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東京電力・小早川社長 柏崎刈羽再稼働に言及
東京電力の小早川智明社長は4月30日、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた考えとして、「まずは現場、しっかりと安全が維持されることに尽きる」と強調。加えて、昨年初頭に発生した能登半島地震にも鑑み、地元が抱く複合災害への懸念に対応するよう、発電所が立地する柏崎市・刈羽村にとどまらず、広域的に説明を行っていく考えを述べた。同社本店で行われた2024年度決算発表に関する記者会見の場で述べたもの。 現在、最も再稼働が見込まれる柏崎刈羽7号機では、既に燃料装荷が完了した。一方で、現在、再稼働に向けては地元判断が焦点となっており、再稼働に関して、4月18日には新潟県議会で住民投票条例案が否決されるなど、新たな動きがみられている。小早川社長は、会見の場で、地元の理解を大前提とした上で「一日も早くご判断いただけるように最善を尽くしていきたい」と述べた。 また、7号機の他、新規制基準適合性審査をクリアした6号機でも、6月に燃料装荷開始が予定されている。東京電力では、6・7号機に関しては、テロ対策となる「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成時期を、4〜5年先延ばしすると発表した。設置期限は、7号機が2025年10月、6号機が29年9月と、仮に今夏の電力応需に向け7号機が再稼働しても10月には停止となる。 特重施設は、セキュリティ上、整備に関する詳細が明らかにされていない。小早川社長は「安全にオペレーションできるかが非常に重要だ」と語っている。
- 02 May 2025
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泊3号機が「合格」
原子力規制委員会は4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。パブコメを経て、今夏にも審査書が決定され、正式に合格となる。 2013年7月に北海道電力が新規制基準への適合性審査を申請して以来、「合格」までに要した審査期間は過去最長の12年近くに及んだ。特に審査過程では、敷地内に活断層がないことの証明に手間取った。安全対策工事はほぼ完了しているが、現在津波対策として、高さ19メートルの防潮堤の設置工事が進行(2024年3月28日に着工)している。 泊3号機の合格により、規制基準への適合審査を終えた国内原子炉は計18基となった。しかし実際の再稼働に至るまでは、「保安規定」の認可や地元自治体の同意など、課題が残っている。今後は地元自治体である泊村、共和町、岩内町、神恵内村および北海道の同意手続きが再稼働への焦点となる。 規制委員会の 山中伸介委員長は、会合終了後の定例記者会見で、記者より長きにわたった審査に関し「効率化の重要性を象徴するものだったのでは」と問われたのに対し、これまで通りに厳正な審査を行っていく姿勢を示した上で、「審査の根本的なあり様」に関し改善を図っていく必要性を示唆した。現在、北海道では次世代半導体の量産を目指す国策会社ラピダスが、千歳市で新工場の建設を進めているのに加え、ソフトバンクが苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設予定だ。次世代半導体は、人工知能(AI)、自動運転、5G通信、量子コンピューティングなどの先端分野での活用が期待されており、国際的な競争力の源泉とされている。データセンターはソフトバンク以外にも北海道への立地を計画する事業者が多い。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。泊3号機の再稼働が、北海道エリアの電力安定供給において重要な役割を果たすことは間違いないだろう。
- 01 May 2025
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新潟県議会 柏崎刈羽再稼働の住民投票条例案を否決
新潟県議会は4月18日の本会議で、知事提出の議案「直接請求に係る東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民条例の制定について」を否決した。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けては、現在、県の判断が焦点となっている。花角英世知事は、県内28市町村で開催された国による説明会が2月までに終了したのを受け、国の対応に一定の理解を示す一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆していた。再稼働の判断材料の一つとされる県の技術委員会からも最終報告書が提出されたほか、住民避難の課題に関しても、4月2日に原子力規制委員会の検討チームによる「原子力災害対策指針」改正に係る報告書が了承されたところだ。県議会に提出された議案は、市民団体が14万人超の署名を集め請求されたもの。これを受け、県議会は4月16日に臨時会を招集。特別委員会を設置し有識者からのヒアリングも行い審議を行ってきた。18日の特別委員会では同議案を否決。続く本会議では、修正案が提出されたが反対多数で否決となった。自由民主党の県議会議員は「原発再稼働の是非の県民投票という手段は、あまりにも多くの総合的な判断が必要で、一般有権者の判断を超える。政策判断は専門的な立場による意思決定がなければ、責任も安全も、公平性も保てない」として、二者択一のいわゆる「マル・バツ形式」で国策に対し住民の考えを示すことについて反対の考えを主張。これに対し、住民投票実施を求める議員からは、憲法の地方自治に関する規定に立脚し「間接民主主義を補完するものとして意義があり、広く県民の意思を確認することになる。知事が県民の意思を確認する方法を明らかにしない以上、県民投票の実施を求めることは妥当だと考える」と述べた。この他、住民投票実施に要する数億円の費用負担に関する意見も出された。23日には花角知事の定例記者会見が予定されており、今回の議会判断に対する発言が注目されそうだ。原子力発電所の再稼働をめぐる住民投票条例案に関して、最近では、茨城県議会で2020年6月に日本原子力発電東海第二発電所について議論となった経緯がある。いわゆる「NIMBY」施設に関する住民判断の事例として、沖縄県の辺野古米軍基地の前例が俎上にあがったものの、「国策である原子力発電は国が責任を持って判断すべき」といった意見が大勢を占め否決となった。
- 22 Apr 2025
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国内原子力発電 再稼働分の設備利用率は80.5%
原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年度の国内原子力発電所の平均設備利用率は32.3%、総発電電力量は934億8,290万kWhで、それぞれ対前年度比3.4ポイント増、同11.2%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2024年度中は、東北電力女川2号機(2024年11月15日発電再開、同年12月26日営業運転再開)がBWRとして初めて新規制基準をクリアし再稼働したのに続き、中国電力島根2号機(2024年12月23日発電再開、2025年1月10日営業運転再開)も再稼働。これら2基のBWRを合わせ、再稼働した原子力発電所は、東北電力女川2号機、関西電力美浜3号機、同高浜1~4号機、同大飯3、4号機、中国電力島根2号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3、4号機、同川内1、2号機の計14基・1,325.3万kWとなった。再稼働していないものも含めた国内の原子力発電プラントは、いずれも前年度と同じく計33基・3,308万kWとなっている。因みに再稼働した14基のみでの設備利用率は80.5%となる(女川2号機と島根2号機は年度当初を期首として算出)。国内の長期運転プラントは、関西電力美浜3号機、同高浜1、2号機に加え、新規制基準をクリアし再稼働の先陣を切った九州電力川内1号機が2024年7月4日に、関西電力高浜3号機が2025年1月17日に40年超運転入りとなった。2024年度は、11月14日に高浜1号機が国内初の50年超運転入りしたことも特筆される。2025年度中には、同2号機もこれに続き運転開始から50年に入る見込みだ。原子力発電所の高経年化対策に関しては、2023年5月31日に成立した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)に基づき、2025年6月6日に高経年化した原子炉に対する新たな規制が施行される。同法により、30年超運転のプラントについて、10年以内ごとに「長期施設管理計画」の認可を受けることが義務付けられた。現在再稼働している計14基のうち、12基が施行日時点で、同計画を認可されている必要があり、事業者からの申請を受けて、現在、原子力規制委員会で審査が進められている状況だ。*2024年度の各プラントの稼働状況は こちら をご覧ください。
- 17 Apr 2025
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敦賀2号機 再稼働に向け追加調査を検討
日本原子力発電は3月31日、敦賀発電所2号機(PWR、116万kWe)の新規制基準に係る適合性審査の再申請に向けた追加調査計画について、調査内容に万全を期すため、さらに検討を継続することとし、「まとまり次第、地域、関係者に知らせる」と発表した。当初、2025年3月末を目途に取りまとめる予定となっていた。 同日、原電が発表した2025年度「経営の基本計画」においても、「既設発電所の最大限の活用」との項目の中で、敦賀2号機について「設置変更許可の再申請、稼働に向けた対応を進めていく」ことが明記されている。 同機の審査に関しては、2024年11月13日に、原子力規制委員会が「適合するものであるとは認められない」とする審査結果を決定。これを受け、同社では、審査の再申請に向け、必要な追加調査の内容について、社外の専門家の意見も踏まえながら具体化していくとしていた。 原電は2015年11月に敦賀2号機の新規制基準に係る適合性審査を規制委に申請。地震・津波関連の審査で、同機敷地内の「D-1破砕帯」(原子炉建屋直下を通る)の延長近くに存在する「K断層」について、「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない」、「2号機原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」ことが確認され、結論に至った。審査期間は1年2か月の中断を挟み9年間に及んだ。 敦賀2号機は2011年5月以来、停止中。一部報道によると、追加調査の期間は2年以上を要するほか、再申請を行う時期も未定となっており、再稼働まで、今後の審査期間を考慮すると停止期間は十数年に及ぶこととなりそうだ。 原電では、審査途上の2013~14年、旧原子力安全・保安院より引き継がれた敦賀発電所における敷地内破砕帯調査に関し、リスクマネジメントや地質学の専門家からなる2つの国際チームによるピアレビューも実施し、同社の調査について「正当な科学的基盤」があることを主張してきた。同時期、地球物理学分野で権威のある「米国地球物理学連合」も、専門家チームによる論文掲載を通じ、科学的知見に基づき、規制側と事業者側が十分に議論する必要性を指摘している。
- 03 Apr 2025
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原文財団「原子力に関する世論調査」の最新版を発表
日本原子力文化財団はこのほど、2024年の10月に実施した「原子力に関する世論調査」の調査結果を発表した。18回目となるこの調査は、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握することを目的として実施している。なお、同財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。今回の調査で、「原子力発電を増やしていくべきだ」または「東日本大震災以前の原子力発電の状況を維持していくべきだ」と回答した割合は合わせて18.3%となった。一方、「しばらく利用するが、徐々に廃止していくべきだ」との回答が39.8%となり、両者を合わせると原子力の利用に肯定的な意見は過半数(58.1%)を超えた。このことから、現状においては、原子力発電が利用すべき発電方法と認識されていることが確認できる。一方、「わからない」と回答した割合が過去最大の33.1%に達し、10年前から12.5ポイントも増加していることが明らかになった。「わからない」と回答した理由を問うたところ、「どの情報を信じてよいかわからない」が33.5%、「情報が多すぎるので決められない」が27.0%、「情報が足りないので決められない」が25.9%、「考えるのが難しい、面倒くさい、考えたくない」が20.9%となっている。この「わからない」と回答した割合はすべての年代で増加しているが、特に若年世代(24歳以下)の間で増加傾向が高かった。また、同調査は、「原子力やエネルギー、放射線に関する情報源」についても分析を行っている。その結果、若年世代(24歳以下)は、「小・中・高等学校の教員」(27.2%)を主な情報源として挙げており、また、SNSを通じて情報を得る割合が、他の年代と比較して高いことがわかった。原文財団では、若年世代には、学校での情報提供とともに、SNS・インターネット経由で情報を得るための情報体系の整備が重要だと分析している。また、テレビニュースは年代を問わず、日頃の情報源として定着しているが、高齢世代(65歳以上)においても、ここ数年でインターネット関連の回答が増加している。「原子力という言葉を聞いたときに、どのようなイメージを思い浮かべるか」との問いには、「必要」(26.8%)、「役に立つ」(24.8%)との回答が2018年度から安定的に推移している。「今後利用すべきエネルギー」については、2011年以降、再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱)が上位を占めているものの、原子力発電利用の意見は高水準だった2022年の割合を今も維持していることがわかった。再稼働については、「電力の安定供給」「地球温暖化対策」「日本経済への影響」「新規制基準への適合」などの観点から、肯定的な意見が優勢だった。しかし、再稼働推進への国民理解という観点では否定的な意見が多く、再稼働を進めるためには理解促進に向けた取り組みが必要であることが浮き彫りとなった。また、高レベル放射性廃棄物の処分についての認知は全体的に低く、「どの項目も聞いたことがない」と回答した割合が51.9%に上った。4年前と比較しても、多くの項目で認知が低下傾向にあり、原文財団では、国民全体でこの問題を考えていくためにも、同情報をいかに全国へ届けるかが重要だと分析している。
- 28 Mar 2025
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経済同友会・新浪代表幹事 柏崎刈羽を視察
経済同友会の新浪剛史代表幹事らは3月22日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を訪問し、中央制御室、7号機オペレーティングフロア、防潮堤などの安全設備を視察した。〈東京電力発表資料は こちら〉視察後、新浪代表幹事は、「福島第一原子力発電所で発生した問題を、いかにすべて起こらないようにするかの対応がしっかり打たれている。想定される問題について、あらゆる対応がなされていることに、驚きとともに敬意を表したい」と強調。さらに、現場で働く人の意識に関して、「『ワンチームであろう』という努力も相当なものと感じた。そういった意味で、安全面で大変努力し、非常に高いレベルであると感じた」と述べた。経済同友会は2023年12月、「『活・原子力』-私たちの未来のために、原子力活用のあり方を提起する-」を公表。既存炉の再稼働にとどまらず、「中長期的なリプレース・新増設については、安全性の高い革新炉の導入を前提として、既成概念にとらわれずに、新たな規制の整備や立地の選定を行うことが望ましい」との考え方を示している。同会は東日本大震災後、「縮・原発」を提唱。「活・原発」では、2050年カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障の重要性などから、原子力を「活用していく」表現として、見直したものとなっている。新浪代表幹事は、2024年7月の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所により首都圏が受ける電力供給の恩恵に言及。経済団体として、「きちんと『ありがたい』と思う首都圏にしていかなくてはならない」と述べている。原子力規制委員会による審査をクリアした柏崎刈羽6・7号機の再稼働に関しては現在、地元判断が焦点となっている。
- 25 Mar 2025
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増井理事長 次期エネ基を高く評価
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は2月28日、記者会見を行い、同18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」に対する考え方について説明した。「第7次エネルギー基本計画」の閣議決定を受け、原産協会は2月21日に、 (1)原子力を最大限活用する (2)既設炉最大限活用する (3)次世代炉の開発・設置に取り組む (4)原子力発電の持続的な活用への環境整備――につき、方針が示されたとして、「高く評価する」との理事長メッセージを発表している。今回のエネルギー基本計画決定に際し、記者より「まず何から始めるのか」と問われたのに対し、増井理事長は、産業界として、原子力人材やサプライチェーン維持・強化を見据えた新規建設プロジェクトの必要性に言及。今回エネルギー基本計画を裏付ける電力需給見通しを踏まえ、「2040年までは猶予はあまりない」と述べ、政府による支援についても、早急な支援が図られる必要性を示唆した。また、原子力発電の再稼働をめぐって、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機がBWRとして新たに加わり計14基となった。折しも前日、柏崎刈羽原子力発電所のテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」の整備延期が発表されたことに関し、増井理事長は、審査期間、地理的要件、設計の問題、工事の量・人手の4点を指摘。原産協会が毎年公表する「産業動向調査」にも触れながら、2040年の電力需給見通しに向け「地元合意を経て再稼働すれば十分達成できる」との見方を示した。
- 04 Mar 2025
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柏崎刈羽6・7号機 特重施設整備時期が変更
東京電力は2月27日、柏崎刈羽原子力発電所6・7号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、それぞれの工事完了時期を、2026年9月から2031年9月に、2025年3月から2029年8月へと変更する工事工程の見直しを発表した。柏崎刈羽原子力発電所の稲垣武之所長は同日の記者会見で、既に燃料装荷が終了した7号機の特重施設に関し、「これまでに実施したことのない工事であり、かつ非常に大規模な工事であるため、工期について見通すことが難しい状況」と説明。工事物量や人手不足の課題にも言及した上で、「引き続き安全最優先で一つ一つ着実に進めていく」と述べた。新規制基準で要求される特重施設は、「意図的な航空機衝突等による大規模な損壊」で広範囲に設備が使えない事態を想定した原子炉格納容器の破損を防止するバックアップ施設。本体施設の設計・工事計画認可(設工認)から5年間の整備猶予期間が設けられており、6・7号機それぞれ2029年9月、2025年10月が設置期限となっている。特重施設の整備に係る詳細は、セキュリティ上、明らかにされていない。7号機は既に燃料装荷が完了している。稲垣所長は、同機に関し「新規制基準を踏まえた重大事故等対処施設を整え、規制庁の審査に合格していることから、技術的には稼働できる状態」と説明。今後の試運転における機能検査など、安全対策に万全を期すことの重要性を述べた上で、「日本の電力需給は年間を通じて予断を許さない状況が続いており、原子力の稼働が進んでいない東日本エリアは特に夏場の需要期に一層厳しくなる」と、電力安定供給を担う使命を強調。再稼働に関して「地域の皆様の理解があってのことと考えており、引き続き地域の皆様から理解をいただけるよう説明を尽くしていく」と述べた。現在、立地地域の新潟県では、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた知事の判断が焦点となっている。県の技術委員会は福島第一原子力発電所事故の防災対策に係る検証も踏まえ、確認した22項目のうちの大半について「特に問題となる点はない」とする報告書を知事に提出。3月中には県議会による関係行政機関からのヒアリングが見込まれている。
- 28 Feb 2025
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NEAマグウッド事務局長が来日 都市大で講演
OECD/NEA(原子力機関)のマグウッド事務局長がこのほど来日し、東京都市大学で講演した。講演会は同大とNEAが人材交流を目的にMOUを締結したのにあわせて開催された。マグウッド事務局長は、「次代を担う原子力:新たなチャンスと取り組むべき課題」と題し、次世代炉や小型モジュール炉(SMR)導入の展望に加え、原子力利用の加速に向けた資金調達や、規制の在り方、政策支援、市場環境、インフラ整備における課題と対策について、1時間ほど講演した。事務局長は、「2050年のカーボンニュートラル、世界の原子力発電設備容量を現在の3倍にするために、既存炉の長期運転、SMRの建設拡大、原子力の非電化用途の拡充など、同時並行で実施する必要がある。そのためには大きく4つの課題(サプライチェーン、法規制、政策と市場、インフラ整備)をクリアしなければならない」と述べた。特に今日の電力市場は、「長期的な環境対策とエネルギー安全保障が十分に考慮されておらず、出力調整可能なエネルギーに大きな価値がある」と指摘した。また、「各国政府がFOAK(初号機)リスクに対処するための政策の立案、新規原子力建設の資金調達を支援するための政府保証が重要であり、世界銀行のような国際金融機関が大きな役割を果たさねばならない」と語った。そして、「NEAでは、学生を対象としたさまざまなワークショップを各国で開催し、関係省庁や機関、そして産業界の専門家と科学技術について議論する機会を提供している。この講演に参加されている東京都市大学の学生の中にも、良いアイデアをお持ちの方がいるかもしれない」と述べ、学生の参画を促した。事務局長は、「長年にわたり原子力の仕事をしてきたが、原子力の評価は時代とともに変化してきた。私がこの世界に踏み入れた頃は、原子力は経済的に成り立たず廃れていく産業だと考える人が多くいたが、のちに原子力ルネサンスと呼ばれる時代が訪れた。しかし、福島第一原子力発電所の事故のような、業界内に大きな影響を与える出来事があり、そこから多くの教訓を学び、今に至っている。近年では多くの国が、原子力をエネルギーミックスの一部として取り入れるようになっており、今こそ原子力が本領を発揮する好機だ」と強く訴えた。
- 26 Feb 2025
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新潟県知事が柏崎刈羽再稼働に言及 エネ庁説明会終了受け
新潟県の花角英世知事は2月12日の定例記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に言及した。県の次年度予算案他について説明した上で、記者団からの質問に応えたもの。資源エネルギー庁では、昨年12月10日の十日町市を皮切りに、柏崎刈羽7号機の審査進捗をとらえ、「THINK!ニッポンのエネルギー」と題し、日本の未来のエネルギーについて考える地元説明会を行った。同機の新規制基準に係る審査は2017年12月に原子炉設置変更許可に至っている。その後に発覚した核物質防護事案に伴う追加検査および東京電力に対する適格性判断の再確認も2023年12月に完了した。2024年に入ってからは、IAEA専門家チームによる視察、東京電力や新潟県による説明会が開催されており、再稼働に向けて、現在、県の判断が焦点となっている。会見の中で、花角知事は、県内28市町村で開催されたエネ庁による説明会が、2月7日の湯沢町で終了し、今後の対応について問われたのに対し、「報告を逐次受けているわけではないが、国が前面に立って地元の理解を得ようとすることの現れ」と、一定の理解を示した。一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆。再稼働の判断材料ともされる県の技術委員会からは、間もなく最終報告書が提出される見込みだが、「受け取ってからしっかり話を聞く」と、予断を持たない姿勢を示した。知事は、住民避難の課題に関し、先に原子力規制委員会の検討チームで取りまとめられた報告書案にも触れ、「順次、国との協議の中で示されていく」と述べた上で、再稼働の判断について具体的な時期は示さなかった。住民避難に関しては、資源エネルギー庁、内閣府(原子力防災)、国土交通省、新潟県による「原子力災害時の住民避難を円滑にするための避難路の整備促進に向けた協議の枠組み」会合が昨秋より行われている。
- 12 Feb 2025
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国内原子力発電 2024年の設備利用率は30.6%
原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年(暦年)の国内原子力発電所の平均設備利用率は30.6%、総発電電力量は888億7,031万kWhで、それぞれ対前年比2.6ポイント増、同9.6%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2024年は、東日本大震災後、新規制基準をクリアし再稼働したプラントは、これまでPWRのみだったが、BWRとして、東北電力女川原子力発電所2号機(11月発電再開)、中国電力島根原子力発電所2号機(12月発電再開)が加わり、計14基・1,325.3万kWとなった。女川2号機は12月26日に営業運転に復帰しており、島根2号機も1月10日にこれに続く見込み。2024年は、関西電力高浜発電所1号機の50年超運転入りが特筆される。最も高い設備利用率を記録したのは、同3号機で105.8%。年内フル稼働したのは同機1基のみだった。
- 10 Jan 2025
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島根2号機が発電再開 BWRとして2基目
中国電力の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kW)が12月23日13時、発電を再開した。同社では今後、「安全性を確認しながら原子炉の出力を上昇させ、安定して連続運転できることを確認していく」としている。原子力規制委員会による使用前確認証交付を経た営業運転再開は2025年1月10日の見込み。2012年1月の定期検査入り以来、およそ13年ぶりの戦列復帰となる。〈中国電力発表資料は こちら〉2013年の新規制基準施行以来、原子力発電プラントの発電再開は、これで14基目。BWRについては、11月15日の東北電力女川原子力発電所2号機に続き2基目となる。島根2号機は、2011年3月の東日本大震災後も稼働し続け、2012年1月の定期検査入りに伴い停止。その後、2013年12月に新規制基準に係る審査が申請され、2021年9月に原子炉設置変更許可に至った後、地元の了解を得て、2024年12月7日に原子炉を起動させた。今回の島根2号機の発電再開について、中国電力の中川賢剛社長は、関係者および地元への謝意を表した上で、「中国地域を中心とした電力の安定供給を支えるとともに、カーボンニュートラルの達成や電力料金の安定化に不可欠」と、その意義を強調。さらに、環境負荷の少ない低廉な電気を安定供給していくという電力事業者としての使命をあらためて述べ、緊張感を持って営業運転を再開し、その後の安定運転継続に向け、設備健全性の確認を着実に進めていく姿勢を示した。*理事長メッセージは こちら
- 23 Dec 2024
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米政府 2050年原子力3倍化に向けたロードマップを発表
ホワイトハウスは、アゼルバイジャンのバクーにおける第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29、11月11日~24日)会期中の11月12日、今後の同国の原子力発電拡大に向けた目標と行動を示した「米国の原子力を安全かつ責任を持って拡大する:展開目標と行動に向けた枠組み(Safely and Responsibly Expanding U.S. Nuclear Energy: Deployment Targets and a Framework for Action)」を発表した。同資料によると、米国が2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするためには、出力規模でおよそ15億~20億kWのカーボンフリー電力が必要であり、このうちの約30~50%は原子力発電などのクリーンで安定した電源が必要、と分析。現在約1億kWが運転中の原子力発電については、2050年までにさらに2億kWを新規導入する目標を掲げ、これらを大型炉や小型モジュール炉(SMR)、マイクロ原子炉のさまざまなカテゴリーの、第三世代+(プラス)および第四世代原子炉の新規建設や既存炉の運転期間延長、出力増強、経済性を理由に閉鎖された原子炉の再稼働などでまかなうとしている。米政府はまた、より近い将来の目標として以下の、導入に向けた「時間軸」と「規模感」も併せて明記した。2035年までに3,500万kWの新規設備容量を稼働または着工し、原子力導入を活発化させる。2040年までに導入のペースを年間1,500万kWに拡大し、原子力導入能力を加速、国内外のプロジェクト展開を支援する。これらをふまえ米政府は、野心的な導入目標の達成に向け、国内の原子力導入を加速、拡大するための「9つの分野((①新規大型炉の建設、②SMRの建設、③マイクロ原子炉の建設、④許認可の改善、⑤既存炉の延長/拡大/再稼働、⑥労働力の育成、⑦コンポーネントサプライチェーンの開発、⑧燃料サイクルサプライチェーンの開発、⑨使用済み燃料管理))」を特定、個々の分野における「具体的な行動」を詳述した。具体的には、「新規大型炉の建設」や「SMRの建設」の分野では、①発電事業者に対する技術中立的クリーン電力生産税額控除とクリーン電力投資税額控除など、税額控除による原子力納入コストの削減、②エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)による、革新原子力プロジェクトや、閉鎖された化石燃料発電所を原子力発電所に転換するような、資産・インフラ転換への融資や融資保証の促進、③新規プロジェクトに対して電力会社とリスク分担が可能な電力需要顧客との連携――などを挙げた。そのほか、「既存炉の延長/拡大/再稼働」の分野では、2回目の運転認可更新(80年運転)申請に係る審査の効率化や、構造材料の継続的な健全性確保のための研究など、100年運転に向けた長期運転への備えを挙げている。さらに、経済性を理由に閉鎖した原子炉の再稼働の可能性を追求するなどとしている。
- 25 Nov 2024
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女川2号機が発電再開 新規制基準施行後BWRで初
東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が11月15日、再稼働(発電再開)した。東日本大震災後、2013年の新規制基準が施行されてから、BWRの再稼働は初となる。今後、原子力規制委員会による総合負荷性能検査を経て、12月中にも営業運転復帰となる見通し。同機の発電再開は、2010年10月の定期検査入りから、およそ14年ぶり。2011年3月の東日本大震災時、起動作業中であったが、発災により自動停止した。女川2号機の新規制基準適合性に係る審査は2013年12月に申請。6年以上におよぶ審査期間を経て、2020年2月に原子炉設置変更許可に至り、同年11月には、宮城県知事他、立地自治体が再稼働への同意を表明。海抜29m高の防潮堤建設など、安全対策工事は、2024年5月に完了した。10月29日に原子炉起動となったが、11月3日に設備点検に伴い一旦停止。11月13日に再度、原子炉を起動し、11月15日18時に発電を再開した。東北電力では、今回の発電再開に際し、これまで自然ハザードに対処してきた経験を振り返りつつ、「発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めて『再出発』と位置付ける」と、コメント。東日本大震災の教訓を踏まえ、原子力発電所のさらなる安全性の向上を目指し取り組んでいくとしている。これに関し、武藤容治経済産業相は、東日本の電力供給の脆弱性、電気料金の東西格差などの観点から、「大きな節目であり、重要な一歩」とした上で、エネルギー安定供給を所管する立場から、立地自治体の理解・協力に謝意を表し、引き続き安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくとの談話を発表した。また、電気事業連合会の林欣吾会長は、11月15日の定例記者会見で、「長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変感慨深く感じている」と、女川2号機発電再開の意義を強調した上で、今後、立地地域の理解を得ながら、中国電力島根原子力発電所2号機など、電力業界を挙げて早期の再稼働に取り組んでいく姿勢を示した。〈電事連コメントは こちら〉日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、メッセージを発表し、「わが国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つもの」と強調している。〈理事長メッセージは こちら〉
- 19 Nov 2024
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島根2号機 特重施設の原子炉設置変更許可取得
原子力規制委員会は10月22日、中国電力島根原子力発電所2号機について、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を発出した。同機については、2021年9月に新規制基準適合性審査をクリア。本体施設の設計・工事計画認可日から起算し、5年を満了する2028年8月29日が特重施設の設置期限となっている。今後の再稼働に向けては、現在、10月28日の燃料装荷開始、12月上旬の原子炉起動、同月下旬の発電開始を予定し、使用前事業者検査などが進められている状況だ。今回の原子炉設置変更許可を受け、中国電力では、「引き続き特重施設等の設置工事を進める」として、その設計・工事計画認可申請に係る審査に適切に対応し、発電所の安全確保に万全を期していく、とのコメントを発表した。現在、再稼働している12基のプラントは、いずれも特重施設の運用が開始している。一方で、新規制基準施行後、再稼働に至っていないプラントで、特重施設に係る原子炉設置変更許可が発出されているのは、島根2号機の他、日本原子力発電東海第二(特重施設の原子炉設置変更許可:2021年12月)、東京電力柏崎刈羽6・7号機(同2022年8月)、東北電力女川2号機(同2023年10月)で、いずれもBWRだ。
- 24 Oct 2024
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米政府 パリセード発電所再稼働に向けた資金支援を最終決定
米政府は9月30日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米エネルギー省(DOE)および米農務省(USDA)を通じて、同国中西部において信頼性が高く、安価なクリーン電力供給を支援するため、総額およそ28億ドル(4,100億円)の支援を発表した。内、DOEは融資プログラム局(LPO)を通じて、ミシガン州のパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kWe)の復旧と再稼働に係る資金調達を支援するため、同発電所を所有するホルテック・パリセード社に対し、最大15.2億ドル(約2,225億円)の融資保証を最終決定した。今回の融資保証は、2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)のエネルギーインフラ再投資(EIR)プログラムに基づくもので、今年4月、DOEは同発電所の再稼働に向けた融資保証としてLPOを通じて同額を上限とする条件付きの資金支援を発表していた。ホルテック社は現在、2051年まで運転できるよう大規模なバックフィットを実施中で、2025年第4四半期の送電開始をめざしている。今回の融資保証の決定は、米国の原子力発電所を再稼働させるためのDOE初の取組みであり、カーボンフリーの発電およびミシガン州の雇用拡大とともに、米国の原子力発電部門の強化に資するもの。パリセード発電所の再稼働により、ミシガン州で最大600名の常勤の高スキル、高サラリーの雇用が維持または創出される見込みで、さらに定検期間中には1,000名もの雇用も支えるという。また、同発電所の再稼働により、年間447万トンのCO2排出の削減に寄与し、これは、ガソリン車97万台以上による年間排出量にほぼ相当する。またUSDAは、IRAの一部である、エンパワリング・ルーラル・アメリカ(New ERA)プログラムの一環として、農村地域にある2つの電力協同組合のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)とフージャー・エナジー(Hoosier Energy)に合計約13億ドル(1,900億円)を交付すると発表した。同プログラムは、農村地域の家庭や中小企業が安価な電力を利用できるようにし、農村地域の労働力やエネルギー、教育インフラに投資することで、農村地域のより豊かな未来を支援することを目的としている。ホルテック・パリセード社は、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州の農村地域に電力を供給する、これら2つの農村電力協同組合と長期電力購入契約を既に締結している。バイデン政権の気候政策担当上級顧問のJ. ポデスタ氏は、「閉鎖済みの原子力発電所を米国史上初めて復活させ、ミシガン州、ウィスコンシン州、インディアナ州、イリノイ州の農村地域に、信頼性が高く、安価なクリーン電力を供給する。インフレ抑制法が中西部のコミュニティをいかに活性化させているかを示している」と強調した。パリセード発電所は、1971年に営業運転を開始。その後、2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月には同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に転換、2023年9月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。
- 04 Oct 2024
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米国で閉鎖炉が再稼働へ TMI1号機
米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は9月20日、同社が2019年に閉鎖したスリーマイル・アイランド (TMI)1号機を、再稼働させる方針を明らかにした。米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結し、同社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給する。再稼働時期は2028年を見込んでいる。TMI1号機は電気出力89万kWのPWR。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。コンステレーション社によると、1号機の再稼働に向け、今後、タービン、発電機、冷却システムなど、プラント設備の更新に16億ドル(約2,300億円)を投資するほか、米原子力規制委員会(NRC)および関連する州や地元当局への許認可申請を進める。加えて、同機の運転認可を少なくとも2054年まで延長する申請も行う予定。 同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、1号機の再稼働により、3,400人以上の直接的・間接的な雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2兆3,000億円)増加、州税および連邦税も30億ドル(4,300億円)以上収入が増加するとみられている。コンステレーション社のJ. ドミンゲス社長兼CEOは、データセンターなどの米国の経済的かつ技術的競争力にとって極めて重要な産業には、カーボンフリーで安定した大容量の電力の供給が必要であると指摘した上で、「原子力発電所は、それを実現できる唯一のエネルギー源である」と強調している。 7月に発表された国際エネルギー機関(IEA)の報告書でも、データセンターによる世界的な電力需要増で原子力発電に対する注目が集まりつつあると指摘されている。同報告書では、TMI1号機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社による買収例など、原子力の活用をめざす事例が紹介されている。
- 27 Sep 2024
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IEA報告書 世界的な電力需要増で原子力に注目
国際エネルギー機関(IEA)は7月19日、電力の需給予測に関する最新報告書「Electricity Mid-Year Report」を公表した。堅調な経済成長、熱波、電気自動車などの電化の普及拡大により、世界の電力需要はここ数年で最も速いペースで増加しており、2023年の成長率が2.5%だったのに対し、2024年には約4%となる見通しだ。報告書によると、この需要の伸びは、金融危機やコロナ禍後を除いて過去20年間で最高レベルであり、2025年もこの傾向は継続し、再び4%前後の成長が見込まれるという。報告書は、再生可能エネルギーによる発電量は今後2年間で急速に拡大し、発電シェアは2023年の30%から2025年には35%に上昇すると予測。太陽光と風力だけで、2024年の発電電力量は7,500億kWh増。25年には9,000億kWh増となると予測した。また、再エネによる発電量が2025年に初めて石炭火力による発電量を上回るとの見方を示す一方、石炭火力の発電量は、特に中国とインドの需要増により、2024年に減少する可能性は低いと見ている。その結果、電力部門のCO2排出量は、2025年までほぼ横ばいで推移する見通し。IEAの貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長は、「今年から来年にかけて、世界の電力需要は過去20年間で最も急速に伸長する見込みで、電力が果たす役割の重要性と深刻化する熱波の影響を浮き彫りにしている」と指摘。「電力ミックスに占めるクリーンエネルギーの割合が増え続けていることは心強いが、エネルギー・気候目標を達成するためには、クリーンエネルギーの導入をより迅速に進める必要があると同時に、送電網の拡大・強化および、より高いエネルギー効率基準の導入が不可欠」との認識を示した。原子力発電については、世界の原子力発電量が過去最高を記録した2021年を上回り、2025年には2兆9,150億kWhに達し、記録を更新する見通し。報告書は、保守作業中だったフランスの原子力発電所の再稼働や日本の再稼働、中国、インド、韓国、欧州などでの新規原子炉の運転開始により、原子力発電量は2024年には1.6%、2025年には3.5%増加すると予測している。また、報告書は、人工知能(AI)の台頭により、データセンターによる電力消費が注目されているなか、安定した低排出電源の必要性などから、原子力発電が地熱発電とならんで、魅力的な存在になりつつあると指摘。具体的な動きとして、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社によるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの買収のほか、オンサイトの小型モジュール炉(SMR)の活用例として、不動産・プロジェクト開発企業の米グリーン・エナジー・パートナーズ(GEP)社によるSMRと水素発電設備を備えたデータセンター・キャンパスの建設計画、ノルウェーの原子力プロジェクト会社のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社によるデータセンター向けのオフグリッドのSMR建設計画などを挙げた。そのほか、米マイクロソフト社と米ヘリオン社の核融合発電に関する電力購入契約(PPA)締結の事例なども紹介。その一方で、IEAは、SMRや核融合発電などの活用をめざす動きは今後の技術開発に勢いを与えるものとしつつも、技術的成熟度から言えば未だ初期段階と指摘。供給スケジュールに関しては、大きな不確実性が存在する点に留意する必要があるとし、今後の動向に注視する必要性に言及している。
- 29 Jul 2024
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規制委・審査会合 敦賀2号機の敷地内断層の評価めぐり議論
原子力規制委員会(規制委)は6月28日、原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合を開き、日本原子力発電(原電)の敦賀2号機(PWR、116万kW)敷地内に認められたK断層の連続性に関して議論した。規制委の審査チームは、K断層の活動性と連続性(K断層と原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性)の観点から同断層を評価する方針で、原電の説明および規制委が実施した現地調査の結果を踏まえて検討を進めている。この日の会合で原電は、ボーリング調査結果等をもとに同断層を分析したところ、破砕帯との連続性は認められないと説明した。審査チームは同社の説明に関する指摘事項や確認事項を示し、7月に開催予定の次回審査会合において説明するよう求めた。また審査チームは、次回会合でK断層評価に関する審議をしめくくり、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する方針を示した。原電は、次回会合において断層の活動性に関する同社の見解を改めて説明する。これまでに、原電は現地ボーリング調査の結果分析等を踏まえて断層の活動性、連続性はいずれも認められないと説明したが、活動性に関して審査チームは、前回の審査会合(5月31日開催)において、活動性を否定する科学的根拠に乏しいとの見解を示していた。K断層の活動性と連続性をどう評価するかが、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する重要なポイントになっているため、規制委がどのような技術的判断を示すかに注目が集まっている。なお、原電が敦賀2号機の再稼働にむけた新規制基準の適合性確認申請を行ったのは2015年11月5日。その後、2023年8月末に補正申請しているが、敷地内断層の評価を中心に議論が進められ、審査はおよそ9年にもおよんでいる。
- 01 Jul 2024
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