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放射線を活用したコシヒカリの画期的な育種に反対運動 いまこそ放射線教育を!
二〇二三年十一月十六日 みなさんは「コシヒカリ環1号」という名の品種をご存じだろうか。人体に有害なカドミウムをほとんど吸収しない画期的なコメである。しかし、放射線を当てて育種したコメのためか、一部の生協や市民団体から反対運動が起きている。まさか、放射線を活用した育種にまで反対運動が起きるとは、予想もしていなかった。原子力関係者はこうした動きに無関心であってはいけない。イオンビームで画期的なコシヒカリが誕生 植物に放射線を照射して遺伝子に突然変異を作り出し、その中から有用な品種を選抜して育てていく品種改良は一九五〇年代から行われてきた。放射線(ガンマ線)を当てて生まれた、ナシ黒斑病に強い「ゴールド二十世紀」(一九九一年に品種登録)は、放射線育種の有用性を示す代表的な例である。 最近では、カドミウムをほとんど吸収しない画期的な稲の品種「コシヒカリ環1号」が生まれ、二〇一五年に品種登録された。農研機構農業環境研究部門の研究グループが開発した。なぜ、カドミウムを吸収しないコメが重要かと言えば、もともと日本のコメは他国に比べて、カドミウムが多く含まれる。鉱山の採掘や金属の製錬などでカドミウムが高濃度に含まれる土壌が各地にあるからだ。カドミウムが原因で起きたとされる富山県の神通川流域の「イタイイタイ病」はそうした弊害の典型的な例である。 意外に知られていないが、日本の主食のコメに含まれるカドミウムの濃度は、総じて他国よりも高い。そして、そのコメのリスクは、食べ物から時々検出される残留農薬のリスクよりも確実に高いことは、専門家の間でよく知られた事実である。 こうした背景を考えると、少しでもカドミウムの含有量の少ないコメが普及したら、日本人の健康度を上げることは間違いない。その意味で、農研機構の研究グループがコシヒカリの種子にイオンビーム(人工放射線の一種)を照射して突然変異を作り出し、その中からカドミウムをほとんど吸収しないコメを選抜育種したのは歴史的な快挙と言ってよい。 この画期的な品種は、照射によって、カドミウムの吸収にかかわる遺伝子(OsNRAMP5)が欠損して生み出された。植物の成長に必要なマンガンの吸収が低くなるという弱点(肥料としてマンガンを与えれば、この問題は解決される)はあるものの、すぐれた品種なのは間違いない。「あきたこまちR」も誕生 最近は、この「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」を交配させた「あきたこまちR」も生まれた。これは、カドミウムをほとんど含まない「あきたこまち」で、味、品質とも従来の「あきたこまち」と変わらない。すでに「あきたこまちR」は秋田県の奨励品種になり、二〇二四年度から種子生産が始まり、二〇二五年度から一般作付けが始まるという。 秋田県にはかつて鉱山があり、カドミウムの多い土壌が残る。実は、「コシヒカリ環1号」は秋田県出身の研究者が中心となって開発した。その意味でカドミウムのきわめて少ない「あきたこまちR」は秋田県民だけでなく、全国民待望のコメだと言ってよいだろう。秋田県が「あきたこまちR」に全面的に切り替えるのは極めて理にかなったことである。どう見ても、農業生産者、そして消費者にとって大きな朗報である。放射線育種に反対運動 ところが、悲しいことに、こういう素晴らしき品種改良に対しても反対運動が起きている。 秋田県が「あきたこまちR」を導入しようとしていることに対して、今年夏、秋田県で反対派による学習会がいくつかの地域で開かれた。他県でも「コシヒカリ環1号」の導入に対して、「自然派」と名のつく一部生協や市民団体が反対運動を始めた。十月三十一日には食品照射に反対する全国集会(主催・照射食品反対連絡会)が衆議院会館で行われ、立憲民主党の議員らが参加して気勢を上げた。 反対理由は①「自然界ではありえない致死量の重イオンビームを使って、人為的に遺伝子を破壊して生まれた品種は、従来の育種とは一線を画する。安全性の評価もない」②十年後、二十年後にどんな影響が起きるか予測できない③秋田県産のコメに対する風評被害が起きる──などだ。突然変異は自然界でも起きている 筆者から見れば、言いがかりとしかいいようのない反対である。そもそも植物の遺伝子の突然変異は、自然界において太陽の紫外線や宇宙線、大地からの放射線によっても生じている。放射線を人為的に当てて起こした突然変異も、自然界で起きている突然変異と何ら差はない。このことはほぼ科学者の共通認識だと以前から思っていた。反対運動が起きるとは夢にも思っていなかったが、筆者の認識は甘かったようだ。 いうまでもなく、植物の育種の最初の段階で一度だけ、致死量の放射線を当てたからといって、その種子から生まれてくる次世代以降の植物に放射線が残っているわけではない。後代の植物が放射線を出すこともない。食品照射は西欧でも認可 育種に限らず、食品に放射線を当てて殺菌する技術は世界50か国以上で認められている。英国、フランス、イタリア、オランダなどではタマネギやニンニク、ジャガイモ、シリアル類、冷凍エビなど幅広く照射されている。英国やドイツ、オランダなどでは健康食品類の約三割が照射されていたという調査結果があるくらいだ(「食品照射の海外の動向」等々力節子氏参照)。 もちろん、照射された食品や育種の最初の段階で放射線を用いた後代の植物が、健康被害をもたらしたというデータは存在しない。むしろ、カドミウムの含有量が極めて少ない「あきたこまちR」でいえば、カドミウムの残留基準値を厳しくしている海外への輸出も可能になり、販路拡大のチャンスにもなりうる。 放射線は人のがん治療でも大きく貢献している。人が全身に浴びれば致死的な量になるレベルの放射線を、がんの患部に当てて治す治療法まで行われていることを考えると、植物の育種の段階で放射線を活用する照射に対して、なぜ反対運動が起きるのか不思議でしようがない。植物への照射と人への影響は全く無関係である。放射線利用のジャガイモ供給が終了 ただ残念なのは、世界では常識となっている食品への照射が、日本では食品衛生法によって原則として禁止されていることである。その中で例外的に、一九七四年から北海道の士幌町アイソトープ照射センターで、ガンマ線を利用した芽止めジャガイモが出荷されてきたが、昨年で使命を終え、((運用開始から五十年を経過し、老朽化のため今年三月に閉鎖された。建て替えも検討されたが、昨今の建設費高騰や、線源であるコバルト60のコスト高の影響等で採算が見込めず、見送られた。))施設の解体が始まった。このジャガイモに対しても、市民団体は「反対運動の勝利」と自らの活動をたたえている。 原子力の平和利用は、エネルギーだけではない。放射線を用いた育種や食品照射も重要な貢献分野である。ジャガイモの放射線利用がなくなったことで、日本での食品照射はなくなった。かつて海外並みに日本の香辛料にも照射を認めてほしいという事業者の活動もあったが、反対運動によって頓挫した。こんなことで本当によいのだろうか。小学生から放射線教育を 日本は遺伝子組み換え作物を大量に海外から輸入しながら、自国ではだれ一人として栽培していない。いや栽培できない。反対運動があって、栽培できないからだ。これと似たことが食品照射でも起きていると言ってよいだろう。そして今度は、放射線を利用した育種にも反対運動が襲いかかる。 放射線育種に反対している人たちは、原子力発電だけでなく、遺伝子組み換えやゲノム編集食品にも反対している。このままだと日本では新しいテクノロジーの芽が生まれないのではないか。そんな危機感を痛烈に覚える。原子力に関係する人たちは、エネルギーとしての原子力だけに関心を持つのではなく、放射線育種や遺伝子組み換え技術にももっと関心を持つべきだろう。いわずもがなだが、しっかりとした放射線教育が小学校の段階から必要だとつくづく感じる。士幌町のアイソトープ照射センター
- 16 Nov 2023
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原子力発電所事故の「風化」が課題に 福島大の学生調査
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故後の福島に関する学生の知識が、時間の経過とともに薄れている。福島大学教育推進機構の前川直哉准教授らが同学学生を対象に実施した調査で明らかになったもの。〈福島大発表資料は こちら〉11月1日に発表された同調査結果によると、2019~22年度、福島大の一般教養科目「ふくしま未来学入門」を受講する学生を対象に、成績とは無関係の調査・研究目的として、同一の設問で震災・原子力発電所事故に関する知識チェックを実施したところ、20点満点の平均得点は、2019、21、22年度で、それぞれ9.5点、8.6点、8.1点と低下傾向にあり、学生の知識が時間の経過とともに薄れてきている多くの設問で正答率の低下がみられたが、「事故を起こした発電所の正式名称」、「シーベルトの定義」に関する設問では正答率が上昇した福島県内出身者の得点は、「福島県以外の東北地方」、「東北地方以外の国内」の出身者よりも統計的に優位に高かった――ことが明らかになった。調査で実施した知識チェックは、「震災と原発事故」、「原発事故と避難」、「放射線と除染」、「現在の福島県」の4セクションに分類され、各セクション5問・全20問で5者択一形式。計968名の学生が回答した。その中で、「福島第一原発でつくられた電気の供給先」との設問(正解は、つくられた電気は首都圏など、東京電力管内に供給されていた)では、正答率が2019、21、22年度で、それぞれ49.6%、47.0%、33.9%と、大幅に低下。この他、正答率が低下した設問としては、「風向きの影響で多くの放射性物質が降り注いだ方角」、「ピーク時の県内外への避難者数」などがあった。また、県内・県外の出身者で正答率の差が大きかった設問としては、「除染の具体的作業」(正解は、表土をはぎ取る)があり、正答率は、福島県で84.4%、福島県以外の東北地方で46.2%、東北地方以外の国内で51.7%だった。今回の調査結果を踏まえ、研究グループでは、「震災・原発事故に関する『風化』は確実に進行している」と懸念し、「学校と社会全体で知識を伝えていく必要がある」などと分析・考察している。
- 15 Nov 2023
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気候変動対策は若手への啓発が課題 内閣府世論調査
内閣府は11月10日、7~9月に18歳以上の日本人3,000人を対象として実施した気候変動に関する世論調査(2023年7月調査)の結果を発表した。有効回収数は1,526人。今回の調査結果では、前回実施した2020年11月の調査と比較を行っている。それによると、地球環境問題に対する関心で、2020年11月調査と今回の調査とを比較すると、「関心がある」との回答はそれぞれ88.3%、89.4%、「関心がない」との回答はそれぞれ9.3%、9.8%と、いずれも微増(無回答が1.5ポイント減少)。気候変動対策のための国際的枠組み「パリ協定」の認知度については、「知っている」が84.0%から78.8%に減少。2020年11月調査は日本政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言した頃に実施されたが、脱炭素社会の認知度については、「知っていた」が68.4%から83.7%に増加。気候変動が及ぼす農作物の品質低下、気象災害のリスク増加などの影響に関しては、「知っていた」が93.6%から87.6%に減少したこうした気候変動問題や脱炭素社会に関する関心の度合いや認知度は、若年層で低く、年齢層が上がるにつれ高まる傾向がみられた。特に、2023年3月に発表された今世紀中の1.5℃気温上昇を予測している「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)統合報告書については、「知っている」と回答した割合が、18~29歳で12.1%、30~39歳で20.0%、40~49歳で25.5%、50~59歳で37.3%、60~69歳で54.5%、70歳以上で64.3%と、その傾向が極めて顕著で、気候変動対策に向け今後は若い世代への啓発が課題といえそうだ。脱炭素社会の実現に向けた取組意欲については、「取り組みたい」との回答が、2020年11月調査で91.9%、2023年7月調査で90.2%と微減。今回の調査で、日常生活で行っていることとしては(複数回答可)、「こまめな消灯、家電のコンセントを抜くなどによる電気消費量の削減」が最も多く70.1%で、「軽装や重ね着などにより、冷暖房の設定温度を適切に管理」の60.7%、「冷蔵庫、エアコン、照明器具などの家電製品を購入する際、省エネルギー効果の高い製品を購入」の47.8%が、これに次いでいる。また、昨今の社会情勢を反映し、「宅配便の1回での受取り、または宅配ボックスでの受取りなどによる再配達の防止」が、前回調査の27.2%から今回調査では32.4%に増加。気候変動の影響に対処し被害を防止・軽減する取組「気候変動適応」を実践する上での課題としては、「経済的コストがかかること」をあげる割合が37.3%から47.4%に急増していた。
- 13 Nov 2023
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WNU-SI 日本参加者が報告会
原子力分野で国際的に活躍する若手のリーダー育成を目的とした「世界原子力大学・夏季研修」(WNU-SI)が、今夏、初めて日本で開催された。〈既報〉WNUは、世界原子力協会(WNA)が国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)他の協力によって2003年に設立した国際教育訓練パートナーシップ。2005年以降、毎夏、世界各地で開催するWNU-SIには、これまでに千人を超す研修生が参加している。今回、日本原子力産業協会の「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援を受けた5名を含む、計7名の日本人参加者の報告会が10月18日に行われ、6月25日~7月28日の5週間にわたる研修成果が報告された。研修プログラムは、各国の原子力産業界や国際機関の現役リーダー・OBらの指導による講義・グループワーク、および施設見学が中心。講義を踏まえ日々与えられるテーマについて10名程度の研修生らで議論し発表し合うグループワークでは、原子力発電を導入しようとする国を想定し、その国の政府や企業の立場から原子力産業のあり方や地域住民への説明内容を発表するという課題もあった。研修に参加した東京電力ホールディングスの滝口剛司さんは、「客観的視点で自国の原子力産業を振り返る契機となった」とするとともに、グループワークで政府広報マンの役として発表した経験から、「まずは『伝えよう』とすること、たとえ初歩的な質問であっても自ら『議論に参加しよう』という姿勢が必要」と、コミュニケーションの重要性を強調した。また、日立GEニュークリア・エナジーの多田岳史さんは、研修生らとの議論を通じ、「『他のやりかた・言い方がないか?』と常に自問する」姿勢を学んだ一方、「あまり差のない2つの案の間で悩み、議論が止まる」場面に戸惑った経験から、リーダーシップの涵養に向け、適応力と決断力を身に付ける必要性を強調。昨今のAI普及から英語プレゼンにおけるChatGPTの有用性にも言及した。今回のWNU-SIでは、小型モジュール炉(SMR)や核融合など、革新的原子力技術に係る内容が拡充され、ITER機構主席戦略官の大前敬祥氏も講義。関西電力の的場大輔さんは、「特にアフリカ諸国からはSMR導入への熱い視線を感じた」などと、研修の所感を述べたほか、自身が主な業務とする新型燃料開発に関し、今後、海外の原子力技術者との交流を深めていくことに意欲を示した。研修プログラムの一環となるテクニカルツアーでは、福島第一・第二原子力発電所などを見学。同施設で通訳を任された東芝エネルギーシステムズの中村勇気さんは、「事故発生当時は学生だった。当事者の視点に立つ貴重な経験となった」と振り返った。講義・グループワークの放課後を利用し行われた異文化交流では、国ごとにブースを出展し伝統芸能や特産物などを紹介。日本ブースでは、参加国の味覚に応じた日本酒、伊勢銘菓「赤福餅」などが振る舞われ、特に国内でも親しまれているスナック菓子「うまい棒」には絶大な人気が集まったという。会期中、懇親会、スポーツ観戦、ショッピングなどを通じ海外研修生との交流を深めたという日立GEニュークリア・エナジーの皆川祐輔さんは、「文化の違いを実感した」としたほか、コミュニケーション能力に関して「『わからないことを“わからない”と伝える』のに最も苦労した」などと振り返った上で、日本の文化、歴史、政治的考え方をあらためて勉強し直すことを今後の抱負として述べた。次回のWNU-SIは、2024年6月2日~7月6日にブラジル(リオデジャネイロ)で開催予定。原産協会では11月24日まで、「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援対象者を募集している。*「向坊隆記念国際人材育成事業」の概要、これまでのWNU-SI参加報告、次回WNU-SIの支援対象者募集は、こちら をご覧ください。
- 10 Nov 2023
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教育WSを10年ぶりに開催 NUMO
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、教育関係者(教員を目指す学生も含む)を対象としたワークショップを、9月16日の福岡市会場を皮切りに開始した。「高レベル放射性廃棄物の最終処分」について、学校の授業で取り上げてもらうことを狙った同WSの開催は、10年ぶりとなる。地層処分事業は、まだ多くの国民に知られているとは言いがたい。しかも長期にわたることから、次世代層にも知ってもらうため、学校教育が一つのカギとなる。今回、NUMOでは、同WSを、教育現場からの「『エネルギー自給率の向上や脱炭素化を図っていく流れの一つに地層処分がある』といったストーリー性のある授業が必要」との声に応える形で企画。初回のWSに参加したのは、福岡県内の学校教員ら8名。専門家による講演、NUMOからの情報提供をもとに、グループワークを通じ意見交換が行われた。講演ではまず、世界のエネルギー動向を巡り「日本がエネルギーとどう向き合う必要があるのか」、理科教育に関連し「エネルギーに関する単元がSDGsの目標とどう関連するのか」などと問題提起。これを受け、グループワークでは、今後のエネルギー教育に関し「すべての教科を横断的して扱うべきテーマだ」との指摘があった。さらに、NUMOからは、地層処分について、次世代層への教育を支援する意義、支援内容などについて説明。その中で、NUMOは、教育支援ツールの一つとして、ボードゲーム「地層処分って何だろう? ジオ・サーチゲーム」を紹介し、同ゲームのプレイ体験のあるWS参加者からは、「異なる意見を交わし合い議論するには非常によい教材。是非授業で活用してみたい」といった期待の声もあがった。一方で、「地層処分だけに多くの時間を割くのは難しい」と指摘する参加者も。こうした意見交換を通じて、授業での地層処分問題に関する取扱いに向け、事情の異なる教員らが交流する必要性などが浮き彫りになった。初回のWSを終えて、NUMOの担当者は、「エネルギー教育では、発電と消費については比較的授業で取り扱いやすいが、高レベル放射性廃棄物については、学習指導要領に載っていないのが現状。このようなWSを通して、少しでも関心を持ち授業で扱ってもらえたらありがたい」と、話している。同WSは引き続き、愛媛県松山市(9月30日)、福井県(日程未定)と、開催される運び。
- 29 Sep 2023
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日立 PRイベントを開催
日立製作所は9月20、21日、顧客・ビジネスパートナーとの「協創に向けたきっかけ作りの場」とする日立グループのイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」を、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催。4年ぶりの対面開催となった今回は、有識者を交えた討論、最新の技術開発の成果を紹介する展示など、60以上のセッション・ブースが設けられ、人気のコーナーには入場待ちの行列ができるほどの盛況ぶりだった。21日に行われたセッション「脱炭素社会における原子力の役割」(モデレーター=間庭正弘氏〈電気新聞新聞部長〉)では、日立製作所原子力ビジネスユニットCEOの稲田康徳氏他、東京大学公共政策院特任教授の有馬純氏、脳科学者の中野信子氏が登壇。カーボンニュートラル実現に向けた原子力の果たす役割、人材確保・科学リテラシーに係る課題を巡り意見交換がなされた。稲田氏は、エネルギーに由来するCO2排出量の各国比較データを示し、日本のエネルギー需給における脱炭素化の課題として、「化石由来の電源を減らすことが大変重要」と強調。さらに、東京大学との共同研究による試算から、今後のデジタル社会の発展に伴い「日本の電力需要は現在の1.5倍程度となる」可能性を示した。一方で、「天候の影響を大きく受ける再生可能エネルギーは、電力系統の安定性からも課題がある」と指摘。その上で、原子力発電のメリットについて、「運転時にCO2を排出しないという基本的価値に加え、天候の影響を受けず、昼夜を問わず大規模な電力を安定的に供給できる。ベースロード電源として最適」と述べた。日立の取り組む新型炉開発について、稲田氏は、米国GE日立と共同開発する電気出力30万kW級小型炉「BWRX-300」と、135~150万kWの大型炉「Hi-ABWR」(Highly innovative ABWR)を紹介。それぞれの技術的・経済的特長・開発スケジュールについて説明した。科学技術行政に係る取材経験の豊富な間庭氏は、“Innovation”を切り口に原子力に対する人々の理解に関し問題提起。これに対し、脳科学・心理学で多くの著書を有する中野氏は、社会学的観点から、人々の「不安」に関しては、それを背景とする数多くの映画・小説が発表され「エンターテイメントにもなっている」とする一方、「安全」に関しては、「日常不可欠のことでまったくエンターテイメントになっていない」と述べ、「実際、エンターテイメントは人々の『不安』をもとに創られている」と指摘。さらに、「正しく怖がる」科学リテラシーの重要性について、昨今の新型コロナに係る情報流布にも言及し、「残念ながら十分とは言えない。現代社会を生きていくには不可欠のもの」と強調し、理科教育、教員の育成、いわゆる「大人の学び直し」の必要性などを訴えた。展示会場ではデモも、写真は人間が行うような複雑作業を高放射線環境下で実現する「筋肉ロボット」また、間庭氏は、原子力産業のサプライチェーン維持・強化の観点から、人材育成の問題を提起。これに対し、高等教育の立場から有馬氏は、「日本の学生は講義を聴くだけで、人前で発言しない傾向にある。一方で、海外の学生は子供の頃から『議論しながら確かめていく』マインドが養われている」と、コミュニケーション能力の課題をまず指摘。さらに、稲田氏は、バーチャル空間やシミュレーションなど、デジタル技術を活用した技術伝承の取組を紹介したほか、海外プロジェクトへの参画を通じ若手に対する原子力技術への関心喚起を図っていく考えを示した。
- 22 Sep 2023
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原子力学会 高校教科書で調査報告
新学習指導要領で新設された「公共」の教科書(数研出版ホームページより引用)日本原子力学会の教育委員会は9月12日、高校教科書におけるエネルギー・環境・原子力・放射線関連の記述に関する調査報告書を発表した。同委員会では、1995年以来、初等中等教育の教科書に係る課題認識から、これまで17件の調査報告書を公表し、文部科学省を始め、各教科書出版会社などに提出しており、その具体的な要望・提言が教科書の編集に検討・反映されることにより、記述の改善が促されている。今回、調査を行ったのは、高校の主として中学年用に2023年度から使用されている地理歴史(地理総合、地理探求、日本史探求、世界史探求)、公民(公共、倫理、政治・経済)、理科(物理、化学)、工業(電力技術Ⅰ、工業環境技術)の検定済み全教科書計39点(2022年度入学生から適用されている新学習指導要領に基づく)。調査結果を踏まえ、報告書では、前回、2022年度に高校教科書(地理歴史、公民、理科、保健体育)を対象に実施した調査と同様、全般的に、可能な限り最新のデータ・図表を使用するとともに、原子力・放射線についての用語・単位は正しく使用、記載、説明するよう要望。その上で、福島第一原子力発電所事故に関する記述国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)に基づく事故評価の考え方わが国および世界各国の原子力エネルギー利用の状況に関する記述各エネルギー源のメリットとデメリットに関する記述放射性廃棄物に関連する記述放射線および放射線利用に関する記述地球環境問題に関連した記述原子力エネルギー利用についての多様な学習方法の拡充――について提言している。福島第一原子力発電所事故に関連した事項は、「化学」と「物理」の一部を除くほとんどの教科書で記載されていた。報告書では、放射線被ばくによる健康影響に関するより正確な記述をあらためて求めるとともに、事故後10年以上を経た現在の復興状況として、地元の若者たちの将来を見据えた新しい取組や明るい一面についても可能な範囲で紹介するよう要望。INESに関しては、今回の報告書で新たに提言。原子力利用のリスクについて、チェルノブイリ((本紙では“チョルノービリ”と表記しているが、ここでは調査した教科書の記載に従った))原子力発電所事故、福島第一原子力発電所事故、JCO臨界事故、「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故などを、比較し取り上げている「公共」、「政治・経済」の教科書があったが、「事故の深刻度については、必ずしも社会的な取り上げ方に比例しない」と指摘。科学的な観点から、誤解を招かぬよう、INESに定義された異常事象・事故レベルを念頭に具体例を取り上げるよう要望している。わが国および世界各国の原子力エネルギー利用の状況に関する記述では、2023年2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で取り上げられている政策やそれに関連する事項、さらに、ウクライナ情勢も踏まえ、各国の原子力利用の動きについても、最新の記載がなされるよう求めている。
- 14 Sep 2023
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原子力マネジメントスクール 14か国が参加
「Japan-IAEA 原子力エネルギーマネジメントスクール(NEMS) 2023」が8月22日~9月8日の日程で、東京大学本郷キャンパス(一部の講義とテクニカルツアーを福島・茨城県で実施)で開催されている。原子力発電の導入を検討する各国および日本の原子力政策・規制組織の若手担当者、技術者・研究者が対象。NEMSは、世界各国で原子力エネルギー計画の策定・管理をリードする人材の育成を目指し、エネルギー戦略、核不拡散、国際法、経済・環境問題など、幅広い課題について学ぶ機会を提供し、マネジメントに必要な基礎能力を養うことを目的に、2010年にイタリアで始まった。日本での開催(2012年初開催、2014年より日本主催・IAEA共催)は今回で11回目。東京大学大学院工学系研究科の他、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会、原子力国際協力センターなどで運営する産学官プラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」により実施され、国内行政機関、電力・メーカーからも講師を招く。今回の研修生は、海外13か国(ブルガリア、チェコ、エストニア、ガーナ、インドネシア、ヨルダン、カザフスタン、メキシコ、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、スロバキア、ベトナム)から18名、日本からは11名、計29名が参加した。今回のNEMSは4年ぶりの全面的な対面開催となり、8月22日に行われた開講式で、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科准教授・出町和之氏は、会期を通じ対面・現地で講義、グループワーク、施設見学に臨む各国研修生らを大いに歓迎。続いて挨拶に立ったIAEA企画・経済調査官のアンリ・パイエール氏は、気候変動対策における原子力発電の重要性を述べた上、研修を通じ将来に向け専門的なネットワーク構築が図られることに期待を寄せた。また、NEMS前組織委員長の上坂充原子力委員会委員長は、「国際的な討論は極めて重要」と、原子力政策の立案において他国の状況も理解する必要性を強調するとともに、研修生らに対し、カリキュラムの一環となる福島訪問に関して「ALPS処理水対応も含め、福島第一原子力発電所廃炉の現状をよく見て理解して欲しい」と述べた。研修生らは、8月25日まで東大で講義とグループワークに臨んだ後、28日~9月1日には茨城・福島県に移動。原子力機構の高温工学試験研究炉「HTTR」、福島第一・第二原子力発電所、水素エネルギー研究フィールドなどを見学。4日には東京へ戻り、最終テストが実施され、8日に閉幕となる運びだ。
- 01 Sep 2023
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日本科学未来館コミュニケーターが震災伝承施設の訪問記
科学未来館コミュニケーターの青木皓子さん©科学未来館関東大震災から間もなく100年。「もしも明日大きな地震が発生したら、どんなことが起きて、私たちはどう行動すればいいのだろう」、日本科学未来館科学コミュニケーターの青木皓子さんは、ブログ(前編、後編)を通じ問いかけている。青木さんが訪れた震災伝承施設©科学未来館2011年3月11日に発生した東日本大震災を例に、青木さんは、「普段の生活では意識することが難しい過去の災害を振り返り、未来を考える」ための震災伝承施設として、「いわき震災伝承みらい館」(いわき市)、「東京電力廃炉資料館」(富岡町)、「とみおかアーカイブ・ミュージアム」(富岡町)、「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)、「震災遺構 浪江町請戸小学校」(浪江町)、「原子力災害考証館 furusato」(いわき市)を訪れた。実際に行ってみることで、「震災がもたらした被害とそこから得られる教訓を学ぶだけでなく、被害の様相や伝承すべきことが、地域や人によって実に多様であるという気付きがあった」という。2日間の福島県への旅で、青木さんが最初に訪れたのは「いわき震災伝承みらい館」。いわき市は、東日本大震災(本震発生)から丁度1月後の4月11日、再び震度6弱の「福島県浜通り大地震」に見舞われた。同館では、地盤がずれ落ち出現した大きな地層の剥ぎ取り標本などを展示。「災害は誰にでも起こり得るもの。展示を見て、いい意味で『怖い思い』をしてもらうことで、家族と話をしてもらうきっかけとなれば」と、箱崎智之副館長の言葉だ。青木さんは、「本震の後の混乱が続く中で発生した地震が、震災後の復旧活動に与える影響はとても大きかったと感じ、いわき市の被災体験を知ることが自分にとって一つの教訓となった」と、また、津波被害に見舞われた中学校の黒板の卒業式寄書きなど、発災当時の実物展示を見て「当たり前にそこにあった日常を感じる」と、語っている。東京電力廃炉資料館©東京電力続いて訪れたのは「東京電力廃炉資料館」。福島第一原子力発電所事故からおよそ7年半後の2018年11月にオープンした同施設は、福島第二原子力発電所のPR施設だった「エネルギー館」の建物および既存の展示機材を流用し、映像やジオラマを通じて、事故の反省と教訓を伝承するとともに、廃炉の取組全容と進捗状況をわかりやすく説明している。見学は案内ガイド付きのツアー形式が原則だ。事故当時の状況について解説を受けた青木さんは、「事実を科学的にとらえ、分析した結果を伝えていくことの重要性を感じる」と、話している。また、同じ富岡町にある「とみおかアーカイブ・ミュージアム」では、住民の避難誘導に当たっていた最中に津波に巻き込まれたパトカーなど、実際に被災した現物資料が数多く展示されており、「思わず言葉を失ってしまう瞬間もあった」という。「複合災害を地域の歴史に位置づける。」を目標とする同館では、避難生活の長期化に係る資料も多数。「震災遺産」とされる展示を見て、青木さんは、「町の歴史・文化の一部として東日本大震災が語られている」などと、来館の感想を述べている。2日目は、まず「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪問。同館の位置する双葉町は、2020年3月に大熊町、富岡町とともに、帰還困難区域では初となる避難指示の一部解除がなされ、これに伴いJR常磐線が全線復旧。その半年後にオープンした同館は、原子力災害に焦点を当てており、展示エリアに常駐するアテンダントスタッフとの対話も通じ、福島第一原子力発電所事故について理解を深められる点が特徴だ。様々な場所で震災を経験した「語り部」による講話も行われており、青木さんは、「経験を共有することで、自分の中に新たなとらえ方が生まれる感覚とその重要性を感じた」と話している。いわき湯本の旅館一室に開設された「原子力災害考証館 furusato」、公害病のアーカイブ施設も参考としている©科学未来館続いて訪れた「震災遺構 浪江町請戸小学校」は、津波の脅威を真正面から扱うことで防災意識の向上を促す。壁や床の崩れ落ちた校舎内を目の当たりに、青木さんは、「より現実のものとして、自分に訴えかけてくる感覚を得た」と話している。温泉旅館の一室を用いた民間施設「原子力災害考証館 furusato」は、個人の経験に着目。行方不明者の捜索を避難指示により断念せざるを得なかった被災者による展示品などを見て、「震災や原発事故で生活が変わった人はたくさんいるが、公的資料館では、一人一人の物語をすべて扱うことはできない」と、社会教育施設に係る課題を投げかけている。青木さんは、一連の震災伝承施設の訪問を通じ、「自分の防災意識を見直すことにつながり、未来を考える時間となるのでは」と述べている。日本科学未来館の科学コミュニケーターは、科学技術に関心を持つ一般の人から募る任期制職員で、展示フロアでの対話・実演、イベントの企画・制作、ブログを通じた科学情報の発信などを行う。
- 25 Aug 2023
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日本総研 中学~大学生対象にサステナビリティの意識調査
日本総合研究所は8月10日、国内の中学生、高校生、大学生計1,000人を対象として、2022年11~12月に実施したサステナビリティなどに関する意識調査の結果を発表した。毎年8月12日に行われる「国際青少年デー」に合わせて発表したもの。調査はウェブアンケートで行われ、中学生300人(男子150人、女子150人)、高校生300人(同)、大学生400人(男子200人、女子200人)から有効回答を得た。同研究所では2020年にも同様の調査を行っている。今回の調査結果によると、国内や海外の環境問題や社会課題に「関心がある」という人は全体の43.5%で、前回調査と大きな変化はないが、関心の内容については変化がみられた。前回調査では、コロナ感染拡大期と調査時期が重なったこともあり、「気候変動・温暖化」、続いて「医療・健康・感染症対策」への関心が高く、今回調査では、「人権(ハラスメント・いじめ・虐待・不登校・人種差別等)」への関心が最も高かった。「最も関心のある環境問題や社会課題」として、「気候変動・温暖化」と回答した割合は、大学生男子で4.0%、同女子7.5%、高校生男子4.7%、同女子5.3%、中学生男子12.7%、同女子8.7%。「エネルギー問題(化石燃料等の枯渇、その他)」と回答した割合は、大学生男子6.5%、同女子2.5%、高校生男子2.7%、同女子4.0%、中学生男子4.0%、同女子3.3%だった。女子では、「ジェンダー平等、ダイバーシティ、LGBTQへの配慮」をあげる割合が、同世代の男子と比べ格段に高かった。また、環境問題や社会課題の役に立ちたいか尋ねたところ、「そう思う」という人は52.0%と、約半数に上ったのに対し、日頃、社会貢献活動などをしている人は21.3%にとどまり、若者の「社会課題の解決意欲と行動とのギャップ」が浮き彫りとなった。この傾向は、前回調査でも同様にみられている。SDGsの認知に関しては、前回調査と比較し、「よく知っている」、「多少は知っている」と回答した割合は全体の44.2%から73.4%に大きく上昇。高校生・大学生では8割以上が「知っている」と回答していた。最も関心のあるSDGsの17目標としては、全世代で「目標1 貧困をなくそう」、「目標3 すべての人に健康と福祉を」をあげた人が多かった。「目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と回答した割合は、大学生男子5.5%、同女子2.5%、高校生男子3.3%、同女子2.7%、中学生男子7.3%、同女子3.3%。「目標13 気候変動に具体的な対策を」と回答した割合は、大学生男子7.0%、同女子6.0%、高校生男子5.3%、同女子5.3%、中学生男子14.0%、同女子9.3%だった。同世代で女子の回答割合が格段に高かったのは、「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」(大学生・中学生)、「目標6 安全な水とトイレを世界中に」(中学生)だった。SDGsに対する考えに関しては、全体の60.3%が「世界で達成するべき重要な目標」と思っているものの、「目標としている2030年に達成できそう」と考える人は全体の15.9%にとどまっていた。この他、同調査では、企業の政策提言、経営戦略、人材育成に資するべく、金融・経済教育、キャリア意識・結婚観に関しても調査・分析を行っている。
- 21 Aug 2023
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NUMO 若い世代に向けてウェブCM公開
原子力発電環境整備機構(NUMO)は8月15日、長期にわたる地層処分事業への関心喚起を図るため、若い世代に向けたウェブCM「平成から令和へ『地層処分篇』・『NUMOの技術力篇』」(各篇30秒と60秒の2バージョン)を公開した。今回、NUMOが制作したウェブCMは、とある高校の教室が舞台。2000年(平成12年)10月18日から、2020年(令和2年)10月18日へと「20年後にタイムスリップ」する。授業が始まる前の生徒たちの雑談風景に出てくるメディアは、手帳に貼られたプリクラからスマートフォンの画像に、MDプレーヤーからワイヤレスイヤホンへと替わる。こうした「平成から令和へ」の移り変わりを演出し若い世代の関心を引き付けているのも見どころ。撮影風景・出演者のコメントも合わせて公開されており、その中で、2000、2020年と、2つの世代の女子生徒を演じた感想をモデルの新沼凛空さん(15歳)は、「リラックスした状態で撮影に臨めた」などと話している。CMの最初の場面「2000年10月」はNUMOが発足し、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向け取組が具体化し始めた頃だ。「平成の先生」を演じた「てぃ先生」(現役保育士)は、「原子力発電、エネルギー政策、高度経済成長」と板書し、「みんなの暮らしが大きく変わった」と生徒たちに語りかける。続く場面「2020年10月」は、処分地選定に向けた文献調査に関し北海道寿都町・神恵内村が応募・受諾。処分地選定のプロセスが動き出した頃だ。「令和の先生」を演じたモデルの越智ゆらのさんは、「原子力発電で使い終えた燃料のうち、再利用できない約5%が高レベル放射性廃棄物となる」と説明。そこで、モデルの来栖あに華さん(14歳)演じる生徒が、地層処分について調べたレポートを示し、「次の世代のために、いま考える。」と、NUMOからのメッセージを送る。来栖さんは、「地層処分はまだ日本で知られていない。このCMをきっかけにどんどん広まって欲しい」と話している。NUMOがCMを制作するのは、2010年度以来。東日本大震災以前は、女優の鈴木杏さん他を起用したテレビCMが放映されていた。NUMOでは、地層処分事業の理解に向け動画を通じた情報発信を強化している。今回のウェブCMで先生役を演じた越智さんも出演するマイナビニュースとのタイアップ番組「竹山家のお茶の間で団らん 家族旅行」シリーズでは、日本原燃の六ヶ所原子燃料サイクル施設とともに、地元のグルメ・観光スポットを紹介している。
- 17 Aug 2023
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WNU-SIが日本初開催
原子力分野で国際的に活躍できるリーダーの育成を目的として毎夏開催される「世界原子力大学・夏季研修」(WNU-SI)が6月25日~7月28日の日程で、初めて日本で開講。5週間にわたる研修プログラムは、終盤を迎えている。WNUは、世界原子力協会(WNA)が、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)他の協力によって2003年に設立した国際教育訓練パートナーシップ。WNU-SIは、2005年の米国を皮切りに、毎年、世界各地で開催されてきた。これまで16回の開催で、延べ90か国・1,270名の研修実績を持つ。日本原子力産業協会では、産官学で形成される「原子力人材育成ネットワーク」の枠組みのもと、WNU-SIの日本開催を実現すべく、準備委員会を組織し取り組んできた。日本初開催となった今回のWNU-SIでは、大阪市内のホテルをメイン会場に講義・ワークショップが行われているほか、福島、福井へのテクニカルツアーなどを実施。30か国・地域から将来のリーダー候補となる30歳前後の実務経験者ら約70名が参加し、各国原子力産業界や国際機関の現役リーダー・OBらが指導に当たる。6月26日に行われた開講式では、原産協会の新井史朗理事長が、特別講義を行い、福島第一原子力発電所の廃炉、再稼働の進捗、エネルギー基本計画など、日本の原子力発電をめぐる現状について紹介。加えて、ウクライナ情勢に伴う世界のエネルギー危機、地球温暖化対策の喫緊化など、世界規模の課題にも言及し、「原子力の価値」(3E:Energy Security, Environment, Economic Efficiency)の重要性を強調。その上で、「原子力の価値」を活かすため、日本における必要なアクションとして、(1)早期再稼働、(2)運転期間の延長、(3)新増設・リプレース、(4)バックエンドの推進、(5)研究・開発――を提示。さらに、そのアクションを着実に進めていくため、(1)予見性、(2)ものづくり基盤とサプライチェーン、(3)海外での原子力発電見直しの機会、(4)若い年代層とのコミュニケーション――が重要なカギとなると述べた。WNU-SIの参加者は、研修プログラム第1~4週の7月21日まで、リーダーシップと国際社会、原子力発電の導入と安全確保、イノベーション、長期運転、核燃料サイクルに関する講義・ワークショップや、福島第一/第二原子力発電所、大飯発電所他の見学に臨んだ。24日からの最終週は、廃止措置に関する講義・ワークショップに充てられており、最終日の28日にはグループによる発表、修了式が行われ、閉幕となる運び。原産協会ではこれまで、向坊隆記念国際人育成事業を通じて、WNU-SIへの日本人受講生派遣を支援してきた。今回も日本人7名が参加しており、参加費の助成や事前研修などの支援を行っている。新井理事長は、6月23日の定例記者会見で、「研修受講後、所属組織に戻って、国際的に活躍し、10年、20年後、研修の成果や研修で得たネットワークを原子力産業界に還元してくれることを期待する」と述べている。WNU-SIは、単に知識を修得するのではなく、原子力に関連する課題について、少人数での議論、プレゼンテーションなど通じ、リーダーシップと課題解決能力を養うとともに同世代間のネットワーク構築を図るのが特長だ。原産協会が例年行っている日本人参加者による事後の報告会では、「ストレス耐性とリーダーシップを養う戦略ゲーム形式のグループワークは、社内の研修でもこれまで経験がなく、今後の業務に活かせると感じた」(電力)、「研修終了後も、他国の参加者との交流が続いており、人のネットワークは財産だ」(メーカー)といった声も聞かれている。
- 25 Jul 2023
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「フォーラム・エネルギーを考える」が暮らしの視点でパンフ
7月に入り、資源エネルギー庁では、東京エリアに8月末までの2か月間、需要対策として「無理のない範囲での節電の協力」を呼びかけるなど、電力需給見通しは依然と予断を許さぬ状況にある。こうした中、「みんなで一緒に考える」を理念に生活者の視点で活動する「フォーラム・エネルギーを考える」(神津カンナ代表)は、パンフレット「暮らしの中のエネルギー 2023」を制作し、エネルギー問題に関する知識の普及・啓発に努めている。パンフレットは、「地球環境問題」、「世界のエネルギー事情」、「日本のエネルギー事情」の3部構成。グラフ・図表を中心としたわかりやすさが特長で、教育現場での活用も期待できそうだ。パンフレットの大半を占める「日本のエネルギー事情」では、まず、日本における2050年までの年齢別人口の将来推計などから、少子高齢化時代到来の実態を示している。その上で、「1世帯当たりの人員が減り続ける一方、世帯数は年々増えている。世帯数が増えると電気製品や自家用車などが増え、エネルギー消費量も増加する」と説明。さらに、1975年度以降のデータから、産業部門のエネルギー消費は横ばいなのに対し、民生部門(家庭など)や運輸部門では増加傾向にあることを示し、「暮らしとエネルギー」について問題提起。例えば、家庭のエアコン普及率は1980年度の約40%が2020年度には約96%に、パソコンの普及率は1986年度の約15%が約79%に急増し、「省エネ技術は進むが、大型化・多機能化で消費電力は増加傾向」と指摘している。省エネについては、1970~90年の大幅なエネルギー消費効率(最終エネルギー消費/実質GDP)の改善実績を図示。実質GDP当たりの一次エネルギー消費量は世界平均の約4割(2019年)で、世界の中でも「省エネ先進国」といわれるまでになったものの、1人当たりのエネルギー消費量は世界平均の約1.7倍(2020年)と依然として多いことから、「引き続きエネルギー消費効率のさらなる改善を目指し、省エネに徹底して取り組むことが必要」と述べている。エネルギーの安定供給に関しては、太陽光・風力、揚水式水力、石油火力、天然ガス・LPガス、石炭火力、原子力、一般水力、地熱の各電源の特性を整理。「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境保全)の観点から、エネルギー資源の多様性を確保してバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を説いている。原子力については、「燃料調達の安定性、経済性に優れており、ベース供給力として活用できる」と評価。世界の動向、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準、核燃料サイクル、放射性廃棄物の処理・処分のあらましとともに、放射線の基礎知識も紹介している。
- 04 Jul 2023
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幌延町 地層処分の研究開発を子供向けに漫画で説明
幌延町は、日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターで行われている高レベル放射性廃棄物の処分技術に関する研究開発について、次世代層への理解を深めることを目的とした冊子「マンガで探検! 幌延深地層研究センター」(A5判、32ページ)を制作した。3月31日より同町のWEBサイト上でも公開されている。冊子のあらすじは、千葉県から幌延町の祖父の家に遊びに来た姉弟「深井ちか」(中学1年)と「深井だいち」(小学4年)が同町トナカイ観光牧場のマスコットキャラクター「ホロベー」の案内で現地の名産「サロベツ合鴨」を用いたステーキ丼やラーメンを堪能。その後、幌延深地層研究センターPR施設「ゆめ地創館」に生息し地層処分の研究に詳しいというキャラクター「モグ太くん」に出会い、地下研究施設を見学するというもの。2人とも高レベル放射性廃棄物については何も知らない。「モグ太くん」はまず、「電気の作り方にはいろいろな方法があります」と話し、火力発電、水力発電、太陽光発電、風力発電について、それぞれ原理を説明し、各々が持つCO2排出や天候の影響を受けるデメリットをあげ、「どの発電方法もいい部分ばかりではありません」と説く。原子力発電についても、略図を示しながら「ウランなどの原子が核分裂したときに発生する熱で水を沸かしてタービンを回すことで発電します」と、原理を説明。「発電工程において二酸化炭素を発生しないのが特長です」とメリットをあげる一方、「私たちの生活を便利にしてくれますが、放射性物質ができる」と話し、原子力発電における地層処分の必要性の理解に導く。2人は地下350mの研究施設を見学するが、「深井だいち」君の「ガラス固化体が埋まるってこと~?」との疑問に対し、「モグ太くん」はフリップを示し、放射性廃棄物を持ち込むことや使用することはしない研究終了後は、施設を埋め戻す研究実施区域に放射性廃棄物を捨てない。また、一時的に貯蔵もしない――とする研究施設に係る地域との約束を明示。地下坑道を歩きながら研究者から「ガラス固化体と同じ温度にするために電気ヒーターを設置し、地下水を注入して岩盤の温度や水分の変化を調査したり…」などと説明を受け、研究の実態を理解する。冊子の制作はビジネス書の漫画化で多くの実績を有するトレンド・プロが手掛けた。今回、監修に当たった北海道大学工学研究院教授の小崎完氏は、「『科学的厳密性』と『わかりやすさ』は多くの場合相反する。小さなお子さんに対して、道北・幌延町の魅力とともに、そこで行われている高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究とその研究施設を『厳密』かつ『わかりやすく』紹介することは容易ではない」と、コメントしている。
- 13 Apr 2023
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エネ庁 小学生の自由研究「かべ新聞コンテスト」受賞者発表
資源エネルギー庁は3月30日、全国の小学校4~6年生を対象とした「わたしたちのくらしとエネルギー」をテーマとする自由研究発表「かべ新聞コンテスト」の2022年度優秀作・計38作品を発表した。小学生のエネルギー問題に対する関心と当事者意識を喚起するとともに、学校や家庭・地域における実践行動を促すことを目的として、毎年、実施されるもの。今回は、767人から405作品の応募があり、人数と作品数の比率から例年と比べ部活動やグループでの研究発表は少なかったものとみられる。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉最優秀賞(経済産業大臣賞)は、「しっかり知って正しく話そう エネルギーのこと」(北海道教育大学附属札幌小学校6年・山村理透さん、在学校・学年は発表時〈以下同じ〉)、「エネルギー変革新聞」(東京都小平市立小平第十小学校5年・相澤心結さん)の2件が受賞した。前回に続き最優秀賞を受賞した山村さんは、今回、昨今の電気料金上昇の動きに着目し、「かべ新聞」を通じ、エネルギー問題を提起。自身が通っていた幼稚園でも採り入れられている浦幌町産の間伐材を利用した「ペレットストーブ」(地産地消)、ニセコ町の高断熱建築(省エネ)の取材などを通じ、地元の北海道から「暮らし方を少し変えるだけでかわる未来」を訴えかけた。原子力については、北海道電力泊発電所のPRセンター「とまりん館」の見学から、「電力の種類によって、CO2の排出量が異なるため、よりクリーンな電力を集めることが大切です。原発については、怖いイメージがありますが、安全の仕組み、メリット・デメリットを理解すると、エネルギーMIXの仲間に加える議論も必要なのかと考えました」と、自身の考えを述べている。「エネルギー変革新聞」を発表した相澤さんは、「カーボンニュートラル」に着目。脱炭素社会の実現に向けた「化石エネルギーから次世代エネルギーへの変革」として、水素利用を取り上げ、関連施設の取材体験を記事にした。また、地元の交差点などで調べたCO2濃度測定結果を示し、「渋滞しているだけで二酸化炭素をむだに排出し続けてしまうので、渋滞しない道路作りをお願いしたいです」と、都市部ならではの着眼点からも意見を述べている。今回のコンテストで寄せられた作品に関し、審査委員長の山下宏文氏(京都教育大学教育学部教授)は、「現在の問題、自分が生活する地域の問題、自分の体験や経験に基づく問題、これまであまり目が向けられていなかった問題などに着目した作品が多くあった」とコメントしている。
- 04 Apr 2023
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NUMO・科学技術館 地層処分の体験型展示をリニューアル
原子力発電環境整備機構(NUMO)が科学技術館(千代田区・北の丸公園)で出展している「アトミックステーション ジオ・ラボ」の一部が3月31日、リニューアルオープンした。〈NUMO発表資料は こちら〉新たな展示「体感!なぜ?なに?地層処分!!」では、「地層処分場とはどういうものか」、「どのように処分を進めていくのか」、「処分する地下にはどのような特性があるのか」について、グラフィックによる「学び」+3面大型スクリーンを配したシアターでの「ゲーム体験」を通じ、次世代層に対し効果的に訴求するのがねらい。メインターゲットとなる小学生とその親世代が直感的に最終処分場の長期的な安全性を理解し、その理解が「自分ごと化」されるストーリーを構築している。なお、昨今の感染症対策にも留意し、センシング技術を導入することで非接触でも体験性が高まる展示を実現した。一度に6人が参加できるゲーム(所要約10分)では、体験者が自身のアバター(スクリーンに投影される分身)を見ながら、地下300m以上の地中深くまで穴を掘るなど、3つの模擬体験を通じ、地層処分に対する「自分ごと感」を高めてもらう。NUMOでは、昨年末、国により取りまとめられたGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針を受け、「最終処分の実現に向けた国民理解の促進」が重要との認識のもと、「科学技術館における最新展示手法を導入したリニューアルにより、より広く地層処分に関心を持ってもらえるよう努めていく」としている。「アトミックステーション ジオ・ラボ」は科学技術館の3階に開設。同館の開館時間は10時~16時50分(入館は16時まで、現在は個人での入館に予約は不要)。なお、NUMOでは、子供・ファミリー層向けの広報活動として、2021年に感染症対策にも留意した新たな地層処分展示車「ジオ・ラボ号」を完成させ、全国各地のショッピングモールなどへの巡回展示を行っている。
- 31 Mar 2023
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人材育成でシンポ 学校教科書調査についても発表
「原子力人材育成ネットワーク」((産業界、大学・高専、行政機関、地方自治体等からなる原子力人材育成のプラットフォーム))の2022年度シンポジウムが2月14日、都内で開催された(日本原子力研究開発機構主催、オンライン併用)。1年間の活動成果を報告するとともに、原子力人材育成に資するデータ収集・分析など、3つのテーマを設け議論。次世代人材育成のテーマでは学校教科書の原子力や放射線に関わる記述についても取り上げられた。同ネットワークの運営委員長を務める原産協会の新井史朗理事長は、開会に際して挨拶。先に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」の中、「エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源として、再生可能エネルギーとともに、原子力を最大限活用する」方針が示されたことに言及し、「原子力に関わる人材育成の課題解決に向けて、共通の思いを新たにしてもらい」と述べたほか、「機関横断的な活動の成果が一層実りあるものとなって欲しい」と、有意義な議論を期待した。原子力人材育成に資するデータ収集・分析に関し、日本原子力文化財団は、毎年実施している「原子力に関する世論調査」(全国15~79歳の男女対象)について紹介。直近の2021年度調査から、「若年層は他の年代より、今後の原子力発電の利用に対する肯定意見の割合が多い」との分析結果を示した。調査結果を説明する杉本純氏 ©︎Japan Nuclear Human Resource Development Networkまた、次世代人材育成のテーマでは、元京都大学教授で日本原子力学会教科書調査ワーキンググループ主査を務める杉本純氏が小中高校の教科書のエネルギー、環境、原子力、放射線に関わる記述の充実化に向けた調査結果を説明。同調査では、教科書改訂などの時宜をとらえ、対象学年・教科は調査年次により異なるが、1996年以降、これまでに17件の報告書を発表し、文部科学省、教科書出版会社などに提言を行ってきた。例えば、昨夏、報告書が発表された2022年度使用開始の高校教科書を対象とした調査は、地理歴史、公民、理科、保健体育、家庭、工業について、計11科目・72冊の教科書を対象に実施。新設された「公共」(公民の1科目)に関連し、社会系の教科について、再生可能エネルギーのメリット・デメリットや、エネルギー供給の安定性、安全性、環境への影響にも言及するよう提言。また、原子力エネルギー利用についての学びに関し、「考えるべき視点が様々かつ一教科の学びで完結しない」、「それゆえに、新学習指導要領が掲げる『主体的・対話的で深い学び』を展開できる」とした上で、調べ学習、ディベート、観察・実験を採り入れるなど、教科横断的な関連を理解させる工夫を要望している。杉本氏は、同WGの報告書がメディアで取り上げられた事例も紹介。今後の活動として、「現場の先生方、教科書会社で執筆している担当者と直接の意見交換も行いたい」などと述べた。
- 22 Feb 2023
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エネ庁 将来世代への理解に向け地層処分シンポ
資源エネルギー庁は2月10日、高レベル放射性廃棄物の処分地選定を巡る取組について考えるシンポジウム「わたしたちの子どものための街づくり~地層処分問題と共創する未来~」を都内で開催。石川和男氏(政策アナリスト)による進行のもと、野波寛氏(関西大学社会学部教授)の他、この問題に関心を持つ若手として、トリンドル玲奈さん(モデル・女優)、大空幸星さん(NPO法人あなたのいばしょ理事長)、中野愛理さん(ミライブプロジェクト代表、武蔵野大学〈学生〉)が登壇しパネルディスカッションに臨んだ。挨拶に立つ西村経産相冒頭、挨拶に立った西村康稔経済産業相は、最終処分について、「原子力発電所から発生した使用済燃料が既に存在する以上、世界的に解決しなければならない共通の課題」との認識を改めて示した。処分地選定に向けた文献調査が北海道の寿都町・神恵内村のみで行われていることに関し、「NIMBY」(Not in My Back Yard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)の意識が根底にあることに触れ、「決して特定の地域の問題にしてはならない」と、全国レベルで考える必要性を強調。折しも、同日、最終処分関係閣僚会議で、高レベル放射性廃棄物などの最終処分に係る基本方針の改定案が取りまとめられたが、西村経産相は、「文献調査の実施地域を全国に拡大していくことが大事」と、引き続き取組を強化していく考えを述べた。講演を行う片岡・寿都町長ディスカッションに先立ち寿都町の片岡春雄町長、神恵内村の高橋昌幸村長が基調講演。両首長とも、人口減少に伴う地域の将来に対する不安から文献調査応募に至った経緯を説明。その上で、それぞれ、「文献調査に応募する第3、第4の自治体が1日も早く出てくることを期待」、「身近な問題としてとらえ、多くの方々が正しい情報を共有し発信してもらいたい」と述べ、地層処分問題に関し、特に若い世代の関心が高まることを期待した。ディスカッションを進める石川氏続いて、「あなたの住む街に処分場が来たらどうする?」をテーマにパネルディスカッション。高レベル放射性廃棄物問題の認知度の低さに関して、エネルギー問題などをテーマに全国の学生と交流を行っている中野さんは「地層処分についてもともと知っていたという人は本当に少ない」と強調。虐待・DVなどに係る支援活動に取り組む大空氏も「『気候変動問題に何かアクションを取ろう』と考えている層にも届いていない」と、社会問題の中でも殊に関心が低いことを述べ、まず若手を中心に無関心層から訴えかけ話し合ってもらう必要性を指摘。また、長期にわたる処分事業に係るイデオロギーの問題に関して、野波氏は社会学の立場から、「『遠くにいて見えない被害者がいる』ことに気付かない典型」などと述べ、学校の道徳教科書でも取り上げ理解を深めることを提案。石川氏がこうした「次の世代にツケが回される問題」について問うと、大空氏は「今作られた橋や道路は100年後には直す必要が生じている」などと、社会構造上、高レベル放射性廃棄物に特化するものではないことを指摘した。六ヶ所村や柏崎市・刈羽村他への訪問経験から、中野さんは、原子力関連施設を立地する地域の想いに関して、「自分たちの手でまちづくりを行う姿に感銘を受けた」などと所感を述べた。福島の復興イベントにも参加してきたトリンドルさんは、「まずは知ってもらうことが大事」と強調。さらに、意思決定のプロセスに関して、「自分が不安に思うことを表に出さないようにしているのでは」との懸念を示し、「色々な立場・世代を越え対話することが必要」と、幅広いコミュニケーションの重要性を訴えかけた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 17 Feb 2023
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若年層向けにアニメ制作 NUMOが地層処分で
原子力発電環境整備機構(NUMO)はこのほど、地層処分の若年層に対する関心喚起に向け、アニメーション動画「地層処分って?」を制作。1月26日より特設サイトにて公開している。アニメーション動画は、原子力発電って、ゴミが出るの?地下に埋めて大丈夫?放射線の影響はないの?日本に処分できる場所なんてあるの?海外ではどうしているの?――の全5話構成。各話3~5分程度の短編で、順番に見ることも、関心のあるものだけを見ることもできる。高レベル放射性廃棄物の地層処分は地表から300m以深の安定した岩盤で実施されるが、アニメーション動画の利点を活かし、地下断面図上に、実際に見ることのできない地震の揺れや地下水の流れを表現していることなどが特徴だ。各話とも大人と子供の対話形式で進行し、各話の終わりに自身でも探求することを促している。各国の地層処分の状況を紹介する第5話の終わりでは、「地層処分は世界共通の国レベルでの課題でもあり、今まで電気を使ってきた私たちが自分事として考える必要がある」と述べている。NUMOでは、若年層を含む幅広い層向けに、地層処分に関心を持ってもらう契機となるコンテンツを随時、制作・公表している。
- 27 Jan 2023
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「原産シンポジウム」開催 福島県立医大・坪倉氏が講演
原産協会は1月19日、日本工業倶楽部(東京・千代田区)で「原産シンポジウム」を開催。今回は、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授の坪倉正治氏が「放射線の健康影響の基礎知識と原発事故後の健康課題」と題して講演を行うセミナー形式となり、会員企業・組織から約60名が参集した。坪倉氏は、もともと東京で血液内科医として医療に従事していたが、東日本大震災後は、福島県の相馬中央病院と南相馬市立総合病院を往復しながら、通常の診療に加え、ホールボディカウンターを用いた内部被ばく検査や住民への放射線影響に関する説明会など、被災地支援に取り組んできた。講演の中で、同氏は、発災後のおよそ12年間を振り返り、「どのような健康課題に住民は直面してきたか」を時系列的に整理。特に、避難後、施設に入所していた高齢者の死亡リスクが急増したことに関し、南相馬市内5施設の集計から「避難後3か月間以内で、実に25%の方々が亡くなった。これはすさまじい数だ」と指摘。仮設住宅への移住に伴うメンタル面・地域コミュニティの問題を始め、生活習慣病の増加、かかりつけ医との疎遠・がん検診の希薄化などを要因に掲げ、医療従事者の立場から「避難中に亡くなられる災害関連死を忘れてはならない」と強調した。発災から数年以降に関しては、介護サービスに係る地域間格差の他、偏見・デマの影響など、社会環境の変化に伴う要因にも言及。総じて、「健康問題を個人の意思や行動の帰結として捉えるのではなく、社会や周辺環境によって規定されている、と考えることが重要」と訴えかけた。さらに、福島第一原子力発電所事故に伴う放射線被ばくによる健康影響については、「リスク的にはゼロとはいえないが、健康問題をトータルでみた場合、中心となる放射線被ばくよりも、周辺の影響の方が爆発的に大きい」と強調。これまでにみられた被災地住民の健康状態悪化・回復のジグザグ傾向に関し、「半年から1年のタームで様々な環境変化が繰り返されてきた」ことを要因としてあげた上で、現状の行政支援システムから、避難指示解除以降の「戻りたくても戻れない人へのケア」の手薄さに懸念を示した。坪倉氏は、放射線の健康影響の基礎知識や福島県民の健康調査についても概説。同氏は、地元の学校に赴き生徒・教員に対し放射線に関する講義を行うなど、次世代層への普及・啓発に努めているが、「最近では震災を知らない子供たちが増えてきた。まず『なぜ学ぶのか』から説明しないといけない」と、課題をあげた上で、環境省が開設し若手中心で放射線の正確な情報発信に取り組む「ぐぐるプロジェクト」を課題解決に向けた一例として紹介した。福島第一原子力発電所事故による放射線影響の評価について、坪倉氏は、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の2020年報告書(2021年3月公表)を紹介。同報告書の主な結論として、「放射線被ばくが直接原因となるような将来的な健康影響はみられそうにない」ことなどをあげた。UNSCEARは科学的・中立的な立場から放射線の人・環境への影響調査・評価などを行う国際機関で、昨夏、2020年報告書の日本政府への手交のため来日した同組織のギリアン・ハース前議長は、取りまとめに当たった者として、「この報告書がもたらす主たる結論は堅固なもので、見通しうる将来に向け大きく変わるものではない」と、普遍性を強調している。
- 25 Jan 2023
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