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カナダ OPG社プロジェクトで米BWXTと契約
米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社の1月27日の発表によると、同社は加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)のピッカリングB原子力発電所の30年間の運転期間延長に向けた改修プロジェクト、ならびにOPG社のダーリントン・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設プロジェクトに係る、総額10億カナダドル(約1,058億円)のコンポーネント製造契約を締結した。BWXT社は、ピッカリングB発電所(5~8号機、CANDU炉、各54万kWe)の30年間の運転期間延長に向けた改修プロジェクト向けに、オンタリオ州ケンブリッジの原子力機器製造工場で48台の蒸気発生器を製造する。製造期間7年で、エンジニアなど250人以上の高レベルの雇用を創出するという。カナダのエンジニアリング会社であるアトキンス・リアリス社、建設大手のエーコン社の合弁企業であるCanAtom社からの受注。ピッカリングB改修プロジェクトには、各原子炉とその関連機器(圧力管、カランドリア管、フィーダーパイプ、および蒸気発生器を含む)の主要コンポーネントの取外しと交換が含まれる。OPG社は本改修プロジェクトによる高レベルの雇用の維持と確保を含め、カナダのGDPにおいて406億ドル(約4.3兆円)の経済効果を見込む。5~8各機は1983年~1986年にかけて営業運転を開始し、計4基でオンタリオ州の電力需要の約10%をまかなっている。改修作業の完了は2030年代半ばと予定されている。なおピッカリングA(1~4号機、CANDU、各54.2万kWe)の2、3号機はすでに閉鎖、2024年10月に1号機、12月に4号機が閉鎖し、全機閉鎖されている。当初、ピッカリングBの2024年12月31日以降の商業運転は許可されていなかったが、オンタリオ州政府は2025年以降の運転を支持し、OPG社は2023年6月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に2026年末までの運転期間延長を申請。CNSCは公聴会を経て、2024年10月に同機の2026年12月31日までの運転認可を発給した。OPG社は2026年末の運転を停止後、改修作業を開始する。オンタリオ州政府は2024年1月、OPG社によるプロジェクトの開始段階において、エンジニアリングや設計作業のほか、長期調達部品の確保のため、20億カナダドル(約2,116億円)の財政支援をすると表明。OPG社は、ダーリントン原子力発電所1~4号機やブルース・パワー社が進めるCANDU炉の改修プロジェクトから得られる知見をピッカリングにも反映するとしている。またBWXT社は、GE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社とBWRX-300(BWR、30万kWe)初号機向けの原子炉圧力容器(RPV)の製造契約を締結した。RPVは炉心、冷却材、支持構造を含む、BWRX-300で最大のコンポーネント。BWXT社は、GEH社製BWRX-300のサプライヤーグループに初めて参加した企業であり、GEH社と2023年3月に、RPV関連のエンジニアリング解析、設計支援、製造および資機材調達の準備契約を締結している。ダーリントン・サイトでは事前のサイト準備作業は完了しており、OPG社はCNSCからの建設許可取得後、初号機の建設を2025年後半に開始、営業運転を2029年末までに開始したい考えだ。同サイトには合計4基のSMR建設を計画している。BWXT社は2024年4月、オンタリオ州ケンブリッジの原子力機器製造工場に8,000万カナダドル(約85億円)を投資すると発表している。オンタリオ州を含む、世界的な原子力発電需要の拡大を見込み、同工場の大型原子力機器の設計・製造施設を拡張、製造能力を増強する作業が進行中である。
- 07 Feb 2025
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米TVA SMRプロジェクトのパートナーを選定
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は1月23日、テネシー州オークリッジ近郊にある同社のクリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトの初期計画と評価にあたり、米国のベクテル社とサージェント&ランディ社、およびGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社をパートナーに選定し、スケジュールとコスト見積りを共同で作成することを明らかにした。作業期間は1~2年以内と見込んでいる。建設にあたっては、作業プロセスの統合を促進させる、統合プロジェクトデリバリー(IPD)モデルを採用する。TVAの技術協力パートナーである加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社も、IPDモデルを発電プロジェクトに採用し成功を収めており、オンタリオ州のダーリントン・サイトにおけるSMR「BWRX-300」建設プロジェクトでも同モデルを活用しているという。TVAクリンチリバー・プロジェクトのB. ディーシー上級副社長は、「目標とする予算とスケジュール遵守のために企業間で協力し、リスクを共有、コストを削減していく」と語った。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300(BWR、30万kWe)がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可を支援する契約を締結。さらに、2023年3月、BWRX-300の建設を計画している加OPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結した。なおTVAは1月17日、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,242億円)の助成金を申請したことを発表している。ただしTVA理事会は、クリンチリバー・サイトでのSMR建設を承認する決議をまだ行っていない。理事会の承認とDOEの助成金交付により、BWRX-300建設の初期活動の加速化が期待されている。またGEH社による同日17日の発表によると、デューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可を進める活動に投資する契約を締結した他、AEP社がインディアナ州スペンサー郡にあるインディアナ・ミシガン・パワー社のロックポート石炭火力発電所サイト内にBWRX-300を設置する可能性について表明したという。DOEの助成金プログラムは2024年、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設された。TVAのJ. ライアッシュCEOは、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始される」「この資金調達により、国内のサプライチェーンの確立を支援し、コストとリスクを軽減するための教訓とベストプラクティスを共有することで、より広範なSMR展開への道が開かれる」と指摘した。
- 04 Feb 2025
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米国 閉鎖したデュアン・アーノルドの運転再開を申請
米大手電力会社でフロリダ州に本拠地のあるネクストエラ・エナジー社は1月24日、2024年第4四半期の決算説明会の中で、経済性を理由に永久閉鎖したデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR、62.4万kWe)の運転再開に向けて、米原子力規制委員会(NRC)に許認可の変更を要請したことを明らかにした。同発電所は保存状態も良好で、運転許可が復活すれば、早ければ2028年末に運転を再開できるとしている。なお同説明会の中で、J. ケッチャムCEOは、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性についても言及。社内でSMRに特化したチームを立ち上げたが、SMRはいまだ技術開発や許認可の面で不確実性が高く、大規模な実現は2030年代後半になるだろうとの見通しを示した。米国のアイオワ州にあるデュアン・アーノルド発電所は1975年2月に運転開始、45年以上の運転の後、2020年8月に永久閉鎖した。2034年2月まで、運転が認可されていたが、2018年7月、発電所所有者のネクストエラ・エナジー・リソーシズ社は顧客の電力会社であるアライアント・エナジー社と既存の電力購入契約の5年間短縮に合意し、2020年10月の閉鎖を決定した。さらに、同年8月の暴風雨で冷却塔などが損傷。原子炉自体に損傷はなかったものの、予定より2か月早く閉鎖した。デュアン・アーノルド発電所の永久閉鎖後、2022年4月までにすべての使用済み燃料がサイト内の乾式貯蔵施設に移された。廃止措置方式は遅延解体(SAFSTOR)を採用しており、設備を安全に保管し、残留放射能の崩壊後、2075年に最終的な解体および除染活動を開始し、2080年までに作業を完了させる予定だった。ネクストエラ・エナジー社は、傘下にフロリダ・パワー・アンド・ライト社ならびにネクストエラ・エナジー・リソーシズ社を所有。これら傘下企業を通じ、フロリダ州でターキーポイント3、4号機(PWR、各82.9万kWe)とセントルーシー1、2号機(PWR、各105万kWe級)、ニューハンプシャー州でポイントビーチ1、2号機(PWR、各64万kWe)、ウィスコンシン州でシーブルック発電所(PWR、129.6万kWe)を運転している。米国では電力需要の増大と無炭素電源への関心の高まりから、閉鎖した原子炉を運転再開させる動きが広がっている。経済性を理由に2022年5月に閉鎖されたパリセード発電所(PWR、85.7万kW)は、現在の所有者であるホルテック・インターナショナル社が政府の融資保証の支援を受け、NRCへの運転認可の再交付申請を含め、運転再開の準備を進めている。コンステレーション・エナジー社はマイクロソフト社のデータセンターへの20年間の売電契約締結により、2024年9月、同じく経済性を理由に2019年9月に閉鎖したスリーマイル・アイランド1号機(PWR、89万kW)の運転再開を決定、NRCへの手続きを開始している。
- 03 Feb 2025
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韓国製SMR 欧州市場に参入へ
韓国水力・原子力(KHNP)は1月23日、ノルウェーとスウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の導入を目指す各企業と協力体制を構築し、自社開発のSMR「i-SMR」で欧州市場へ参入する方針を明らかにした。KHNPは1月20日に、ノルウェー・オスロで新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社と、1月21日には、スウェーデン・ストックホルムでプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(KNXT)社とそれぞれ業務提携の了解覚書(MOU)を締結し、SMR分野で緊密に協力することで合意。ノルウェーやスウェーデンの自治体では、SMRの導入による地域経済の活性化やエネルギー自立に向けた取組みを検討しており、KHNPは両社と連携し、i-SMRの導入に向けた情報共有、建設候補地の予備的実行可能性調査(F/S)、スマートネットゼロシティ((i-SMRと太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせて、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実現する都市構想。))の開発に取り組んでいくとしている。ノルウェー国内では原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急激に増加。ノルスク社はSMRの建設、所有、運転を目指し、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。ノルウェー政府は2024年6月に、原子力発電導入を検討する委員会を設立した。ノルウェーには発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はなく、同委員会は原子力発電所建設の将来的な可能性について多様な側面から幅広く検討・評価し、2026年4月までに政府に報告書を提出することになっている。一方、スウェーデン政府の原子力発電所新設計画に沿って、KNXT社はスウェーデン南東部の予備的なサイト調査を完了し、SMR開発に注力している。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向け、大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。KHNPは、独自開発したSMRと、国内外におけるこれまでの建設・運転経験に基づき、欧州のSMR市場での地位を確立・強化する考え。KHNPのJ. ファンCEOは「今回の合意はKHNPが欧州のSMR市場に参入する重要な機会になる」とし、「KHNPの技術ノウハウに基づき、世界のカーボンニュートラルの実現に貢献し、持続可能なエネルギーの未来をリードする」と語った。i-SMRは、電気出力17万kWの一体型PWRで、概念設計と基本設計は2023年末に完成。大型炉に比較して大幅に工期を短縮する、モジュール工法を採用している。KHNPは2020年、i-SMR開発プロジェクトに着手。同プロジェクトは2023年に国家研究開発プロジェクトに位置付けられ、韓国政府のバックアップの下でプロジェクト全体を管理するi-SMR開発機構が発足。KHNPや韓国原子力研究院(KAERI)のほか、韓国電力技術(KEPCO E&C)、韓電原子力燃料(KNF)や斗山エナビリティなど、韓国の主要原子力関連企業が参加している。
- 03 Feb 2025
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スロバキア 小型高速炉の導入を計画
英国で2021年に設立された先進炉開発企業のニュークレオ社は1月15日、スロバキアの主要な原子力企業であるJAVYS社とVUJE社各社と締結した枠組み協定の内容を明らかにした。同協定によると、閉鎖されたスロバキアのボフニチェ原子力発電所(V-1)1~2号機のサイトにおいて、ニュークレオ社が開発する第4世代の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」(20万kWe)を最大4基建設する計画。コストは32億ユーロ(約5,178億円)と試算されている。スロバキア国営のバックエンド企業であるJAVYS社との協定では、使用済み燃料管理を実施する合弁会社「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」設立に向けた条件を設定。JAVYS社が51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有する。ボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)はそれぞれ2006年、2008年に閉鎖され、現在JAVYS社が所有、廃止措置を実施中である。ニュークレオ社は、JAVYS社が所有・操業する施設で貯蔵されている使用済み燃料を、フランス政府の協力を得て、再処理する。その後ニュークレオ社がフランスで計画しているMOX燃料製造施設で燃料加工の上、CVPが開発・建設するLFR(鉛冷却高速炉)で再利用する方針である。深地層処分を必要とする放射性廃棄物の量を減らし、スロバキアにおけるクローズド・燃料サイクルの確立に貢献したい考えだ。スロバキアの大手原子力エンジニアリング企業であるVUJE社との協力では、VUJE社の数十年にわたる原子力発電所での経験、特に原子炉の建設と試運転、および高速炉技術開発分野での豊富な経験を活用。CVPが実施する初期の実現可能性調査とその後の活動への参画など、LFR開発に共同で取組むこととしている。ニュークレオ社のS. ブオノCEOは「原子力分野での50年にわたる経験と既存の原子力インフラを持つスロバキアは、先進的モジュール炉(AMR)の新技術の開発、試験、実用化において、非常に重要で戦略的なパートナーである」「本プロジェクトは、他の欧州諸国でも実施可能であることを例示するもの。使用済み燃料の再利用は、欧州の今後数百年のエネルギー自立を保証し、競争力のある安定した価格で、EU産業の競争力を高めるために必要なステップである」と述べ、スロバキアの産業にとっての機会であるだけでなく、欧州原子力エネルギー部門全体のパラダイムシフトであると強調した。欧州委員会が立ち上げた「欧州SMR産業アライアンス」は2024年10月、ニュークレオ社のLFRを、環境に優しく、安定し、コスト効率の良いエネルギー源の確保に役立つとして支援対象とする、9件のSMRプロジェクトの一つに選定している。ニュークレオ社は2023年以来、スロバキアの原子力産業および政府の主要企業と積極的に接触。同年12月には、スロバキア経済省およびJAVYS社と、協力機会の模索とAMR開発を目的とする覚書を結んでいる。2024年7月には、スロバキアのVUJE社と、スロバキアにおけるAMRと先進的な燃料サイクルの開発の協力強化で合意していた。
- 29 Jan 2025
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IEA 原子力投資の増加を予測 SMRに注目
国際エネルギー機関(IEA)は1月16日、報告書「原子力エネルギーの新時代への道(The Path to a New Era for Nuclear Energy)」を発表した。報告書は、世界的な電力需要の急増を背景に、政策支援や投資、小型モジュール炉(SMR)の技術開発などが原子力発電の成長を後押しする一方、コスト超過、プロジェクトの遅延リスク、資金調達などの課題に対処する必要があると指摘している。IEAは原子力について、24時間供給可能で大規模展開できる、クリーンで実証済みの電源・熱源であると評価、再生可能エネルギーを補完するとともに、エネルギー・セキュリティや排出量削減に寄与するエネルギー源であるとしている。<原子力発電の現況>2023年現在、原子力発電は世界の総発電電力量の約9%を占め、30か国以上で410基以上が運転中。水力発電に次ぐ第2位のシェアを誇る低排出電源である。IEAによると、現在、原子力3倍化に向けた取組みなど、40か国以上で原子力発電の利用拡大に向けた支援が行われており、原子力への関心は、1970年代の石油危機以来最高水準に達している。現在建設中の原子炉は63基、発電設備容量は7,000万kWを超え、1990年以降で最高水準の一つとなっている。また、ここ数年では、新規建設や既存発電所の運転期間延長の取組みも活発化しており、2025年には原子力発電量が過去最高を記録する見通しである。さらに、新規建設と既存発電所の運転期間延長の両方を合わせた、原子力への投資額は、2023年には約650億ドル(約10兆1,000億円)に上昇し、10年前のほぼ2倍の水準となった。一方で、IEAは、現在運転中の原子力発電所の70%以上が先進国に集中しているものの、平均運転年数が36年以上と比較的古く、原子力シェアも減少傾向にあると指摘。世界の原子力市場の勢力図が、中国をはじめとする新興国へと変化しつつあり、2017年以降に建設が開始された原子炉52基のうち、48基が中国(25基)またはロシア(23基)の設計であると分析した。また、現在建設中のプロジェクトの大半が中国で行われており、中国が2030年までに原子力発電設備容量で米国と欧州を上回るとの見通しを示している。IEAはまた、燃料供給に関するリスクにも言及しており、特にウラン濃縮については、世界の濃縮能力の40%をロシアが占めている現状を問題視。将来へのリスク要因であるとし、燃料分野におけるサプライチェーンの多様性を高める必要性を強調した。また、近年の米国やフランスなどでの大型炉建設における大幅な遅延やコスト超過などの課題も克服すべきとした。<原子力投資の見通し>IEAは、世界の原子力投資は今後増加すると予測しており、大型炉が主要な投資対象となる一方で、SMRが急成長する可能性に言及している。現行のエネルギー政策に基づく「公表政策シナリオ」(STEPS)では、SMRの発電設備容量が、2050年に4,000万kWに拡大すると予測。また、各国政府による誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ」(APS)では、政府の支援強化により、2050年までに1,000基以上のSMRが導入され、総発電設備容量は1億2,000万kWに達するとの見通しを示した。これに伴い、SMRへの投資額も大幅な伸びが予想され、現在の50億ドル(約7,800億円)から2030年には250億ドル(約3兆9,000億円)を超え、2050年までに累計投資額は6,700億ドル(約104兆円)に達する見通し。IEAは、データセンター(DC)の拡大等を背景に、安定的で低排出な電源としてのSMRへの関心が高まっていると分析している。現在、DC向け電力供給として合計最大2,500万kWのSMR建設計画が進行中であるという。また、近年では10%未満にとどまっていた先進国の設計を採用する大型原子力プロジェクトの割合が、欧州や米国、日本での新規着工により、APSでは2030年までに40%に増加、その後は半数を超えると予測した。さらに、SMRの広範な導入により、2050年までに新規建設の60%以上が、米国または欧州の設計が採用されるとの見方を示した。但し、IEAは、SMRの成功と導入のスピードは、2040年までにコストを大規模水力や洋上風力と同水準にまで引き下げられるかどうかにかかっているとも指摘している。<原子力プロジェクトへのファイナンス>IEAは、APSでは、2030年までに原子力への年間投資額が1,200億ドル(約18兆7,000億円)にのぼると見ており、この投資の規模を考えると、公的資金に依存するだけでは不十分であり、民間投資の促進が不可欠であるとの見方を示している。一方で、原子力プロジェクトは、その規模の大きさや資本集約性、長い建設期間、技術的複雑さから資金調達が難しく、コスト超過や工期遅延が頻発しており、投資家にとって大きなリスク要因となっている。こうしたなか、IEAは、政府の支援が商業銀行による資金提供を後押しするカギと強調。予測可能なキャッシュフローの保証や建設リスクの政府負担が、プロジェクトの資金調達を容易にするとした。また、長期の電力購入契約や差金決済取引(CfD)、規制資産ベース(RAB)モデルといったリスク軽減策が、安定した資金調達を支える仕組みとして重要性が増しているとした。さらに、IEAは、新規の大型原子炉建設プロジェクトは、建設段階での資金調達が難しいとされる一方、既存発電所の運転期間延長プロジェクトは、運転中の資産を対象とするため、銀行からの資金提供を受けやすいと指摘。また、SMRについては、その規模の小ささから建設期間が短く、投資回収期間が従来型プロジェクトの半分程度に短縮される可能性があることから、投資コスト全体の大幅削減につながる可能性があるとした。また、昨今のグリーンボンドなどの環境金融商品が、新たな資金源として注目を集めており、原子力への資金調達の幅を広げる可能性も併せて指摘している。また、IEAは、原子力事故のリスクに関して、影響を十分に補償する体制を確保するとともに、原子力事業が持続可能に運営できる仕組みの重要性を強調。日本の原子力損害賠償法に言及し、例外的な事象による原子力事故を除き、原子力事業者に損害賠償責任を無制限に課す現行制度について、「大きな財務的テールリスク((統計的な分布における「尾(テール)」に該当するリスクを指す。発生確率は非常に低いが、発生した場合には甚大な影響を及ぼす可能性があるリスクを指す。))を伴う」と指摘した。 ※図表の入った詳細版を、こちらで公開しています
- 22 Jan 2025
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フランス SMRの再設計作業を開始
フランス電力(EDF)の子会社であるNUWARD社は1月6日、同社製小型モジュール炉(SMR)である「NUWARD」の再設計作業を開始したことを明らかにした。EDFとNUWARD社は2024年6月、プロジェクトの遅延や予算超過を避けるためにNUWARD SMRの設計を見直し、既存の実証済みの技術を利用し、設計を最適化する計画を決定。その後まもなく、英国の原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペから撤退した。NUWARD社は、「ここ数か月に実施された研究は極めて重要であり、当社は電力会社と産業界の期待に完全に応えるべくSMR戦略を見直してきた。NUWARD SMRは、電気出力40万kW、熱出力約10万kWのコジェネのオプションを提供する。市場のニーズに適合した安全な製品を提供するため、原子力部門でよく知られ、完全に習得された実績ある技術コンポーネントのみから構成される設計に見直す」と説明。「NUWARD SMRの付加価値は、競争力と建設時間の最適化を目的とした、シンプルさとモジュール工法にある」と強調した。同社は現在、2026年半ばまでに概念設計を完成させ、2030年代に市場投入し、国内に初号機の建設を計画している。2019年9月、EDFは仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して、欧州主導のSMR「NUWARD」(電気出力17万kWの小型PWR×2基)の開発を発表。2基の独立した原子炉圧力容器(RPV)を鋼製格納容器内に収納、格納容器は水中設置を特徴とし、基本設計段階に進んでいた。
- 17 Jan 2025
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チェコ 2040年までに原子力シェア68%へ
チェコ政府は2024年12月20日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。2033年までに電力や熱生産における石炭利用を全廃し、再生可能エネルギーとともに、原子力発電を拡大する方針を明示。原子力を、対外エネルギー依存の低減や脱炭素化戦略の重要な柱と位置付けた。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再エネなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。今回チェコ政府は、再エネの総発電電力量に占める割合を現在の約12%から2030年には31%、2050年には52%まで引き上げるとともに、原子力は、現在の約40%から2040年には68%にまでシェアを拡大させる方針を表明した。原子力の増分は、大型炉と中小型炉(SMR)の導入により賄うとしているが、まずは、既存原子力サイトのドコバニ(VVER-440、51.0万kWe×4基)とテメリン(VVER-1000、108.6万kW×2基)での増設を優先させる。チェコ電力(ČEZ)は2024年7月、最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者として、韓国水力・原子力(KHNP)を選定、今年3月末にも正式契約が調印されると見られている。現在、同プロジェクトの入札手続きについては、WE社が、韓国のAPR1000やAPR1400は同社の技術を組み込んでいると主張し、知的財産権と輸出管理をめぐってKHNPと係争中だ。こうしたなか、2025年1月9日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、昨年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印した。今回、両国政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性を指摘する向きもある。NECPはまた、石炭火力全廃後の、特に2035年以降のSMRの役割を強調、石炭火力をSMRに順次リプレースすることにより、地域暖房を含めたSMRの活用方針を打ち出した。既にČEZは、SMR初号機の建設サイトとして、テメリン・サイト南西部を選定済みで、地質調査など建設準備作業が進められている。2024年9月には、チェコ政府とČEZがSMR供給者7社の中から入札によって、英ロールス・ロイスSMR社をSMRの建設プロジェクトの優先サプライヤーに選定。SMR初号機の運転開始は2030年代半ばを予定しているが、大型原子炉の建設状況次第では、最大300万kW導入する可能性もあるという。そのほか、ČEZは、国内2基目、3基目のSMR建設候補サイトとして、チェコ北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定している。両地点とも、ČEZの石炭火力サイトである。
- 15 Jan 2025
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米WE社 カナダで主要機器製造へ
米ウェスチングハウス(WE)社とBWXTカナダ社は12月12日、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。WE社は、新規建設プロジェクト遂行のため、カナダにおけるサプライチェーンの構築を進めている。今回のMOUは、BWXTカナダ社による、WE社製AP1000と小型モジュール炉(SMR)であるAP300の原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの製造を想定している。加オンタリオ州ケンブリッジに拠点を置くBWXTカナダ社は、PWR向け蒸気発生器、核燃料および燃料関連機器、重要プラント機器・部品など、原子力発電設備の設計、製造、試運転、関連サービスにおいて60年以上の経験とノウハウを有している。本社は米国にあるBWXテクノロジーズ社で、米国、カナダ、英国に事業所を置く。WE社は、カナダには西側諸国で最強の一つとされる原子力サプライチェーンがあり、米国のサプライチェーンと組合わせることで、新規建設を迅速に行う強力なプラットフォームになると考えている。WE社はカナダのオンタリオ州において、AP1000を4基建設するプロジェクトを計画しており、早ければ2035年までに完成するとしている。経済効果は建設段階で287億加ドル(約3.1兆円)、運転中に年間81億加ドル(約8,717億円)のGDP増となると試算している。なお、カナダ国外での建設ではカナダのサプライチェーンを通じて、1基あたり約10億加ドル(約1,076億円)のGDP増を見込んでいる。また、カナダ国内に12,000人の高賃金のフルタイム雇用が創出されるという。
- 19 Dec 2024
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米電力会社のSMRプロジェクト 加アトキンス・リアリス社が協力
米ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社は12月12日、同社の小型モジュール(SMR)導入プロジェクトの実施に向けて、加のアトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社をオーナーズ・エンジニアに選定したことを明らかにした。エナジー・ノースウェスト社は、太平洋岸北西部で唯一稼働する原子力発電施設のコロンビア発電所(BWR、121.1万kWe)を所有・運転するほか、水力発電、風力発電、太陽光発電、蓄電池の事業を行っている。同社は今年10月、大手IT企業のAmazon社ならびに先進炉開発企業のX-エナジー社と、X-エナジー社製SMR「Xe-100」(ぺブルベッド型高温ガス炉、8万kWe)を4基(最大12基)建設するプロジェクトへの出資契約を締結した。エナジー・ノースウェスト社はAmazon社と複数年にわたる実行可能性調査の実施で合意したばかりであり、調査では環境、安全、許認可、リスク面に焦点を当てつつ総合的な分析を行う。プロジェクトが承認されれば、建設許可申請を行う計画だ。アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)はCANDU 炉の技術管理者であり、原子力産業において70年以上の経験を有するエンジニアリングサービス企業。今回のオーナーズ・エンジニアリング契約に基づき、SMRプロジェクトの設計、許認可手続き、建設、試運転を支援する。作業は、ワシントン州リッチランドに最近開設されたおよそ3,000㎡のアトキンス社の最先端のエンジニアリング・技術センターで実施される。エナジー・ノースウェスト社は、アトキンス・リアリス社との協業により、AI(人工知能)革命をサポートするSMRの開発支援だけでなく、雇用創出、経済成長、クリーンで安定した電力供給によって、地域に長期的な利益をもたらしたいとしている。
- 19 Dec 2024
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ノルウェー SMRの建設可能性を模索
米国のエンジニアリング企業であるアメンタム社(Amentum)とノルウェーのコンサルティング企業であるマルチコンサルト・ノルゲ社(Multiconsult Norge AS)は12月11日、ハルデン・シャーナクラフト社(Halden Kjernekraft AS)から、小型モジュール炉(SMR)建設の実行可能性調査を受注した。建設候補サイトは、かつて研究炉が運転していたノルウェー南部ハルデン市。具体的には、SMRを建設する際のノルウェー国内外の機器・サービスに関するサプライヤーの候補企業を調査するほか、採用炉型、環境影響なども評価する予定。ハルデン社は、ハルデン市とノルウェーの新興エネルギー企業であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社、およびエストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社の3者が、同市でのSMR建設の実現可能性を探るため、昨年11月に共同で設立した企業。アメンタム社のA.ホワイト上席副社長は「マルチコンサルト社と協力し、SMRとサプライチェーンに関する豊富な知識を活用して、客観的で事実に基づいた評価を提供し、原子力が将来のエネルギー問題の解決に貢献できるか、ハルデン市が十分な情報に基づいた決定を下せるよう支援したい」と意気込みを示した。ハルデン社を設立した3者によると、ノルウェーでは、オスロ特別市やハルデン市など18の自治体を含むエストフォル県で既に160億kWhの電力不足が発生しており、電力の需給ギャップが問題となっている。ノルウェー国内では、ハルデン市のみならず、さまざまな自治体でSMRの導入検討や建設可能性の調査が行われている。なお、ハルデン市では、エネルギー技術研究所(IFE)のハルデン研究炉(BWR、2.5万kWt)が1950年代から運転されていたが、2018年6月に閉鎖されている。
- 18 Dec 2024
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スウェーデンと韓国 SMRプロジェクトで提携
スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社は、12月5日に韓国・ソウルで開催されたスウェーデン・韓国戦略産業サミットにおいて、韓国の建設大手のサムスンC&T社(サムスン物産)と協力覚書(MOU)を締結した。KNXT社はこのパートナーシップを、脱炭素エネルギー源の拡大を目的に、スウェーデン南部で実施する小型モジュール炉(SMR)開発を加速・強化する「Re:Firm South SMR」プログラムの一環に位置づけている。韓国のサムスンC&T社は、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所の建設プロジェクトに参画。また、2023年6月にルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)と同国南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)におけるSMR建設を目指して、建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)に共同参画している。KNXT社は、サムスンC&T社の最新の建設工法や設計、ライセンス、資金調達に関するノウハウを自社プロジェクトへ活用させたい考えだ。KNXT社は、スウェーデン南東部のバルデマーシュビークとニュヒェーピングの両自治体を建設候補地として予備的な実行可能性調査(FS)を実施している。両社は、今回のMOU締結により、炉型選定、環境影響評価など、SMR発電所建設へ向けた作業に直ちに着手する予定だ。スウェーデンは脱原子力政策を撤回し、大規模な原子力発電開発に向けて大きく舵を切っている。2022年の総選挙によって誕生した中道右派連合の現政権は、40年ぶりに原子力を全面的に推進しており、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。同ロードマップには、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉10基分を新設することなどが盛り込まれている。最近では、米国のMicrosoft社やAmazon社などの大手IT企業がスウェーデンにデータセンターを増設するという計画を発表。スウェーデン政府はSMRをはじめとする原子力発電所を建設し、データセンターに必要な電力供給を計画している。KNXT社とサムスンC&T社はこの機を捉え、2032年までにSMR発電所を建設、電力購入契約(PPA)を通じて、信頼性の高いクリーンな電力をデータセンターなどのエネルギー集約型施設に直接供給する事業モデルを検討している。今後も多数の発電所を建設し、同時にデータセンターの持続的な誘致を構想する。サムスンC&T社は今回のスウェーデン市場での協業を通じて、欧州市場でのSMR事業の一層の拡大をねらっている。
- 17 Dec 2024
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次世代炉導入に向け各国が協力体制を構築
SMRなどの革新的な原子炉の導入に向け、各国が協力体制を構築している。このほど米国はリトアニアと政府間協定を、英国はフィンランドと協力覚書を締結した。米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官とリトアニアのD. クレイビス・エネルギー相は11月26日、米国のワシントンで、リトアニアの民生用原子力発電プログラムの開発に協力する政府間協定を締結した。同協定は、特に第4世代小型モジュール炉(SMR)のリトアニアへの導入に焦点を当てた、米国初となる政府間枠組み。米国は、リトアニアと次世代炉開発における知見を共有するとともに、第4世代のSMRのビジネスモデル分析と開発可能性評価を実施し、リトアニアが掲げる2050年までのネットゼロ達成目標を支援する。リトアニアは、2025年2月に同国を含むバルト三国がロシアの電力網から完全に切り離され、欧州の電力網に接続する予定で、欧州域内でエネルギー輸出国としてシェアを拡げたい考えだ。協定ではSMR導入に係る協力に加えて、リトアニアにおける最高水準の安全とセキュリティの促進や民生用原子力施設の核物質防護・セキュリティの強化のほか、廃止措置、燃料管理、人材育成に係るベストプラクティスなどを協議する専門家交流も想定している。グランホルム長官は「安全、クリーンで信頼性の高い原子力エネルギーは、リトアニアのエネルギー政策上のカナメとなる」と強調。クレイビス・エネルギー相は、「リトアニアの増大するエネルギー需要を満たし、ネットゼロ目標の達成のため、米国の次世代炉開発の知見に期待している」と述べるとともに、リトアニアの地政学的な安全保障、長期的な経済成長、技術力向上にも資する、本協定の意義を強調した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、チョルノービリと同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の同プロジェクトへの支持を問う国民投票では、新規建設に対する否定的な意見が優勢となり、計画は2016年に凍結された。リトアニアの総発電電力量は約57億kWh(2023年実績)で、その内、約73%を再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)、約11%を火力発電(天然ガス)が占める。現在の電力消費量は約120億kWh。エネルギー部門の脱炭素化と電化には大量の追加電源が必要であり、2050年代には約6倍の740億kWhへの増大を予想する。そのため、エネルギーシステム全体の均衡を保ち、再生可能エネルギーへより多く投資することを可能にするSMRの導入を推進したいとし、2028年にはSMR建設の決定を目指している。 英国はフィンランドと一方、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とフィンランド経済雇用省は11月18日、民生用原子力エネルギー分野における協力覚書(MOU)を締結した。協力の対象分野は、SMRや先進モジュール炉(AMR)のような革新技術の導入、既存・新設炉を対象とした燃料供給の多様化、SMRやAMRの効率的な導入に係わる規制組織間の意見交換、資金調達、使用済み燃料最終処分を含む放射性廃棄物管理と廃炉、原子力安全とセキュリティ、人材育成など。これらの分野で知見やベストプラクティスを共有し、両国の産官学の政策・技術・学術関係者の交流や、民間企業間の緊密な協力によるビジネスの機会の促進を図る。両政府は、SMRやAMRなどの新原子力技術が、エネルギーセキュリティと気候変動の双方に革新的な解決策となる可能性を認識。発電だけでなく、熱生産および水素製造、その他の非電力用途の原子力技術の研究開発でさらに協力する機会を模索したいとしている。今回のMOUにより、英国の輸出信用機関である英国輸出信用保証局(UKEF)は、英国の商品やサービスを購入するフィンランドを拠点とするプロジェクトに対し、最大40億ポンド(約7,600億円)の融資支援が可能となる。UKEFは、英国製SMRのフィンランドへの導入を念頭に置いている。フィンランドの輸出信用機関であるフィンベラ(Finnvera)も、フィンランドの商品やサービスを購入する英国を拠点とするプロジェクトに対して同様に資金提供が可能になるという。
- 04 Dec 2024
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米政府 2050年原子力3倍化に向けたロードマップを発表
ホワイトハウスは、アゼルバイジャンのバクーにおける第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29、11月11日~24日)会期中の11月12日、今後の同国の原子力発電拡大に向けた目標と行動を示した「米国の原子力を安全かつ責任を持って拡大する:展開目標と行動に向けた枠組み(Safely and Responsibly Expanding U.S. Nuclear Energy: Deployment Targets and a Framework for Action)」を発表した。同資料によると、米国が2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするためには、出力規模でおよそ15億~20億kWのカーボンフリー電力が必要であり、このうちの約30~50%は原子力発電などのクリーンで安定した電源が必要、と分析。現在約1億kWが運転中の原子力発電については、2050年までにさらに2億kWを新規導入する目標を掲げ、これらを大型炉や小型モジュール炉(SMR)、マイクロ原子炉のさまざまなカテゴリーの、第三世代+(プラス)および第四世代原子炉の新規建設や既存炉の運転期間延長、出力増強、経済性を理由に閉鎖された原子炉の再稼働などでまかなうとしている。米政府はまた、より近い将来の目標として以下の、導入に向けた「時間軸」と「規模感」も併せて明記した。2035年までに3,500万kWの新規設備容量を稼働または着工し、原子力導入を活発化させる。2040年までに導入のペースを年間1,500万kWに拡大し、原子力導入能力を加速、国内外のプロジェクト展開を支援する。これらをふまえ米政府は、野心的な導入目標の達成に向け、国内の原子力導入を加速、拡大するための「9つの分野((①新規大型炉の建設、②SMRの建設、③マイクロ原子炉の建設、④許認可の改善、⑤既存炉の延長/拡大/再稼働、⑥労働力の育成、⑦コンポーネントサプライチェーンの開発、⑧燃料サイクルサプライチェーンの開発、⑨使用済み燃料管理))」を特定、個々の分野における「具体的な行動」を詳述した。具体的には、「新規大型炉の建設」や「SMRの建設」の分野では、①発電事業者に対する技術中立的クリーン電力生産税額控除とクリーン電力投資税額控除など、税額控除による原子力納入コストの削減、②エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)による、革新原子力プロジェクトや、閉鎖された化石燃料発電所を原子力発電所に転換するような、資産・インフラ転換への融資や融資保証の促進、③新規プロジェクトに対して電力会社とリスク分担が可能な電力需要顧客との連携――などを挙げた。そのほか、「既存炉の延長/拡大/再稼働」の分野では、2回目の運転認可更新(80年運転)申請に係る審査の効率化や、構造材料の継続的な健全性確保のための研究など、100年運転に向けた長期運転への備えを挙げている。さらに、経済性を理由に閉鎖した原子炉の再稼働の可能性を追求するなどとしている。
- 25 Nov 2024
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ポーランド企業 加企業とSMR導入に向けた調査を実施
ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は11月14日、ワルシャワで加ローレンティス・エナジー・パートナーズ社と、ポーランドにおける初の小型モジュール炉(SMR)の開発と導入に向けて、予備安全分析報告書(Preliminary Safety Analysis Report:PSAR) の作成支援に係る契約を締結した。契約額は最大4,000万加ドル(約44億円)。今回の契約は、OSGE社がポーランドで導入を検討している米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設の安全性の実証が目的。PSARは、ポーランドの原子力規制当局である国家原子力機関(PAA)が、建設許可申請の一環で要求する包括的な安全性分析報告書で、PSARの作成は許認可手続きにおいて最重要作業の一つである。PSARでは、提案されている原子炉のシステム、構造、機器の一般的な設計側面と詳細な説明の両方を提示。建設準備と管理体制、環境や地域の状況、核燃料管理を含む発電所の運転期間のほか、廃炉プロセスの説明も含んでいる。ローレンティス社は、環境条件、サイト特性、施設の建設、運転、将来の廃止措置に関する資料作成を担当。OSGE社は、BWRX-300発電所の所有者兼運転者として、分析のためのデータの準備や進行中の作業のマネジメントを担当する。今後2年をかけてPSARを作成し、2026年半ばに完成する予定。OSGE社はまた、GEH社からもPSAR作成の支援を受け、GEH社はBWRX-300の設計者として、技術面および安全関連の分析を担当する。OSGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、大手化学素材メーカーであるシントス社(Synthos SA)のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資し、2022年に設立された合弁企業。2023年12月に気候環境省から、国内6地点における合計24基のBWRX-300建設計画へ原則決定が発給され、OSGE社は現在、許認可手続きの準備を進めている。一方、ローレンティス社は、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社の100%子会社で、プロジェクト管理、許認可、運転準備、運転員支援などで、60年の経験とノウハウを有する。OSGE社に対しては2022年以降、SMRの導入に向けた初期的な計画立案などを支援しており、OPG社のダーリントン・サイトにおけるBWRX-300建設プロジェクト支援の実地経験を活用できるのが強み。OPG社は、2029年にBWRX-300初号機の稼働を計画している。OSGE社のR. カスプロウ会長は、「今回締結された契約は、これまでの一連の契約を締め括るもの。建設許可申請の重要要素であるPSARの作成にあたり、OPG社の一部であるローレンティス社との契約により、カナダの知識とノウハウを最大限に活用できる」と語り、両社間の協力への期待を滲ませた。「BWRX-300」は電気出力30万kWの次世代原子炉のBWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
- 22 Nov 2024
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経産省 ポーランドの原子力開発に向け政府間覚書
日本とポーランドにおける原子力分野での協力が進展している。経済産業省の竹内真二大臣政務官は11月3~9日、エネルギー関連企業など、計23社とともに、ルーマニアおよびポーランドを訪問。7日のポーランド訪問では、マジェナ・チャルネツカ産業相と会談し、原子力分野を中心に、両国間の協力可能性について議論した上で、覚書への署名がなされた。〈経産省発表は こちら〉会談には日本企業も同席。2040年までのポーランドのエネルギー政策に従い、同国におけるSMR(小型モジュール炉)を含む原子炉の開発・配備を通じて、「強固で強靭な原子力サプライチェーンを構築する」など、相互にとって有益な協力分野を開拓していく。ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が深刻な問題だ。そのため、エネルギーセキュリティ確保と環境保全の両立に向けて、同国政府は、原子力発電の導入を目指し、2043年までに大型軽水炉を6基導入する計画。2022年11月には、大型炉の米国WE社製AP1000を3基建設することを正式決定。また、産業振興も視野にSMR導入を目指す動きもみられている。既に2024年5月、東芝エネルギーシステムズと地元企業との間で、蒸気タービンや発電機の供給協業で合意に至っており、民間企業レベルでの協力も進みつつある。今回の覚書のもと、日本とポーランドは、人材育成、理解促進、原子力安全確保の分野で、情報交換、セミナー・ワークショップ、企業間マッチングなどの活動を実施。国際的基準・勧告に沿った放射性廃棄物管理・廃炉など、バックエンド対策も含めて、原子力発電導入に向けた理解活動に取り組んでいく。なお、日本によるポーランドへの原子力・放射線分野の協力は、エネルギー分野のみにとどまらず、これまでも、IAEAによる支援のもと、電子線加速器を利用した排煙脱硫や、その副産物として肥料生産も行われるなど、環境保全・食料安全保障の分野での実績も注目される。
- 12 Nov 2024
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英国 SZCの最終投資決定とSMR支援対象炉決定を来春実施
英政府は10月30日、新政権として初の秋季予算案を発表。同予算案の中で、英サイズウェルC(SZC)原子力発電所新設プロジェクトの最終投資決定とSMR支援対象炉の決定を来年春に実施すると言及している。英政府(前政権)は今年1月、2050年のCO2排出実質ゼロに向けて原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力で賄うとする野心的な原子力開発目標を示した。今回の予算案の中で、新規炉は英国がエネルギー安全保障とクリーンエネルギーを実現する上で重要な役割を果たすとともに、何千もの熟練労働者の雇用を約束するものであると明言。SZCプロジェクトの継続のため、2025年~2026年にかけて、27億ポンド(約5,343億円)の予算を計上している。同プロジェクトはイングランド東部サフォーク州のサイズウェル原子力発電所サイトにEPR-1750(172万kWe)を2基建設する計画。2022年7月に開発合意書(DCO)、2023年3月に環境許可、今年5月にはサイト許可がそれぞれ発給されており、現在、サイト内の土木工事が進行中だ。なお、同プロジェクト向けの資金調達プロセスはまもなく最終段階に入り、春には完了する見通しだとし、同プロジェクトを進めるかどうかの最終投資決定(FID)を歳出見直し(Spending Review)の第2段階(来春)で実施するとしている。同予算案ではまた、大英原子力(Great British Nuclear:GBN)が実施している小型モジュール炉(SMR)の支援対象選定コンペについて、最終選考に残った4社と交渉段階に入ることを明らかにした。最終選考に残ったのは、米GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、米ホルテック・インターナショナル社英法人、英ロールス・ロイスSMR社、米ウェスチングハウス(WE)社英法人。GBNは10月にこれら4社に対して交渉への招請状を発行。交渉の終了後、4社は最終入札の提出を求められ、GBNはそれを評価し、支援対象炉の最終決定を来年春に行うという。当初、今夏には選定企業との契約締結を計画していたが、遅延している。なお、GBNは10月28日に発表した商業活動の見通し(Commercial Pipeline)の中で、支援対象に選定された各SMR供給者への契約額を10年間で推定6億~8億ポンド(約1,187億~1,583億円)と見積り、調達開始予定は2025年7月、契約開始予定は2026年9月と設定。原子炉蒸気供給系(NSSS)以外の系統(Balance of Plant:BOP)の製造、供給、設置に関する別の2億ポンド(約396億円)の契約については、調達開始を2028年、契約開始を2030年と設定している。英国原子力産業協会(NIA)のT. グレイトレックスCEOは、「英国のSMR支援対象選定コンペがこれ以上遅れることなく、できるだけ早く決定を下すことが重要である。SMRへの支援に関する英政府の声明に対する信頼は、今回の約束を果たすことにかかっており、サプライチェーンの信頼だけでなく、野心的な原子力拡大目標を達成するためにも不可欠である」と指摘した。
- 11 Nov 2024
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韓国 慶尚南道でSMR国際会議を開催
韓国南東部の慶尚南道(キョンサンナムト)は10月22日、「SMRの未来:世界が問う、慶南が答える」と題して、小型モジュール炉(SMR)に関する国際会議を昌原市で開催した。世界のSMR開発企業と韓国国内の原子力関連企業、研究機関によるSMRの設計・製造技術の開発状況の共有や、慶尚南道におけるSMR製造クラスターの育成を目的に開催されたもので、国内外の原子力関連企業や 研究機関など300名以上が参加した。冒頭、開会挨拶の中でパク・ワンス(朴完洙)慶尚南道知事は、「昨今の人工知能(AI)、ビッグデータのような先端産業の急速な発展により、世界的に電力需要が増大する中、持続可能かつ無炭素電源となるSMRが注目されている」と指摘。慶尚南道が昨年6月に策定した原子力育成総合計画により、SMR技術開発など原子力産業の育成に2032年までに2.6兆ウォン(約2,800億円)を投資することに触れ、「慶尚南道は名実ともにSMR産業のグローバルセンターとしての役割を果たすだろう」と展望した。開会式後、慶尚南道は、ナトリウム冷却高速炉(Natrium)を開発する米テラパワー社、ならびに小型熔融塩炉(CMSR)を開発するデンマークのシーボーグ社とそれぞれ、SMR部品やコンポーネントの設計と製造、道内における研究開発(R&D)センターの設立に向け、協力協定を締結。先進炉開発企業との協力により、道内における原子力関連企業の次世代原子炉技術の競争力強化のほか、技術開発への参加機会の創出を狙う。また、OECD・NEAのB. ルイアー局長と韓国原子力学会のチョン・ボムジン(鄭釩津)会長も出席、基調講演を行った。続いて海外セッションでは、先述のテラパワー社とシーボーグ社のほか、米ニュースケール・パワー社、米X・エナジー社、加アトキンス・リアリス社など、世界でSMR開発をリードする企業がそれぞれの技術開発や事業の現状を紹介。一方、韓国からは、韓国水力・原子力(KHNP)、韓国原子力研究院(KAERI)、斗山エナビリティ(旧斗山重工業)、道内の原子力関連企業であるBHI社が、海外の多様なSMR設計開発に対応して国内で推進する設計・製造技術開発の現況などについて発表した。翌23日には、これらSMR企業関係者が道内の原子力関連企業の斗山エナビリティ、JinYoung TBX社(タービン翼製造)、PKバルブ社、 BHI社(排熱回収ボイラー製造)を視察。SMR製造クラスター形成に向けた、道内企業の技術力を現場で直接確認し、将来の設計、製造、国際共同研究協力、原型炉製造などへの投資について話合いが行われた。
- 01 Nov 2024
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IAEA SMRに関する初の国際会議を開催
国際原子力機関(IAEA)が主催する小型モジュール炉(SMR)とその応用に関する初の国際会議がウィーンで10月21日~25日に開催された。SMRのサプライヤーや規制関係者など約100か国から1,000人以上が集まり、世界のSMR活動を評価し、新たな課題と機会について議論した。IAEAは同会議を、大手テック企業から海運業界や鉄鋼業界まで、脱炭素化の目標達成を目指すあらゆる企業にとって、SMRをあらゆる角度から検討するのに最適な場と位置付けている。会議冒頭、R. グロッシー事務局長は「SMRは原子力において、最有望で、エキサイティングで、必要とされる技術開発の一つであり、現実なものになりつつある。クリーンエネルギーの未来を実現する上で原子力の導入を加速する必要があるが、SMR は産業の脱炭素化、経済の活性化に貢献できる」と強調。そして世界の大手テック企業が、低炭素エネルギーによって生成AI(人工知能)やその他の科学イノベーションを推進するためにSMRに注目し、開発途上国にもSMRの利用を検討する国が増えていると指摘。SMRの導入支援の強化に向けてIAEAが開設したSMRプラットフォームを通じて支援及び専門知識を提供するほか、SMR導入には資金調達が極めて重要になることから、国際金融機関に対し、従来型およびSMRのような新型炉への投資を促していると言及した。オープニングセッションでは、ガーナのK. メンサー・エネルギー省次官、米原子力エネルギー協会(NEI)のM. コースニックCEOから基調講演が行われた。会議の開催期間中には、4つの主要テーマ(①SMRの設計、技術、燃料サイクル、②法規制の枠組み、③安全性、セキュリティ、保障措置、④SMRの展開を促進するための考慮事項)に関するパネルディスカッションやポスターセッションが行われ、SMRの可能性について議論した。なお、10月21日、原子力の調和および標準化イニシアチブ(Nuclear Harmonization & Standardization Initiative:NHSI)の第3回年次総会が開催された。IAEAは2022年、先進炉、特にSMRの世界展開には、迅速かつ効率的に、また開発者がスケールメリットを達成するために、標準化された設計が複数の国において認可され、かつ安全に導入されるための各国間の調和された規制アプローチが不可欠であるため、同イニシアチブを創設。同イニシアチブは、規制トラックと産業トラックの別個でありながら補完的な2つのトラック構成により、各国を支援する。前者は、原子力安全と国家主権を損なうことなく、加盟国間の規制協力を強化し、取組みの重複を回避して効率を高め、共通規制の作成を促進することを目標とし、後者は、SMR の開発、製造、建設、運転のより標準化されたアプローチの開発に焦点を当て、認可手続き、コスト、展開の所要時間の短縮を目指している。今回の総会では、各トラックの作業の進捗状況をレビューし、ワーキンググループが提案する多くの推奨事項を実施するという次の段階に移行することとなった。
- 28 Oct 2024
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米DOE SMR初期導入に9億ドルを援助
米エネルギー省(DOE)は10月16日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、第3世代+(プラス)の小型モジュール炉(SMR)の国内初期導入支援を目的とした、最大9億ドル(約1,359億円)の資金提供の申請プロセスを開始した。米国内での先進原子炉の導入促進や産業力強化のほか、後続の原子炉プロジェクトの支援に繋げることが狙い。資金は、2021年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」から、2024年連結歳出法(Consolidated Appropriations Act of 2024)に割り当てられたものを活用する。 DOEによると、資金提供は2つのカテゴリーに分けて実施される。1つ目のカテゴリーとして先陣を切る、ファースト・ムーバー・チーム支援(First Mover Team Support)では、DOEは、同時に複数のSMRの受注促進を目的として、コンソーシアム・アプローチ、すなわち、電気事業者、原子炉ベンダー、建設業者、エンドユーザーなどがチームとして参加することを条件とし、最大2チームを支援する。支援額は最大で8億ドル(約1,208億円)。2つ目のカテゴリー、ファスト・フォロワー・導入支援(Fast Follower Deployment Support)では、設計、許認可申請、サイト準備など、国内原子力産業が直面する課題解決のため、計画中のSMR建設プロジェクトを主導する企業や、SMRのサプライチェーンの強化やコスト改善をめざす組織を支援する。支援額は最大で1億ドル(約151億円)。最新のDOEの「リフトオフ報告書」は、米国の原子力発電設備容量が、2024年の約1億kWから2050年までに約3億kWまで3倍になる可能性があると指摘。また、2050年ネットゼロ達成のためには、少なくとも7億~9億kWの追加のクリーンかつ信頼性の高い発電設備容量が必要としており、原子力は、これを大規模に達成できる数少ない実証済みのオプションの一つであると強調している。中でもSMRは、大型原子炉と比べて、発電コストが割高でも、閉鎖予定の小規模石炭火力発電所や高温熱を必要とする工業プロセスの代替となり得る点や、潜在的な立地、建設、およびコストなどの点で利点を有すると評価されている。今回の支援について、DOEのJ. グランホルム長官は、「米国の原子力部門の活性化は、カーボンフリーなエネルギーの供給量を増加し、AIやデータセンターから製造業、医療に至るまで、成長し続ける経済の需要を満たすためのカギとなる」とその意義を強調している。なお、支援金の申請期限は2025年1月17日まで。
- 25 Oct 2024
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