キーワード:処理水
-
福島第一処理水でIAEAがレビュー報告書、エネ庁委員会の検討結果を評価
福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関し、資源エネルギー庁の小委員会が2月に取りまとめた報告書に対するIAEAによるレビュー報告書が4月2日に公表された。IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日)に日本政府代表で出席した外務省の若宮健嗣副大臣が、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長に小委員会報告書を手渡した後、レビューが行われていた。一方、IAEAでは、2018年11月に福島第一原子力発電所の廃炉に関する第4回調査団を日本に派遣し助言を行っており、今回のIAEAによるレビュー報告書は、そのフォローアップとして位置付けられている。福島第一原子力発電所では、原子炉建屋内の燃料デブリ冷却のため継続的に発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)により浄化処理しているが、取り除くことのできないトリチウムを含んだ処理水の取扱いが課題となっており、資源エネルギー庁の小委員会で議論が行われてきた。技術的な検討も踏まえ、同委が2月に取りまとめた報告書では、「実績があり現実的な方法」として海洋放出と水蒸気放出をあげ、いずれによっても「放射線の影響は自然被ばくと比較して十分に小さい」と評価。また、処理水の処分に際しては、これまでの事例を踏まえ「風評被害対策を拡充・強化すべき」としている。今回のIAEAのレビュー報告書では、小委員会による議論について「科学的・技術的根拠に基づいている」とした上で、管理された状況下での水蒸気放出と海洋放出は「技術的に実施可能」と評価。また、処理水の処分実施に関し、「数十年に及ぶと予測される類をみない複雑な事案」と述べ、安全性のレビュー、規制機関の監督、モニタリングプログラム、すべてのステークホルダーの適切な関与が必要などと指摘し、日本政府が処分方法を決定した際にもIAEAとして支援を図る姿勢が示されている。福島第一原子力発電所で発生する処理水を保管するタンクは2022年夏頃に満杯となる見通しで、IAEAのレビュー報告書でも「処分方針に関する決定は、すべてのステークホルダーの関与を得ながら喫緊になされる必要」と指摘。資源エネルギー庁では、今後政府として処理水の取扱い方針を決定するため、4月6日の福島市内開催を皮切りに「関係者のご意見を伺う場」を予定している。
- 03 Apr 2020
- NEWS
-
エネ庁委員会が福島第一処理水で取りまとめ案、海洋放出と水蒸気放出に焦点
資源エネルギー庁の福島第一原子力発電所の処理水に関する委員会は12月23日、これまでの議論を整理した 取りまとめ案 を示した。汚染水の多核種除去設備(ALPS)による浄化に伴い、トリチウムを含んだ処理水が発生しタンクに貯蔵され続けているが、タンク建設の用地が限界に達しつつあることから、同委では、技術的観点に加え、風評被害などの社会的影響も含めて総合的に処分方法の検討を行ってきた。取りまとめ案では、処理水の処分方法の検討に向け、前例のある海洋放出、水蒸気放出に焦点を絞り、どちらか一方、または、両方の実施で、3つのケースを提示。海洋放出、水蒸気放出ともに、タンクに貯蔵されている処理水を1年間で処分したとしても、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)の手法を用いた被ばく影響評価で、自然放射線による影響の千分の1以下となるとしている。この他の処分方法として、同委員会の技術タスクフォースが検討を行った地層注入、水素放出、地下埋設については、いずれも技術的成立性、新たな規制・基準を要すること、処分場確保の制約などから、今回の取りまとめ案では、「現実的な選択肢としては課題が多い」とされた。委員会では、2016年11月より計16回の会合を行い、地元生産者や流通関係者、リスクコミュニケーションの専門家からもヒアリングを実施したほか、2018年8月には福島と東京で説明・公聴会を開催した。これらを踏まえ取りまとめ案では、処理水の処分に伴う風評被害について、今後の対策の方向性を提言。リスクコミュニケーション対策として、トリチウムについての理解促進、マスメディアに対する情報提供、海外に向けては、在京外交団や外国プレスを対象とした説明会の開催、農水産物の販路回復に関しては、小売り段階での専門販売員配置やオンラインストア開設など、これまでの成功事例も参考に取組を加速すべきとしている。
- 23 Dec 2019
- NEWS
-
エネ庁委員会、福島第一処理水に関する風評対策を議論
福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会は9月27日、前回8月の会合で示された貯蔵継続に係る事実関係を整理した上で、風評被害への対応策を議論した(=写真)。前回の会合で、東京電力は、多核種除去設備(ALPS)により浄化された処理水の保管状況とタンクの建設計画から、2022年夏頃に貯留水が満杯となる見通しを示したほか、今後の廃炉作業に必要となる敷地利用や、敷地外保管の可能性について説明した。これを踏まえ、27日の会合では、福島第一原子力発電所周辺への敷地拡大の可能性や敷地の有効活用などについて改めて整理。委員から質問の出ていた発電所に隣接する中間貯蔵施設(除去土壌等)予定地への敷地拡大に関し、資源エネルギー庁は、国が地元や地権者の方々に説明し受け入れてもらっている関係上、「難しい」とした。また、東京電力は、廃炉の進展に伴い2020年代後半にかけて設置を検討する8施設の概ねの整備時期を示した上で、貯留水タンクエリアの効率化や廃棄物処理作業の進捗などにより、空き地ができる可能性があるとして、「現在の福島第一の敷地内で廃炉作業をやり遂げる」と強調。風評対策に関して、資源エネルギー庁は、「貯蔵を継続する中でも、処分を行う際にも、風評への影響を最小限度に抑える対応策を検討することが必要」などとした上で、(1)具体的な懸念を抱く層への情報提供・丁寧な説明、(2)流通・消費の実績を見せることで不安を払拭、(3)流通関係者への働きかけ、(4)新商品開発・新規販路開拓、(5)海外への対応――との素案を提示した。また、東京電力からは、国内外で実績のある海洋放出と水蒸気放出について、風評抑制に向けた設備対応の検討状況が説明された。委員からは、「漁業復興の時間軸も十分考えるべき」、「海外メディアから誤解を招かぬよう」といった意見があった。
- 30 Sep 2019
- NEWS
