
ハンガリー政府は8月23日、記録的な熱波に伴うドナウ川の低水位により運転制限を実施していた同国のパクシュ原子力発電所(ロシア製PWR=VVER-440、各50万kWe級×4基構成)について、同26日に全基を運転再開する見通しを示した。ドナウ川の記録的な低水位によって冷却水の取水が難しくなり、7月末から出力制限や運転停止を実施していたが、川底堰の建設やバージの設置に加え、上流での降雨によって水位が上昇し、運転再開の見通しが立った。パクシュ発電所は同国唯一の原子力発電所で、1983~87年に運転を開始し、ハンガリーの総発電電力量の約45%を供給している。8月2日時点で同2号機を除く全基が運転を停止、2号機は50%出力で運転を継続していたが、8月10日には水位の上昇を受け、定格出力に復帰した。一方で、政府は8月12日、事態の悪化に備え、長期的な対策として発電所前の川床に堰を建設するほか、緊急措置として全長80m、幅10m、深さ3mのバージ2隻を沈め、局所的に水位を引き上げることを決定していた。本事業の推定費用は総額61億フォリント(約30億円)。なお、パクシュ発電所の運転停止に伴う電力輸入による経済的損失は毎月少なくとも500億フォリント(約250億円)に達するという。翌13日には、川底堰の建設に向け、軍を動員して両岸から約14.5万m³の石材を投入する計画が示された。完成まで約30日を見込み、低水位時にパクシュ発電所付近の水位を少なくとも約50cm引上げることを目指している。バージの沈降や川底堰の建設に加え、ドナウ川支流の水門の開放、ドイツとオーストリア上流域での降雨による増水もあり、20日には水位が約15cm上昇。これにより、運転中の2号機の停止は不要となったほか、22日には3号機、23日には1号機が稼働を開始。8基の冷水ポンプのうち7基も稼働を再開した。P. マジャル首相は23日のパクシュ発電所での記者会見において、26日には全4基の定格出力での運転に復帰できるとの見通しを示した。また同首相は、記録的な干ばつとドナウ川の低水位を受け、今秋にも気候危機の影響から守るための気候法、水資源管理法、エネルギー管理法案を議会に提出する考えを示した。水資源確保のための貯水施設の建設などを検討していくとしている。隣国のルーマニアでは、同国唯一の原子力発電所であるチェルナボーダ発電所(CANDU6, 70万kW級×2基)においても取水するドナウ川の水位低下を受け、冷却ポンプを保護するための予防的措置として、1号機が7月28日に運転を停止。2号機の運転継続に向け、発電所の集水域に水を誘導するため、8月3日にはルーマニア海軍が発電所周辺の川底の岩盤を爆破。さらに、バージを沈めるなどの対策を講じたが、水位は安全基準を下回り、2号機も8月13日に運転を停止した。同国の原子力シェアは約20%。政府は不足する電力を補うため、国内の利用可能な発電設備を最大限活用し、輸入電力への依存を抑える措置を実施。今後10日間の電力需要や気象予測などをふまえ、両機停止による供給不足は既存の発電設備で補えるとの見通しを示している。一方で冷却水を確保するため、8月22日に国家緊急事態委員会が緊急措置を決定した。川床浚渫や取水地点に水を導く堤の設置に加え、オルト川のダムから5日間、平均50m³/秒の追加放流、必要に応じて大容量ポンプやドナウ・黒海運河からの放水を活用する。また、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所では7月以降、ドナウ川の記録的な低水位でも独自の陸上揚水ポンプにより必要な水量を確保し、5-6号機(VVER-1000、各104.0万kWe)の運転を継続してきたが、水位予報が引き続き下降傾向を示す中、8月21日から5号機の出力を予防措置として約12万kWe低下させている。52年に及ぶ同発電所の運転史上初めての措置であるという。
25 Aug 2026
153
インド政府は8月14日、2025年12月に成立した「インドの変革にむけた原子力の持続可能な利用と発展に関する法律」(SHANTI法)を実施するための施行規則(Rules)と規制(Regulations)案を公表し、パブリックコメントを開始した。今回のパブコメに付された規則・規制案はSHANTI法を実際に運用するための具体的な枠組みとなるもので、実際の原子力発電所建設につなげるための重要な制度整備となる。コメントの提出期限は9月4日。SHANTI法は、インドのクリーンエネルギー移行と2047年までに1億kWeの原子力発電設備容量を達成するという長期目標の実現に向けて、原子力分野を規定する法律の近代化を目的に制定された。1962年原子力法と2010年原子力損害民事責任法(CLNDA)に代わるものとして、原子力発電へ民間・外国企業の限定的な参入を初めて可能にし、従来の原子力関連法を一本化したもの。規則案では、原子力発電所の建設、所有、運転、廃止措置までを一つの「包括的ライセンス」で認可する制度を導入し、許認可手続きを簡素化する。アルミニウムやセメントなどのエネルギー集約型産業、データセンター、半導体製造向けの自家発電も対象とする。また、事業者がサイトや炉型を最終決定する前に「原則承認」を取得し、ベンダーとの交渉や土地・インフラ取得を進められる仕組みを設ける。外国製原子炉も原産国の規制当局で承認された設計・運転実績を一定の条件として導入を認める。さらに、事業者に対して原子力損害賠償に備えた保険や金融保証を求め、使用済み燃料の搬出までその維持を求める。SHANTI法は、規制監督のもとで限定的な民間の原子力分野への参加を認めており、原子力規制委員会(AERB)に法的権限を与えることで規制を強化。そのため、規制案では、原子力施設の設計、建設、試運転、運転、廃止措置など、ライフサイクル全体にわたる安全規制を具体化。設計段階では安全解析や設計審査、建設段階では品質保証や検査、試運転・運転段階では設備の性能確認や運転管理など、各段階で満たすべき安全要件を定める。また、原子力施設の立地、放射線防護、緊急時対応、放射性廃棄物管理、使用済み燃料管理、廃止措置、核セキュリティなども規制対象。AERBには、検査や試験・製造施設への立ち入り、必要に応じた是正措置を行う権限を付与し、施設の安全確保を継続的に監督する枠組みを整備する。
25 Aug 2026
102
米国の原子力プロジェクト開発企業ブルー・エナジー社は8月13日、テキサス州ビクトリアで計画する「ガス+原子力」発電所の建設に向け、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と協力の次段階に進むことで合意した。GVH社製7HAガスタービンと小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」(BWR, 30万kWe)を組合わせ、合計出力250万kWeの発電所となる。今年5月に発表された両者が提携して進めるハイブリッドの発電モデルの基本構想を次段階に進め、エンジニアリング設計、許認可、安全解析を本格化させ、2027年の最終投資決定(FID)を目指す。同プロジェクトでは、ガス火力を先行させ、原子力を段階的に追加。2030年に7HA.02ガスタービン2基、計約100万kWeの電力を近隣のデータセンターに供給し、2032年にはBWRX-300を最大5基、計150万kWeを追加導入する。AIや先端産業の拡大に伴い急増する米国の電力需要に対し、短期間で電力供給を開始できるガス火力と長期的に安定したベースロード電源となる原子力の組合わせで対応する。ブルー・エナジー社は、BWRX-300の標準化・モジュール化された設計をベースに、工場でのプレハブ化や輸送、現地での組立てを統合した独自のアプローチ「Blue Way」を採用して、従来の大型原子力発電所と比べ、工期やコスト、プロジェクト遂行の予測可能性を高める考え。非原子力設備を先行整備するアプローチは2025年12月に米原子力規制委員会(NRC)の承認を受けており、早期に電力供給と収益化を実現することで、建設資金の調達を容易にし、原子力プロジェクト特有の長期投資リスクの低減を図る。まず、非原子力かつ安全性に直接関与しないインフラのオフサイト製造と現場設置から着手。原子力コンポーネントの許認可・建設を進める間にも、機器製造やインフラ整備を進めつつ、ガス火力による電力供給を開始する。これにより、従来10年以上に及ぶ原子力発電所の建設スケジュールを少なくとも5年短縮するとともに、48か月以内に天然ガスによる電力供給を開始できると見込む。GVH社は自社の旗艦であるHAガスタービン技術と先進的な原子力技術を組合わせ、ブルー・エナジー社の革新的なプロジェクトモデルを支援していく方針だ。なお現在、BWRX-300初号機の建設がカナダのダーリントン原子力発電所の隣接サイトで進められており、2020年代末までに完成予定。完成すれば西側初の商用SMRとなる。
24 Aug 2026
406
スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo= CNAT)は8月14日、同社が所有するアルマラス原子力発電所(米ウェスチングハウス社製PWR, 100万kW級×2基)の運転認可が2030年6月8日まで更新されたことを明らかにした。 スペイン原子力安全委員会(CSN)が7月16日、同発電所が認可期限まで安全に稼働するための条件を満たしているとの肯定的評価を環境移行・人口問題省(MITECO)に提出。これを受け、MITECOが8月12日に認可更新を承認した。CNATは2025年10月、MITECOに対し同発電所の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請。1号機は1983年9月、2号機は1984年7月に営業運転を開始しており、運転認可期限はそれぞれ2027年11月と2028年10月までとなっていた。 CNATは今回の認可更新を受け、アルマラス発電所が世界原子力発電事業者協会(WANO)の基準で世界トップクラスの評価を受けているとし、今後も高い水準を維持しながら、安全かつ信頼性の高い、効率的な運営を続ける決意を改めて表明した。 同発電所は、設備の改善、更新、近代化に年間5,000万ユーロ(約93億円)を投じ、設備を良好な状態に維持。スペインの電力消費量の7%以上(400万世帯分に相当)を供給し、同発電所およびその関連組織で約4,000名を雇用しているほか、燃料交換時期には約1,200名を追加雇用するなど、周辺地域の社会経済における主要な原動力となっている。 スペインの原子力産業団体であるForo NuclearのM. ウガルデ理事長は、今回のMITECOの決定について、「アルマラス発電所の継続的な稼働は、再生可能エネルギーを補完する、安全で排出ゼロかつ競争力のある原子力の価値を強調するもの」と歓迎している。
21 Aug 2026
429
米国で放射性廃棄物の深地孔処分(Deep Borehole Disposal)技術を開発するディープ・アイソレーション(Deep Isolation)社は8月12日、米国成人1,000人を対象とした全国調査結果を発表。同調査によると、回答者の81%が高レベル放射性廃棄物の恒久的な処分方法の確立を「国家的な優先課題であるべき」と考えていることが分かった。一方で、原子力発電所サイトで使用済み燃料を何十年も保管し続けることを支持したのは28%にとどまり、69%が米国に恒久的な処分方法がないことに懸念を示したという。本調査は、同社が世論調査会社YouGovに委託し、2026年4月に実施したもの。調査結果によると、信頼性が高く低炭素電源である原子力への関心が再び高まりを見せる中、回答者の61%が米国における原子力発電の継続利用を支持。74%が、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の長距離輸送を減らせる深地層処分を支持していることが明らかになった。また、長期的な廃棄物管理の選択肢として、回答者の61%が放射性廃棄物を天然の岩石による遮蔽のみで隔離する深地孔処分の方が安全としたのに対し、作業員の立ち入りが可能な地下掘削による人工的な遮蔽施設に処分する方が安全としたのは38%にとどまった。なお、深地孔処分に関する情報提供後では、同処分方法を回答者の65%が支持し、情報提供前の58%から支持率が上昇したという。廃棄物政策を誰に委ねるかについては、科学者・技術者を信頼するとした回答が68%だったのに対し、政府単独による原子力政策を信頼するとした回答は37%にとどまった。さらに、地層処分施設の建設について、連邦政府だけでなく州が連邦政府の安全規制を条件に申請主体となることを支持する回答も62%に達した。電力需要の増大に対応するために米国が原子力拡大を目指す中、次世代原子力イノベーションとそれを支える長期的な廃棄物管理ソリューションを組合わせた「原子力ライフサイクル・イノベーション・キャンパス」イニシアチブなど、州主導のアプローチに関心が高まっている。ディープ・アイソレーション社は今回の調査結果を受け、米国民は使用済み燃料および高レベル放射性廃棄物問題への対処の重要性を認識しており、無期限の貯蔵から脱却し、恒久的な廃棄物処分に向けた実用的かつ科学に基づいた解決策を求めていると指摘。エネルギーおよび廃棄物管理政策の立案者が長期的な処分オプションを検討する中で、透明性のあるコミュニケーション、地域社会の参画、信頼できる技術的専門知識が国民の信頼を築く上で極めて重要な役割を果たすことを改めて裏付けたものだと、本調査の意義を強調している。
20 Aug 2026
556
ロシア国営原子力企業「ロスアトム」は8月9日、イランのブシェール原子力発電所の建設サイトへ、ロシアからスタッフの復帰が始まったことを明らかにした。ロスアトムは米国とイラン間の紛争が続く中、作業を中断し、スタッフの多くを段階的にイランから退避させていた。ロスアトムのA. リハチョフ総裁によると、技術・エンジニアリング要員のうち、最初に現場に戻った5名の専門家はすでに業務に着手しており、現地に残った専門家20名と合わせて総数は25名に達しているという。紛争が再び激化しないことを条件に、今後2週間で数十名のスタッフを復帰させる計画。すべてが順調に進めば、今秋には同プロジェクトのスタッフ数を100名に増やす考えで、先に避難させたスタッフ全員を、できるだけ早く現場に復帰させる方針だ。一方、紛争前の状況に戻るには、米国とイランの間で戦闘停止に関する最終的な合意が確定する必要がある、とリハチョフ総裁は強調している。ブシェール・サイトでは、原子力発電開発会社(NPPD)が2013年9月に1号機(VVER-1000, 100.0万kWe)の営業運転を開始。現在、同2-3号機(各VVER-1000, 105.7万kWe)の主要建屋と付帯施設の建設作業が続いている。
19 Aug 2026
450
仏フラマトム社は7月23日、同社が米ワシントン州で操業するリッチランド燃料製造施設で濃縮度10%までの燃料製造を可能にするライセンス修正申請(LAR)を米原子力規制委員会(NRC)が承認したことを明らかにした。これにより米国内での先進炉向け燃料の生産能力を拡大し、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ炉を含む次世代炉の導入加速を支えていく方針。フラマトム社は2024年9月、LARをNRCに提出。今回の承認は、同サイトで乾式転換プロセスを活用し、六フッ化ウラン(UF6)を酸化ウラン(UO2およびU3O8)粉末への転換を可能にするもの。同工程で製造される燃料は、既存の軽水炉燃料よりもさらに高い濃縮度を必要とする原子炉向けで、TRISO(3重被覆層燃料粒子)燃料の製造も含まれる。今年5月には既存の軽水炉市場向けのLEU+(濃縮度5%超の燃料)製造を可能にするライセンス変更の承認もNRCから得ており、燃料交換サイクルの延長を含む、安全で信頼性の高い経済的な燃料サイクルを支援していく。2025年9月、フラマトム社は米国内唯一の独立系TRISO燃料製造事業者であるスタンダード・ニュークリア社と、特定の炉型に限定しない合弁企業を設立している。SMRやマイクロ炉を含む先進炉の開発・運転事業者向けのTRISO燃料の市場投入が目的。今回の承認を受け、予定通りにリッチランド・サイトで設備の試運転を開始し、年間数トン規模のTRISO燃料を生産する。現在の生産能力から大幅な増産となるという。同サイトでは現在の需要に応えるため、2027年にUO2粉末およびTRISO粒子の製造開始を予定している。さらにフラマトム社は、将来的には濃縮度20%までのHALEU燃料を製造する計画である。米エネルギー省(DOE)に対し、HALEU導入に向けた支援金の申請をしており、必要な設備やシステムはすでに設計・解析済みのため、追加のライセンス修正も迅速に進められると見込んでいる。
19 Aug 2026
510
先進炉および燃料技術開発に取組む、米Xエナジー社は8月6日、米ウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社と、高純度低濃縮ウラン(HALEU)および低濃縮ウラン(LEU)の濃縮サービスに関する長期供給契約を締結した。本契約により、Xエナジー社の高温ガス炉「Xe-100」(8万kWe)の燃料調達リスクが大幅に軽減されるほか、同社が計画する計1,150万kWeの商用炉展開に向け、初期燃料需要の一部を賄うHALEUの確保につなげる。セントラス社がオハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)で濃縮したHALEUを、Xエナジー社傘下の燃料製造会社TRISO-X社がテネシー州オークリッジで操業する燃料製造施設でTRISO(3重被覆層燃料粒子)燃料に加工する。Xエナジー社はHALEU燃料の代金を前払いし、セントラス社の生産能力拡大を資金面で後押し。セントラス社はACPの大規模拡張も計画しており、数十億ドル規模の民間資本に加え、米エネルギー省(DOE)から今後10年間にわたる9億ドルの随時受注契約を活用する方針である。セントラス社のA. ベクスラーCEOは、本提携にあたり、国内燃料サプライチェーンを強化し、先進炉開発業界にとって懸念事項であった濃縮問題の解消に貢献していく考えを示している。Xエナジー社は現在、米化学大手ダウ・ケミカル社とAmazon社、英エネルギー企業セントリカ社と計1,150万kWeの商用Xe-100プロジェクトを進めている。HALEUの商業生産が立ち上げ途上にある中、今回の契約により、プロジェクトの進展に合わせてHALEUの生産を段階的に拡大し、初期案件の一部への安定供給につなげる。なお、ダウ社のテキサス州にあるシードリフト・サイトに建設される初号機(FOAK=first of a kind)プロジェクトとなるロング・モット発電所(Xe-100×4基採用)に必要なHALEUについては、Xエナジー社はすでにDOEのHALEU供給確保プログラムを通じて供給枠を確保している。Xe-100で使用するHALEUはウラン235濃縮度約15.5%で、Xe-100のTRISO燃料の原料となる。従来の5%未満のLEUに比べ、高温運転や長い運転サイクルなどを可能にし、発電だけでなく産業用熱供給にも適したXe-100の性能を支える。
18 Aug 2026
551
米エネルギー省(DOE)は7月23日、短期的な燃料需要に対応するため、米航空宇宙局(NASA)およびラディアント・インダストリーズ社に対し、高純度低濃縮ウラン(HALEU)(( U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の割り当てを条件付きで実施すると明らかにした。第3回目となる今回のHALEU割り当ては、原子力火星探査機「スペース・リアクター1・フリーダム(SR-1フリーダム)」ならびに、ラディアント社が開発するヘリウム冷却マイクロ炉「カレイドス」(Kaleidos)の展開を支援するもの。「カレイドス」は、コロラド州のバックリー宇宙軍基地が設置候補地となっている。一方の「SR-1フリーダム」はNASAのJ. アイザックマン長官が命名した、2028年の打ち上げを目指す火星ミッション。宇宙空間で初めて原子力電気推進(NEP)技術を活用する。DOEのT. ガリッシュ原子力担当次官補は「今回の割り当ては、宇宙探査と国家安全保障のために先進炉へ燃料供給することの重要性を浮き彫りにしている」と述べた。また、米国の原子力ルネサンスを支える国内原子燃料供給体制の確立に向け、DOEの「HALEU供給確保プログラム」が重要な足がかりとなると強調している。多くの先進炉は、既存技術に比べて小型化、運転サイクルの長期化、効率向上を実現するためにHALEUを必要とするが、現時点でDOEまたは商業的な供給源からHALEUを供給できる国内の供給能力は非常に限られている。このギャップを埋めるため、DOEは民間の研究開発、実証および商業利用に向け、2020年にHALEU供給確保プログラムを設立。割り当ては同プログラムを通じて実施されている。1回目は先進炉・燃料開発企業5社に、2回目は3社に割り当てられた。同プログラムで割り当てするHALEUは、国家核安全保障局(NNSA)が管理する原料や政府所有の研究炉からの使用済み燃料由来の高濃縮ウラン(20%以上のU235)をダウンブレンドし、限られた量を製造。加えて、ウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社: USEC)と提携し、オハイオ州パイクトンの濃縮施設で16台の新型遠心分離機を製造・連結して濃縮の実証を行い、短期的なHALEUニーズに対応している。NASAへの割り当ては今回が初めて。ラディアント社は同社製マイクロ炉「カレイドス」の実証試験向けに、第1回目にも割り当てられている。DOEは両者との契約プロセスを開始し、HALEUの割り当てを行う。HALEU供給確保プログラムは継続中であり、DOEは今後も追加企業へのHALEUの割り当てを続ける予定。
18 Aug 2026
511
米ホルテック・インターナショナル社は、ニュージャージー州で廃止措置中のオイスタークリーク原子力発電所(BWR, 64.1万kWe)サイトと、電力会社エンタジー社の供給エリアである米南部で新たなSMR展開に向けた検討を進めている。同社の7月30日付発表によると、米原子力規制委員会(NRC)はこのほど、オイスタークリーク発電所のライセンス終了計画(License Termination Plan, LTP)を承認。LTPは、廃止措置の最終段階とサイトの修復に向けた計画で、残る解体・除染作業や放射線調査の実施などを定めるもの。同発電所は、1969年~2018年まで運転された。2029年4月まで運転認可を取得していたが、経済性の悪化から、当時の所有者・運転者であったエクセロン社が2018年9月に早期閉鎖した。2019年7月にはエクセロン社からホルテック社へ売却され、廃止措置・解体作業が進行中。作業はすでに半分以上が完了しており、2029年までにサイトの部分的解放、2035年末までにNRCのライセンス終了を予定している。ホルテック社は同サイトに、同社が開発する「SMR-300」(PWR, 30万kW級)を4基建設し、2036年までに全基の営業運転を開始したい考え。ニュージャージー州では事実上の原子力発電所建設モラトリアムの撤廃や新規原子力発電の調達制度の設立など、原子力の新規導入に向けた環境整備が進められている。同社は、SMR建設時に約4,000名、運転開始後には400名以上の常勤職の雇用に加え、税収の増加やインフラ投資、AIデータセンターとの統合の可能性など、州政府の支援や経済効果への期待を示している。さらにホルテック社は8月4日、エンタジー社ならびに韓国の建設大手、現代E&C(現代建設)社と、エンタジー社の供給区域で大口電力需要家向けにSMR-300×2基の建設を検討する覚書を締結した。対象地域はアーカンソー州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、テキサス州。この取組みは、南部湾岸全域で拡大する工業施設、先進製造施設、AIデータセンターなどによるベースロード電力需要が拡大していることを受けたもの。三者は今後、候補地や電力需要、商業スキームを共同で評価する。ホルテック社がSMR-300の技術・原子炉供給とプロジェクト開発、現代E&C社が、タービン発電機などのBOP機器のEPC(設計・調達・建設)を担う想定である。ホルテック社は、ミシガン州で運転再開に向けて作業を進めるパリセード発電所(PWR, 85.7万kW)の隣接サイトに、初号機となるSMR-300×2基から構成されるパイオニア発電所の建設を計画しており、NRCに建設許可の第一部を2025年12月末に申請済み。また、英国ノッティンガムシャー州のコッタム石炭火力発電所跡地にも、英EDFエナジー社と共同でSMR-300×4基を建設し、併設するデータセンター向けに電力を供給する計画を進めており、今年6月に英政府に提案している。
17 Aug 2026
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米カリフォルニア州のロングビーチ港と米運輸省海事局(MARAD)は7月22日、商用船舶、港湾、その他の海事資産に電力を供給する小型モジュール炉(SMR)の活用の推進に向けて、協力覚書(MOC)を締結した。米国の海港がMARADと原子力活用に関して提携するのは全米初。但し、具体的な原子炉建設や導入を決定するものではなく、商用サービス向けの原子力推進船舶を実現するため、規制・安全面を含む環境整備を共同で進めることが目的。本協力は、2026年5月にMARADが実施した、米国製で、拡張性があり、商業的に実現可能なSMRの開発および海上輸送システム内への導入支援について業界からの意見を募る、情報提供要請(RFI)によるもの。ロングビーチ港は米国内の18の「商業戦略海港」の一つに指定されており、2050年までにコンテナ取扱量を倍増させるという目標を掲げている。信頼性の高い電源需要の大幅増加が予想される中、両者は本覚書に基づき、米国沿岸警備隊、エネルギー省、原子力規制委員会と協力し、SMRを動力源とする船舶が米国の港に安全に入港・停泊し、必要な整備を受けられるよう、運用手順、安全基準、検査手続きなどの整備を進め、ベストプラクティスの開発と共有を行うこととしている。また、SMRを商業船舶の推進力として利用するだけでなく、港湾施設やその他の海事インフラへの電力供給などへの活用も検討。MARADは、この取組みを米国の造船業や海事サプライチェーンの強化、人材育成にもつなげたい考え。ロングビーチ港側も、連邦政府の支援と民間企業の技術革新を組み合わせ、SMR船舶の開発および港湾受け入れに向けた港湾インフラの評価および整備に必要な措置を講じつつ、次世代の海運・港湾エネルギーシステムの実現を目指すとしている。
17 Aug 2026
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韓国水力・原子力(KHNP)は7月31日、韓国慶州にある本社で、フィリピンを代表する民間エネルギー企業の一つであるアボイティス・パワー(AboitizPower)社と、原子力プロジェクトにおける協力強化に向けて了解覚書(MOU)を締結した。同覚書に基づき両社は、原子力技術に関する情報交換、新規原子力発電プロジェクトの予備的実現可能性調査(F/S)、および研修プログラム、セミナー、実務者レベルでの協議の実施を通じて、原子力技術およびフィリピンにおけるその適用の可能性を探る。アボイティス社は火力、水力、太陽光、地熱発電、エネルギー貯蔵システムなどの多岐にわたる発電事業を展開し、発電、送配電、電力小売事業をカバーしている。同覚書には、KHNPのチェ・イルギョン上級執行副社長、アボイティス社のC. アボイティス最高コーポレートサービス責任者が調印。フィリピン・エネルギー省のS. ガリン長官と、国営電力公社のJ. ノグラレスCEOも同席した。ガリン長官は、「安全でクリーン、信頼できるエネルギーへの移行は、政府だけで達成できるものではない。強力な官民連携と、KHNPのような経験豊富な業界リーダーとの国境を越えたベストプラクティスの交換が必要」と述べ、エネルギー移行を推進する上で協力の重要性を強調している。フィリピンは、電力需要の増大への対応やエネルギー安全保障の強化に向け、原子力発電の開発に向けた取組みを進めている。政府は民間電力会社と連携し、原子力発電所の候補地に関する共同調査の実施や、発電所の建設・運転に関する許認可手続きを体系化したフローチャートの策定など、原子力プロジェクトの基盤・制度整備を進めている。フィリピンは1970年代の石油危機を受け、バターン原子力発電所(BNPP、米ウェスチングハウス社製PWR、62万kWe)を建設したが、財政問題や安全性への懸念から運転には至らなかった。その後、原子力導入は停滞したものの、2022年に導入方針が示され近年再び検討が本格化。SMRを含む多様な炉型の活用が模索されている。政府は2032年までに初の原子力発電所の運転開始(120万kWe)を目指し、2035年に240万kWe、2050年に480万kWeへ拡大する計画としている。
13 Aug 2026
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ドイツのニーダーザクセン州環境省は7月22日、仏フラマトム傘下のAdvanced Nuclear Fuels(ANF)社がニーダーザクセン州リンゲンの燃料製造工場で計画する、ロシア製PWR=VVER向けの燃料集合体の製造設備への改造を、厳しい安全対策を条件に認可した。ANF社は2022年3月、ニーダーザクセン州環境省に対し、リンゲンの燃料製造工場でロシア設計の六角形のVVER用燃料集合体を製造するため、製造・試験設備の変更や追加設備の設置を含む改造を申請した。ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下の燃料製造企業TVEL社が保有するライセンスと技術を用いて、欧州で稼働するVVER向け燃料の製造と供給を目的としている。本申請は、その直前の2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を受け、大きな物議を醸した。同州のC. マイヤー環境相は認可にあたり、ロシアとの原子力分野での協力は政治的に「根本的に誤り」と強く批判し、ロシアへの依存を減らすべきだとの立場を改めて表明した。しかし、ニーダーザクセン州は原子力法に基づき、連邦政府の委任行政として認可を発給する立場にあり、連邦監督当局は安全保障上の評価を見直した結果、「法的に認可を拒否できる根拠はない」と判断。州政府は今回、これに従って認可した。EUが現在、ロシア産ウランや原子力分野に対する制裁を導入していないことも認可の背景にあった。但し、認可には厳格な条件が課せられた。TVEL社やロスアトム、関係する職員の工場への立入りは原則として禁止され、例外的な立入りも監督当局の同行が必要となる。また、ロシア製のハードウェアおよびソフトウェアは第三者による安全性検証を受け、工場内の他のシステムから完全に分離。さらに、ロシアから搬入されるガドリニウム燃料棒は全数について二重の改ざん検査を実施し、従業員に対してもスパイ・妨害工作対策の教育を定期的に行うことが義務付けられた。ロシア製VVERは現在、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ハンガリー、フィンランドで全19基が稼働、各国で国内電力供給の1/3~2/3を生産している。ロシアのウクライナ侵攻後、これら欧州の発電事業者は、燃料調達の代替サプライヤーへの切り替えを順次進めているが、ロシア製燃料はいまだ多くの原子炉で利用されている。2023年4月にはドイツの原子力発電所の段階的廃止が完了し、ドイツ国内市場はほぼ消滅。フラマトム/ANF社は2023年にTVEL社との間で締結したライセンス契約に基づき、リンゲン工場でVVER用燃料を製造し、欧州の既存原子力発電所に供給していく考え。フラマトム社によると、今回の認可によりANF社での雇用維持と拡大が保証され、VVER向け燃料集合体は2027年から供給可能だという。フラマトム社は、まずは欧州のVVERで実証済みの既存の燃料設計に基づく燃料製造・販売を実施する一方、100%欧州製のVVER用独自設計の燃料の開発、認定、認可取得、および製造も段階的に進めていく方針である。新規設計の認定には、規制当局の枠組みおよび通常の認証手続きに基づき、数年を要すると見込んでいる。
13 Aug 2026
682
スロバキアのモホフチェ原子力発電所4号機(VVER-440, 47.1万kWe)は8月6日、初臨界を達成した。同機では6月29日に燃料装荷が始まった。今後、様々な出力レベルでの試験を実施し、運転条件下における発電所の全システムの挙動を検証、送電網に接続する準備を整える。モホフチェ4号機が稼働を開始すれば、スロバキアの電力消費量の77.5%を原子力発電が賄うことになり、スロバキアは世界で最も原子力発電の割合が高い国の一つとなる。スロバキアでは現在、モホフチェ発電所で3基(1~3号機、VVER-440)、ボフニチェ発電所で2基(3~4号機、VVER-440)の計5基が運転中。両発電所の運転者はスロバキア電力で、2024年3月には石炭火力発電所をすべて閉鎖し、原子力発電、水力発電、太陽光発電による脱炭素電源100%を達成している。また、電力需要の増加を受け、政府はボフニチェ発電所5号機に最大出力120万kWeの新設を計画。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000の採用が有力視されており、今年4月末、米国、スロバキア、WE社間で基本設計(Front-End Engineering Design, FEED)調査の開始で合意されている。
12 Aug 2026
658
ギリシャの閣僚会議において7月30日、原子力発電の役割を評価し、政府に正式な勧告を行うための省庁間委員会の設置が閣議決定された。K. ミツォタキス首相は閣議決定に際し、原子力発電所の建設そのものではなく、同国が国際的な動向に後れを取らないよう早期に科学的調査を行う、明確な枠組みの策定の必要性を強調。多くの国が小型モジュール炉(SMR)に注目する中、省庁間委員会が中心となりあらゆる情報を把握し、精査する役割を担うと述べた。同首相は今年3月にパリでフランス政府と国際原子力機関(IAEA)が共催した第2回「原子力エネルギー・サミット」に出席し、ギリシャが特に小型モジュール炉(SMR)を同国のエネルギーミックスに組込むことを検討していくと表明した。電力需要の増大が予測される中、再生可能エネルギーの拡大に加え、長期的には予測可能なベースロード電源が必要であり、エネルギー自立、経済的競争力、脱炭素化の達成には、原子力が不可欠と強調。政府へ具体的な提言を行うハイレベルな閣僚委員会を設置すると述べた。さらにSMRの活用事例として、海運における原子力利用が海運業界の脱炭素化に寄与する解決策になると指摘し、世界有数の海運国として主導的役割を担っていく考えを示している。ギリシャでは1960年代~1970年代にかけて原子力導入の可能性が検討されたが、安価な褐炭の利用が可能であったため、原子力発電への転換には至らなかった。また、1986年のチョルノービリ事故は、同国で原子力発電利用に反対する気運を高め、近隣諸国の事故から影響を受けることへの懸念も強まった。現在は再生可能エネルギーに注力し、発電量の半分以上を風力および太陽光発電で賄い、電力の純輸入国から純輸出国となっている。一方で、AIを支えるデータセンターと電化の進行により、ギリシャは再生可能エネルギーだけに頼らないエネルギー戦略の再考を迫られており、今回、政府が原子力発電を正式に検討する決定をしたことは歴史的な転換点といえる。
12 Aug 2026
653
フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は8月4日、ポシバ社による地上の使用済み燃料封入プラントと地下の最終処分施設の操業許可申請について、安全要件を満たしているとする意見書を雇用経済省に提出した。STUKは、オルキルオトに整備された同施設が原子力法および関連政令で定める安全基準に適合しており、放射線・原子力安全の観点から操業許可の付与を妨げる要因はないと結論付けた。操業許可の最終的な判断は政府が下すが、事前にSTUKが処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相への意見書の提出が必要となる。STUKは操業許可の審査にあたり、施設の設計・建設状況、試験操業の結果に加え、長期安全評価や品質保証体制、運転組織・人員、放射線防護、核物質防護、緊急時対応など、多岐にわたる項目を総合的に審査。その結果、通常操業時だけでなく、施設閉鎖後の長期にわたる安全性についても十分な根拠が示されていると評価した。一方で、処分開始後も継続的な規制・監督を通じ、許認可条件の遵守状況や安全性が維持されることを確認していくこととしている。操業許可が交付されれば、最終処分施設は世界で初めて商業規模で使用済み燃料を地層処分する施設となる。STUKの安全評価を受け、ポシバ社のI. ポイコライネンCEOは、40年以上にわたって積み重ねてきた最終処分事業の成果が実を結びつつあると強調。さらに、世界で初めて商業規模で使用済み燃料を地層処分するプロジェクトであり、その技術や知見はフィンランド国内だけでなく、最終処分を進める各国にとっても重要な先例となるとし、2026年末までに操業を開始できる状態にしたいと述べた。政府は2015年11月にポシバ社に最終処分場の建設許可を発給。2016年12月に総工費約5億ユーロの建設工事が開始された。使用済み燃料は最終処分前に約40年間冷却後、地上の使用済み燃料封入プラントで二重構造のキャニスターに封入され、400〜450mの深さに建設された最終処分施設に恒久的に設置される。同社は2021年12月、最終処分場の2024年3月から2070年末までの操業許可を雇用経済省に申請。STUKは2022年5月に評価作業を開始した。雇用経済省はSTUKに対し、2023年末までに意見書を提出するよう求めていたが審査対象が複雑で、長期安全性などに関する追加確認や資料の精査に時間を要したため、STUKは提出期限を複数回にわたり延長していた。
10 Aug 2026
897
仏パリに拠点を置く先進炉開発企業のニュークレオ社は7月17日、同社が開発する鉛冷却高速炉(LFR)用MOX燃料製造施設の建設に向けた安全設計・対策の基本方針について、現段階において安全確保の考え方は概ね妥当とする仏原子力安全・放射線防護局(ASNR)の見解を明らかにした。ASNRは、ニュークレオ社が2024年12月に提出した原子力安全プログラムの詳細を審査した。特に多重の安全対策(深層防護)や安全側に立った決定論的アプローチの適用、十分に高い一般安全目標の設定、および類似施設の運転経験や過去の教訓の設計への反映などから、フランスの原子力安全規制の要求を満たす見通しがあると評価した。一方で、航空機墜落の影響評価、火災の進展分析、および封じ込め原則の遵守について追加検討を求め、ニュークレオ社は今後、ASNRのこれらの勧告を施設設計に組み込み、2027年末までに予定している設置許可申請(DAC)に向けて準備を進める方針である。同社は今回の評価がフランスにおけるMOX燃料製造施設の実現に向けた重要な規制上の節目と位置付けており、現在は同様の規制審査が進められているLFRの設計についても、ASNRの見解を待っている段階である。ニュークレオ社のLFRおよびMOX燃料製造施設プロジェクトについて、国家公開討論委員会(CNDP)は同プロジェクトが環境に重大な影響を及ぼし、国土整備、社会、経済の各分野において国家的な課題を有していることから公開討論の実施を決定し、今年4月~7月にかけて実施された。同社はステークホルダー関与段階を完了した初の革新炉開発事業者となり、今後、CNDPの結論を慎重に評価し、得られた知見をプロジェクトの継続的な開発と計画に反映させるとしている。同社が開発する第4世代の鉛冷却高速炉の原型炉「LFR-AS-30」(3万kWe)は、フランス中部のアンドル=エ=ロワール県で、フランス電力(EDF)が運転するシノン原子力発電所(PWR、95.4万kW×4基)に隣接したサイトに建設される計画。2033年末までに稼働開始を目指している。LFRの燃料となるMOX燃料製造施設については、フランス東部のオーブ県に建設する計画。同施設はモジュール施設として設計されており、必要に応じて生産能力を拡大、最終的には3つの生産ラインを含む可能性があり、最初のラインは2032年に稼働を予定している。さらに、ニュークレオ社は、米国市場においてもLFRおよびMOX燃料製造施設プロジェクトの実現を目指し、今年2月下旬、これら施設の将来的な許認可取得に向け、米原子力規制委員会(NRC)に事前申請の協議に係わる意向書を提出。以後、規制プロセスに本格的に着手し、商業炉LFR-AS-200(20万kWe)の導入に向け、今年7月中旬、規制上の不確実性を早期に減らして審査プロセスを円滑にするため、審査の方向性と課題解決を事前に整理する規制協議計画(REP)をNRCに提出した。続けて8月6日にはMOX燃料製造施設の建設に関するREPを提出した。同社は使用済み燃料から回収したプルトニウムと劣化ウランを再利用したMOX燃料を自社で製造し、それを鉛冷却高速炉で利用する「燃料サイクル一体型」の事業モデルを米仏両国で確立したい考え。
10 Aug 2026
626
中国国務院の常務会議は7月31日、4サイトで計8基の新設を承認した。同会議では、原子力安全の確保を大前提とし、世界最高水準の安全基準に沿った建設・運転、全分野にわたる安全管理を強化する必要性が強調された。今回承認された新設8基は、以下のとおり。■中国核工業集団(CNNC)浙江省 金七門(Jinqimen)原子力発電所(第Ⅱ期)3-4号機(「華龍一号2.0版」実証プロジェクト、各120.0万kW級)遼寧省 庄河(Zhuanghe)原子力発電所(第Ⅰ期)1-2号機(「華龍一号(HPR1000)」、各125.0万kWe)■中国広核集団(CGN)広東省 太平嶺(Taipingling)原子力発電所(第Ⅲ期)5-6号機(「華龍一号2.0版」実証プロジェクト、各120.0万kW級)■国家電力投資集団(SPIC)山東省 萊陽(Laiyang)原子力発電所(第Ⅰ期)1-2号機(「国和一号(CAP-1400)」、各154.3万kWe)「華龍一号」は、中国核工業集団(CNNC)と中国広核集団(CGN)が、40年以上にわたる原子力発電の研究開発、設計、製造、建設および運転経験を基盤として開発した、中国が知的財産権を有する第3世代PWR。今回、金七門第Ⅱ期と太平嶺第Ⅲ期にて採用が決定された「華龍一号2.0版」は、「華龍一号」の建設・運転経験から得られた知見を取り入れ、独自イノベーションと最適化を通じて開発された第3世代+(プラス)の先進型PWR。中国独自の設計基準と国産ソフトウェアを採用し、能動的・受動的安全システムを最適化。高度な自動制御技術やモジュール建設工法を取り入れ、工期を大幅に短縮、安全性、経済性を向上させ、より高い競争力を備えているという。
06 Aug 2026
807
中国の広東省で8月3日、中国広核集団(CGN)の太平嶺(Taipingling)原子力発電所2号機(PWR=華龍一号「HPR1000」、112.6万kWe)が営業運転を開始した。広東・香港・マカオ大湾区初となる「華龍一号」採用の原子力発電所である。華龍一号は、中国が独自開発した第3世代炉。太平嶺原子力発電所プロジェクトは、3期に分けて建設が進められ、最終的に6基の華龍一号を建設する計画。今年7月初めに送電を開始。同型の1号機は、今年4月に営業運転を開始している。海南省では8月1日、昌江(Changjiang)原子力発電第Ⅱ期プロジェクトとなる3号機(華龍一号、120.0万kWe)が送電を開始した。同機は2021年3月に着工。同プロジェクトでは同省初となる華龍一号を2基建設、年間最大180億kWhの発電が見込まれている。同発電所第Ⅱ期は、中国華能集団(CHNG)51%、中国核工業集団(CNNC)49%の共同出資で建設され、CHNG主導の華能海南昌江核電がプロジェクト所有者として、建設・運営管理を行う。運転中の第Ⅰ期の1-2号機は、PWR=CNP-600(65.0万kWe)を採用。CNNCが51%、CHNGが49%を出資し、CNNC主導の海南核電がプロジェクトを担う。
05 Aug 2026
687
スペイン原子力安全委員会(CSN)は7月16日、ポルトガル国境に近いエストレマドゥーラ州カセレス県にあるアルマラス原子力発電所(米ウェスチングハウス社製PWR, 100万kW級×2基)の運転認可更新について、2030年までの運転継続は条件付きで妥当とする肯定的評価を示した。スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo= CNAT)は2025年10月、環境移行・人口問題省(MITECO)に対し、同発電所の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請。1号機は1983年9月、2号機は1984年7月に営業運転を開始しており、現行の運転認可はそれぞれ2027年11月と2028年10月までとなっている。今回のCSNによる審査では、安全関連設備の経年劣化管理、使用済み燃料の管理計画、環境条件への適合性、定期安全審査で求められた改善措置の実施状況などを総合的に評価。認可期間中も安全関連に十分な要員の確保などの運転継続に必要な条件を満たし、安全確保を前提として両機の運転継続は可能と結論付け、同評価報告書をMITECOに送付した。CSNの判断は技術・安全面に関する勧告であり、MITECO が2030年6月までの運転延長の可否を決定する。CSNの評価を受け、スペインの原子力産業団体であるForo Nuclearは、アルマラス発電所の稼働継続は、電力供給の安定性を高め、気候目標の達成に寄与するとともに、系統運用の安定性を強化すると指摘している。アルマラス発電所は、イベルドローラ(53%)、エンデサ(36%)、ナチュルジー(11%)の3社が共同所有。同発電所および関連事業を含め約4,000人が就業し、燃料交換時期には約1,200人の雇用が追加されるなど、地域経済を支える重要な雇用基盤となっている。スペインでは現在、5サイト・計7基、合計出力計739.7万kWeが運転中で、全基が40年超の運転認可を取得済み。2025年の原子力シェアは約19%を占め、稼働率は約83%。一方で、政府の脱原子力政策のもと、現行計画では2027~2035年までに順次閉鎖が予定されており、2030年までに約320万kWに縮小し(現在運転中の7基中4基が閉鎖)、2035年には0となる見込み。
05 Aug 2026
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韓国のサムスン重工業(SHI)は7月21日、米国の原子力設計・エンジニアリング大手であるサージェント&ランディ(Sargent & Lundy, S&L)社と、浮揚型小型モジュール炉(FSMR)プラットフォームの開発に向けて、戦略的業務提携(MOU)を締結した。両社は特定の炉型に依存しない「技術中立型FSMR標準プラットフォーム」を共同開発し、多様なSMR技術を搭載可能な汎用性の高い設計を目指す。SHI社は2025年12月に韓国製の一体型PWRのSMR「SMART100」×2基を搭載したFSMRの基本設計承認(AiP)を米国船級協会(ABS)から取得後、FSMR標準プラットフォームの本格的な開発に着手。同FSMRは、原子炉と発電設備の配置に区画設計方式を適用したのが特徴で、SMRが配置された区画だけ設計変更し、多用なSMRの搭載が可能。まだ多くのSMRの実用化が不透明な中、特定の炉型に依存しないために商業的に有利になると見込む。今回の提携により、SHI社の海洋プラントのEPC(設計・調達・建設)能力と、S&L社の原子力設計・エンジニアリングの知見を組合わせ、標準プラント設計、許認可取得支援、建設計画、海上展開戦略など、商用化に向けた主要段階全般で協力し、米国の海上原子力発電市場をターゲットに、早期実用化を図る方針だ。また両社は、進化する国際的および米国の規制枠組みに沿って、FSMRの技術的成熟度を高め、世界中の発電事業者や顧客に、様々な炉型の統合が可能な、柔軟な選択肢を提供していきたい考え。AIデータセンターの拡大などによる電力需要の爆発的な増加を背景に、陸上での発電所の立地確保や送電網への接続に困難な沿岸部や島しょ地域向けの有効なエネルギーインフラ需要に応えたいとしている。
04 Aug 2026
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チェコ電力(ČEZ)は7月14日、テメリン原子力発電所1-2号機(ロシア製PWR=VVER-1000、各108.6万kWe)の運転期間を80年とする運転期間延長に向けた、大規模な設備更新と近代化作業を実施することを明らかにした。タービン発電機の更新、計装制御(I&C)システムの近代化、大型機器の保守を行うための新たなメンテナンス棟の建設、冷却水配管の更新などが予定されている。これにより、同1-2号機のそれぞれ2080年と2082年までの運転を目指す。1985年から1987年にかけて順次運転を開始したドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基、各51.2万kWe)においても80年の長期運転に向けた取組みが進められている。両発電所の運転による原子力シェアは、約4割を占める。ČEZは運転開始当初、両発電所を60年間運転する計画であったが、同社が数年間取り組んできた経済的・技術的分析に基づき、20年の運転期間延長に向けた作業の実施を決定した。ドコバニ発電所では、タービン建屋の主要設備の更新、配電盤や各種バルブの更新に加え、テメリン発電所と同様に、制御・安全システムの近代化が段階的に進められる。同社のD. ベネシュCEOは、「世界では80年運転がトレンドになりつつある。機器の状態や運用の安全性が定期的に評価される限り、現実的な対応である」との考えを示した。両発電所の長期運転の前提として、原子炉圧力容器や主要構造物などの交換が困難な設備の健全性を非破壊検査や材料劣化評価などにより定期的に確認。ČEZは安全性を最優先に、技術的・経済的条件を継続的に検証しながら作業を進める方針である。同社は両発電所での近代化と安全性強化作業に年間70億コルナ(約525億円)を投じ、雇用機会の増加、チェコ企業の長期的な受注と将来的な輸出機会の拡大に期待を寄せている。チェコの原子力発電所には法令上の運転年数の上限はなく、主要設備の技術的な状態が重要な基準となる。運転延長には、事業者が10年ごとに実施する定期的な安全評価を通じて設備の健全性や安全要件への適合性、十分な人的・財政的資源を有することを証明する必要がある。チェコの規制当局である国家原子力安全局(SÚJB)が、事業者による評価について厳格に審査を実施する。■SMR建設向け 追加2サイトを開発へČEZは7月21日、チェコ政府および英ロールス・ロイスSMR社と、小型モジュール炉(SMR)の追加建設サイトの開発に向けて覚書を締結した。現在、テメリン・サイトに隣接して建設するSMRプロジェクトの初期エンジニアリング作業が進行中であるが、これに加え、同国北東部のジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)および北西部のトゥシミツェ(Tušimice)にある石炭火力発電所の跡地を想定している。これら3サイトで最大6基(総出力約300万kWe)のロールス・ロイス社製SMR(PWR, 47万kWe)を建設し、電力供給に加え地域熱供給にも活用する計画である。ČEZは2024年10月にロールス・ロイスSMR社の株式約20%を取得して戦略的パートナーとなっており、初号機は2030年代後半にテメリン・サイトに隣接して建設予定。
04 Aug 2026
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欧州を襲う熱波の影響で、東欧全域でドナウ川の水位が急激に低下している。歴史的な低水準となった同河川の水位低下により十分な冷却水用の水を確保できず、ハンガリーとルーマニアの原子力発電所が停止や出力制限に至った。ドナウ川はドイツ南部から黒海に注ぐ国際河川。欧州ではボルガ川に次いで2番目に長く、川沿いの原子力発電所の冷却用水に利用されている。ハンガリーの首都ブダペストの南約125キロメートルに位置するパクシュ原子力発電所(ロシア製PWR=VVER-440、各50万kWe級×4基構成)は、同国唯一の原子力発電所。1983~87年に営業運転を開始し、同国の総発電電力量の約5割を供給している。同発電所は7月30日、2号機の出力を50%に制限。翌31日、P. マジャル首相は同発電所で記者会見し、「来週半ばには水位が非常に低下し、エネルギー危機の状況が生じる可能性がある」と述べた。同発電所の運転史上、初めて全面停止が必要となる見込みであるとして、国民や大口電力需要者に対して電力消費の抑制を呼びかけた。一方で、原子力安全にかかわる緊急事態は存在しないとも強調。当面は、大口電力需要者の消費抑制や一般家庭や公共部門の節約に加え、電力輸入で不足分を補う考えだ。パクシュ発電所によると、7月27日には同1号機の出力を50%に制限、8月1日には停止。7月28日には同3号機の出力を50%に制限、翌29日には停止、同31日には4号機の出力を50%に制限、8月2日に停止した。現在、2号機だけが出力を下げて運転している状態。温排水による過度の水温上昇から川の生態系を保護する規制に従い、6月末から一部の炉で出力制限して運転していたが、7月中旬には解除され、定格出力で運転が再開されていた。今回の措置の背景には、川底の土砂流出や浚渫により川床が深くなったことに加え、記録的な熱波と少雨に伴う流量の低下がある。水位が低下すると、取水ポンプの吸込口が水面より高くなり、取水できない。一方で、同発電所では、吸込配管をより深い位置へ移設するための技術的対応を開始しており、数年以内には現在よりさらに低い水位でも運転を継続できるようになると説明している。また、原子炉停止時の冷却には4基で最大2.5㎥/秒、運転時には100㎥/秒の水量が必要とされるが、水位がさらに極端に低下した場合でも、複数台の非常用ポンプの利用により、停止中の冷却状態を維持するために必要な水量は常に確保できるとしている。下流にあるルーマニアでは、首都ブカレストの東160キロメートルに位置するチェルナボーダ原子力発電所(CANDU6, 70万kW級×2基)の1号機が、ドナウ川の流量低下を受け、冷却ポンプを保護する予防的措置から7月28日に運転を停止した。2号機は水文予測と技術的パラメータの評価後、運転を継続している。ブルガリアのコズロドイ原子力発電所5-6号機(VVER-1000, 各104.0万kWe)もドナウ川から取水するが、取水ポンプ場が川岸を掘り込んで造られた取水池に設置され、川の水位が低い場合でも安定した稼働を確保。さらに、ルーマニア・セルビアが共同管理するダムの放流調整を受けて発電所付近の水位を維持し、運転を継続する方針である。今夏の熱波はフランスやスイスの原子力発電所の運転にも影響を及ぼしており、6月下旬の熱波到来以降、運転停止や出力制限が実施されている。温排水による河川の水温上昇を防ぐ環境規制に従い、フランスではガロンヌ川沿いのゴルフェッシュ2号機(PWR, 136.3万kWe)、ローヌ川沿いのビュジェイ2号機(PWR, 94.5万kWe)、ムーズ川沿いのショーB-1, B-2(PWR, 各156.0万kWe)が、スイスではアーレ川沿いのベツナウ1-2号機(PWR, 各38.0万kWe)が運転停止に至った。
03 Aug 2026
2029
米エネルギー省(DOE)は7月28日、国内の原子燃料サイクルの強化・近代化を目的とする「原子力ライフサイクル・イノベーション・キャンパス(Nuclear Lifecycle Innovation Campuses)」の候補地として、ユタ州、テネシー州、オクラホマ州、ルイジアナ州、アイダホ州の5州を選定したと発表した。同5州と覚書を締結し、ホストサイトとしての可能性を引き続き検討する。今回の決定は、DOEが今年1月、燃料サプライチェーンの強化、燃料サイクル全体の刷新を目的に、同キャンパスの誘致に関心を持つ全米の各州を対象に実施した情報提供要請(RFI)の結果を受けたもの。各州は2026年4月までに構想を提出。その中で、誘致を希望する活動のほか、労働力開発、インフラ投資、経済多様化、技術リーダーシップなどの推進に向けた方策について提示した。全米26州から28件の応募があり、DOEは今後、誘致を進めると選択した州と本格的な実施段階に向けたホスティング契約を締結予定。キャンパスは、燃料製造、濃縮、使用済み燃料の再処理、およびその最終処分を含む、原子燃料サイクルの活動を支援するように設計。州が誘致する活動や地域の能力に応じて、先進炉の導入、発電設備、高度製造拠点、データセンターの併設も想定されている。DOEは、1拠点当たり最大500億ドル(約7.8兆円)の民間投資を呼び込み、州・地方税収約100億ドル(約1.6兆円)、約2.5万人の雇用創出につながる可能性があると指摘している。
03 Aug 2026
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