キーワード:再稼働
-
WNA「世界原子力発電見通し」第2版公表 日本は「再始動国」に分類 問われる実行体制
世界原子力協会(WNA)は9月7日、「世界原子力発電見通し」(World Nuclear Outlook Report)の第2版を発表。各国政府の目標や具体化している案件が実現し、既設炉の運転が継続すれば、2050年の世界の原子力発電設備容量は14.57億kWe(グロス)となるとの見通しを示した。COP28で打ち出された「原子力三倍化」目標(約12億kWe)を上回るとの結論は、今年1月の初版と変わらないが、第2版では各国が目標を実際に達成できるかを測る実行能力の評価が新たに加わった。WNAは各国を「政策枠組みの整備状況」「制度・インフラの整備状況」「プロジェクト・プログラムの成熟度」「目標達成の見通し」の4基準で評価し、原子力開発の状況が近い国々を5類型に整理。 日本が分類されたのは、相当数の原子炉を運転し、成熟した制度を持ちながら、近年は継続的な建設が行われていない「リスターター」(Restarter、原子炉の建設能力を再構築する「再始動国」)で、ベルギー、オランダ、スウェーデン、ブラジル、南アフリカなど12か国が並ぶ。リスターター全体では、制度・インフラの整備状況は比較的高く評価される一方、関係機関の業務の重心は既設炉の運転継続に置かれており、規制機関が新型炉の設計審査に十分対応できる体制にない場合があると指摘している。こうした国々では、当面の設備容量の上積みは、運転期間延長や改修、出力増強、再稼働から生じる公算が大きいと分析。またWNAは、一基ごとの個別対応から、複数案件を継続して進める「プログラム型」の仕組みへの移行を優先課題に挙げた。資金調達だけでなく、許認可、サプライチェーンの整備、人材計画についても、後続案件に繰り返し適用できる枠組みが必要だとしている。こうした課題がある一方、報告書は再始動国について、原子力開発に必要な制度的基盤の多くはすでに存在しており、見通しは明るいと評価。既存の産業・制度基盤と再び強まった政策支援を、継続的な原子力発電所の建設につなげられるかが鍵になると指摘した。これが実現すれば、2050年までに相当規模の原子力発電設備を追加できる可能性があるとしている。また報告書によると、2025年の世界の原子力発電電力量は2兆7,020億kWhで過去最高を更新し、世界の総発電電力量の約9%を占めた。平均設備利用率も83.7%へ上昇し、原子炉の高経年化による全般的な低下は見られなかった。一方、着工は11基(中国9基、ロシア2基)と、過去40年でも高い水準だったが、三倍化には2030年代半ばまでに現状の約6倍の着工ペースが必要になると分析した。 2050年見通しのうち5.59億kWeは、建設中・計画中・提案中のいずれにも該当する具体的な案件をまだ伴っていない。さらに報告書は、12分野の政策提言を示したうえで「目標はすでに掲げられている。今問われるのは、それを達成するための体制を築けるかどうかだ」と総括している。
- 09 Sep 2026
- NEWS
-
遺伝子組み換え作物と原子力発電所の輸出・再稼働、世界から遅れる共通要因は何か!
二〇二六年九月九日 遺伝子組み換え(GM)作物が世界で流通し始めて、今年でちょうど30年になる。日本は海外から大量のGM作物を輸入し、家畜の飼料や食用油など幅広く利用しているものの、いまだに日本国内では商業目的の栽培(花を除く)は実現していない。この「失われた30年」の背景を考えてみると、意外にも原子力発電所の輸出・再稼働にも共通する要因が浮かび上がった。それは何か。GM作物はすぐれたテクノロジー 遺伝子組み換え(GM=Genetically Modifiedの略)作物の栽培・流通は1996年、米国とカナダで始まり、その年から日本も輸入するようになった。GM作物とは簡単に言うと、別の生物から有用な遺伝子を取り出して細胞に組み込み、新しい性質を持たせた作物のことだ。 たとえば、害虫が茎や葉をかじると死ぬGMトウモロコシ(害虫を殺す微生物由来の遺伝子が作物に組み込まれているが、この殺虫たんぱく質は有機農業でも利用されており、人への安全性も確認されている)がある。これだと殺虫剤を使わずに済む利点がある。また、特定の除草剤を撒いても枯れないGM大豆がある。このGM大豆だと雑草退治が楽になる。つまり、雑草が生えてきたら、さっと除草剤をまくだけで雑草だけが枯れ、大豆は収穫できるというすぐれたテクノロジーなのだ。世界30ヵ国で栽培 これまでの数々の研究報告では、GM作物には「農薬の使用量の削減」「収量の増加」「生物多様性の増加」「土壌流失の防止」「開発途上国の農家の収入の増加」「地球温暖化の防止」など数多くのメリットがあるとされる。 その結果、現在、世界では米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、インド、中国、フィリピン、スペインなど約30カ国で栽培されている。米国ではトウモロコシ、大豆、ナタネ、綿の9割以上はGM作物に切り替わっている。ブラジルやアルゼンチンでは大豆の100%近くがGMだ。 当たり前のことだが、農家にとっては栽培するメリットが大きいから、GM作物をどんどん栽培する。GM作物を輸入する側にとっても、非組み換え作物よりも価格が低いため、リーズナブルな価格の商品を生産できる。輸入する側の日本では、すでに家畜飼料のほぼ100%がGM飼料であり、もはやGM作物の輸入なしに日本の家畜産業は成り立たないといってもよい。国や自治体に反対運動を跳ね返す力なし 不思議なのは、ここからだ。これだけのメリットがありながら、日本ではいまだに商業的な栽培が行われていないことだ。農業生産者に栽培意欲がないわけではない。かつて「バイオ作物懇話会」(最大約700人)の生産者が茨城県などで試験的にGM大豆を栽培しようとしたが、一部の過激な反対派が畑に侵入し、トラクターでつぶしてしまった。犯罪行為だったが、刑事事件にもならず、以来、生産者たちは試験栽培を断念してしまった。 国や県(岩手や愛知など)の公的研究機関も「病気に強いGM稲」など国産のGM作物を独自に開発しようとしたが、市民団体による強力な反対運動(訴訟も含む)に勝てず、研究開発は次々に中止へ追い込まれていった。あろうことか反対派や反対議員の動きに押された地方自治体(北海道、新潟、岩手、兵庫など)までが事実上、GM作物の栽培を禁止する条例までつくり、GM作物の栽培や研究開発にブレーキをかけた。その流れで民間企業も次々に撤退していった。 とどめを刺したのは、2009年に誕生した旧民主党政権だった。当時、農水省はGM稲を栽培する計画まで立てていたが、あっけなく中止され、研究開発予算も削られた。GM作物を科学的に分かりやすく解説した副読本も大量に廃棄された。政権を担う自民党の政治家も無関心だった。結局、国に長期的な展望がなかったため、国産のGM作物は実らなかった。かといって「失われた30年」を総括する空気もなく、国の責任もあいまいなまま今日に至っている(詳しくは筆者の編著『バイテク農業の未来・遺伝子組換え作物とゲノム編集食品』をお読みください)。原子力輸出の好機を逃す 当時、私は現役の記者(毎日新聞社)だった。メディアが流すニュースは、私の記事を除き、ほとんどネガティブだった。こういう動きをみていて、世界で普及していくGM作物がなぜ、日本では全く足踏み状態になるのか。そこに、日本独自のGM作物を開発するんだという強い国家的な意思・覚悟がなく、研究機関とメディアの連携もなく、政治家も無関心だったことが、「失われた30年」を生み出したのだと気づいた。 翻って、原子力発電所の状況を見たとき、似た構図が見えてくる。そう思っていた矢先、その思いにぴったり合う名著『新・世界エネルギー戦争』(講談社)に出合った。日本の深刻な状況を思い知り、日本の将来が心配になって体が震えた。著者の吉井英生氏は東京電力や日立製作所での勤務経験を持つ、エネルギー問題の実情に詳しい専門家だ。 同書によると、いま世界中で原子力が再評価されている。フランスは新規の原発建設を国家戦略として宣言し、米国は数十年ぶりに原発の新設認可を出した。英国は小型モジュール炉の導入に踏み切り、ロシアは中東やアジア、中国はアフリカに自国製の原子炉を売り歩く。脱炭素とエネルギーの安全保障を両立できる電源として、世界は原子力という技術を選び始めているのだ。ところが、日本はこの国際的潮流に取り残され、33基ある原発のうち、稼働しているのはたったの15基(26年6月時点)。日本は技術も、人材も、燃料サイクル設備もあるのに、その能力を使いきれていない。英国の挫折 例として、英国への原子炉輸出の挫折がある。日立製作所の子会社であるホライズン・ニュークリア・パワー社は、ウェールズのアングルシー島に英国版の改良型沸騰水型原子炉(UK-ABWR)を2基建設する計画だったが、2020年に建設プロジェクト事業から撤退してしまった。日本政府の原発輸出戦略の一環として進められていたのだが、メディアでは総事業費が3兆円規模に膨らむことなど、事業リスクを指摘する報道も目立った。このプロジェクトに対して、吉井氏は「世界的に見て極めて条件のよい原子力案件だった。しかし、プロジェクトを成立させることの国際的な意義も一部の人を除いて見ていなかった。官民が協調して全体戦略をきちんと立案し実行すれば、極めて成功確率の高いプロジェクトだった」と述べている。 そして、次のように訴える。「原子力は、資源よりも、技術、標準炉、金融、国家の信用が力になるが、日本では原発事故以降、国内の原子力は停滞し、輸出戦略も崩れた。そのあいだに中国は国内での建設を重ね、標準炉を完成させ、海外へ展開し始めている。すでに勝負はついてしまった」。メディアはもっと直視を 中国が世界の原子力市場でじわじわと地歩を固めているのに、日本は立ち止まったままだという認識は、世界で普及するGM作物から取り残された日本とどこか似ているではないか。 一番問題なのは、そういう国家の覚悟なき、深刻な日本の原子力の状況に大手メディアが強い関心を寄せないことだ。このままだと20年たったら、日本だけが原子力の世界で周回遅れになっていることは目に見えているが、国にも政治家にもメディアにも、そういう危機意識が見えない。吉井氏の本を読んで目を覚ましてほしいものだ。
- 09 Sep 2026
- COLUMN
-
原子力産業セミナー開催 人材確保へ各社が知恵(2)
企業と学生の採用・就職活動支援と原子力産業界への理解向上を目的とした「原子力産業セミナー」(主催=原子力産業協会/関西原子力懇談会)が9月5日、東京都立産業貿易センター(東京・港区)で開催された。原子力産業新聞取材チームは、出展企業・機関のうち4社に、人材確保・育成に向けた取組みを聞いた。前回の木内計測、日本原子力発電に続き、今回は発電設備技術検査協会とアトックスの取組みを紹介する。■発電設備技術検査協会:第三者の立場から「安全」を支える発電設備技術検査協会は、7年ぶりに同セミナーにブースを出展した。発電設備の安全・健全性を評価する同協会の業務は、学生をはじめ一般には広く知られておらず、人材確保には厳しさもあるという。一方、エネルギーの安定供給や原子力発電所の再稼働への関心が高まるなか、第三者・中立的な立場から原子力発電所の安全を支える役割に魅力を感じる学生も増えているとして、こうした学生との接点拡大に期待を寄せる。人材確保に向け、今年から技術系学生を対象としたインターンシップも開始した。電力会社の協力を得て、再稼働した原子力発電所や技能訓練施設を見学するほか、モックアップを使った溶接検査の模擬体験や非破壊検査技術の体験なども取り入れた。配管内部の傷を見つけ出す検査を「宝探し」に例えるなど、学生に仕事の面白さを伝える工夫も凝らしている。1970年の設立以来、検査の専門家集団として溶接部の健全性評価や材料、非破壊検査などに関する知見・経験を蓄積してきた同協会は、これらを次世代に継承することを重要課題と位置付ける。安全は設備だけでなく、最終的には「人」によって支えられるとの考えから、現場を客観的に見極めるプロフェッショナルの育成を目指している。■アトックス:「ラストワンマイル」を担う強み2006年の同セミナー開始当初から出展を続けるアトックスは、近年、学生の原子力に対する意識に変化を感じているという。カーボンニュートラルへの関心の高まりやエネルギー問題が身近になったことに加え、原子力をめぐる前向きな話題が増えていることなどを背景に、原子力に対するネガティブな反応が減ってきたと指摘。企業説明会でも、原子力を主力とする企業という理由で敬遠されることが少なくなってきたとの感触を示す。放射線技術を中心に原子力産業とともに発展してきた同社が、自社の強みとして学生にアピールするのが「ラストワンマイル」だ。機械化・自動化が進むなかでも代替できない最終工程を人の手で担うなど、他社が手掛けていない領域で強みを発揮しているという。一方、近年はエンジニアリング部門にも業務を拡大し、放射線技術を応用した医療装置の開発にも取り組むなど、事業領域を広げており、同社はこうした変化に挑戦する意欲を持つ人材を求めている。学生に対しては、原子力産業は多様な技術や企業から成る総合技術産業であるとして、最初から選択肢を絞らず、広い視野で業界を見てほしいと呼びかける。また、若い世代が持つITリテラシーやAIなど新技術への適応力にも期待を寄せており、そうした力をエネルギー・原子力産業の発展に生かしてほしいとしている。
- 08 Sep 2026
- NEWS
-
原子力産業セミナー開催 人材確保へ各社が知恵(1)
企業と学生の採用・就職活動支援と原子力産業界への理解向上を目的とした「原子力産業セミナー」(主催=原子力産業協会/関西原子力懇談会)が9月5日、東京都立産業貿易センター(東京・港区)で開催され、企業・機関50社が出展し、例年並みの229名の学生らが訪れた。主に2028年卒の大学生・大学院生・高専生が対象で、今回で21回目の開催となる。同セミナーは今後、大阪(9月12日)、福岡(10月17日)に加え、今年初めて仙台(10月10日)でも開催される。東京を含む4会場合計で65社・機関、157ブースの出展を予定している。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、DXやGXの進展に伴う電力需要の増加などを背景に、原子力を最大限活用する方針が示された。既設炉の再稼働や長期運転に加え、次世代革新炉の開発・設置に向けた動きも進むなか、原子力産業界では将来を担う人材の確保がこれまで以上に重要となっており、企業・機関の採用ニーズも高まっている。原子力産業新聞取材チームは今回、出展企業・機関のうち4社に、人材確保・育成に向けた取組みを聞いた。2回にわたり、各社の取組みや学生に訴える自社の魅力を紹介する。■木内計測:「教育力」と「技術力」をアピール原子力発電所などの計装・制御を手掛ける木内計測は、「教育力」を人材確保の大きな強みとして打ち出す。同社によると、社員約400人が国家資格を1人平均4.7保有。昨年には、女性営業社員が電気工事士の資格を取得したといい、担当者は教育の成果を象徴する出来事だと強調する。また、学生には馴染みの薄いフィールド系の仕事について、大学や高専への訪問などを通じて理解促進に取り組むほか、5日間のインターンシップでは31.5時間を実技に充て、実際の仕事を体験する機会を設けている。担当者は「難しそうに感じるが、入り口はそんなに難しくない」としたうえで、繰り返し訓練しながら技術を磨き、一人前になるまで長い目で人材を育てる企業風土も同社の魅力としてアピールしている。同社では足もとの採用も好調で、特に高卒採用はここ数年の3~4名程度から、今年は14~15名程度を見込む。2025年度から給与水準を引き上げたことも奏功したとみている。また、東京都市大学、福井工業大学、近畿大学のエネルギー関連の学生団体をつなぎ、オンラインで定期的に交流する取組みも進める。自社だけでなくフィールド系の仕事そのものを学生に知ってもらうことを狙いとしており、担当者は、学生に対して知名度だけで企業を選ぶのではなく、原子力産業を現場で支える企業にも目を向けてほしいと期待を寄せた。フィールド系の仕事については、「自分がやって考えた結論が、そのプラントを直接的に支えているという実感を持てる」と魅力を語る。関西電力管内の原子力・火力発電所をはじめ、各地の原子力関連施設で業務に携わってきた技術力を背景に、原子力産業を現場から支える仕事の魅力を学生に訴えている。■日本原子力発電:原子力専業ならではの魅力を発信日本原子力発電では、発電所の再稼働を目指した準備が進むなか、人材需要が高まっており、会社として採用活動を強化している。担当者は、自身が入社した4年前と比べ、「原子力に対する学生の印象はだいぶ変わってきている」と指摘。エネルギー問題への関心の高まりなども背景に、原子力の必要性を理解する学生が増えているとの感触を示し、応募者も増加傾向にあるとした。一方、高卒採用については、震災前の水準には戻っておらず、東海地区でも厳しい状況が続くという。こうしたなか、同社では従来の採用活動に加え、YouTubeで社員インタビューなどの動画を公開するほか、自社の採用サイトも充実。新卒だけでなくキャリア採用も含め、幅広い層との接点づくりを進めている。学生にアピールする同社ならではの魅力の一つが、日本の原子力発電開発を草創期から担ってきた原子力専業の事業者であることだ。担当者は、原子力に確実に携われることに加え、会社の規模が比較的小さいことで上司との距離が近く、若手でも自らの提案を実現しやすいことを他社との差別化ポイントとして挙げる。また、再稼働に至っていないことによる採用面での難しさがあるなか、学生にはその先の原子力事業も積極的に伝えている。再稼働に加え、高速炉開発や敦賀3、4号機の建設予定地などにも触れながら、将来、幅広い原子力事業に携われる可能性をアピールしているという。次回は、発電設備技術検査協会、アトックスを紹介します。
- 07 Sep 2026
- NEWS
-
北海道経済界 北海道電力に泊3号機の再稼働などの要望書提出
北海道経済連合会など北海道内の8つの経済団体は8月19日、連名で泊発電所3号機(PWR、91.2万kW)の確実な再稼働と低廉な電気料金の早期実現に関する要望書を北海道電力に提出した。提出を行ったのは北海道経済連合会、 北海道経済同友会、 北海道商工会連合会、北海道建 設業協会、北海道商工会議所連合会、北海道観光機構、北海道中小企業団体中央会、北海道商店街振興組合連合会。2025年9月にも同8団体で泊3号機の早期再稼働を求める要望書を北海道の鈴木直道知事、北海道議会の伊藤条一議長に提出したが、北海道電力への提出は初めて。要望書では、日本のエネルギー資源の海外依存と不安定な国際情勢を背景に、安定的な電力確保は地域経済にとって極めて重要な課題であるとし、脱炭素化との両立も含め泊発電所の果たす役割の大きさを指摘。2027年8月の防潮堤工事の完了見通しもふまえ、安全対策工事や再稼働に向けた準備作業を一層着実に進め、3号機の確実な再稼働を求めた。加えて、地域経済の安定と競争力確保のために、低廉な電気料金の実現も要望した。北海道電力の齋藤晋社長は7月30日に行われた記者会見で、泊3号機の再稼働について、2027年のできるだけ早い時期に再稼働を実現できるよう、取組みを進めるとしていた。
- 20 Aug 2026
- NEWS
-
約6割が再稼働・リプレースに「賛成」 日本財団18歳意識調査
日本財団は7月31日、「エネルギー」をテーマにした第82回18歳意識調査の調査結果を公表した。それによると、回答者のおよそ6割が原子力発電所の再稼働・リプレースに「賛成」していることが明らかになった18歳意識調査は日本財団が2018年から様々なテーマで定期的に行っている、17~19歳の男女を対象としたインターネットによるアンケート調査。今回は6月19~21日に1,000人に対して調査を実施した。今回、原子力発電に関する考えを聞く設問として、「A:安全基準を満たした原子力発電所の再稼働や建て替えを進めるべきだ」と「B:原子力発電には事故のリスクや廃棄物の問題があるため、頼るべきではない」のどちらが自分の考えに近いかを聞いた。「Aに近い」と回答したのは28.5%、「どちらかといえばAに近い」と回答したのは29.8%だった。一方、「Bに近い」と回答したのは13.9%、「どちらかといえばBに近い」と回答したのは15.8%、「わからない」が12.0%だった。回答は男女別でも公開されており、男性で「Aに近い」と答えたのは39.8%で、「どちらかといえばAに近い」と回答した人も含めると66.3%が再稼働やリプレースに賛成した。それに対して、女性で「Aに近い」と回答したのは16.6%に留まり、「どちらかといえばAに近い」と回答した人を含めると、49.9%が賛成した結果となり、男女で16ポイント以上の差が生じた。そのほか、次世代革新炉や水素・アンモニア発電、ペロブスカイト太陽電池などの新技術へ期待するかを聞く設問では、次世代革新炉について、全体の7割以上が「期待する」「どちらかといえば期待する」と回答した。なお新技術への認知度を調べた設問で、次世代革新炉は全体の8.1%しか認知しておらず、設問で挙げられた新技術の中で最も認知度が低かった。最後の設問はエネルギー問題への若者の関心を高めるために必要な取組みを聞くもので、「学校におけるエネルギー教育の充実」が最も多く、「メリットだけでなく、将来のリスクやコストを含めた透明性の高い情報公開」、「SNSや動画等による若者向けのわかりやすい情報発信」が続いた。
- 04 Aug 2026
- NEWS
-
泊発電所 防潮堤完成は2027年8月
北海道電力は7月30日、泊発電所1~3号機(PWR、1-2号機:57.9万kW×2基、3号機:91.2万kW)の防潮堤設置工事の完了時期を2027年8月にすると発表した。防潮堤は海抜高度19.0m、延長約1,200m、最大幅30mで、2024年3月28日から工事を開始している。当初は、着工から3年程度での完成を見込んでいた。北海道電力の齋藤晋社長は同日に行われた会見で、泊3号機の再稼働時期について、審査の進捗を見極めた上で改めて発表すると述べ、2027年のできるだけ早期に再稼働を実現すべく、取組みを進めるとした。泊3号機は、昨年12月に北海道の鈴木直道知事が再稼働に同意を表明し、再稼働に向けた準備が進んでいる。
- 03 Aug 2026
- NEWS
-
原発再稼働はホルムズ危機にも強い「トリプル+1」のメリットが!
二〇二六年七月二十七日 原子力発電所の再稼働のメリットは何か。新聞記事はなかなかその真相を伝えてくれないが、「電気料金が下がる」や「AI産業の電力需要拡大に寄与する」くらいは頭に思い浮かぶが、実はホルムズ海峡の封鎖危機にも強い。今回は原発再稼働の「トリプル+1(プラスワン)」を新聞記事などから拾ってみる。毎日新聞の記者が現実論を記事に 原子力発電所の再稼働が期待したほど進まない中、おもしろい記事を見つけた。原子力に慎重な立場を取ることが多い毎日新聞の中島昭浩記者(経済部)が書いた「記者の目」(7月10日付)だ。 見出しを見ると「現実に根ざしたエネルギー議論を」。どんな現実かといえば、「足元の課題は人工知能(AI)サービスに不可欠なデータセンター(DC)向けに拡大する電力需要にどう対応するかだ。DCは24時間365日稼働する。昼夜を問わず、天候によらず、安定的に電力を供給できるベースロード電源が必要だ」という現実への問題意識だった。 ではその結果、どんな結論に至ったのか。「(安定した電力を供給する)主力は火力発電と原発だが、火力は脱炭素に逆行する。AI業界が求める脱炭素電力を安定供給できる選択肢は、現状では原発の再稼働しかないとの考えに至った。日本はAI開発競争で米中の後塵を拝している。再稼働で得られるのは、AI需要の獲得という日本の成長機会だ」(筆者で一部要約)。 毎日新聞は今年1月23日の社説で「福島事故の教訓を踏まえれば、経済成長や電力確保を盾に、原発をなし崩しで使うことは許されないはずだ」と明確に書いていた。そうしたことを考えると、日本のAI産業振興のために安定した電力を供給する原発の再稼働が必要だという主張が毎日新聞の記事として掲載された意義は大きい。 毎日新聞は原発に批判的な論調の記事を多く書いてきたが、経済部に属する記者の中には、現実を考えると原発の再稼働が必要だという認識をもっている記者がいることがうかがえる。そして、毎日新聞がこの記事を載せたことは、まだまだ毎日新聞社には「記者の自由度」が他社に比べて高いこともうかがえる。太陽光への期待は続く ただ、太陽光発電への過剰な期待は消えていないようだ。中島記者は数字を挙げて「大量のAI需要を太陽光パネルで賄うには日本の国土に余裕がない」と太陽光パネルの限界を記事で指摘しながらも、最後に来て、「原発反対派は原子力の2割(40年度の電源構成)を減らすよりも、再生可能エネルギーを目標の4~5割からさらに高める議論をすべきではないか」と、天候に左右される不安定な太陽光や風力にも期待を寄せた。 私なら「そもそも原発がしっかりと動けば、太陽光発電などへの依存を抑えることができる」と書くだろうが、おそらくデスク(原稿をチェックする上層部)としてはそのままでは掲載しにくいだろう。記事を読み、そのような印象をもったが、それでも原発の再稼働がAI産業にとって必要だという第一のメリットは伝わったのではないか。その意味で上出来の記事だった。原発再稼働の度合いで電気料金に地域格差 原発の再稼働によって、どんなメリットがあるかを示す良い例が電気料金である。再稼働の度合いによって、電気料金に大きな「地域格差」が生じていることは意外に知られていない。 その意味で興味深かったのは朝日新聞の記事(25年12月11日)だ。北海道電力の泊原発の再稼働について、鈴木直道知事が同意を表明したことを受けての記事だ。朝日新聞は各電力会社(10社)の電気料金を一覧表に載せた。 その表を見ると、原発が多く動いている電力会社ほど電気料金が安いことが一目で分かる。たとえば、原発が7基動いている関西電力の料金が7791円(26年1月分)なのに対し、まだ原発が再稼働していない北海道電力の電気料金は1万534円と関西電力に比べて、約35%も高い。また、4基の原発が動いている九州電力は7755円(同)と関西電力並みに低い。この時点(25年12月)で原発が動いていない東京電力と中部電力はそれぞれ8634円、8285円とやはり関西電力や九州電力よりも高い。 この電気料金と原発再稼働の一覧を見ると、原発の再稼働が電気料金を下げること(つまり、電気料金は東日本で高く、西日本で低い)が明確に分かる。 一覧表を載せた意義は大きいが、原発に慎重な立場を取る朝日新聞(25年12月11日)は同じ記事の冒頭で「原発回帰を進めるほど、北電が抱える『危うさ』も浮かび上がる」と書く。どんな危うさかと思ったら、「北電の想定では、全3基が再稼働すると、発電量の6~7割を原発が占めることになる。地震などの災害で原発が止まれば、電力供給が一気に不足し、大規模な停電に陥るリスクが高まる恐れがある」と災害リスクに言及した。 それを言うなら、日本国内で出荷・設置されている太陽光パネルの約9割が海外製であり、そのうち約8割を中国製が占めているリスクをもっと知らせるべきだろう。産経新聞は料金値下げを強調 同じころ、産経新聞(25年12月3日)も電源構成(再稼働の状況)と電気料金の格差を取り上げているが、こちらは、大きな見出しで「原発再稼働で電気代格差 北電は九電より2000円高」と再稼働で電気料金が安くなることを強調した。 朝日と違うのは、その書きぶりだ。産経新聞は今年1月26日の記事でも原発再稼働は「電力課題に現実的選択」との大見出しをつけ、小見出しで「料金下げと安定供給 脱炭素でもメリット」と見出しだけで原発再稼働のメリットが分かる記事を載せた。これらの記事から、原発再稼働には「電気料金を下げる」「安定した電源でAI産業などを支える」「脱炭素」の3つのメリット(トリプルメリット)があることが分かる。原発はホルムズ海峡封鎖にも強い では、もう一つのプラス1(プラスワン)は何だろうか。 それはホルムズ海峡封鎖危機に見られるような中東依存に強いことだ。ウェブサイト「アゴラ言論プラットフォーム」で尾瀬原清冽氏(長年、電力会社で電力の需給運用やシステム設計に携わってきた専門家)が書いた「ホルムズ海峡封鎖でも電気代は上がらない? 燃料コスト高騰説を検証」(26年3月7日)を読んで、なるほどそうかと思った。 それによると、現在、電力の燃料構成で約7割は火力発電だが、そのうちLNG(液化天然ガス)が約34%(2021年)を占める。そのLNGの輸入先は豪州が約4割を占め、マレーシアなどを含めたアジア大洋州(オセアニア)地域で全体の約85%を占める。つまり、中東産は約15%に過ぎない。尾瀬原氏は国内の発電で使うLNGのうち、中東産は約15%なので、日本の発電構成に占める中東依存度はわずか約5%(34%×15%)で低いと指摘する(筆者注・資源エネルギー庁の24年度数値でもLNG比率は約32%なので、中東依存度の約5%は変わらない)。 福島原発事故が起きる前の2010年当時、発電の燃料に占めるLNGは約20%だったことを考えると、当時の中東依存度はもっと低かったことになる。 ホルムズ海峡の封鎖で確かに石油の価格は上がるが、発電燃料全体に占める石油は約7%に過ぎない。発電用のLNGに関しては、中東依存度が低いことは意外に知られていないのではないか。こと発電用LNGに関して言えば、原発がしっかりと動いていれば、ホルムズ海峡の封鎖危機の影響が小さいことをもっとメディアは伝えるべきだろう。
- 27 Jul 2026
- COLUMN
-
福島 内堀知事 復興・創生に向け国に要望 赤沢大臣『福島復興と廃炉は最重要課題』
福島県の内堀雅雄知事は6月9日、経済産業省を訪問し、「ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望」を赤沢亮正経済産業大臣に手交した。政府が2026年度からの5年間を「第3期復興・創生期間」と位置付ける中、福島第一原子力発電所の廃炉の着実な推進、帰還困難区域の復興と再生、県内の産業振興等について国の支援と取組みの強化を求めた。なお、今回の要望は、福島県が国に対して行っている復興・創生に関する総合的な要望活動の一環として実施されたもの。経済産業省だけでなく、復興庁ら他の関係省庁にも、さまざまな施策の推進や財源確保などを求めている。内堀知事は同要望書の中で、東京電力福島第一原子力発電所事故から15年が経過した現在も、約2万人の県民が避難生活を続けており、多くの課題を抱えていると指摘。また、人口減少や物価高騰への対応に加え、中東情勢の緊迫化に伴う燃料価格の上昇など全国的な課題にも直面しているとし、福島の復興・再生に向けた取組みを切れ目なく進める必要性を強調した。その上で、福島県の浜通り地域の産業基盤の再構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の更なる推進に向けた支援継続を要望。さらに、今後5年間の「第3期復興・創生期間」は、避難者の帰還・移住促進や生活環境の整備、産業基盤の再生を一層進める重要な期間だと指摘したほか、これら期間が過ぎた後も、福島復興再生計画に基づく十分な財源の確保と制度的支援、地域の実情に応じたきめ細かな対応を求めた。 これに対し赤沢大臣は、「福島の復興はいまだ途上にある」とし、福島の復興と福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉を経済産業省の最重要課題として取り組んでいく考えを強調。今年3月には双葉町の帰還困難区域を視察した赤沢大臣は、「震災から15年近くが経過した今なお荒廃した農地が残る現状を確認した」と述べた上で、将来的には帰還困難区域全域の避難指示解除を目指し、復興・再生に取組む決意を示した。また、福島第一原子力発電所については、廃炉現場へのAIの導入など先端技術の活用を進め、「福島を我が国のAX(AIトランスフォーメーション)の始まりの地にしたい」との考えを明かした。
- 17 Jun 2026
- NEWS
-
新潟県 花角知事 柏崎刈羽6号機の安全対策の徹底など要望
新潟県の花角英世知事は6月9日、経済産業省を訪問し、柏崎刈羽原子力発電所の安全対策の徹底と実効性ある原子力防災対策の構築などを求める要望書を、赤沢亮正経済産業大臣へ手交した。同要望は、新潟県が国に提出している2026年度の「政府に対する新潟県の要望」の一環。花角知事は冒頭、昨年12月に、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働同意の前提として国へ要請した7項目について改めて対応を求めた。要望書では、約14年ぶりに営業運転を再開した柏崎刈羽6号機の安全対策や原子力防災への県民理解は依然十分ではないと指摘。東京電力の信頼性確保や安全対策の徹底、防災対策の実効性の向上に向け、国の責任下で着実に対応するよう求めた。具体的には、原子力発電の必要性や安全性に関する分かりやすい情報発信の継続、安全性向上に向けた不断の取組み、避難計画の実効性向上などを要請。また、避難路の整備促進や除排雪体制の強化、屋内退避施設の整備促進など、原子力災害と自然災害の複合災害を見据えた防災インフラ整備の加速も求めた。そして、使用済み燃料対策や風評被害対策、原子力発電所への武力攻撃対策など県民の関心が高い課題についても、国が責任を持って取り組むよう要望。東京電力に設置された「監視強化チーム」についても、実効性ある運用と活動状況の周知を求めた。また、今年4月に「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」において、立地地域の指定範囲がUPZの市町村(柏崎市、刈羽村、長岡市、小千谷市、十日町市、見附市、燕市、上越市、出雲崎町)に拡大された一方で、財政上の特例措置が適用される特定事業の対象は未だ限定的であると指摘し、対象事業の拡充や財源確保を要請した。さらに、近年の豪雨災害の激甚化や複合災害リスクの高まりを踏まえ、防災・減災対策に加え、地域振興や産業基盤整備に対する支援の強化を求めた。これに対し赤沢大臣は、新潟県から示された7項目の要望を重く受け止め、関係省庁と連携しながら対応を進めていると説明。柏崎刈羽原子力発電所に関しては、政府の監視強化チームを通じて東京電力の取組状況を確認するとともに、地域への丁寧な説明を続ける考えを表明。あわせて、立地地域振興や避難路整備についても、関係省庁と連携しながら着実に進める方針を示した。さらに、自身が4月に柏崎刈羽原子力発電所を視察したことに触れ、「緊張感を持った訓練や高いレベルのセキュリティ対策を確認できた。原子力発電は安全確保と地域理解が大前提だ」と述べ、東京電力に対して継続的な信頼向上の取組みを求めた。
- 12 Jun 2026
- NEWS
-
原産協会 理系向け業界研究セミナーで認知拡大を図る Career Design Forumにてブース出展
理系学生を対象とした業界研究セミナー「理系Career Design Forum」が4月19日、新宿NSビルにて開催された(主催:学情)。当日は、理系学生を積極採用する企業約60社が出展し、来場者数は600名を超えるなど、会場は賑わいを見せた。会場内には「エネルギー・インフラ業界エリア」が設けられ、日本原子力産業協会が同エリア全体を企画・運営。同協会の会員企業へ参加を呼びかけ、14社が出展した。日本原子力産業協会では例年、秋ごろに就職活動イベント「原子力産業セミナー」を開催している。一方で近年、会員企業から「より早い時期に学生と接点を持ちたい」との声が多く寄せられ、特に、夏のインターンシップが本格化する前に業界認知を進めたいというニーズが高まっていたことから、今回のブース出展につながったという。エネルギー・インフラ業界エリアに出展した日本原燃の金原裕己氏(人事部人財開発グループ課長)は、同イベントについて「原子燃料サイクルを初めて知ったという学生も多く、原子力産業界の魅力を知ってもらう良い機会になった」と振り返った。金原氏は、原子力産業界へ関心の薄い学生に対して、「国内で当社だけが担っている仕事があること」を伝えていると話し、同社が日本のエネルギー安定供給やバックエンド事業といった社会的課題に向き合っている点を強調。「使命感を持って取り組んでいる仕事だということを知ってほしい」と力強く語った。また、「当社はさまざまな専攻が活躍できる」としたうえ上で、「勤務地が青森県であるため、仕事面だけでなく、地域の魅力も含めて伝えていきたい」と話した。そして、採用活動では、「『事業への共感』を最も重視している」とし、「社会的意義をやりがいとして感じてくれる学生に来てほしい」と語り、今後、さらに学生との接点を増やしていきたいとの考えを示した。また、会場内の別ブースでは企業講演や就活支援講座が開かれ、中でも、アイリスオーヤマ、東日本旅客鉄道、日立製作所の3社による【3社が語る仕事のホンネセミナー】が注目を集めた。異業種の人事担当が、仕事内容や働き方、就職活動時の考え方などについて率直に語り合う形式で進行し、日立製作所の担当者は、原子力産業の魅力や社会的意義について語った。同企画に登壇した日立製作所の宮武明穂氏(人財統括本部 人事勤労本部 タレントアクイジション部)は、今回の【3社が語る仕事のホンネセミナー】について、「原子力業界を知らない学生層に、興味を持ってもらう入口として非常に意義がある」と語った。特に「普段出会えない学生層と接点を持つことができ、学生が共通して抱えている不安や疑問を再確認できた」と振り返った。そして宮武氏は、原子力産業界の人材確保に向けて、早い段階から接点を持つ必要があるとし、「大学1、2年生の段階から知ってもらうための活動をしていくことが重要だ」と強調。同社では現在、中高生向けの取組みも行っているという。また、「どの専攻でも活躍できるフィールドがあること、原子力事業における最新の取組みをお伝えすること、を重視して情報発信を行っている」と語った。具体的には、脱炭素化社会の実現やエネルギー安全保障の観点から世界的に原子力活用の機運が高まっている現状をデータとともに示し、社会に必要とされる仕事であり、大規模な社会貢献につながる産業であることを伝えているという。さらに、原子力分野では原子力専攻学生の減少や労働人口の縮小も課題になっているとし、「業界全体として継続的な情報発信と裾野拡大が必要」と強調。日本原子力産業協会等の業界団体とも連携しながら、原子力産業の理解促進と人材確保に取り組んでいく考えを示した。また日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、【3社が語る仕事のホンネセミナー】について、「限られた時間の中でも、各社が自分たちの特長を出そうとしていた点が印象的だった」と振り返った。各登壇者が、用意された回答を読み上げるのではなく、自らの言葉で学生に語りかけていた点に触れ、「企業ごとの個性や、担当者自身の人柄、物事の捉え方まで伝わる内容になっていた」と評価した。特に、匿名で質問できるオープンチャット形式が採られたことにも言及し、「学生が手を挙げづらい中で、本音を引き出しやすい仕組みだった」と評価した。また、今回のようなエネルギー・インフラ業界全体を対象にしたブースについて、「当協会が主催している原子力産業セミナーとは異なる役割を持っている」と分析。「こうした場を入り口に、原子力分野へ関心を持った学生が、さらに同セミナーなどの専門性の高い場へ流れてくる可能性もある」との認識を示した。そのうえで、原子力業界の人材確保に向けて、幅広い層との接点を増やしていくことが重要だとの考えを示し、「こうした業界横断型イベントとの連携や補完関係は、今後さらに重要になっていく」との見方を示した。
- 22 May 2026
- NEWS
-
IAEA ALPS処理水放出の安全性を改めて確認 6回目の安全性レビュー
国際原子力機関(IAEA)は16日、ALPS処理水の海洋放出について、国際安全基準に沿って実施されていることを確認したと発表した。安全性レビューは5月11日から15日にかけて実施され、今回で6回目。過去5回の報告と同様、今回も問題は指摘されなかった。レビュー期間中、日本政府や福島県、東京電力は、発電所構内および周辺海域で実施しているモニタリングの概要や実績について説明した。IAEAタスクフォースは、これらが国際安全基準と整合しているかを中心に議論を行った。また、5月13日には、IAEAタスクフォースが福島第一原子力発電所を訪問し、発電所構内の「ブルーデッキ」から廃炉作業の進捗状況を確認したほか、ALPS処理水移送建屋や放水立坑など、ALPS処理水の海洋放出に関連するモニタリング設備を視察。さらに、タンク解体が進むエリアの現場確認も行ったという。安全性レビューは、2021年に日本政府とIAEAの間で署名された「ALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する付託事項(TOR)」に基づき実施されている。IAEAは、自ら定める「IAEA安全基準」に則り、人と環境の保護の観点から、ALPS処理水の放出計画やモニタリング体制などについて確認・評価を実施している。こうしたレビューを通じ、IAEAタスクフォースは、海洋放出の安全性や透明性に関する国際社会の理解醸成に向けた役割を担っている。日本政府は、ALPS処理水の海洋放出について国際社会の理解を得る上で、IAEAによる独立したレビューが重要との認識を改めて示した。その上で、今後も中立性を重視するIAEAと緊密に連携しながら、ALPS処理水の海洋放出に関する理解醸成に取り組んでいく考えを強調した。
- 20 May 2026
- NEWS
-
敦賀2号機 原電が追加調査の進捗説明
原子力委員会は5月13日、日本原電執行役員の神谷昌伸氏より、「敦賀発電所2号機の再稼働審査に係るこれまでの経緯と追加調査について」の報告を受けた。同2号機は、1987年2月に営業運転を開始し、2011年5月まで約24年間稼働していたが、福島第一原子力発電所の事故を受けて運転を停止している。同機は2024年11月、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査において、敷地内のD-1トレンチ内に認められるK断層の後期更新世以降の活動性を否定できない(約12~13万年前)こと、また、K断層が原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性を否定できないことが指摘され、「新規制基準に適合しない」との判断がなされた。しかし日本原電は、安全性を確認した上で同機の再稼働を目指す意向を示している。神谷氏によると、同社では社外専門家の意見も参考にしながら、昨年10月より「K断層の分布と性状」、「K断層の活動性と連続性」、「その他破砕帯等の地質データ取得」に関する調査を実施している。そのために、発電所敷地内でのボーリング調査、立坑・横坑の掘削によって岩盤を直接観察する調査等を進めており、すでに立坑工事は工期終盤に入り、来月には横坑掘削が始まる予定だという。同社では、調査を通じてK断層等の性状をより詳細に調査し、再稼働に向けた再申請のためのデータを収集する方針だ。同委員会の後半、審査における当該断層の評価や追加調査の在り方について意見が交わされた。原子力委員らから、K断層の活動性や連続性をめぐる評価について、「どの範囲まで調査し、どのようなデータを示せば、当該断層の活動性や連続性を否定できるのか」「どういったデータを示せば再稼働に向けて必要なデータを揃えることが達成できたと言えるのか」との指摘があった。これに対し神谷氏は、追加調査やデータを着実に積み重ねながら、総合的に評価していく考えを示した。また、調査地点についても、「限られた調査地点から総合的に評価する必要があり、どこの地点を選定するのかが重要になる」と述べた。また、2年程度を見込んでいる追加調査の進捗について神谷氏は、「おおむね順調に進んでいる」とコメントした。さらに、長期の運転停止が続く原子力発電所の再稼働をめぐる地元の反応について、神谷氏は日本原電と地元自治体が築いてきた関係性に言及し、「当該地域にはさまざまな意見がある」と述べた。これに対し原子力委員からは、「規制側・事業者側の双方が、透明性をもって再稼働に向けたプロセスを進めていくことが重要」との意見があり、地域住民の理解醸成と信頼確保を進めていくことの重要性が共有された。また他の委員は、福島第一原子力発電所事故以降、原子力を巡るリスク評価が多角的に進められているとの認識を示したうえで、原子力発電所の再稼働を実現するためには、社会的なコンセンサス形成に向けた不断の努力が重要であり、引き続き丁寧な対話の継続を日本原電に求めた。
- 18 May 2026
- NEWS
-
柏崎刈羽6号機が営業運転開始 14年ぶり
東京電力は4月16日、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)の再稼働に向け、午前7時から、営業運転直前の工程にあたる総合負荷性能検査を実施。午後4時過ぎに使用前確認証等を交付され、営業運転を開始した。同機が営業運転に入るのは14年ぶり。総合負荷性能検査は、原子炉が定格熱出力に到達し、運転状態が安定した段階で、使用前事業者検査の最終段階として実施される。原子炉圧力や蒸気の流量、熱出力などのデータを記録し、プラント全体が正常に機能しているかを総合的に確認する。あわせて、原子力規制委員会が使用前確認を行い、事業者による検査が適切に実施されているかを確認。これらの結果、問題がないと判断され、規制委から使用前確認証が交付され、営業運転へと移行。赤沢亮正経済産業大臣は4月14日の会見で、同6号機の再稼働について、「東日本における電力供給の脆弱性の解消、電気料金の抑制、さらには脱炭素電源の確保の観点から極めて重要だ」と述べ、「大きな節目であり重要な一歩」との認識を改めて示していた。また、中東情勢の緊迫化を受け、「原子力はエネルギー安全保障に寄与する脱炭素効果の高い電源」と位置付け、再稼働の意義を改めて強調した。大臣は、6号機の再稼働によって、ホルムズ海峡経由で輸入しているLNGの年間約3割を節約する効果があると指摘。今後の電力需要の増加を見据え、「原子力と再生可能エネルギーの双方を活用していく」とする第7次エネルギー基本計画の方針に変化はないと述べた。
- 16 Apr 2026
- NEWS
-
放射線を「特別なもの」にしないために|“知”のボーダーレスへ
- 14 Apr 2026
- FEATURE
-
福井県立地自治体 経産省へ要望
福井県原子力発電所所在市町協議会は4月10日、経済産業省の井野俊郎副大臣に、原子力政策等に関する要請書を手渡した。同協議会の西嶋久勝会長(高浜町長)は、井野副大臣に対し、「立地地域として今後も国のエネルギー政策に協力し、国民経済を支える役割を果たしていきたい」との考えを示した上で、燃料サイクルの停滞や高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する具体的な道筋が十分に示されていない現状に言及し、「将来に対する不安を感じている」と懸念を表明した。さらに、原子力発電所の立地地域にとって、将来にわたる確かな安心の確保が原子力との共生に繋がると強調。エネルギー政策を持続可能な形で進めていく観点から、要請書を提出するとともに、国の見解を求めた。同要請書ではまず、政府が掲げる「原子力の最大限活用」について、国民理解の醸成と安全確保の徹底を求めた。また、原子力人材の確保及び育成について、発電所の運転員のみならず、原子力研究に関わる人材の確保と育成を喫緊の課題と位置づけ、運転員に加え研究分野を含めた人材基盤の強化を要請した。さらに、燃料サイクル政策の着実な推進とともに、関西電力の使用済み燃料対策ロードマップの確実な履行を求め、国と事業者が一体となった対応の必要性を強調した。原子力防災については、避難時に不可欠な道路・橋梁の整備と強靱化を要請。能登半島地震で道路寸断や孤立集落が発生したことを踏まえ、補助制度の拡充や別枠予算の確保など、実効性ある財政措置を求めた。財政面では、電源三法交付金の見直しをはじめ、各種交付金・補助制度の充実を要請。廃炉に伴う交付金の緩和措置の延長や、固定資産税の見直しにも言及した。そして、廃炉の進展に伴う地域経済への影響を踏まえ、中長期的な支援の必要性も強調。企業誘致や産業振興に加え、医療・福祉を含めた総合的な地域支援の充実を求めた。これに対し井野副大臣は、エネルギー安全保障の重要性が高まる中で、原子力を「準国産エネルギーとして安定供給に資する重要な電源」と位置付けた。一方で、燃料サイクルや最終処分の進展の遅れについては「立地地域に心配をかけている」と認め、課題の前進と対話の強化に取り組む方針を示した。
- 13 Apr 2026
- NEWS
-
増井理事長 定例会見で原子力政策の課題を示す
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は4月3日の定例記者会見で、自身が参加した原子力小委員会(経済産業省)や原子力科学技術委員会(文部科学省)での発言内容や、協会の取組みについて説明した。増井理事長は冒頭、3月31日の第48回原子力小委員会において専門委員の立場から、①原子力人材育成の司令塔機能、②革新炉建て替えに関する手続きの明確化、③高レベル放射性廃棄物の処分の3点について意見を述べたことに言及した。人材育成の司令塔機能の創出について増井理事長は、原子力人材育成ネットワークに司令塔機能を担わせる方向で検討が進んでいることを紹介し、自身もこれに賛同していると強調。人材育成分野が政策の柱として位置付けられたことについて「極めて適切な見直し」と評価した。次に、次世代革新炉の建て替えに関する手続きについて、増井理事長は原子炉設置変更許可申請以前のプロセスに不明確な点が残っていると指摘。公開ヒアリングの要否や運用の整理に加え、福島第一原子力発電所事故以前に手続きが進んでいた案件の取り扱いについて合理的な制度の整備を求めた。また、高レベル放射性廃棄物処分については、国が東京都小笠原村に文献調査を申し入れたことについて、「国が主体的に関与した画期的な動き」と高く評価した。続いて増井理事長は、3月30日に開催された文部科学省の原子力科学技術委員会での自身の発言を取り上げ、原子力損害賠償制度の見直しについて改めて言及。現行の無過失無限責任の制度では、投資判断の障害となるとした上で、過去の議論にとらわれず、十分な時間をかけて事前検討を進める必要性を強調した。また、東京都内で3月に開催されたインド太平洋エネルギー安全保障閣僚・ビジネスフォーラムを契機に、日本原子力産業協会が米国の原子力エネルギー協会(NEI)と協力覚書(MOU)締結したことを報告。NEIとともに、インド太平洋地域における原子力開発支援を筆頭に、今後の連携強化を図ると述べた。昨今の中東情勢の緊迫化を受けて、原子力発電が持つ意義について問われた増井理事長は、「電力会社のウラン調達先は多様であること」「国内に一定量の燃料備蓄が存在すること」を挙げ、「原子力はエネルギー安全保障の観点から一定の耐性を有する電源」との認識を示した。さらに、イラン国内の原子力施設への攻撃リスクについては、「国際条約上許されない行為であり、強く懸念している」とした上で、国際法の遵守が揺らぎつつある現状への危機感を露わにした。このほか、日本原燃の再処理工場の竣工目途や、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた動き、フランスとの高速炉分野での協力について、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定の進捗など、多岐にわたる質疑があり、それぞれ見解を示した。
- 07 Apr 2026
- NEWS
-
エネ庁 スマートエネルギーWEEK で原子力活用を強調
RX Japanが主催する国際エネルギー総合展示会「第25回スマートエネルギー WEEK春」が、3月17日から19日まで東京ビッグサイトで開催された。洋上風力や水素エネルギー、CCUS(CO2回収・利用・貯留)など、脱炭素社会の実現に向けた最新技術が一堂に会し、3日間で6万人超が来場した(主催者発表)。また、会期中にはエネルギー政策やカーボンニュートラルをテーマとしたセミナーが多数開催され、最終日の3月19日には、資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課長・多田克行氏が登壇。日本のエネルギー情勢と原子力政策の現状・展望について講演した。会場には多くの来場者が集まり、原子力に対する関心の高さがうかがえた。多田氏は、日本のエネルギー安全保障を取り巻く現状を踏まえ、既存の原子力発電所の最大限活用、次世代革新炉へのリプレース、事業環境整備、バックエンドプロセスの加速化の4点を軸に、日本の原子力政策の方向性について語った。多田氏はまず、日本のエネルギー自給率が低水準にとどまり、化石燃料への依存度が諸外国と比べて高いことについて言及。日本では、化石燃料の輸入額が年々増加しており、2024年度は約24兆円に達していることから、「高付加価値品で稼いだ外貨(2024年/28兆円)の大半が化石燃料の輸入費で消えている」と指摘し、警鐘を鳴らした。そして、エネルギー安定供給と脱炭素化を両立するうえで、原子力の活用が重要と強調した。また、生成AIの普及などを背景に、データセンターや半導体工場などにおける電力需要が急増していることから、安定的に供給できる脱炭素電源の確保が急務だと指摘。一方で産業界からは、脱炭素化の実現にはクリーン電力の安定供給と予見可能性が不可欠との指摘があることに言及。電力供給の不安定化は、生産拠点の海外移転を招き、国内産業基盤を揺るがしかねないとの見解を示した。多田氏は原子力政策の柱として、①既存発電所の最大限活用、②次世代革新炉へのリプレース――の2点が重要であると述べ、柏崎刈羽6号機(ABWR、135.6万kWe)や泊3号機(PWR、91.2万kWe)などの動向に言及しつつ、再稼働を進める重要性を強調。一方、次世代革新炉への建て替えも不可欠とし、革新軽水炉、小型モジュール炉(SMR)、高速炉などを挙げ、将来を見据えた開発・導入を進める考えを明らかにした。また、原子力を支える産業基盤(サプライチェーン)を維持し、人材を確保するために、経済産業省では、次世代革新炉の技術開発支援や安全性・信頼性向上に資する研究開発支援、プロセスのデジタル化支援などを進めていると説明。北米など海外プロジェクトへの参画支援を通じて、日本企業の技術力の維持・強化を図る方針だという。多田氏はバックエンド政策についても言及。六ヶ所再処理工場の2026年度中、MOX燃料工場の2027年度竣工を目標に、政府として事業者と一体となって支援する方針を示した。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分について、処分地選定は国家的課題だと強調。寿都町、神恵内村、玄海町で進む文献調査に触れつつ、全国的な理解醸成を通じて調査地域の拡大を図る方針を示した。そして、「原子力政策は発電所の建設・運転にとどまらず、原子燃料サイクルやHLWの最終処分等、バックエンドを含めた一体的な取り組みが不可欠」と述べ、講演を締めくくった。
- 03 Apr 2026
- NEWS
-
原子力小委 増井理事長が人材・革新炉・最終処分の課題を提起
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は3月31日、第48回原子力小委員会に専門委員として出席し、①原子力人材育成の司令塔機能、②革新炉建て替えに関する手続きの明確化、③高レベル放射性廃棄物の処分の3点について意見を述べた。人材育成については、原子力人材育成ネットワークに司令塔機能を担わせる方向で検討が進んでいることを紹介し、自身もこれに賛同していると強調。「原子力の最大限活用に向けて、人材確保・育成は最大の課題の一つ」との認識を示した。現在は産官学に加え規制当局も参画するコアチームを組成し、制度設計の具体化に向けた議論を進めていると説明した。また、人材育成分野が政策の柱として位置付けられたことについて「極めて適切な見直し」と評価した。次世代革新炉の建て替え手続きについては、原子力規制委員会と原子力エネルギー協議会(ATENA)との意見交換が進展している点を評価する一方、原子炉設置変更許可申請以前のプロセスに不明確な点が残っていると指摘。公開ヒアリングの要否や運用の整理に加え、福島第一原子力発電所事故以前に手続きが進んでいた案件の扱いについても明確化が必要との認識を示した。また、プロセス全体の透明性向上と、過去の検討成果を合理的に活用できる制度整備を求めた。高レベル放射性廃棄物の最終処分については、国が3月に小笠原村に対し文献調査の実施を申し入れたことを「画期的」と評価。自治体の自発的応募に依存してきた従来の枠組みから一歩踏み出し、国が主体的に関与する姿勢を示した点に意義があるとした。そして今後、最終処分問題が「国民全体の課題」として全国的な議論が広がることに期待を示すとともに、原子力産業協会としても情報提供や出前講座を通じた理解促進に取り組む考えを示した。
- 02 Apr 2026
- NEWS
-
NUMO HLWの地層処分に関する村民説明会を父島 母島で開催
高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分を巡り、経済産業省が東京都小笠原村の南鳥島を対象とする文献調査の実施を申し入れたことを受け、原子力発電環境整備機構(NUMO)では3月14日に同村の父島、21日に母島にて説明会を開催した。父島では237人、母島では71人が同説明会に参加。両会場とも多くの住民が出席し、関心の高さがうかがえる結果となった。両日ともに、小笠原村の渋谷正昭村長、経済産業省資源エネルギー庁とNUMOの関係者らによる調査概要の説明の後、質疑応答を通じて村民から多くの意見や質問が寄せられた。村民からは、風評被害への懸念や処分地選定方法の疑問等が寄せられ、最終処分場の受け入れに慎重な姿勢を示す意見が複数挙がった一方で、同事業の受け入れに理解を示す声もあったという。南鳥島は、国が公表している科学的特性マップにおいて、地層処分にとって「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」とされている。南鳥島で文献調査が実施された場合、北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町に続き全国で4例目となる。なお、NUMOはWebサイトを更新し、同村民説明会の開催結果および村民から寄せられたアンケートへの回答を一般公開している。父島・母島とも、処分地選定のあり方に対する疑問が寄せられた。「科学的特性マップの数ある候補地の中から、なぜ南鳥島が国の申し入れ第1号となったのか」など、同地域への負担の偏りを懸念する意見や、南鳥島周辺で検討が進むレアアース開発との関係性や、同島の安全保障上の位置づけとの関連など、地域の将来像全体に関わる問いが寄せられた。これに対し資源エネルギー庁とNUMOは、「南鳥島が地質的条件や土地利用の観点からHLWの最終処分地としての適性の可能性があることを踏まえ、渋谷村長と意見交換を重ねた。これに対し、村長から住民向け説明会の開催要請があり今回の申し入れに至った」と説明。処分地の数や規模については、「国として、ガラス固化体換算4万本以上のHLWを埋設できる施設を、まず全国で1か所整備する想定だ」と説明。現状のHLW量に対して最終処分地は1か所で対応可能としつつも、原子力発電の長期的な利用に伴う将来的なHLWの増加、今後の調査による地質条件の見通しを踏まえ、処分地の数や規模は、総合的に検討していく必要があると回答した。そして、南鳥島周辺で進むレアアース等の開発・国防上の安全保障面との両立については、「文献調査段階では現地調査を伴わないため、直ちに影響が生じるものではない」と説明。今後、調査が進む場合には、資源開発、防衛・港湾整備などの諸活動との両立可能性を段階的に評価していく考えを示した。その他、文献調査段階で交付金が支払われる仕組みに対し、「一度受け入れると後戻りしにくくなるのではないか」といった懸念や、「金額の問題ではなく、将来世代への影響をどう考えるかが重要」との指摘があった。これに対し資源エネルギー庁とNUMOは「文献調査段階の交付金は、過去の関連施設立地の実績を踏まえて設定されている」とし、「交付金を受け入れたからといって最終処分地に決定するものではない」と理解を求めた。また、交付金は国の課題に向き合う地域への謝意と社会全体への利益還元という位置づけであるとした。同説明会では、こうした多様な意見が示され、単なる賛否にとどまらず、村民の間で慎重かつ多角的に同事業について考えようとする姿勢が示された。主催者側(小笠原村・資源エネルギー庁・NUMO)は、こうした意見を真摯に受け止め、引き続き丁寧な説明と対話を重ねていくとしている。
- 30 Mar 2026
- NEWS
