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米GAO 気候変動による原子力発電所への潜在的影響の検討を勧告
米国政府の会計検査院(GAO)は4月2日、原子力発電所の気候変動へのレジリエンス(回復力)を検証した評価報告書「Nuclear power plants: NRC should take actions to fully consider the potential effects of climate change」を公表した。今後、気候変動による暑さや干ばつ、山火事、洪水、ハリケーン、海面上昇、極寒などの自然災害が悪化し、原子力発電所に対するリスクが高まると予想されるなか、原子力発電所の許認可手続きで気候変動の潜在的影響を十分に考慮するよう、原子力規制委員会(NRC)に対して勧告している。GAOは連邦議会の要請に基づいて、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関である。今回は、エネルギー・インフラの気候変動へのレジリエンスを検討するよう要請され、気候変動による原子力発電所への影響やそれらリスクに対処するためのNRCの行動について検証した。今回の報告書でGAOは、許認可および監督プロセスにおける自然災害のリスクなど、NRCは発電所の安全性に対するリスクに対処していると指摘。特に、2011年の福島第一原子力発電所事故を引き起こした津波被害以降、原子炉設計における安全裕度の要件や設計の想定を超える自然災害が発生した場合の放射性物質の放出防止対策、安全機能に関連するバックアップ機器のメンテナンスなど、NRCは追加対策を講じてきた、とした。その一方で、GAOは、昨今の深刻化する自然災害が、原子力発電所の外部電源の喪失、システムや機器の損傷、冷却能力の低下などを招き、出力の低下やプラントの停止に至る可能性に言及。さらに、米国の商業用原子力発電所の多くが1960年代~70年代に建設され、気象パターンや気候関連リスクは、建設以降変化しているとの現状認識を示したうえで、NRCが自然災害のリスクを検討するのに際し、潜在的な気候変動の影響を十分に考慮していないと明言した。具体的には、NRCが安全リスクの特定や評価の際に気候予測データを使用せず、過去のデータを主に使用している点や現在のプロセスが気候変動リスクに対処するうえで十分な安全裕度を提供していると考えられてはいるものの、NRCがこれについて立証していない点を挙げた。これらをふまえ、GAOはNRCに対して、以下の3点を勧告している。許認可および監督プロセスが、気候変動による原子力発電所へのリスク増大の可能性に適切に対処しているかどうかを評価すること。既存のプロセスの評価で特定されたギャップに対処するための計画を策定し、最終決定し、実施すること。気候予測データをどのような情報源から入手するか、いつ、どのようにこれらデータを利用するかなど、気候予測データを関連プロセスに組み込むためのガイダンスを策定し、最終化すること。NRCはこれら勧告について、いずれもNRCが現在対応している措置と一致しているとコメント。さらにNRCは、NRCのプロセスに組み込まれた保守性と深層防護の考え方は、気候変動に起因するものを含め、認可された運転期間中、サイトで起こり得るあらゆる自然災害などに関して合理的な保証を提供していると反論した。しかし、GAOは、「許認可および監督プロセスにおいて、気候予測データを含む入手可能な最善の情報を使用しないまま、NRCが発電所への気候変動の潜在的影響を十分に考慮することはできないと引き続き考えている」との見解を示している。
- 19 Apr 2024
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高速炉「Natrium」の建設許可を申請
米テラパワー社は3月29日、米原子力規制委員会(NRC)に自社が開発する「Natrium」炉の建設許可を申請した。ワイオミング州南西部のケンメラーに電気事業者パシフィコープ社が所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに、「Natrium」を建設する計画だ。建設許可申請は商業規模の先進炉としては米国初であり、許可に先立って、今年の夏には非原子力部分の建設工事を開始する。「Natrium」炉は、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用する電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉(SFR)で、GE日立・ニュクリアエナジー社との共同開発。溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを併設し、ピーク時には電気出力を50万kWまで増強して5.5時間以上稼働が可能だ。米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の5~7年以内に実証可能な炉に2020年10月に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X-エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。テラパワー社は、サザン・カンパニーやオークリッジ国立研究所(ORNL)、米電力研究所(EPRI)などと塩化物溶融塩高速炉「MCFR」の開発も共同で進めており、その前段階の実験炉「MCRE」はARDPの将来実証炉リスク低減プロジェクトの枠組みでDOEから支援を受けている。「MCRE」はアイダホ国立研究所で建設、運転される計画だ。同社のC.レベスク社長兼CEOは、今回の申請は「Natrium」の市場投入に向けた画期的な一歩であり、クリーンで信頼性が高く、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能な電源の導入により、ケンメラーに長期的な雇用をもたらすと指摘、NRCとは許認可申請前活動で緊密に連携しており、許可取得に自信をのぞかせる。今年夏の非原子力部分の着工にあたっては、地元のステークホルダー、議員、規制パートナーらと緊密に連携していくとしている。同社は当初、ロシアから供給されるHALEU燃料を使用し、2028年までに「Natrium」の稼働を計画していたが、ウクライナ紛争でロシアからのHALEUの継続的な供給が不可能となったため、国内での調達可能性を探りつつ、2030年の運転開始を予定している。なお、パシフィコープ社は、2023年の統合資源計画(IRP)で、2033年までにさらに2基の「Natrium」をユタ州で稼働中の石炭火力発電所の近くに設置することも検討している。
- 03 Apr 2024
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米加英の規制当局 先進炉とSMR規制で協力
米国、カナダ、英国の原子力規制当局はこのほど、先進炉と小型モジュール炉(SMR)の技術審査で協力するための三国間協力覚書に調印した。米原子力規制委員会(NRC)、カナダ原子力安全委員会(CNSC)、英原子力規制庁(ONR)間の協力覚書(MOC)は、3月12日に米・メリーランド州で開催されたNRCの年次規制情報会合で調印された。NRCのC.ハンソン委員長、CNSCのRジャマール委員長代理、ONRのM.フォイ長官兼主任原子力検査官が調印した。本協力覚書は、新型炉の国際展開の促進に向けて標準化が進む中、ベストプラクティスと規制経験を共有するという規制当局のコミットメントを強調するもの。この協力合意により、各国の規制要件を満たすための共通課題を検討し、共有のアプローチを開発していく。また、許認可申請前活動、研究、訓練、新たな技術的課題についても協力を推進する。本覚書に基づき、三機関は先進炉やSMRの共同技術審査の促進に向けた協力を拡大するほか、ベンダーへのフィードバックを目的とした技術評価の実施等を行う際に、互いの経験、規制情報等の共有が可能となる。ONRのフォイ長官は、「規制側による検討と承認を求める原子炉技術の急速な成長を考慮すると、規制の有効性と効率性の双方を向上させる規制当局間の提携アプローチが不可欠である。この協力合意は、技術的な知識と判断を共有し、安全基準を維持しながら規制の合理化を通じて、規制当局の時間と資源の効率化を確実にするもの」と語る。NRCのハンソン委員長は、この合意は先進炉の安全かつ効率的な導入に向けた海外カウンターパートとの協力の大きな成果であるとし、「ここ数年、CNSCとの共同報告書の作成が複数の先進炉設計に関する重要な許認可活動を支えてきたことを目の当たりにしてきた」と述べ、SMRと先進炉の建設許可申請を検討する際のONRによる貢献に期待を寄せた(NRCはCNSCとはSMRならびに先進炉に関する協力覚書を2019年に締結しているが、ONRとは未締結)。CNSCのジャマール委員長代理は、「CNSCは、長年のパートナーであるNRCならびにONRと初の三国間協力覚書を締結できたことを喜ばしく思う。これは、三機関が共有するスキル、経験および知識を最大限に活用して協力するための枠組み。規制の効率性を高め、先進炉に対する審査の有効性の強化に資するだろう」と述べた。
- 27 Mar 2024
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米国 WE社製次世代燃料を照射後試験へ
米国のウェスチングハウス(WE)社は1月25日、事故耐性燃料(ATF)を含む25本の照射済みの試験用燃料棒を照射後試験のため、アイダホ国立研究所(INL)に送ったことを明らかにした。この照射後試験は、新型燃料の商業用原子炉での使用認可を得るために重要なプロセスの一環。納入された燃料は、ATFと商業用原子力発電所の炉心で照射された高燃焼度燃料。照射済み燃料が試験のためにINLに納入されたのは、20年ぶりのこと。INLを含む複数の国立研究所の技術支援と米エネルギー省(DOE)の資金援助を受けてWE社が開発・製造した次世代燃料は、安全性能の向上だけでなく、原子力発電所の運転サイクル期間を現在の18か月から24か月に延長することが可能だ。燃料交換停止回数の削減、使用済燃料の減容により発電事業者は大幅なコスト削減が可能になる。また、出力も増強されるため、原子炉の増設にも匹敵する。INLでは次世代燃料が通常の使用条件下でどのような性能を発揮するか実験・分析、また、想定される事故条件下における性能を確認し、貯蔵中や再処理中における挙動を実証するために追加試験を実施する。得られたデータは、米原子力規制委員会(NRC)の燃料に関する安全基準策定に利用される。同様の照射済み燃料棒は、以前にもテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で試験された。INLとORNLにおける高度な検査と照射後試験は、次世代燃料を世界中の商用炉に装荷する最終承認を米NRCから得るための重要なマイルストーンである。WE社、米NRC、DOE原子力局、DOE国家核安全保障局(NNSA)のほか、日本、韓国、西欧の規制機関などにもデータが提供される。
- 06 Feb 2024
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米規制委 ディアブロキャニオンの運転期間延長申請を受理
米原子力規制委員会(NRC)は12月19日、カリフォルニア州で唯一稼働するディアブロキャニオン原子力発電所(DCPP)(各PWR、約117万kW×2基)について、運転期間の20年延長を求めるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の申請書を正式に受理すると発表した。州政府の指示に基づき同社が11月7日に提出していた申請書について今回、NRCは不備がないことを確認。今後NRCはこの計画の安全面や環境影響面について詳細な審査を開始するほか、同申請関係のヒアリングを開催する。米国における運転期間は一律40年に設定されている。同発電所の1、2号機はそれぞれ1984年と1985年に送電を開始しており、PG&E社は2009年、これらの運転期間を20年延長してそれぞれ60年とするための申請書をNRCに提出した。しかし、電力供給地域における需要の伸び悩みと再生可能エネルギーによる発電コストの低下を理由に、同社は2016年6月にこの申請の取り下げを決定。各40年の運転期間満了にともない、1号機を2024年11月に、2号機を2025年8月に閉鎖する計画を2016年8月にカリフォルニア州の公益事業委員会(CPUC)に提出しており、同委は2018年1月にこれを承認している。しかし、同州では2020年夏に厳しい熱波に見舞われ、G.ニューサム知事は緊急事態を宣言、電力会社には計画停電を指示する事態となった。同様の宣言は2022年にも発出されており、同知事は州議会に対しDCPPの運転期間を5~10年延長するための立法を提案した。州議会は2022年9月、DCPPの運転期間を2030年まで延長する法案(上院846号)を圧倒的多数で可決、ニューサム知事も同月に署名している。今月14日にはCPUCも、同法の実施にともなう料金の設定方法や、1、2号機の運転期間満了日をそれぞれ2029年10月と2030年10月に再設定することを承認。これらを可能にする3つの条件として、①NRCがDCPPの運転を引き続き承認すること、②同法の下で州政府の水資源省がPG&E社に提供している最大14億ドルの融資契約が温存されること、③NRCが将来的にもDCPPの運転期間延長を適切と判断すること――を挙げていた。また、米エネルギー省(DOE)も2022年11月、早期閉鎖のリスクにさらされている商業炉を救済するために設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、DCPPを初回の適用対象に認定。認定日より4年間で、最大11億ドルを拠出すると発表している。NRCの規制では、運転期間の延長申請書は現行認可が満了する少なくとも5年前までに提出しなければならない。NRCは今年3月、この規制の適用除外を求めるPG&E社の要請書を審査した上で、同社が2023年末までに20年の運転期間延長申請することを条件に、規制適用から除外することを承認。これを受けてPG&E社は、中止された審査の再開を年末までにNRCに求めるとしていた。PG&E社によると、DCPPはカリフォルニア州における総発電量の8.6%を賄っており、無炭素電力としては同州最大の約17%を供給。従業員も約1,300名を抱えるなど、サン・ルイス・オビスポ郡では最大規模の民間企業である。DCPPのM.ザワリック副所長は、「DCPPを2025年以降も運転するという選択肢を州政府が認めているので、カリフォルニアは今後もクリーン・エネルギー社会に向かって進んでいく」と表明している。(参照資料:NRC、PG&E社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Dec 2023
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米規制委 熔融塩炉実証炉の「ヘルメス」に建設許可発給
米原子力規制委員会(NRC)は12月12日、ケイロス・パワー社が開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。ケイロス社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針だ。同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。燃料にはTRISO燃料((ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料))を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。「ヘルメス」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。ケイロス社は「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「ヘルメス」で実証する。NRCは現在、「ヘルメス」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。ケイロス社は2018年、「ヘルメス」の建設に向けたNRCとの幅広い申請前協議を開始した。DOEは2020年12月に同炉を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象として選定しており、プログラムの実施期間である7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担している。同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。NRCの委員4名は、10月19日のヒアリングでこれらの審査報告書が適正であると承認、同日の票決に基づいて建設許可の発給を決めていた。「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でケイロス社に協力すると発表。テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。ケイロス社のP.ヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。「ヘルメス」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。 (参照資料:NRC、ケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 13 Dec 2023
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米ニュースケール社のSMR初号機建設計画が打ち切り
米国のユタ州公営共同事業体(UAMPS)とニュースケール・パワー社は11月8日、エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所(INL)でニュースケール社製小型モジュール炉(SMR)の初号機建設を目指した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を打ち切ると発表した。UAMPSの100%子会社であるCFPP社が進める同プロジェクトでは、電気出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)で、最初のモジュールを2029年までに完成させることを計画。これに向けて、CFPP社は今年の7月末、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を米原子力規制委員会(NRC)に申請しており、2024年1月にはCOL申請の残りの部分を提出するとしていた。今回の発表で両社は、プロジェクトの継続に十分な資金が得られる可能性が低いことが判明したと述べており、協議の結果、最も賢明な判断としてプロジェクトを打ち切ることで合意したと説明している。ニュースケール社は2020年9月、出力5万kWの「NPM」について、SMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得しており、2023年1月には「設計認証(DC)」を取得した。同じ月に同社は、出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた設備についてもSDAを申請したが、NRCは同社に補足資料の追加提出を要求。今年3月から補足資料を必要としない部分について安全関係の審査を開始したものの、同申請を正式に受理したのは7月末のことである。SDA審査はA~Dまで4フェーズで構成されているが、現時点ではニュースケール社からの資料提出待ちの部分が多く、最初のフェーズAも完了していない。UAMPSは、米国西部7州の電気事業者約50社で構成される公共電力コンソーシアム。域内の高経年化した化石燃料発電所を原子力等のクリーン・エネルギーで段階的にリプレースし、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPP」を2015年から推進していた。2016年2月にDOEから、INLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月には、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年の補助金として13億5,500万ドルを獲得している。CFPP社の「VOYGR-6」の建設については、ニュースケール社が2022年12月に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注。原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器の配管等を調達するとしていた。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOは今回、「過去10年以上にわたるCFPPのお陰で、当社の技術は商業炉の建設段階まで到達した。今後は国内外のその他の顧客とともに当社の技術を市場に届け、米国における原子力製造基盤の成長や雇用の創出に貢献したい」と述べた。UAMPSのM.ベイカーCEOは、「当社も含めた関係各位のCFPPに対するこれまでの努力を思うと、この決定は非常に残念だが、CFPPで我々は多くの貴重な教訓を学んでおり、UAMPS会員の将来のエネルギー需要を満たすため、今後の作業を進めていく」としている。米国内ではこのほか、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合が2022年2月、供給区内でニュースケール社製SMRの建設可能性を探るため、了解覚書を締結した。国外では、ポーランドの鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が2022年2月、「VOYGR」設備の国内建設に向けてニュースケール社と先行作業契約を交わしている。また、ルーマニアでは同年5月、南部のドイチェシュティで「VOYGR-6」を建設するため、国営原子力発電会社とニュースケール社、および建設サイトのオーナーが了解覚書を結んだ。(参照資料:ニュースケール社、UAMPSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Nov 2023
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米国 閉鎖したパリセード発電所の再稼働を申請
米ホルテック・インターナショナル社は10月6日、ミシガン州で2022年5月に閉鎖されたパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)の再稼働を目指し、運転認可の再交付を米原子力規制委員会(NRC)に申請した。同社は既存の規制の枠内で再稼働に向けた道筋を固めるため、事前にNRCスタッフと複数回にわたり協議を重ねていた。今回の申請は、同発電所を全面的に復活させるための正式手続きの端緒となる。米国では市場設計の失敗により、自由化市場環境下で運転する発電所の経済性が悪化。パリセード原子力発電所を最後に所有・運転していたエンタジー社は2022年5月に同発電所を閉鎖した後、6月には廃止措置を実施するため同発電所を運転認可とともにホルテック社に売却していた。一方で、同発電所には運転開始後50年以上安全に稼働した実績があり、閉鎖直前には577日間の連続運転を記録するなど、NRCは同発電所を「最も高い安全性を有する原子炉」のカテゴリーに分類。原子力産業界でも高パフォーマンスの発電所として評価されていた。ホルテック社は、近年はCO2の排出に起因する環境の悪化等から、各国が炭素負荷の抑制に取り組んでおり、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となったと説明。このため同社は、米エネルギー省(DOE)が原子力発電所の早期閉鎖を防ぐために2022年4月に設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」に同発電所の適用を申請。この時は他のプラントへの適用が決定したためパリセード発電所への適用は認められなかったものの、同社は今年2月、再稼働に必要な融資を求めて同プログラムに再度申請している。ホルテック社が進めるパリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG.ホイットマー知事も2022年9月に支持を表明。今年7月には、同発電所の再稼働に1億5,000万ドルの支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名した。ホルテック社も、同発電所が発電する電力を州内のウルバリン電力共同組合(Wolverine Power Cooperative)に販売するため、今年9月に子会社を通じて長期の電力売買契約(PPA)を締結している。ホルテック社の予測では、パリセード発電所の再稼働が実現した場合、ミシガン州では無炭素なエネルギーの供給量が大幅に増大するため、送電網の信頼性向上につながるほか輸入エネルギーへの依存度が低下する。同発電所が雇用する600名以上の従業員には総額8,000万ドルの給与が支払われる予定で、州内にもたらされる2次的経済活動は5億ドル以上の規模。また、閉鎖前に同社が毎年支払っていた同発電所の固定資産税は1,000万ドルにのぼり、地元最大の納税者として立地エリアの学校や警察、消防署、公園、図書館などに貢献していたという。ホルテック社のJ.フレミング副社長は、「米国のエネルギー・ミックスの中で原子力は重要な役割を果たしており、ミシガン州においても安全で信頼性の高い無炭素電力を供給している」と指摘。パリセード原子力発電所では機器・システム等が現在も良好な状態で管理されていることから、「規制基準を満たしながら高い安全性を維持し、供給区域の経済成長やエネルギー供給に持続的に貢献するよう可能性を模索する」としている。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Oct 2023
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米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2023
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米規制委 実証炉「ヘルメス」の建設許可発給へ
米原子力規制委員会(NRC)は6月15日、ケイロス・パワー社が申請していた同社製「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」の建設許可について、安全面の評価審査を完了。「建設許可の発給を阻むような安全上の側面は見受けられなかった」と結論付けている。ケイロス社は米カリフォルニア州の原子力技術・エンジニアリング企業で、「ヘルメス」は最終完成版「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる。テネシー州オークリッジにあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設し、2026年までの完成を目指している。同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出しており、NRCの原子炉安全諮問委員会(ACRS)は同炉の安全面について独自の審査を行った。ACRSは今年5月、その評価報告書をNRC委員長宛てに提出しており、NRCスタッフはこれらの見解に基づき、今回同炉の安全評価文書の最終版を完成させた。同スタッフは今年9月にも「ヘルメス」の環境影響面について評価声明書(EIS)の最終版を取りまとめる予定で、その後はこれらの報告書に関するNRC委員のヒアリングを実施。委員5名がスタッフの審査結果を妥当と判断すれば、年内にも建設許可が発給されると見られている。ケイロス社が開発している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用。燃料にはTRISO燃料((ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料))を使う予定で、同炉は固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。DOEは2020年12月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象としてケイロス社の「ヘルメス」を選定した。同プログラムの実施期間である7年間の総投資額は6億2,900万ドルで、そのうち3億300万ドルをDOEが負担し「ヘルメス」を建設。同炉の運転に際しては別途、NRCから運転許可の取得が必要になる。ケイロス社は完成した「ヘルメス」で運転データ等を収集し、2030年代に商業規模の「KP-FHR」建設につなげる方針だ。また、「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等で協力すると発表。「ヘルメス」を通じて、ケイロス社が出力調整可能で価格も手ごろな「KP-FHR」を市場に出せるよう協力するとしている。(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jun 2023
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米規制委 ホルテック社の中間貯蔵施設計画に建設・操業許可発給
米原子力規制委員会(NRC)は5月9日、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で地元企業と進めている使用済燃料の集中中間貯蔵施設「HI-STORE CISF」の建設計画に対し、建設・操業許可を発給した。「HI-STORE CISF」は、地下部分に使用済燃料を安全に乾式貯蔵するためのシステム「HI-STORM UMAX」を備えた施設で、その建設から廃止措置に至るまで全20段階の工程が設定されている。今回その第1段階として、ホルテック社は合計8,680トンの使用済燃料を封入したキャニスター500台を発電所から輸送して同施設で受け入れ、(最終処分場が完成するまで)貯蔵するため、40年間有効な許可を得たもの。残りの19段階で同社は最終的に、最大1万台のキャニスターを貯蔵する計画だが、その各段階で安全性と環境影響に関するNRCの審査を受け、今回取得した許可の修正を行わねばならない。NRCはこれまでに2回、使用済燃料の集中中間貯蔵施設について建設・操業許可を発給しているが、初回は2006年のユタ州におけるプライベート・フュエル・ストーレッジ(PFS)社の計画。2回目は2021年9月の、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている計画へのものである。前者については、ホルテック社が「HI-STORM」システムを提供することになっていたが、連邦政府の内務省(DOL)がサイト関係の許可を発給しなかったため、この計画は中止となった。後者については、テキサス州内で使用済燃料など高レベル放射性廃棄物の処分や貯蔵を禁止する法案が2021年9月に同州で成立したことから、現時点で着工に至っていない。一方、ホルテック社がウクライナの原子力発電公社から請け負い、2017年にチョルノービリ立入禁止区域内で着工した使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CSFSF)は、2021年8月に第1段階の設備が完成している。NM州における「CISF」建設計画では、エディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が、共同で有限会社の「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」を設立。2015年にホルテック社と結んだ協力覚書に基づき、ELEAがリー郡内で共同保有する敷地内で、ホルテック社製の「HI-STORM UMAX」を備えた「CISF」を建設することになった。ホルテック社は2017年3月に「CISF」の建設・操業許可申請書をNRCに提出しており、NRCはその約1年後にこれを正式に受理した。この申請書の審査で、NRCは安全・セキュリティ面に関する技術的な評価と環境影響面の評価を行っており、2022年7月には環境影響面の審査を完了。環境影響声明書・最終版(FEIS)の中で、建設・操業許可の発給を妨げるような環境や周辺住民への悪影響はないと結論づけた。安全・セキュリティ面の評価報告書は、今回の建設・操業許可とともに発行される。(参照資料:NRC、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 May 2023
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米モンティセロ発電所が80年運転を申請
米原子力規制委員会(NRC)は3月3日、モンティセロ原子力発電所(BWR、60万kW)の運転期間延長申請を受理。22日に公開ヒアリングを開催する。1970年に運転開始した同発電所が運転期間延長を申請するのは2度目となる。モンティセロ発電所はエクセル・エナジー(Xcel Energy)社が所有しており、1970年に送電を開始。NRCは2006年11月、同発電所が当初の運転期間の40年に20年追加して運転することを承認しており、この認可は2030年9月まで有効である。エクセル・エナジー社の子会社で運転者であるノーザン・ステーツ・パワー社は今年1月、この認可にさらに20年を追加し、2050年9月まで80年間運転継続するための申請書をNRCに提出。NRCはこの申請書を受理できるか、過不足の有無を点検していた。3月22日の公開ヒアリングでは、まずNRCスタッフが運転期間の延長にともなう環境影響の評価プロセスを説明し、実施すべき評価の範囲等についてコメントを受け付ける。また、4月10日までの期間に、バーチャル会合も追加で開催する方針である。NRCはこれまで、送電開始以降の運転期間を合計で80年とする認可をターキーポイント3、4号機とピーチボトム2、3号機、およびサリー1、2号機に発給した。また、後続案件として、セントルーシー1、2号機、オコニー1~3号機、ポイントビーチ1、2号機、ノースアナ1、2号機についても、2回目の運転期間延長申請を審査中である。しかしNRCは2022年2月、今後これらの審査では地球温暖化など潜在的な環境リスク関係の基準を見直すと表明。運転期間延長の環境影響を評価する際に使われている「包括的環境影響評価書(GEIS)」の改訂方針を示した。現行GEISでは2013年時点の判明事項がまとめられているが、NRCによると同GEISでは運転期間を60年から80年に延長する際の環境影響がカバーされない。これにともない、ターキーポイントとピーチボトムの計4基については、NRCスタッフが2024年頃に環境影響問題の再評価を完了するまで、運転期間の延長が実質的に取り消された。今月3日になると、NRCはGEIS改訂方針への対応として、初回やそれ以降の運転期間延長に関する規則の修正を提案するとともに、個々の延長申請を審査する際に取り組むべき環境問題の数や範囲などを再定義した。これに対する意見を募集するため、5月2日までの期間に公開会合を複数回開催する。これらの会合で得られたコメント等を参考に、改訂規則やGEISの最終版を確定するとしている。(参照資料:NRCの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Mar 2023
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米ディアブロキャニオン 運転期間延長に向けた手続きが進展
米原子力規制委員会(NRC)は3月2日、カリフォルニア(加)州のディアブロキャニオン原子力発電所(DCPP)(各PWR、約117万kW×2基)の運転継続が同州の送電網の信頼性向上等、様々な点で有益であることを考慮し、運転期間の延長に向けた規制手続の実施を承認した。これは、DCPPの事業者であるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の要請を受け入れた判断。これにともない、同社はNRCが今年1月に提示した条件に従って、12月末日までにDCPPの運転期間の最大20年延長に向け、最新の申請書をNRCに改めて提出する。1984年と1985年に送電開始した同発電所1、2号機の現行の運転認可は、それぞれ2024年11月と2025年8月まで有効。PG&E社は2009年11月、これらの運転期間を60年に延長するための申請を行ったが、2016年6月には「現行認可の満了時にDCPPを永久閉鎖する」と決定、2018年3月にこの申請を取り下げていた。NRCの規制では、運転期間の延長申請書は現行認可が満了する少なくとも5年前までに提出しなければならない。NRCはこの規制の適用除外を求めるPG&E社の要請書を審査した上で、適用除外が法的に認められていることや、認めた場合でも州民の健康や安全が過度に脅かされるリスクがないこと、加州の送電網の信頼性を維持する上でも有効である点を考慮、今回の判断を下したと説明している。申請書の審査は通常約22か月かかるが、今回の適用除外により、NRCの審査期間中は現行の運転認可が有効になる見通しだ。DCPPを送電開始後40年で閉鎖するという2016年時点の判断は、この当時、供給地域における電力需要が伸び悩み、再生可能エネルギーの発電コストが低下したことなどが背景にあった。加州の公益事業委員会(CPUC)もこの計画を承認していたが、同州では2020年夏に厳しい熱波に見舞われ、G.ニューサム知事は緊急事態を宣言、電力会社には計画停電を指示する事態となった。同様の宣言は、同じく熱波と電力需給のひっ迫が懸念された2022年も発出されており、ニューサム知事は州議会議員に対しDCPPの運転期間延長に向けた立法を提案している。DCPPはまた、加州における総発電量の約9%を賄っているほか、無炭素電力については約17%を供給。DCPPの運転を継続することは、加州の天然ガスへの依存度を軽減するだけでなく一層多くの無炭素電力を州民に提供することになる。このような事実や州知事の提案を踏まえ、加州の議会下院は2022年9月、DCPPの運転期間を2030年まで延長する法案(上院846号)を圧倒的多数で可決。これを受けてPG&E社は、運転期間延長申請書の提出期限に関する規制の適用除外と、2018年に中止された審査の再開をNRCに求めていた。DCPPはこのほか、2022年11月に米エネルギー省(DOE)の「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」で、初回の適用対象に選定された。CNCプログラムでは、早期閉鎖のリスクにさらされている商業炉の救済とCO2排出量の削減を目的としている。(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Mar 2023
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「12年間のプラント停止は非常識」エネ研が原子力規制でシンポ
日本エネルギー経済研究所(エネ研)は2月21日、都内のホテルで、「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催。OECD原子力機関(NEA)のW.マグウッド事務局長をはじめ、カナダ、英国の原子力規制専門家が登壇し、「合理的な規制」のあるべき姿について議論した。シンポジウムは対面式で開催され、多くの関係者が詰めかけた。マグウッド氏は、世界規模で原子力発電の新規導入が検討されている中で、最も重要なことは「スキルを備えた力強い規制当局」の存在だと強調。世界の規制分野で、優秀な規制人材の確保が課題となっていると述べた。そして規制当局の意思決定に関しては、透明性を持ちつつ “誰が見てもわかる明確な原則” を示すことで、信頼を得ることができるとし、規制者側にも「自らに対しても批判的である」よう求めた。また福島第一事故以降、日本の規制当局がとってきた対応を「緊急性の高い危機対応であり、妥当」と一定の評価をしつつも、「もはや危機は脱した」として、これまでの規制対応などのアプローチ自体を「見直す時期に来ている」と指摘。規制当局にはイノベーションを受け入れる姿勢が大切だとした上で、AI等の最新手法を貪欲に取り入れ、“reasonable(合理的)” かつ実用的な安全性向上へ取り組むべきだと訴えた。そして私見としながらも、規制当局の意思決定は、将来に渡ってリピートされる模範例となることが大事だとし、規制当局のグローバル規模での連携により、より良い規制が生まれるのではないかと、規制当局間のコミュニケーション強化を呼びかけた。CNSCの上席副長官兼最高規制業務責任者を務めるジャマル氏カナダ原子力安全委員会(CNSC)や米原子力規制委員会(U.S.NRC)の委員を歴任したR.ジャマル氏は、カナダでの規制事例を紹介。その規制手法は柔軟であり、常に原子力安全規制分野の変化に対応できるよう心掛けているとした。そして規制にあたって最も重要視すべきこととして、「合理的でないリスク防止策」を除外することを挙げた。これは、原子炉を停止してしまえば簡単にリスクは防止できるが、そうした安易な手法は取らず、さまざまなリスク情報を分析した上で対応するということで、こうした姿勢も、規制当局にそれだけの力量があってはじめて可能になると強調した。英国のR.キャンベル氏は、英原子力規制庁(ONR)等で30年以上のキャリアを積んだベテラン。今回が初来日となった。同氏は規制において「タイムスケールの透明性」が不可欠だと指摘。申請から認可までいかに迅速に結論を出せるかがカギであり、「法律や規則で決まっているものではないが、規制当局としてのサービスの一環として示す必要がある」と強調した。また、事業者と規制当局は常に対話を継続するべきだとした上で、規制当局は「外部からどのように見られているかを常に意識しなければならない」との認識を示した。モデレーターを務めたエネ研の村上朋子・研究主幹が質疑の中で、「規制プロセスとプラント利用率向上のバランス」について問い掛けたところ、3者とも「設備利用率は事業者の管轄であり、規制当局は関知しない」と断言。また「規制当局は電力供給の安定性も考慮すべきなのでは?」との会場からの声に対し、これも3者とも「規制当局は電力の供給に責任を持つものではない」との考えで一致した。ただし、「優れた規制当局は、どこで何が起きているかを把握しなければならない。場合によっては規制当局は、状況を踏まえて意思決定を行なうこともある。必ずしもプラントを今すぐ止めなければならない問題でなければ、当局も相応の対応が取れるはずだ」(マグウッド氏)、「国民のwell-being(幸福)のためという目標を忘れてはならず、graded approach(リスクに見合った規制)を適用すべきだ」(ジャマル氏)──等のコメントがあった。昨年ONRを退任したばかりのキャンベル氏一方、「合理的な規制とは?」との問いに関しては、マグウッド氏とジャマル氏が「安全目標に照らし合わせ、それを十分に達成した状態でプラントが稼働することが基本」と、バランスを取りながら合理性を判断するとしたのに対し、キャンベル氏は「合理性とは、余計なコストをかけないこと」と即答。規制当局としてはリスクが十分に低ければ、合理性の観点から十分にacceptable(受容可能)であり、わずかなリスクを下げるために過大なコストを投じることは馬鹿げていると指摘した。キャンベル氏は日本のプラントが置かれた状況にも言及。「再稼働を目指すというが、12年間の停止期間は非常識。これは全てイチからやり直すようなもので、人材が足りないだけでなく、数多くのトラブルが起きることが目に見えている。規制当局を納得させることは難しいだろう」と指摘した。その上で、そこまでして旧いプラントを再稼働させるよりも「最新知見を結集した新型炉にリプレースする方が、明らかに合理的」との考えを明らかにした。
- 24 Feb 2023
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米規制委 SMRとしては初の設計認証を発給
米原子力規制委員会(NRC)は1月19日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(電気出力5万kW版)に対し、SMRとしては初の設計認証(DC)を発給した。米国での利用を許可するため、NRCがこれまでにDCを発給した炉型はウェスチングハウス(WH)社製AP1000などの大型炉も含めると7つ目。米エネルギー省(DOE)は2014年以降、ニュースケール社製も含め、様々なSMRの設計や許認可手続き、立地等に6億ドル以上の支援を実施してきたが、K.ハフ原子力担当次官補は、「SMRはもはや抽象的な概念ではなく、建設準備ができた現実のものになった」と指摘。「最も優れた技術革新の結果であり、我々はここ米国でその活用を開始する」と宣言した。ニュースケール社は2016年12月に「NPM」のDC審査をNRCに申請しており、NRCスタッフは2020年8月に同設計の技術審査を終えて最終安全評価報告書(FSER)を発行。翌9月には、同スタッフが当該設計について「技術的に受け入れ可能」と判断したことを意味する「標準設計承認(SDA)」を発給している。NRCはその後、DC審査の最終段階として、電気事業者が当該設計の建設・運転一括認可(COL)を申請する際、米国内で建設可能な標準設計の一つに適用する規制手続き「最終規則」の策定作業を進めていた。NRCの委員5名も2022年7月末にNRC全体の決定として、「NPM」が米国での使用を承認された初のSMRと票決していた。今回はこの最終規則の策定が完了し連邦官報に公表されたもので、同規則が発効する2月21日から「NPM」のDCも有効である。DCはその後15年間効力を持ち、さらに10年~15年間延長することも可能。今回のDC発給により、「NPM」のCOL申請審査ではDC規則で解決済みの課題に取り組む必要がなくなる。発電所の建設サイトに特有の安全性や環境影響について、残る課題のみに対処することになる。「NPM」の初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が単基の電気出力7.7万kW版の「NPM」を6基備えた設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)を、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。このため、ニュースケール社は今月1日、7.7万kW版の「NPM」についても、NRCにSDAの取得を申請した。UAMPSもINL内での用地調査を終え、2024年の第1四半期を目途に「VOYGR-6」のCOLを申請する予定である。米国内ではこのほか、ワシントン州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」が2021年5月、ニュースケール社製SMRの性能を評価するため、同社と協力覚書を交わした。また、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合も2022年2月、同SMRを事業域内で建設する可能性を探るとして、了解覚書を締結している。国外では、カナダやチェコ、ウクライナ、カザフスタン、ルーマニア、ブルガリアなどの企業が国内でのNPM建設を検討中で、それぞれが実行可能性調査等の実施でニュースケール社と了解覚書を締結済み。ポーランドでは、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が「VOYGR」設備をポーランド国内で建設するため、2022年2月にニュースケール社と先行作業契約を締結している。(参照資料:DOEの発表資料、連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Jan 2023
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米ニュースケール社 出力7.7万kWのSMRで設計承認申請
米ニュースケール・パワー社は1月4日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のうち、単基の電気出力が7.7万kWのモジュール設計について、1日付で原子力規制委員会(NRC)に「標準設計承認(SDA)」を申請したと発表した。NRCはすでに2020年9月、出力5万kWのNPMに対してSDAを発給済み。ニュースケール社は2018年6月にモジュールの出力を20%増強して6万kWとし、さらに2020年11月には先進的試験のデータやモデリング・ツールによる分析結果から、出力を25%増強した7.7万kW版を設計していたもの。今回の申請は、顧客が希望する出力レベルに応じて、同NPMを6基搭載した原子力発電設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)の建設を念頭に置いている。7.7万kW版も基本的な安全性能は5万kW版と同じであり、この出力増強によってNPMの経済性はさらに改善されると強調している。ニュースケール社によると現時点でNRCの承認が得られたSMRはNPMのみであり、このことは同社のみならず原子力産業界全体にとって重要な節目となった。最初の1件が承認されたことで、2件目の審査は一層効率的かつ効果的に進むと同社は指摘。7.7万kW版のNPMについては、すでにNRCが申請前から予備的協議と申請の準備状況に関するレビューを進めていたという。NRCがNPMの安全性を認めたことで、「VOYGR」の建設を目指すルーマニアやポーランドの計画が過去2年の間に大きく進展した。ルーマニアでは2022年5月に、国営原子力発電会社(SNN)が建設サイトのオーナーとともにニュースケール社と了解覚書を締結。SNNは同年10月、民間のエネルギー企業と共同でプロジェクト企業を設立した。ポーランドでは2021年9月、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社らがニュースケール社と協力覚書を締結。採掘事業に必要な電力や熱エネルギーを石炭火力発電所ではなく、SMRで供給することを検討している。2022年2月には、両社は「VOYGR」の建設に向けて先行作業契約を締結した。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jan 2023
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米ハッチ原子力発電所、運転期間80年を計画
米サザン社の子会社であるサザン・ニュークリア社は9月1日、ジョージア州で運転しているエドウィン・I・ハッチ原子力発電所(BWR、90万kW級×2基)について、2回目の運転期間延長(SLR)を2025年に申請予定と原子力規制委員会(NRC)に伝えたことを明らかにした。同発電所1、2号機の現在の運転期間(運転開始当初の40年プラス20年)にさらに20年を追加し、1号機は2054年まで、2号機は2058年までのそれぞれ80年間とする意向表明書を8月31日付で提出したもの。NRCの審査結果が出るのは、2020年代後半になると同社は予想している。1、2号機はそれぞれ、1974年4月と1978年7月に送電を開始しており、保有する運転認可は2034年と2038年に満了する。これら2基の所有権は、サザン社のもう一つの子会社であるジョージア・パワー社のほか、オーグルソープ電力、ジョージア州営電力(MEAG)、ダルトン市営電力で分け合っているが、過半数を保有するジージア・パワー社は同社の2022年版「総合資源計画(IRP)」に沿って、ハッチ原子力発電所で運転期間の延長手続きを開始したいとジョージア州の公益事業委員会(PSC)に要請。今年7月にPSCがこの要請を承認したことから、同州で50年近く無炭素な電力を安定的に供給してきた両炉の運転をさらに継続し、周辺コミュニティに対して教育関係その他のサービスを引き続き提供するなど、支援していくことになった。なおジョージア州内では、ハッチ原子力発電所の2基とアルビン・W・ボーグル原子力発電所(120万kW級のPWR×2基)で電力需要の20%以上を賄っている。ハッチ発電所はまた、地元コミュニティの経済にプラスの効果をもたらしており、毎年発電所で行われる大規模な作業や燃料交換に雇われる契約作業員など約900名を雇用。送電を開始して以降、地元コミュニティの機関や非営利団体に対しても、広範囲な支援を提供している。米国では近年、大型の原子力発電所を新規に建設するよりも、既存の発電所の運転期間を延長する動きが活発化。米国内の100基近い商業炉のほとんどが、すでに運転開始当初の認可期間40年に加えて、20年間運転を延長する許可をNRCから得ている。2回目の運転期間延長に関しても、NRCはこれまでにフロリダ州のターキーポイント3、4号機(PWR、各76万kW)、ペンシルベニア州のピーチボトム原子力発電所2、3号機(BWR、各118.2万kW)、およびバージニア州のサリー原子力発電所1、2号機(PWR、各87.5万kW)に対して承認した。しかしNRCは今年2月、地球温暖化など潜在的な環境リスク関係の基準を見直す方針を表明しており、NRCスタッフが環境影響問題の再評価を完了するまで、ターキーポイントとピーチボトムの運転期間延長は実質的に取り消されている。(参照資料:サザン・ニュークリア社、NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Sep 2022
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米規制委、建設中のボーグル3号機に燃料装荷と運転開始を許可
米原子力規制委員会(NRC)は8月3日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機について、サザン社の子会社で同炉の運転会社となる予定のサザン・ニュークリア・オペレーティング社に対し燃料の装荷と運転の開始を許可した。3号機は、NRCが1990年代に制定した新しい新規原子炉の許認可プロセスである「10CFRパート52」((建設認可と運転認可に分かれたこれまでの許認可プロセス「10CFRパート50」に対し、パート52ではこれら2つを一本化。事前サイト許可(ESP)と設計認証(DC)、および建設・運転一括認可(COL)の取得を事業者に義務付けることで、設計標準化の推進や(原子炉を建設した後に運転認可が下りない等)許認可手続きにおける不確実性の低減を狙っている。))の下で建設された最初の原子炉。サザン社のもう一つの子会社で、3号機および同じく建設中の4号機(各PWR、110万kWのウェスチングハウス社製AP1000)を45.7%所有するジョージア・パワー社は、今後数週間かけて3号機への燃料装荷と起動試験に向けた最終的な準備作業を進め、その後数か月かけて起動試験を実施する。同試験では一次系や蒸気供給系が設計通りの温度や圧力を得られるかなど、総合的な運転機能を実証する。同炉を冷温停止状態から臨界条件を達成できる状態に変えた後に送電網へ接続し、出力を100%まで徐々に上昇させる試験を行う方針である。今年2月時点のスケジュールでは、同炉の運転開始は2023年の第1四半期末に予定されている。サザン社の今回の発表によると、同炉では安全性と品質に関する398項目の厳しいチェックが行われ、サザン・ニュークリア社のチームは、建設・運転一括認可(COL)に明記された「(運転開始前の)検査、試験、解析と受け入れに関する基準(ITAACs)」を同炉がすべて満たしているとの文書を取りまとめてNRCに提出した。NRCは同文書およびその他の提出物を徹底的に審査した上で、「同炉がこのCOLとNRCの規制に従って建設され、運転も行われる見通し」であることを確認。今回正式な連絡書簡にこの確認事項書「103(g)」を含めて、サザン・ニュークリア社に送付している。NRC原子炉規制局のA.ベイル局長は、「ボーグル3号機が適切に建設されたこと、また運転段階に移行しても周辺住民の健康や安全性に害を及ぼさないことが確認された」と表明。同発電所に常駐するNRCの検査官が、今後も3号機で行われる燃料の装荷と起動試験への移行を厳正に監視する予定であると述べた。NRCはまた、同炉の安全確保に引き続き重点的に取り組む考えで、次世代の新しい原子炉を認可していくなかでこの方針を堅持するとしている。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOは、NRCの確認事項書「103(g)」について、「3、4号機の建設に際し、当社が最新の厳しい安全基準や品質基準を順守していることが示された」と指摘。これら2基はジョージア州の重要かつ長期にわたる投資案件であり、運転を開始すれば60年~80年にわたって信頼性の高いクリーンな無炭素エネルギーを州民にもたらすと強調している。(参照資料:NRC、サザン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Aug 2022
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米GAO、放射性物質の購入に関するセキュリティ強化を勧告
左側がGAOのダミー会社に送られた放射性物質の箱 ©GAO米国政府の会計監査院(GAO)は7月21日、リスクの高い放射性物質の購入等について原子力規制委員会(NRC)が実施する規制体制の評価報告書「Preventing a Dirty Bomb: Vulnerabilities Persist in NRC's Controls for Purchases of High-Risk Radioactive Materials」を公表した。放射性物質の購入や所有において不正な許可が用いられることを防ぐため、セキュリティ面の脆弱性を補う措置を直ちに講じるよう勧告している。GAOは連邦議会の要請に基づいて、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関である。今回はリスクの高い放射性物質の購入許可を検証する原子力規制委員会(NRC)のシステムについて審査を要請され、偽造した許可や改ざんされた許可によって高リスクの放射性物質が購入されることがないよう同システムの有効性を審査した。また、購入許可を検証するNRCの能力を検証する審査も行っている。今回の報告書でGAOは、放射性物質がガン治療や医療器具の滅菌等で一般的に使用される一方、わずかな量でも爆発物と組み合わせる等により、「ダーティ・ボム」となる可能性を指摘した。NRCは放射性物質を必要とする人々や組織に対し購入許可を発給しているが、その際、購入できる放射性廃棄物のタイプと量を規制するシステムを使用。量に関しては危険度の高い順から1~5のカテゴリーに分類しており、GAOは今回の審査にあたり、ダミー会社とコピーによる偽造許可を使って米国内のベンダー企業2社それぞれから、カテゴリー3の放射性物質を購入することに成功。これら2社から請求書を受け取った後、料金も支払ったものの、配送段階で放射性物質の受け取りを断り、安全に2社に送り返したとしている。これらのことからGAOは、NRCの既存の許可検証システムでは、高リスクの放射性物質が偽造許可によって購入されることを適切に防ぐことはできないと明言。それ以前の報告書でGAOは、カテゴリー3の量の放射性物質がダーティ・ボムで撒き散らされた場合、数10億ドル規模の社会経済的損失を被ると指摘していたが、今回の報告書では、カテゴリー3の放射性物質を複数のベンダー企業から1回以上購入することで、悪意のある人間が(非常に厳しいセキュリティ対策を必要とする)カテゴリー2の量を確保することは可能であると立証した。NRCに対するGAOの勧告事項は、以下の2点。適切な規制当局にカテゴリー3の放射性物質の購入許可を検証させることを、ベンダー企業に速やかに義務付ける。NRCの許認可プロセスの健全性を改善し、(インターネット等の活用により)改ざんされにくく偽造にも有効なものにするためセキュリティ面の要素を付加する。これら勧告への取り組みとして、NRCは検証システムの強化に向けた規則の制定作業をすでに開始した。しかし、完了までに18か月~2年を要することから、GAOは「少なくとも2023年末までシステムは依然として脆弱なままだ」と指摘している。(参照資料:GAOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Jul 2022
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米規制委、ホルテック社の中間貯蔵施設建設に関する環境影響評価を完了
米原子力規制委員会(NRC)のスタッフは7月13日、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で進めている使用済燃料集中中間貯蔵施設(CISF)の建設と操業に関する申請について、環境影響評価を完了したと発表した。同施設の環境影響声明書・最終版(FEIS)を発行したもので、その中で建設・操業許可の発給を妨げるような環境や周辺住民への悪影響はないと結論付けた。NRCスタッフは今後、同施設の安全面に関する評価報告書を来年1月に完成させる方針で、こちらでも問題がなかった場合、NRCの委員らはホルテック社に対し同施設の建設・操業許可を発給すべきだと勧告している。ホルテック社の計画では、NM州のエディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」と結んだ協力覚書に基づき、ホルテック社はELEAがリー郡内で共同保有する敷地内に同社製の乾式地下貯蔵システム「HI-STORE CISF」を建設、最終処分場が米国内で利用可能になるまで操業する。同社によると、CISFでは米国内の二か所で建設した貯蔵システム「HI-STORM UMAX」や、ウクライナで同社が近年完成させた貯蔵システムの経験が生かされている。CISF建設の最初の段階で、同社はまず約8,680トンの使用済燃料を封入した専用キャニスター500基を同施設で貯蔵。その後の19段階で、最終的に貯蔵するキャニスターの数は最大10,000基を想定している。これらのキャニスターには、全米で稼働中か廃止措置中、あるいは廃止措置が完了した商業用原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料が封入され、列車でCISFまで輸送される予定である。ホルテック社は2017年3月にCISFの建設・操業許可申請書をNRCに提出しており、NRCはその約1年後にこれを正式に受理した。審査では、CISFの建設から廃止措置に至るまで全20段階をカバーした環境影響を評価しており、具体的には、土地の利用や輸送、地質と土壌、地表水と地下水、生態学的資源や歴史的・文化的資源、および環境正義などの分野でCISFの影響を調査した。 これらの結果に基づき、NRCは2020年3月に「環境影響声明書(EIS)」の案文を公表しており、この段階ですでに、同施設の環境影響に問題はないと表明。同案文をパブリック・コメントに付して、国民や様々なステークホルダーから意見を募集したほか、同案文を説明するオンラインの公開会合も6回開催した。その結果、4,800件以上の意見書がNRCに提出されるとともに、個人から3,718件のコメントが寄せられており、FEIS作成にはこれらの意見も反映されている。NRCは当初、建設・操業許可発給の最終判断を2022年1月に発表する予定だったが、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大にともない、パブコメ期間を延長するなどの措置が取られた。ELEAのJ.ヒートン副会長はFEISの発行について「ELEAとホルテック社、およびNM州南東部のコミュニティにとって最高の日になった」とコメント。「CISFは我々コミュニティの経済を多様化し、350名分の新規雇用と30億ドル規模の投資をもたらす可能性がある」と指摘している。米国ではこのほか、放射性廃棄物の処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と仏オラノ社の米国法人が立ち上げた合弁事業体「中間貯蔵パートナーズ(ISP)社」が、テキサス州アンドリュース郡で使用済燃料の中間貯蔵施設建設を計画。NRCは同社の申請に対し、2021年9月に建設・操業許可を発給済みである。(参照資料:NRC、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jul 2022
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