
国際原子力機関(IAEA)の第70回通常総会が9月14日から18日の日程で、オーストリアのウィーンで開催されており、各国政府、国際機関、NGOなどから168か国・3,200人以上が参加している。開会の冒頭にスピーチしたIAEAのR. グロッシー事務局長は、IAEA創設から70年を迎えた今も、原子力安全、保障措置、がん治療支援、災害時の緊急支援などを通じ、各国がIAEAを通じて協力する姿を日々、目の当たりにしていると述べ、IAEAが果たす幅広い役割を強調した。IAEAは発電のみならず、医療、農業、環境など幅広い分野で原子力科学技術へのアクセスを世界に広げ、新興加盟国では安全で信頼性の高い原子力発電の導入支援を続けている。グロッシー事務局長は、国際情勢が分断と緊張に直面する中においても、IAEA初代事務局長W. スターリング・コールが1957年10月の第1回総会で表明した原子力の平和利用に向けた「共通の献身の精神」に立ち返り、国際協力を継続することの重要性を訴えた。また、世界的な原子力発電への関心の高まりを反映し、着工・運転開始に至る基数が着実に増えていると指摘。IAEAが本総会に合わせて公表した最新予測では、電力需要の増加や脱炭素化、産業・運輸の電化、デジタル経済の拡大などを背景に、世界の原子力発電設備容量が2060年までに、現在の3倍以上になる可能性があるとの予測を紹介した。特に、IT大手企業が原子力発電への投資を進めていることに注目。原子力は、低炭素で信頼性の高い電力を安定して供給できるため、AIやデジタルインフラとの親和性が高く、両者の結び付きは偶発的なものではなく、構造的な連携になっているとの認識を示した。また、原子力発電の導入を検討する国が増えるなか、IAEAは現在、「マイルストーン・アプローチ」に基づき43か国の新規導入を支援し、さらに20か国が導入を検討していることに言及。小型モジュール炉(SMR)への世界的な関心の高まりについては、国際的な普及に向け、各国で異なる規制手法の調和や設計の標準化が必要だと指摘。IAEA主導の原子力の調和および標準化イニシアチブ(NHSI)を通じ、複数国の規制当局が参加する事前許認可のパイロット事業などを紹介した。また、世界貿易の約80%を担う海運の脱炭素化における原子力の役割を強調。今年8月に海洋分野における原子力技術の応用(ATLAS)イニシアチブを立ち上げたほか、国際海事機関(IMO)とも協力し、海洋におけるSMR利用に関する法的、規制的、技術的および保障措置上の課題を検討していくとした。さらに、World Fusion Energy Groupを通じて、核融合発電の研究、開発、実証、展開の加速を支援していくとしている。こうした原子力利用拡大の機運は「確かなもの」だとする一方、野心的な目標と実際の設備容量の伸びのギャップを埋めるためには、資金調達の抜本的な変革が必要だと強調。世界銀行が原子力への融資を認める方針に転換したことを歓迎し、国際金融機関の原子力プログラムに対する理解促進に向けた能力開発事業を進めていると紹介した。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本代表として、小野田紀美科学技術政策担当大臣が登壇。日本がIAEAとの協力を通じ、原子力の平和利用と核不拡散を推進する決意を表明した。また、日本はエネルギー安全保障と脱炭素に貢献する原子力発電について、安全性を最優先に最大限活用するとした。そのうえで、今年7月に閣議決定された「日本成長戦略」の下、海外の原子力発電所建設プロジェクトへの日本企業参画の促進や次世代革新炉の開発・導入を進め、さらに、2030年代のフュージョンエネルギーの発電実証に向けて、IAEAとの連携を強化すると述べた。福島第一原子力発電所の廃炉では、使用済み燃料の取出しや燃料デブリの試験的取出しなどの進展を説明し、ALPS処理水の海洋放出についても計画通り安全に実施されており、IAEAによる安全性確認が継続していると強調した。加えて、IAEA保障措置の強化、追加議定書の普遍化、人材育成と技術開発にも取組むと表明。北朝鮮やイランの核問題、ウクライナの原子力安全・セキュリティへのIAEAの関与を支持し、NPT体制の維持・強化と核兵器のない世界の実現に向け、日本としてIAEAを最大限支援していく考えを示した。 ◇ ◇例年通りIAEA総会との併催で加盟国等による展示会も行われている。 日本のブース展示では、「クリーンエネルギー、イノベーション、レスポンシビリティ」をテーマとし、革新軽水炉やSMRなどの次世代革新炉開発、フュージョンエネルギー社会実装への道筋、核セキュリティや緊急被ばく医療分野における能力構築を目指した国際協力、放射性医薬品の開発・製造・利用を取り上げた内容を展示するとともに、福島第一原子力発電所の最新の廃炉進捗状況も紹介している。 展示会初日には、日本政府代表の小野田紀美科学技術政策担当大臣がブースのオープニングセレモニーに出席し、挨拶の中で日本政府がエネルギー安全保障と脱炭素に寄与する原子力の最大限の活用を方針としていることをあらためて強調するとともに、ブース展示については有益で魅力的な内容を備えているとアピールした。 福島復興をアピールする観点から日本ブース展示に参加している復興庁は福島産の農産物や民芸品を多数提供するほか、ブース・オープニングでの日本原子力産業協会の増井理事長による乾杯でも福島県産の日本酒が用いられブース来訪者に振舞われた。 一方、翌日にはIAEAのグロッシー事務局長が初めて日本ブースを訪問した。同局長は、IAEAの協力イニシアチブに対するこれまでの日本の貢献を評価し、日本と加盟国の強い連帯の表れであると述べるとともに、ブースで提供されている福島県産食品を試食するよう来訪者に勧めるなど、今総会での日本ブースは従来以上に福島復興を後押しする機会となっている。
16 Sep 2026
202
国際原子力機関(IAEA)は9月14日、ウィーンで開催中の第70回IAEA総会で、最新報告書「2060年までの世界のエネルギー・電力・原子力発電予測」(第46版)を公表した。 IAEAは高・低の2ケースで今後の原子力発電設備容量を予測し、世界の原子力発電設備容量は2060年までに、高予測ケースで2025年末の約3.4倍にあたる12億8,400万kWe、低予測ケースでもほぼ倍増の6億9,600万kWeに達する見通しを示した。 予測は6年連続で上方修正された。 なお、報告書のエネルギー・電力予測はネットゼロへの経路を示すものではなく、1.5℃・2℃目標と整合するシナリオでもないとしている。今回の版では、2010~2025年版で2050年までとしてきた予測の対象期間が、2060年まで10年延長された。 現在運転中の設備容量の67%は運転開始から30年以上の炉、46%は40年以上の炉によるもので、今後の退役や運転期間延長の動向が長期的な設備容量の見通しを左右する。 IAEAが同報告書で2050年より先の見通しを示すのは、今回が初。2060年までの退役と新設を比べると、高予測ケースでは1億2,800万kWeが退役する一方で10億1,700万kWeが加わり、純増は8億9,000万kWe。 低予測ケースでは退役が2億2,000万kWeに増える一方、新設は5億2,100万kWeにとどまり、純増は3億100万kWeまで縮小する。 低予測ケースの退役規模は2025年末の設備容量の約6割、新設容量の約4割に相当する。 IAEAは、既設炉の運転期間延長は、実行可能な場合、低排出のベースロード電源を確保するうえで最も費用対効果の高い選択肢の一つであり、高経年化した原子炉群を抱える地域ではとりわけ重要だと指摘。 長期運転に向けた経年化管理プログラムの実施例が増え、自由化された電力市場で既設炉の競争力を支える政策措置も導入されつつあるとした。 IAEAのR. グロッシー事務局長は「この潜在力を実現するには、新規建設への投資と既設炉の運転期間延長が不可欠になる」と強調している。見通しが上方修正される一方、実際の世界の原子力発電設備容量は、前版の起点となった2024年末の417基・3億7,700万kWeと今回の起点となる2025年末の413基・3億7,710万kWeで、ほぼ横ばいだった。 2025年は12基・1,430万kWeが着工したものの、送電開始は3基・300万kWe、閉鎖は7基・280万kWeで、設備容量ではほぼ相殺された。 発電電力量は前年比1.1%増の2兆6,891億kWhと増えたが、世界の総発電電力量が2.7%増とこれを上回るペースで伸びたため、原子力の占める割合は2024年の8.7%から8.4%へ低下している。低予測ケースでは世界全体の設備容量が増える一方、北・西・南欧は8,100万kWeの退役を3,400万kWeの新設で補えず、主要地域で唯一、4,700万kWeの純減となる。 これに対し、中央・東アジアは低予測ケースでも2025年の1億1,380万kWeから2060年に2億7,900万kWeへ拡大する。 日本もこの地域に含まれるが、報告書は国別の将来見通しを示していない。2060年までの新設容量に占める小型モジュール炉(SMR)の割合は、世界全体で高予測ケース28%、低予測ケース23%となる見通し。 地域別では北米で両ケースとも約60%と世界全体の割合を大きく上回り、東南アジアと中南米・カリブ海地域では約40%を占める一方、中央・東アジアでは約10%にとどまるなど、導入割合には大きな地域差がある。2060年の原子力発電設備容量の拡大が見込まれるなか、原子力発電電力量は高予測ケースで2025年の約3.9倍の約10兆kWh、低予測ケースでも2倍超の約5.7兆kWhとなる。 IAEAは、世界の総発電電力量も同期間に2.5倍に伸びると推計している。 このため報告書では、原子力のシェアは、高予測ケースでは現状の8.4%から13.2%へ上昇する一方、低予測ケースでは7.2%へ低下するとしている。
16 Sep 2026
270
英ロールス・ロイスSMR社は9月3日、英国の北ウェールズ・アングルシー島ウィルヴァで建設を計画している同社製SMR(PWR、47.0万kWe)×3基の高圧タービンやバルブケーシングなどの主要な蒸気タービン部品を、同国ニューカッスルにある独シーメンス・エナジー社の施設で製造することを明らかにした。ロールス・ロイスSMR社によると、欧州全域においてSMR向けのこれら部品製造は初。同社は今後、ニューカッスルの施設を同社のSMRフリート向けの主要部品の供給拠点とする計画である。ロールス・ロイスSMR社は2025年2月、シーメンス・エナジー社をタービン・システムのパートナーに選定しており、今回の措置は、熟練した550人以上の雇用を支え、同社が進める英国内のサプライチェーンの構築と製造拠点の現地化、製造業の国内回帰に向けた取組みの一環である。ニューカッスルでの製造能力を国内向けだけでなく、将来的には拡大するSMR輸出市場にも活用し、エネルギー安全保障の強化、国際ガス市場への依存低減、英国の再工業化につなげたい考えだ。ニューカッスルにあるシーメンス社の施設は、かつてのC. A. パーソンズ・アンド・カンパニーを継承したもの。19世紀末からタービン製造を続けてきた英国のエネルギーインフラ史上、重要かつ歴史的な拠点である。1956年に初号機が運転を開始した英国初の商用原子力発電所であるコールダーホール(ガス冷却炉GCR, 8万kWe×4基, 2003年閉鎖)の蒸気タービンもここで製造された。
15 Sep 2026
307
英国のロイド船級協会(LR)、デンマークのコンテナ船大手のA.P. モラー・マースク(Maersk)社、米国東海岸のチャールストン港、英国最大のコンテナ港フェリクストウ港は9月2日、将来の米英間における原子力コンテナ船の運航を想定し、運航、セキュリティ、保障措置などの要件を検討する「ピンク・コリドー(Pink Corridor)」((エネルギー分野で原子力発電を示す色として「ピンク」を使用していることに因む。))プロジェクトを開始すると発表した。同プロジェクトは、将来、関係者が原子力商船の航路を検討する場合に、実務上の要件や制度上の空白、さらに今後必要となる作業を理解できるよう支援することを目的としている。海事業界では、一定の技術的・安全上の前提を満たした原子力船が港に寄港する際、主要な障壁は技術そのものより、規制・責任体制・保険・港湾手続きなどの制度整備にあるとされる。本プロジェクトの成果を将来の規制策定につなげ、大西洋横断の商業海運における原子力利用の安全かつ確実な導入を支援したい考えだ。同プロジェクトの初期段階では、米チャールストン港と英フェリクストウ港間の仮想航路を航行する原子力コンテナ船を想定し、両港への入港や運航に必要となる要件について、船舶のセキュリティ、保障措置、サイバーレジリエンス、緊急時対応、保険制度、海事規制と原子力規制の整合性などの観点から検討する。初期段階の成果を踏まえ、原子力商船に関する工学、規制、法制度、セキュリティー、保障措置の枠組みにおいて、さらなる検討が必要な分野を含め、続く第2段階の実施範囲を決定していく方針である。なお、本プロジェクトは構想段階であり、船舶の設計や就航スケジュールは未定である。米英両国は2025年9月に、科学技術・産業分野の包括的な協力枠組である「Technology Prosperity Deal, TPD」を締結。これにより、両国がAI、量子コンピューティング、原子力分野における協力拡大をめざす中、「ピンク・コリドー」プロジェクトを通じて、航路の開拓を含む、民生用海事における原子力利用の検討に向けた二国間の取組みを支えることが期待されている。
15 Sep 2026
472
フィンランドの電力会社フォータム(Fortum)社は9月9日、同社が運転するロビーサ原子力発電所(VVER-440×2基、各51.3万kWe)の長期運転を支える電力購入契約(PPA)を、米IT大手Google社と締結した。PPAは22年間にわたる。2028年に小規模で始まり、2030年から2049年にかけてロビーサの発電設備容量の最大50%に相当する規模に拡大。フォータム社は長期の収益確実性を得ることで、同発電所の2050年までの運転継続に必要な投資を進めやすくなるとしている。なお、同発電所の運転認可は2050年末まで延長済みである。ロビーサ発電所1-2号機は、それぞれ1977年、1981年に営業運転を開始。フォータム社は同発電所の運転期間延長に向けて、約10億ユーロ(1,782億円)の投資計画を進めているが、必要なプロジェクトの約80%、金額にして7億ユーロ(1,247億円)については、投資決定が行われていない。PPAはこれらの投資を支える収益基盤となるほか、2028年に予定される3.8万kWeの出力増強に加え、さらに1万kWeの出力増強を可能にするとしている。ロビーサ発電所は現在、フィンランドの電力需要の約10%を供給しており、2050年までの運転継続によって、脱炭素電源の維持と電力系統の安定化にも寄与するとしている。両社はさらに、新たな発電設備や蓄電システムなどの柔軟な電力設備を共同検討するための覚書も締結。まず、Google社はカヤーニのデータセンター隣接地に9.4万kWeのバッテリー蓄電システムを設置し、フォータム社がその運用最適化を担う。またロビーサ・サイトでの新規建設を視野に、需要や共同投資、リスク分担などを含め、競争力のある事業モデルを検討することとしている。Google社は、南部のハミナでデータセンターを運営するなど、過去15年間にわたりフィンランドで事業を展開している。2027~2028年にはハミナに加え、北部のムホス、ヴァーラ、カヤーニでのデータセンターや関連インフラ、クリーンエネルギープロジェクト、地域とのパートナーシップ活動に130億ユーロ(約2.3兆円)を投資する計画も発表。Google社にとって欧州最大規模の投資案件である。AIやデータセンターによる電力需要の増加に伴い、低炭素電源への需要も高まるとみられている。フォータム社のM. ラウラモCEOは、「Google社との長期的なパートナーシップは、電力価格が大きく変動し、将来の見通しが立ちにくい現在の市場環境において特に重要。長期契約によって収入や需要の見通しが立ち、低炭素電源への投資やエネルギー安全保障の強化が進めやすくなる。データセンターなどのデジタル・産業分野への投資を呼び込み、フィンランドの雇用やイノベーションにもつながる」と今回のPPA締結の意義を強調した。
14 Sep 2026
386
米テネシー州のB. リー知事は8月31日、テネシー州環境保全局(TDEC)が核融合開発企業のタイプ・ワン・エナジー(Type One Energy)社に対し、核融合装置の運転に必要な副産物物質ライセンスを発給したことを明らかにした。核融合装置に特化した新たな規制制度に基づくライセンス発給は全米初。同州オークリッジ近郊にあるテネシー峡谷開発公社(TVA)のブルラン・エネルギー・コンプレックス(旧ブルラン火力発電所サイト)で進められる、ステラレータ技術((複雑にねじれたコイルだけでプラズマ閉じ込めに必要な磁場を作る方式。))を採用した商用核融合プロジェクト「プロジェクト・インフィニティ」(Project Infinity)が今回のライセンス発給の対象。同プロジェクトは段階的に進められ、工学的検証・訓練用プラットフォーム「Infinity One」に続き、40万kWeの商用核融合設備「Infinity Two」の建設を計画している。タイプ・ワン・エナジー社は2025年2月、TVAと「Infinity Two」の計画策定に関する協力で合意し、同年9月には同計画をブルラン・エネルギー・コンプレックスに展開する意向書(LOI)を締結。同社とTVAは密接に連携し、今年1月にライセンスを申請していた。米原子力規制委員会(NRC)は2023年4月、核融合装置を商用核分裂炉と同様の規制ではなく、既存の副産物物質(Byproduct Material)規制を基に管理する方針を決定。NRCとの協定に基づき副産物物質の規制権限を持つ「Agreement State」であるテネシー州では、TDECにある放射線保健部門が核融合装置および核融合関連活動のためのライセンスプログラムの策定を主導し、今年6月に全米初となる核融合装置専用の規制制度を施行した。今回のライセンス発給は同規制制度の初適用事例。同州は今後、同制度を他の州が核融合発電を規制する際の参考モデルにしたい考えだ。プロジェクト・インフィニティは段階的に進められる。第1段階では、工学的検証・訓練用プラットフォームの「Infinity One」を年内に着工し、2029年の運転開始をめざす。続く第2段階では、「Infinity Two」を2028年に着工し、2034年の全面運転を計画している。タイプ・ワン・エナジー社の商業用地は、オークリッジ国立研究所(ORNL)、TVA、テネシー大学などとのプロジェクトを通じて核融合開発キャンパスとして整備される予定だ。リー知事は、「テネシー州は原子力エネルギーの世界的中心地として、次世代の原子力イノベーションを牽引するために必要な人材、インフラ、規制の枠組みを整備している。核融合のような新技術に向けた明確な道筋を示し、今後何世代にもわたり信頼性が高く豊富なエネルギー源を推進している」と強調した。
11 Sep 2026
627
中国の山東省煙台市で9月5日、中国広核集団(CGN)の招遠(Zhaoyuan)原子力発電所2号機(PWR=華龍一号「HPR1000」、121.4万kWe)が着工した。招遠1-2号機は2024年8月に国務院がI期工事として建設を承認。国家核安全局(NNSA)が同年11月13日に建設許可を発給後、1号機は同月18日に着工している。同サイトでは6基の「華龍一号」建設を計画しており、省内の原子力・風力・太陽光・蓄電を統合したクリーンエネルギー産業クラスターの形成を担う重点プロジェクト。地域暖房にも利用され、今後、産業用蒸気や水素製造、海水淡水化などでの利用も検討されている。同建設プロジェクト完了後、発電量は年間500億kWhに達し、約500万人の年間電力需要を満たす見込みである。本プロジェクトでは、華龍一号としては初となる二次系循環冷却技術を採用し、高さ203m、散水面積16,800㎡となる自然通風冷却塔6基を設置する。この冷却塔により、タービン建屋の直接冷却源は海水から大気へと切り替えられ、海水は補給水としてのみ使用し、水資源の消費を大幅に抑える。また、原子炉側には原子力級の機械通風冷却塔を採用し、冷却安全性を一層強化するという。中国の原子力発電所は招遠発電所を含め、通常は沿海部に立地しているが、海水冷却に依存しない大型炉の冷却方式を沿海部で実証し、その技術を今後の立地拡大に活用しようとしている。
11 Sep 2026
509
スウェーデンでは今年8月下旬から9月初めにかけて、新規建設に向けた動きが相次いでいる。スウェーデンは2035年までに小型モジュール炉(SMR)や大型炉を含む新規原子力発電設備容量を250万kWe、2045年までに1,000万kWeの拡大をめざしており、新規建設向けの政府の支援制度が2025年8月1日から施行されていることが背景にある。政府融資や差金決済契約(CfD)など、リスクと利益の分担を通じて事業を支える国家補助の枠組みが整備され、複数の事業者がプロジェクトを政府に申請する段階へ移行している。まず8月25日、同国の先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社は、ウプサラ県ティエルプ市のウントラ(Untra)に、同社が開発を進める先進モジュール炉(AMR)の鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)×6~8基、最大合計出力44.0万kWeの建設計画について、政府に承認を申請した。年間発電電力量は約36.8億kWhと想定される。同社は今年5月に、イェヴレボリ県イェヴレ市のノルスンデット(Norrsundet)で「SEALER」×6基、合計33.0万kWeの同国初となる先進炉を採用した商用発電所の建設計画の承認申請をしており、ウントラでの計画はそれに次ぐもの。国内で複数の原子力パークを展開する動きの一環である。8月31日にはブリカラ社が全額出資するプロジェクト会社のウントラ・ニュークリア・パワー社がウントラでの建設計画に対する国家補助を申請した。8月27日には、フィンランドの電力大手フォータム(Fortum)社傘下で、スウェーデンにおける新規原子力発電のプロジェクト会社であるNuCore Energi社が、同国南部のオスカーシャム市で計画する新規建設に向けて国家補助を申請した。建設規模は120万kWe~340万kWeで、SMRと大型炉の双方を選択肢として検討している。フォータム社は2年間にわたる新規原子力発電の実行可能性調査の結果、大型炉ではフランス電力および米ウェスチングハウス(WE)社/韓・現代E&C社、SMRでは米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社との協力を強化。2025年6月にそれぞれ先行作業契約(EWA)を締結している。NuCore Energi社は今回の政府への申請を契機に、支援条件などに関する協議を開始する方針。なお、国家補助の申請はブリカラ社とNuCore Energi社の申請を含め、今年8月末の時点で6件となっているが、国家補助対象は最大約500万kWe、およそ大型炉4基分相当と限られている。9月3日には、スウェーデンの原子力技術サービス企業スタズビック(Studsvik)社の主導下で、GVH社、韓国サムスンC&T(サムスン物産)などがGVH社製SMR「BWRX-300」(BWR, 30万kWe)×4基、計約120万kWeの建設プロジェクトを共同開発することで合意した。建設候補地はスタズビック社の既存の原子力施設がある同国南部ニショーピング(Nyköping)とヴァルデマルスヴィーク(Valdemarsvik)のマルメ(Målma)の2か所。複数の拠点で展開する新規原子力開発プログラム「ReFirm」の初プロジェクトとして、いずれかのサイトで2030年代半ばには初号機を運転開始する計画だ。今回の合意により、独占交渉期間中に、商業面や技術面、規制面、資金調達面などに関する共同作業を開始する。スウェーデンの新規原子力発電開発では、制度整備の段階から複数の事業者が具体的な建設案件を競う段階に入った。大型炉だけでなくAMRやSMRも計画されており、今後は政府による支援案件の選定や許認可、資金調達などが焦点となる。
10 Sep 2026
627
世界原子力協会(WNA)は9月7日、「世界原子力発電見通し」(World Nuclear Outlook Report)の第2版を発表。各国政府の目標や具体化している案件が実現し、既設炉の運転が継続すれば、2050年の世界の原子力発電設備容量は14.57億kWe(グロス)となるとの見通しを示した。COP28で打ち出された「原子力三倍化」目標(約12億kWe)を上回るとの結論は、今年1月の初版と変わらないが、第2版では各国が目標を実際に達成できるかを測る実行能力の評価が新たに加わった。WNAは各国を「政策枠組みの整備状況」「制度・インフラの整備状況」「プロジェクト・プログラムの成熟度」「目標達成の見通し」の4基準で評価し、原子力開発の状況が近い国々を5類型に整理。 日本が分類されたのは、相当数の原子炉を運転し、成熟した制度を持ちながら、近年は継続的な建設が行われていない「リスターター」(Restarter、原子炉の建設能力を再構築する「再始動国」)で、ベルギー、オランダ、スウェーデン、ブラジル、南アフリカなど12か国が並ぶ。リスターター全体では、制度・インフラの整備状況は比較的高く評価される一方、関係機関の業務の重心は既設炉の運転継続に置かれており、規制機関が新型炉の設計審査に十分対応できる体制にない場合があると指摘している。こうした国々では、当面の設備容量の上積みは、運転期間延長や改修、出力増強、再稼働から生じる公算が大きいと分析。またWNAは、一基ごとの個別対応から、複数案件を継続して進める「プログラム型」の仕組みへの移行を優先課題に挙げた。資金調達だけでなく、許認可、サプライチェーンの整備、人材計画についても、後続案件に繰り返し適用できる枠組みが必要だとしている。こうした課題がある一方、報告書は再始動国について、原子力開発に必要な制度的基盤の多くはすでに存在しており、見通しは明るいと評価。既存の産業・制度基盤と再び強まった政策支援を、継続的な原子力発電所の建設につなげられるかが鍵になると指摘した。これが実現すれば、2050年までに相当規模の原子力発電設備を追加できる可能性があるとしている。また報告書によると、2025年の世界の原子力発電電力量は2兆7,020億kWhで過去最高を更新し、世界の総発電電力量の約9%を占めた。平均設備利用率も83.7%へ上昇し、原子炉の高経年化による全般的な低下は見られなかった。一方、着工は11基(中国9基、ロシア2基)と、過去40年でも高い水準だったが、三倍化には2030年代半ばまでに現状の約6倍の着工ペースが必要になると分析した。 2050年見通しのうち5.59億kWeは、建設中・計画中・提案中のいずれにも該当する具体的な案件をまだ伴っていない。さらに報告書は、12分野の政策提言を示したうえで「目標はすでに掲げられている。今問われるのは、それを達成するための体制を築けるかどうかだ」と総括している。
09 Sep 2026
630
仏パリに拠点を置く先進炉開発企業のニュークレオ社は8月26日、同社が主導するコンソーシアムの「n-Floating」プロジェクトが、フランス政府系金融機関Bpifranceの「フランス海事部門の脱炭素化支援」の公募事業に採択されたことを明らかにした。同プロジェクトでは、ニュークレオ社が開発を進める複数の20万kWe級の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」を搭載。航行機能を持たない浮体式原子力発電施設の概念設計を行う。コンソーシアムには、主要な船級協会であるビューローベリタス・マリン&オフショア社や海事・原子力両分野に専門知識を持つフランスのエンジニアリング企業ABMIグループが参加。すでに約100万ユーロ(約1.78億円)の助成金を獲得して作業は開始されており、約18か月間継続する見込みだ。ニュークレオ社は、浮体式原子力発電の産業化と大規模展開を念頭に、海事・オフショア産業、とりわけ石油・ガス部門で培われた、エネルギー生産、貯蔵、液化、再ガス化の浮体式インフラの設計・建設・運用手法を活用する方針。成熟した海事技術と先進原子力技術を組合わせ、造船所で統合した後に設置場所へ輸送することで、競争力のある低炭素電源の開発をめざしている。n-Floatingプロジェクトの初期段階では、原子力バージの概念研究に焦点を当て、遠隔地、港湾および関連する産業拠点や沿岸地域へのエネルギー供給に加え、海水淡水化や低炭素燃料の生産といったエネルギー集約型用途など、幅広く実現可能性を調査。ビューローベリタス・マリン&オフショア社は船級、リスク評価、認証に関する専門知識を提供し、浮体式原子力発電開発に伴う安全性、規制、技術的な課題の評価を支援する。一方、ABMIグループは、原子力・海事分野でのエンジニアリングやプロジェクト遂行の経験を提供する。ニュークレオ社は2036年までの産業展開に向けて今後の開発計画とロードマップを策定し、フランス国内で建設、同国の産業化と脱炭素化の取組みに貢献したい考えだ。海洋原子力用途の展開には、原子力と海洋の安全要件の両方を統合することに加え、適切な許認可、保安、運用に関する枠組みが必要であり、国際的な協調の取組みも加速している。ニュークレオ社は、このほど発足した国際原子力機関(IAEA)の「ATLASイニシアチブ」を通じ、革新的な原子力利用とそれに伴う規制・安全上の影響について、対話や技術的理解が深まることに期待を寄せている。
08 Sep 2026
708
米陸軍省は8月26日、軍事施設へのマイクロ炉導入を目指す「ヤヌス計画(Janus Project)」で、5か所の陸軍施設でプロジェクトを進める民間5社を選定したと発表した。陸軍省は、国防イノベーションユニット(DIU)と連携し、軍事施設におけるマイクロ炉の所有、建設、運転を支援するため、2027~2031年の会計年度((米国の連邦政府の会計年度は、10月1日から翌年の9月30日まで。))に総額最大22億ドル(約3,400億円)を交付する。選定された5社と導入する陸軍施設は、以下のとおり。Antares Nuclear(ノースカロライナ州 フォート・ブラッグ)BWXT Advanced Technologies(ケンタッキー州 フォート・キャンベル)General Atomics Electromagnetic Systems(テキサス州 フォート・フッド)Radiant Industries(ジョージア州 フォート・ベニング)Westinghouse Government Services(ニューヨーク州 フォート・ドラム)米陸軍省はDIUとともに2025年11月、産業界に対し軍事施設でのマイクロ炉導入に向け、技術提案を募集。同月にヤヌス計画の最初のステップとして、マイクロ炉の設置候補地に、全米9つの陸軍施設を特定していた。政府資金に加えて各社も民間資金を拠出し、最終的には軍の施設全体で20基以上のマイクロ炉の建設・運用が想定されている。陸軍省は、外部送電網に依存することなく、軍事施設に安全かつ信頼性の高いベースロード電力を、高い設備利用率で長期間にわたり供給したい考え。これにより、米陸軍の軍事能力を強化するとともに、米国の原子力産業基盤の活性化と技術的リーダーシップの維持を支援する方針だ。企業選定にあたっては、安全性を最優先に、エネルギー需要から地震や水文的な考慮事項など多岐にわたる観点から評価を実施。エネルギー省(DOE)、国立研究所、および各軍の代表者からなる決定委員会と、原子力・技術分野のトップ専門家パネルが審査にあたった。陸軍省は今後、選定企業とその他取引契約(Other Transaction Agreement: OTA)交渉を実施する。OTAは、開発途上にある技術の実証を想定し、米政府が通常の調達契約とは異なる柔軟な枠組みで締結する契約方式で、設計変更や段階的な実施を認めている。今回、技術目標を段階的に設定し、各企業が目標を達成した場合にのみ資金を支払う「マイルストーン方式」を採用しており、建設するプロトタイプ炉は各企業が所有・運転する。ヤヌス計画は、軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉を設計・建設・実証する「プロジェクト・ペレ」や、DOEの原子炉パイロットプログラム(RPP)に続くもので、今回選定された企業が信頼性と経済性を備えたマイクロ炉を開発し、将来的に軍以外の顧客にも販売できるようにすることも重要な目的としている。陸軍省は、2025年5月に発令された大統領令「国家安全保障強化のための先進炉技術の導入」に沿って、2028年9月までに陸軍省の規制下にあるいずれかの軍事施設で初号機の運転開始をめざす。今後は、他の軍事施設にも導入を拡大していくとしている。
07 Sep 2026
852
オランダで原子力発電所の新設準備を担う国有企業NEO NLは8月25日、フランス電力(EDF)、米ウェスチングハウス(WE)社と、新規原子力発電プラント2基の建設に向けた基本設計(FEED 1)調査契約をそれぞれ締結したことを明らかにした。両社は今夏以降、オランダでの新規建設を具体化するための設計作業を開始する。オランダ政府は今年2月、2基の新設を担う国有企業「NEO NL(Nuclear Energy Organisation Netherlands)」を設立した。NEO NLは、政府の方針や立地決定に基づき、新設2基の許認可から建設、運転、最終的な廃止措置までを担う実施主体。同2基は、それぞれ少なくとも100万kWeの設備容量を持ち、同一地点に建設される。今夏以降、気候・グリーン成長相と住宅・空間計画相が共同で優先立地の決定案を策定する予定で、NEO NLはその間、ベンダーの選定に向けた準備を進める。FEED 1は2段階で実施。まず「FEED 1a」では、建設地点がまだ正式に決定していないことから、立地条件に左右されない設計・技術面の検討を進める。政府による優先立地の決定案策定後、「FEED 1b」に移行し、候補地の条件を反映した検討を行う。これにより、政府の立地選定と並行して準備作業を進めることが可能になる。FEED 1では、両社がそれぞれ提案する第3世代+(プラス)炉について、オランダの建設規則、原子力安全規制、許認可要件、技術基準、工程などへの適合性を詳細に検証する。また、早い段階でリスクや重点的に対応すべき事項を洗い出すとともに、将来の発電所所有者とベンダーの責任範囲についても整理。期間は12~18か月程度と見込む。今回の契約により、両社は今後の入札に向け、より精度の高い提案を行うための準備を進めることができる。これにより、将来の建設費の予見性を高め、事業リスクの低減につながることが期待される。なおFEED 1は、オランダ政府が以前、米WE社、仏EDF、韓国水力・原子力(KHNP)の協力を得て実施した実現可能性調査(F/S)に基づいている。F/Sでは各社の原子炉設計が同国への導入に適しているかを評価したのに対し、FEED 1では法令や規制要件への適合性など、設計についてさらに詳細な評価を行う次段階のもの。オランダ政府は、原子力を2040年までに炭素排出ネットゼロを達成するための主要なエネルギー源に位置づけており、2021年12月に発足した連立政権が連立合意文書に原子力発電所の新設を明記するなど、原子力を段階的に縮小する従来の方針を転換。2022年12月には、新規大型炉の建設地として同国ゼーラント州で唯一運転中のボルセラ原子力発電所(PWR, 51.2万kWe)サイトが最適との見解を示していた。政府は2023年12月、KHNP、WE社、EDFとボルセラ・サイトにおける2基の新規建設の技術的可能性、安全性、環境影響、コストと時間の詳細な見積りを含む、F/Sの実施について契約。2024年にF/Sは完了したが、KHNPは以後の選定プロセスからは撤退している。なお、優先候補地とされたボルセラだけでは環境影響評価の手続き上、法的に持続可能な立地決定にならず、今年2月の時点で、ボルセラ・サイトを含むスロー地域に加え、フローニンゲン州のエームスハヴェン、ロッテルダム港のマースフラクテII、ゼーラント州のテルネーゼンの4地域の7か所がサイト候補に挙がり、安全・環境面を含めた総合評価が実施された。その結果、以下の2地域3地点に候補が絞り込まれた。ゼーラント州: テルネーゼン(Terneuzen)のMosselbanken/Paulinapolder フローニンゲン州: エームスハヴェン(Eemshaven)のEmmapolderとEemscentrale政府は今年末には、テルネーゼンとエームスハヴェンのいずれかを選定する予定である。政府は最大4基の大型炉の新設を計画し、最初の2基は早ければ2030年代末までに稼働させたい考え。追加2基については2028年頃には建設方針を決定する一方、別途、小型モジュール炉(SMR)の導入の可能性についても、並行して検討していくとしている。
04 Sep 2026
547
仏政府は8月20日付の政令で、フランス電力(EDF)に同国北部にあるグラブリーヌ原子力発電所(PWR, 95.1万kW×6基)において2基の改良型欧州加圧水型炉(EPR2, 165万kWe)の建設準備工事に必要な環境許可を発給した。これにより、EDFはサイト整備や地盤補強工事を段階的に進めることができるようになる。なお、原子炉の建設許可そのものではなく、核物質を扱う施設や原子力安全に関わる設備の建設は対象外。2023年6月の「原子力推進法」に基づき、環境許可の取得後には特定の土木工事や付帯施設の建設を開始することができるようになった。具体的には、敷地造成・土工、地盤改良、建設用設備の整備、鉄道設備の移設、取水路の建設、初期の土木工事など。保護対象の動植物種の移送や水管理、自然生息地の保全、公害対策、建設現場の環境モニタリングなどの環境対策も講じる必要がある。環境許可の取得により、原子炉建設に必要な全ての手続きが完了するのを待たずに、長期を要する複雑な準備工事に着手できる利点がある。グラブリーヌ・サイトに建設される2基のEPR2は、EDFの6基の新設計画の2組目となり、同サイトで既に稼働している6基の90万kW級の原子炉を補完するものとなる。1組目はパンリー発電所(PWR, 138.2万kW×2基)に、3組目はビュジェイ発電所(PWR, 90万kW級×4基)に建設される。なお、2025年12月に明らかにされたEPR2計6基の建設費用の見積額は合計728億ユーロ(2020年価値)。■グラブリーヌの基礎工事における課題グラブリーヌ・サイトでは、敷地整備が特に重要な課題となっている。この敷地は海から埋め立てられた干拓地に位置しており、厚い砂層と粘土層、地表に近い地下水位が特徴。巨大で重量の大きいEPR2を建設すると地盤が不均一に沈下・変形し、建物や配管などの安定性を損なう恐れがある。地盤改良をしなければ、EPR2では約50~80センチの沈下が起こる可能性があると予測されている。既存の90万kW級原子炉6基でも25~30センチ程度の沈下が確認されているが、EPR2は場所によって従来炉の約2倍の重量があるため、より厳しい対策が必要になる。EDFは当初、地中に鉄筋コンクリート製の柱を多数設置し、さらに土と固化材を混ぜて地盤を硬くする方法を検討していた。しかし、仏原子力安全・放射線防護局(ASNR)は、その規模は前例がなく、十分な施工実績もないと懸念を表明。より実績のある技術の使用に加え、補強システムの有効性、地震荷重下での動的挙動、および追加の地盤工学試験・調査の結果について、さらなる根拠を示すように求めた。そこでEDFは設計を見直し、長さ約50mの鉄筋コンクリート製の柱を約2,000本、重量の大きい建物の下に配置し、建物の基礎に直接つなぐのではなく、その間に十分に締め固めた粒状充填材の厚い層を挟む方法を提案。この層によって建物の重さを柱と地盤に分散させ、局所的に影響が集中するのを防ぐ仕組みである。さらに、地震の際に砂地の「液状化」を防ぐため、建物の下にある約15mの砂層を取り除き、液状化しにくい材料に置き換える計画だ。フランス技術アカデミーは、この新たな方法について、基本的な考え方は妥当で、特に大型液化天然ガス(LNG)タンクの建設において国際的な施工経験の実績もあるとし、「頑健な(robust)」設計だと評価。一方で、地下水位より深い場所を掘削する難しさや、塩分を含む地下水に100年間さらされるコンクリート製の柱の耐久性など、今後注意すべき課題も指摘した。さらに同アカデミーは、建設後に基礎を直接見ることができなくても、センサーとデジタル技術によって沈下や劣化の兆候を長期間監視できるように、建設段階から光ファイバーセンサーや腐食を調べるセンサーを組込み、「デジタルツイン(仮想モデル)」から実際の建物の挙動をセンサーで常時把握し、設計時予測と比較する仕組みを推奨した。ASNRはこの新しい地盤対策について、EPR2の設置許可申請(DAC)審査の中で2026年秋に意見を示す予定となっている。DACは今年6月に実施されている。■パンリー・サイトでは準備工事が進行中同国北部にあるパンリ―・サイトでは、EPR2初号機の準備工事が2024年夏に始まり、2026年初めには1,000人以上が現場で作業している。1990年代に中止されたN4原子炉プロジェクトの旧基礎を解体し、崖の形状を整えるために100万㎥以上の白亜(石灰岩)を掘削して崖を整形するほか、海側への拡張工事も進む。準備工事は2028年初めまで続き、その後、土木工事および電気機械設備の設置が開始される。DACは2023年6月に実施済みであり、環境許可を2024年6月に取得している。
03 Sep 2026
580
米国のAI開発企業Atomic Canyon社は8月18日、原子力産業向けAIアシスタント「NIVA(Nuclear Industry Virtual Assistant)」を、北米の商業用原子力発電所向けに全面展開すると発表した。NIVAは、米国原子力発電運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)、原子力エネルギー協会(NEI)と共同開発したもので、これらの組織に加盟する商業用原子力発電所が利用できる。約6か月間の試験運用を終え、原子力発電所に蓄積された膨大な技術、規制、運転情報をAIで検索・整理し、現場の専門家が必要な知識に迅速にアクセスできる仕組みが、実証段階から本格運用の段階に入った。NIVAでは、「Knowledge Assistant」と「Operating Experience(OE)Assistant」の2機能を提供。「Knowledge Assistant」は、利用者が自然な言葉で質問すると、原子力規制委員会(NRC)の規制指針やNEIのガイダンス、INPOの基準、EPRIの技術報告書などを根拠として回答を生成し、回答中に出典を示す。もう一つの「OE Assistant」は、単純なキーワード検索ではなく、質問の意味や文脈を分析して関連する過去の運転経験を抽出し、その内容についてさらに掘り下げて質問することができる。技術的な問題への対応を支援する「Troubleshooting」機能も開発中で、2026年後半の試験運用を予定している。NIVAの技術基盤となるのが、Atomic Canyon社のAIプラットフォーム「Neutron」と、原子力分野に特化したAIモデル「FERMI」。Neutronは、許認可根拠、運転手順、保守履歴、エンジニアリング記録などとAIをつなぐ役目を担う。FERMIはオークリッジ国立研究所(ORNL)とスーパーコンピューター「Frontier」を活用して共同開発され、5,300万ページを超えるNRCの規制関連データを学習。原子力特有の用語や略語、文脈を理解するとともに、回答を実際の記録に紐付け、専門家が検証できる仕組みを採用している。先行導入企業には、米国最大級の原子力事業者であるコンステレーション社も含まれる。同社が所有する12の原子力発電所でNIVAを6か月間試験運用し、今後も業務強化や知識継承、効率向上に活用する方針だ。Atomic Canyon社は今回の全面展開と同時に、NVIDIA社、ベンチャーキャピタルのPlug and Play Ventures社、米資産運用会社バンガード社のT. バックリー元CEOらから新たな資金を調達した。NIVAの全面展開により、原子力産業が長年蓄積してきた知識をAI検索で共有し、運転・保守、人材育成の効率化につながることが期待されている。
02 Sep 2026
827
海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英国のコアパワー社は8月24日、米国ワシントンD.C.で米運輸省海事局(MARAD)と協力覚書(MOC)を締結した。米国籍の原子力商船の実用化に向け、商業、産業、規制面での取組みを加速することが目的で、連邦機関と民間企業の協力としては初。同社は準備が整えば、2028年にも米国で原子力推進商船の初建造開始をめざしている。本MOCは、米政府主催で8月26日~27日にワシントンD.C.で開催された「海洋分野における原子力技術の応用(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea, ATLAS)」発足に向けたIAEA閣僚級会合に先立って締結された。米トランプ政権は2026年2月、「海事行動計画」を公表。米国の海洋分野の衰退を食い止め、民間投資を動員し、経済および国家安全保障の要と位置づける 海事産業の再建と米国の造船能力の強化をめざしている。こうした中、小型モジュール炉(SMR)などの先進炉を活用した原子力推進は、商業海運の復興の一翼を担う重要な存在になると期待されている。原子力推進船舶は、長期間の連続航行が可能で、従来の舶用燃料への依存を減らし、推進時の炭素排出がないことが利点とされる。原子力商船の活用は重大な商業的機会である一方で、安全かつセキュリティを確保し、投資可能な環境を整備する必要がある。両者は今回のMOC締結を受け、政府、産業界、その他利害関係者が、規制承認、港湾運営、労働力の資格認定、燃料およびライフサイクルサービス、保険・資金調達、建造・運用面での産業側の能力、連邦政府による将来的な需要創出の仕組みなどについて協議する場を設ける。こうした取組みを通じて不確実性を低減し、船舶、造船所、関連インフラへの民間投資が可能な環境を整備していく方針だ。コアパワー社のM. ボー氏CEOは、中国が世界の商用造船市場を席巻し、原子力推進の商船開発も積極的に進めるなか、戦略的な対応が急務となっていると指摘。同社は、米国の70年にわたる海軍での原子力運用実績と次世代の原子力専門知識を活用し、米国内に原子炉の搭載、初期燃料装荷、試験、試運転、燃料交換・取出しなどを担う専用の「原子力統合・ライフサイクル造船所」の整備を計画している。船体の建造は通常の商業造船所や世界トップレベルの造船能力を有する日本や韓国などの同盟国が担い、米国内の専用造船所では、原子力関連の工程・保守に必要な専門能力を重点的に構築することを想定している。原子力商船の就航を支援すると同時に、原子力資格を有する人材、サプライヤー、重工業の生産能力を拡大し、米国の海事産業基盤の強化につなげたい考えだ。さらに、コアパワー社は8月19日、米テキサス州のコーパスクリスティ港湾局と同港の「海事原子力対応能力(maritime nuclear readiness)」を調査するMOCを締結。調査では、同港に浮体式原子力発電所を設置し、港湾や周辺地域に安定した電力を供給する拠点として活用することや、将来の原子力商船の寄港地とする可能性を検討する。これとは別に、MARADも同日の8月19日にコーパスクリスティ港湾局とMOCを締結した。SMR技術の統合、耐障害性の高い港湾マイクログリッド、陸上電源システム、次世代船舶推進システムに対応可能なインフラ、人材育成などを検討し、海洋エネルギーシステムの発展に向けた取組みを共同で進めていく。同港は米国最大の石油輸出港であり、国内有数の液化天然ガス輸出拠点でもある。本協力は、今年7月のカリフォルニア州ロングビーチ港湾局とのMOC締結に続くもの。MARADは2026年5月、海上輸送システムへのSMR導入支援について業界から意見を募った情報提供要請(RFI)を実施しており、今回の協力もこれを受けたものである。米国では海運・造船の再建政策に加え、国際海事機関(IMO)が掲げる2050年頃までの国際海運の温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロ目標や、SMRなどの先進炉開発の進展を背景に、原子力船の実用化に向けた動きが活発化している。こうしたなか、IAEAを中心とするATLASが、海洋における民生用原子力利用を国際的な規制・制度面から支える構図が形成されつつある。
01 Sep 2026
636
国際原子力機関(IAEA)は8月26日、民間船舶や浮体式原子力発電所への小型モジュール炉(SMR)などの原子力技術利用を安全・セキュリティ・平和利用の観点から国際的に支援する新たな枠組み「海洋分野における原子力技術の応用(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea, ATLAS)」イニシアチブを立上げた。ATLASは、特定の原子炉を開発・導入するプロジェクトではなく、原子力推進船舶や浮体式原子力発電所を商用化するための国際的な安全・規制・制度面の土台づくりを目的とした、原子力分野と海運分野を国際的に結びつける初の協調的な取組みである。米政府がワシントンD.C.で主催したIAEA閣僚級会合(8月26日~27日)でATLASイニシアチブが発表された。同会合には50か国以上から政府、規制当局、原子力・海運業界、港湾関係者など約600名が参加。28か国((アルゼンチン、バングラデシュ、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、ドミニカ、エクアドル、フィンランド、フランス、ギリシャ、インド、イタリア、日本、韓国、マルタ、オランダ、ノルウェー、パラグアイ、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、トルコ、UAE、英国、米国))が共同声明に参加した。原子力の海洋用途を現実化するには、国際的な原子力・海事コミュニティが協力し、原子力技術の安全かつ確実な導入を確保、海上における民生用原子力利用に対する保障措置の効果的かつ効率的な実施の強化が不可欠。そのためIAEAは今後、運営委員会のほか、各国や産業界などからなる6つの専門プロジェクトグループを設置し、原子力安全、核セキュリティ、保障措置、規制などを検討する。特に、原子炉を船舶や海上施設に搭載する場合に必要となる国際的なルールや規制、港湾インフラ、責任分担など、陸上の原子力発電所とは異なる実務上の課題への対応を進めていくとしている。IAEAは、1962年に運転を開始した世界初の民間原子力貨物船「NSサバンナ」から60年以上を経て、次世代の民間海洋原子力利用に向けた国際的なルール作りを本格化させる方針。ATLAS発足の背景には、世界の貿易の約80%を海上輸送が担い、海上貿易が年間約2%拡大する一方で、長距離輸送のエネルギー安全保障や脱炭素化が課題となっていることがある。特にSMRなどの先進炉は海洋用途において安全かつ実現可能な選択肢となり得る。頻繁な燃料補給を必要としない高速海上輸送を可能とし、コンテナ船、バルク船、タンカー、クルーズ船、砕氷船、オフショア支援船などへの利用が期待されている。また、浮体式原子力発電所は、送電網などのインフラが整っていない沿岸・遠隔地の産業に、電力、熱、淡水、非常用電源などを供給する用途も見込まれる。IAEAは設計、燃料、海洋工学の進展により、一部の原子力推進船舶は2030年代にも導入可能になると予測している。IAEAのリーダーシップの下、ATLAS参加国や産業界の間で海事分野における革新的な民生用原子力技術の開発と導入が促進され、あらゆる活動が最高水準の原子力安全、核セキュリティ、および不拡散に根差した協力の継続が期待されている。
31 Aug 2026
884
ウラン濃縮事業者のウレンコUSA社は8月18日、米ニューメキシコ州ユーニスにある濃縮施設の増設工事の起工式を開催した。米エネルギー省のC. ライト長官も出席した。 同社は今年6月、米国唯一の商業規模のウラン濃縮施設の能力を約50%拡張すると発表しており、新たに遠心分離機のカスケード24基を設置し、年間2,100tSWUの濃縮能力を追加する。最初のカスケードは2032年から順次稼働し、2036年まで段階的に増設する計画である。 既存の濃縮プラントの生産能力は4,300tSWU/年で、米国の濃縮ウラン需要の約1/3を占める。現在、700tSWU/年の拡張工事も進行中で、2027年に完了予定。今回の拡張工事と併せると、2030年代には生産能力が7,000tSWU/年以上となる見込みである。建設ピーク時には300~600名、操業段階では約70名の新たな雇用創出が予想されている。 今回の増設計画により、ウレンコUSA社の投資総額は80億ドルを大幅に超える見込み。同社は、原子力発電の拡大に伴う米国内の低濃縮ウラン(LEU)需要に対応し、国内原子燃料サプライチェーンとエネルギー安全保障の強化に貢献していく考えだ。
31 Aug 2026
559
シンガポール貿易産業省(MTI)と中国国家原子能機構(CAEA)は8月17日、中国・北京で原子力技術の平和利用に関する協力覚書を締結した。MTIのS. タン・エネルギー・科学技術担当大臣とCAEAのZ. シャン主任の立会いの下、A. リー・エネルギー・貿易担当事務次官と J. リウ副主任が覚書に署名した。MTIは同覚書締結を、最近の米国、フランス、韓国を含む様々な国際パートナーとの協力と同様、原子力導入の可能性について客観的かつ技術的な評価を行うための自国の能力構築を支援するものと位置付ける。今回、中国と締結した覚書では、能力構築パートナーシップの対象となる主要分野として、原子炉技術の安全性および技術的評価人材育成および専門家の相互訪問市民への啓発、広報、および関与活動原子力安全、保障措置、および核セキュリティー原子力技術の応用を掲げている。シンガポールは、これら海外関係機関との協力による能力構築の取組みを2027年に予定されている国際原子力機関(IAEA)の「統合原子力基盤レビュー(INIR)」フェーズ1ミッションへの準備にも活かす方針である。INIRフェーズ1ミッションでは、将来的な原子力発電導入について「十分な情報に基づいて意思決定できる能力」が国内に整備されているか、能力構築の取組みが正しい方向に進んでいるかを確認するためIAEA専門家が評価する。同ミッションは、原子力導入を決定するための手続きではなく、シンガポールは原子力分野の人材・制度・技術基盤の整備状況を国際的な基準で確認したい考え。国際的に認められた評価フレームワークであるIAEAのマイルストーン・アプローチに基づき、原子力安全規制、放射性廃棄物管理、緊急時対応など19の分野にわたり包括的な評価を受ける。フェーズ1の完了後、安全性、信頼性、経済性、環境の持続可能性を慎重に考慮し、実際に導入を進める場合には、フェーズ2で建設入札を進める準備状況、フェーズ3で初号機を安全に運転できる準備状況についての評価となる。シンガポールが原子力を検討する背景には、電力の約95%を輸入天然ガスに依存し、国土が狭く再生可能エネルギーの拡大余地も限られていること、2050年ネットゼロに向けて安定した低炭素電源が必要なことがある。特に、小型モジュール炉や安全機能が強化された先進炉に注目している。2012年にも原子力導入の技術的可能性が調査されたが、当時の利用可能な原子力技術は同国での展開に適していないと結論付けられた。以後、シンガポールは将来の原子力の技術進歩に備えて能力強化をめざし、IAEAが原子力発電プログラムを確立するために必要とする19の主要分野の能力構築に取組んできている。
28 Aug 2026
557
米先進炉開発事業者のテラパワー社は8月14日、韓国ソウルで、韓国の現代E&C(現代建設)社およびSKイノベーション社と、先進炉「Natrium」の米国や韓国、一部海外市場での開発・商用化に向けた協力で合意。テラパワー社は、自社の先進原子力技術と韓国企業の原子力建設・運転の経験を組合わせ、Natrium炉の世界展開を加速させる方針である。Natrium炉は34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉で、熔融塩蓄熱により一時的に最大50万kWeまで出力を高めることが可能。テラパワー社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)からワイオミング州ケンメラーにおける初号機の建設許可を取得し、翌4月から建設を開始しており、2030年に完成予定。同社はNatrium炉の商業展開も視野に入れ、今年1月にはIT大手のMeta社と、米国内で最大8基のNatrium炉を建設する商業契約を締結。早ければ2032年までに2基の供給に向けてMeta社が初期開発を資金面で支援し、さらに2035年までに最大6基の追加導入で合意している。2月には、英国における包括的設計審査(GDA)が開始されている。今回、現代E&C社とは、Natrium炉の商業展開を支援する枠組み協力で合意。現代E&C社を設計・調達・建設(EPC)の請負業者として選定し、最大8基の建設に向け、工期・価格・性能保証面で協力する。本提携により、コストの合理化、設計・建設効率の向上、グローバルなサプライチェーンを強化してNatrium炉の導入を加速し、米国および選定された国際市場へNatrium炉を展開する考え。加えて、テラパワー社はSKイノベーション社と韓国初となるNatrium炉の導入および国際的な事業拡大に向けて基本合意書を締結した。運用と保守の最適化のため、デジタルツイン技術やAIを含むエンジニアリング・デジタル技術面での協力を検討する。さらに、同日の8月14日、テラパワー社は斗山エナビリティ社とNatrium炉の主要機器製造契約を締結した。ケンメラーで建設中の初号機向けに、炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物を製造する。両社は2024年12月から製造可能性の検討を進め、設計改良を重ねて製造発注が可能な段階まで成熟度を高めてきた。
26 Aug 2026
633
米原子力エネルギー協会(NEI)と米原子力学会(ANS)が共催する「Nuclear Energy Conference & Expo(NECX)」が8月24日、米テキサス州ダラスで開幕した。27日までの4日間の日程で、1800人を超える原子力関係者が参加しており、米国原子力産業の活況を映す大会となっている。25日の開会セッションでは、NEI理事会議長を務めるエンタジーのD. マーシュ会長兼CEOの開会挨拶に続き、米原子力規制委員会(NRC)のH. ニー委員長が登壇した。ニー委員長は約15分間にわたり、NRCが進める規制改革について説明。「もはや原子力を導入できるかどうかではなく、いかに早く、大規模に展開するかが課題だ。NRCはその実現を支える規制機関へと変革していく」と述べ、原子力発電の大幅な拡大を見据えて規制のあり方を変えていく考えを強調した。続いて、米国の主要電力会社で原子力部門を率いる幹部らによるパネルセッションが行われた。既設原子力発電所の最大活用に加え、新規建設に向けた投資の促進、サプライチェーンの強化、人材の確保など、今後の原子力発電拡大に向けて産業界が直面する課題が幅広く共有された。NEIのJ. コーテック上級副理事長は本紙の取材に対し、「今年のNECXには1800人以上が参加し、昨年から500人規模で増えた。これは現在の米国原子力産業界のモメンタムを表すものだと受け止めている」と指摘。「この機会を生かし、産業界の動きがさらに活性化していくことを期待している」と語った。
26 Aug 2026
800
ハンガリー政府は8月23日、記録的な熱波に伴うドナウ川の低水位により運転制限を実施していた同国のパクシュ原子力発電所(ロシア製PWR=VVER-440、各50万kWe級×4基構成)について、同26日に全基を運転再開する見通しを示した。ドナウ川の記録的な低水位によって冷却水の取水が難しくなり、7月末から出力制限や運転停止を実施していたが、川底堰の建設やバージの設置に加え、上流での降雨によって水位が上昇し、運転再開の見通しが立った。パクシュ発電所は同国唯一の原子力発電所で、1983~87年に運転を開始し、ハンガリーの総発電電力量の約45%を供給している。8月2日時点で同2号機を除く全基が運転を停止、2号機は50%出力で運転を継続していたが、8月10日には水位の上昇を受け、定格出力に復帰した。一方で、政府は8月12日、事態の悪化に備え、長期的な対策として発電所前の川床に堰を建設するほか、緊急措置として全長80m、幅10m、深さ3mのバージ2隻を沈め、局所的に水位を引き上げることを決定していた。本事業の推定費用は総額61億フォリント(約30億円)。なお、パクシュ発電所の運転停止に伴う電力輸入による経済的損失は毎月少なくとも500億フォリント(約250億円)に達するという。翌13日には、川底堰の建設に向け、軍を動員して両岸から約14.5万m³の石材を投入する計画が示された。完成まで約30日を見込み、低水位時にパクシュ発電所付近の水位を少なくとも約50cm引上げることを目指している。バージの沈降や川底堰の建設に加え、ドナウ川支流の水門の開放、ドイツとオーストリア上流域での降雨による増水もあり、20日には水位が約15cm上昇。これにより、運転中の2号機の停止は不要となったほか、22日には3号機、23日には1号機が稼働を開始。8基の冷水ポンプのうち7基も稼働を再開した。P. マジャル首相は23日のパクシュ発電所での記者会見において、26日には全4基の定格出力での運転に復帰できるとの見通しを示した。また同首相は、記録的な干ばつとドナウ川の低水位を受け、今秋にも気候危機の影響から守るための気候法、水資源管理法、エネルギー管理法案を議会に提出する考えを示した。水資源確保のための貯水施設の建設などを検討していくとしている。隣国のルーマニアでは、同国唯一の原子力発電所であるチェルナボーダ発電所(CANDU6, 70万kW級×2基)においても取水するドナウ川の水位低下を受け、冷却ポンプを保護するための予防的措置として、1号機が7月28日に運転を停止。2号機の運転継続に向け、発電所の集水域に水を誘導するため、8月3日にはルーマニア海軍が発電所周辺の川底の岩盤を爆破。さらに、バージを沈めるなどの対策を講じたが、水位は安全基準を下回り、2号機も8月13日に運転を停止した。同国の原子力シェアは約20%。政府は不足する電力を補うため、国内の利用可能な発電設備を最大限活用し、輸入電力への依存を抑える措置を実施。今後10日間の電力需要や気象予測などをふまえ、両機停止による供給不足は既存の発電設備で補えるとの見通しを示している。一方で冷却水を確保するため、8月22日に国家緊急事態委員会が緊急措置を決定した。川床浚渫や取水地点に水を導く堤の設置に加え、オルト川のダムから5日間、平均50m³/秒の追加放流、必要に応じて大容量ポンプやドナウ・黒海運河からの放水を活用する。また、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所では7月以降、ドナウ川の記録的な低水位でも独自の陸上揚水ポンプにより必要な水量を確保し、5-6号機(VVER-1000、各104.0万kWe)の運転を継続してきたが、水位予報が引き続き下降傾向を示す中、8月21日から5号機の出力を予防措置として約12万kWe低下させている。52年に及ぶ同発電所の運転史上初めての措置であるという。
25 Aug 2026
713
インド政府は8月14日、2025年12月に成立した「インドの変革にむけた原子力の持続可能な利用と発展に関する法律」(SHANTI法)を実施するための施行規則(Rules)と規制(Regulations)案を公表し、パブリックコメントを開始した。今回のパブコメに付された規則・規制案はSHANTI法を実際に運用するための具体的な枠組みとなるもので、実際の原子力発電所建設につなげるための重要な制度整備となる。コメントの提出期限は9月4日。SHANTI法は、インドのクリーンエネルギー移行と2047年までに1億kWeの原子力発電設備容量を達成するという長期目標の実現に向けて、原子力分野を規定する法律の近代化を目的に制定された。1962年原子力法と2010年原子力損害民事責任法(CLNDA)に代わるものとして、原子力発電へ民間・外国企業の限定的な参入を初めて可能にし、従来の原子力関連法を一本化したもの。規則案では、原子力発電所の建設、所有、運転、廃止措置までを一つの「包括的ライセンス」で認可する制度を導入し、許認可手続きを簡素化する。アルミニウムやセメントなどのエネルギー集約型産業、データセンター、半導体製造向けの自家発電も対象とする。また、事業者がサイトや炉型を最終決定する前に「原則承認」を取得し、ベンダーとの交渉や土地・インフラ取得を進められる仕組みを設ける。外国製原子炉も原産国の規制当局で承認された設計・運転実績を一定の条件として導入を認める。さらに、事業者に対して原子力損害賠償に備えた保険や金融保証を求め、使用済み燃料の搬出までその維持を求める。SHANTI法は、規制監督のもとで限定的な民間の原子力分野への参加を認めており、原子力規制委員会(AERB)に法的権限を与えることで規制を強化。そのため、規制案では、原子力施設の設計、建設、試運転、運転、廃止措置など、ライフサイクル全体にわたる安全規制を具体化。設計段階では安全解析や設計審査、建設段階では品質保証や検査、試運転・運転段階では設備の性能確認や運転管理など、各段階で満たすべき安全要件を定める。また、原子力施設の立地、放射線防護、緊急時対応、放射性廃棄物管理、使用済み燃料管理、廃止措置、核セキュリティなども規制対象。AERBには、検査や試験・製造施設への立ち入り、必要に応じた是正措置を行う権限を付与し、施設の安全確保を継続的に監督する枠組みを整備する。
25 Aug 2026
545
米国の原子力プロジェクト開発企業ブルー・エナジー社は8月13日、テキサス州ビクトリアで計画する「ガス+原子力」発電所の建設に向け、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と協力の次段階に進むことで合意した。GVH社製7HAガスタービンと小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」(BWR, 30万kWe)を組合わせ、合計出力250万kWeの発電所となる。今年5月に発表された両者が提携して進めるハイブリッドの発電モデルの基本構想を次段階に進め、エンジニアリング設計、許認可、安全解析を本格化させ、2027年の最終投資決定(FID)を目指す。同プロジェクトでは、ガス火力を先行させ、原子力を段階的に追加。2030年に7HA.02ガスタービン2基、計約100万kWeの電力を近隣のデータセンターに供給し、2032年にはBWRX-300を最大5基、計150万kWeを追加導入する。AIや先端産業の拡大に伴い急増する米国の電力需要に対し、短期間で電力供給を開始できるガス火力と長期的に安定したベースロード電源となる原子力の組合わせで対応する。ブルー・エナジー社は、BWRX-300の標準化・モジュール化された設計をベースに、工場でのプレハブ化や輸送、現地での組立てを統合した独自のアプローチ「Blue Way」を採用して、従来の大型原子力発電所と比べ、工期やコスト、プロジェクト遂行の予測可能性を高める考え。非原子力設備を先行整備するアプローチは2025年12月に米原子力規制委員会(NRC)の承認を受けており、早期に電力供給と収益化を実現することで、建設資金の調達を容易にし、原子力プロジェクト特有の長期投資リスクの低減を図る。まず、非原子力かつ安全性に直接関与しないインフラのオフサイト製造と現場設置から着手。原子力コンポーネントの許認可・建設を進める間にも、機器製造やインフラ整備を進めつつ、ガス火力による電力供給を開始する。これにより、従来10年以上に及ぶ原子力発電所の建設スケジュールを少なくとも5年短縮するとともに、48か月以内に天然ガスによる電力供給を開始できると見込む。GVH社は自社の旗艦であるHAガスタービン技術と先進的な原子力技術を組合わせ、ブルー・エナジー社の革新的なプロジェクトモデルを支援していく方針だ。なお現在、BWRX-300初号機の建設がカナダのダーリントン原子力発電所の隣接サイトで進められており、2020年代末までに完成予定。完成すれば西側初の商用SMRとなる。
24 Aug 2026
887
スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo= CNAT)は8月14日、同社が所有するアルマラス原子力発電所(米ウェスチングハウス社製PWR, 100万kW級×2基)の運転認可が2030年6月8日まで更新されたことを明らかにした。 スペイン原子力安全委員会(CSN)が7月16日、同発電所が認可期限まで安全に稼働するための条件を満たしているとの肯定的評価を環境移行・人口問題省(MITECO)に提出。これを受け、MITECOが8月12日に認可更新を承認した。CNATは2025年10月、MITECOに対し同発電所の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請。1号機は1983年9月、2号機は1984年7月に営業運転を開始しており、運転認可期限はそれぞれ2027年11月と2028年10月までとなっていた。 CNATは今回の認可更新を受け、アルマラス発電所が世界原子力発電事業者協会(WANO)の基準で世界トップクラスの評価を受けているとし、今後も高い水準を維持しながら、安全かつ信頼性の高い、効率的な運営を続ける決意を改めて表明した。 同発電所は、設備の改善、更新、近代化に年間5,000万ユーロ(約93億円)を投じ、設備を良好な状態に維持。スペインの電力消費量の7%以上(400万世帯分に相当)を供給し、同発電所およびその関連組織で約4,000名を雇用しているほか、燃料交換時期には約1,200名を追加雇用するなど、周辺地域の社会経済における主要な原動力となっている。 スペインの原子力産業団体であるForo NuclearのM. ウガルデ理事長は、今回のMITECOの決定について、「アルマラス発電所の継続的な稼働は、再生可能エネルギーを補完する、安全で排出ゼロかつ競争力のある原子力の価値を強調するもの」と歓迎している。
21 Aug 2026
628