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IAEA/IRRSミッション受入 25年度下期に
原子力規制委員会は11月8日、IAEAによる総合規制評価サービス(IRRS)ミッションの2025年度下期頃の受入れに向け準備を進めることを決定した。〈規制委発表資料は こちら〉IRRSは、IAEAが加盟国の要請に基づき原子力利用の安全確保に向け実施しているレビューサービスの一つ。専門家で構成されるレビューチームにより、対象国の原子力規制に関し、その許認可・検査に係る法制度、関係組織も含む幅広い課題について、規制当局や被規制者へのインタビュー、原子力施設への訪問などを通じた総合的レビューを実施し助言・勧告を行う。IRRSミッションは、欧州諸国を中心に、毎年、数か国で受け入れられてきたが、近年では新興国での活動も顕著で、2022年には原子力発電所の建設が進むトルコ、バングラデシュでも受け入れている。日本におけるIRRSミッションは、2007年に旧原子力安全・保安院および旧原子力安全委員会が受け入れており、両者の役割の明確化などが助言・勧告された。福島第一原子力発電所事故後は、規制委員会が2016年に受け入れ。IRRSミッションによる勧告・提言に関し、同委は「IRRSにおいて明らかになった課題への対応方針」のもと、プロジェクトチームを設置し検討を行い、検査制度や放射線源規制の改善に向けた法整備などにつなげている。規制委員会による今回のIRRSミッション受入れは、山中伸介委員長が就任して1月後の2022年10月、今後の重点的活動方針の一つとして示された「国際機関による外部評価」を具体化するもの。同委では、今秋11月中を目途にIAEAに対する正式要請文書を発出。関係省庁とも調整しながら、2024年度冬以降、IAEAとの公式準備会合を行いスケジュールの詳細を詰めていく。なお、2023年に、IRRSミッションの受入れは、チェコ、オランダ、ベルギー、ポーランド、サウジアラビアで実施されたほか、ルーマニア、モロッコでも予定されている。
- 08 Nov 2023
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東京電力 柏崎刈羽の保安規定変更を規制委に申請
東京電力は11月1日、柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更認可を原子力規制委員会に申請した。保安活動における7項目の基本姿勢に、核物質防護に係る不適切事案への取組から得た教訓を反映している。〈東京電力発表資料は こちら〉2017年12月、規制委員会は、柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可と合わせて、福島第一原子力発電所事故の当事者たる東京電力に対し、特に実施したいわゆる「平成29年の適格性判断」で、「運転主体としての適格性の観点から、原子炉を設置し、その運転を適格に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない」と結論。一方、2020年以降、柏崎刈羽原子力発電所では、核物質防護に係る不適切事案が発生。同委は2023年6月、東京電力経営層より、核物質防護に関する改善措置活動の進捗状況について報告を受け、「平成29年の適格性判断」の再確認を行うこととなり、それに向け、8~9月に公開会合、現地検査が実施され、今回、同社からの保安規定変更の認可申請となったもの。「自律的かつ持続的に原子力発電所の安全性向上に努める」との決意をあらためて示した上で、変更申請された保安規定では、現行の基本姿勢7項目を、廃炉をやりきる覚悟必要な経営資源の投入トップとしての責任安全最優先の発電所運営リスクの低減現地現物の観点による情報共有自主的な改善――に項目立てし再整理。その中で、社長のトップとしての責任については、「当社および協力企業の従業員の意識と行動について、モニタリングを実施し、劣化兆候を把握した場合には、迅速かつ適切に対応し、継続的な安全性向上を実現する」と明記。自主的な改善については、核物質防護に関する改善措置活動から得た教訓を反映し、CAP(小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組)の活用なども盛り込んでいる。なお、柏崎刈羽原子力発電所については、核物質防護に係る不適切事案を受け、規制委員会から東京電力に対し、原子炉等規制法に基づき、規制上の対応区分が改善するまで、特定核燃料物質の移動を禁ずる(事実上運転できない)是正措置命令が発出され、同委による追加検査が継続中。また、地元の動きとしては、9月に新潟県が県独自による福島第一原子力発電所事故の検証結果を総括しており、花角英世知事は、今後、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する議論を行う考えを表明している。
- 06 Nov 2023
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規制委 川内1・2号機の運転期間延長を認可
原子力規制委員会は11月1日、九州電力川内原子力発電所1・2号機について、運転開始から60年までの運転期間延長を認可した。〈規制委発表資料は こちら〉川内1・2号機は、それぞれ2024年7月、25年11月に原子炉等規制法で定められる原則40年の運転期間を満了する。これに伴い、九州電力は、2021年10月より特別点検を行い両機の原子炉容器などの健全性を確認した上で、2022年10月に20年間の運転期間延長認可を規制委員会に申請した。11月1日の規制委定例会合で、原子力規制庁が審査結果を説明。主要な6つの物理的な経年劣化事象(低サイクル疲労、中性子照射脆化、照射誘起型応力腐食割れ、2相ステンレス鋼の熱時効、電気・計装設備の絶縁低下、コンクリート構造物の強度低下)について、特別点検の結果を踏まえた劣化状況評価が行われており運転を延長する期間において「審査基準の要求事項に適合している」ことが確認されたとした。〈高経年化規制の概要は こちら〉川内1・2号機は、2013年7月の新規制基準施行後、先陣を切って2015年に再稼働。熱出力一定運転に伴い、冬季には設備利用率が107%にも達しており稼働状況は好調だ。40年超運転が認可された国内の原子力発電プラントは、既に再稼働した関西電力美浜3号機、同高浜1・2号機、まだ再稼働していない日本原子力発電東海第二を合わせ計6基となった。なお、2023年5月に成立した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)の本格施行(2025年6月)後は、運転開始から30年以降、10年以内ごとに、新制度(長期施設管理計画)での認可が必要となる。
- 01 Nov 2023
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来年度政府概算要求が出揃う
2024年度の政府概算要求が8月31日までに出揃った。文部科学省では、原子力分野の取組として、対前年度比28%増の1,883億円を計上。2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」などを踏まえ、「原子力分野における革新的な技術開発によるカーボンニュートラルへの貢献」として、同2.6倍となる276億円を要求した。高温工学試験研究炉「HTTR」を活用した高温ガス炉の安全性実証や水素製造に必要な技術開発、高速炉技術開発の基盤となる実験炉「常陽」運転再開に向けた取組を推進するとともに、革新炉開発に資するシミュレーションシステムの開発などを進める。また、核融合研究開発の推進では、同37.3%増の292億円を計上。ITER計画などの国際枠組みによる技術開発に加え、競争的資金「ムーンショット型研究開発制度」を活用し「ゲームチェンジャーとなりうる小型化・高度化等を始めとする独創的な振興技術の支援を強化する」ため、新規に20億円を要求。この他、3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu」の2024年度の運用開始に向け38億円、大型放射光施設「SPring-8」の高度化で3億円がそれぞれ新規に計上されている。経済産業省では、エネルギー対策特別会計で対前年度比11%増の7,820億円を計上。最重要課題とされる「福島復興のさらなる加速」では、廃炉・汚染水・処理水対策事業費176億円など、対前年度比21%増の910億円の要求額となっている。原子力規制委員会では、対前年度比25%増の730億円を計上。高経年化対策に係る審査・検査体制などの強化に向け、安全規制管理官(課長レベル)1名設置の機構要求の他、計66名の定員要求も盛り込まれている。
- 01 Sep 2023
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規制委 常陽に原子炉設置変更許可
原子力規制委員会は7月26日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速炉「常陽」(茨城県大洗町、ナトリウム冷却型、熱出力100MW)について、新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可を決定した。原子力機構は、2017年3月に「常陽」の新規制基準適合性に係る審査を規制委員会に提出。規制委では、炉心設計・熱出力に係る申請内容の補正に伴い、およそ1年半の審査保留を挟み、6年余の審査期間を経て、2023年5月24日に審査書案を了承。その後、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントを経て、原子炉設置変更許可となった。「常陽」は、高速増殖炉の基礎・基盤の実証、燃料・材料の照射試験、将来炉のための革新技術検証を使命に、1977年に初臨界に達した後、約71,000時間の運転実績を積んできた。実験装置のトラブルが生じ、2007年5月の定期検査入り以降、運転を停止中。原子力機構は、「常陽」の原子炉設置変更許可取得を受け、運転再開後、高速炉実証炉のための研究開発やがん治療への高い効果が期待されている医療用アイソトープの製造実証に活用していくとしている。〈原子力機構発表資料は こちら〉
- 28 Jul 2023
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ALPS処理水の海洋放出設備 使用前検査が完了
原子力規制委員会は7月7日、東京電力に、福島第一原子力発電所のALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する。))の海洋放出に係る移送/希釈/放水の各設備について、使用前検査終了証を交付した。ALPS処理水の海洋放出設備は、(1)測定・確認用設備、(2)移送設備、(3)希釈設備、(4)放水設備――で構成。そのうち、(1)については、3月に使用前検査終了証が交付されており、今回、(2)~(4)の検査が完了し、規制委による使用前検査はすべて完了したこととなる。ALPS処理水の海洋放出設備は、2022年7月に規制委員会より福島第一原子力発電所に係る実施計画変更認可を受け、8月に設置工事が開始された。2023年4月26日には放水トンネル(長さ約1km)が完成。6月26日にすべての施設の設置が終わり、同30日に最終の使用前検査が実施された。ALPS処理水の処分に関する関係閣僚会議は2023年1月に、「海洋放出設備工事の完了、工事後の規制委員会による使用前検査、IAEAの包括的報告書等を経て、具体的な海洋放出の時期は、本年春から夏頃を見込む」との見通しを示している。ALPS処理水の安全性レビューに関するこの包括的報告書は7月4日に日本政府に提出されており、今回の使用前検査終了により、海洋放出開始に向け設備・保安上の準備は整ったこととなる。東京電力は、「ALPS処理水希釈放出設備および関連設備の保守管理に努めるとともに、同設備を的確に運用するため、引き続き、運転操作訓練・警報対応訓練を行なうなど、現場での安全に係る品質向上について積極的に取り組んでいく」とするコメントを発表した。
- 07 Jul 2023
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規制委 柏崎刈羽の核物質防護事案受け東電の「適格性」再確認へ
原子力規制委員会は6月22日、臨時会合を開き、柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護に係る不適切事案に関し、東京電力による改善措置活動の進捗状況について、小早川智明社長らよりヒアリングを行った。柏崎刈羽原子力発電所については、2021年3月に、原子力規制検査の対応区分が「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)から、「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善されるまで、燃料移動禁止命令((特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令、事実上プラントが運転できない))が規制委員会より出されている。同委では、2023年4月までに延べ3,500人・時間に及ぶ追加検査を実施。各委員の現地視察も踏まえ、5月17日、対応区分は「第4区分」のまま、追加検査を継続することを決定した。東京電力・小早川社長(インターネット中継)22日の会合で、小早川社長は、是正措置命令発出後の2年間を振り返り、「経営陣が自分事として真剣に取り組む姿勢を貫く」意思を改めて示した上で、規制委員会が確認方針としている強固な核物質防護の実現自律的に改善する仕組みの定着改善措置を一過性のものとしない仕組みの構築――の改善措置サイクルを回す必要性を強調。さらに、「現場の管理者、担当者、協力企業との距離を近付けることが大事」と述べ、現地・現物を自ら把握し経営トップとしてリーダーシップを発揮していく意向を示した。〈東京電力・小早川社長発表資料は こちら〉一連の説明を受け、核セキュリティ担当の田中知委員が、残る課題とされている4項目、「正常な監視の実現」(不要警報の低減など)、「協力会社を含む気付き事項の取り上げ」、「核物質防護基本マニュアルの運用」、「改善措置の継続的な実施」の達成見込みについて質問。これに対し、小早川社長は「7月中を目処に形を作りたい」と応えた。また、自然ハザードに関する審査担当の石渡明委員は、不要警報の低減に関し、柏崎刈羽原子力発電所の厳しい自然環境(大雪、砂嵐など)から、「思わぬ現象も起きうる」として、侵入検知設備の設置場所など、ハード面の対策に限界があることを示唆。荒天時の特別な体制整備など、ソフト面の対策にも言及し、「自然現象への対応に、これで十分ということはない」として、継続的に改善を図っていく必要性を指摘した。山中伸介委員長は、核物質防護の取組を原子力安全確保に活かす考えから、柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更を検討するよう東京電力に求めた。また、同社退席後、委員長は、今後の命令解除の議論を見据え、柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可時(2017年12月)に行った「原子炉設置者としての適格性」に関し、改めて技術的観点から再確認する方針を固め、その具体的方法の検討を原子力規制庁に指示した。
- 23 Jun 2023
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高浜1・2号機 今秋にも国内2例目の40年超運転
関西電力は6月21日、高浜発電所1・2号機について、それぞれ8月下旬、10月中旬の本格運転再開を決定した。火災対策に係る対応のため、再開に向けた工程は当初予定より2か月ほど遅れる見通し。再稼働すれば、国内では、同社・美浜3号機(2021年7月本格運転再開)に続き、2例目の40年超運転となる。高浜1・2号機はそれぞれ1974年、75年に運転を開始しているが、いずれも2011年以降、停止している。〈関西電力発表資料は こちら〉同社は、2015年3月、美浜3号機とともに高浜1・2号機について、新規制基準適合性に係る審査を原子力規制委員会に申請。同年4月には、高浜1・2号機の運転開始から60年までの運転期間延長認可に係る申請を行い、2016年4月に両機とも原子炉設置変更が許可された。高浜町からは2021年2月に、福井県からは同年4月に再稼働に対する理解表明を得ており、安全対策工事も完了。テロに備えた「特定重大事故等対処施設」は、高浜1号機が今年7月中旬、同2号機が同8月下旬の運用開始予定。それぞれ、8月上旬、9月中旬にも調整運転(発電再開)を開始する見通しだ。関西電力では、高浜1・2号機の再稼働に当たり、「トラブルの未然防止のための総点検等を行い、安全を最優先に緊張感を持って進めていく」としている。
- 22 Jun 2023
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「常陽」の審査完了へ RI国産化にも期待
原子力規制委員会は5月24日、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(大洗町、ナトリウム冷却型高速炉、熱出力100MW)について、新規制基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会と文部科学省への意見照会、パブリックコメントを経て、正式決定となる運び。原子力機構は2017年3月、「常陽」の新規制基準適合性に係る審査を規制委員会に申請。炉心設計・熱出力に係る申請内容の補正に伴い、およそ1年半の審査保留を挟み、都合6年余の審査期間を経て、審査書案の了承となった。「常陽」は、高速増殖炉の基礎・基盤技術の実証、燃料・材料の照射試験、将来炉のための革新技術検証を使命に、1977年に初臨界に達した後、約71,000時間の運転実績を積んできた。現在、2007年度に実験装置のトラブルが生じ運転を停止中。2016年に高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉決定を踏まえ原子力関係閣僚会議が策定した「高速炉開発の方針」では、炉心燃料関連技術、ナトリウム取扱・主要機器関連技術など、高速炉特有の技術課題解決のための知見獲得、国際協力との相乗効果による開発推進の観点から、「常陽」の再稼働に向けて積極的に取り組むとされている。高速炉開発は非エネルギー分野での貢献も期待されており、原子力機構が昨秋開催した報告会での説明によると、現在、全量を海外に依存している医療用ラジオアイソトープの国産化に向けて、「常陽」を活用し、がん治療で世界的に注目されるアクチニウム225の製造実証を2026年度までに行うとしている。
- 24 May 2023
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規制委 柏崎刈羽の核物質防護事案で追加検査継続へ
原子力規制委員会は5月17日の定例会合で、核物質防護に係る不適切事案のため東京電力柏崎刈羽原子力発電所に対し実施している追加検査を、引き続き行う対応方針を了承した。柏崎刈羽原子力発電所では、2020年9月に発電所社員が他社員のIDカードを無断で持ち出し中央制御室まで不正に入域する事案が発生。この他にも、核物質防護設備の機能の一部喪失事案が発覚したことから、規制委員会は、「組織的な管理機能が低下」、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況」と指摘し、2021年3月、同所に対する原子力規制検査の対応区分を「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)に変更。約2,000人・時間を目安として追加検査を行うことを決定し、東京電力に対し同年4月、対応区分が「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善するまで、事実上、運転が不可能となる是正措置命令を発出した。17日の会合では、原子力規制庁が2021年4月~23年4月に実施した追加検査の報告書について説明。検査時間は3,475人・時間に達したとしている。そのうち、2021年秋の東京電力による改善措置報告後に行われた「フェーズⅡ」では、「強固な核物質防護の実現」、「自律的に改善する仕組みの定着」、「改善措置を一過性のものとしない仕組みの構築」の3つの確認方針で検査。これに基づく27項目からなる確認視点のうち、4項目が未だ「是正が図られていない」との判断に至り、原子力規制検査の対応区分を「第4区分」のまま、「フェーズⅢ」として追加検査を継続するとしている。今回の報告書では、「是正が図られていない」と判断された確認視点の一つ「自然環境に適合した設備が設置され不要警報が減少しているか」に関し、荒天時の体制構築や不要警報の低減目標を踏まえた具体的対応について、引き続き確認の必要があると指摘。自然ハザードに関する審査を担当する石渡明委員は、日本海側の厳しい気象条件にも言及しながら、「長期的に改善している傾向がはっきりと見える。『あと一息』という感じではないか」と、東京電力の取組に一定の評価を示した。山中伸介委員長は、今後、追加検査の進捗について引き続き報告を受けるとともに、東京電力社長との対話の場を設定し、今回の報告書で指摘された課題への対応状況について意見交換を行う考えを示した。なお、規制委員会による対応方針を受け、東京電力は、検査で指摘事項のあった4項目について「しっかりと是正を図っていく」とのコメントを発表した。
- 17 May 2023
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規制委 60年運転で「追加点検」実施の方針
原子力規制委員会の山中伸介委員長は5月10日夕刻の定例記者会見で、同日会合の議題となり了承された運転開始から60年目以降の原子力発電所に課する「追加点検」の考え方に関し、「今後の専門的な議論に向けて大筋が固まった」と述べ、技術的論点は概ねクリアされたとの認識を示した。〈規制委発表資料は こちら〉現在、国会で「原子力発電の運転期間に関する規律の整備」、「高経年化した原子炉に対する規制の厳格化」などを盛り込んだ原子力関連の法案が審議中となっている。原子力事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り現行規定で最長60年の運転期間から除外する(電気事業法)とともに、運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに設備劣化に関する技術的評価、および劣化を管理する計画の認可を受けることを義務付ける(原子炉等規制法)というもの。60年超の運転も認め得ることとなる。規制委員会では、こうした運転期間見直しの動きを踏まえ、昨秋より高経年化した原子力発電所の安全規制に関する検討を進め、随時、専門チームでの検討状況について報告を受けてきた。10日の定例会合では、現行の運転開始40年目で課する「特別点検」と同じ項目で、60年目以降の運転に係る認可の際、「追加点検」の実施を求めることを原則とする考え方を了承。山中委員長は会見で、「今後は規則・ガイド類をまとめていく必要がある」として、関連法案成立後、膨大な作業を要する見通しを示した。同委では高経年化した原子力発電所の安全規制に関するわかりやすい資料作りに取り組んでいるが、山中委員長は、「『劣化が進んでいくとはどういうことなのか。それに対しどういう規制を行っていくのか』を、国民に理解してもらうよう今後も改善を図っていく」と改めて強調。また、人工知能を使ったチャットサービス「ChatGPT」の活用について問われたのに対し、同氏は「職員の間で色々と勉強している段階だと思う」と応え、現時点では導入に向けた具体的検討はなされていないとした。
- 11 May 2023
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ALPS処理水を巡る2度目のIAEA規制レビュー 日本側取組を評価
IAEA・カルーソ氏原子力規制委員会は5月10日の定例会合で、2023年1月に行われた福島第一原子力発電所のALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)取扱いに関するIAEA規制レビュー(ミッション団長=グスタボ・カルーソIAEA原子力安全・核セキュリティ局調整官)の報告書について原子力規制庁より説明を受けた。〈規制委発表資料 こちら〉同報告書は、ALPS処理水の海洋放出に関し、2021年7月に日本政府がIAEAによる支援を要請し署名した付託事項に基づき行われたレビューのうち、規制面でのレビューについて取りまとめたもの。1月のIAEAによる規制レビューは2022年3月に続き2回目となり、規制委員会へのヒアリングや現地視察を終了後、団長のカルーソ氏は、「前回のミッションで出たほとんどの問題について考慮されていることを確認できた」と、日本の規制当局の取組を評価した上で、3か月以内にも報告書を公表するとしていた。今回、IAEAが公表した報告書では、政府の役割と責任、主要概念と安全目的、認可プロセスなど、規制に係る5つの技術的事項に関するレビューについて記載。進捗報告書との位置付けで、結論には言及しておらず、「ALPS処理水の海洋放出開始まで、および放出開始後において、国際安全基準に照らし規制プロセスとその活動を引き続き監視する」としている。IAEAはレビュー全側面にわたる包括的報告書を年央にも公表することとしているが、原子力規制庁担当者によると、これに向けたミッションが5月末にも来日する予定。日本政府は海洋放出開始時期を春から夏頃と見込んでいる。トンネル掘進完了後の放水トンネルの様子©東京電力この他、10日の定例会合では、東京電力が昨秋に申請した福島第一原子力発電所廃炉に関する実施計画の変更認可が決定された。ALPS処理水の海洋放出に当たり、トリチウム以外に測定・評価を行う対象核種として29核種を選定し放出基準を満足することを確認するとしたもの。ALPS処理水の希釈放出設備の設置工事は、4月26日に全長約1,031mの放水トンネルの掘進が完了している。
- 10 May 2023
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春の叙勲 元原子力規制庁長官の池田克彦氏が瑞宝重光章
瑞宝重光章を受章する池田氏(2015年、全原協総会にて)政府は4月29日、春の叙勲受章者を発表した。原子力規制庁の初代長官を務めた池田克彦氏が瑞宝重光章を受章する。同氏は、2012年9月に発足した原子力規制委員会の事務方トップとして2015年7月まで在任。福島第一原子力発電所事故後の原子力規制行政の建て直しに尽力した。池田氏は、同職就任以前、警察官僚として警察庁警備局長、警視総監などを歴任。警備部門の経験が豊富で、1995年の「地下鉄サリン事件」以降、有毒ガス発生事案に注目が集まった時期、NBC(核、生物、化学)テロ対策訓練で指揮を執ったこともある。現在は、日本道路交通情報センター理事長。同氏は雑学本の著者としても知られている。
- 01 May 2023
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規制委 高経年化プラントの安全規制で説明資料公開
原子力規制委員会は4月19日、高経年化した原子力発電所の安全規制に関する検討状況と、その全体像についてわかりやすく説明するための資料をWEBサイトで公開した。現在、原子力発電の運転期間に関する規律の整備を含む「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が国会で審議中となっている。同法案では、「運転期間は最長で60年に制限する」という現行の枠組みは維持した上で、原子力事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外することを規定。これにより、現行法上の上限である60年を超えての運転も可能となる。今回、規制委員会が公開した資料では、同法案中、原子炉等規制法改正案に関する部分を説明。運転期間に関する規定が電気事業法に移管される一方、「原子力事業者に対して、運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに、設備の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための計画を定め、規制委員会の認可を受けることを義務付ける」新たな制度を規定している。資料の概ね前半は、新規制基準、バックフィット制度((既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する))、物理的な経年劣化事象(低サイクル疲労、中性子照射脆化他)など、安全規制のあらまし・課題について説明。後半では、新たな制度で事業者に策定を義務付ける「長期施設管理計画」に定める内容、認可の基準などについて説明。さらに、現在、高経年化に関する規制委の検討チームで技術的議論が進められている非物理的な劣化、いわゆる「設計の古さ」については、「スペアパーツが入手できなくなったり、メーカーの技術サポートが受けられなくなること」を例示した。運転開始後60年以降の評価については、これまでの制度の運用や経年劣化に関する科学的知見から「科学的根拠をもとに厳格な審査ができる」とした上で、海外における運転開始から50年を超えた原子炉の一覧を示し、「60年超の劣化に関する科学的知見の蓄積が進んでいく」と述べている。同資料は、原子力規制庁制作による要約版との位置付け。4月18日の規制委定例会合で、資料のまとめに当たっている同庁長官官房総務課長の黒川陽一郎氏が内容を説明。これに対し、検討チームを主導する杉山智之委員は、「まだ世間の疑問に対して応えきれていない」と述べ、Q&A集、技術資料集の追加など、さらなる充実化を求めた。資料は今後、ブラッシュアップされていく見通し。
- 20 Apr 2023
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設立10周年のJANSIが年次大会
原子力安全推進協会(JANSI)は3月15日、「JANSI Annual Conference 2023」を都内で開催。オンライン視聴も含め約500名が参加した。JANSIは2012年に、「福島第一原子力発電所事故のような過酷事故を二度と起こさない」という原子力産業界の強い決意のもと、米国原子力発電運転協会(INPO)をモデルに設立された自主規制組織で、現場観察やヒアリングによる評価を通じ規制適合だけに満足せず自主的な安全性向上活動を促す「ピアレビュー」などを実施している。開会挨拶に立ったウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア会長は、昨秋、JANSIが設立10周年を迎えたことについて「単なる通過点に過ぎない」との認識を示し、「引き続き自主的な改善に努めていく」と強調した。続いて、原子力規制委員会の山中伸介委員長、INPOのロバート・フレデリック・ウィラードCEO、電気事業連合会の池辺和弘会長が挨拶。山中委員長(ビデオメッセージ)は、JANSIに対し、「民間の原子力規制機関と考えており、人員規模は原子力規制委員会にも匹敵する」と、組織の有する意義・リソースの大きさを明言した上で、技術情報の共有、継続的な安全性の向上、検査制度の実効性向上、安全・セキュリティ文化の醸成、人材育成において、産業界を牽引する指導的取組を図っていくよう期待した。ウィラードCEO(ビデオメッセージ)は、JANSI設立10周年の節目に際し祝意を表した上で、「INPOはTMI事故、JANSIは福島第一原子力発電所事故、どちらも国内の原子力が危機にさらされている中で設立された」としたほか、設立から10年時点のINPOを振り返り、会員企業に対する懸命な理解活動など、困難の克服に挑んだ経緯を回顧。JANSIに対し「国際的な原子力産業の視点から見ても、価値の高いプログラムが評価されている」とする一方、「過去の成果に決して甘んじてはいけない」と述べ、原子力の安全性・信頼性のパフォーマンス向上に向け、JANSIと引き続き協力していく姿勢を示した。池辺会長は、事業者を代表する立場から「JANSIが自主規制組織として果たす役割の重要性はますます高まっている」と強調。昨秋、JANSIの「ピアレビュープログラム」が世界で初めて、世界原子力発電事業者協会(WANO)によるものと「同等」と認定されたことなど、最近のJANSIに対する国際的評価に言及。「10年間の成果が目に見える形で表れている」とする一方、今後に向け「JANSIを含む産業界全体が『運命共同体である。“We are in the same boat”』の精神のもと、緊密に連携する必要がある」と述べ、慢心せず自主的・継続的に安全性向上に取り組んでいく姿勢を示した。基調講演を行った米国エナジー・ノースウェスト社CEOのロバート・シュッツ氏は、コロンビア原子力発電所(ワシントン州)を例に、米国原子力産業界における安全性向上の取組を紹介。INPOの取組に関しては、会員企業のCEOが集まる年次総会で行う改善活動の相互比較をあげ、「最下位となった企業のCEOは他社から批判的コメントを受ける」と説明。その上で、「学ぶべきことは『われわれは互いに説明し合う義務がある』ことで、これこそが自主規制の神髄だ」と強調した。パネルディスカッションには、山下ゆかり氏(日本エネルギー経済研究所常務理事、座長)、シュッツ氏、山口彰氏(原子力安全研究協会理事)、ビクター・マクリー氏(ニュークリーダー・コンサルティング社オーナー兼プリンシパル・オペレーティング・オフィサー)、森望氏(関西電力社長)、JANSIからウェブスター会長と山﨑広美理事長が登壇。JANSIの今後10年に向けた展望、日本の原子力産業が目指すべき方向性などをテーマに意見交換が行われた。
- 16 Mar 2023
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柏崎刈羽の命令解除判断「5月初旬から中旬」
会見を行う原子力規制委員会・山中委員長(インターネット中継)原子力規制委員会の山中伸介委員長は3月8日の定例記者会見で、同日の定例会合で議題となった東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案を受け同社に対し実施している追加検査に関し、「5月初旬から中旬を目途に報告書の議論に入る」との見通しを示した。核物質防護機能の一部喪失などの事案発生を受け、規制委員会は2021年3月に柏崎刈羽原子力発電所の規制上の対応区分を「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)に変更。同4月、東京電力に対し、規制上の対応区分が「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善するまで、事実上、運転が不可能となる是正措置命令を発出。合わせて追加検査を開始した。現地には、昨年末以降、2023年2月までに、山中委員長他、4名の委員が視察に訪れており、3月3日には原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チームが小早川智明社長へのヒアリングを行っている。会見で、山中委員長は、命令解除の可否に関し「公開の場で結論を出したい」と明言。検査で確認された課題として、ハード面では検知器の問題、ソフト面では協力会社も含めた気付き事項の取り上げや「改善措置を一過性にしない」仕組みが不十分なことを指摘し、現時点での命令解除は「なかなか難しい」との見通しを示した。追加検査は計3,300時間に及んでいるが、現在、関連法案が国会で審議中の「事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外」とする規定の適用に関して問われたのに対し、山中委員長は「資源エネルギー庁が判断すること」と応えるに留めた。
- 08 Mar 2023
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規制委が東京電力本社でヒア 柏崎刈羽
原子力規制委員会は3月3日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護に係る不適切事案に関し、同社・小早川智明社長へのヒアリングを行った。柏崎刈羽原子力発電所では、2020年以降、核物質防護機能の一部喪失などの事案が発生。規制委員会は、「組織的な管理機能が低下」、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況であった」と指摘し、2021年3月に同所の規制上の対応区分を「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)に変更。同4月、東京電力に対し、柏崎刈羽原子力発電所に係る規制上の対応区分が「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善するまで、事実上、運転が不可能となる是正措置命令を発出。合わせて同所に係る追加検査を開始した。豪雪の中、柏崎刈羽発電所を視察する原子力規制委員会・山中委員長(原子力規制委員会提供)現地には、昨年末以降、2023年2月までに、山中伸介委員長他、4名の委員が視察に訪れている。今回のヒアリングは、その追加検査の一環として行われたもの。原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チーム長・古金谷敏之氏(長官官房緊急事態対策監)らが東京電力(本社)を訪れ、同社による改善措置活動の状況について説明を受けた。冒頭、小早川社長は、「自ら現場を確認する」ことの重要性を強調。設備のパフォーマンス向上などの取組状況を述べた上、引き続き「社長である私の責任で着実に対応していく」姿勢を示した。ヒアリング終了後、取材に応じた古金谷氏は、東京電力との間の認識に関し「大きなズレはなかった」と、課題に対する取組・成果を認める一方、CAP((小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組))の不十分さなど、まだ改善の余地があることを指摘。今回のヒアリングに関し「結論ありきのものではない」と述べ、追加検査の終了や是正措置命令解除に向けた具体的見通しについては言及しなかった。また、小早川社長は、「是正措置命令を受けてから2年間取り組んできた中身についてお話しした」と説明。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、「セキュリティとセイフティがしっかりと健全な状態になって初めて再稼働の時期について言及」する姿勢を示した上で、「スケジュールありきではなく、まずは改善」との考えを強調した。原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チームは3月6日、現地にて稲垣武之所長らからのヒアリングを行う。
- 06 Mar 2023
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規制委 高経年化炉の安全規制で検討チーム始動
原子力規制委員会は2月22日、「高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム」の初会合を行った。利用政策側(資源エネルギー庁)による運転期間見直しに向けた検討を踏まえ、同委では、昨秋からの議論の末、2月13日に高経年化炉に係る新たな安全規制の概要および関連の原子炉等規制法案を了承。運転開始後30年を超えて運転する場合、事業者に対し10年以内ごとに施設の劣化を管理するための「長期施設管理計画」の策定を義務付け、認可を受けなければ運転できないというもの。新制度の実施は関連法案の成立が前提だが、施行後の遅滞ない運用を図るべく同チームにおいて詳細な規則・ガイド類の整備に向け検討を行うこととなった。検討チームは、プラント審査を担当する杉山智之委員が中心となり、原子力規制庁職員らで構成。必要に応じ事業者からの意見聴取も行う。初会合の冒頭、杉山委員は、「新しい制度にスムーズに移行するため、何を決めなければいけないか。どのように高経年化したプラントの安全を確保していくかを議論していきたい」と、口火を切った。同チームの新制度に係る検討事項として、原子力規制庁は、基本的な枠組み新たな技術的検討(運転開始後60年以降の評価など)わかりやすい情報発信手法(1か月程度で概要をまとめる)――に大別。新制度においても、現行の劣化評価の技術的内容は運転開始後60年までは引き続き実施し、「40年+20年」の運転延長認可の際に実施されていた「特別点検」も同様に維持するとの原則を示した。いわゆる「設計の古さ」に関して、原子力規制庁原子力規制技監の市村知也氏は、これまでの新規制基準適合性に係る審査対応を振り返り、事業者によるシビアアクシデント対策、材料の改善などの事例をあげ、劣化管理との関連性やバックフィット(既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する)による対応可否を整理することを示唆。原子炉安全工学の立場から、杉山委員は、「着工後、相当な時間が経っているがまだ運転に至っていない炉は今でも『ゼロ歳』と扱われている」などと、「一旦設置許可を受けた炉は差し当たり40年間の運転は保証される」という考え方に疑問を呈し、運転されない間に進む劣化も重要な観点であることを指摘した。初会合には、杉山委員の他、田中知委員、伴信彦委員、石渡明委員が出席。自然ハザードに係る審査を担当する石渡委員は、海外における長期運転認可の状況に触れながら、サイト周辺の環境変化に関し「60年もたてば、洪水で川の流れが変わったり、田んぼの真ん中だったのが周りに家が建ち並んだり、ガラッと変わってくる」と述べ、今回の新制度設計における環境影響評価に係る観点の欠如を指摘した。検討チームでは今後、作業の進捗を見ながら、月2、3回程度のペースで会合を開く予定。
- 24 Feb 2023
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「12年間のプラント停止は非常識」エネ研が原子力規制でシンポ
日本エネルギー経済研究所(エネ研)は2月21日、都内のホテルで、「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催。OECD原子力機関(NEA)のW.マグウッド事務局長をはじめ、カナダ、英国の原子力規制専門家が登壇し、「合理的な規制」のあるべき姿について議論した。シンポジウムは対面式で開催され、多くの関係者が詰めかけた。マグウッド氏は、世界規模で原子力発電の新規導入が検討されている中で、最も重要なことは「スキルを備えた力強い規制当局」の存在だと強調。世界の規制分野で、優秀な規制人材の確保が課題となっていると述べた。そして規制当局の意思決定に関しては、透明性を持ちつつ “誰が見てもわかる明確な原則” を示すことで、信頼を得ることができるとし、規制者側にも「自らに対しても批判的である」よう求めた。また福島第一事故以降、日本の規制当局がとってきた対応を「緊急性の高い危機対応であり、妥当」と一定の評価をしつつも、「もはや危機は脱した」として、これまでの規制対応などのアプローチ自体を「見直す時期に来ている」と指摘。規制当局にはイノベーションを受け入れる姿勢が大切だとした上で、AI等の最新手法を貪欲に取り入れ、“reasonable(合理的)” かつ実用的な安全性向上へ取り組むべきだと訴えた。そして私見としながらも、規制当局の意思決定は、将来に渡ってリピートされる模範例となることが大事だとし、規制当局のグローバル規模での連携により、より良い規制が生まれるのではないかと、規制当局間のコミュニケーション強化を呼びかけた。CNSCの上席副長官兼最高規制業務責任者を務めるジャマル氏カナダ原子力安全委員会(CNSC)や米原子力規制委員会(U.S.NRC)の委員を歴任したR.ジャマル氏は、カナダでの規制事例を紹介。その規制手法は柔軟であり、常に原子力安全規制分野の変化に対応できるよう心掛けているとした。そして規制にあたって最も重要視すべきこととして、「合理的でないリスク防止策」を除外することを挙げた。これは、原子炉を停止してしまえば簡単にリスクは防止できるが、そうした安易な手法は取らず、さまざまなリスク情報を分析した上で対応するということで、こうした姿勢も、規制当局にそれだけの力量があってはじめて可能になると強調した。英国のR.キャンベル氏は、英原子力規制庁(ONR)等で30年以上のキャリアを積んだベテラン。今回が初来日となった。同氏は規制において「タイムスケールの透明性」が不可欠だと指摘。申請から認可までいかに迅速に結論を出せるかがカギであり、「法律や規則で決まっているものではないが、規制当局としてのサービスの一環として示す必要がある」と強調した。また、事業者と規制当局は常に対話を継続するべきだとした上で、規制当局は「外部からどのように見られているかを常に意識しなければならない」との認識を示した。モデレーターを務めたエネ研の村上朋子・研究主幹が質疑の中で、「規制プロセスとプラント利用率向上のバランス」について問い掛けたところ、3者とも「設備利用率は事業者の管轄であり、規制当局は関知しない」と断言。また「規制当局は電力供給の安定性も考慮すべきなのでは?」との会場からの声に対し、これも3者とも「規制当局は電力の供給に責任を持つものではない」との考えで一致した。ただし、「優れた規制当局は、どこで何が起きているかを把握しなければならない。場合によっては規制当局は、状況を踏まえて意思決定を行なうこともある。必ずしもプラントを今すぐ止めなければならない問題でなければ、当局も相応の対応が取れるはずだ」(マグウッド氏)、「国民のwell-being(幸福)のためという目標を忘れてはならず、graded approach(リスクに見合った規制)を適用すべきだ」(ジャマル氏)──等のコメントがあった。昨年ONRを退任したばかりのキャンベル氏一方、「合理的な規制とは?」との問いに関しては、マグウッド氏とジャマル氏が「安全目標に照らし合わせ、それを十分に達成した状態でプラントが稼働することが基本」と、バランスを取りながら合理性を判断するとしたのに対し、キャンベル氏は「合理性とは、余計なコストをかけないこと」と即答。規制当局としてはリスクが十分に低ければ、合理性の観点から十分にacceptable(受容可能)であり、わずかなリスクを下げるために過大なコストを投じることは馬鹿げていると指摘した。キャンベル氏は日本のプラントが置かれた状況にも言及。「再稼働を目指すというが、12年間の停止期間は非常識。これは全てイチからやり直すようなもので、人材が足りないだけでなく、数多くのトラブルが起きることが目に見えている。規制当局を納得させることは難しいだろう」と指摘した。その上で、そこまでして旧いプラントを再稼働させるよりも「最新知見を結集した新型炉にリプレースする方が、明らかに合理的」との考えを明らかにした。
- 24 Feb 2023
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「ATENAフォーラム2023」開催
開会挨拶に立つATENA・魚住理事長原子力エネルギー協議会(ATENA)は2月16日、「ATENAフォーラム2023」を都内ホールで(オンライン併用)開催した。ATENAは2018年7月、電力会社に加えメーカーなども含む産業界全体で原子力の自主的安全性向上を図る組織として発足。知見・リソースを効果的に活用しながら、原子力発電の安全性に関する共通的な技術課題に取り組んでいる。ATENAの取組について発信するフォーラムの開催は今回で5回目となる。来賓挨拶に立つ原子力規制委員会・山中委員長来賓挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、ATENAの取組に関し「個別事業者としては言い得ないような意見を拾い上げ、原子力規制委員会・規制庁に対する異論・反論も含めた事業者の意見・提言の発信がより強く期待できる」と、その意義を強調。一例として、事故耐性燃料の導入に向けた事業者との技術的議論の進展などに言及した上で、今後も原子力発電所の長期サイクル運転におけるリスク情報の活用など、技術課題に係る様々な提案が寄せられるよう、ATENAのリーダーシップ発揮に期待した。また、昨今の原子力施設におけるトラブル多発を背景に、「技術力・現場力の低下が生じているのではないか。大学などにおいても原子力を学ぶ学生数が減少し、実験装置を自ら作成するという体験が少なくなっている」として、将来の原子力人材育成に向け真剣に考えるべきと明言。ATENAに対し、「メーカーも含む」という強みに触れ、「これまでの発想とはまったく異なった若手人材の育成に取り組んで欲しい」と述べた。講演を行う米NEI・コースニック理事長続いて基調講演(ビデオメッセージ)を行ったM.コースニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長兼CEOはまず、昨今の世界的なエネルギー危機・政情不安に言及。その上で、「各国の指導者たちは今、気候危機への対応が自国の経済やエネルギー安全保障に直結していることを認識している。その多くは、出力の大規模化が容易で信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギー源として原子力を推進する明確な政策を打ち出している」と述べ、英国、フランス、カナダ、ポーランド、オランダ、ブルガリア、チェコにおける最近の原子力開発に向けた動きを紹介した。同氏は、米国の原子力推進に係る法案提出状況にも触れ、「10年前は州レベルで12本もあれば良い方だったが、最近では100本以上にも上っている」と、関心の高まりを強調。運転期間の見直しや次世代革新炉の開発・建設など、日本の原子力政策の動きに関しては、「強固なサプライチェーンと経験豊富な人材が必要」と指摘するとともに、「『今こそ原子力に全力投球すべき』ことは明らか」と述べ、NEIとATENAとのパートナーシップを強めていく姿勢を示した。パネルディスカッションの模様(スクリーン上はアポストラキス氏)パネルディスカッションでは、山口彰氏(原子力安全研究協会理事、モデレーター)、ジョージ・アポストラキス氏(電力中央研究所原子力リスク研究センター所長)、金城慎司氏(原子力規制庁原子力規制企画課長)、水田仁氏(関西電力原子力事業本部長代理)、山本章夫氏(名古屋大学工学部教授)、富岡義博氏(ATENA理事)が登壇。安全性と経済性の両立を巡るリスクコミュニケーションツールの活用、産業界と規制当局との対話などをテーマに意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 21 Feb 2023
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