただし、昨年、改善が実施されている」と評価し、「サイバーセキュリティを含むすべてのリスクに対する原子力業界の効果的な管理を保証するために、我々規制当局は必要に応じて厳格な監視を継続する」と強調している。
09 Oct 2024
251
カザフスタンでは10月6日日曜日、原子力発電所建設を問う国民投票が全国で実施され、唯一の設問「カザフスタンに原子力発電所を建設することに賛成するか」に71.12%が賛成した。投票率は63.66%だった。K.-J. トカーエフ大統領は自身による投票後、記者団に対し、「今日は歴史に残る日となる。国民がどのような決定を下すにせよ、国家は国民の意志によって導かれる。これは画期的なイベントであり、私は国民投票の実施を支持する」と述べた。記者に、原子力発電所建設が国民の支持を受けた場合、採用炉型について問われると、私見としながらも、「供給者は国際的なコンソーシアムであることが望ましい」との考えを示した。カザフスタンは世界有数のウラン産出国であり、旧ソ連時代から燃料製造や原子力研究などが積極的に行われている。カスピ海沿岸にあるアクタウでは、熱電併給・海水脱塩用の高速炉BN-350(15万kWe)が1973年~1998年に稼働していたが、現時点で国内に原子力発電所はない。化石燃料資源が豊富な同国では現在、総発電電力量の約70%を石炭火力、20%を天然ガス火力に依存しており、複数の石炭火力発電所が今後10年で閉鎖される予定。トカーエフ大統領は、脱炭素やエネルギー安全保障の観点から、原子力発電所建設には前向きの姿勢を示してきた。同大統領は今年6月、「エネルギーの安定供給なくして経済発展はない」として、国民投票の実施を表明していた。カザフスタンでは、旧ソ連時代の40年間、同国東部のセミパラチンスクで456回の核実験が行われ、周辺住民の健康被害が長く続いた経緯もあり、国民投票の結果は注目されていた。
08 Oct 2024
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韓国原子力安全委員会(NSSC)は9月26日、韓国原子力研究院 (KAERI)、韓国水力・原子力 (KHNP)、サウジアラビアのアブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団 (K.A.CARE)が共同開発する小型モジュール炉(SMR)のPWR「SMART100」の標準設計承認 (SDA) を発給した。SMART(System-integrated Modular Advanced Reactor)は、2012年7月にSDAを取得。KAERI、KHNPおよびK.A.CAREが2019年12月にSDAを申請したSMART100はSMARTの改良版であり、SMARTの安全性、経済性、運転上の優位性を基に、完全受動的安全システムによる緊急時の原子炉の安全な停止と冷却を確保。熱出力を33万kWから36.5万kW、電気出力を10万kWから11万kWに向上させている。設計寿命は60年。SMART100の輸出を視野に、まずは技術開発の主要パートナーであるサウジアラビアへの輸出を目指している。SMART100は発電に加え、海水淡水化、地域暖房、プロセス熱供給など多用途に設計されており、簡素化されたモジュール設計により経済性を向上。蒸気発生器や原子炉冷却ポンプなどの主要コンポーネントを原子炉容器にコンパクトに一体化し、大規模な配管破断などの重大事故のリスクを低減。さらに、原子炉は事故発生時にも非常用発電機や運転員の介入を必要とせず、安全な状態の維持が可能であるという。KAERIは、このSDA取得を安全性と商業化への準備を実証する重要なマイルストーンと捉えており、SMART100で世界市場に進出したい考えだ。
08 Oct 2024
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チェコ電力(ČEZ)は10月1日、仏フラマトム社と、燃料の効率性と安全性向上を目的に、ロシア型PWRであるVVER-1000の燃料開発に関する了解覚書(MOU)を締結した。ČEZは、テメリン原子力発電所で2004年からVVER-1000×2基(各108.6万kWe)を運転中。自社の原子力発電所の安全性と効率性向上に重点的に取組むと同時に、少なくとも60年間の運転を目指している。同社のB. ズロネク取締役・原子力部門長は、「チェコのエネルギー安全保障強化の最重要課題は、燃料供給確保と燃料調達先の多様化だった。次の課題は、新燃料のフラマトム社との共同開発だ」としている。ČEZは現在、ドコバニ発電所(VVER-440×4基、各51万kWe)とテメリン発電所で年間約300億kWhを発電、これはチェコの総発電電力量の約3分の1に相当する。フラマトム社は、2018年からVVER-1000の独自の燃料設計に取組んでおり、2022年12月には、ブルガリアのコズロドイ発電所と同6号機(VVER-1000)への2025年から2034年までの10年間の燃料供給契約を締結している。現在、EU域内では18基のVVERが稼働しており、100万kWe級のVVER-1000はブルガリアとチェコで各2基ずつ、50万kW級ロシア型PWR(VVER-440)はチェコで4基、フィンランドで2基、ハンガリーで4基、スロバキアで4基の計14基が稼働中。国際情勢を背景にフラマトム社は、ロシア製燃料への輸入依存や関連サービスの供給中断のリスクを低減させるため、100%欧州技術によるVVER用燃料の設計開発を加速させている。フラマトム社は今年6月、欧州連合(EU)から1,000万ユーロ(約16.3億円)の資金拠出を受け、欧州原子力共同体(ユーラトム)の研究トレーニングプログラム下で、VVER-440向けの燃料開発と供給を目的とした「Safe and Alternative VVER European(SAVE)」プロジェクトを実施中だ。同社は、ロマン(フランス)、リンゲン(ドイツ)、リッチランド(米国)の3サイトで核燃料製造施設を操業している。
07 Oct 2024
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米原子力規制委員会(NRC)は9月17日、フロリダ・パワー&ライト社(FPL)のターキーポイント原子力発電所3号機および4号機(PWR、各82.9万kWe)について、それぞれ2052年および2053年までの運転期間延長を回復した。これにより80年運転が可能となった。両機は2019年12月、NRCより国内初の2度目となる運転期間延長認可(20年)を受け、それぞれ2052年7月および2053年4月までの運転期間延長が可能となった。しかし、NRCは2022年2月、国家環境政策法(NEPA) に基づく一般環境審査 には、気候変動を含む潜在的環境リスクの見直しに伴い追加情報が必要であるとし、最初の運転期間延長認可期限である2032年7月と2033年4月を有効期限に再設定した。これを受け、FPL社はサイト固有の環境影響声明書に対する追加文書をNRCに提出し、厳格な再評価プロセスを完了。2度目の運転期間延長認可の回復となった。NRCはこれまでに、送電開始以降の運転期間を合計で80年とする認可をターキーポイント3、4号機の他、コンステレーション・エナジー社とPSEG社が共同所有するピーチボトム2、3号機(BWR、各141.2万kW)、ドミニオン社のサリー1、2号機(PWR、各89万kW)、ノースアナ1、2号機(PWR、各100万kW級)に対して発給している。そのうち、ピーチボトム2、3号機については、再評価完了まで80年運転認可の効力が一時停止している。 ターキーポイント3号機は1972年に、同4号機は1973年に営業運転を開始(1、2号機の火力発電所は閉鎖。5号機のガス火力発電所は運転中)。フロリダ州マイアミの南40kmに位置する同発電所のサイト面積は44㎢。保護区域にあるマングローブ湿地帯と全長270km、面積27㎢の冷却水路に囲まれている。100万世帯の家庭や企業に電力を供給し、人口増加中のフロリダ州を支える一方、絶滅危惧種であるアメリカワニやその他の在来種の生息地を提供するという重要な役割を担っている。FPLは、フロリダ州で、同発電所のほか、セントルーシー原子力発電所(1、2号機、PWR 100万kWe級)を運転中。同社の総発電電力量に占める原子力シェアは20%。なお、同社はNRCに、セントルーシー発電所1、2号機の2度目となる運転期間延長認可を2021年8月に申請している。ターキーポイント原子力発電所は、1992年のハリケーン「アンドリュー」(カテゴリー5:最大クラス)の直撃に耐え、強力な自然災害にも耐えられる設計となっており、洪水や高潮から守るために海抜6mの高さに立地している。
07 Oct 2024
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米政府は9月30日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米エネルギー省(DOE)および米農務省(USDA)を通じて、同国中西部において信頼性が高く、安価なクリーン電力供給を支援するため、総額およそ28億ドル(4,100億円)の支援を発表した。内、DOEは融資プログラム局(LPO)を通じて、ミシガン州のパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kWe)の復旧と再稼働に係る資金調達を支援するため、同発電所を所有するホルテック・パリセード社に対し、最大15.2億ドル(約2,225億円)の融資保証を最終決定した。今回の融資保証は、2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)のエネルギーインフラ再投資(EIR)プログラムに基づくもので、今年4月、DOEは同発電所の再稼働に向けた融資保証としてLPOを通じて同額を上限とする条件付きの資金支援を発表していた。ホルテック社は現在、2051年まで運転できるよう大規模なバックフィットを実施中で、2025年第4四半期の送電開始をめざしている。今回の融資保証の決定は、米国の原子力発電所を再稼働させるためのDOE初の取組みであり、カーボンフリーの発電およびミシガン州の雇用拡大とともに、米国の原子力発電部門の強化に資するもの。パリセード発電所の再稼働により、ミシガン州で最大600名の常勤の高スキル、高サラリーの雇用が維持または創出される見込みで、さらに定検期間中には1,000名もの雇用も支えるという。また、同発電所の再稼働により、年間447万トンのCO2排出の削減に寄与し、これは、ガソリン車97万台以上による年間排出量にほぼ相当する。またUSDAは、IRAの一部である、エンパワリング・ルーラル・アメリカ(New ERA)プログラムの一環として、農村地域にある2つの電力協同組合のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)とフージャー・エナジー(Hoosier Energy)に合計約13億ドル(1,900億円)を交付すると発表した。同プログラムは、農村地域の家庭や中小企業が安価な電力を利用できるようにし、農村地域の労働力やエネルギー、教育インフラに投資することで、農村地域のより豊かな未来を支援することを目的としている。ホルテック・パリセード社は、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州の農村地域に電力を供給する、これら2つの農村電力協同組合と長期電力購入契約を既に締結している。バイデン政権の気候政策担当上級顧問のJ. ポデスタ氏は、「閉鎖済みの原子力発電所を米国史上初めて復活させ、ミシガン州、ウィスコンシン州、インディアナ州、イリノイ州の農村地域に、信頼性が高く、安価なクリーン電力を供給する。インフレ抑制法が中西部のコミュニティをいかに活性化させているかを示している」と強調した。パリセード発電所は、1971年に営業運転を開始。その後、2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月には同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に転換、2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。
04 Oct 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社は9月16日、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「eVinci」のプロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) 段階を完了したことを明らかにした。WE社はFEEEDにおいて、eVinciの5分の1サイズの実験機の建設を計画。早ければ2026年にINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始、最終設計の決定や許認可手続きに役立てたい考えだ。WE社傘下のeVinci テクノロジー社のJ. ボール社長は、「FEEEDプロセスの完了は、eVinciの商業化に向けた重要なステップ。今後10年以内に世界中に複数のeVinciの配置を目標としている」と述べ、NRICと協力し、eVinci実験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保作業を開始するとしている。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するWE社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社の3社に、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて授与。DOE傘下のNRICにおいて、FEEEDプロセスに沿った、これら企業のマイクロ炉の商業化の促進を目的とする。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッドを使った試験の計画策定を支援する。WE社はFEEEDプロセスの重要マイルストーンである、予備安全設計報告書 (PSDR) のNRICへの提出を他2社に先んじて行った。USNC社とラディアント社も年末までにFEEEDプロセスを完了予定。NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用したDOMEテストベッドを改修中である。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進めて、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。DOEは2020年12月、eVinciを官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じるとしている。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。2エーカー(約4,000㎡)ほどの敷地に設置し、HALEU燃料の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用、燃料交換は約8年おき。遠隔地のコミュニティへの熱電供給から採掘作業やデータセンターまで、幅広い用途を持つと期待されている。eVinciの建設をめぐっては、2023年、カナダのサスカチュワン州がeVinciの州内建設に向け、8,000万加ドル(約87億円)の研究補助金の交付を発表している。
04 Oct 2024
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世界原子力発電事業者協会 (WANO)の第17回隔年総会が9月29日~30日までアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催され、「未来を融合:技術とネットゼロ時代における持続可能なパフォーマンス(Fusing Futures: Sustainable Performance in the Tech and Net Zero Era)」のテーマの下、35の国と地域から400名以上の原子力関係者が参集。グローバルな運転経験やベストプラクティスを透明性をもって共有するとともに、高いパフォーマンスを維持するための新たな戦略やツールについて意見交換が行われた。WANOの千種直樹CEOは、「WANOは設立35周年を迎え、世界の原子力事業者のコミュニティを結集し、より高いレベルのパフォーマンスを達成するための取組みの継続において、互いに支え合うというコミットメントを強化した。世界では現在、約60基の原子力発電所が建設中であり、WANOは原子力の新規参入者と新技術への支援に特に重点を置いている。2015年以降、新規導入を支援する160以上のミッションを成功裏に終え、今回、ガーナ、ケニア、ポーランドを含む新規導入国からの代表者を初めて総会に迎えた」と述べるとともに、WANOの有する知識と経験を活用し、安全性と信頼性の確保によって業界の基盤の強化を目指すと結んだ。総会には、国際原子力機関(IAEA)のR.M. グロッシー事務局長がビデオメッセージを寄せた。また今回、改訂した戦略「UNITY Towards Nuclear Excellence」を発表。WANOが今後10年間で新規原子力プラントを安全かつ確実に稼働させるための重点項目などを示している。なお、今回の総会を機に採択された理事会決議は、原子力安全に国境はないと強調。原子力安全の維持を確実にするために、軍事紛争下で稼働するすべての原子力発電所に対してWANOが可能な限りあらゆる方法で継続的に支援するとともに、IAEAの安全への取組みへの支援の継続を約束している。また、いかなる原子力発電所も、産業界からの支援を受けられずに原子力安全を損なうことのないよう、あらゆる努力をしなければならないと再確認している。今回の総会を最後にWANO総裁を退任するUAEの首長国原子力会社(ENEC)のM.A. ハマディCEOは、「WANOの会議がアラブ諸国で開催されるのは初めてであり、最高の国際基準に沿って開発したバラカ原子力発電所は、WANOとの固い協力関係の証だ。クリーンでベースロードとなる電力供給のため、原子力発電利用の機運が高まる中、WANOは新規原子力導入を支援する上で重要な役割を果たす」と語った。次回の総会は、2026年に東京で開催される予定。WANOの新総裁には東京電力ホールディングス株式会社の小早川智明社長が就任した。同氏は就任挨拶の中で、福島第一原子力発電所の事故から13年が経過し、これまでに得られた教訓の共有により、世界中のプラントの安全性向上に寄与し続けることを強く望んでいるとした上で、「東京電力は最後まで、『福島第一』の廃炉作業に責任を持って取組んでいる。日本の原子力事業者は、2030年に向けたAction for Excellenceの目標達成のため、世界の原子力事業者を支援するために一丸となって取組んでいく。2026年に東京でお会いできることを楽しみにしている」と語った。
03 Oct 2024
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米ホルテック・インターナショナル社傘下の英法人ホルテック・ブリテン社は9月20日、計画中の小型モジュール炉(SMR)のコンポーネント製造拠点として、イングランド中北部のサウスヨークシャー州を選定したことを明らかにした。同社によると、これにより英国経済に15億ポンド(約2,900億円)の付加価値(GVA)をもたらし、数百もの高レベルな雇用が創出される見込み。 今回選定された拠点では、「SMR-300」(PWR、30万kWe)のほか、英国海軍が使用する大型原子炉のコンポーネントの製造も予定している。ホルテック社は、サウスヨークシャー州を中心に英国内での現地調達率70%を目標に、サプライチェーン拡大に寄与する意向を示しているほか、同製造ラインの稼働を念頭に、英国内で2050年までに約500万kW分の「SMR-300」を導入する考えだ。なおSMR-300は、英国の政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施しているSMRの支援対象選定コンペの最終候補4炉型の一つに選ばれている。ホルテック社はこれまで、2024年初めに同社が発表したSMR製造工場の13の建設候補地の評価を進め、4か所まで絞り込んだのち、今回の決定に至った。同社のG.トーマス取締役は、サウスヨークシャー州を選んだ理由として、サプライチェーンや物流面での優位性のほかに、同州の人材の質の高さを挙げた。 今後、ホルテック社は国内外の受注動向をふまえ、投資計画確定に向けて、建設の具体化を進める。なお、SMR-300は現在、英国で初めて建設される炉型に対して行われる設計認証審査である、包括的設計審査(GDA)のステップ2(実質的な技術評価段階)に移行しており、設計の安全面や環境影響面などの審査が進められている。2023年12月には、SMR-300のGDA準備のために、英政府の「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」から3,000万ポンド(約57億円)の補助金が交付されている。
03 Oct 2024
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カナダ原子力協会(CNA)は9月24日、国内原子力関連の雇用が急増しており、熟練労働力の需要は今後も増大し続けるとの予測を発表した。カナダの原子力産業における就業人数は現在、89, 000人で、2019年比17%の大幅な増加。これは実質、GDPに年間220億カナダドル(約2.3兆円)に貢献しており、国家経済における原子力産業の重要な役割を示すものとなっている。この増加は、原子力発電所の改修プロジェクトの成功事例や、ネットゼロの達成とエネルギー安全保障の強化における原子力の重要な役割に対する認識の高まりなどに起因するとみられている。なお、就業者の44%が40歳以下であることも明らかとなり、この産業の将来性と新世代の労働者にとっての魅力が強調されている。またCNAは、原子力部門は雇用の増加だけでなく、その質においても際立っていると指摘。原子力関連の仕事の89%は、大学の学位を必要とする専門職および専門的な技術職の両方を含む、高度なスキルの必要な職に分類されていることを強調した。さらに、カナダが野心的な脱炭素化目標に向けて前進するにつれて、熟練した原子力労働者の需要がより一層高まると予測。カナダの原子力産業界は、革新的な小型モジュール炉(SMR)の開発および大型炉新設の可能性もあることから、将来のプロジェクトを支える人材を惹きつけていると分析。人材育成に積極的に取組み、高スキルの人材雇用に焦点を当て、次世代の原子力専門家の育成にコミットすることで、クリーンエネルギーの未来のために重要な役割を果たしたいとの考えだ。
02 Oct 2024
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スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所を所有するフィンランド電力大手のフォータム社とドイツ電力大手のユニパー社は9月18日、同3号機(BWR、145.0万kW)の運転期間を60年から80年に延長するための予備調査を開始する方針を明らかにした。同機は、2045年まで運転期間を延長し、60年運転を実施するとしていたが、両者は2060年代半ばまでさらに運転可能とみている。同機は、1985年8月に営業運転を開始。2009年に大規模なバックフィットと出力増強を実施し、出力規模は当初の105.0万kWから145.0万kWに拡大。スウェーデン最大規模の原子炉であり、年間の発電電力量は約110億kWhに達する。なお、オスカーシャム原子力発電所への出資比率はユニパー社が54.5%、フォータム社が45.5%。同サイトには、運転中の3号機のほか、電力価格の低迷と高額な原子力発電税を理由に、2017年6月と2016年12月にそれぞれ閉鎖された1、2号機(BWR、1号機: 49.2万kW、2号機: 66.1万kW)が立地している。ロシアからのガス供給量の減少で経営難に陥り、2022年にドイツ政府により国有化されたユニパー社はスウェーデン国内で、オスカーシャムのほか、リングハルス((現在リングハルスでは3、4号機(PWR、110万kW級×2基)が運転中、1、2号機(1号機: BWR、91.6万kW、2号機: PWR、96.3万kW)が廃止措置中である。))(出資比率29.56%)、フォルスマルク(同8.5%)の運転中3サイト(計6基・718.4万kW)、および閉鎖されたバーセベック(同100%)サイトに出資。そのほか、原子力発電所を所有・運転する電力会社が共同出資して設立した「スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社」(SKB 社)にも出資している(同12%)。ドイツは2023年4月、2011年3月時点で運転中の商業炉17基を全廃し、国内での脱原子力を完了したが、国外での原子力事業は継続しているほか、国内にあるグロナウ濃縮工場(ウレンコ社)とリンゲン核燃料製造工場(仏フラマトム社)は、他国向けに事業を継続している。スウェーデンでは6月にも、バッテンフォールが各発電所の所有者らとともに、フォルスマルク1~3号機とリングハルス3、 4号機の運転期間を60年から80年に延長する方針を決定しており、既存炉の最大限活用に向けた取組みが進められている。
02 Oct 2024
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米国防総省(DOD)は9月24日、アイダホ国立研究所(INL)で、軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉「プロジェクト・ペレ」の建設に着手したことを明らかにした。原子炉は現在、同省の戦略的能力室(SCO)主導の下、バージニア州リンチバーグのBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社で製造中。原子炉の組立を2025年2月に開始し、2026年に組立を終え完成した原子炉をINLに輸送、設置する計画で、米国初の第4世代炉となる。SCOは2022年6月、「プロジェクト・ペレ」と呼ばれる軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉の設計・建設・実証プロジェクトにBWXT社の高温ガス炉(HTGR)設計を選定した。燃料には、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))燃料の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する。原子炉設備は20フィート(約6m)の輸送用コンテナ4つでINLに輸送され、2026年の設置に向けて、来年にもINLの重要インフラのテストサイトにコンクリート製の遮蔽構造物を建設する。原子炉設備は同遮蔽構造物の中に設置、INLの特殊なマイクログリッドに接続され、出力規模は1~5千kWe。DODによると、最終的な安全レビューを完了後、初期評価を行い、結果が良好であれば、DODの重要拠点である遠隔地や厳しい環境下に配置し、電力供給を行うとしている。SCOのJ. ドライヤー室長は、DODが戦略的かつ重要技術に関する米国のイノベーションの推進に貢献してきた長い実績に触れたうえで、「プロジェクト・ペレは、DODのエネルギー回復力の向上を目指すカギとなるイニシアチブであり、民生用の原子力技術を進歩させる上でも重要な役割を果たす」と強調した。プロジェクト・ペレは政府全体の取り組みであり、エネルギー省(DOE)、原子力規制委員会(NRC)、米国陸軍工兵隊、NASA、国家核安全保障局(NNSA)が重要な専門知識を提供するなど、大きく貢献している。このほか、同プロジェクトの主契約者BWXT社の業務支援には、様々な経験を積んだ企業チームが協力。その主要メンバーには、軍需メーカーのノースロップ・グラマン社、英ロールス・ロイス社の北米技術部門であるリバティワークス、防衛・宇宙製造業のトーチ・テクノロジーズ社が含まれている。原子炉はDOEのアイダホ・オペレーション室の監督の下、米国内でのみ実証される。INLで最低3年間稼働予定であり、クリーンで信頼性が高く、輸送可能な原子力の利用を実証し、全米の軍事基地で増大するエネルギー需要を満たすことが期待されている。BWXT社はまた、プロジェクト・ペレでの経験を活かし、DOEの将来実証リスク削減プログラム(ARDP)の支援を受けている民生用マイクロ炉のBANR(BWXT Advanced Nuclear Reactor)の開発を促進する方針。高温ガス炉の部品とサービスの国内サプライチェーンの確立のほか、TRISO燃料製造分野においても活用したい考えだ。
01 Oct 2024
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インド政府は9月11日、原子力発電を所有・運転するインド原子力発電公社(NPCIL)とインド国営火力発電会社NTPCによる合弁会社の設立、ならびに合弁会社による原子力発電所の建設・所有・運転を承認した。2016年の原子力法改正により、公的部門企業の合弁事業による原子力発電事業の設立が可能となっていた。設立される合弁会社はAnushakti Vidhyut Nigam Ltd(ASHVINI)と称し、NPCILが51%、NTPCが49%所有する。さらにインド政府は、国産加圧重水炉=PHWR技術に基づくマヒ・バンスワラ原子力発電所建設プロジェクト(70万kWe×4基)の実施権をNPCILから合弁会社であるASHVINIへの移転を承認した。ASHVINI社は今後、マヒ・バンスワラに加えて、国内の様々な地域で他の原子力プロジェクトも推進していくとしている。政府はまた、単一の合弁会社または傘下企業に対し、NPCILが50億ルピー(約85億円)以上、およびNTPCが500億ルピー(約850億円)以上の投資に対する免税措置を承認。両社からの資金調達やノウハウ提供により、インドの2070年までにネットゼロの目標達成に向けた、原子力発電設備容量増強の加速が期待される。
01 Oct 2024
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中国・福建省にある中国核工業集団公司(CNNC)の漳州第Ⅱ原子力発電所2号機(PWR=華龍一号(HPR1000)、112.6万kWe)が9月27日、着工した。同一サイトの漳州第Ⅰ発電所では「華龍一号」の1、2号機(各112.6万kWe)が建設中で、それぞれ2024年、2025年に営業運転を開始予定。同2号機では冷態機能試験の準備が進行中だ。第Ⅱ発電所1号機(華龍一号、112.6万kWe)は今年2月22日に着工している。さらに、CNNCは「華龍一号」×2基採用の漳州第Ⅲ発電所を計画中。全6基が運転を開始すると、年間発電量は635億 kWhに達すると予想される。なお、今年に入ってからCNNCの原子炉の着工は3基目。中国全体では、6基目となる。
30 Sep 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社と韓国の現代E&C(現代建設)社は9月10日、スウェーデンとフィンランドにおけるAP1000(PWR、125万kWe)導入に向けて提携することで合意した。同合意に基づき、WE社はAP1000の設計と開発を提供し、現代E&C社は、エンジニアリングおよび建設サービスの提供で提携。これは、2022年5月に両社が締結したAP1000のグローバル展開に共同参画する戦略的協力合意に基づく。今回の提携合意は、スウェーデンの電力会社であるバッテンフォール社が今年2月に発表した、同社のリングハルス原子力発電所サイトでの大型炉または小型モジュール(SMR)の建設計画に関連し、年内の採用炉決定を念頭に置くもの。バッテンフォール社は、2030年代前半にも初号機を稼働させる方針である。さらに、WE社はフィンランドの電力会社であるフォータム社と2023年6月に了解覚書を締結、フィンランドとスウェーデンにおいて、WE社製AP1000とSMRのAP300を建設する可能性や前提条件の調査を目的としている。なお、フォータム社は、スウェーデンにあるオスカーシャム原子力発電所とフォルスマルク原子力発電所の共同所有者であり、それぞれ43%、22%余りを所有している。WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD. リップマン社長は、「世界でトップクラスのEPC企業の現代E&C社とのパートナーシップにより、スウェーデンとフィンランドにさらに100年のエネルギー安全保障を提供していく」と語った。現代E&C社のY. ヨンジュンCEOは、「当社は、世界市場で24基の大型原子力発電所の建設を通じて、原子力EPCの競争力、技術力、および建設管理システムの運用ノウハウを蓄積してきた。両社のシナジー効果を最大限に発揮していく」と抱負を述べた。
30 Sep 2024
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英国の大英原子力(GBN)は9月25日、小型モジュール炉(SMR)支援対象選定コンペで4社が選考に残ったことを明らかにした。今後、4社は最終選考に入る。最終選考に残った4社は、米GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、米ホルテック・インターナショナル社英法人、英ロールス・ロイスSMR社、米ウェスチングハウス(WE)社英法人。米ニュースケール社は選外となった。英政府は原子力発電設備容量を、2050年までに2,400万kWまで拡大する計画を発表しており、SMR導入も謳われている。英国の原子力発電所新設の牽引役として2023年7月に発足した政府機関のGBNはSMRの支援対象選定コンペを開始。同年10月には関心表明をした6社が入札に招待され、今年7月の締切までに辞退した仏EDF社を除く5社が入札書類を提出した。なお、GBNは今年3月、最終選考では今年後半までに2社を選ぶと発表している。当初、今年夏には選定企業との契約締結を計画していたが、遅延している。最終的に選定された企業はGBNからSMRへのサイトを割当てられ、技術開発の資金を獲得する。英政府は2029年にSMRへの最終投資決定を行い、2030年代半ばには運転を開始したい考えだ。
27 Sep 2024
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スウェーデン政府は2045年までにネットゼロ達成に向けて、非化石電源を強力に推進する方針で、2025年予算案ではエネルギー供給の拡大と安定確保のため、原子力のパイロット・実証プロジェクトへの投資を含む10億スウェーデン・クローネ(SEK)(約143億円)以上を計上し、9月19日に議会へ予算案を提出した。9月9日に開催された予算案に関する記者会見で、E. ブッシュ副首相兼エネルギー・ビジネス・産業相は、「より多くの電力を最も必要とされる場所に供給するため、より多くの投資を行い、強固な電力システムの構築を継続、新エネルギー技術の研究開発も強化する」と発言した。R. ポルモクタリ気候・環境相は、「原子力発電への投資、受容の向上策は、政府の打ち出す幅広い施策のカナメである」と説明。N. ウィクマン財務副大臣・金融市場大臣は、「原子力発電は計画的な導入が可能で、国家の成長における重要な要素。現在、原子力発電プラント新設の資金調達モデルについて緊急に取り組んでいる」と語った。政府は、将来の増大する電力需要を満たし供給安定性を高めるためには、新規原子力発電の導入が必須であり、原子力発電の拡大を可能にする政府の取組みは現在、より集中的な段階に入っていると言及。その条件整備として2025年予算案の中で、以下を含めている。原子力分野における革新的ソリューションの研究開発を目的としたパイロットおよび実証プロジェクトへの支援に1億SEK(約14.3億円)新規原子力プラントの効率的な許認可手続きに向けたガイダンスの策定、許認可手続きに係る関係当局間の調整環境の整備のため、スウェーデン環境保護庁の予算を250万SEK(約3,580万円)増額。新規原子力発電に向けた条件整備に3,000万SEK(約4.3億円)。2026年および2027年に、それぞれ3,500万SEK(約5億円)、2,500万SEK(約3.6億円)を計上する見込。U. クリステション首相は9月10日、議会における施政方針演説で、国内の全原子炉の半数の閉鎖による、スウェーデン南部での電力不足の事例に言及。「電力供給を確保し、脱炭素への移行を成功させるため、政府はエネルギー政策を抜本的に見直し、エネルギー分野における研究とイノベーションでは原子力を特に優先している。エネルギー政策なしに、気候政策はない」と強調した。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。政府は現在、原子力発電プラント新設の条件の大幅な改善に向けて、政府による融資保証、差金決済 (CfD)、リスクシェアリング・メカニズムを含む資金調達モデル案を検討している。今年8月には、ウィクマン財務副大臣・金融市場大臣が、昨年12月に政府が任命したM. ディレン政府調査官とともに、資金調達モデルの導入などを盛り込んだ報告書を発表している(既報)。
27 Sep 2024
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米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は9月20日、同社が2019年に閉鎖したスリーマイル・アイランド (TMI)1号機を、再稼働させる方針を明らかにした。米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結し、同社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給する。再稼働時期は2028年を見込んでいる。TMI1号機は電気出力89万kWのPWR。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。コンステレーション社によると、1号機の再稼働に向け、今後、タービン、発電機、冷却システムなど、プラント設備の更新に16億ドル(約2,300億円)を投資するほか、米原子力規制委員会(NRC)および関連する州や地元当局への許認可申請を進める。加えて、同機の運転認可を少なくとも2054年まで延長する申請も行う予定。 同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、1号機の再稼働により、3,400人以上の直接的・間接的な雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2兆3,000億円)増加、州税および連邦税も30億ドル(4,300億円)以上収入が増加するとみられている。コンステレーション社のJ. ドミンゲス社長兼CEOは、データセンターなどの米国の経済的かつ技術的競争力にとって極めて重要な産業には、カーボンフリーで安定した大容量の電力の供給が必要であると指摘した上で、「原子力発電所は、それを実現できる唯一のエネルギー源である」と強調している。 7月に発表された国際エネルギー機関(IEA)の報告書でも、データセンターによる世界的な電力需要増で原子力発電に対する注目が集まりつつあると指摘されている。同報告書では、TMI1号機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社による買収例など、原子力の活用をめざす事例が紹介されている。
27 Sep 2024
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米ニューヨークで9月22日~29日にかけ、気候イベント「Climate Week」が開催されている。サイドイベントとして9月23日に開催された「原子力を3倍にするファイナンス」(Financing the Tripling of Nuclear Energy)では、世界有数の金融機関14社が、世界的な低炭素経済への移行において原子力発電が重要な役割を果たすとの認識で一致。原子力発電プロジェクトに対するファイナンス支援を表明した。同イベントには、米バイデン大統領の気候政策担当顧問のJ. ポデスタ氏を含む各国政府関係者のほか、金融業界および原子力など産業界の幹部らが出席。今回、原子力発電への支援を表明した金融機関は以下の通り。アブダビ商業銀行 Abu Dhabi Commercial Bankアレス・マネジメント Ares Managementバンク・オブ・アメリカ Bank of Americaバークレイズ BarclaysBNPパリバ BNP Paribasブルックフィールド Brookfieldシティ Citiクレディ・アグリコルCIB Credit Agricole CIBゴールドマンサックス Goldman Sachsグッゲンハイム証券 Guggenheim Securities LLCモルガン・スタンレー Morgan Stanleyロスチャイルド&カンパニー Rothschild & Co.セグラキャピタル・マネジメント Segra Capital Managementソシエテ・ジェネラル Societe Generale金融機関はこれまで、プロジェクト・ファイナンスの複雑さとリスクの高さに加え、原子力発電が環境・社会・ガバナンス基準に適合しているか疑問があるとして、原子力発電への姿勢が分かれていた。世界銀行をはじめとする多国間金融機関は、原子力プロジェクトへの融資をいっさい行っておらず、結果的に原子力プロジェクトは資金調達の厳しさから高コスト化する傾向にある。金融機関が今回、原子力発電への支援を表明した背景には、昨年、UAEのドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で、「パリ協定」で示された1.5℃目標の達成に向け、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという野心的な「原子力の三倍化宣言」に、日本をはじめとする米英仏加など25か国が署名したことがある。また、COP最終日に採択された成果文書である「UAEコンセンサス」では、COP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。「原子力の三倍化宣言」では、原子力プロジェクトに対するファイナンスについても取り上げ、世界銀行を筆頭とする国際金融機関並びに各国の金融機関等に対し、原子力を融資対象に含めることのほか、新しい資金調達メカニズムなどを通じ、原子力発電への投資を奨励していた。また、フランス・パリのOECD本部で9月19日~20日に開催された、第2回「新しい原子力へのロードマップ」閣僚会議における政府コミュニケにおいても、既存炉の運転期間延長や新規プラントの建設、小型モジュール炉(SMR)の早期導入を可能にする措置を講じ、原子力の可能性を最大限に引き出すため、参加国22か国による協力を強調するとともに、適宜、国際金融機関や多国間開発銀行の関与を求めることに言及している。
25 Sep 2024
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米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月9日、エーコン社、アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン社)、ジェイコブス社、レイン・オルーク社の各社と、英国での小型モジュール炉(SMR)導入支援の了解覚書(MOU)を締結した。GEH社は、英国で進行中のSMR支援対象選定コンペを念頭に、同社製SMR「BWRX-300」の英国への導入を目指している。英政府は原子力発電設備容量を、2050年までに2,400万kWまで拡大する計画を発表しており、SMR導入も謳われている。GEH社製「BWRX-300」(BWR、30万kWe)は、英国の原子力発電所新設の牽引役として2023年7月に発足した政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMRの支援対象選定コンペの最終候補の1つに選定されており、現在、評価中だ。建設大手のエーコン社は、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のダーリントン新原子力プロジェクトにおいて、BWRX-300の建設プロジェクト管理、建設計画、施工を含む建設サービスを提供。エンジニアリング会社のアトキンス・リアリス社は同プロジェクトの設計者兼エンジニアを務めている。ダーリントン新原子力プロジェクトにおけるBWRX-300の着工は2025年、2029年末までに営業運転を開始する予定であり、GEH社は同プロジェクトから得られる知見の英国での活用に期待している。また、技術専門サービス会社であるジェイコブス社との協力により、英国の環境に合わせた最高水準の設計能力をより向上させ、建設会社のレイン・オルーク社による、業界をリードする最新の工法はSMR導入の展開を支援するとの考えだ。なお、これらのMOUは、BWRX-300の建設に向けた、英政府所有の最大手の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ(SF)社との協力に基づく。2022年9月、GEH社はSF社とMOUを締結。SF社の原子力関係の鋳鍛造品の製造能力が、英国内でBWRX-300の建設需要を満たすのに有効であるか協議し、BWRX-300用の鍛造品を英国内で調達する契約締結のほか、将来的には世界中でのBWRX-300展開も視野にいれた協力可能性を探ることとしている。
25 Sep 2024
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国際エネルギー機関(IEA)は9月19日、軍事紛争により大きな制約を受けているウクライナのエネルギーインフラの状況を検証した報告書「Ukraine’s Energy Security and the Coming Winter」を公表した。報告書は、ロシアによるウクライナのエネルギーインフラに対する攻撃が激しさを増すなか、冬が近づくにつれ深刻なリスクが生じていると指摘、今後数か月間、ウクライナ国民が電力と暖房に確実にアクセスできるよう、迅速なアクションと追加支援の必要性を勧告している。ウクライナのエネルギーシステムは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来2年連続で冬を乗り越えてきたものの、2024年春以降、発電所、熱供給プラント、送電網などに対する攻撃が激化したことにより、同国のエネルギーインフラは大きな負担にさらされている。報告書によると、8月下旬の大規模な攻撃以前にも、既に紛争前の発電能力の3分の2以上は、破壊や損傷、占拠により利用できず、夏期も計画停電やプラントの計画外停止が多発、水供給など日常生活のあらゆる側面に影響を及ぼしている。さらに、報告書は、冬が近づくにつれ、状況がさらに悪化する可能性を指摘。利用可能な電力供給とピーク需要との間に大きなギャップが生じ、真冬には病院、学校、その他の主要機関にさらなる深刻な混乱をもたらす可能性を指摘したほか、主要都市への熱供給のリスクにも言及、さらに平均気温が低い場合は、国内の天然ガス供給を圧迫する可能性がある、と警鐘を鳴らしている。これらをふまえ、IEAは、ウクライナとその国際パートナーがこれらのリスクに対処しつつ、将来の脆弱性を軽減するための、以下のエネルギー対策10項目を勧告した。重要なエネルギーインフラの物理的およびサイバーセキュリティの強化修理用機器とスペアパーツの配送の迅速化電力供給の増強と分散化欧州連合(EU)との送電容量の拡大エネルギー効率化への投資継続、および省エネ、デマンド・レスポンスの実施冬季暖房用のバックアップ・オプションの準備天然ガスの備蓄レベルの増強EUからのガス輸入能力の強化エネルギーシステム等で密接に関係する、ウクライナの隣国モルドバとの調整((報告書によると、モルドバは電力の約3分の2を、ロシア軍が駐留するトランスニストリアにある大規模発電所から供給。今後、2024年末にウクライナ経由のロシアのガス輸送協定が終了予定であることから、モルドバの電力の供給保証に大きな不確実性をもたらしている。))EUのシステムと統合された、市場ベースの、回復力のある持続可能なエネルギーシステムの基礎の構築F. ビロルIEA事務局長は、ウクライナの現況は、世界で最も差し迫ったエネルギー安全保障問題の一つであり、「今冬はこれまでで最も厳しい試練となるであろう」と懸念を示す一方、10項目の勧告が迅速かつ効果的に実施されれば、大きな効果が期待できる、との見方を示している。
25 Sep 2024
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インド北西部で建設中のラジャスタン原子力発電所7号機(加圧重水炉=PHWR、70万kWe)が9月19日に初臨界を達成した。同機は9月9日にインドの原子力規制当局(AERB)の認可を取得後、起動操作を開始、初臨界を達成した。今後、送電開始前にさまざまな試験を実施、AERBの認可を得ながら全出力まで段階的に出力を上げていく。送電開始は年内を予定している。インド原子力発電公社(NPCIL)は、計16基からなる70万kW級の国産PHWR建設プロジェクトを掲げており、ラジャスタン7号機が運開すると、同プロジェクトではカクラパー3、4号機に次いで、3基目となる。同プロジェクトではラジャスタン7号機を含め4基が建設中、10基が計画中だ。すべて2031年までに運開する予定である。
24 Sep 2024
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チェコ政府とチェコ電力(ČEZ)は9月18日、小型モジュール炉(SMR) の建設プロジェクトの優先サプライヤーに、英ロールス・ロイスSMR社を選定した。英ロールス・ロイスSMR社は、SMR供給者7社の中から入札によって選定され、現在、契約条件の最終決定に向けた協議が進行中である。同社製SMR(PWR、47万kWe)は、2030年初頭に英国で運転開始が計画されている。チェコは、老朽化した石炭火力発電所をSMRで代替し、脱炭素化とクリーンエネルギー源への安全な移行を進めるだけでなく、SMR関連機器の生産においても、大型炉と同様、グローバルなサプライチェーンの一部を構成したい考えで、チェコ経済にとって大きな機会になると捉えている。今回の選定結果を受け、P. フィアラ首相は「SMRは、将来のエネルギー安全保障の確保にとって重要な技術となり得る。我々は建設だけでなく、グローバルな生産と開発に参加していく。ČEZとロールス・ロイスSMR社の戦略的パートナーシップの確立は、原子力産業で長年の経験を持つチェコの企業にとって素晴らしい機会となるだろう」と語った。ČEZは、南ボヘミア州のテメリン原子力発電所の近くで、SMR初号機の建設計画を進めている。2040年までに予定されている新規大型炉の運転開始に先立ち、SMRを完成させる計画だ。ČEZは、南ボヘミア州および同社子会社の原子力研究所ÚJV Řežと緊密に連携して準備を進めている。なお、ČEZは後続のSMR建設サイトも調査中であり、閉鎖予定の石炭火力発電所サイトである、チェコ北東部のジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)および北西部のトゥシミツェ(Tušimice)にて、サイト適性の調査を集中的に進めている。
24 Sep 2024
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フィンランドのヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社は9月9日、ヘルシンキ市に熱供給を行う小型モジュール炉(SMR)を導入するプログラムを立ち上げたことを明らかにした。同社は、プログラムの第一段階でビジネスモデルを確立、SMRの炉型および供給者、建設候補サイトを決定する。この第一段階は、2026年に完了を予定している。ヘレン社は、2030年までに地域熱供給における化石燃料を利用停止する目標を掲げている。同社の地域熱供給ネットワークは全長1,400kmに及び、北欧諸国の中で最大規模。このネットワーク全体の脱炭素化のため、ネットワークの近くに設置可能な、安定した信頼性の高い、電力に依存しない熱源が必要であり、同社は実証済みの技術による、熱のみ、または電気と熱の両方を生産するSMRを導入する計画である。なお、同社は石炭火力発電所を来春までに全廃予定であり、バイオエネルギーやヒートポンプ、電気ボイラーによる熱供給では不十分であるため、新たな熱源の導入が急務となっている。ヘレン社のO. シルッカCEOは、「順調に進めば、2030年代初頭までにヘルシンキに熱供給するSMR初号機が完成する。石炭火力発電の代替は、現実的には原子力発電が唯一の選択肢。地域熱供給の半分を原子力発電、半分を電気でまかなうのが最適であり、太陽光発電や風力発電にも多額の投資を行っている」と述べる一方で、「SMRの規制が厳しくなり、地域熱供給ネットワークと接続するSMRを建設できなくなると、地域暖房の価格が上昇する」との懸念を示した。なお、シルッカCEOによると、ヘレン社は2023年10月にフィンランドの熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたスタートアップ企業のステディ・エナジー(Steady Energy)社と同社製SMR活用に関する基本合意書を交わしているが、実現可能性のあるすべてのSMRを検討していくという。ステディー社が開発する熱供給専用のSMR「LDR-50」(5万kWt)については、フィンランドの原子力規制当局(STUK)が8月末に、ステディ社からLDR-50の予備的な安全性評価の実施を要請されたことを明らかにした。STUKは、原子力法による許認可手続きとは別に、安全要件を満たしているかどうかを評価する。なお、ステディ社は、地域暖房用の原子力発電所の建設について、フィンランドのクオピオン・エネルギア(Kuopion Energia)社と今年7月、事前準備の実施で合意している。
24 Sep 2024
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