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米新興企業 地下設置型SMRのサイトを選定
米国の新興企業ディープ・フィッション(Deep Fission)社は9月18日、自社が開発する小型モジュール炉(SMR)を地下1マイル(約1.6km)、幅30インチ(約76cm)のボーリング孔に設置する最初の3サイトとして、テキサス州、ユタ州、カンザス州を選定。共同開発プロジェクトを推進するために各拠点のパートナーと基本合意書(LOI)を締結したことを明らかにした。ディープ・フィッション社の開発する原子炉「DFBR-1」(PWR、1.5万kWe)は、原子力、石油・ガス、地熱分野での実証をベースに設計。発生した熱は地下深部にある蒸気発生器に伝わり水を沸騰させ、非放射性の蒸気が急速に地表に上昇、そこで標準的な蒸気タービンを回して発電する。検査が必要と判断された場合、原子炉に取り付けられたケーブルにより、原子炉を地表に持ち上げることが可能。モジュール設計により、出力を最大150万kWeまで拡張可能で、産業現場、データセンター、遠隔送電網、成長する商業ハブ全体を対象に柔軟に展開できるという。また既製部品と低濃縮ウラン(LEU)を利用し、サプライチェーンの合理化を追及。原子炉は地下1マイルに設置され、地下深部の地質が自然封じ込めの役目を果たす、革新的な立地アプローチにより、安全性とセキュリティを強化、地表フットプリントを最小限に抑え、コストの削減をねらう。同社のコストモデルでは、オーバーナイトコスト(金利負担を含まない建設費)の比較で、従来の原子力技術の70~80%となり、発電コスト(LCOE)はkWhあたり5~7セントと見込んでいる。2026年にはライセンスを申請予定。2028年には取得し、想定6か月の建設期間を経て、2029年秋には営業運転の開始を予定している。ディープ・フィッション社は今年8月、米エネルギー省(DOE)の先進炉の実用化に向けた「原子炉パイロットプログラム」の対象に選定され、DFBR-1の2026年7月4日(独立記念日)までの臨界達成を目指している。なお同社は、現CEOのエリザベス・ミュラー氏とリチャード・ミュラー氏の父娘が共同で2023年に設立。E. ミュラーCEOは以前、深部ボアホール放射性廃棄物処理事業を手掛けるディープ・アイソレーション(Deep Isolation)社の共同創設者兼元CEOを務めていた。ディープ・フィッション社はディープ・アイソレーション社と今年4月、先進的な地下原子炉の使用済み燃料と放射性廃棄物の管理で協力するための覚書(MOU)を締結。ディープ・アイソレーション社が特許取得済みの地下処分技術の使用許諾などについて検討する。両社は、ディープ・アイソレーション社の革新的な深部ボアホール処分技術をディープ・フィッション社の最先端の原子炉技術と統合し、顧客に長期的に実用的かつ拡張性のある廃棄物ソリューションを提供したい考え。ミュラーCEOは、「深地層処分は世界的に好まれるアプローチで、海外諸国は地下処分場の計画を進めているが、米国はこの方向でさらなる進展を図る」と指摘。ディープ・アイソレーション社のR. バルツァーCEOは、「新たな原子力技術が登場する中、廃棄物処理に対する先見的なアプローチが不可欠。原子力発電設備容量は2050年までに3億kWe以上増加すると予測されているが、過去70年間に発生した使用済み燃料を未だ永久処分していない。信頼性が高く恒久的な放射性廃棄物の処分方法の確立は、業界の長期的な成功に必要」と強調し、放射性廃棄物を地下深くに安全かつ永久に処分する深部ボアホール技術がソリューションとなるとの考えを示した。
- 10 Oct 2025
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米セントラス 濃縮施設の大規模拡張を計画
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は9月25日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)の大規模拡張計画を明らかにした。低濃縮ウラン(LEU)ならびに高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の生産を増強し、濃縮分野での米国のリーダーシップを取り戻す考えだ。拡張計画には、連邦政府からの資金提供を含めて数十億ドル規模の官民投資が必要。同社は最近、既存炉向けのLEUならびに次世代炉向けHALEUの国内生産拡大に向けた米エネルギー省(DOE)の資金提供対象の選定プロセスに提案書を提出した。連邦政府による資金提供の決定を条件に、ACPに数千台の遠心分離機を追加導入する計画だ。この拡張を見据え、セントラス社は過去12か月間に2回の転換社債取引で10億ドル以上を調達し、国内外の電力会社顧客から20億ドル以上の条件付き購入契約を締結している。この他、韓国の韓国水力・原子力ならびにPOSCOインターナショナル社による投資協力の可能性も示した。またセントラス社は、官民パートナーシップを見越して、連邦政府による選定に先立ち、採用活動を開始。建設段階で1,000人の雇用と操業段階で300人の新規雇用の創出を見込んでいる。さらに、同社がテネシー州オークリッジに有する遠心分離機製造工場における数百の雇用に加え、全米の製造サプライチェーン全体で数千の間接雇用を生み出すと予想されている。同社のA. ベクスラーCEOは、「米国がウランを大規模に濃縮する能力を回復する時が来た。今まさにその目的のため、オハイオ州で数十億ドル規模の歴史的投資を計画している。外国の国有企業への依存をやめ、米国人労働者によって構築された米国技術への投資が始まる」と強調した。オハイオ州のM. デウィン知事は、「パイクトンの施設の拡張・更新への取組みは、米国経済と国家安全保障を支える、オハイオ州の重要性を強調している。パイクトンにおけるウラン濃縮事業は冷戦初期から国防に重要な役割を果たしてきた。セントラス社の施設は、産業規模での国内濃縮体制を構築できる、現時点で唯一の技術を提供している」と拡張計画に期待を寄せた。世界の濃縮能力のほぼ100%が外国の国有企業に属しており、それらの企業は海外で独占的に製造された遠心分離技術を使用している。パイクトンの濃縮施設は、国内製造の遠心分離機と関連機器を用いて稼働する唯一の米国施設。セントラス社の遠心分離機は、オークリッジにある敷地約4万㎡の技術製造センターで独占的に製造されており、13州の米企業14社の主要サプライヤーと数十の小規模サプライヤーが製造を支えている。製造された遠心分離機と関連機器は最終組立て、設置のためにパイクトンに送られている。連邦資金拠出の選定先となった場合、その資金は海外製造ではなく国内製造に向けられることになる。
- 09 Oct 2025
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米GLE レーザー濃縮の実証試験を完了
米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社は9月16日、同社のノースカロライナ州にあるウィルミントンの試験ループ(Test Loop)施設において、大規模なウラン濃縮実証試験を完了し、レーザーを用いたウラン濃縮プロセスが商業的に展開可能であることを裏付ける豊富な性能データを収集したことを明らかにした。GLE社は、米国内における製造基盤や供給網を整備し、国内濃縮能力の確立を目指している。同社のS. ロングCEOは、「過去5か月にわたる実証試験活動により、当社は米国のウラン濃縮戦略のソリューションとなる体制を整えた。米国の電力供給の約20%は原子力に依存しており、GLEの取組みは、外国政府が支配する脆弱な燃料供給網への危険な依存からの脱却に資するものだ」と語った。なお、GLE社は2025年を通じて実証プログラムを継続し、数百キログラム規模の低濃縮ウラン(LEU)を生産する予定。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。GLE社はサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の独占行使権を保有している。GLE社はこれまでに、ノースカロライナ州とケンタッキー州で5.5億ドルを投じ、エンジニアリング、設計、製造、認可取得活動を進めてきた。現在、同社がケンタッキー州で計画しているパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)は、米原子力規制委員会(NRC)が審査中の唯一の新規濃縮施設。GLEは今年7月にPLEFの建設と操業に向けた認可の申請を完了している。この認可申請は、GLE社が2012年9月に取得した、ノースカロライナ州ウィルミントンにおける商業規模のレーザー濃縮施設のNRCの建設・操業許可に基づいている。当時は市場環境が悪く、計画は進展しなかった。GLE社は2024年11月に米エネルギー省(DOE)が所有する、ケンタッキー州のパデューカ・ガス拡散工場(PGDP)跡地に隣接する665エーカー(約2.7㎢)の土地をPLEFの建設サイトとして取得しており、PLEFサイトの良好な特性から、認可取得は早まると予想されている。認可取得後、GLE社は2030年までにPGDPにある劣化六フッ化ウラン(DUF6)の再濃縮を開始する。これは、2012年11月のDOEとのDUF6の長期購入契約に基づいている。パデューカ・サイトでは、1960年代からガス拡散濃縮プラントが民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、サイトは現在、環境復旧プログラム下にある。PLEFで20万トン以上のDUF6を再濃縮し、最大6,000tSWU/年の生産能力となる見通し。これにより、GLE社は、ウランの転換から濃縮までを一拠点で担う、米国内の包括的な供給体制を構築したい考えだ。
- 29 Sep 2025
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米オクロ オーロラ発電所の起工式を開催
米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社は9月22日、アイダホ国立研究所(INL)サイトで、初となるオーロラ発電所(オーロラ-INL)の起工式を開催した。起工式には、D. バーガム内務長官、L. ゼルディン環境保護庁長官のほか、アイダホ州のB. リトル知事、米原子力規制委員会(NRC)のB. クロウェル委員、米エネルギー省(DOE)のM. ゴフ首席次官補代理らが出席した。バーガム内務長官は、「オーロラ発電所は、クリーンかつ安価で信頼性の高い電力供給を可能にする。人工知能(AI)の進歩により電力需要が増加する中、そのニーズを満たし、世界のAI競争の最前線に留まり続けるために不可欠だ。トランプ大統領の『米国のエネルギー支配アジェンダ』下でイノベーションとエネルギー増産が実現する」と語った。オーロラは、金属燃料を使用するナトリウム冷却高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。1964年から1994年までアイダホ州で稼働した実験増殖炉Ⅱ(EBR-Ⅱ)の設計と運転をベースにしている。オクロ社は2019年にDOEからEBR-Ⅱから回収された燃料を割当てられ、INLのオーロラ燃料製造施設(A3F)で初期炉心の製造に向けて、DOE認可の4つのステップのうち2つを完了している。オーロラ-INLは、DOEが新たに設立した原子炉パイロットプログラムに参加。今年7月には、建設運転一括認可(COL)申請のフェーズ1に関する事前審査を完了し、年内にCOLの申請を予定している。北米最大級の建設・エンジニアリング企業キウィット社の子会社であるキウィット ニュークリア ソリューションズ社は、2025年7月に発表されたマスター・サービス契約に基づき、発電所の設計、調達、建設をリード・コンストラクターとして支援。建設中に約370人の雇用と、発電所と燃料製造施設を運営する70〜80人の長期で高スキルの雇用創出が期待されているという。テネシー州に燃料リサイクル施設の建設へオクロ社は9月4日、テネシー州オークリッジにあるオークリッジ・ヘリテージ・センターの約100 haの敷地に、総額16.8億ドルを投じて、先進燃料センターにおける第一フェーズとして燃料リサイクル施設を設計、建設、操業する計画を発表した。使用済み燃料を先進炉向けの燃料に変換し、国内に供給する。国内初となる民間資金による施設を建設し、コストの削減、高レベルの雇用の創出、持続的な燃料供給の確立を目指している。オクロ社はテネシー峡谷開発公社(TVA)と共同で、同施設で電力会社の使用済み燃料をリサイクルし、将来、建設予定の発電所からTVAへの電力販売を評価する機会を模索している。米国の電力会社が最新の電気化学プロセスにより自社の使用済み燃料をリサイクルし、従来の負債を資源に変えることを模索する初の試みとなる。オクロ社のJ. デウィットCEOは、「使用済み燃料を大規模にリサイクルすることで、廃棄物をギガワットの電力に変え、コストを削減。クリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力供給を支援するサプライチェーンを確立していく」と抱負を語った。同社は、同施設で使用済み燃料から燃料材料を回収し、オーロラ発電所のような高速炉用の金属燃料に加工。このプロセスにより、廃棄物量を削減し、より経済的でクリーンかつ効率的な廃棄を実現したい考えだ。同施設は、規制当局による承認を経て、2030年代初めまでに燃料生産を開始する計画である。TVAのD. モールCEOは、「テネシー州は米国の原子力ルネサンスの中核。リー知事のリーダーシップの下、州はアメリカのエネルギーの未来を築く企業の誘致をリードしている。当社は、AIインフラを強化し、経済成長を促進するために必要な次世代の原子力技術を開発するオクロ社の取組みを支援していく」と語った。オクロ社によると、全国の発電所サイトに保管されている94,000トン以上の使用済み燃料に含まれるリサイクル可能な燃料から得られるエネルギーは、約1.3兆バレルの石油、サウジアラビアの原油埋蔵量の5倍に相当。今年5月の大統領令は、規制の近代化、原子炉試験の合理化、国家安全保障のための原子炉の配備、原子力産業基盤の強化など、原子力の新たな方向性を示しており、オークリッジはそれに従っているという。テネシー州には原子力研究および教育プログラムの開発を支援する原子力基金があり、オクロ社はそれを利用する5番目の原子力関連企業だという。
- 24 Sep 2025
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米ケイロス・パワーとBWXT 商業用TRISO燃料製造で協業
米原子力新興企業のケイロス・パワー社とBWXテクノロジーズ(BWXT)社は9月3日、ケイロス社の先進炉やその他の潜在顧客への燃料供給に向けて、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料の商業生産に向けた技術および製造プロセスの最適化を共同で検討することで合意した。今回の協力により、ケイロス社の環状の黒鉛ペブル製造能力と、BWXT社の20年以上にわたるTRISO燃料製造の経験を融合させ、ケイロス社が建設するヘルメス2実証プラントと後続の商業プラントの展開に向けた燃料供給の可能性を探る。ケイロス社が開発する商業炉のフッ化物塩冷却高温炉(KP-FHR)は、ゴルフボール大の環状黒鉛ペブルで被覆されたTRISO燃料を使用する。両社は、ケイロス社のニューメキシコ州にあるアルバカーキ・キャンパス内のTRISO開発ラボ(TDL)、バージニア州リンチバーグにあるBWXTイノベーション・キャンパス、さらにBWXT社の既存のTRISO製造ラインを活用し、TRISO燃料製造とプロセス自動化の最適化を検討する。両社はまた、TRISO燃料製造施設を共同で開発する可能性を探ることで合意。同施設には、これまでのノウハウに加え、商業用燃料生産のための新たな技術が組み込まれる予定だ。ケイロス社は、両社の燃料製造に関する知識と専門性を組み合わせ、効率的かつコスト効果の高い大量生産型TRISO被覆粒子燃料の開発によって、商業炉のスケールアップと燃料コストの低減を図る。同社のM. ハケット副社長(燃料・材料部門)は、「BWXT社との協力により、TRISO燃料製造プロセスにおけるイノベーションを加速させ、生産・自動化・効率性向上を早期に実現することで、将来の燃料コスト削減が可能になる」と語った。BWXT社のJ. パーカー先進燃料部門シニアディレクターは、「ケイロス社や他のベンダーが先進炉展開の計画を進める中、TRISO燃料の製造能力への投資は、将来の先進炉フリートにコスト競争力のある燃料供給のカギとなる。開発を加速させ、ケイロス社、BWXT社、そしてより広い先進炉コミュニティへ経済的なTRISO燃料の安定供給を実現していく」と語った。TRISO燃料は、米エネルギー省(DOE)によって開発された実証済みの技術で、「地球上で最も堅牢な燃料」とされている。TRISO粒子は、ウラン・炭素・酸素からなる燃料コアを、放射性核分裂生成物の放出を防ぐ3層の炭素系およびセラミック系の3重層で被覆した構造。ケイロス社は、TRISO燃料とフッ化物溶融塩冷却材を組み合わせ、堅牢な固有安全性を備えた、シンプルでコンパクト設計の先進炉の実現を目指している。
- 22 Sep 2025
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英米 原子力パートナーシップを強化
米国のD. トランプ大統領による英国への国賓訪問を機に、両国は9月18日、人工知能(AI)、民生用原子力、核融合、量子技術などの戦略的科学技術分野において連携を強化する技術協定に調印した。原子力分野では、先進炉、先進燃料、核融合の分野での連携を深め、核分裂および核融合のイノベーションの最前線に留まり続けることを目指すとしている。また、両国において原子力発電所の増設を推進し、クリーンエネルギー分野への数十億ポンドの民間投資を後押しすることになるという。同協定では、協力の重点項目として以下を掲げている。新たな市場への原子力展開に向けて安全かつ安心な基盤を構築するとともに、不拡散および安全保障プログラムに関する協力を強化する。両国における先進炉の展開加速に向け、市場の障壁を特定・対処しつつ商業パートナーシップを促進する。米原子力規制委員会(NRC)、英原子力規制庁(ONR)、英環境庁(EA)がライセンスの合理化と迅速化を図れるよう支援し、原子炉設計レビューを2年以内、サイトライセンスを1年以内に完了する。両国における先進燃料の安全かつ信頼性の高いサプライチェーンを確保し、先進炉計画を支援する多様な燃料供給体制を確保する。また、2028年末までにロシア製燃料からの完全な脱却を目指す。先進炉および先進燃料分野において世界的なリーダーシップを推進し、第三国への民生用原子力輸出の安全かつ確実な展開を支援する。研究、開発、実験施設やデータの利用調整を促進し、AI技術と組み合わせて、コスト競争力のある商業用核融合発電に向けた道筋を構築する。両国主導による核融合市場の形成を支援するために、調和のとれた責任あるイノベーションの促進政策と規制の開発を主導する。民生用の海上用途を含む先進原子力の新たな応用機会を模索し、国際基準の確立や両国の領土間の海上輸送回廊の整備、検討を進める。また、防衛施設のエネルギー・レジリエンスも強化する。協定の発効後、6か月以内に閣僚レベルの作業部会を設置、協力の優先順位の設定や、共同イニシアチブの実施を監督するとしている。さらに、トランプ米大統領の訪英に先立つ9月15日には、「原子力の黄金時代」と称される両国企業間の複数の合意が発表された。英政府は、英ロールス・ロイス社と米BWXT社の既存の原子力分野における長い協力関係に続き、以下の新たな企業間の提携により、両国企業による市場へのアクセスが拡大されると強調している。英国のエネルギー供給会社であるセントリカ社は、米国の先進炉開発企業のXエナジー社と提携して、イングランド北東部のハートルプールに最大12基の先進炉を建設。150万世帯への電力供給と最大2,500人の雇用創出を見込む。経済効果は少なくとも400億ポンド、そのうち120億ポンドがイングランド北東部に集中。米ホルテック・インターナショナル社、英EDFエナジー社、英不動産投資企業のトライタックス社は、ノッティンガムシャーの旧コッタム石炭火力発電所に小型モジュール炉(SMR)を導入し、高度なデータセンターを開発する計画。ホルテック社はプロジェクトコストを約110億ポンドと見積る。数千人の高スキルの建設雇用の創出と、地域社会への長期にわたる経済効果を見込む。米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は、港湾運営会社DPワールド社のロンドン・ゲートウェイ港とビジネスパーク拡張にマイクロ炉「PWR-20」による電力を供給。8,000万ポンドの民間投資による世界初となる港湾中心のマイクロ炉発電所を建設する計画。英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社と米国のマイクロ炉開発企業のラディアント社は、ラディアント社製マイクロ炉「カレイドス」向けの高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料供給で、約400万ポンド相当の契約を締結。ウレンコ社は、英政府との共同出資により、英国に先進燃料製造施設を建設しており、米国でも同様の施設の建設を検討中。米国の原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社と英国のエンジニアリング企業のKBR社は、テラパワー社製先進炉「Natrium」導入のために英国でサイト調査を行う予定。各ユニットで約1,600名の建設雇用と250名の恒久雇用を創出。エネルギー貯蔵と組み合わせた安全で信頼性の高い、柔軟な電力を供給。英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のE. ミリバンド大臣は、「米国との協力により、原子力の黄金時代の恩恵を享受し、クリーンな国産エネルギーで英国の家庭に電力を供給、高給の熟練職を創出し、光熱費を永久に引き下げることが可能になる」と指摘。英原子力産業協会(NIA)の調べによると、原子力産業分野では政府主導の投資によって今年すでに11,000人の新規雇用を創出しており、現在98,000人の記録的な雇用が確認されているという。C. ライト米エネルギー省(DOE)長官は、「原子力を活用して、増大するエネルギー需要を満たし、AI革命を推進するには、世界中の同盟国との強固な連携と民間セクターの革新者たちとの緊密な協力が必要。今回の商業提携は、両国の商業的アクセスを促進する枠組みを構築し、世界のエネルギー安全保障を強化、米国のエネルギー優位性を高め、大西洋を跨ぐ原子力サプライチェーンを確保するものだ」と語った。なお、今回の協定調印によって、一方の国で既に厳格な安全審査を通過した原子炉については、その審査結果を他国が自国の評価に活用して作業の重複を回避、原子炉設計審査を迅速化して、新規原子力発電所の建設がより迅速に進められるようになる。両国はまた、サイトの認可プロセスに入る新規プロジェクトの作業負荷を分担し、認可を迅速化するために緊密に連携するとしている。
- 19 Sep 2025
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米DOE 2回目のHALEU割り当てを発表
米エネルギー省(DOE)は8月26日、近い将来の燃料需要に対応するため、2回目となる高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)))の割り当てを米国の先進炉開発者3社に対して実施することを明らかにした。DOEはこの割り当てを、革新的な原子力技術の商業化を促し、より安全かつ安価で信頼性の高いエネルギー供給を保証するものと位置付ける。民間の研究開発、実証および商業利用に向けてHALEUの国内供給確保のために2020年に設立された「HALEU供給プログラム」を通じて行われている。今回2回目となるHALEU割り当ては、2種類の先進炉設計の試験支援と、新たな国内の先進燃料ラインの立ち上げが目的。DOEは今年4月に5社へ初回のHALEUの割り当てを行っており、そのうち3社は2025年中に燃料供給を必要としている。2回目の割り当てでは、新たに以下の3社がプログラムで定められた優先順位の基準に基づき、条件付き供給先に選定された。アンタレス・ニュークリア社: DOEの原子炉パイロットプログラムの対象炉。来年7月4日(米国の独立記念日)までに臨界を目指す先進マイクロ炉で使用。500kWeのナトリウムヒートパイプ冷却R1マイクロ炉を開発。国防総省(DOD)の軍事施設向け先進原子力(ANPI)プログラムの一環で、国防イノベーション・ユニット(Defense Innovation Unit:DIU)により選定。スタンダード・ニュークリア社: TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料製造ラインを確立し、原子炉パイロットプログラムおよびその他のTRISO燃料炉を支援。DOEの燃料製造ラインのパイロットプログラムの初対象企業。アビリーン・クリスチャン大学(ACU)/ナチュラ・リソーシズ社: テキサス州にあるACUで建設中の熔融塩研究炉Natura MSR-1(0.1万kWt)で使用。DOEの原子炉パイロットプログラムに選定。ナチュラ社は原子力規制委員会と商業炉の許認可申請前活動中。DOEのC. ライト長官は、「トランプ大統領は真の原子力ルネサンスの始動を最優先事項としており、DOEはこの野心的な課題の実現に向けて、先進燃料の製造に必要な資材へのアクセス拡大を進め、外国由来の資源への依存を減らすべく、米国の民間企業を支援している」と語った。多くの先進炉が、既存炉よりも小さな設計、より長い運転サイクル、より高い効率を実現するためにHALEUを必要とするが、米国には商用のHALEUの国内供給業者はいない。そのため、国家核安全保障局(NNSA)管理下の原料や政府所有の研究炉からの使用済み燃料由来の高濃縮ウラン(20%以上のU235)のダウンブレンドを行い、限られた量を製造してHALEUを割り当てている状況である。なおHALEUは、通常の商用炉向けの濃縮ウラン製造のプロセスを利用した製造も可能。DOEはウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と提携し、オハイオ州パイクトンの濃縮施設で16台の新型遠心分離機を製造、連結設置し、HALEU製造のための濃縮の実証を行っている。今後のステップとして、DOEはこれら3社にHALEUを割り当てる契約プロセスを開始し、一部企業は今年中にHALEUを受取る可能性があるという。DOEは今後もさらに他企業へのHALEUの割り当てを続ける予定。
- 04 Sep 2025
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米DOE 試験炉プロジェクトを急ピッチで推進
米エネルギー省(DOE)は8月12日、先進炉の実用化に向けた「原子炉パイロットプログラム」の開始にあたり、11件の先進炉プロジェクトを有する10企業を選定した。DOEは2026年7月4日までに少なくとも3基の試験炉を建設し、臨界達成を目指したい考えだ。トランプ政権は、米国を再び原子力分野のリーダーとし、信頼性が高く、多様で、手頃な価格のエネルギー供給を確保して、米国の繁栄と技術革新を推進することに取り組んでいる。DOEは、今回の初期の企業選定が原子炉試験の合理化に向けた重要な一歩であり、商業ライセンス活動を迅速化する新たな道を切り開くものと位置付けている。DOEのJ. ダンリー次官は、「選定されたプロジェクトはすべて、来年の独立記念日(2026年7月4日)までに安全に臨界を達成することを目指しており、DOEはその努力を全面的に支援していく」と語った。DOEは2025年6月、大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」を受けて、先進炉パイロットプログラムを発表。DOE傘下の国立研究所以外でDOEの管理権限の下、先進炉設計の試験の加速と研究開発の促進を目的としており、商業的適合性のための原子炉の実証ではないと強調している。これまで原子炉試験への道筋は、米原子力規制委員会(NRC)の認可下、またはDOEを経由した、DOE所有サイトでの試験または実証であった。今回選定された企業は、原子力法の下でDOEから認可を受けることで、民間資金を確保し、将来的なNRCからの商用ライセンス取得に向けた迅速なアプローチが可能になると予測されている選定された企業・プロジェクトは以下のとおり(アルファベット順)。・Aalo Atomics: 1万kWeのナトリウム冷却Aalo-1を開発。2024年12月、AaloとDOEはアイダホ国立研究所(INL)に実験用原子炉の建設を発表。・Antares Nuclear: 500kWeのナトリウムヒートパイプ冷却R1マイクロ炉を開発。国防イノベーション・ユニットにより、国防総省 (DOD) の軍事施設向け先進原子力(ANPI)プログラムに選定。・Atomic Alchemy: 1.5万kWtの軽水多用途同位体製造炉(VIPR)の開発を進めている放射性同位元素製造会社。2024年にOkloに買収され、子会社に。・Deep Fission: 1.5万kWeのDFBR-1(PWR)を開発。地下1マイルに30インチのボーリング孔を通って建設予定。・Last Energy: 2万kWeのPWR-20 を開発。テキサス州北西部のハスケル郡に30基のマイクロ炉を建設し、同州内のデータセンター顧客向けに電力供給する計画。・Natura Resources: 商業用および研究用熔融塩炉の両方の設計を開発。NRCから初の建設許可を受けた熔融塩炉Natura MSR-1(0.1万kWt)をアビリーン・クリスチャン大学に建設する計画。・Oklo: 7.5万kWeの液体金属冷却、金属燃料高速炉であるオーロラ発電所を含む2つのプロジェクトが選定。初の発電所をINLで建設し、2027年後半から2028年初めの運開を見込む。・Radiant Industries: 0.1万kWeのヘリウム冷却炉Kaleidos を開発。INLのマイクロ炉実験機の実証(DOME)テストベッドで原子炉試験を行う最初の企業の1つ。・Terrestrial Energy: 19.5万kWeの一体型溶融塩炉を開発。EnergySolutionsの閉鎖サイトへの建設で協力覚書を締結。・Valar Atomics: ヘリウム冷却、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料利用の高温ガス炉を開発。各企業は、自らの試験炉の設計、製造、建設、運転、廃止措置に関わるすべての費用を負担する責任を負う。なお今回は初期選考であり、今後さらに多くの申請が審査、選定される可能性がある。さらにDOEは7月、先進試験炉向けの燃料製造を加速するため、燃料製造ラインのパイロットプログラムを発表したが、8月4日、同プログラムの初対象となる企業として、スタンダード・ニュークリア社を選定した。試験炉と同様、DOEが認可を予定している試験炉向けに、米企業が開発した燃料製造ラインをDOE傘下の国立研究所以外に建設、DOEが迅速な承認手続きによって認可する。原子力法の下でDOEが認可した燃料製造ライン設計は、将来のNRCによる商用ライセンス取得において迅速に処理される。申請者にとっては、DOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからのライセンス取得に向けた迅速なルートを確保、燃料製造ラインの商用化が可能になるというメリットがある。テネシー州オークリッジに拠点のあるスタンダード・ニュークリア社は独自の原子炉開発事業を持たない国内唯一の独立系TRISO燃料製造事業者。TRISO燃料の需要は高まっており、DOEの認可プロセスを活用して、テネシー州とアイダホ州の両方で燃料供給を確保したい考えだ。同社は今回のプログラムへの選定を受け、実証済みのインフラを活用して、2026年半ばまでに複数のサイトでTRISOを年間2トン以上生産していく方針を示している。なお、施設の建設、運営、廃止措置に関連するすべての費用を同社が負担。先進炉開発者は、DOEのHALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)割り当てプログラムを通じて燃料製造用の原料の調達を行うという。
- 20 Aug 2025
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米国 デジタルインフラ開発を視野に4サイトを選定
米エネルギー省(DOE)は7月24日、人工知能(AI)データセンターおよびエネルギーインフラ開発に向けたDOEサイトを選定したことを明らかにした。エネルギーコストを削減する、信頼性の高いエネルギー技術の革新を促進し、AI分野における米国のリーダーシップと国家安全保障の強化を目指す。これは、7月23日の大統領令「データセンターインフラ整備の迅速化」のほか、「国家安全保障強化のための先進原子炉技術の導入」、「米国のエネルギー解放」に基づき、DOEサイトを活用したAIインフラ開発を加速する措置の一環。DOEは以下の4サイトを選定。大規模なデータセンター、新たな発電設備、その他の必要なインフラに最適な拠点であると指摘する。最先端のAIデータセンターおよびエネルギー発電プロジェクトを展開すべく、民間企業との連携を進める方針である。アイダホ国立研究所オークリッジ保護区(テネシー州)パデューカ・ガス拡散プラント(ケンタッキー州)サバンナリバー・サイト(サウスカロライナ州)DOEのC. ライト長官は、「DOEの土地資産を活用してAIとエネルギーインフラを展開することで、次なる『マンハッタン計画』を加速させ、米国がAIとエネルギーの分野で世界をリードする体制を築く」と語った。DOEは2025年末までに一部のDOEサイトでAIインフラの建設を開始し、2027年末までに運用を開始することを目標としている。今年4月にDOEは、情報提供要請(RFI)を実施、産学からDOEサイトへのAIインフラの確立について意見や提案を募っており、すでに多くの関心を集めていた。DOEは、州政府、地方自治体などと協議の上、データセンター事業者、エネルギー企業、一般市民と連携してこの重要な取組みをさらに推進していく計画。各サイトごとのプロジェクトの公募が数か月以内に開始される予定であり、DOEは今後、さらなる公募を実施する可能性のある追加拠点の検討も進めているという。
- 05 Aug 2025
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米DOE 先進試験炉のための燃料製造プログラムを発表
米エネルギー省(DOE)は7月15日、先進試験炉向けの燃料製造を加速するたため、燃料製造ラインのパイロットプログラム(Fuel Line Pilot Program)への申請の募集(RFA)を開始した。同プログラム下では、6月に発表された先進炉のパイロットプログラムによりDOEが承認を予定している試験炉向けに、米企業が開発した燃料製造ラインをDOEが認可するもの。この燃料製造ラインは、燃料を供給する先進炉と同様にDOEの国立研究所以外に建設され、DOEが迅速な承認手続きによって認可する。DOEは現在、国立研究所以外で試験炉を建設・運転することに関心のある米国の原子炉開発企業からの申請を検討中であり、2026年7月4日までに臨界を達成する可能性のある、少なくとも3炉型を今夏後半に選定する予定。この先進炉および燃料製造ラインのパイロットプログラムは、2025年5月のトランプ大統領による大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」に基づく。燃料製造ラインのパイロットプログラムは、別の大統領令「国家安全保障強化のための先進原子炉技術の導入」により、先進原子炉の展開への支援のほか、燃料供給体制の強化をはかり、濃縮ウランや重要資源の海外依存からの脱却、国の原子力復興に向けた民間投資の呼び込みなどを目的としている。DOEパイロットプログラムの下で建設・運用される燃料製造ラインは、研究・開発・実証を目的としており、米原子力規制委員会(NRC)のライセンスを必要としない。原子力法の下でDOEが認可した燃料製造ライン設計は、将来のNRCによる商用ライセンス取得において迅速に処理される。申請者にとっては、DOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからのライセンス取得に向けた迅速なルートを確保、燃料製造ラインの商用化が可能になるというメリットがある。DOEによると、米国では現在、予測される需要を満たすのに十分な国内原子燃料が不足している。DOEは、燃料製造ラインの開発を活性化し、米国の生産基盤の立て直しを急いでいる。DOEのC. ライト長官は「米国には、世界をリードする原子力開発のためのリソースとノウハウがある。しかし、この急成長するエネルギー源に対応し、真の原子力復興を実現するには、安全かつ安定した国内サプライチェーンが必要。トランプ政権は規制ではなく革新を加速し、民間セクターとの協力により、新しい原子炉設計の安全な燃料供給と試験を推進して、米国消費者にとり、より信頼性が高く、手頃なエネルギーを実現する」と語った。申請者は、核物質の原材料の調達の他、先進的な燃料製造ラインの設計・製造・建設・運転・廃止措置に関するすべてのコストを自己負担。技術の実用性、製造計画、財政的な健全性などに基づき、選定される。初期申請の締切は8月15日。その後の申請も随時受け付けるという。
- 29 Jul 2025
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米GLE レーザー濃縮施設のライセンスを申請
米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社は7月2日、同社が建設を計画するパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の安全分析報告書(SAR)を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。2024年12月には環境報告書(ER)を提出しており、今回と合わせ、PLEFの建設と操業に向けたライセンス申請を完了した。SARでは、PLEFの安全対策、運用手順、リスク軽減策が包括的に評価されており、原子力の安全性とセキュリティに関する規制基準を満たす内容となっている。ERでは、ガス拡散プラントにおける劣化六フッ化ウラン(DUF6)の再濃縮による環境浄化作業の加速、既存および新規の原子力発電所向けに国内産のウラン、濃縮ウランを供給することで脱炭素化を支援し、西ケンタッキー地域での雇用創出、エネルギー安全保障の強化などを利点として掲げている。GLE社は審査プロセスの効率化と迅速化の促進を期待し、NRCにERとSARを分離して提出することを申請、2024年8月に承認されていた。GLE社は、新たな国産ウラン供給源の確保・転換・濃縮の実現を目指しており、それに特化した米国の唯一企業となる。GLE社はライセンスの取得後、2030年までに米エネルギー省(DOE)が所有するケンタッキー州のパデューカ・ガス拡散濃縮プラントにあるDUF6の再濃縮を開始したい考えだ。パデューカ・サイトでは、1960年代からガス拡散濃縮プラントが民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、サイトは現在、環境復旧プログラム下にある。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。GLE社はサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の独占行使権を保有しており、DOEと2016年11月、DOEが保有する約30万トンのDUF6の40年間の売買契約を締結した。PLEFで天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。PLEFのライセンス申請は、GLE社が2012年に取得した、ノースカロライナ州ウィルミントンにおける商業規模のレーザー濃縮施設のNRCの建設・操業許可に基づいている。当時は市場環境が悪く、計画は進展しなかった。GLE社は2024年11月にパデューカ・ガス拡散工場跡地に隣接する665エーカー(約2.7㎢)の土地をPLEFの建設サイトとして取得しており、NRCの事前承認とPLEFサイトの良好な特性から、PLEFのライセンス取得は早まると予想している。サイレックス社は、自社の濃縮技術により、天然ウラン(UF6形態)、低濃縮ウラン(LEU)およびLEU+、次世代炉(小型モジュール炉を含む)向けの高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)など、複数の形態のウラン生産が可能となり、世界中の原子炉向けの燃料生産で重要な役割を果たすと指摘している。
- 09 Jul 2025
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米DOEとNRC 先進炉導入を迅速化へ
米エネルギー省(DOE)と米原子力規制委員会(NRC)は6月18日、それぞれ、先進炉導入の迅速化に向けた取組みを発表した。米国の国家安全保障を強化し、エネルギー目標を達成するために不可欠な、原子力エネルギーの促進、規制の合理化を目的に、米トランプ大統領が5月23日に署名した一連の大統領令を反映したもの。DOE 先進炉の新たなパイロットプログラムを発表DOEは6月18日、傘下の国立研究所以外でDOEの管理権限のもと、先進炉の設計試験を迅速に進める柔軟な措置として、新たなパイロットプログラムを開始すると発表した。原子炉試験の簡素化と、2026年7月4日までに少なくとも3基の試験炉を臨界状態に到達させることが目的。トランプ大統領は、米国を再び原子力分野のリーダーとし、信頼性が高く、多様で、手頃な価格のエネルギー供給を確保して、米国の繁栄と技術革新を推進することに取り組んでいる。大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」に従った、この新しいパイロットプログラムは、米国の原子力技術を最大限に活用、米国内の雇用を支援し、イノベーションの促進とともに、国家安全保障の強化に資するとの考えだ。このパイロットプログラムは、DOEの施設内で実施されるマイクロ炉のテストベッドでの試験のほか、国防総省(DOD)が主導する「プロジェクト・ペレ」や民間産業主導の既存プロジェクトを元に構築されている。あくまで原子炉の研究・開発を促進するためのものであり、商業的な適合性を実証するためのものではないという。このプログラムの下で建設された試験炉はNRCの認可を必要とせず、原子力法の下でDOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからの商用ライセンス取得に向けた迅速なアプローチが可能になると予測されている。DOEは同パイロットプログラムにより、国立研究所以外で試験炉を建設・運転することに関心のある、米国の原子炉開発企業を募集している。2026年7月4日までに稼働の見込みがある先進炉が対象。申請者は、各試験炉の設計・製造・建設・運転・廃止措置に関するすべてのコストを自己負担。技術の実用性、サイト評価、財政的な健全性、臨界状態達成までの詳細な計画などに基づき、競争により選定される。初回申請の締切は2025年7月21日。その後の申請も随時受け付けるという。NRC マイクロ炉の工場製造・運用に向けた方針を決定米原子力規制委員会(NRC)は6月18日、マイクロ炉の新たな導入手法を可能にするため、以下に示す3つの政策方針を明らかにした。マイクロ炉は、工場で製造・燃料装荷・試験を行った後に運転サイトへ輸送することを想定。なお、これらマイクロ炉は、現在の大型炉の1%以下程度の出力となると見込まれている。連鎖反応を防止する機能を備えた工場製造のマイクロ炉については、燃料装荷されていても、それを「運転中」とみなさない。連鎖反応を防ぐ設計を持つマイクロ炉であれば、NRCが発行する燃料保有を許可するライセンスのもとで、工場で燃料装荷を行うことが可能である。運転サイトへ輸送する前に、工場でマイクロ炉の試験を実施する際に、NRCの「非動力炉」の規制を準用して許可する。NRCは、先進炉の導入促進法(ADVANCE法)や関連する大統領令に基づき、ライセンス手続きを効率化し、マイクロ炉の商業化への移行を円滑に行うため、DOEやDODと協力して、DOE/DODのサイトに、または国家安全保障インフラの一部として、マイクロ炉を建設・運用する取組みに関与していく方針だ。
- 02 Jul 2025
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米セントラス社 DOEにHALEU納入
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は6月25日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)が、米エネルギー省(DOE)向けに高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)900kgを製造および納入したことを明らかにした。今回の製造および納入により、セントラス社はDOEとの契約第IIフェーズの目標を達成し、これまでに第Ⅰフェーズの契約と合わせ、合計920kg以上のHALEUを納入した。セントラス社のA. ベクスラーCEOは、「HALEU濃縮が可能な唯一の西側供給源として、当社の製品は次世代炉の稼働に不可欠。DOEとの契約の第Ⅲフェーズに進む今、当社は生産能力を拡大し、既存炉向けの低濃縮ウラン(LEU)とHALEUの両面で、米国の商業的および国家安全保障上の需要に応えていく」と語った。セントラス社は現在、契約第IIIフェーズに基づくHALEUの製造に進んでいる。6月20日には、DOEから第IIIフェーズの一環として、製造期間を2026年6月30日までの1年間延長する延長契約、約1.1億ドル(約159億円)相当を獲得した。第IIIフェーズではDOEの裁量および予算措置にもよるが、さらに最大8年間(年間900kg製造)の追加オプションが含まれている。DOEは2019年、セントラス社と契約を締結し、ACPでHALEU製造を実証するための先進遠心分離カスケードの認可および建設を委託。その後2022年、セントラス社は3段階の契約を競争入札により獲得した。ACPの先進遠心分離機カスケードを稼働させ、2023年末に契約の第Iフェーズを完了し、最初のHALEU 20kgをDOEに納入。第IIフェーズでは、2025年6月30日までにHALEU 900kgの製造が求められていた。契約に基づき製造されたHALEUはDOEの所有物であり、HALEU燃料を用いた先進炉の実証や商業化といった国家の重要政策の推進に活用される。
- 30 Jun 2025
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米WE社のマイクロ炉 INLでの試験に向けて前進
米エネルギー省(DOE)は6月3日、ウェスチングハウス(WE)社が開発するマイクロ炉「eVinci」の予備安全設計報告書(PSDR)を承認した。 WE社はPSDRの承認を受けた初のマイクロ炉開発企業となった。PSDRの承認は、米アイダホ国立研究所(INL)内の国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッドでの試験の実施にあたりDOEが求める要件の一つであり、DOMEテストベッドに設置するeVinci実験炉の詳細な設計と、安全の妥当性を示すセーフティケースの概要を示したもの。 DOEは2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するWE社、ラディアント(Radiant)、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に、フロントエンドエンジニアリングおよび実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design: FEEED)プロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRIC-DOMEテストベッドを使った試験の計画策定を行う開発者の支援を目的としている。PSDRの提出はFEEEDプロセスの重要なマイルストーン。この承認に続きWE社は現在、DOMEテストベッドへの設置に向けて、DOEの段階的承認プロセスにおいて必要となる4つの提出物のうち3番目となる予備安全解析書を準備している。 NRICは現在、1964年~1994年にINLで稼働していた高速増殖実験炉II(EBR-II)の格納ドームを利用したDOMEテストベッドを改修中である。同テストベッドは高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけて市場投入までの時間を短縮することを目的としている。そのため、eVinci実験炉はより大規模な商業用eVinciの開発に先駆け、その設計の性能と安全機能の実証を目的に0.3万kWtと縮小したものとなっている。DOMEでの試験開始は、2026年秋の予定だ。 2025年3月には、米原子力規制委員会(NRC)が、eVinciに関する基本設計基準(PDC)トピカルレポートを承認。PDCは原子炉の構造、システム、および構成要素の各部分がどのように機能するかを定義し、原子炉設計がNRC規則に適合することを保証するもの。PDC承認により、eVinciを導入するための許認可取得の明確な道筋が示され、顧客による許認可取得手続きの簡素化および合理化が期待されている。 eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。燃料交換なしで8年以上にわたり電力の安定供給が可能。工場で製造・組立、燃料装荷された状態で迅速に現地に輸送・設置される。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用し、この設計はDOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)により支援されている。
- 19 Jun 2025
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米国の濃縮プラント拡張 生産開始
英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社は5月19日、米ニューメキシコ州ユーニスにあるウレンコUSA社の濃縮プラントにおいて、拡張プロジェクトの第1段階として増設した新型遠心分離機のカスケードで濃縮ウランの生産を開始した。このカスケードは、2027年初めまでに稼働する予定の複数のカスケードの内、最初のもの。すべてのカスケードが完成すれば、生産能力が約15%増強される。ウレンコUSA社のJ. カークパトリック取締役は、「当社の経験豊富なチームは、濃縮プラントの拡張プロジェクトを引き続き実行し、長期的かつ信頼性の高い濃縮ウランを国内へ供給し、電力会社を支援していく」と述べた。ウレンコUSA社のプラントは、北米で唯一稼働する商業規模の濃縮施設。同社は2010年から米国でウラン濃縮を行っている。同プラントは、米国の重要な戦略資産であり、米国の国家エネルギーインフラと原子燃料サプライチェーンにおいて不可欠な存在。4,400tSWU/年(2024年12月時点)の生産能力により、米国の商業用原子力発電所の濃縮ウラン需要の約1/3をまかなっている。また、これまでに米国の遠心分離機などの製造分野に50億ドル(約7,143億円)以上の投資を行ってきたという。濃縮プラントの拡張の背景には、脱炭素化やロシア製原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを反映した、濃縮役務の需要増がある。ウレンコUSA社は2024年10月、生産能力を約15%増とする約700tSWU/年の拡張プロジェクトを発表。同プラントで、生産能力をさらに10,000tSWU/年規模まで拡張できるスペースとライセンスを有し、市場ニーズに応じて、米国での生産能力をさらに拡大する用意があるとしている。同社は英国、ドイツ、オランダでも濃縮プラントを所有・操業するが、米国のプラントで最初の拡張プロジェクトを実施し、2027年の完成後、国内外向けに供給、燃料サプライチェーンを強化する計画だ。また、ドイツとオランダのプラントを含め、3プロジェクトで合計1,800tSWU/年規模を追加する拡張計画を示している。ウレンコ社の傘下にある、ルイジアナ・エナジー・サービス社は2024年10月、米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局により、U235の濃縮度が5~20%の高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の国内サプライチェーン確立に向け、濃縮役務の提供に係る契約をする国内4社のうちの1社に選定されている。2024年12月には、新たなウラン生産能力の拡大を目的に、低濃縮ウラン (LEU) の調達に係る契約をする6社のうちの1社に選定された。さらに同月、ウレンコUSA社は、米原子力規制委員会(NRC)からU235濃縮度を最大10%に引き上げるライセンス修正が承認されている。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。但し、NRCによるライセンス修正要件の審査の必要があり、今年7月末までに完了予定である。
- 06 Jun 2025
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IT企業が約3,000万kWの原子力導入にコミット 米NEI理事長が明言(前編)
米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は5月20日、会員企業やその他の原子力関係者らを招いて毎年開催している「Nuclear Energy Policy Forum」で、原子力産業界の現状に関する講演を行った。同理事長によると、AIやデータセンターからの急速な電力需要増を背景に、大手IT企業が全米で約3,000万kWの原子力導入にコミットしており、その規模は今後さらに拡大する見通しだ。また、連邦政府の原子力支援策が後押しとなり、2024年の原子力分野における民間取引額は、過去4年間の合計額を上回ったという。一方で、原子力発電の維持・拡大には、政策支援の継続が不可欠だと強調。なかでも、原子力税額控除(nuclear tax credits)が維持されなければ、原子力の展開は大幅に減速し、あるいは計画そのものが方向転換を迫られる可能性があると警鐘を鳴らした。同理事長の講演概要は、以下のとおり。♢ ♢この20年間、電力需要は停滞していたが、今、状況は変わりつつある。米国の製造業やイノベーション、人工知能、あらゆる分野でより多くの電力が求められている。AI競争を勝ち抜くうえで必要な大規模データセンターには、来年末までに2,800万kW規模の電力が必要だ。原子力産業界は、これまでの漸進的な成長から、信じられないほどの成長へと転じようとしている。原子力への超党派による支援も続いている。C. ライト米エネルギー省(DOE)長官は、就任わずか3日目に「商業用原子力発電を解き放つ(unleash commercial nuclear power)」という長官命令に署名。これは現政権が、原子力エネルギーの価値を、セキュアで強靭、安価かつ豊富で、今後ますますクリーンなエネルギーシステムの一部として、認識していることの証左だ。原子力産業界も準備を整えている。TVA(テネシー峡谷開発公社)は今朝、GEベルノバ日立社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設許可申請書を提出した。また、ベクテル社、デューク・エナジー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社を含むパートナー連合とともに、DOEによる8億ドルの助成金を申請している。ドミニオン・エナジー社は昨年、ノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)の運転期間延長(80年運転)の認可を取得。加えて、IT大手アマゾンと連携し、SMRの活用に向けた検討を進めている。エンタジー社は、急増する産業部門の電力需要に対応すべく、新設および出力増強を検討中であり、同社は、ミシシッピー州に新たな原子炉建設のための事前サイト許可(ESP)を取得している。コンステレーション社は昨年、マイクロソフトと提携し、かつて運転していたスリーマイルアイランド(TMI)1号機を「クレーン・クリーンエネルギーセンター」として再稼働させる計画を発表した。IT大手では、グーグル、メタ、アマゾンが、世界の大手金融機関14社とともに、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にすることを誓約した。これまでに、グーグルはケイロス・パワー社と500万kW相当の電力購入契約を締結。アマゾンは、X-エナジー社への5億ドルの投資を主導し、500万kWの原子力導入をめざしている。メタも、400万kW分の原子力による電力調達をめざし、提案依頼書(RFP)を発行している。さらに今月には、エレメントル・パワー社は、先進型原子炉の3つのプロジェクトサイトを開発する契約をグーグルと締結した。このように、IT企業と原子力事業者による新たなパートナーシップは、全米で約3,000万kWの原子力導入に向けたコミットメントとなっており、その規模は今後も拡大していく見込みだ。原子力分野への投資熱も高まっている。NEIが毎年開催する資金調達サミットには、今年は3年前の第1回開催時の2倍の参加者が集結。さらに、2024年の原子力分野における民間部門の取引額は、過去4年間の合計を上回る水準となった。こうした民間投資の増加は、公的支援の強化と軌を一にしている。米議会は昨年、ロシア依存の低減をめざし、国内燃料サプライチェーンの強化を目的に約30億ドル、また次世代原子炉の実証支援向けに約10億ドルを拠出。加えて、許認可審査の効率化を含む、クリーンエネルギーの多用途かつ先進的な原子力展開の加速化法(ADVANCE法)も可決した。連邦政府による原子力支援策として、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)や融資プログラム局(LPO)、そして原子力税額控除などがある。これらの政策は、原子力発電の維持・拡大に不可欠であり、今後も維持されるべきである。中でも、原子力税額控除は、良質な雇用、コミュニティの繁栄、そして国家安全保障を支えている。もし議会がこの税制措置を維持できなければ、原子力の展開は大幅に減速するか、あるいは完全に方向転換を余儀なくされる可能性がある。これは、米国の未来を前進させるうえで絶対に避けなければならない。ADVANCE法は、原子力規制委員会(NRC)に対して、安全性を確保しつつ、審査プロセスの効率性も重視するよう求めるもの。NRCは昨年、2021年以来初となる第2回目の運転認可更新(subsequent license renewals)を承認した。対象となったのは、エクセル・エナジー社のモンティセロ原子力発電所(BWR, 69.1万kW)であり、当初24,000時間を要すると予想されていた審査時間は、最終的に16,000時間で完了。審査時間は3分の1に短縮された。このような効率性は、例外ではなく、ルールとする必要がある。州レベルでも支援が拡大している。―テネシー州では、ケイロス・パワー社が2基の新実証炉のうちの1基を建設中。―ワイオミング州では、テラパワー社が同州で最初の商業用原子炉を建設中。―コロラド州は、原子力をクリーンエネルギーと認める法案を可決。―テキサス州は、全米最大規模となる可能性のある、原子力エネルギー基金(Nuclear Energy Fund)を創設中。―アイダホ州では、国防総省(DOD)が国内初のマイクロ原子炉の一基を建設中。(つづく)
- 27 May 2025
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米大統領令 新設の促進やNRC改革を指示
米トランプ大統領は5月23日、原子力エネルギー政策に対する連邦政府のアプローチの再構築を目的とした一連の大統領令に署名した。人工知能(AI)産業、製造業、量子コンピューティングなどの最先端のエネルギー集約型産業での電力需要増に対し、豊富で信頼性のある電力を供給するのがねらい。エネルギー安全保障を確保するとともに、米国の原子力業界の世界的な競争力維持と国家安全保障の強化のため、2050年までに原子力発電設備容量を現在の約1億kWeから4倍の4億kWeとし、このために必要となる原子力の規制緩和を迅速に行う方針だ。具体的には、第3世代+(プラス)炉や先進炉の展開の促進、既存の原子力施設の継続的な運用と適切な拡大を促進しつつ、時期尚早に閉鎖された、または部分的に完成している原子力施設の再活性化を掲げている。そのため米エネルギー省(DOE)が原子力産業界と協業して、2030年までに既存の原子力施設の設備容量を500万kWe増強するほか、新規の大型炉10基の建設に着手することを、DOEの優先作業に設定している。ホワイトハウスで23日に行われた署名式には、国家エネルギードミナンス(支配)評議会の議長を務めるD. バーガム内務長官やP. ヘグセス国防長官のほか、原子力業界の幹部も同席。バーガム長官は「一連の大統領令が、50年以上続いた原子力業界に対する過剰な規制の時計の針を巻き戻す」「米国の電力需要が急増する中、既存の原子力フリートを拡大し、先進炉への投資により、信頼性の高い電力を供給、電力網を強化して、米国のエネルギードミナンスを拡大する」と強調した。なお、一連の大統領令は以下の4つに関するもの。原子力産業基盤の再活性化エネルギー省における原子炉試験の改革原子力規制委員会の改革国家安全保障強化のための先進的原子炉技術の導入C.ライトDOE長官は、「あまりにも長い間、米国の原子力産業は、お役所仕事や時代遅れの政府の政策によって妨げられてきた。AIの出現と大統領の国内製造業強化政策によって、米国の民生用原子力エネルギーは絶好のタイミングで解き放たれている。原子力は、米国にとって最大の追加エネルギー源となる可能性を秘めており、さまざまな規模で運用が可能だ。大統領令は、民生用原子力産業の束縛を解き放つものだ」と語った。ホワイトハウス科学技術局のM. クラツィオス局長は、「過去30年間、原子炉の新設がなかったが、それも今日で終わる。今回の大統領令は、ここ数十年で最も重要な原子力規制改革にむけた措置。強固な米国の原子力産業基盤を回復し、国内の原子燃料サプライチェーンを再構築し、米国が世界の原子力エネルギーを牽引していく。米国のエネルギー安全保障と、AIやその他の新興技術における継続的な優位性にとって重要である」と述べた。大統領令は、DOE傘下の国立研究所における原子炉の設計試験の申請とレビュープロセスの合理化により、迅速な原子炉の商業化を促している。また、国防総省やDOEが、軍事施設や連邦所有地で先進炉の建設にあたり、テストを通して実証された原子炉設計については、原子力規制委員会(NRC)が迅速に承認するなどの規制緩和も示している。AIデータセンターや重要な防衛施設に対する、安全で信頼性の高い原子力による電力供給確保は、AIをめぐる世界的競争、ひいては国家安全保障において不可欠との認識もある。さらにDOEに対し、原子燃料の海外依存を回避するため、国内のウラン採掘と転換・濃縮能力の拡大計画や国内燃料サイクルの強化にむけた勧告を指示するほか、原子力拡大政策を支える労働力の拡大、NRCの改革の必要性を示している。特にNRCに対しては、許認可申請の迅速な処理と革新的な技術の採用を促進するため、政府効率化省との協業によるNRCの再編成、さらに民生用原子力発電の認可と規制に際し、安全性、健康、環境要因に関する従来の懸念のみならず、原子力発電が米国の経済と国家安全保障にもたらす利益を考慮するよう指示。NRCにタイムリーな許認可を出すように要求することで規制上の障壁を取り除きたい考えだ。新規炉は原子炉の種類に関わらず、建設と運転の認可プロセスの簡素化により、数年かかる審査プロセスを18か月に短縮、既設炉の運転期間延長の最終決定は1年以内と期限を定めるなど、許認可の迅速化を指示している。
- 26 May 2025
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米TVA 6月までにSMR建設許可を申請へ
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は4月17日、テネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトにおける、小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトの建設許可申請(CPA)を6月までに行うことを明らかにした。TVAのクリンチリバー・プロジェクト担当のB. ディーシー上級副社長によると、TVAはSMR建設に向けた環境レビューを完了し、6月までにCPAを行う意向を米原子力規制委員会(NRC)に通知。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300(BWR、30万kWe)だが、他炉型の評価も継続しているという。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。またGEH社製のBWRX-300がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトにBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結した。BWRX-300は次世代BWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。TVAはクリンチリバーSMRプロジェクトの開発に、2022年2月に理事会が承認した最初の2億ドルと、2024年4月の継続的な設計および開発作業を支援するための追加出資1.5億ドルを合わせ、合計3.5億ドル(約500億円)を投じている。なおTVAは、米エネルギー省(DOE)が2024年10月に初公募、3月下旬に改訂された米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから助成金8億ドル(約1,144億円)を4月初めに再申請した。これはDOEが同プログラムをトランプ政権の政策と一致させるべく、助成金交付の基準を更新。公募要件を変更し、再申請を求めていたもの。TVAは今年1月には、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、同プログラムに8億ドルの助成金を申請していた。同プログラムは、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設。TVAはBWRX-300が実績のある技術に基づくものとはいえ、初号機プラントであるため、DOEと協力してコストを相殺、顧客へのコスト負担を避けたい考えだ。また、予備的なサイト準備を早ければ2026年に開始を計画している。TVAのJ. ライアッシュCEOは今年1月、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始できる」と言及していた。TVAは1933年、米大統領F. ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発と失業率対策を目的に行われた米政府による公共事業を実施する国有電力企業。現在、アラバマ州、テネシー州において3サイトで計7基の120万kW級の大型軽水炉を所有/運転している。
- 01 May 2025
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米DOE 先進炉開発5社にHALEU供給へ
米エネルギー省(DOE)は4月9日、米国の先進炉開発者の5社に対し、短期的な燃料需要を満たす高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の供給を条件付きで実施することを明らかにした。DOEはこの1回目のHALEU割当てが、革新的な原子力技術の商業化を促し、より安全かつ安価で信頼性の高いエネルギー供給を保証するものと位置付けている。ライトDOE長官は、「今回のHALEUの割当ては、米国の先進炉開発者が安全なサプライチェーンから調達された燃料を用いて先進炉を展開するのに役立つ。米国の原子力部門の再活性化をはかるトランプ大統領のプログラムにおいて重要な一歩だ」と語った。HALEUの割当ては、民間の研究開発、実証、および商業利用に向けてHALEUの国内供給を確保するために2020年に設定された「HALEU利用プログラム」を通じて行われる。多くの先進炉が、既存炉よりも小さな設計、より長い運転サイクル、より高い効率を実現するためにHALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を必要とするが、米国の燃料サプライヤーは現在、HALEUを生産する能力が不足している。そのため、国家核安全保障局(NNSA)管理下の原料や政府所有の研究炉からの使用済み燃料由来の高濃縮ウラン(20%以上のU235)のダウンブレンドを行い、限られた量を製造している状況である。なおHALEUは、通常の商用炉向けの濃縮ウラン製造のプロセスを利用した製造も可能。DOEはウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と提携し、オハイオ州パイクトンの濃縮施設で16台の新型遠心分離機を製造、連結設置し、HALEU製造のための濃縮の実証を行っている。現状のHALEUの需給ギャップを埋めるためDOEは、先進炉開発者によるHALEU供給申請手続きを開始。15社がHALEU供給を申請した。第1回目の割当てでは、優先順位の基準を満たした企業のうち、2025年中に燃料供給を必要とする3社を含む5社を特定した。 今回、HALEUの割当てを受ける5社は以下の通り。TRISO-X社ケイロス・パワー社ラディアント・インダストリーズ社ウェスチングハウス社テラパワー社今回のHALEUの割当てでは、DOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の5~7年以内に実証(運転)可能な炉に選定された企業のほか、アイダホ国立研究所(INL)内の国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉実験機の実証(DOME)テストベッドで試験を計画している企業、さらにARDPの10~14年後に実証を想定したリスク低減プロジェクトの選定企業を対象としている。次のステップとしてDOEはすでに契約プロセスを開始しており、一部企業は今秋にもHALEUを受取る可能性がある。DOEは今後も追加企業へのHALEUの割当てを継続する計画だ。
- 21 Apr 2025
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米テキサス州でXe-100の建設許可を申請
米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社とX-エナジー社は3月31日、テキサス州シードリフトで計画されているX-エナジー社製SMRの高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」(電気出力8万kW)を採用する発電所の建設許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請したことを明らかにした。 ダウ社が提案する先進炉プロジェクトは、同社の完全子会社であるLong Mott Energy社が開発。ダウ社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフトの製造サイトに、運転期間満了間近の既存の発電・蒸気設備に替わる、安全かつ信頼性が高く、クリーンな電力と産業用蒸気を供給する発電所を設置する。本プロジェクトは、米エネルギー省(DOE)が先進炉の展開の加速を目的として開始した、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の中で、5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。 2018年以降、X-エナジー社、続いてダウ社は、高度な燃料設計、受動的安全機能、最先端の分析技術を通じて、Xe-100の安全性を実証し、広範な許認可申請前活動を通じてNRCと協力してきた。建設許可の承認は、最大30か月かかると予想。ダウ社は許可を取得後、財務上のリターン目標を達成しつつ、プロジェクトの遂行能力を確認できれば、建設を開始するとしている。本プロジェクトが実現すれば、2020年代後半に建設を開始、2030年代初めに稼働し、北米の産業施設に配備される最初のグリッド規模の先進炉になると期待されている。X-エナジー社のJ. セルCEOは、「今回の建設許可申請は、米国を先進炉の商業化の最前線に位置づけるという議会とDOEのビジョンを実現するための重要なステップである」「世界クラスのダウ社とともに、テキサス州シードリフトで展開される先進炉を迅速かつ効率的に複製して、全米の驚異的な電力需要の増加への対応を実証する」と意欲を示した。 X-エナジー社は、Xe-100およびTRISO-X燃料製造施設の開発、許認可取得手続き、建設活動が2020年10月にDOEのARDPの支援対象に選定後、Xe-100のエンジニアリングと予備設計を完了、テネシー州オークリッジにおけるTRISO-X燃料製造施設の開発と許認可手続きを開始し、その技術の商業化に向け民間から、約11億ドル(約1,648億円)を調達している。 ダウ社のシードリフト・サイトは、約19㎢の広さを有し、食品の包装と保存、履物、ワイヤーとケーブルの絶縁、太陽電池膜、医療および医薬品の包装など、幅広い用途で使用される材料を製造している。
- 02 Apr 2025
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