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規制委 女川と高浜での乾式貯蔵施設設置を許可
原子力規制委員会(NRA)は5月28日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)と関西電力高浜発電所構内における、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画を許可した。東北電力は2024年2月に、関西電力は2024年3月に、乾式貯蔵施設設置に向けた原子炉設置変更許可をそれぞれ申請していた。乾式貯蔵施設とは、プールで一定期間冷却した使用済み燃料を、「キャスク」と呼ばれる金属容器に収容し、空気の自然対流によって冷却する方式の貯蔵施設である。水や電源を用いないため、維持管理が比較的容易であり、米国やスイスをはじめとした海外で多くの実績がある。貯蔵はあくまで一時的なものであり、使用済み燃料の再処理を前提に行われているが、燃料の搬出先となる日本原燃の再処理工場の完成が延期(2026年度竣工予定)となっており、使用済み燃料の保管能力の確保は各電力会社にとって喫緊の課題であった。日本国内では、すでに日本原電東海第二発電所で乾式貯蔵が実施されているほか、東京電力と日本原電が共同出資したリサイクル燃料備蓄センター(青森県むつ市)にも昨年、使用済み燃料の搬入が開始されている。また、今回認可を受けた女川および高浜は、発電所構内の乾式貯蔵施設としては新規制基準施行後、四国電力伊方発電所、九州電力玄海原子力発電所に続き、3、4か所目の合格となった。
- 03 Jun 2025
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日本原燃 ウラン濃縮工場の設備更新を国に申請
日本原燃は5月21日、青森県六ヶ所村にあるウラン濃縮工場について、設備の設計および工事計画の認可申請を原子力規制委員会(NRA)に提出した。申請の対象は、年間150トンSWU(分離作業単位)の処理能力を持つ「2号カスケード設備(RE-2C)」を含む複数の設備。今後、老朽化した機器を新型の遠心分離機などへ更新し、安全性と効率の向上を図る。今回の申請では、新型遠心分離機の導入に加えて、耐震評価、追加の安全対策を実施。また、ウラン化合物を取り扱う六フッ化ウラン処理設備や高周波電源設備、放射線監視設備、非常用設備についても同様に設備更新や追加の安全対策が行われる予定だ。今回、申請分の設備は2028年度中の完成を見込んでいる。
- 23 May 2025
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島根2号機 長期施設管理計画を認可
中国電力は5月21日、運転中の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)に係る「長期施設管理計画」が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同機は、2024年4月に、高経年化技術評価制度に基づき長期運転に関する認可を受けた。その後、原子炉等規制法の改正に伴い、運転開始から30年を超えて原子力発電所を運転する場合、経年劣化に関する評価を行い、今後実施すべき具体的な保全活動をとりまとめた長期施設管理計画を申請し、原子力規制委員会から認可を受けることとなった。今回は、原子力規制委員会が2025年5月14日までに行った審査内容に基づく補正を経て、正式に認可されたもの。島根2号機は1989年2月に営業運転を開始。すでに運転開始から36年が経過しており、長期施設管理計画の対象期間は、制度施行日である2025年6月6日から、運転40年目を迎える前日である2029年2月9日までとなっている。
- 22 May 2025
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敦賀1号機 廃止措置工程を延期
日本原子力発電は5月19日、廃炉作業中の敦賀発電所1号機(BWR、35.7万kWe)の廃止措置工程について、完了時期を当初計画の2040年度より7年延期し、2047年度の完了を目指す方針を明らかにした。あわせて、同発電所が立地する福井県及び敦賀市に報告するとともに、原子力規制委員会(NRA)に廃止措置計画の変更届を提出した。敦賀1号機は、1970年3月に営業運転を開始した国内初の商業用軽水炉で、2017年から廃炉作業が進められている。廃止措置は3段階で構成されており、現在は第1段階にあたる「原子炉本体等解体準備期間」にある。すでに、解体で発生する廃棄物を効率的に移送するルート確保のため、原子炉建屋、タービン建屋内の設備や軽油貯蔵タンク等の解体、撤去工事を実施中で、2026年度から原子炉本体の解体に着手する計画だった。しかし、原子炉格納容器の一部であるサプレッション・チェンバの解体を予定していたメーカーが、事情により受注を辞退。その後、別のメーカーを選定したが、解体用装置の開発に時間を要することから、廃止措置の完了時期を延期することになった。日本原子力発電は「引き続き安全確保を最優先に、敦賀1号機の廃止措置を着実に進めるとともに、丁寧な情報発信に努めていく」とのコメントを発表している。
- 21 May 2025
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新潟県 被ばく線量シミュレーションの結果を公表
新潟県は5月16日、柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)において事故が発生した場合の、被ばく線量シミュレーションを公表した。シミュレーションは、原子力規制委員会(NRA)の検討チームが実施した手法をもとに、気象条件など柏崎刈羽地域の実情に合わせて行った。7日後のベント実施や、6・7号機が同時に事故を起こすケースなど、計6通りのシナリオを想定。事故発生後の時間経過に伴う被ばく線量の変化や、防護措置の実施タイミングをそれぞれのケースごとに分析し、IAEAが定める各種基準と比較評価した。今回のシミュレーションでは、発電所から2.5キロメートル圏内では、避難や屋内退避を必要とする100ミリシーベルト/週の実効線量に達する可能性があること、また、4.5キロメートル圏内では、安定ヨウ素剤の服用が推奨される50ミリシーベルト/週に達する場合があることが示された。いずれもフィルタベントを使用した複数のケースで確認されている。一方、発電所から概ね30キロメートル圏内のUPZ(緊急時防護措置準備区域)では、被ばく線量が、IAEAの基準値には達しないことが確認された。屋外にいた場合でも被ばく線量は十分低く、特に鉄筋コンクリート造の施設など屋内退避を行うことでさらに被ばく線量が低減されると分析した。今回の結果は、6月1日、7日に開催する県民への説明会にて説明される予定となっている。
- 19 May 2025
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北海道電力 泊3号機の原子炉設置変更許可申請について有識者会合で説明
原子力規制委員会(NRA)が4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認めた審査書案を了承したことを受け、同電力は5月15日、札幌市で開催された道の原子力専門有識者会合で、同審査書案について説明を行った。今後、北海道電力は、有識者の指摘を踏まえ、3号機の再稼働に向けて必要な対策を盛り込んだ、一般向け説明資料をとりまとめ、公開する方針だ。なお、審査書案は、5月30日までパブリックコメントに付せられている。会合では、前回有識者から要望があった道民向けの説明資料について、北海道電力が、基準津波、対津波設計方針、基礎地盤と周辺斜面の安定性評価、重大事故等対処施設などの項目ごとに、より分かりやすく、内容を充実させた説明を実施。一方で、一部有識者からは、更なる情報の深掘りを求める声が上がった。津波の年超過確率、制御棒の自重落下やホウ酸水を使った原子炉出力抑制、審査対応状況に関する記載などに関して、さらに分かりやすい説明を求める意見が出された。現在、北海道では、次世代半導体の量産を目指す新工場建設や、国内最大級のデータセンターが建設予定。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。
- 16 May 2025
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泊3号機が「合格」
原子力規制委員会は4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。パブコメを経て、今夏にも審査書が決定され、正式に合格となる。 2013年7月に北海道電力が新規制基準への適合性審査を申請して以来、「合格」までに要した審査期間は過去最長の12年近くに及んだ。特に審査過程では、敷地内に活断層がないことの証明に手間取った。安全対策工事はほぼ完了しているが、現在津波対策として、高さ19メートルの防潮堤の設置工事が進行(2024年3月28日に着工)している。 泊3号機の合格により、規制基準への適合審査を終えた国内原子炉は計18基となった。しかし実際の再稼働に至るまでは、「保安規定」の認可や地元自治体の同意など、課題が残っている。今後は地元自治体である泊村、共和町、岩内町、神恵内村および北海道の同意手続きが再稼働への焦点となる。 規制委員会の 山中伸介委員長は、会合終了後の定例記者会見で、記者より長きにわたった審査に関し「効率化の重要性を象徴するものだったのでは」と問われたのに対し、これまで通りに厳正な審査を行っていく姿勢を示した上で、「審査の根本的なあり様」に関し改善を図っていく必要性を示唆した。現在、北海道では次世代半導体の量産を目指す国策会社ラピダスが、千歳市で新工場の建設を進めているのに加え、ソフトバンクが苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設予定だ。次世代半導体は、人工知能(AI)、自動運転、5G通信、量子コンピューティングなどの先端分野での活用が期待されており、国際的な競争力の源泉とされている。データセンターはソフトバンク以外にも北海道への立地を計画する事業者が多い。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。泊3号機の再稼働が、北海道エリアの電力安定供給において重要な役割を果たすことは間違いないだろう。
- 01 May 2025
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規制委 高浜と女川の乾式貯蔵施設設置で審査書案了承
原子力規制委員会は3月26日の定例会合で、関西電力高浜発電所と東北電力女川原子力発電所の使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置に関し、原子炉等規制法で規定する許可の基準に「適合が認められる」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会および経済産業相への意見照会とともに、パブリックコメントを経て、正式決定となる運び。 使用済み燃料の乾式貯蔵施設については、東日本大震災発生時、福島第一原子力発電所において、その頑健性が維持されていたことから、規制委員会でも原子力発電所への設置を推奨している。 関西電力では2024年2月、美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所の各々構内における使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画について、地元の福井県、美浜町、高浜町、おおい町に対し、安全協定に基づく事前了解願を提出。その中で、高浜発電所に関しては、同年3月15日、第1期工事分(2025~27年頃)について規制委員会に申請した。1~4号機共用で、輸送・貯蔵兼用キャスク最大22基(使用済み燃料約240トン分)を貯蔵するもの。これに続き、同年7月には、美浜発電所、大飯発電所についても、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画に係る申請を同委に対し行っている。 一方、東北電力では2024年2月、2号機における使用済み燃料乾式貯蔵施設設置に係る原子炉設置変更について規制委員会に申請。1棟目、2棟目に分かれており、それぞれ貯蔵容器は最大で8基、12基、工事着工は2026年5月、2030年8月、運用開始は2028年3月、2032年6月が見込まれている。 両発電所とも、型式証明を受けた特定兼用キャスクとして、初めてのケースとなることから、各委員とも、審査書案の正式決定に向けて、パブリックコメントを行うことで一致した。
- 02 Apr 2025
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規制委 福島第一の廃炉で審査・検査の改善策を示す
原子力規制委員会は2月19日の定例会合で、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に係る審査及び検査の改善策について了承した。〈資料は こちら〉これまでの審査の実績や実施計画の現状を踏まえて、他施設での実績を踏まえ審査に係るガイドを策定するなど、効率的・効果的な安全規制を実施するのがねらい。 これに先立ち、福島第一原子力発電所の廃炉に係るリスク低減などについて審議する同委の「特定原子力施設監視・評価検討会」で、2月17日、原子力規制庁は、東京電力へのヒアリングも実施し、改善要望事項を聞いた上、リスク情報を活用した合理的な手法の導入などを含む改善策を整理し説明。 それによると、審査に係るガイドには、これまでの技術会合等で議論されてきた認可基準適合性を確認する方法の具体例や、審査の実績を踏まえた実施計画の記載事項、「運転上の制限(LCO)」の名称及び設定すべき項目の選定の考え方を盛り込むとされた。 検査関係の改善については、溶接検査を使用前検査の一部として実施、また過去に実績のある設備でリスクが低いものは使用前検査を不要とするなど合理化を図ることが改善方針のポイント。 その中で、19日の定例会合では、他施設での原子力規制検査の定着を踏まえた「短期的な改善策」について規制庁より諮られ、了承された。安全にフォーカスし改善活動を事業者と規制側の双方で行う原子力規制検査の実績等を踏まえ、有効な評価手法の導入をさらに進め、監視領域を設けて効果的かつ効率的な監視を行うことや、検査指摘事項の評価に重要度評価を導入するなど、合理的な検査の手法に改善していくもの。一方で、福島第一原子力発電所の廃炉を担務する伴信彦委員は、これまでも震度計の取扱いで「不備を知っていて対応しなかった」ことなどに対し厳しい指摘をしてきた。今回了承された検査指摘事項の重要度評価では、当面のすべての指摘事項に対する「重要度評価・規制措置会合(SERP 会合)」や、意図的な不正行為等に対する深刻度評価も導入することとなっている。規制庁は今後、審査ガイド及び検査の枠組みに係る規則等の改正に関する検討を進め、2025年度内に順次、改正案等を規制委に付議する方針だ。 2月17日に行われた検討会に有識者委員として出席した大熊町商工会会長の蜂須賀禮子氏は、これまでも議論されてきた福島第一原子力発電所におけるリスク低減マップなどを踏まえ、今後の原子力規制検査に関し、通常の原子力施設とは異なる特性に言及した上で、「不思議に思ったことがあればまずは立ち戻るべき」と述べ、工程ありきではなく総合的に安全が確保されることを、地域の立場から要望している。
- 20 Feb 2025
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敦賀2号機の不許可理由 「可能性を否定できない」は科学的な判断か?
二〇二四年十二月二十五日 原子力関連で令和六年(二〇二四年)最大のニュースと言えば、福井県の敦賀2号機の再稼働の不許可だろう。「不許可」自体もビッグニュースだが、それを決めた原子力規制委員会の「活断層の可能性は否定できない」という主観的な判断理由も、歴史に残るだろう。ただ何か釈然としない気持ちがわいてくるのはなぜだろうか。 原子力規制委員会(山中伸介委員長・委員五人)は十一月十三日、定例の会合で日本原子力発電株式会社が所有する敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)の2号機(PWR・百十六万kW)の再稼働申請を不許可(不合格)とすることを全会一致で決めた。二〇一二年に原子力規制委員会が発足して以来、初めての審査不合格だ。2号機は一九八七年に運転を開始したが、二〇一一年にトラブルで停止したあと、二〇一五年十一月、新規制基準への適合性審査を同規制委に申請していた。不許可の理由は「活断層の可能性を否定できず」 私は原子力問題の専門家ではない。この問題を大手新聞や雑誌がどう報じたかに関心がある。どんな理由で不許可になったかを知るために当時の新聞を読んでみた。 審査の主な焦点となったのは、2号機から北へ約三〇〇mのところにある「K断層」が将来、地震を起こす活断層かどうか、そしてその活断層が原子炉直下まで延びている(連動もしくは連続している)かどうかの二点だ。 まずは各紙を見てみよう。朝日新聞(十一月十四日付)は「活断層否定できず」の見出しで「規制委は活断層の可能性は否定できないと判断した」と報じ、さらに「原電の説明が十分な根拠をもって受け入れられなかった」という理由を挙げた。毎日新聞(十一月十四日付)は「原子炉直下に活断層があることを否定できず新規制基準に適合しない」と報じた。東京新聞(十一月十四日付)も「原子炉直下に活断層がある可能性を否定できない」とした。さらに読売新聞(十一月十四日付)は「規制委の審査チームは『活断層の活動性、連続性とも否定できない』と判断した」と報じ、産経新聞(十一月十四日付)も「原子炉直下に活断層が走る可能性を否定できない」と報じた。 つまり、どの新聞も「活断層の可能性を否定できない」という理由を挙げて報じたことが分かる。処理水に反対した地方紙はおおむね不許可を称賛 この不許可の決定に対し、予想通り、反原発路線の朝日、毎日、東京は「否定できない以上、不許可は当然である」と断じた。念のため、地方紙の社説をネットで見つけて読んでみた。おもしろいことに気づいた。どういうことかといえば、福島第一原発の処理水の海洋放出に反対する社説を載せていた地方紙(神戸新聞、中国新聞、北海道新聞、信濃毎日新聞、西日本新聞、京都新聞など)は、今回も「不許可」に対して、「再稼働を認めないのは当然だ」「妥当な判断だ」と称賛していることだ。 要するに、原発に否定的な新聞社は「可能性を否定できない」という、私から言わせれば、極めて科学から程遠い判断理由に対して疑問を呈していないことだ。科学的なデータを突き詰めて解析した結果、不許可はやむを得ないといった論調なら科学的な匂いを感じ取ることができるが、そういう論調ではない。「悪魔の証明」は危うい論理 地方紙の社説を読むといとも簡単に「可能性を否定できないなら、廃炉は当然だ」と主張している。世の中に「可能性を否定できる」現象などない。どんなテクノロジーでも「良くない出来事が決して起きないことを証明せよ」と言われたら、それを事前に証明することは不可能である。これはよく「悪魔の証明」と言われる。 そういう危うい論理にもかかわらず、いとも簡単に「不許可は当然だ」と堂々と主張しているところを見ると、最初から結論は決まっているように思える。なにしろ、ほぼ環境や人体へのリスクがゼロに近い処理水の放出にも反対したくらいだから、「どうみても活断層が動く可能性を否定することは無理だよね」という判断に傾くのは自然の流れである。そもそも原発自体に否定的なのだから、どんな証拠を突きつけられても、活断層の恐れがあるから再稼働は認めないという判断に行く着くのは理の当然である。産経新聞だけは果敢に反対の論陣を張る 大手各紙を見ていて、つくづく感じたのは主要な新聞を読んでいても、細かい科学的な議論が分からないということだ。ただ、産経新聞だけは「悪魔の証明は禁じ手だ」(七月十七日付)、「規制委の偏向審査 強引な幕引きは許されぬ」(八月七日付)、「効率性と対等性の新風を」(九月二十六日付)と一貫して審査の偏向ぶりを指摘していた。 真骨頂は、長辻象平・産経新聞論説委員の書いた「『悪魔の証明』を求める原子力規制委 敦賀2号機の受難」と題した八ページにわたる論稿(月刊「正論」二十四年十月号)だ。長辻氏は「K断層は両側からの圧縮力で生じる逆断層だが、ぐにゃぐにゃで左右に湾曲し、しかも、とぎれとぎれでふらついて息も絶え絶えという代物だ」と形容して、「2号機に脅威を及ぼす断層の姿からはほど遠い」と指摘する。 そして、各紙が「原電による審査資料の無断書き換えと誤記」((筆者注 「無断書き換え」という表現は、原電が意図的にデータを改ざんした、と読める。))と報じた点に関しても、長辻氏は「規制委の審査官が『ここが変わったとかではなく、きちんとした形で更新して最新の形で審査資料として提出するよう』指示したのを受けて更新したところ、『説明なしの書き換え』ととがめられた」と書いている。誤記に関しても「肉眼で観察したものを、新たに顕微鏡で詳細に確認した結果を修正したものだ。そこに悪意はなかったとされて、審査は再開されたが、規制委はその間に原電本店への立ち入り検査を行った。印象操作と批判されても仕方あるまい」と書いている。 ついでに言うと、天野健作氏(大和大学社会学部教授・元産経新聞)が書いた「敦賀原発『不合格』にみる公正審査の疑わしさ」と題した論稿(十一月十四日「国際環境経済研究所」のウェブサイトに掲載)も非常に参考になる。 長辻氏や天野氏の論考を読むと、ことの真相の一端を知ることになるが、これに対する反論も当然あるだろう。私としては、真実に少しでも迫る論争記事を読みたいのだが、残念なことにそういう論争的な記事を大手新聞は載せてくれない。 やはり現状では真相(深層も含め)を知るには、主要各紙を丹念に読み比べることしかなさそうだ。「予防原則の乱用」が怖い 最後にひと言。今回の不許可報道で私が危惧の念を抱くのは「予防原則の乱用」が広がる恐れだ。「良くないことが起きる可能性が否定できない」という論理がまかり通れば、どんなテクノロジーも為政者の思うままに規制できてしまう。現に敦賀2号機の再稼働に対しても、「疑わしきは安全な側に判断すべきだ」(朝日新聞七月二十七日付)という主張が見られる。この主張は、少しでも疑わしき点があれば、あるテクノロジーや化学物質の使用、化学工場の運転などを止めるということを意味する。 一般に「予防原則」は、科学的な因果関係が十分証明されていなくても、規制措置を可能にする考え方を指す。この論理は「可能性を否定できないときは、安全側に立つ」という論理とほぼ同じである。こういう論理がまかり通ると石炭や天然ガス火力は廃止になり、原発の稼働も中止になるだろう。すでに約三十年間、世界で流通している遺伝子組み換え作物にしても、「将来何か良くないことが起きる可能性を否定することは難しい」という判断を為政者がくだせば、いとも簡単に流通や栽培を禁止することも可能になってしまう。これを機に「可能性を否定できない」という論理の適用を限定させる科学的な議論が必要だろう。 もう一言。原発を動かすかどうかは、日本全体の未来を左右する極めて社会経済的な問題である。原子力規制委員会(五人の委員)に経済学やエネルギー、社会心理学など社会工学的な専門家がいないのはどうにも腑に落ちない。国民の代表である政治の側からの参戦をもっと期待したい。
- 25 Dec 2024
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規制委 革新軽水炉導入を見据え事業者らとの意見交換開始
原子力規制委員会は12月9日、電力事業者・メーカーを招き革新軽水炉の規制に係る技術的意見交換会の初会合を開いた。〈資料は こちら〉同委では随時、電力関係の原子力部門責任者と技術面での意見交換を行うCNO会議を行っている。今春からは三菱重工業が開発を進めている革新軽水炉「SRZ-1200」を中心に、新型炉の導入に向けた規制対応が焦点となってきた。「SRZ-1200」は、「超安全」(Supreme Safety)、「地球に優しく」(Zero carbon & Sustainability)、「大規模な電気を安定供給」(Resilient light water Reactor)がコンセプト。現行規制基準の理念を踏まえ、「さらに新たな安全メカニズムを取り入れて、地震・津波の他、自然災害への対応、大型航空機衝突・受動的安全システム等の安全対策」を図ること目指し、基本設計が進んでいる。今回の意見交換では、第1ラウンドとして、このような安全対策を中心に、原子力エネルギー協議会(ATENA)の佐藤拓理事他、原子力発電所を有する各電力会社のグループリーダー・課長クラスが出席し説明。原子力規制庁の技術基盤グループらが、今後の規制対応に係る課題を指摘するなどした。佐藤理事は、PWRを有する電力事業者4社と三菱重工とで開発を進めている「SRZ-1200」について、「設計がかなり進んできたが、この先を進めるに当たっては、予見性が不明確な部分がある」と、事業者としての規制面での問題点を強調。さらに、現在検討が進められている次期エネルギー基本計画を見据え、「原子力を一定程度確保する必要があり、新しい原子炉を開発していかねばならない」とした上で、産業界として、今後の新型炉に係る規制対応を議論していく必要性を述べた。メーカー側からは、三菱重工原子力セグメントSRZ推進室長の西谷順一氏が、技術的観点から説明。シビアアクシデント対策やテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」との関連について、「合理的範囲での設計思想」を図る必要性を述べたほか、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、「これまで想定されていないような溶融炉心残存についても冷却水の注水を継続する」として、より厳しい事象に対しても安全対策の強化に努めていく姿勢を強調した。
- 10 Dec 2024
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前原子力規制委員・石渡氏 新知見を活用する重要性を強調
原子力規制委員会の委員を2期10年間(2014年9月~2024年9月)務めた石渡明氏が11月18日、日本記者クラブで記者会見を行い、自然ハザードに対する同委の対応を振り返るとともに、元旦に発生した能登半島地震で得られた知見、今後の原子力規制行政に係る課題について意見を述べた。同氏は、委員在任時、地震・津波関連の審査を担当。最近、11月13日に新規制基準適合性に係る審査で「不合格」となった日本原子力発電敦賀発電所2号機の「審査書案」取りまとめや、2023年に「GX脱炭素電源法」検討の中、原子力発電所の60年超運転も視野に入れた規制制度の見直しに関して、委員の中でただ一人反論するなど、現行の原子力規制行政のあり方に対し頑なに厳しい態度を示してきた。石渡氏は、東日本大震災時、東北大学に在任。現地調査を踏まえ、「津波引き波」、「津波火災」など、津波被害対策の重要性を強調。当時の経験が、原子力規制委員会委員を引き受ける上で「大きな比重になった」という。福島第一原子力発電所は過酷事故に至ってしまったが、石渡氏は東北電力女川原子力発電所に関して、敷地高さ15mに対し、実際の津波高(13m)は「地震により1m地盤が沈降したため正にギリギリだった」と説明。活断層に関して、石渡氏は、これまでの審査から、「上載地層法」と「鉱物脈法」による判断を技術的見地から紹介。新規制基準を初めてクリアした九州電力川内原子力発電所1・2号機を例に、設置変更許可後、2016年4月に発生した熊本地震(M7.3)の経験などを踏まえ、自然ハザードへの対応に関し、「不確定さが大きい」と述べ、新たに得られた知見に対し現行の規制要求でも満足することを確認する「バックフィット」の重要性を強調した。石渡氏は、地質学、岩石学、地球化学が専門。委員在任時、会合の中で、「令和3年台風10号」が宮城県に上陸した観測史上初の台風であったことを指摘し、自然ハザードに対する議論を随所で喚起するなど、いわば「理科年表」的な存在でもあった。今回の会見の中で、同氏は、能登半島地震について、委員退任も近くなった8月の現地調査を振り返り、4mもの隆起があった地盤変動に関し、「関東大震災の隆起1mに比しても非常に大きな地殻変動。こんな状況を生きている間に目にするとは思わなかった」と強調。今後の原子力規制行政に向け、「日本は自然ハザードが起きやすい。絶えず改善していく必要がある」と述べた。
- 20 Nov 2024
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敦賀2号機 規制委が「不合格」を決定
原子力規制委員会は11月13日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「適合するものであると認められない」とする審査結果を正式決定した。2013年に原子力発電所の新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」が決定した初の事例となる。本審査については、8月28日の同委定例会合で「審査書案」が了承された後、1か月間のパブリックコメントに付せられていた。敦賀2号機における地震・津波関連の審査では、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことを確認。今回の結論に至った。敦賀2号機の審査は、2015年11月に申請がなされており、9年越しでの結論となった。審査申請当時の委員5名中、4名が既に入れ替わっているが、今回の決定に際しては各委員の意見が一致。その中で、プラント審査担当の杉山智之委員は、「許可を与えるには、すべての基準に適合していることを一つ一つ説明する必要がある。一方で、許可しない決定には『適合しないケースを一つ示せば十分』だが、決してそのケースだけに特化した審査が行われてきたわけではない」と発言し、規制委の審査経緯や事業者の主張について、広く社会に説明していく必要性を示唆した。定例会終了後の記者会見で、山中伸介委員長は、初の事例となる今回の判断に関し、「論点を絞った審査となったが厳正に審査した」と、規制委員会としての姿勢を強調。加えて、審査の中で、申請書に係る疑義が生じたことに関し、「異常な状態だった」とも述べ、事業者に対し厳しく反省を促した。今回の審査結果を受け、日本原子力発電は「大変残念」とした上で、敦賀2号機の設置変更許可の再申請、稼働に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見を踏まえ具体化していく、とのコメントを発表した。
- 13 Nov 2024
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島根2号機 特重施設の原子炉設置変更許可取得
原子力規制委員会は10月22日、中国電力島根原子力発電所2号機について、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を発出した。同機については、2021年9月に新規制基準適合性審査をクリア。本体施設の設計・工事計画認可日から起算し、5年を満了する2028年8月29日が特重施設の設置期限となっている。今後の再稼働に向けては、現在、10月28日の燃料装荷開始、12月上旬の原子炉起動、同月下旬の発電開始を予定し、使用前事業者検査などが進められている状況だ。今回の原子炉設置変更許可を受け、中国電力では、「引き続き特重施設等の設置工事を進める」として、その設計・工事計画認可申請に係る審査に適切に対応し、発電所の安全確保に万全を期していく、とのコメントを発表した。現在、再稼働している12基のプラントは、いずれも特重施設の運用が開始している。一方で、新規制基準施行後、再稼働に至っていないプラントで、特重施設に係る原子炉設置変更許可が発出されているのは、島根2号機の他、日本原子力発電東海第二(特重施設の原子炉設置変更許可:2021年12月)、東京電力柏崎刈羽6・7号機(同2022年8月)、東北電力女川2号機(同2023年10月)で、いずれもBWRだ。
- 24 Oct 2024
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規制委 原子力災害時の屋内退避で中間まとめ
原子力規制委員会の検討チームは10月18日、原子力災害時における屋内退避の運用について、中間まとめを示した。これまで、放射性物質の放出に伴う住民避難など、防護措置の目安について記載した原子力災害対策指針では、外部被ばくを避けるため、UPZ(原子力施設から概ね5~30km圏内)の住民は屋内退避するとされていたが、その解除に関しては示されていなかった。能登半島地震の発生により、複合災害や厳冬期の対応に係る不安も高まり、規制委では4月より効果的な運用に向け、専門家も交え検討を開始。福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準で要求される重大事故対策の有効性を前提に、原子力災害の事態進展を、「炉心損傷防止ケース」、「漏えいケース」、「ベントケース」の3つに分類し、OSCAARと呼ばれる解析コードを用いて線量評価のシミュレーションを行った。今回の中間まとめでは、重大事故対策が成功したと判断される原子炉の状態、屋内退避の開始および解除の判断、その継続および避難への切替えなどを、7つの合意事項として整理。屋内退避を続ける期間については、全面緊急事態に至ってから、3日間を目安としている。避難への切替えは、地方自治体からの情報提供などを踏まえ、国が総合的に判断するものとした。福島第一原子力発電所事故時には孤立住民が問題となり、昨今は新型コロナに伴い密室における感染症対策にも関心が高まっている。合意事項では、屋内退避実施中の考慮事項として、「被ばくを直接の要因としない健康等への影響を抑えることも必要」と指摘。住民に対し、先行きに関する状況が把握できるよう、原子炉施設の状態、緊急時モニタリングの情報、生活維持に係る情報(支援物資の配給、電気・ガス・上下水道の復旧など)をわかりやすく提供する必要性を述べている。検討チームでは今後、地方自治体からの意見も聴取し、年度内を目途に最終報告書を取りまとめる予定。
- 21 Oct 2024
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高浜1号機 初の50年超運転へ
関西電力の、高浜発電所1号機(PWR、82.6万kWe)が10月16日、高経年化技術評価に関する保安規定の変更を、原子力規制委員会から認可された。1974年に運転を開始した同機は、国内で最も長く運転する原子力発電所だが、今回認可されたことで、国内初の50年超運転(11月14日)に向かうこととなった。同機は現行制度に基づき、すでに最長60年まで運転可能な認可を得ているが、30年を超えて運転する場合、事業者は10年ごとに安全上重要な機器や構造物の劣化を考慮した管理方針を定め、認可を受ける必要がある。また、2025年6月には、60年超の運転を可能とする改正原子炉等規制法を含む「GX脱炭素電源法」が施行されるため、同1号機は新制度に基づき、改めて60年までの運転について認可を受けなければならない。
- 17 Oct 2024
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原子力規制委 長﨑委員と山岡委員が就任
原子力規制委員会委員の任期満了に伴う交替として、カナダ・マクマスター大学教授の長﨑晋也氏、名古屋大学名誉教授の山岡耕春氏が9月19日付で就任した。任期は5年間。同日、行われた同委臨時会議で、山中伸介委員長の不在時などの際、その職務を代行する委員長代理として、伴信彦委員が指名された。新任委員の審査会合などにおける担務は、長﨑委員が核燃料施設・研究炉、バックエンド関係、福島第一原子力発電所廃炉他、山岡委員が自然ハザード(地震・津波など)関係と、それぞれ退任する田中知委員、石渡明委員を引き継ぐ。新体制のスタートに際し、山中委員長は、原子力規制委員会の組織理念の筆頭に掲げられる「独立した意思決定」の重要性をあらためて強調。その上で、委員らに対し「議事については、是非積極的・活発に発言して欲しい」、「重要な案件を取り扱う場合は、必要に応じ委員全員に賛否・意見を問うので、それぞれの見解を明確に示してもらいたい」と求めた。同委では、5か年の中期目標を策定してきており、現行の「第2期中期目標」は年度内にその対象期間を終了する。山中委員長は、次期中期目標の検討に向け、2025年2月頃の策定を目指し、議論を本格化させる考えを示した。臨時会議終了後、就任会見に臨んだ長﨑委員は「これまで培ってきた経験と知識を常にアップデートしながら、法と科学と技術のエビデンスに基づき、職務を全うしていきたい」と、山岡委員は「科学においては『正直である』、自然に対しては『誠実に向き合う』ことを信条に据え、原子力の規制に精一杯取り組んでいきたい」と、それぞれ科学的・技術的見地に立脚して責務を果たす姿勢を強調。長﨑委員は、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授、同院工学系研究科教授を経て、12年間にわたりカナダに在住した経験を持つ。北米の原子力規制行政との違いや改善点に関して問われたのに対し、「カナダ原子力安全委員会(CNSC)、米国原子力規制委員会(NRC)とも比較して、規制のプロセス・内容についてはまったく遜色ない」との見方を示した。同委員は、上杉鷹山の名言「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」を座右の銘としているという。原子力規制委員会には、現状に慢心せず「海外の規制機関を引っ張っていくくらいの組織を目指していくべきだ」と、熱く抱負を語った。山岡委員は、臨時会議で「地球の内部、地下のことは目に見えない。大変な問題を扱うことになる。慎重に何よりも科学的であることを大事にしていきたい」と発言。会見の場でも、昨今の能登半島地震発生、南海トラフ地震臨時情報などに鑑み、「地震に関する知見は日々新しくなるので、立ち止まらずに考えていきたい」と、予断を持たずに審査に当たる姿勢を示した。また、2023年に発生したトルコ・シリア地震を例に、「最近は良質なデータが得られるようになった」として、海外の知見を積極的に取り入れるとともに、現地を実際に見ることの重要性を強調。新規制基準適合性審査が進行中の北海道電力泊発電所にも近く視察に訪れる見通しだ。同委員は、趣味について問われたのに対し、「最近は植物観察にはまっている」と答えた。なお、退任する田中委員、石渡委員は、それぞれ2期10年にわたり委員を務めた。18日に記者会見に臨んだ石渡委員は「色々な新しい分野の勉強の期間でもあった」と振り返り、また、田中委員は「今後どういうふうにして、地層処分関係のルールをつくっていくのか、まだこれからスタートのところだ」と、今後の原子力規制における課題に言及した。
- 20 Sep 2024
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規制委 「常陽」のRI生産で「審査書案」了承
原子力規制委員会は、9月4日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町、ナトリウム冷却型、熱出力100MW)における医療用ラジオアイソトープ(RI)の生産について、原子炉等規制法に照らし「適合している」とする「審査書案」を了承した。「常陽」は、2007年5月の定期検査入り以降、運転を停止中。2011年3月の東日本大震災を挟み、2023年7月に新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可に至っている。その後、原子力機構は2024年2月、RI生産用実験装置を追加する原子炉設置変更許可を申請。審査では、新規制基準許可以降に公表された火山に関する知見の反映を評価したほか、ほとんどの項目について、既許可申請書から変更する必要がないことを確認した。「審査書案」については、パブリックコメントを行わないことが委員間で了承され、今後、原子力委員会および文部科学相への意見照会を経て、正式決定となる運び。原子力機構では、「常陽」を活用し、次世代革新炉開発に向けた照射試験とともに、がん治療への高い効果が期待される医療用RIの製造能力の実証を行う計画。原子力委員会が2022年に策定した「医療用等RI製造・利用推進アクションプラン」では、医療用RIの一つであるアクチニウム225大量製造の研究開発強化を図るため、「常陽」を活用し2026年度までの製造実証を目指すとされている。核医学を中心としたRI関連分野を「わが国の強み」とするねらいだ。アクチニウム225を用いた治療は、病巣の内部からアルファ線を当てるもので、治療効果が高いほか、遮蔽が不要なため病室への入退室制限を緩和できるメリットもある一方、短寿命(半減期10日)でもあり、世界的に供給不足となっている。「常陽」の運転再開は、新規制基準対応工事を経て2026年度半ばの予定。
- 05 Sep 2024
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規制委 敦賀2号機の審査「不合格」を了承
原子力規制委員会は8月28日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)に係る新規制基準適合性審査について、「安全上重要な施設(原子炉建屋等)は、将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置する」との要求事項に適合しないことから、「原子炉設置変更を許可しない」とする「審査書案」を了承した。同案につき今後、パブリックコメントを実施することで一致し、これを踏まえ、正式決定となる運び。〈参考資料は こちら〉2013年に原子力発電所に関する新規制基準が施行されてから、試験研究炉や核燃料サイクル施設も含め、「不合格」との結論に至ったのは初めてのこと。原電は2015年に敦賀2号機の審査を申請。同社による地質調査に係るデータ疑義に伴い、審査が中断した時期があったが、敷地内の「D-1破砕帯」(2号機原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性および連続性が焦点となり、2023年9月以降、規制委審査チームは、計8回の審査会合、現地調査を実施。2024年7月26日に行われた同委審査会合では、「K断層」について、「後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない」、「2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことが確認結果として示され、今回、「審査書案」としての取りまとめに至った。同日の審査会合後、原電は、「今後も追加調査やデータの拡充に取り組んでいく」として、同機の再稼働に向け取り組んでいく姿勢を示したほか、8月2日の臨時会合では、社外の技術者も加えた専門チームを交えた追加調査内容を説明した上で、引き続き「今後の対応について検討していく」とのコメントを発表している。原子力施設に係る審査において、特に地質・地震動については、断層活動性の見極めが人類史上以前であることなどから、規制基準に照らした判断が難しく、審査期間長期化の一因ともなってきた。今回の敦賀2号機に係る「審査書案」了承に際し、地震・津波審査担当の石渡明委員は「科学的判断の根拠を示した審査書だ」との見方を示す一方、プラント審査担当の杉山智之委員は「『白黒の判断』をつけることが簡単にできる分野ではない」と発言。山中伸介委員長は、定例会終了後の記者会見で、自身の委員就任以前に開始し、8年余に及んだ同機に係る審査期間を振り返り、「非常に大きな判断だった」と繰り返し強調するとともに、審査チームの労力にも言及し「十分に時間をかけて慎重に審査を進めてもらった」と所感を述べた。なお、山中委員長は、今後、見込まれる同機に係る再申請について、「何ら否定するものではない」との姿勢を示している。
- 29 Aug 2024
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原電 敦賀2号機の再稼働に引き続き取り組む
日本原子力発電は7月26日、敦賀2号機について同日、原子力規制委員会が地質関連の基準に関し「適合しているとは認められない」との確認結果を示したことを受け、コメントを発表。これまでの審査会合・現地調査での対応を踏まえ、「今後も追加調査やデータの拡充に取り組んでいく」として、引き続き同機の再稼働に向け取り組んでいく態度を鮮明にした。敦賀2号機(PWR、116.0万kW)に係る審査会合は2015年に開始。これまでの会合開催は計27回(プラント関係の審査も含む)に上る。原電による地質調査データの疑義に伴い中断した時期があったが、規制委の指導文書に従い補正申請が確認されたことから、2023年9月に再開。同発電所敷地内の「D-1破砕帯」(2号機原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」の活動性評価が論点となっていた。同社との質疑応答を踏まえ、審査チームは、2024年5月31日の会合で、「『K断層』の活動性を否定することは困難である」との確認状況を提示。6月6、7日には現地調査も行われた。7月26日の会合で、原電は、ボーリング調査等を通じた「K断層」の分析結果を示し、従来からの説明通り、連続性は認められないと説明したが、規制委の審査チームは同社の説明に科学的な根拠は乏しい点があるなどと指摘し、「K断層」と「D-1破砕帯」の連続性を否定できないとの認識を示した。前回の会合(6月28日開催)で、審査チームからは、7月の会合をもって敦賀2号機の現行補正申請に関する審議をしめくくる方針が示されていたが、同社は、必要な再調査の実施を含めて、「K断層」の活動性および連続性に関する追加的な検討を行う方針を表明。現行の補正書に記載した内容(論理構成や評価基準の変更など)を超えることが見込まれるため、再補正を視野に入れており、その時期などについては検討中とした。地震・津波審査担当の石渡明委員は、現行補正書に関する審査結果をまとめ、7月31日の規制委定例会合で報告する考えを示した。同日は、原電も出席し、今後の再補正に関する方針等を説明する見通しだ。2013年の新規制基準施行以前、規制委は発足当初より、旧原子力安全・保安院を引き継ぎ、敦賀発電所を含む6発電所について、有識者による破砕帯評価を実施。現地調査やピアレビューを踏まえ、「D-1破砕帯」については、同年5月に「耐震設計上考慮する活断層」との評価結果が示されている。これを受け、原電では、2つの国際レビューチームによる評価を実施し、同年8月にこれを覆す見解を発表。2014年2月には、地球物理学分野で権威のある「米国地球物理学連合」も、この問題に注目し、同社による主張を支持する論文を学会誌に掲載した。こうした国際的評価も踏まえ、原電は2015年11月、「敷地に分布する破砕帯は『将来活動する可能性のある断層等』ではないことを確認した」として、敦賀2号機に係る新規制基準適合性審査を規制委に申請し、説明に当たってきた。同機は1987年2月に運転開始。2011年5月の定期検査入りから停止が続いている。
- 29 Jul 2024
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