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加速キッチン 中高生が素粒子探究成果を報告
素粒子や宇宙線をテーマとした中高生の探究活動を支援する「加速キッチン」の進捗報告会が3月29日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。都内近郊の中高生ら約10人が参加し、自ら取り組んでいる探究活動の進捗を発表するとともに、今後の課題などについて議論した。普段は各自が自宅や学校で探究活動を行う中、研究内容を共有する場となった。加速キッチンは、早稲田大学理工学術院総合研究所の田中香津生准教授が主宰する教育プログラムで、2020年に活動を開始した。中高生に組み立て式の素粒子検出器を無償で貸与し、観測・解析やレポート作成を、研究者や大学生メンターの支援のもと進める。交流機会も設けているがオンラインを基盤としており、現在は全国や海外から約100人が参加している。進捗報告会は年2回開催し、春は対面、秋はオンラインで実施している。 報告会では、宇宙線と気象条件の関係や太陽活動との相関、放射線の遮蔽効果の測定など、生徒が自ら設定したテーマに基づく発表が行われた。探究の途中経過の共有を重視し、測定手法やデータ解釈、今後の展開についてインタビュー形式で議論が行われた。 都内から参加した女子中学生は、宇宙線の検出数の変化をもとに流星群との関連を探るため、昨年秋から自宅で観測を続けている。宇宙への関心をきっかけに参加したという。「学校の授業は方法が決められているが、ここでは自分で考えて進める必要がある。大変だが楽しい」と話す。データ解析に苦労しながらも、自ら課題を設定し、探究を進めている。 同じく参加者の電気工学を学ぶ国立高専生は、小学1年生の時に研究施設を訪れ、宇宙線が人体を通過する様子を可視化する展示を見たことをきっかけに関心を持った。目に見えないものが身近に存在し、物質を通り抜ける性質に魅力を感じたという。同プログラムに参加後は、他のメンバーと協力し、日本と英国での比較観測に取り組み、緯度や地磁気が宇宙線の到来に与える影響を検証している。「自分で組み立てた装置で宇宙線を測れるのは夢のようだ」と語り、留学も視野に入れるなど、活動を通じて関心が具体的な進路選択へとつながっている。 活動の目的について田中准教授は、「素粒子の専門家を育てることがゴールではない。6年間の取り組みの中で、放射線医療に関心を持って医学分野に進むケースや、国際分野に関心を広げる例もある。素粒子や放射線をきっかけに、自身の興味を起点として進路を選択することは、人材育成の本質に近い」と指摘する。その上で、「今後はより学際的な人材が求められる中、こうした関心を起点に人材が各分野に広がっていくことが重要だ」と話した。 同プログラムは募集期間を設けず、興味を持った時点で参加できる。参加のハードルを下げることで、探究を始めるきっかけを広げる取り組みとなっている。
- 31 Mar 2026
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日本原燃が30億円拠出 六ヶ所村 電事連と新法人を共同で設立
青森県六ヶ所村と日本原燃、そして電気事業連合会(電事連)は3月17日、地域共創と原子燃料サイクル施設との共生に寄与することを目的に、「一般社団法人六ヶ所みらい共創プロジェクト」を共同で設立すると発表した。同新法人は、六ヶ所村内の企業の人材確保と育成、産業・経済基盤の整備、防災対策の強化、生活基盤の整備など、地域課題の解決に資する事業を担う。活動資金は六ヶ所村と日本原燃が拠出するが、当面6年間は日本原燃が総額30億円を負担するという。六ヶ所みらい共創プロジェクトは2026年4月中の設立を予定し、同月の事業開始を目指す。法人の所在地は六ヶ所村。設立時の会員は六ヶ所村、日本原燃、電事連の3者で、代表理事は日本原燃の代表者が務める。理事には3者に加え外部有識者が参画する予定となっている。3者(六ケ所村・日本原燃・電事連)はこれまで、再処理工場の竣工・操業を見据え、地域と原子燃料サイクル施設が共生する将来像の実現に向けた協議を重ねてきた。その中で、長期にわたる安全・安定操業を支えるためには、地元企業の人材確保・育成や防災機能の強化など、地域産業やまちづくりを含めた中長期的な取り組みが不可欠との認識を共有している。同法人を通じ、同地域と原子燃料サイクル事業の共生・原子燃料サイクル事業を支える産業の基盤づくりや街づくりに向けた取り組みを一体的に進める狙いだ。
- 27 Mar 2026
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原文財団「原子力に関する世論調査」2025年度版を公表
日本原子力文化財団(原文財団)は3月23日、2025年10月に実施した「原子力に関する世論調査」の結果を公表。原子力に対する肯定的評価は2018年度以降おおむね横ばいで推移している一方で、否定的イメージは2017年度以降、低下傾向が続いていることが分かった。また「信頼できない」との回答も減少し、福島第一原子力発電所事故前と同水準(12.0%)まで回復した。同調査は、全国の15〜79歳の男女1200人を対象に実施。2006年度から同一手法で継続している全国規模の調査で、今回で19回目。世論調査を経年的・定点的に実施し、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握し、原子力に関する知識普及活動のあり方などを検討するのが目的だ。エネルギー政策や社会動向の変化に対応するため、適宜新たな設問の追加や内容の見直しを行い、継続性と時勢の変化への対応の両立を図っている。なお、原文財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。例年通り同調査は、原子力や放射線に対するイメージ、関心、情報保有量、信頼、再稼働や利用に対する考え方など多岐にわたる項目で構成されているが、今年度はいくつかの新設項目が追加された。具体的には、「今後の原子力発電の利用に対する考え」といった将来のエネルギー選択に関する設問や、「核燃料サイクル・バックエンドに関する情報保有量」など、より専門的な領域に踏み込んだ設問がその例で、最新の世論動向を的確に把握できる設計となった。同調査によると2025年度に、最も関心が高かった原子力/エネルギー関連ニュースは「地球温暖化」で、70.3%に上った。これに「電気料金の値上げ」(56.4%)、「自然災害による停電」(53.9%)、「電力不足」(48.3%)が続いた。さらに「巨大地震・津波と原子力」(37.8%)、「ロシア情勢などとエネルギー安定供給」(33.8%)、「再生可能エネルギー拡大の影響」(33.1%)といった項目が上位に並び、「暮らしに直接的に影響する可能性」が高いテーマとなった。一方、原子力業界に関する個別テーマへの関心は相対的に低く、「女川原子力発電所の再稼働」が13.9%、「AI普及に伴う電力需要増加」が11.4%、「原子力発電所のリプレース」が10.8%、「第7次エネルギー基本計画」が4.5%にとどまった。経年で見た場合、「暮らしに影響を与える身近なニュース」に対する関心は低下傾向にあるものの、生活に密接に関わるテーマへの関心の高さと、業界個別テーマとの間に乖離がある実態が浮き彫りとなった。また、今後の原子力発電の利用に関する意識では、「使っていく」「どちらかといえば使っていく」を合わせた肯定的意見が42.0%、「やめていく」「どちらかといえばやめていく」を合わせた否定的意見が35.0%となり、肯定的意見がやや上回った。また、「わからない」は22.6%だった。属性別では、男性で肯定的意見が多く、女性では否定的意見が多い傾向が見られた。年齢別では25〜44歳で肯定的意見が比較的高い一方、24歳以下では「わからない」とする回答が目立った。また、原子力に関する情報保有量が多い層ほど肯定的意見が多く、保有量が少ない層では「わからない」とする割合が高い傾向が確認されるなど、情報量の差が意識形成に影響を与えている実態が浮き彫りとなった。また、経年変化では、再稼働に対する不安を背景とした否定的選択肢は減少傾向にあり、必要性や規制基準への適合といった観点から再稼働を評価する動きが増加しているが、「原子力発電をやめていく」とする層ほど、「災害対策」や「防災体制」、「大事故への不安」、「高レベル放射性廃棄物」、「福島第一原子力発電所の廃炉」といった項目に強い関心を示している。特に、高レベル放射性廃棄物への懸念が顕著となっていることがわかった。これらの結果から、再稼働に対する理解を得るためには、不安や否定的認識に関わる項目に対する情報提供の充実が重要であることが示唆された。原文財団では継続的な調査を通じて原子力を巡る社会認識の変化を把握し、今後の情報発信の在り方の検討に生かす考えだ。
- 25 Mar 2026
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原産協会 公立中でボードゲーム活用授業
日本原子力産業協会はこのほど、愛知県知立市立 知立南中学校でエネルギーミックスをテーマとした同協会制作のボードゲーム、「エレクトロネーション」を活用した特別授業を実施した。公立中学校のエネルギー教育において、主体的な学びを引き出す新たな試みとして注目される。今回の授業は、同中学校で技術科を担当する矢田真士教諭が、「エネルギーや電力の問題を生徒にとって自分ごととして考えさせたい」との思いから、同協会に相談したことをきっかけに実現した。矢田教諭と同協会はエネルギー単元全体の授業の進め方の工夫やオリジナルのパズル教材の開発など準備に約1年を費やした。生徒は事前に教科書に基づく基礎学習とパズル教材を通じて、エネルギーに関する理解を段階的に深め、「エレクトロネーション」に臨んだ。当日は中学2年生約30人が参加し、2人1組のチームに分かれてゲームに取り組んだ。「エレクトロネーション」では、電力供給の確保と温室効果ガス(GHG)排出制約の両立を図りながら、発電設備の建設や資源調達、技術投資などを選択していく。資源価格の変動や自然環境が与える制約などの要素も組み込まれており、複雑な意思決定を体験できる設計となっている。ゲーム序盤はルール理解に戸惑う様子も見られたが、進行とともに生徒同士で活発な議論が生まれた。「再生可能エネルギーは発電が不安定だがGHG排出がない」「石炭はコスト面で有利」といった意見が交わされ、発電方式ごとの特性を踏まえた選択が行われていた。原子力についても、初期投資の大きさに慎重な姿勢を見せる一方、ゲーム終盤にGHG排出制約が強まる中で原子力の優位性を実感する場面もあり、エネルギーミックスの考え方への理解を深めていた。加えて、ゲーム内で登場する放射性廃棄物処分場の重要性も感じたようだった。授業後のアンケートでは、85%の生徒が「とても楽しかった」と回答し、「楽しかった」を含めると全員が肯定的に評価した。また、電力や エネルギーへの関心についても、約9割の生徒が「興味が高まった」と回答。「発電方法の長所と短所を考えて組み合わせることが大切だと分かった」「CO₂排出を抑える難しさを実感した」などの声が寄せられた。今回の取り組みはボードゲームを活用した体験型学習により、生徒の主体的な思考を促すエネルギー教育の一例を示すものとなった。単なる知識の習得にとどまらず、複数の選択肢の中で最適解を考える力を育む手法として、今後の展開が期待される。
- 24 Mar 2026
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原子力人材育成の中核に 原子力委員会で「UTR-KINKI」の教育・研究の取組みを報告
原子力委員会は3月3日の第9回定例会議で、近畿大学の研究用原子炉「UTR-KINKI」を活用した教育・研究の取組みについて、同大学原子力研究所の若林源一郎副所長(教授)から説明を受けた。今回の報告は、同大学の取組みを共有し、エネルギーの安定供給やカーボンニュートラルの実現に向けた安全な原子力研究の在り方を検討するため、議題として取り上げられた。UTR-KINKIは、同大学原子力研究所が保有する実験用の原子炉であり、教育、訓練及び研究用に広く活用されている。「UTR」とは「University Teaching and Research Reactor」の頭文字を取ったもので、研究用として設計されたため、定格熱出力が1W(約0.24カロリー毎秒)という小出力の原子炉である。放射線量は非常に低く、運転中でも炉心を直接観察できるほか、周辺で見学や作業を行うことができる点が特長のひとつだ。1961年に運転を開始した日本初の教育用原子炉だが、元々は、1959年に東京・晴海で開催された東京国際見本市にて、米国原子力委員会が原子力の平和利用を紹介するデモンストレーションとして展示した教育用原子炉が原型となっている。この展示を見学した近畿大学初代総長の世耕弘一氏が、「日本の将来のエネルギー問題の解決には原子力が不可欠である」との強い信念から、大学で原子力技術者を育成する必要性を感じたことがきっかけとなり、同原子炉の導入が決まったという。現在、日本の大学が保有する研究・教育用原子炉は、近畿大学の同1基と、京都大学の研究用原子炉KURと臨界集合体実験装置KUCAの計3基のみ。さらに、2026年4月にはKURが運転停止となる予定であることから、若林氏は「今後、近畿大学の原子炉の役割がさらに重要になる」と述べた。若林氏によると、近畿大学では、他大学で原子力を専攻する学生らにもUTR-KINKIを活用する機会を提供しているほか、中高生を対象とした研修会、理科の教員向け研修、企業研修、外国人研修などで幅広く利用されており、年間の見学者は約1,000人にのぼるという。また、「特に中高生向けの研修会では、定員を大きく上回る応募があり、原子力分野に関心を持つ若者が多いことがうかがえる」と述べた。そして、UTR-KINKIは研究機関の研究者にも施設を開放しており、放射線検出器の開発研究での利用が多く、その他、医療用装置の開発や福島第一原子力発電所の廃炉研究などにも役立てているという。また、同大学では現在、UTR-KINKIにおける高濃縮ウラン燃料の撤去及び低濃縮化が進められていることにも言及。これは、2022年9月に、核不拡散・核セキュリティの更なる強化に向け、日米間が連携していくことで一致した声明に基づくもので、今後も近畿大学では、文部科学省と協議しながら、低濃縮化を進めつつ同原子炉の運転を継続する方向で進めているという。若林氏は、UTR-KINKIは日本の原子力教育にとって重要な教育インフラであり、「こうした施設を新たに整備することは容易ではない」と強調。そのうえで、「既存施設をできるだけ長く維持し、教育と研究に活用していくことが重要だ」と述べた。一方で、原子炉施設の維持は私立大学にとって大きな負担となっているほか、ANECなどの支援制度はあるものの、主に学生支援にとどまり、「施設維持や人員への直接的支援は十分ではない」とコメント。同インフラの維持は一大学だけの問題ではないと述べ、国全体の課題として、政府や産業界による支援が必要だと訴えた。
- 17 Mar 2026
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NUMO 教育関係者を対象とした全国研修会を開催
原子力発電環境整備機構(NUMO)は3月1日、全国の教育関係者を対象とした「全国研修会」を日本科学未来館(東京都江東区)にて開催した。この日は、全国から23団体・178人の教育関係者が一堂に会した。 NUMOでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業について、学校の授業で扱う際の教材研究や授業づくりを支援する「授業研究支援事業」を長年実施している。全国研修会は、その取り組みの一環で、今年度で11回目の開催となった。学校の教諭らが児童・生徒に授業内容を分かりやすく伝えるための切り口や工夫、教材研究の成果などが共有され、現場で活用できる知見を持ち寄る機会となっている。 研修会の冒頭、挨拶に立ったNUMOの山口彰理事長は、今年度の授業支援事業の実績として、約400名の教育関係者の協力によって、約500クラス、約5万2,000人の児童・生徒に授業が実施されたことを報告。関係各位に改めて謝意を述べた。 研修会ではまず、「高レベル放射性廃棄物の地層処分 これからの授業展開の可能性~学校教育の新たな潮流を踏まえて~」をテーマにパネルディスカッションを開催。その後、教育関係者による授業実践や取組みの紹介が行われたほか、会場では各ブースでポスターセッションも行われた。ポスターセッションに出展した日本原子力産業協会の担当者は、出展の目的について「協会の活動や制作している冊子などのツール、見学会、ボードゲームといった取組みを知ってもらう場とするとともに、先生方と直接会話できる貴重な機会として例年参加している」と説明した。会場では、今夏(2026/8/3)に予定している教員向け福島第一原子力発電所見学会に関心を示す声が寄せられたほか、展示していたボードゲームにも多くの関心が集まったという。同担当者は「実際に授業で使ったことがあるという先生もおり、印象に残った」と振り返った。研修会終了後、山口理事長は、教育関係者らのプレゼン(口頭発表)を振り返り、地層処分そのものではなく関連する題材をきっかけとする授業の工夫について言及。「エネルギーや環境といった広いテーマを土台に据えたり、クリアランス金属など身近なテーマを入り口にする発想は非常に良い切り口だ」と評価した。そして、参加した教員らの教材研究の水準の高さや多様なアイデアに感銘を受けたと語った。さらに地層処分が廃棄物問題などを含む横断的なテーマであることにも触れ、総合的な学習などの枠組みで扱う意義を指摘した。また、地層処分は社会科や理科の授業で扱う内容であることに加え、健康影響の観点から保健体育とも関係する分野だと指摘。出前授業など外部の専門機関との連携についても触れ、学校教育の中で専門家が関わり、継続的に情報提供できる仕組みが重要だとの認識を示した。
- 05 Mar 2026
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NUMO SNS配信番組でフィンランド特集
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、マイナビニュースのX(旧Twitter)が放送する家族会議型バラエティー『竹山家のお茶の間で団らん』にて、第7弾となるタイアップ企画動画を、1月30日までに公開した。2022年度からシリーズで配信している同番組の21回目の放送となった今回は、フィンランドが舞台だ。「竹山家inフィンランド 世界一幸せな国を巡る」と題し、同番組MCのカンニング竹山氏が、街を走るトラムやサウナ、地元のレストランを訪ねるなど観光の要素を交えながら、同国が抱えるエネルギー問題に触れ、環境について考える構成となっている。また、クイズ形式の企画も盛り込み、楽しみながら視聴できる内容に仕上がっている。スタジオでは、「竹山家」メンバーの篠田麻里子さん、越智ゆらのさんの他に、新沼凛空さん、栗栖あに華さん、宝持沙那さん、松田実桜さんがゲスト出演している。高レベル放射性廃棄物の世界初の地層処分場「オンカロ」が試験操業中の同国では、現在、本格操業に向けて最終局面を迎えている。番組では、カンニング竹山氏がオンカロの立地するユーラヨキを訪問。町長へのインタビューを通じて、原子力関連施設の立地を契機に同町で産業集積が進んでいる現状などを紹介した。さらに、事業主体であるポシバ(Posiva)社やオンカロを取材し、処分地決定に至るまでのプロセスや課題、将来の地域ビジョンについて、竹山氏ならではの分かりやすい語り口で伝えている。
- 30 Jan 2026
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増井理事長 柏崎刈羽6号機の再稼働や中部電力データ不適切事案に見解
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は1月23日、定例記者会見を行った。今年4月に開催予定の第59回原産年次大会の詳細を公表したほか、昨年12月に自身が参加した原子力小委員会での発言内容についても報告。会見後半では柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)の再稼働や、中部電力における基準地震動策定データの不適切な取扱事案などに関する質問にも応じた。まず増井理事長は、第59回原産年次大会のテーマを「原子力の最大限活用を支える人材戦略」とし、4月14日、15日の2日間にわたって開催する旨を紹介した。今回の大会は3つの柱を軸に構成され、海外からゲストを招いて国際的な視点から原子力分野の人材課題を議論するとともに、最新技術を活用した省人化や業務効率化に関する国内外の事例紹介、さらに多くの学生の参加を促し、原子力業界に対する率直な受け止めや意見を直接聞く場とする方針を示した。次に増井理事長は、昨年12月の原子力小委員会で議論されたGX行動指針の改訂をめぐり、原子力分野に関する3つの意見を表明したと説明した。1点目に、原子力発電の将来像について、中期と長期の二段階で明確に位置付ける必要性を指摘し、産業界が長期的な展望を持てるような目標設定を求めた。2点目に、次世代革新炉の開発・建設に関し、投資回収を可能とする制度設計や政府の信用力を活用した融資など、実効性ある制度構築の必要性を訴えた。3点目に、人材確保や育成について、GX行動指針の共通重要課題に位置付け、すでに設定された6つの重要項目に追加する形で「第7の柱」として整理することを提案したという。会見の後半、記者との質疑応答・意見交換では、柏崎刈羽6号機の再稼働に関する質問が寄せられた。同6号機の再稼働に伴う警報のトラブルについて増井理事長は、警報の事象は2つあるとし、「1つ目は起動前の制御棒引抜試験にて、2つ目は原子炉起動後の制御棒を操作する過程で起きた」と整理した上で、「前者は運転開始時の設定エラー、後者は部品の故障に近いものと推定している」とコメント。その上で、「警報が出たこと自体が直接安全性に影響を及ぼすものではないが、通常とは異なる状態である」と説明し、東京電力に対しては、今後も慎重な姿勢で作業を進めること、少しでもリスクがある事態に直面した場合には、安全最優先で停止する対応が適切だとの考えを示した。また、中部電力のデータ不正事案について増井理事長は、原因は調査中であるとし断定的な評価は避けるとした上で、調査の焦点として、①不適切なデータ操作に至った「動機」、②データを扱っていた担当者の範囲や、国の審査会合に提出する過程で、どの程度の関係者が関与し、どのような形で意思決定が行われたのかという「構造上の問題」、③こうした事案を招いた背景としての「職場の環境」の3点を挙げた。そのうえで、増井理事長は「中部電力には、しっかりと調査を進めてほしい」と述べ、徹底した原因究明を求めた。
- 27 Jan 2026
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岩手県一関市で除染土の埋め立て工事が開始 岩手県内で初
岩手県一関市は1月8日、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の影響を低減するための除染作業で発生した、除去土壌(以下:除染土)の埋め立て処分工事を開始した。除染土の埋め立ては、岩手県内で初の事例となる。一関市ではこれまで、公園、スポーツ施設、教育施設など公共施設366か所の敷地内に除染土を埋設保管してきた。しかし2025年3月、国が「福島県外における除去土壌の埋立処分に係るガイドライン」を策定したことを受け、同市は同ガイドラインに基づき、除染土を恒久的に埋め立て処分する方針を決定。昨年12月には、市のウェブサイトで工事の実施概要を公表していた。今回の埋め立て処分では、市内の花泉運動公園多目的競技場と室根支所資材置場の2か所を処分場所に指定。工期は2026年3月まで、事業費は544万円(2025年度)とされている。来年度以降は、教育施設など子どもが日常的に利用する施設から優先的に、除染土の移動と処分を進める方針だ。除染土をめぐっては、2025年7月、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で保管されていた除染土が、首相官邸の前庭や霞が関の省庁敷地内の花壇などで再利用され、社会的な関心を集めた経緯がある。国が定めた同ガイドラインでは、福島県外で発生した放射性セシウム濃度が比較的低い除染土については、地下水汚染防止の観点から、容器への封入や遮水工といった特別な対策は原則不要とされている。一方で、埋め立て作業中の粉塵の飛散や流出を防ぐため、散水やシート養生などの抑制措置を講じることが求められるほか、悪臭、騒音、振動によって周辺の生活環境に影響が生じないよう配慮することも規定されている。また、埋め立て場所には囲いを設け、除染土の埋め立て場所であることを明示する表示を行う必要がある。作業終了後は、開口部をおおむね30センチ以上の土壌などで覆って閉鎖するとともに、敷地境界で空間線量率を定期的に測定し、除染土の量や放射能濃度などの記録を作成・保存することが義務付けられている。
- 13 Jan 2026
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原子力新年の集い 三村会長が3重点示す 赤澤経産相 安全最優先強調
日本原子力産業協会は1月7日、「原子力新年の集い」を都内で開催。会員企業・組織、国会議員、駐日大使館関係者ら759名が参加し、親睦を深めた。冒頭あいさつに立った三村明夫会長は、年末年始の電力の安定供給に尽力した全国の関係者に謝意を示した上で、昨今、エネルギー安全保障と脱炭素の両立に向け、世界的に原子力活用の機運が高まっているとの認識を示した。<年頭挨拶はこちら>昨年11月のCOP30では「原子力三倍化宣言」への支持が拡大し、金融機関やIT企業など幅広い分野で原子力活用を後押しする動きが広がっていると指摘。国際金融機関の姿勢変化により、原子力プロジェクトへの資金調達環境も改善しつつあると強調した。国内では、原子力を巡る動きにも具体的な前進が見られたと指摘した。昨年、関西電力が美浜発電所の後継機に向けた自主的な現地調査の再開を発表したほか、北海道電力の泊3号機や東京電力柏崎刈羽6・7号機の再稼働を巡っては、知事の理解が示されるなど、再稼働や新設に向けた環境整備が着実に進みつつあるとの認識を示した。一方で、こうした取り組みを実現に結び付けるためには、安全確保を大前提に、地域の理解を得るための丁寧な説明と対話を重ねていくことが引き続き不可欠だと強調した。また、高市政権が昨年11月に発表した「強い経済」を実現する総合経済対策で、原子力発電所の再稼働や次世代革新炉の実現が国家の成長戦略の中核に位置付けられたことを踏まえ、原子力がわが国の産業競争力や技術開発に果たす役割はかつてなく大きくなっていると指摘した。続いて三村会長は、原子力の最大限活用に向け、今後特に重要になる取組みとして次の3点を挙げた。1点目に、新規建設の早期実現に向けた事業環境整備を挙げ、資金調達や投資回収の確保、サプライチェーンの維持・強化が不可欠だとした。2点目には原子力産業の持続的発展を支える人材の確保・育成を挙げ、国際的な視点も踏まえた議論を通じて、将来を担う人材基盤の強化を図る考えを示した。3点目は、国際連携の推進を掲げ、国際機関や海外産業団体との協力を通じて、世界的な原子力活用の機運を維持するとともに、日本の原子力産業の海外展開を後押ししていく方針を示した。来賓挨拶に立った赤澤亮正経済産業大臣は、冒頭、浜岡原子力発電所の基準地震動策定を巡る不適切事案に言及し、国民の信頼を揺るがしかねない重大な問題として、厳正な対応と再発防止を求める考えを示した。その上で、世界的に原子力の重要性が高まっているとの認識を示し、第7次エネルギー基本計画に基づき、安全性と地域理解を最優先に、原子力発電所の再稼働や次世代革新炉の導入を進める方針を改めて強調した。また、原子力産業の持続的発展に向け、サプライチェーンの維持・強化や人材育成への支援に政府として全力で取り組む姿勢を示し、東日本大震災から15年目の節目を迎える今年、着任前後に福島を訪れた経験に触れ、現場主義のもと、復興と安全な廃炉に最後まで責任を持って取り組む決意を表明した。続いて登壇した電気事業連合会の安藤康志副会長は、浜岡原子力発電所の基準地震動策定を巡る不適切事案について、原子力事業への信頼を損なう重大な事案として深刻に受け止めていると述べ、電力会社を代表して謝罪した。その上で、昨年は国際的に原子力回帰が進み、第7次エネルギー基本計画で原子力の価値が改めて確認された重要な年だったと振り返った。そして、泊発電所や柏崎刈羽原子力発電所で再稼働に向けた進展が見られたことを評価し、今後もさらなる安全性の向上を追求するとともに、地域住民からの理解と信頼を得るため、丁寧な取り組みを着実に続けていく考えを示した。
- 08 Jan 2026
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千葉県立東葛飾高が最優秀賞 2040年のエネルギーの在り方を提言
日本原子力文化財団(原文財団)は12月14日、高校生らによるエネルギー・原子力に関する課題研究活動の成果発表会を東京大学で開催した。同発表会は電気事業連合会との共催で、今年度で8回目の開催となる。原文財団は、全国の高等学校などを対象に、エネルギーをテーマとした課題研究活動を支援する事業を展開。専門家による講義や参加校同士の交流、成果発表会を通じて、学生の主体的な学びと発信力の育成を目指している。今年度も、全国から多数の応募があり、その中から選ばれた10校が発表会に登壇。約5か月間にわたる研究成果を、プレゼン形式で発表した。また、参加生徒らは発表会前日、東京都市大学原子力研究所の視察見学会にも参加している。今年度は、昨年2月に策定された第7次エネルギー基本計画において、原子力と再生可能エネルギーの「最大限活用」が明記されたことを受け、「30歳の私へ~日本のエネルギーをどう考えますか~目指すべき2040年のエネルギーの姿」をテーマに設定。2040年時点の日本のエネルギー構成を考え、その可能性や課題について調査・研究を行った。最優秀賞には千葉県立東葛飾高等学校(3名)が選出された。同校は「千葉エネルギー革命~再エネ×安定供給~」をテーマに、発電量が全国最多の千葉県(2023年・2024年)において、火力発電偏重の現状を踏まえつつ、温室効果ガス削減とエネルギー自給率の向上を両立する電源構成の在り方を模索。そして、再生可能エネルギーの導入拡大と電力の安定供給をどう両立するかを研究目的に据えた。研究では、千葉県が洋上風力発電のポテンシャルが高い地域である点に着目。洋上風力の導入拡大に向けた現状と課題を把握するために、洋上風力促進区域に指定されている銚子市や、銚子市漁業協同組合らへの取材を通じ、関連産業の促進や雇用の増加、固定資産税の増収による地域経済への波及効果を確認した。一方で世界的なインフレによるコスト増や、秋田県での調査を通じ、海域ごとに異なる漁業形態を踏まえた関係者との合意形成、理解促進の難しさといった課題が浮かび上がったという。これらを踏まえて同校は、洋上風力発電の導入拡大には、国による建設段階から支援強化、事業者側の予期せぬコスト増による撤退を防ぐ仕組み作り、また、漁業リスクへの国家補償の促進を提言。そして、電源構成については、第7次エネルギー基本計画で示される原子力20%の位置づけを踏まえつつ、風力発電の比率を8%に引き上げるなど、現実的なエネルギーミックスの提案と適切な国による支援によって、持続可能な未来を築くことができると結論付けた。審査委員長を務めた東京大学大学院の飯本武志教授は、「とても分かりやすく、論理的で、政策的視点を持った良いプレゼンテーションだった」と講評。千葉県が全国最大の発電量を有する点を出発点に据え、そこから研究を組み立てていったテーマ設定や研究プロセスについても、「ストーリー性があり、完成度が高い」と高く評価した。そして、多くの関係者にヒアリングを行うなど、主体的に活動に取り組んだ姿勢が強く印象に残ったとコメントした。なお、優秀賞は栃木県立大田原高等学校、優良賞は山口県立宇部商業高等学校、審査員特別賞は市立札幌開成中等教育学校が選出されている。
- 06 Jan 2026
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電気事業連合会 次世代層向けエネルギー教育コンテンツを公開
電気事業連合会(電事連)は12月12日、中学生を主な対象とした次世代層向け教育コンテンツ「エネルギーアカデミー ~エネルギーの資源篇~」と題した動画を、電事連のエネルギー・環境教育支援サイト「ENE LEARNING(エネラーニング)」と公式YouTubeチャンネルにて公開した。エネルギー資源の有効活用の重要性という切り口から、電力の安定供給のために、限りある資源をどのように活用していくかが重要であるかを解説している。なお、同動画は、学習指導要領における中学3年生の理科の単元に沿って作成されている。前述のENE LEARNINGにて、ワークシートや指導案も公開された。同動画では、火力・再生可能エネルギー・原子力発電等各エネルギー資源の可採年数のグラフを用いて、それぞれの役割や長所を整理した上で、需要と供給を一致させる電力システムの重要性を解説。安定供給の観点から複数の電源を組み合わせるエネルギーミックスの重要性も改めて紹介している。また、原子燃料サイクルの仕組み、高レベル放射性廃棄物等の最終処分といった原子力のバックエンドの概要を、専門家の解説と現地取材を交えて分かりやすく紹介。動画内ではエネルギーアカデミーの生徒役が、ユニバーサルエネルギー研究所代表取締役社長の金田武司氏とともに、日本原燃の六ヶ所原燃PRセンターを訪問したほか、原子力発電環境整備機構(NUMO)の職員の解説を通して、地層処分の考え方や国内外における取組み状況が紹介され、原子燃料サイクルの仕組み等を分かりやすく学べる構成となっている。電事連は、次世代を担う若年層に対し、エネルギーを「使う」だけでなく、「資源としてどう活用し、使い終えた後をどう考えるか」という視点を伝えることで、エネルギー問題を自分事として考えるきっかけに繋げていくことを狙いとしている。今後もエネルギーを巡る課題について、特定の立場に偏ることなく情報発信を強化していく考えだ。
- 17 Dec 2025
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「今年は原子力産業界にとって大変良い年」増井理事長 定例会見で1年を総括
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は12月12日の定例記者会見で、同協会が手掛ける業界動向調査である「原子力発電に係る産業動向調査2025」の報告や、先月ブラジルで開催された「COP30」、フランスで開催の「WNE2025(世界原子力展示会)」への参加報告等を行った。はじめに増井理事長は、「原子力産業動向調査2025」の結果について、景況感を示すグラフは全体として右肩上がりで推移しており、「原子力産業がやや元気を取り戻してきている状況が読み取れる」と指摘した。実際、景況感は年々改善しており、1年後の見通しについても多くの企業が「さらに良くなる」と回答するなど、産業界として今後の回復基調を見込んでいることが明らかになった。一方で、課題として人材不足を挙げ、同調査によると「人手不足を感じているか」との問いに約8割が「感じている」と回答。「当該年度に十分な人材を採用できたか」という設問でも、「課題が残った」とする企業の割合が年々増加しているとし、「人材確保が難しくなっている実態が浮かび上がった」と述べた。但し、今後の人材採用や配置について「拡大する」と回答した企業も増えており、「人材の需要は引き続き高い水準にある」との見方を示した。続いて、11月にブラジルのベレンで開催されたCOP30への参加を報告。大会全体を通して、原子力がCOPの場で重要な地位を担うようになってきたことを強く感じたという。また、フランスのパリで開催されたWNE2025への参加報告では、日本として初めて「日本パビリオン」を設置し、9社が参加したことを紹介。日本企業が一体となって存在感を示す場となり、会期中は企業間交流や製品紹介が活発に行われ、各社のビジネス機会の拡大にもつながったとの認識を示した。今年最後の定例会見にあたり、増井理事長はこの1年を振り返り、「原子力産業界にとって大変良い年だった」と総括した。とりわけ、2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画で「原子力の最大限活用」が明記され、「原子力依存度低減」という文言が削除された点について、「業界全体に前向きな勢いをもたらした」と評価した。
- 16 Dec 2025
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エネ庁 人材確保に向けた司令塔機能の創設へ 原子力委員会で報告
原子力委員会は12月2日、今年9月に経済産業省で開催された「第1回原子力人材育成・強化に係る協議会」での議論を踏まえ、資源エネルギー庁・原子力政策課と、原子力産業界の人材育成の現状と課題について意見交換を行った。今後、資源エネルギー庁では海外事例に倣い、原子力人材育成を統括する「司令塔機能」を担う組織の立ち上げを目指すという。「原子力人材育成・強化に係る協議会」は、原子力人材の確保・育成が難化している現状を踏まえ、課題解決に向けた取り組みを具体化していくため、経済産業省らが今年9月に設置した。同協議会では、産業界の現状把握や各国事例の共有、政策立案に向けた議論を定期的に実施する。同日の原子力委員会では、先般の第1回同協議会で「原子力人材」は産業の裾野の広さゆえに、必要となる人材の分野や階層が多岐にわたる点が共有されたこと。また、電力事業者やプラントメーカーは、人材状況の把握や育成・確保の取り組みが一定程度進んでいる一方、より現場に近い領域である機器・部素材のサプライヤー、建設・工事を担う企業では、人材の現状把握や育成・確保が十分とは言えず、課題が残るとの認識が示された。また、人口減少が進む中、すべての領域で人材確保を実現することは現実的ではないとの意見もあり、企業単独では十分に育成・確保が難しい専門性の高い人材など、今後優先的に育成すべき領域を見極める必要があると指摘された。さらに、企業単独で人材育成・確保の具体的な施策を進めるのではなく、省庁や関係機関、企業らが横断的に連携して効率化・高度化を図るべきだという考えが示され、フランスの先行事例が紹介された。同国では、政府、産業界、労働組合の三者から成る原⼦⼒産業戦略委員会(CSFN)が原⼦⼒産業全体を俯瞰し、仏原子力産業協会(GIFEN)やフランス電力(EDF)らが、全体戦略に基づき個別の施策を実⾏する構図が確立されている。GIFENでは人材需給ギャップ分析の実施、CSFNでは産官学労の主要関係者の意⾒集約や利害調整を⾏われているという。なお、同協議会では今後、海外事例を参考に、原子力人材育成を統括する「司令塔機能」の具体像について議論を深めていく。司令塔組織が備えるべき役割としては、産官学それぞれの現状把握を行う機能、業界動向を踏まえた中期的な育成計画の策定、さらにその計画の実行状況を継続的にフォローアップする仕組みが挙げられている。産業界の現状把握の確認方法については、⽇本原⼦⼒産業協会が手掛ける「原⼦⼒発電に係る産業動向調査」などが紹介されている。
- 09 Dec 2025
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東京電力 東通ヘッドオフィスの運用開始 地域と繋がる拠点に
東京電力は12月1日、青森県の東通村に地域共生の拠点として、「東通ヘッドオフィス」を開設した。東京電力は、東通1号機(ABWR、138.5万kW)の工事再開に向けた準備を進めているほか、同2号機(ABWR、138.5万kW)を計画中である。同社の青森事業本部は、2019年7月の設置以来、東通原子力建設所内のオフィスを間借りして業務を行ってきたが、機能・人員の一層の強化が必要と判断。今回のヘッドオフィス開設により、地域に根ざした原子力事業の推進、地域の持続的な発展への貢献を目指す。オフィス棟と社員寮の入った住居・交流施設棟から成る同施設は、それぞれ、「nooqu-OFFICE(ノークオフィス)」、「nooqu-LIVING(ノークリビング)」と名付けられた。施設名の「nooqu〈ノーク〉」とは、n(=next 次なる)、∞(=infinity持続可能な)、q(=quest 探求・追求)、u(=unite つなげる、まとめる)を組み合わせた造語だ。「これからの持続可能な地域づくりを追求し、地域とつながる施設でありたい」という想いを込めて、この名称に決定したという。ノークオフィスには、オフィス機能に加え、シェアオフィスや屋内広場など多目的に利用できる空間を設けた。屋内広場には、約200インチの大型LEDスクリーンを備え、季節に応じたイベントなど、多様な用途に対応する。誰もが気軽に集まり、地域とのつながりを育む拠点としての活用を見込む。また、災害対策として、太陽光パネルや蓄電池、非常用発電機を設置し、有事の際には地域防災にも活用できる設備を備えている。ノークリビングの2・3階は社員寮となっているが、社員食堂やコインランドリーなど一部施設を地域住民に開放する。同社は同施設のオープンを機に、地域住民のさらなる利便性向上と交流促進に貢献し、地域に根ざした原子力事業の展開、地域の持続的な発展に向けた取り組みを進めていく。
- 04 Dec 2025
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規制庁 プラントシミュレータの更新に10.9億円
原子力規制委員会は11月26日の定例委員会で、「原子力規制庁職員に係る研修の現状及び今後の取組」について、原子力安全人材育成センターの竹本亮副所長より説明があり、今後の展望を含め意見交換を実施した。原子力安全人材育成センターとは、審査官や検査官らを育成するために創設された人材育成の専任機関のこと。2014年の開設以来、昨年度末までに累計1,405コース、2,366回の研修が実施されてきた。同センターは常勤職員が44名、非常勤職員が23名の計67名体制(2025年11月現在)で運営されており、行政基礎研修、国際性向上研修、eラーニング、基本知識習得研修、専門性向上研修の5つのカテゴリーに分け、計183コースを提供している。竹本副所長によると、新規採用職員には、「職員間のコミュニケーションの土台となる共通の言語が必要」という規制委の人材育成方針に基づき、法令、放射線、原子力技術などの体系的な教育を入庁初期から実施しているという。2年目以降は、規制対象施設に係る原子力規制事務所での業務経験を通じて実践力を養い、3年目以降は、階層別の研修プログラムを通して、継続的な人材成長を支える仕組みを整えている。また、語学研修にも重点を置き、国際会議の参加レベルとされる英語力を目指す体系的教育を実施していると説明した。さらに同センターでは、原子力発電所の中央制御室を模したプラントシミュレータ(PWR・BWRどちらにも対応)が導入されている。昨年度、このシミュレータを活用した研修を、延べ246名が受講したという。座学に加え、通常運転から設計基準事故、過酷事故までの挙動を体系的に学ぶ仕組みが整備されている。なお、規制委では11月28日に閣議決定された2025年度の補正予算案にて、これら人材育成のためのプラントシミュレータ更新に向け、10.9億円が新たに計上された。竹本副所長は今後の取組として、検査や審査など規制能力の向上のために、「引き続き、総合的かつ実践的な研修プログラムを行う」と語った。そのために、外部の専門的・多角的な視点を積極に取り入れた研修、シミュレータや模型を用いた実践教育の継続、基本・中級・上級の資格制度に基づく段階的スキル向上を進める考えを示し、「原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守る」という使命を実践できる職員の育成に全力で取り組むと結んだ。その後の質疑応答では、自然ハザード、とりわけ地震・津波に関する研修の位置付けに関した質問があり、竹本副所長は「耐震・津波審査部門の協力により、原子力規制庁全職員向けの基礎研修と、審査官向けの高度な専門研修を体系的に実施している」と述べ、大学教授による応用研修などを含め手厚い教育体制が整っていることを示した。
- 03 Dec 2025
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新潟県 柏崎刈羽6、7号機の再稼働を容認へ
新潟県の花角英世知事は11月21日の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)の再稼働に同意する意向を表明した。判断は12月の新潟県議会に諮った上で、国へ正式に報告する。知事は同意の前提として、国に対して次の7項目を確実に対応し、責任を持って確約するよう求めた。国へ求めた7項目①県民への丁寧な説明の徹底原子力の必要性・安全性について、取り組み内容が県民に十分伝わっていないとの意識調査結果を踏まえ、国と東京電力に対し改めて丁寧な説明を要請。②新たな知見に基づく安全性の再確認最新知見が得られた場合、迅速に安全性を再確認するよう要請。③緊急時対応での国の関与強化避難・屋内退避で民間事業者では対応困難なケースに備え、国の実動組織が確実に行動できるよう、平時から関係機関の連携強化を要請。④避難道路・退避施設、豪雪対応の集中的整備原子力関係閣僚会議が示したインフラ整備を、新潟の豪雪事情も踏まえ早期かつ集中的に実施するよう要請。⑤使用済み燃料処分、武力攻撃対策、損害賠償の確保県民の大きな懸念である課題へ、国が責任を持って対応するよう要請。⑥東京電力の信頼性回復依然として十分に信頼が回復していないと指摘。国が設置する「監視強化チーム」の実効性と、活動成果の確実なフィードバックを要請。⑦UPZ拡大と交付金制度の見直しUPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したにもかかわらず、電源立地対策交付金制度が見直されていない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請。花角知事は容認判断の理由として、同6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格し安全性が確認されたこと、原子力発電が優れた安定供給力と国産化率を有し、国が原子力の最大限活用を推進する方針を示していること、同発電所の再稼働が東日本の電力供給構造の脆弱性や電気料金の東西格差を是正し、脱炭素電源を活用した経済成長にも寄与するとの見通しを示し、「国民生活と国内産業の競争力を維持・向上させるためには、柏崎刈羽原子力発電所が一定の役割を担う必要があるとの国の判断は、現時点において理解できる」と述べた。このタイミングで容認となった背景について花角知事は、「昨年3月に経済産業省から理解要請を受けて以来、長い時間をかけて関係各所と議論した。リスクを完全にゼロにはできないが、ただ漠然とした不安や合理性のない理由で再稼働を止めることはできないと考えていた」と説明。また、県民意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働を肯定する意見が増加する傾向や、20~30代の若年層で賛成する傾向が強いことが示された一方、依然として原子力に不安を抱えている県民が多いことも明らかになった。その上で知事自身が、今月半ばに福島第一原子力発電所を視察し、事故の影響や復旧作業の現状を直接確認した事を踏まえ、「原子力規制委員会が新規制基準を策定し、その知見と教訓が柏崎刈羽原子力発電所にも適用されている」と強調。19日の定例知事会見では発電所内の新しい技術や設備の改善にも触れ、「災害発生時の柔軟な対応を可能にする可搬型(モバイル型)設備の充実は、多重防護の観点からも教訓が反映されている」と評価。また、現場で働く東京電力社員の努力についても言及し、「約5,000人の職員や協力企業の方々がチームで動く意識を持ち、コミュニケーションを重視していた。『ワンチーム』という言葉が繰り返され、意識の高さを感じた」と語っていた。また、花角知事は、自身の判断が県政全体の信頼の上に成り立つべきだとの姿勢を示し、県議会に対し、知事職継続への信任を求める意向を示した。
- 25 Nov 2025
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放射線の安全管理・環境放射能対策に貢献 14名を表彰
ラジオアイソトープの安全管理や環境放射能対策の向上に尽力し、優れた成果をあげた人物を称える「令和7年度放射性安全管理功労・環境放射能対策功労表彰」の表彰式が11月10日、原子力規制庁にて執り行われた。同表彰は、原子力安全技術センター、日本アイソトープ協会、日本分析センター、放射線障害防止中央協議会ら4団体が原子力規制委員会の後援を受けて共同主催。放射線の安全利用に関わる関係者の意欲向上と、放射線に対する国民理解促進を目的に、今年度から新設されたもの。今回は、放射線安全管理功労者11名、環境放射能対策功労者3名の合計14名に、原子力規制委員会委員長賞が授与された。表彰式の冒頭、原子力安全技術センターの石田寛人会長は、「本表彰制度は、文部科学省の後援のもと平成22年度まで実施していたが、翌年の東日本大震災を契機に中断されていた。しかし多くの要望を受け、原子力規制委員会の後援のもと再開する運びとなり、大変嬉しく思う」と述べた。そして、「原子力の安全確保は、現場の不断の努力、関係者の支援、そして規制当局との真摯な連携によって成り立つもの。長年にわたり専門性と努力を積み重ね、偉大な功績を挙げられた皆様に敬意を表したい」と受賞者を称えた。続いて挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、「放射線利用は、がん治療・画像診断、産業利用など社会基盤を支える重要な技術であり、環境放射能対策は地域の不安解消、正確な情報提供、リスクコミュニケーションの要である」と述べ、「皆さんの活動は社会の信頼を支える柱であり、規制当局にとっても大変心強い存在だ」と受賞者のこれまでの貢献に謝意を述べた。放射線安全管理功労者を代表して、製薬放射線コンファレンス世話人代表の大河原賢一氏が登壇。同氏は、製薬業界における放射線安全管理の在り方の検討や協力体制の構築、人材育成に貢献してきた自身のキャリアを振り返り、「今後も放射線・放射性同位元素の安全利用が社会に幅広く受け入れられるよう、努力を続けていきたい」と語った。環境放射能対策功労者を代表して挨拶したのは、弘前大学被ばく医療総合研究所の木村秀樹客員研究員。長年にわたり環境放射線モニタリング業務に従事してきた経験を踏まえ、「モニタリング担当者は、平常時は計画調査を淡々と進め、異常なデータが得られれば原因を徹底して究明し、有事には即時緊急体制へ移行しなければならない。今回の表彰は、そのような現場の地道な努力に光を当てていただき、大変感慨深く受け止めている」と語った。さらに、「環境放射能対策は、住民の安全と安心、そして回復のために行うものであり、出発点は常に住民のために何ができるかという問いである。その志を若い世代へ確実に引き継いでいきたい」と次世代への継承に向けて意気込みを示した。
- 17 Nov 2025
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フュージョンエネルギーの実現に向けた白書を今年度公表へ
フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)は11月6日と7日の2日間、フュージョンエネルギーの早期社会実装に向けた政策提言の詳細を検討するワークショップを開催。会員企業らを中心に20法人29名が参加し、産業界主導での戦略策定に向け活発な議論が交わされた。今年6月、政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、タスクフォースによる取りまとめを進める方針を明記。これを受けてJ-Fusionは、発電実証、商取引・規格の策定、人材育成などを中心に具体的な方向性を整理し、これら白書を今年度中にとりまとめ、政策提言へと繋げる考えだ。ワークショップの冒頭、J-Fusionの小西哲之会長は「日本にはすでに強力なフュージョンサプライチェーンが整っている。今後は単なる情報交換だけでなく、分析や戦略策定に踏み込んでいく段階」と述べ、公的部門が中心となってきたフュージョン分野が、産業界主導の新たなフェーズに移行したとの認識を示した。さらに同氏は参加者に対し、「今後のエネルギー政策の転換を支える主役は私たち産業界にある。共に素晴らしい戦略を作り上げたい」と呼び掛け、民間による積極的な関与の重要性を強調した。続いて、ゲストとして出席した内閣府の澤田和弘科学技術イノベーション推進事務局参事官は、「国のフュージョンエネルギー戦略は少しずつ整いつつあり、勢いを感じている。高市首相が掲げる強い経済の実現のための投資対象17分野にフュージョンエネルギーが選ばれたことは、まさにその好例だ」と述べた。また、「産業界、アカデミア、政策担当者が率直に意見を交わせるこのような場は非常に重要だ」と語り、同ワークショップの意義を強調。そして、「具体的な戦略を描くためには、今一歩踏み込んだ議論が必要。関係者間の緊密な連携が重要だ」と述べ、政府として高い目標の達成に取り組む姿勢を示した。
- 13 Nov 2025
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原子力と地域経済の関係を考える
上関で講演会開催山口県上関町の上関町総合文化センターで10月26日、上関町青壮年連絡協議会主催による「エネルギー講演会」が開催された。後援は日本原子力産業協会。講師にはユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表取締役社長が招かれ、「エネルギーから見た世界情勢と日本の歴史~改めて原子力を考える~」をテーマに約2時間の講演を行った。冒頭、同協議会の守友誠会長が登壇し、第7次エネルギー基本計画で原子力を最大限活用する方針が示されたことに加え、中国電力が上関町で使用済み燃料の中間貯蔵施設の立地が可能であると報告したことについて触れ、「中間貯蔵施設の建設は上関町や周辺の市町村が抱える人口減少・高齢化・厳しい財政状況といった現実を打開し、地域活性化に繋げることができる」と述べ、原子力がもたらす経済的メリットをまちづくりに生かす意義を強調した。続いて登壇した金田氏は、世界各地の経済・社会問題の背後にエネルギー問題が存在することを指摘。国家の破綻、通貨価値の暴落、停電、戦争などを例に挙げ、「ニュースで報道される出来事の多くは、エネルギーの視点から見るとその構造が理解できる」と語った。同氏は、ベネズエラで発生したハイパーインフレを取り上げ、「米国企業による石油独占に反発した国有化政策が、米国の経済制裁を招き、結果的に通貨の暴落につながった」と説明。また、ロシアとウクライナの戦争の背景にもエネルギー資源の争奪があると述べた。さらに、米国テキサス州で2021年に発生した大寒波による大停電を例に挙げ、「同州は風力発電に依存していたが、マイナス18度の寒波で風車が凍結し停止、大規模な停電が発生した。その結果、電気代が高騰し、一般家庭に180万円の電気料金の請求書が届くなど大混乱となった」と紹介。同氏はこの事例を通じて、電力自由化の落とし穴を指摘し、自由化の影響や再エネ依存のリスクについて再考を促した。また、ドイツのエネルギー政策についても「環境重視のあまり石炭火力や原子力を廃止した結果、隣国からの電力供給に頼らざるを得なくなり、ロシア産天然ガス依存が経済を直撃した」と分析した。日本については「エネルギー資源を持たず、他国との電力連系線もない特殊な環境にある」とし、「こうした現実を踏まえたうえで、安定供給と経済成長の両立を考えるべきだ」と述べ、現実的なエネルギー政策への転換を呼びかけた。講演の後半では、原子燃料サイクルの重要性にも触れ、「再処理を前提とするサイクルを維持するには中間貯蔵施設が不可欠である」と強調。国全体での一貫した政策推進の必要性を訴えた。質疑応答では、参加者から「原子力発電所敷地内にも中間貯蔵施設があるが、六ケ所再処理工場が稼働しても処理しきれない使用済み燃料があるのではないか」「上関町に施設を建てても、再処理の順番が回ってこないのでは」といった質問が寄せられた。金田氏は、「再処理工場の稼働準備は国策として進められており、長期にわたり再処理工場が動かないということは基本的にない」と説明。また、「施設は十分な容量を確保しており、満杯になっても増設で対応できる設計になっている」と述べ、燃料サイクルへの理解を求めた。
- 11 Nov 2025
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