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IT企業が約3,000万kWの原子力導入にコミット 米NEI理事長が明言(前編)
米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は5月20日、会員企業やその他の原子力関係者らを招いて毎年開催している「Nuclear Energy Policy Forum」で、原子力産業界の現状に関する講演を行った。同理事長によると、AIやデータセンターからの急速な電力需要増を背景に、大手IT企業が全米で約3,000万kWの原子力導入にコミットしており、その規模は今後さらに拡大する見通しだ。また、連邦政府の原子力支援策が後押しとなり、2024年の原子力分野における民間取引額は、過去4年間の合計額を上回ったという。一方で、原子力発電の維持・拡大には、政策支援の継続が不可欠だと強調。なかでも、原子力税額控除(nuclear tax credits)が維持されなければ、原子力の展開は大幅に減速し、あるいは計画そのものが方向転換を迫られる可能性があると警鐘を鳴らした。同理事長の講演概要は、以下のとおり。♢ ♢この20年間、電力需要は停滞していたが、今、状況は変わりつつある。米国の製造業やイノベーション、人工知能、あらゆる分野でより多くの電力が求められている。AI競争を勝ち抜くうえで必要な大規模データセンターには、来年末までに2,800万kW規模の電力が必要だ。原子力産業界は、これまでの漸進的な成長から、信じられないほどの成長へと転じようとしている。原子力への超党派による支援も続いている。C. ライト米エネルギー省(DOE)長官は、就任わずか3日目に「商業用原子力発電を解き放つ(unleash commercial nuclear power)」という長官命令に署名。これは現政権が、原子力エネルギーの価値を、セキュアで強靭、安価かつ豊富で、今後ますますクリーンなエネルギーシステムの一部として、認識していることの証左だ。原子力産業界も準備を整えている。TVA(テネシー峡谷開発公社)は今朝、GEベルノバ日立社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設許可申請書を提出した。また、ベクテル社、デューク・エナジー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社を含むパートナー連合とともに、DOEによる8億ドルの助成金を申請している。ドミニオン・エナジー社は昨年、ノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)の運転期間延長(80年運転)の認可を取得。加えて、IT大手アマゾンと連携し、SMRの活用に向けた検討を進めている。エンタジー社は、急増する産業部門の電力需要に対応すべく、新設および出力増強を検討中であり、同社は、ミシシッピー州に新たな原子炉建設のための事前サイト許可(ESP)を取得している。コンステレーション社は昨年、マイクロソフトと提携し、かつて運転していたスリーマイルアイランド(TMI)1号機を「クレーン・クリーンエネルギーセンター」として再稼働させる計画を発表した。IT大手では、グーグル、メタ、アマゾンが、世界の大手金融機関14社とともに、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にすることを誓約した。これまでに、グーグルはケイロス・パワー社と500万kW相当の電力購入契約を締結。アマゾンは、X-エナジー社への5億ドルの投資を主導し、500万kWの原子力導入をめざしている。メタも、400万kW分の原子力による電力調達をめざし、提案依頼書(RFP)を発行している。さらに今月には、エレメントル・パワー社は、先進型原子炉の3つのプロジェクトサイトを開発する契約をグーグルと締結した。このように、IT企業と原子力事業者による新たなパートナーシップは、全米で約3,000万kWの原子力導入に向けたコミットメントとなっており、その規模は今後も拡大していく見込みだ。原子力分野への投資熱も高まっている。NEIが毎年開催する資金調達サミットには、今年は3年前の第1回開催時の2倍の参加者が集結。さらに、2024年の原子力分野における民間部門の取引額は、過去4年間の合計を上回る水準となった。こうした民間投資の増加は、公的支援の強化と軌を一にしている。米議会は昨年、ロシア依存の低減をめざし、国内燃料サプライチェーンの強化を目的に約30億ドル、また次世代原子炉の実証支援向けに約10億ドルを拠出。加えて、許認可審査の効率化を含む、クリーンエネルギーの多用途かつ先進的な原子力展開の加速化法(ADVANCE法)も可決した。連邦政府による原子力支援策として、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)や融資プログラム局(LPO)、そして原子力税額控除などがある。これらの政策は、原子力発電の維持・拡大に不可欠であり、今後も維持されるべきである。中でも、原子力税額控除は、良質な雇用、コミュニティの繁栄、そして国家安全保障を支えている。もし議会がこの税制措置を維持できなければ、原子力の展開は大幅に減速するか、あるいは完全に方向転換を余儀なくされる可能性がある。これは、米国の未来を前進させるうえで絶対に避けなければならない。ADVANCE法は、原子力規制委員会(NRC)に対して、安全性を確保しつつ、審査プロセスの効率性も重視するよう求めるもの。NRCは昨年、2021年以来初となる第2回目の運転認可更新(subsequent license renewals)を承認した。対象となったのは、エクセル・エナジー社のモンティセロ原子力発電所(BWR, 69.1万kW)であり、当初24,000時間を要すると予想されていた審査時間は、最終的に16,000時間で完了。審査時間は3分の1に短縮された。このような効率性は、例外ではなく、ルールとする必要がある。州レベルでも支援が拡大している。―テネシー州では、ケイロス・パワー社が2基の新実証炉のうちの1基を建設中。―ワイオミング州では、テラパワー社が同州で最初の商業用原子炉を建設中。―コロラド州は、原子力をクリーンエネルギーと認める法案を可決。―テキサス州は、全米最大規模となる可能性のある、原子力エネルギー基金(Nuclear Energy Fund)を創設中。―アイダホ州では、国防総省(DOD)が国内初のマイクロ原子炉の一基を建設中。(つづく)
- 27 May 2025
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米大統領令 新設の促進やNRC改革を指示
米トランプ大統領は5月23日、原子力エネルギー政策に対する連邦政府のアプローチの再構築を目的とした一連の大統領令に署名した。人工知能(AI)産業、製造業、量子コンピューティングなどの最先端のエネルギー集約型産業での電力需要増に対し、豊富で信頼性のある電力を供給するのがねらい。エネルギー安全保障を確保するとともに、米国の原子力業界の世界的な競争力維持と国家安全保障の強化のため、2050年までに原子力発電設備容量を現在の約1億kWeから4倍の4億kWeとし、このために必要となる原子力の規制緩和を迅速に行う方針だ。具体的には、第3世代+(プラス)炉や先進炉の展開の促進、既存の原子力施設の継続的な運用と適切な拡大を促進しつつ、時期尚早に閉鎖された、または部分的に完成している原子力施設の再活性化を掲げている。そのため米エネルギー省(DOE)が原子力産業界と協業して、2030年までに既存の原子力施設の設備容量を500万kWe増強するほか、新規の大型炉10基の建設に着手することを、DOEの優先作業に設定している。ホワイトハウスで23日に行われた署名式には、国家エネルギードミナンス(支配)評議会の議長を務めるD. バーガム内務長官やP. ヘグセス国防長官のほか、原子力業界の幹部も同席。バーガム長官は「一連の大統領令が、50年以上続いた原子力業界に対する過剰な規制の時計の針を巻き戻す」「米国の電力需要が急増する中、既存の原子力フリートを拡大し、先進炉への投資により、信頼性の高い電力を供給、電力網を強化して、米国のエネルギードミナンスを拡大する」と強調した。なお、一連の大統領令は以下の4つに関するもの。原子力産業基盤の再活性化エネルギー省における原子炉試験の改革原子力規制委員会の改革国家安全保障強化のための先進的原子炉技術の導入C.ライトDOE長官は、「あまりにも長い間、米国の原子力産業は、お役所仕事や時代遅れの政府の政策によって妨げられてきた。AIの出現と大統領の国内製造業強化政策によって、米国の民生用原子力エネルギーは絶好のタイミングで解き放たれている。原子力は、米国にとって最大の追加エネルギー源となる可能性を秘めており、さまざまな規模で運用が可能だ。大統領令は、民生用原子力産業の束縛を解き放つものだ」と語った。ホワイトハウス科学技術局のM. クラツィオス局長は、「過去30年間、原子炉の新設がなかったが、それも今日で終わる。今回の大統領令は、ここ数十年で最も重要な原子力規制改革にむけた措置。強固な米国の原子力産業基盤を回復し、国内の原子燃料サプライチェーンを再構築し、米国が世界の原子力エネルギーを牽引していく。米国のエネルギー安全保障と、AIやその他の新興技術における継続的な優位性にとって重要である」と述べた。大統領令は、DOE傘下の国立研究所における原子炉の設計試験の申請とレビュープロセスの合理化により、迅速な原子炉の商業化を促している。また、国防総省やDOEが、軍事施設や連邦所有地で先進炉の建設にあたり、テストを通して実証された原子炉設計については、原子力規制委員会(NRC)が迅速に承認するなどの規制緩和も示している。AIデータセンターや重要な防衛施設に対する、安全で信頼性の高い原子力による電力供給確保は、AIをめぐる世界的競争、ひいては国家安全保障において不可欠との認識もある。さらにDOEに対し、原子燃料の海外依存を回避するため、国内のウラン採掘と転換・濃縮能力の拡大計画や国内燃料サイクルの強化にむけた勧告を指示するほか、原子力拡大政策を支える労働力の拡大、NRCの改革の必要性を示している。特にNRCに対しては、許認可申請の迅速な処理と革新的な技術の採用を促進するため、政府効率化省との協業によるNRCの再編成、さらに民生用原子力発電の認可と規制に際し、安全性、健康、環境要因に関する従来の懸念のみならず、原子力発電が米国の経済と国家安全保障にもたらす利益を考慮するよう指示。NRCにタイムリーな許認可を出すように要求することで規制上の障壁を取り除きたい考えだ。新規炉は原子炉の種類に関わらず、建設と運転の認可プロセスの簡素化により、数年かかる審査プロセスを18か月に短縮、既設炉の運転期間延長の最終決定は1年以内と期限を定めるなど、許認可の迅速化を指示している。
- 26 May 2025
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米TVA 6月までにSMR建設許可を申請へ
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は4月17日、テネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトにおける、小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトの建設許可申請(CPA)を6月までに行うことを明らかにした。TVAのクリンチリバー・プロジェクト担当のB. ディーシー上級副社長によると、TVAはSMR建設に向けた環境レビューを完了し、6月までにCPAを行う意向を米原子力規制委員会(NRC)に通知。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300(BWR、30万kWe)だが、他炉型の評価も継続しているという。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。またGEH社製のBWRX-300がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトにBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結した。BWRX-300は次世代BWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。TVAはクリンチリバーSMRプロジェクトの開発に、2022年2月に理事会が承認した最初の2億ドルと、2024年4月の継続的な設計および開発作業を支援するための追加出資1.5億ドルを合わせ、合計3.5億ドル(約500億円)を投じている。なおTVAは、米エネルギー省(DOE)が2024年10月に初公募、3月下旬に改訂された米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから助成金8億ドル(約1,144億円)を4月初めに再申請した。これはDOEが同プログラムをトランプ政権の政策と一致させるべく、助成金交付の基準を更新。公募要件を変更し、再申請を求めていたもの。TVAは今年1月には、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、同プログラムに8億ドルの助成金を申請していた。同プログラムは、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設。TVAはBWRX-300が実績のある技術に基づくものとはいえ、初号機プラントであるため、DOEと協力してコストを相殺、顧客へのコスト負担を避けたい考えだ。また、予備的なサイト準備を早ければ2026年に開始を計画している。TVAのJ. ライアッシュCEOは今年1月、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始できる」と言及していた。TVAは1933年、米大統領F. ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発と失業率対策を目的に行われた米政府による公共事業を実施する国有電力企業。現在、アラバマ州、テネシー州において3サイトで計7基の120万kW級の大型軽水炉を所有/運転している。
- 01 May 2025
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米DOE 先進炉開発5社にHALEU供給へ
米エネルギー省(DOE)は4月9日、米国の先進炉開発者の5社に対し、短期的な燃料需要を満たす高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の供給を条件付きで実施することを明らかにした。DOEはこの1回目のHALEU割当てが、革新的な原子力技術の商業化を促し、より安全かつ安価で信頼性の高いエネルギー供給を保証するものと位置付けている。ライトDOE長官は、「今回のHALEUの割当ては、米国の先進炉開発者が安全なサプライチェーンから調達された燃料を用いて先進炉を展開するのに役立つ。米国の原子力部門の再活性化をはかるトランプ大統領のプログラムにおいて重要な一歩だ」と語った。HALEUの割当ては、民間の研究開発、実証、および商業利用に向けてHALEUの国内供給を確保するために2020年に設定された「HALEU利用プログラム」を通じて行われる。多くの先進炉が、既存炉よりも小さな設計、より長い運転サイクル、より高い効率を実現するためにHALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を必要とするが、米国の燃料サプライヤーは現在、HALEUを生産する能力が不足している。そのため、国家核安全保障局(NNSA)管理下の原料や政府所有の研究炉からの使用済み燃料由来の高濃縮ウラン(20%以上のU235)のダウンブレンドを行い、限られた量を製造している状況である。なおHALEUは、通常の商用炉向けの濃縮ウラン製造のプロセスを利用した製造も可能。DOEはウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と提携し、オハイオ州パイクトンの濃縮施設で16台の新型遠心分離機を製造、連結設置し、HALEU製造のための濃縮の実証を行っている。現状のHALEUの需給ギャップを埋めるためDOEは、先進炉開発者によるHALEU供給申請手続きを開始。15社がHALEU供給を申請した。第1回目の割当てでは、優先順位の基準を満たした企業のうち、2025年中に燃料供給を必要とする3社を含む5社を特定した。 今回、HALEUの割当てを受ける5社は以下の通り。TRISO-X社ケイロス・パワー社ラディアント・インダストリーズ社ウェスチングハウス社テラパワー社今回のHALEUの割当てでは、DOEの先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の5~7年以内に実証(運転)可能な炉に選定された企業のほか、アイダホ国立研究所(INL)内の国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉実験機の実証(DOME)テストベッドで試験を計画している企業、さらにARDPの10~14年後に実証を想定したリスク低減プロジェクトの選定企業を対象としている。次のステップとしてDOEはすでに契約プロセスを開始しており、一部企業は今秋にもHALEUを受取る可能性がある。DOEは今後も追加企業へのHALEUの割当てを継続する計画だ。
- 21 Apr 2025
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米テキサス州でXe-100の建設許可を申請
米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社とX-エナジー社は3月31日、テキサス州シードリフトで計画されているX-エナジー社製SMRの高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」(電気出力8万kW)を採用する発電所の建設許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請したことを明らかにした。 ダウ社が提案する先進炉プロジェクトは、同社の完全子会社であるLong Mott Energy社が開発。ダウ社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフトの製造サイトに、運転期間満了間近の既存の発電・蒸気設備に替わる、安全かつ信頼性が高く、クリーンな電力と産業用蒸気を供給する発電所を設置する。本プロジェクトは、米エネルギー省(DOE)が先進炉の展開の加速を目的として開始した、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の中で、5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。 2018年以降、X-エナジー社、続いてダウ社は、高度な燃料設計、受動的安全機能、最先端の分析技術を通じて、Xe-100の安全性を実証し、広範な許認可申請前活動を通じてNRCと協力してきた。建設許可の承認は、最大30か月かかると予想。ダウ社は許可を取得後、財務上のリターン目標を達成しつつ、プロジェクトの遂行能力を確認できれば、建設を開始するとしている。本プロジェクトが実現すれば、2020年代後半に建設を開始、2030年代初めに稼働し、北米の産業施設に配備される最初のグリッド規模の先進炉になると期待されている。X-エナジー社のJ. セルCEOは、「今回の建設許可申請は、米国を先進炉の商業化の最前線に位置づけるという議会とDOEのビジョンを実現するための重要なステップである」「世界クラスのダウ社とともに、テキサス州シードリフトで展開される先進炉を迅速かつ効率的に複製して、全米の驚異的な電力需要の増加への対応を実証する」と意欲を示した。 X-エナジー社は、Xe-100およびTRISO-X燃料製造施設の開発、許認可取得手続き、建設活動が2020年10月にDOEのARDPの支援対象に選定後、Xe-100のエンジニアリングと予備設計を完了、テネシー州オークリッジにおけるTRISO-X燃料製造施設の開発と許認可手続きを開始し、その技術の商業化に向け民間から、約11億ドル(約1,648億円)を調達している。 ダウ社のシードリフト・サイトは、約19㎢の広さを有し、食品の包装と保存、履物、ワイヤーとケーブルの絶縁、太陽電池膜、医療および医薬品の包装など、幅広い用途で使用される材料を製造している。
- 02 Apr 2025
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米DOE SMR初期導入に9億ドルの支援を再募集
米エネルギー省 (DOE)は3月24日、トランプ大統領によるエネルギーおよび人工知能(AI)分野の規制緩和方針に基づき、小型モジュール炉(SMR)の配備に向けて、総額9億ドル(約1,352億円)の支援に対する再申請プロセスを開始した。 C. ライトDOE長官は、「米国の原子力ルネサンスは今始まる。豊富で安価なエネルギーは、米国の経済的繁栄と安全保障のカギだ。本募集は、先進的な軽水炉型SMRの配備を通じて、より多くのエネルギーの送電をめざす、先行企業への行動を呼びかけるもの」と強調した。 米国の電力需要は、消費者のニーズ、データセンターの成長、AI利用の増加、産業部門の恒常的な電力需要によって、今後数年間で急増すると予測されている。DOEは、SMRはエネルギー集約型部門に信頼性の高い電力の提供とコンパクトなサイズおよびモジュール設計により柔軟な設置が可能であり、特に、軽水炉型SMRが、米国の既存の軽水炉を支えるサービスとサプライチェーンの活用により、短い期間で導入可能な利点を指摘する。DOEは、第3世代+(プラス)軽水炉SMRの配備のリスクを軽減するために、次の2つのカテゴリーに分けて資金提供を実施する。1つ目のカテゴリーとして先陣を切る、ファースト・ムーバー・チーム支援(First Mover Team Support)では、DOEは、同時に複数の第3世代+SMRの受注促進を目的として、コンソーシアム・アプローチ、すなわち、電気事業者、原子炉ベンダー、建設業者、エンドユーザーなどがチームとして参加することを条件とし、最大2チームを支援。支援額は最大8億ドル(約1,202億円)。プロジェクト設計に保障措置とセキュリティを取り込むため国家核安全保障局との協業を考慮する。2つ目のカテゴリー、ファスト・フォロワー・導入支援(Fast Follower Deployment Support)では、設計、許認可申請、サプライチェーン、サイト準備などの分野で国内の原子力産業の発展を妨げてきた主要なギャップに対処し、第3世代+SMRのさらなる配備の促進に向けて約1億ドル(約150億円)を支援する。選考は、技術的な利点のみを考慮し、応募締め切りは2025年4月23日。前バイデン政権下で2024年10月に実施された募集時における申請者が再び審査を受けるには、新しいガイダンスに従って提案を再提出する必要があるとしている。詳細は、第3世代+SMRのWebページの参照を呼び掛けている。
- 31 Mar 2025
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米国 国家エネルギードミナンス評議会を設立
米トランプ大統領は2月14日の大統領令により、大統領府内に、エネルギー政策の司令塔となる、国家エネルギードミナンス(支配)評議会を設立した。D. バーガム内務長官が議長を務め、C. ライト・エネルギー省(DOE)長官が副議長を務める。他メンバーには、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、農務長官、商務長官、運輸長官、環境保護庁の管理者、経済政策や国家安全保障問題担当の大統領補佐官らを含む。同評議会は、最終的には国内のエネルギー生産を増やすことによって「エネルギー支配を達成する」ための戦略について大統領に助言することを目的としている。評議会は、大統領から、100日以内に提言と既存の権限下で可能な行動の両方を含む計画の提出を要請されている。同大統領令では、この計画によって「信頼性の高いエネルギーの緊急性など、エネルギー支配に関連する事項について国民的な意識を高める」と指摘。「インフレを押し下げ、経済を成長させ、高賃金の雇用を創出、製造業における米国のリーダーシップを再確立し、人工知能(AI)で世界をリードする。世界中の戦争を終わらせるために商業的および外交的な手段を振るい、力によって平和を回復する。そのためには、信頼性が高く手頃な価格のあらゆる形態のエネルギー生産を拡大しなければならない」と強調する。アメリカのエネルギー支配を政策の基軸に据え、原油、天然ガス、ウラン、石炭、バイオ燃料、地熱など、潤沢な国内資源を活用し、外国からの重要鉱物の輸入依存を減らし、経済を成長させる方針を示している。同協議会は、許認可、生産、発電、流通、規制、輸送、輸出を含むエネルギー産業を取り巻くプロセスを改善するための戦略について大統領に助言する。また、官僚的な形式主義や不必要な規制を廃し、民間部門の投資の拡大、イノベーションの促進など、エネルギー支配を達成するための長期目標を含む、より多くのエネルギー生産を可能にするための国家エネルギー支配戦略を大統領に提出する役目も担う。エネルギー生産の増大という政策目標を実現させる行動の例として、発電設備容量の急速かつ大幅な増加、エネルギーインフラの迅速な承認に加え、閉鎖された発電所の運転再開へ向けた取組みの促進や、小型モジュール炉(SMR)の早期運開を挙げている。
- 28 Feb 2025
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米テネシー州 原子力プロジェクトへの支援を拡大
米テネシー州のB. リー知事は2月10日、州議会において2019年の知事就任から7回目となる一般教書演説を行い、2026会計年度(2025年7月~2026年6月)の予算案について明らかにした。原子力関係予算では7,000万ドル(約105億円)を計上している。リー州知事は、「テネシー州が原子力イノベーションをリードし、アメリカの未来を保障する」と語った。知事自身の提案により2023年、州政府が5,000万ドル(約75億円)を投じて、原子力関連企業の同州への拠点移転支援や同州の大学・研究機関における原子力教育の発展を目的とする原子力基金が創設されている。知事はこの基金の創設を契機に、テネシー州が米国の最先端のエネルギー企業から注目を集めていると指摘。米新興企業のケイロス・パワー社やX-エナジー社のほか、仏オラノ社の米国法人オラノUS社がテネシー州に拠点を置いている現状に言及し、先進的な原子力企業の一層の誘致を目指し、同基金への1,000万ドル(約15億円)の追加投資を予算案に含めていると説明した。ケイロス・パワー社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」にてフッ化物塩冷却高温炉の「ヘルメス」実証プラントの建設工事を開始している。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフト市の製造施設で、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画。また、オラノUS社が遠心分離方式によるウラン濃縮施設の建設候補地に同州オークリッジ市を選定している。また知事は、同州のテネシー峡谷開発公社(TVA)がSMR建設用地として事前サイト許可を有する、クリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)開発支援に向けた基金を創設。5,000万ドル(約75億円)を拠出し、テネシー州を次世代原子力のリーダーとして位置づけると表明した。TVAは今年1月、SMRの建設を検討している主要な公益事業会社や開発者、サプライヤー、建設パートナーと共同で、クリンチリバー・サイトにおける、GE日立製のSMR「BWRX-300」の建設を加速するために、DOEの第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,202億円)の助成金を申請している。このほか、原子力関係の予算案には以下を含む。原子力諮問委員会の勧告に従い、原子力関係従業者の教育支援のため、職業教育投資(Governor’s Investment in Vocational Education: GIVE)に1,000万ドル(約15億円)の追加投資。商業用核融合発電のための米国初の規制枠組みの策定に260万ドル(約3.9億円)。さらに知事は、米国全土および世界中から、米南東部への移転を検討している多くの企業関係者と会うが、その決断は、エネルギー、労働者の有無に左右される、と言及。原子力が労働者階級の家庭にとって重要なのは、エネルギーがなければ、経済発展も雇用創出も無くなるからだ、と強調した。知事は、新興企業、新技術、研究開発を戦略的に支援し、経済の多様化、雇用の促進を図るほか、職業訓練、技術教育を拡大し、テネシー州の若者たちに雇用を確保し、テネシー州が米国最大のイノベーターたちの新たなフロンティアになることを目指す、との決意を表明した。
- 20 Feb 2025
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米国 アリゾナ州で新規建設案が浮上
米アリゾナ州のアリゾナ・パブリック・サービス(APS)社は2月5日、同州にある他電力会社2社と、州内において原子力発電の追加導入を検討すると発表した。APS社はアリゾナ州最大の電力会社。石炭火力発電所の他、州都フェニックス市の西に位置するパロベルデ原子力発電所(PWR×3基、各141.4万kWe)を1986年から運転している。同州のソルト・リバー・プロジェクト(SRP)社、ツーソン電力(TEP)社とともに、同州の増大するエネルギー需要に対応するため、先進的な原子炉の導入可能性評価に共通の関心を持っている。APS社はSRP社およびTEP社と協力して、原子力発電所の新規建設を検討し、閉鎖予定の石炭火力発電所を含む、幅広い候補地を評価する取組みを主導する。3社は、原子力は信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギーであり、経済成長に貢献する、多様なエネルギーミックスの重要な構成要素であるとの認識で一致している。APS社のT. ゲイスラー社長は、「アリゾナ州のエネルギー需要が急激に増大する中、原子力発電所の新規建設には10年以上かかる。エネルギー源の選択肢の検討を今すぐ始めなければならない。他のエネルギー源とともに新たな原子力発電の実現可能性を評価していく」と語った。3社は追加の原子力発電所として、小型モジュール炉(SMR)と、可能であれば大型炉の設置を検討している。アリゾナ州で建設候補地の予備調査を開始するにあたり、すでに米エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)および原子力エネルギー局(NE)による第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラム下の助成金を申請している。助成が承認されれば、3年間のサイト選定プロセスと、米原子力規制委員会(NRC)への事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備が加速されることになる。3社は共同作業により、早ければ2020年代遅くにサイトを選定、2040年代初めには追加の原子力発電所の運転開始を計画している。
- 17 Feb 2025
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米国 DOE長官にライト氏
米上院は2月3日、C. ライト氏の第17代エネルギー省(DOE)長官就任を承認した。賛成59票、反対38票、棄権3票だった。ライト長官は、長官就任後に声明を発表。「トランプ大統領は、アメリカのエネルギー支配を回復するための大胆で野心的なアジェンダを示した。このビジョンの重要な要素は、米国がエネルギー開発とイノベーションにおいて世界をリードすること。DOEは、官僚的な形式主義を排除、常識的な解決策を優先し、米国人の創意工夫を育てることによって、これらの目標を達成していく」「米国民の増大するエネルギー需要を満たすため、米国の潤沢なエネルギー資源を開発し、グローバル・パートナーシップを強化し、新技術を進歩させることによって、エネルギーにおけるリーダーシップを強化する」「アメリカのエネルギーを解き放ち、人々の生活を向上させる」と抱負を語った。長官就任前の1月15日、上院のエネルギー・天然資源委員会でC. ライト長官候補に対する公聴会が開催された際に同氏は、「私の人生の情熱は、人々の生活をより良くすることであり、人々を貧困から救い出すためのエネルギー源に私のキャリアのすべてを費やしてきた。トランプ(次期)大統領はエネルギーに対する私の情熱を共有しており、長官として、手頃な価格で、信頼性が高く、安全なあらゆる形態の米国のエネルギーを活用して、彼の大胆な政策を断固として実施するために尽力する」と宣言。「エネルギーの優位性を回復するために、国内外で米国のエネルギーを解き放つ」「技術革新で世界をリードし、国際競争に勝つため商業用原子力や液化天然ガスを含むエネルギー生産を拡大し、エネルギーコストを削減していく」「そのためには、官僚主義の排除、民間投資の促進、家庭や企業にとってエネルギーをより手頃な価格にするために必要なインフラの構築を優先し、その際に障壁となる許認可プロセスを見直していく」と強調していた。なお同氏は、米国の長期的競争力の確保、エネルギー自立、および国家安全保障のために、原子力エネルギーと先進的原子力ソリューションの研究や新規原子力発電所の建設は不可欠と強調。データセンターや人工知能による電力需要が急増する中、原子力のような大規模なベースロード電源はエネルギー需要を満たし、重要な役割を果たすと指摘。その上で、DOEの先進原子炉実証プログラム(ARDP)の目標と、海外の敵対国の影響力増大に対抗する国内での濃縮ウラン生産の増強やHALEU燃料供給に係わる取組みを支持すると述べた。気候変動問題については、現実的かつ地球規模の課題であるとの認識を示し、異常気象に対処するための最善の道は、低コストで信頼性があり、安全な低炭素エネルギーを提供できるエネルギー技術を大幅に改良することであり、DOE傘下の国立研究所や民間セクターによる最先端の研究によって推進される絶え間ないイノベーションが必要と訴えた。ライト長官は、自らを科学オタク、技術オタク、生涯エネルギー起業家と紹介。マサチューセッツ工科大学で核融合を学び、カリフォルニア大学バークレー校の大学院で太陽エネルギーとパワーエレクトロニクスを研究したという。2011年にリバティ・エナジー社を創設し、石油、天然ガス、次世代地熱発電に取組み、次世代原子力エネルギーおよび新バッテリー技術の分野でも業務提携の経験を有する。マイクロ炉「オーロラ」と核燃料リサイクル開発を進めるオクロ社の取締役も務めた。長官就任を機にこれら民間企業の職は辞すという。なお上院は1月30日、D. バーガム氏の内務長官就任を承認した。同氏は、トランプ大統領にエネルギー政策の司令塔として新設された「国家エネルギー評議会(NEC)」の議長に昨年11月に指名されている。また、トランプ大統領は1月20日、D. ライト氏を米原子力規制委員会(NRC)の委員長に指名した。トランプ大統領は、バイデン前政権が進めた気候変動対策の重視から、化石燃料の積極開発へとエネルギー政策を大転換。大統領就任初日の1月20日に発令した多くの大統領令のうち、エネルギーや気候変動問題に関連するものでは、国内のエネルギー生産の増加と気候・環境規制の縮小の方針が示された。 「国際環境協定における米国第一主義」と題する大統領令では、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づくパリ協定からの米国の再離脱を指示。米政権は1月27日に国連に通知しており、1年後に正式脱退となる。このほか、グリーン・ニューディールの終了と称し、気候危機への取組みに係る前政権の多くの大統領令や規制措置の撤回や改訂がなされ、2022年インフレ削減法のエネルギーインフラ規定の実施もその対象となっている。
- 05 Feb 2025
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米TVA SMRプロジェクトのパートナーを選定
米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は1月23日、テネシー州オークリッジ近郊にある同社のクリンチリバー・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)の建設プロジェクトの初期計画と評価にあたり、米国のベクテル社とサージェント&ランディ社、およびGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社をパートナーに選定し、スケジュールとコスト見積りを共同で作成することを明らかにした。作業期間は1~2年以内と見込んでいる。建設にあたっては、作業プロセスの統合を促進させる、統合プロジェクトデリバリー(IPD)モデルを採用する。TVAの技術協力パートナーである加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社も、IPDモデルを発電プロジェクトに採用し成功を収めており、オンタリオ州のダーリントン・サイトにおけるSMR「BWRX-300」建設プロジェクトでも同モデルを活用しているという。TVAクリンチリバー・プロジェクトのB. ディーシー上級副社長は、「目標とする予算とスケジュール遵守のために企業間で協力し、リスクを共有、コストを削減していく」と語った。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300(BWR、30万kWe)がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結。さらに、2023年3月、BWRX-300の建設を計画している加OPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結した。なおTVAは1月17日、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドル(約1,242億円)の助成金を申請したことを発表している。ただしTVA理事会は、クリンチリバー・サイトでのSMR建設を承認する決議をまだ行っていない。理事会の承認とDOEの助成金交付により、BWRX-300建設の初期活動の加速化が期待されている。またGEH社による同日17日の発表によると、デューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可を進める活動に投資する契約を締結した他、AEP社がインディアナ州スペンサー郡にあるインディアナ・ミシガン・パワー社のロックポート石炭火力発電所サイト内にBWRX-300を設置する可能性について表明したという。DOEの助成金プログラムは2024年、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設された。TVAのJ. ライアッシュCEOは、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始される」「この資金調達により、国内のサプライチェーンの確立を支援し、コストとリスクを軽減するための教訓とベストプラクティスを共有することで、より広範なSMR展開への道が開かれる」と指摘した。
- 04 Feb 2025
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米オクロ社 データセンターの電力供給を加速
米国で先進炉と核燃料リサイクル開発を進めているオクロ社は1月17日、常用電源および非常用電源のプロバイダーであるRPower社と覚書を締結し、オクロ社が開発中の高速炉「オーロラ」発電所の電力とRPower社の天然ガス発電を組み合わせ、データセンター向けの電力供給モデルを展開していくことを明らかにした。RPower社は2021年に設立。重要インフラ企業に電力を提供することに特化しており、データセンターや石油・ガス産業を含むエネルギー集約型産業へのサービスに重点を置いている。オクロ社の顧客基盤は拡大しており、現在の受注残は1,400万kWに達しているという。オクロ社はRPower社と協力して、当面および長期的なエネルギー供給の問題に取り組む。将来的には天然ガス発電への依存から脱却し、拡張性のある持続可能な運用を可能にするとともに、原子力との組み合わせによって大規模容量の電力を必要とする既存のユーザーの他、新規の顧客も獲得したい考えだ。またオクロ社は1月28日、先進的な核燃料技術開発企業である米ライトブリッジ社と、燃料製造施設の共同建設に向けた実行可能性調査を実施、ならびに先進燃料リサイクルに関する協力を模索するための覚書を締結したことを明らかにした。両社は、オクロ社が開発する商業用燃料製造施設にライトブリッジ社の商業用燃料製造施設を併設することで、先行資本支出と継続的な運営費の両面で大きな相乗効果をもたらすことで合意。両社の持続可能な原子力エネルギーソリューションへの取組みは共通しており、先進的な燃料リサイクル技術開発において協力することによる新たなフロンティアの開拓に意気込みを示した。オクロ社は米エネルギー省(DOE)からアイダホ国立研究所(INL)敷地内に液体金属高速炉のマイクロ炉の「オーロラ」を建設するサイト使用許可を取得。INLから燃料材料の提供を受け、DOEおよび傘下の国立研究所と協力して先進的な燃料リサイクル技術の開発に取り組んでいる。ライトブリッジ社も二酸化ウランではなく金属ウラン合金を使用したLightbridge Fuelを開発。DOEの「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」プログラムから過去数年にわたり、Lightbridge Fuelの開発を支援する助成金の交付を受ける他、マサチューセッツ工科大学とテキサスA&M大学におけるDOEの原子力エネルギー大学プログラムを通じて、大学主導の研究に参加している。
- 31 Jan 2025
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米国 WE社が月面マイクロ炉開発を継続へ
米ウェスチングハウス(WE)社は1月7日、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)から月面に原子炉を設置する「月面原子力発電(FSP)」プロジェクト向けのマイクロ炉の概念設計開発を継続する契約を獲得したことを明らかにした。FSPプロジェクトは、NASAが米DOEとアイダホ国立研究所(INL)と協力して実施。月面や将来的には火星での使用も想定する、信頼性の高い電力供給源となる小型の発電用核分裂炉の概念設計の開発に重点を置いている。INLから獲得した今回の新契約は、フェーズ1でWE社が完了した設計作業をベースに、FSPシステムの設計と構成を最適化し、重要な技術要素の試験を開始するもの。NASAはフェーズ1の契約を延長して更に情報を収集、リスクの低いシステム設計をするための要件を設定し、フェーズ2で月面実証の最終的な原子炉設計の依頼を計画する。FSPプロジェクトの継続的な進展により、NASAが掲げる今後10年以内の月面実証という目標の達成が期待されている。NASAによると、FSPシステムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でFSPシステムの能力を実証し、火星等への長期ミッションに道を拓きたい考えだ。WE社は月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、マイクロ炉「eVinci」の小型版を開発している。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。近いうちにINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉のテストベッドで試験を行う予定である。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への継続的な電力供給や地表面での設置において、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的であると、WE社は指摘する。また、この頑丈な炉は可動部分が非常に少なく、故障箇所を減らすことでミッションに応じて柔軟に対応可能。また、操作が簡単で、過酷な宇宙環境にも耐える高い信頼性を実現するとしている。WE社は2022年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとDOEから、月面で稼働可能なFSPシステムの概念設計の提案企業に選定された。NASAの主導により有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」では、2020年代末までにFSPシステムを月面に設置するため、NASAとDOEはこれに間に合うようWE社を含む3社を選定。当初の仕様には、月面環境下で少なくとも10年間連続稼働する電気出力40kWであることのほか、システムが直径4メートル、長さ6メートルの格納シリンダー内に収まること、システムの総重量が6トン以下であること、月面着陸船のデッキまたは別の移動システムからの自律運転が可能であることなどが含まれていた。3社はシステムの初期概念設計を開発するため、INLと12か月契約を締結、各社に約500万ドルが支払われた。WE社は2023年6月、月着陸船やローバーの設計や配備を行うアストロボティック社と、NASAと国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムでの協力可能性を探る了解覚書を締結している。
- 23 Jan 2025
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米WEと韓国企業 知的財産権をめぐる紛争を終結
米ウェスチングハウス(WE)社は1月16日、韓国電力公社(KEPCO)ならびに韓国水力・原子力(KHNP)との間で、知的財産権に関する紛争の終結で合意したことを明らかにした。併せて、WE社は韓国の両社と協力して、現在係争中の訴訟をすべて取り下げる予定であると表明。なお、和解の条件については、当事者間の合意により機密事項となっている。WE社のP. フラグマンCEO(今年3月末にCEOを退任予定)は、「世界的にベースロード電源の需要が高まる中、この合意は両社による新たな原子力プロジェクトを推進するための協力関係の基盤となる」と述べた。一方、KHNPのJ. ファンCEOは、「今回の合意は、両社のより一層緊密な協力関係を構築する契機となる」とし、世界市場での協力体制と競争力を強化する方針だ。この和解を受け1月16日、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官は声明を発表、「民生用原子力部門で数十万人の雇用創出を維持し、数千億ドルの協力プロジェクトを進める道を開く可能性のある大きな成果。私はこれら関係企業とリーダーたちの献身、決意、忍耐力に感謝している」と述べた。WE社は、韓国のAPR1000やAPR1400が同社の技術を組み込んでおり、KHNPはWE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有しておらず、米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけであると主張。知的財産権と輸出管理をめぐり、2022年以降、KEPCOならびにKHNPと係争を繰り広げてきた。国際仲裁ならびに米国での訴訟が進行しており、WE社は仲裁が2025年後半までに決着する可能性は低いとみていた。こうしたなか1月8日、米DOEと韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2024年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印。両政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性が指摘されていた。
- 20 Jan 2025
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米テラパワー 主要機器の供給者を決定
米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は12月18日、同社が開発する先進炉「Natrium」の主要機器の製造契約を締結したと発表した。製造されるコンポーネントと契約先は以下のとおり。原子炉ヘッド:スペイン・Equipos Nucleares(ENSA)炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物:韓国・斗山エナビリティ(旧斗山重工業)原子炉容器:韓国・HD現代重工業回転プラグ:カナダ・Marmenテラパワー社のC. レベスクCEOは、「Natriumはゲームチェンジャーな先進炉。初号機の建設に向けた適切なベンダーチームの結成により、この先進炉を商業化し、世界的なエネルギー需要の高まりに応えていきたい」と抱負を語った。Natriumは34.5万kWeのナトリウム冷却小型高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、負荷追従運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで上昇させ5.5時間以上稼働する。初号機は、電気事業者パシフィコープ社がワイオミング州南西部のケンメラーに所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込んでいる。同社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
- 24 Dec 2024
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米DOE 濃縮ウラン契約の供給者6社を選定
米エネルギー省(DOE)の原子力エネルギー(NE)局は12月10日、「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米国における新たなウラン生産能力の拡大にインセンティブを与えるため、低濃縮ウラン (LEU) の調達契約を締結する6社を選定した。燃料分野において、ロシアの影響を受けない強靭なサプライチェーンを構築しつつ、全米の消費者が安価で信頼できる電力と高賃金のクリーンエネルギー関連の雇用を保証する、米政権の肝入りの施策である。DOE原子力局のM. ゴフ首席次官補代理は、「今回の調達契約は、米国におけるウラン濃縮能力の安全かつ責任ある構築を促進するもの。米国のエネルギー安全保障を強靭にするため、米国内における濃縮ウランの生産能力を向上させなければならない」として、今回の契約締結の意義を強調した。DOEが調達契約を締結したのは以下の6社。LEU供給で競争原理を生み出し、強力な投資の促進をねらう。American Centrifuge Operating, LLC(セントラス・エナジー傘下)General Matter, IncGlobal Laser Enrichment, LLCルイジアナ・エナジー・サービシーズ社(ウレンコ傘下)Laser Isotope Separation Technologies, IncOrano Federal Services, LLCDOEはLEUの新たな国内生産能力を掘り起こし、米国の既存の原子力発電所のほか、将来の先進炉の国内外での展開に必要な燃料供給を確保したい考えだ。DOEはこれらの契約を通じ、濃縮施設の新設、または既存の濃縮施設の拡張により生産されるLEUを購入する。契約は最長10年間、基本報酬として各社に最低200万ドル(約3.0億円)を支払う。DOEは今年6月、米国内産のLEU購入に関する提案依頼書(RFP)を発行。「米国への投資」アジェンダから27億ドル(約4,148億円)を支援することとしている。米国において、原子力は総発電電力量のほぼ2割を供給しており、急速に増加する電力需要を満たし、CO2削減が困難な産業プロセスと運輸部門の脱炭素化に貢献する最大のクリーンエネルギー源。米国のクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たすと考えられている。米国は2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという公約を共同で主導した。この公約の達成には、米国は追加の原子力発電容量を配備する必要があるが、これには大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)、マイクロ炉など、あらゆる規模の新しい原子炉が含まれる。さらに既設炉の運転期間延長、出力向上や、閉鎖炉の運転再開を想定。これら設備容量拡大には、安定した燃料供給源が必要となる。ロシアは現在、世界のウラン濃縮能力の約44%シェアを保有。米国が輸入する燃料の約35%をロシア産が占める。J. バイデン大統領は今年5月、ロシアからのLEU輸入禁止法案に署名し、8月に発効した。一方で、米国の既存の原子力発電所が運転を中断することのないようDOEは、DOE長官が国務長官および商務長官と協議の上、特定の状況下で特定量のロシア産LEUに免除を与えるプロセスを発表。この規定に基づく免除は、2028年1月1日までに終了する。ロシアは11月、対抗措置として、ロシア産濃縮ウランの米国への一時的な輸出制限を決議した。脱炭素化やロシア産原子燃料への依存の回避、エネルギーセキュリティの強化を要因とする、世界的な原子力発電への評価の高まりを受け、世界的に濃縮役務の需要が増加している。英国に本拠地を置く、グローバルな濃縮事業者であるウレンコ社は、米国における濃縮ウランの需要増に応えるため、同社(ウレンコUSA)がニューメキシコ州ユーニスで操業する、米国で唯一の商業用濃縮プラントを拡張し、生産能力の拡大を目指している。同プラントは現在、米国の電力会社の濃縮ウラン需要の約1/3をカバーしている。なお、米原子力規制委員会(NRC)は12月11日、ウレンコUSAに対し、ウラン濃縮レベルを最大10%に引き上げるライセンス修正を承認した。NRCの承認により、既存の原子力発電所の燃料交換期間の短縮や、一部の先進炉への燃料供給が可能となる。
- 18 Dec 2024
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次世代炉導入に向け各国が協力体制を構築
SMRなどの革新的な原子炉の導入に向け、各国が協力体制を構築している。このほど米国はリトアニアと政府間協定を、英国はフィンランドと協力覚書を締結した。米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官とリトアニアのD. クレイビス・エネルギー相は11月26日、米国のワシントンで、リトアニアの民生用原子力発電プログラムの開発に協力する政府間協定を締結した。同協定は、特に第4世代小型モジュール炉(SMR)のリトアニアへの導入に焦点を当てた、米国初となる政府間枠組み。米国は、リトアニアと次世代炉開発における知見を共有するとともに、第4世代のSMRのビジネスモデル分析と開発可能性評価を実施し、リトアニアが掲げる2050年までのネットゼロ達成目標を支援する。リトアニアは、2025年2月に同国を含むバルト三国がロシアの電力網から完全に切り離され、欧州の電力網に接続する予定で、欧州域内でエネルギー輸出国としてシェアを拡げたい考えだ。協定ではSMR導入に係る協力に加えて、リトアニアにおける最高水準の安全とセキュリティの促進や民生用原子力施設の核物質防護・セキュリティの強化のほか、廃止措置、燃料管理、人材育成に係るベストプラクティスなどを協議する専門家交流も想定している。グランホルム長官は「安全、クリーンで信頼性の高い原子力エネルギーは、リトアニアのエネルギー政策上のカナメとなる」と強調。クレイビス・エネルギー相は、「リトアニアの増大するエネルギー需要を満たし、ネットゼロ目標の達成のため、米国の次世代炉開発の知見に期待している」と述べるとともに、リトアニアの地政学的な安全保障、長期的な経済成長、技術力向上にも資する、本協定の意義を強調した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、チョルノービリと同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の同プロジェクトへの支持を問う国民投票では、新規建設に対する否定的な意見が優勢となり、計画は2016年に凍結された。リトアニアの総発電電力量は約57億kWh(2023年実績)で、その内、約73%を再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)、約11%を火力発電(天然ガス)が占める。現在の電力消費量は約120億kWh。エネルギー部門の脱炭素化と電化には大量の追加電源が必要であり、2050年代には約6倍の740億kWhへの増大を予想する。そのため、エネルギーシステム全体の均衡を保ち、再生可能エネルギーへより多く投資することを可能にするSMRの導入を推進したいとし、2028年にはSMR建設の決定を目指している。 英国はフィンランドと一方、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とフィンランド経済雇用省は11月18日、民生用原子力エネルギー分野における協力覚書(MOU)を締結した。協力の対象分野は、SMRや先進モジュール炉(AMR)のような革新技術の導入、既存・新設炉を対象とした燃料供給の多様化、SMRやAMRの効率的な導入に係わる規制組織間の意見交換、資金調達、使用済み燃料最終処分を含む放射性廃棄物管理と廃炉、原子力安全とセキュリティ、人材育成など。これらの分野で知見やベストプラクティスを共有し、両国の産官学の政策・技術・学術関係者の交流や、民間企業間の緊密な協力によるビジネスの機会の促進を図る。両政府は、SMRやAMRなどの新原子力技術が、エネルギーセキュリティと気候変動の双方に革新的な解決策となる可能性を認識。発電だけでなく、熱生産および水素製造、その他の非電力用途の原子力技術の研究開発でさらに協力する機会を模索したいとしている。今回のMOUにより、英国の輸出信用機関である英国輸出信用保証局(UKEF)は、英国の商品やサービスを購入するフィンランドを拠点とするプロジェクトに対し、最大40億ポンド(約7,600億円)の融資支援が可能となる。UKEFは、英国製SMRのフィンランドへの導入を念頭に置いている。フィンランドの輸出信用機関であるフィンベラ(Finnvera)も、フィンランドの商品やサービスを購入する英国を拠点とするプロジェクトに対して同様に資金提供が可能になるという。
- 04 Dec 2024
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米国とウクライナ SMR導入プロジェクトで連携
アゼルバイジャンのバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議 (COP 29)会期中の11月16日、米国のB. ジェンキンス国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)とウクライナのG. ガルシェンコ・エネルギー相は「小型モジュール炉(SMR)の責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラム下で実施する、三つのプロジェクト・パートナーシップを発表した。気候目標の達成、エネルギー安全保障、経済成長、先進的な原子力エネルギー利用において、ウクライナの戦後のリーダーシップ展望を支援するのが目的。FIRSTは米国務省(DOS)が主導し、核セキュリティ、原子力安全、核不拡散に関する最高レベルの国際水準の下で、エネルギー安全保障とクリーン・エネルギーの目標達成にSMRの可能性を探る国々を支援する。発表イベントには、駐アゼルバイジャンY. フシェフ・ウクライナ大使、米エネルギー省(DOE)M. ゴフ次官補代行、米アルゴンヌ国立研究所P. カーンズ所長、米電力研究所(EPRI)N. ウィルムハースト上級副所長も参加し、3,000万ドル(約46.2億円)を投じて、以下の三つの支援プロジェクトを開始する。SMRクリーン燃料パイロットプラント建設(フェーズ2)(Clean Fuel Project)ウクライナにSMRパイロットプラントを建設し、農業肥料の主成分である水素とアンモニアの生産を実証する。日本、韓国、ウクライナ、米国の多国籍官民コンソーシアムによって実施(COP 27で発表されたフェーズ1に続く)。プロジェクト・フェニックス中・東欧で進行中のプロジェクト・フェニックスを拡張し、ウクライナの石炭火力発電所を既存インフラを活用したSMR発電所にリプレースし、人材の再訓練を促進する。サイト調査と実現可能性調査を実施、包括的な送電網の統合戦略を策定し、石炭からSMRへの転換に関する助言を行う。SMRによるクリーン・スチール・ロードマップの作成(Clean Steel Project)SMRを利用した、ウクライナ鉄鋼産業の再建、近代化、脱炭素化のためのロードマップを作成、技術支援を行う。鉄鋼の生産にSMRによる電力、プロセス熱、水素を利用する道を開く。ガルシェンコ・エネルギー相はオンライン・スピーチで、「ウクライナは原子力に未来を託している。我が国はチョルノービリ事故を乗り越え、現在はロシアによる欧州最大の原子力発電所であるザポリージャ発電所の占拠という前代未聞の困難に直面しているが、既存の原子力発電所の近代化、新規原子力発電所の建設計画を実行し、前進を続ける」と語った。ウクライナでは、老朽化やロシアの攻撃により損傷した火力発電所のSMRへのリプレースを検討するほか、SMRの建設候補地として、チョルノービリ原子力発電所の周辺ならびに立入禁止区域内も検討されている。今年10月初め、国家立入禁止区域管理庁(SAUEZM)、原子力発電会社エネルゴアトム社、およびチョルノービリ原子力発電所の専門家が現地を視察、これらの場所がSMR建設に適しているか技術的な検討を行っている。なお、エネルゴアトム社は、エネルギー戦略の一環としてSMR導入計画を進めており、SMR開発会社と多くの協力覚書を締結している。
- 26 Nov 2024
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米規制委 実証炉「ヘルメス2」の建設許可発給へ
米原子力規制委員会(NRC)は11月20日、米ケイロス・パワー社によるテネシー州オークリッジでの「ヘルメス2」実証プラント建設プロジェクトに関し、建設許可の発給を決定した。近く発給される見込み。ヘルメス2は、米国で建設が承認された初の第4世代の発電炉(2万kWe)となる。ケイロス社は2023年7月、NRCにヘルメス2の建設許可を申請。NRCは2024年7月に最終安全性評価を、2024年9月にサイトの最終環境アセスメントを公表していた。ヘルメス2の稼働にあたっては、別途、NRCによる運転認可の審査と承認が必要である。今回のヘルメス2の建設許可発給の決定にあたり、NRCのC. ハンソン委員長は、「安全性を最優先にしながら、許認可手続きは非常に効率的に行われ、18か月足らずで発給を決定した。期間の短縮は、以前の審査で用いた関連する結論を迅速に適用した結果である」と述べた。迅速化には、簡素化されたヒアリング手続きの効果もあるという。ヘルメス2は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設されるヘルメスに隣接。ヘルメスで採用される、フッ化物塩冷却高温炉(非発電炉、3.5万kWt)を2基ならびに共有する発電設備(2万kWe)を備える。安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉設計を簡素化しているのが特徴。2023年12月、NRCはヘルメスの建設許可を発給、今年7月には、土木工事(掘削作業)が開始されている。ヘルメスは、2023年12月、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉で、2027年に運開予定だ。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減し、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(32万kWt、14万kWe)の完成を目指している。ケイロス社は今年10月、米IT企業大手Google社と、ケイロス社が開発する先進炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結している。
- 25 Nov 2024
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米ラディアント マイクロ炉開発に進展
米エネルギー省(DOE)は11月14日、スタートアップ企業のラディアント社が、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「Kaleidos」プロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) プロセスを完了したことを明らかにした。マイクロ炉「Kaleidos」は、早ければ2026年半ばにもINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始する。ラディアント社のT. シバナンダン最高執行責任者は、「FEEEDプロセス完了は大きなマイルストーン。多くの設計レビューを行い、概念安全設計報告書も提出。すべて予定通り、予算内で実施した」と語り、INL/NRICとの今後の連携に意欲を示した。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するウェスチングハウス(WE)社、ラディアント(Radiant)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に対し、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。DOMEテストベッドは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してNRICが改修中。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。ラディアント社は引き続き、NRICと協力して「Kaleidos」試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保に着手する。なお、米WE社のマイクロ炉「eVinci」はFEEEDプロセスを今年9月に完了している。USNC社は高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」(0.1万kWe)を開発していたが、同社は破産申請ならびに業務継続を条件とする売却手続きを今年10月末から実施している。「Kaleidos」は電気出力0.12万kW、熱出力0.19万kWの高温ガス冷却炉。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用し、運転サイクルは5年。コンパクト設計のすべてのコンポーネントは単一の輸送コンテナに梱包されるため、迅速な配備が可能。遠隔地のディーゼル発電機の代替から、病院、軍事施設、データセンターへのバックアップ電源や、熱供給、海水脱塩まで、幅広い用途に対応する。
- 21 Nov 2024
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