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福島第一原子力発電所事故から9年、東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から9年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員に訓示を行った。発災時刻の14時46分に合わせ1分間の黙とうを行った後、小早川社長はまず、「震災で亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様に深い追悼の意を表したい。今なお福島の皆様、広く社会の皆様に多大なご負担・ご心配をかけていることに心からお詫び申し上げる」と述べた。その上で、先般の双葉町、大熊町、富岡町の一部地域での避難指示解除、14日には常磐線の全線開通、26日には東京オリンピック聖火リレーの「Jヴィレッジ」スタートが予定されるなど、福島の復興に向けた動きをあげ、「今後は『復興と廃炉の両立』が大きなテーマ」、「地域の皆様に信頼してもらえるよう取り組んでいく」と強調。福島第一原子力発電所の廃炉に関わる産業創出などを通じた復興へのさらなる貢献に意欲を示した。また、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、「原点は福島。安全に終わりはない」と社員らに訓示。「福島への思いを新たに日々の業務にしっかりと取り組み、一丸となって福島への責任を果たしていく」と強調した。同日、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が原子力規制庁職員に訓示を行った。「多くの方々の人生を変え、いまだに多くの方々が不自由な生活を余儀なくされている」と、福島第一原子力発電所事故の及ぼした影響を強調し、職場で事故について考え話し合う時間を持って欲しいと述べた。また、業務への取組姿勢に関して、「人間には現状維持を望む傾向がある」と危惧し、4月からの新検査制度導入も踏まえ、既存の文書や前例に過剰に依存することなく、「そもそもどうあるべきか」に立ち返って考えるよう職員らに求めた。
- 11 Mar 2020
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女川オフサイトセンターが震災後9年を経て再建
内閣府(原子力防災)は3月4日の原子力規制委員会定例会合で、東北電力女川原子力発電所に係るオフサイトセンターの概要を説明し同委に意見を求めた。オフサイトセンターは、原子力災害発生時に現地対策本部が設置され、国、地方自治体、事業者、関係機関が参集し、モニタリング、被ばく医療、避難、住民への情報発信などを指揮する拠点となるものだが、女川オフサイトセンターは東日本大震災に伴う津波で壊滅的な被害を受け使用不能となったため、発電所から約53km離れた仙台市内の旧消防学校校舎を暫定的に使用してきた。津波で崩壊した旧女川オフサイトセンター(内閣府発表資料より引用)内閣府では2017~18年度、女川オフサイトセンターの再建事業として総額27億円を計上し宮城県に費用を交付。このほど、発電所の北西約7km、海抜約39mの地点に、免震構造3階建ての鉄筋コンクリート建屋が完成した。TV会議システム、電話・FAX装置、統合原子力防災ネットワークなど、所要の通信設備、合同対策協議会や報道対応に供する各種スペースを備えているほか、隣接する学校のグラウンドに大型ヘリの離発着が可能。また、複合災害に備え、仙台市と大崎市の発電所からそれぞれ約54km、約49kmの地点に2か所の代替オフサイトセンターが指定されている。内閣府の説明を受け、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、発電所周辺の道路が急峻で蛇行していることを踏まえ、「複数のルートを確保しておくことが大事」と強調。さらに更田豊志委員長は、今後のオフサイトセンター整備に関し、「県庁からの距離が、島根発電所のように近い場合もあるし、女川発電所のように遠い場合もある」などと地域特性をあげた上で、自治体の機能についても合わせて検討する必要性を指摘した。新たな女川オフサイトセンターは、3月2日より暫定運用を開始しているが、今回の原子力規制委員会への意見照会を踏まえ、近く正式に政府より指定を受ける運び。
- 04 Mar 2020
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規制委、女川2号機の新規制基準審査で原子炉設置変更許可
原子力規制委員会は、2月26日の定例会合で、東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が新規制基準に「適合している」とする審査結果を決定し、同社に対し原子炉設置変更許可を発出した。同案件については、11月に「審査書案」を了承し、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントが行われていた。新規制基準適合性に係る審査をクリアしたプラントは16基となり、BWRでは4基目。同機の審査は、2013年12月に申請され、過去に大地震を経験してきた地理的特性から、地質・地震動評価や耐震設計に関して慎重な審査が行われた。定例会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、「東北電力には概ねきちんと対応してもらえた」と、6年以上に及んだ審査を振り返った。東北電力の原田宏哉社長は、2月4日に行われた規制委員会が随時実施する事業者意見交換の後、記者団の取材に応じ、「審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、女川2号機の再稼働に向けた現場の意識高揚を強調した。同社では、2020年度の工事完了を目指し、海抜約29mの防潮堤建設などの安全対策工事を進めていく。
- 26 Feb 2020
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更田規制委員長、六ヶ所再処理工場他の「審査書案」取りまとめ見通しを述べる
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、2月19日の定例記者会見で、大詰めを迎えている日本原燃の六ヶ所再処理工場などの新規制基準適合性審査の状況について質疑に応じた。六ヶ所再処理工場については、記者より18日に行われたプラントに関する審査会合で「概ね議論が終了した」として、「審査書案」取りまとめの見通しを問われると、更田委員長は、現状で示すことは「時期尚早」と述べた。六ヶ所再処理工場の審査は2014年1月の申請から6年が経過。日本原燃の増田尚宏社長は、同31日の記者会見で、最終の申請書類について「これまでの審査会合における指摘事項を反映し、早期に提出できるよう作業を進めている」としている。2月21日には地震・津波関連の審査会合が行われる予定。また、更田委員長は、同じく申請から6年が経過した使用済み燃料貯蔵施設の審査に関し、記者から「17日の審査会合でプラントに関する議論が実質終了した」として、「審査書案」の取りまとめ時期を問われたが見通しは示さなかった。審査が長期化した理由について、耐津波設計に関する論点で、「駄目出しは早めに出すべきだった」と、規制側としての反省点も明言。11月に「審査書案」が取りまとめられた東北電力女川2号機については、「パブリックコメントの取りまとめ結果を見せてもらってはいる。それほど長くかからない時期に委員会に報告されるだろう」と述べ、年度内にも同案件に関わる原子炉設置変更許可の発出となる見込みを示唆した。
- 20 Feb 2020
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ATENAフォーラム開催、米NEIのコーズニック会長が講演
原子力事業者・メーカー・関係団体で構成される「原子力エネルギー協議会」(ATENA、理事長=門上英・三菱重工業特別顧問)が活動状況を報告し今後の課題について話し合う「ATENAフォーラム2020」が2月13日に都内で開催された。ATENAは、原子力発電のさらなる安全性向上に向けて産業界全体で知見結集・共通課題の抽出を図る組織として2018年7月に設立された。フォーラムで門上理事長は、(1)原子力発電所の共通課題への対応、(2)規制当局との積極的な対話、(3)様々なステークホルダーとのコミュニケーション――を柱とする活動方針のもとに実施されているATENAのこれまでの活動について説明。ATENAでは現在15件の技術課題に取り組んでいるが、その中で発足間もない2018年9月に作業を開始した「サイバーセキュリティ対策導入ガイドライン」作成については、2020年1月までにドラフト版に関する原子力規制委員会との対話も行われており、今後、自主ガイドとして発行し事業者・メーカーへと展開することとなっている。今回のフォーラムに来賓として訪れた原子力規制委員会の更田豊志委員長(=写真下)は挨拶の中で、「ATENAは申請者でも被規制者でもない。意見や反論が寄せられることを期待する」と、ATENAとの対話に積極的な姿勢を示したほか、原子力災害発生時の防護措置準備・実施に向けプラントの状況に応じて定める緊急時活動レベル「EAL」を例に、「現場を持つ事業者の知見が不可欠」とも述べた。ATENAは海外の原子力関係組織との連携も行っており、去る6月には米国原子力エネルギー協会(NEI)と技術協力協定を締結するなど、知見・技術の収集・活用に努めている。今回のフォーラムには、NEIのマリア・コーズニック会長が出席し講演を行った。その中で、コーズニック会長は、まず「気候変動は世界で喫緊の課題」として、地球温暖化問題の解決につながるクリーンエネルギーとして原子力に取り組む日米両組織による協力の意義を強調。さらに、「原子力以上に明るい未来に対応できる産業はない」とも述べ、米国における小型モジュール炉(SMR)の開発状況や、原子力規制委員会(NRC)による許認可の合理化に向けた動きなどを紹介した。コーズニック会長を交え、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)をモデレータとして行われたパネルディスカッション(=写真上)には、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員長)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、山﨑広美氏(原子力安全推進協会理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。意見交換の後、玉川氏は、「しっかりと受け止め、今後のATENAの活動に活かしていきたい」と、引き続き安全性向上に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
- 14 Feb 2020
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規制委と東北電力が意見交換、原田社長「再出発に向けた大きな節目」
原子力規制委員会は2月4日の臨時会合で、東北電力の原田宏哉社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営層を順次招き実施しているもの。原田社長は、11月に女川原子力発電所2号機について新規制基準に「適合する」との「審査書案」が取りまとめられたことから、「再出発に向けた大きな節目が近付いている」と、運転段階に向けた意識のシフトを述べた。その上で、「発電所の運営管理」、「災害への備え」、「地域との信頼関係」を軸に、経営トップとしてリーダーシップ発揮していく姿勢を示した。東日本大震災以降プラントが長期間停止していることから、「技術力の継承」、「生きたプラントから学ぶ」、「新たな設備の習熟」、「褒める活動」に力点を置いた人材育成強化の取組を説明。技術の継承としては、ベテラン社員による勉強会開催、シミュレーターを活用した教育訓練の実施、OBの活用などが紹介され、委員との意見交換の中で、原田社長は「技術力は一定のレベルに達している」と述べた。この他、委員からは、4月から本格運用を開始する新検査制度に関連して、事業者が小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組「CAP」について、より拡充を求める意見などがあった。取材に応じる原田社長意見交換終了後、原田社長は記者団の取材に応じ、女川2号機の再稼働に向けて「工事計画認可、保安規定認可と、まだまだプロセスを踏まねばならないが、6年間に及んだ審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、現場の意識高揚を強調。また、「運転経験のない社員が3割を占めており、感受性、技術力を養っていかねばならない」と、人材育成の重要性を改めて述べた。東北電力では、2020年度の完了を目指し同機の安全対策工事を進めることとしている。
- 05 Feb 2020
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規制委が原電と意見交換、村松社長「パイオニア精神」を強調
原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
- 30 Jan 2020
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規制委、大飯3、4号機の特重施設で審査結果まとめる
原子力規制委員会は1月29日の定例会合で、関西電力大飯発電所3、4号機(=写真)のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、設置許可基準に適合するとの審査結果をまとめた。本件に関しては、24日の同委臨時会合(セキュリティ上非公開)で技術的事項に関する「審査書案」が決定しており、今回の定例会合では、これに加えて平和利用の担保や工事資金調達などに係る妥当性を合わせた審査結果が取りまとめられた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会を行い正式決定となる運び。新規制基準で求められる特重施設については、プラント本体の工事計画認可から5年間の設置猶予期間が設けられており、大飯3、4号機では2022年8月にその期限を迎える。2019年4月時点で、工事に要する期間はこれを約1年超過する見通し。2015年に先陣を切って再稼働した九州電力川内1、2号機は、それぞれ特重施設の設置期限が3月17日、5月21日と迫っており、同社はいずれも期限前日からの定期検査入りを昨秋発表。1月29日には、関西電力も現在定期検査中の高浜3、4号機について、同設置期限である8月3日、10月8日のそれぞれ前日から、次の定期検査を開始することを発表した。
- 29 Jan 2020
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IAEA「総合規制評価サービス」日程終了、規制委に産業界とのコミュニケーションを指摘
日本の原子力規制に関する制度や組織について評価を行うため来日していたIAEAの専門家チーム「総合規制評価サービス」(IRRS)のミッションが1月21日、8日間の日程を終え、チームリーダーのラムジー・ジャマール氏(カナダ原子力安全委員会上席副長官)は、原子力規制委員会の更田豊志委員長とともに合同記者会見を行った。今回のIRRSミッションは、2016年1月に来日したミッションで指摘された勧告・提言への対応状況についてレビューを行う「フォローアップミッション」と位置付けられるもの。IAEAのガイドラインでは、本ミッションの2~4年後が実施の目安とされている。前回のミッションで、2つの良好事例とともに、13の勧告と13の提言が示されたのを受け、規制委員会では、明らかとなった課題について対応方針を取りまとめ、検査制度の見直しや放射線源規制の強化に関わる法整備などに取り組んできた。会見で、ジャマール氏は「日本は相当な改善を成し遂げている」と、更田委員長は「大変活発な議論が行われた」と、それぞれ所感を述べた。検査制度に関して、規制委員会では、前回ミッションでの指摘を受け、検査官の施設へのアクセス権限を確保した制度設計や、能力向上のため、米国原子力規制委員会への派遣や教育訓練課程の開設などを図ってきた。2020年度からの新検査制度の本格運用開始に向けて、ジャマール氏は「検査官がしっかり訓練を受けていることを確認した」と評価。一方で、「規制組織の独立性を損なうことがあってはならないが、産業界とのコミュニケーションは原子力安全に資する」とも述べ、カナダの事例にも言及しながら、規制組織が産業界による技術的革新や改善活動などを知る重要性を繰り返し強調した。今回の「フォローアップミッション」の最終報告書は概ね3か月後に公開される運び。更田委員長は、福島第一原子力発電所事故の教訓として「継続的改善を怠ることは決して許されない」と述べ、「報告書提示を待たずに課題解決に取り組んでいく」姿勢を示した。
- 21 Jan 2020
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規制委が東京電力・小早川社長らと意見交換、福島第一の現場対応など
原子力規制委員会は1月16日の臨時会議で、東京電力ホールディングスの小早川智明社長らと意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営層を順次招き実施しているもの。小早川社長は、福島第一原子力発電所の廃炉作業に関わる最近のトラブル事例に関し、「現場/現物を徹底的に把握できていない」との共通要因が存在すると分析。その上で、分析結果は、昨秋に規制委員会の現地事務所が指摘した「現場に目が行き届いておらずトラブルが多発」などの背景となっているとして、今後のプロジェクト遂行と安全・品質向上に適した組織改編と合わせ、本社から現場へ70~90名の要員シフトを図る考えを示した。これを受け、更田豊志委員長は、「現場へのリソース投入」の必要性を繰り返し述べ、トラブルを受けて進められている改善活動がインセンティブを与えるものとなるよう切望。小早川社長は、協力企業と協働した現場/現物の徹底把握を通じ無事故・無災害を達成したフランジ型タンク解体工事の事例を紹介し、「改善活動が効果を上げた事例を活かしていきたい」と強調。さらに、2018年に発生した3号機使用済み燃料プールからの取り出しに用いる燃料取扱い設備のクレーン不具合を振り返り、部品の海外調達にも鑑み「標準化の重要性を感じている」として、品質管理上の問題への対応も含め、改善活動は広範囲にわたる認識を示した。12月末に福島第一廃炉の中長期ロードマップが改訂され、2号機からの燃料デブリ取り出しが明記されたが、小早川社長とともに意見交換に出席した福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、「今後は分析業務が重要となってくる」として、現場の変化に応じた人材確保・技術力向上に努めていく考えを強調した。
- 16 Jan 2020
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更田規制委員長が年明け初会見、重点事項として新検査制度の着実な実施など
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、1月8日の定例記者会見の中で、2020年の重点事項として、(1)新検査制度の運用開始、(2)福島第一原子力発電所の廃炉、(3)六ヶ所再処理工場の新規制基準適合性審査――をあげた。2020年度より本格運用を開始する新検査制度については、着実に機能するよう「被規制側との意思の疎通、相互の信頼関係が醸成されることが大きなポイント」と強調。福島第一原子力発電所については、特に処理水の取扱いをあげ「苦渋だが、早期に決断せざるをえない時期に差し掛かっている」との見方を示した。六ヶ所再処理工場の審査は申請から丸6年が経っているが、「様々な審査案件の中でも大きな判断の対象」と、大詰めの段階にあることを示唆した。福島第一原子力発電所廃炉の関連で、12月末の 中長期ロードマップ改訂 を受けた質問もあり、燃料デブリ取り出しについては、「まだまだ非常に難しい問題がある」と、収納・保管・移送方法も含め技術的課題が山積している現状を指摘。また、昨秋再開の事故分析で実施された3号機原子炉建屋内現地調査の 映像 に関しては、「まだ推測の域を出ないが、損傷状態を見ることができたのは大きな前進」と、成果を認める一方、「線量の高さが調査を阻んでいる。緊急時に備え原子力規制庁職員の被ばく管理も改めて考える必要がある」などと述べた。
- 09 Jan 2020
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規制委、関西電力大飯1、2号機の廃止措置計画を認可
原子力規制委員会は12月11日の定例会合で、関西電力大飯発電所1、2号機(PWR、117.5万kW)の廃止措置計画の認可を決定した。同委では、2018年11月に認可申請を受けているが、透明性確保の観点から、廃止措置計画についても新規制基準への適合性と同様に公開会合で審査を行うこととなり、本件に関しては同年12月より計5回の会合で事業者から説明を求めるなどした。審査結果では、廃止措置工事が運転中の同3、4号機に影響を及ぼさないよう定められた社内標準・体制などを確認したとしている。大飯1、2号機とも、廃止措置は、「解体準備」(第1段階)、「原子炉周辺設備解体撤去」(第2段階)、「原子炉領域解体撤去」(第3段階)、「建屋等解体撤去」(第4段階)の区分で並行して進められ、2048年度に完了する予定。今回、全工程中、第1段階について審査が申請され認可となった。なお、1、2号機に貯蔵されている新燃料および使用済み燃料のうち、使用可能なものは3、4号機で使用することとなっている。
- 11 Dec 2019
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規制委が中国電力・清水社長らと意見交換
原子力規制委員会は11月28日の臨時会議で、中国電力の清水希茂社長らと意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。清水社長は、島根原子力発電所の安全性向上に向けて実施している「リスク情報等の活用」、「自然災害への対応」、「原子力防災」、「技術力の維持・向上」、「広報活動」などの取組状況を説明。その中で、11月8~10日に実施された政府主催の原子力総合防災訓練の概要を報告し、得られた課題や改善事項については、今後、自社主催で実施する訓練へも反映させ、検証していくとした。これに対し、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、先の総合防災訓練で地震に伴う津波発生が想定されていなかったことから、「是非色々な厳しい気象条件を想定した訓練に努めて欲しい」として、自然災害に対する感受性を高めていくよう要望。また、山中伸介委員は、島根3号機で新検査制度導入に備えた検査官の実務訓練が実施されたことへの謝意を表した。さらに、現在、島根1、2、3号機がそれぞれ廃止措置中、新規制基準適合性に係る審査中、建設中と、異なる段階にあることに関し、「人材育成には非常によい環境となっており、是非活用して現場力を養って欲しい」と期待を寄せた。現在島根2号機は審査が大詰めとなっているが、更田豊志委員長は、審査における事業者側との「共通理解」の重要性を改めて強調した上で、同委が随時実施している原子力部門責任者との意見交換(CNO会議)など、技術的課題について実務者レベルでの接点を密にする必要性を述べた。
- 29 Nov 2019
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規制委、女川2号機が新規制基準に「適合」との「審査書案」まとめ
原子力規制委員会は11月27日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)について、新規制基準に「適合している」とした「審査書案」を取りまとめた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、一般からの意見募集を経て正式決定となる運び。同機は2013年12月に審査が申請され、規制委員会では、女川原子力発電所が過去に大地震を経験してきた地理的特性を踏まえ、特に地質・地震動評価や耐震設計について慎重な審査を行ってきた。 同発電所は、2011年3月の東北地方太平洋沖地震の震源地に最も近い原子力発電所で、発災時には最高水位13mの大津波が押し寄せたが、建設段階から津波対策を重要課題として、敷地高さを海抜14.8mに設計していたことなど、緊急時対策の積み重ねにより、重大事故には至らなかった。 現在東北電力では、さらなる安全性向上を目指し、基準津波評価に対し十分な裕度を持つ海抜29mまでの防潮堤かさ上げ工事を進めている。新規制基準や最新知見を踏まえ実施している女川原子力発電所の安全性向上対策は2020年度に完了予定(特定重大事故等対処施設、常設直流電源設備を除く)。2019年3月の定例社長会見によると、同2号機の安全対策工事費は3,400億円程度となっている。
- 27 Nov 2019
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規制委が福島第一事故の調査・分析再開へ、現場の環境改善踏まえ
原子力規制委員会は9月4日の定例会合で、福島第一原子力発電所事故に関する調査・分析を再開する方向性を示した。2020年内の中間報告書(第2次)取りまとめを目指す。同委では、福島第一原子力発電所事故に関し、東京電力による廃炉に向けた取組を監視・評価する検討会を概ね月1回の頻度で開催しているが、事故の調査・分析を行う検討会は2014年の中間報告書取りまとめ以降開かれていない。中間報告書では、国会事故調報告書で未解明問題とされた7項目の個別課題に関する検討結果を取りまとめているが、高線量などのため現地調査に着手できない事項もあったことから、廃炉作業の進捗や新たに解明された事実も踏まえ、引き続き長期的な検討が必要であるとしている。4日の規制委員会会合では、今後の事故調査・分析に向けて、「現場の環境改善や廃炉作業の進捗により、原子炉建屋内部などへのアクセス性が向上し、必要な試料の採取や施設の状態確認が可能となってきた」などと、事故分析を再開できる段階に至ったとの見方が示された。その上で、事故分析の再開に際し、施設の状態や機器内付着物など、必要な現場状況が廃炉作業の進捗に伴い変貌・喪失する可能性もあることから、資源エネルギー庁や東京電力他、関係機関を交えた公開の連絡調整会議を設け、作業計画に係る情報共有やスケジュール調整を図りながら進めていくとしている。今後の事故分析の対象範囲に関して、8月下旬に原子力規制庁職員が福島第一2号機の原子炉建屋内の現地調査を行っている。会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、同建屋内の「耐圧強化ベントライン/ラプチャーディスク」と呼ばれる部位の作動状況に関し、1992年の通商産業省(当時)要請「アクシデントマネジメント」を受けた事業者の自主的取組として整備されたことを振り返り、「着実に施工がなされていたのか、きちんと検証したい」と、予断を持たずに調査に臨む考えを強調した。
- 05 Sep 2019
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