キーワード:ポーランド
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ポーランドの原子力開発プログラムに米国が協力
米エネルギー省(DOE)は10月19日、ポーランドの民生用原子力発電開発プログラムに協力するため、同省のD.ブルイエット長官が両国の政府間協力協定に署名したと発表した。この署名は同日、ブルイエット長官がポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官と協議した後に行われたもので、両国がエネルギー関係で30年間という長期の協定を結ぶのは初めてとなる。調印された文書は今後ポーランドのワルシャワに送られ、今週後半にもナイムスキ特任長官側が署名、双方が発効要件すべてを満たしたと確認する外交文書を交わした後、正式発効する。ポーランドの原子力発電開発プログラムに対する米国の協力は、今年6月にポーランドのA.ドゥダ大統領がホワイトハウスを訪問した際、ポーランドによる米国産LNGの輸入拡大などとともにD.トランプ大統領との共同声明に盛り込まれていた。同協定では今後18か月以上にわたり、ポーランドの原子力発電プログラムを実行に移す方策や必要となる資金調達方法について、両国が協力して報告書を作成すると規定。この報告書は、米国が今後原子力発電所の建設パートナーとして長期にわたってポーランドのプログラムに関与し、ポーランド政府が国内で原子力発電所の建設加速に向け最終判断を下す際の基盤となる予定である。同協定ではまた、関係企業への支援や規制、研究開発、人材訓練などで政府が主導する両国間の協力分野を特定。欧州でのプロジェクト等に共同で協力していくため、サプライチェーンの構築や原子力に対する国民の意識を高めることなどが明記された。DOEの発表によると、D.トランプ大統領はポーランド国民に対してエネルギーの供給保証を約束。「ポーランドやその近隣諸国が、(ロシアのような)唯一の供給国からエネルギーを人質に取られることが二度とないよう、代替エネルギー源の利用を保証する」と明言した。今回の協定は大統領のこの約束を果たすためのものであり、具体的にはエネルギー関係でポーランドとの戦略的パートナーシップを強化し、ポーランドのエネルギー・ミックスを多様化、高圧的な供給国に対するポーランドの依存度を下げるとしている。ポーランドでは今月初旬、複数年にわたる同国の改定版原子力開発プログラムを内閣が承認しており、第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWRを600万~900万kW分、建設することを確認。同プログラムを提出した気候・環境省のM.クルティカ大臣は「2033年に初号機を運転開始した後は、2~3年毎に後続の原子炉を起動していき2043年までに6基の建設を終えたい」と述べていた。DOEのブルイエット長官は今回、「ポーランドが国家安全保障と民主主義的主権を維持していく際、米国はともに協力する」と強調。エネルギーの供給保証で重要な点は、燃料やその調達源、供給ルートを多様化することだとトランプ政権は信じており、原子力はポーランド国民にクリーンで信頼性の高い電力を提供するだけでなく、エネルギーの多様化と供給保証の促進をも約束すると述べた。次世代の原子力技術は、米国が欧州その他の地域の同盟国とエネルギー供給保証について協議する上で、欠くべからざるものだと表明している。ポーランドのナイムスキ特任長官も、今回の協定はクリーン・エネルギーのみならず、その供給保証も視野に入れたものであり、ポーランドは一層幅広い状況の中で今回の戦略的協力を捉えていると指摘。同協定は「地政学的安全保障と長期的な経済成長、技術の進展、およびポーランドにおける新たな産業部門の開発につながる」としている。(参照資料:DOE、ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Oct 2020
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ポーランド内閣、原子力開発プログラムの最新版を承認
ポーランドの気候・環境省は10月9日、同国における複数年の原子力開発プログラムを内閣が承認したと発表した。それによると、原子力の導入はポーランドがCO2を出さない安定したエネルギー源を獲得するための道筋を付けるという意味で重要なもの。今回、第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWRを600万kW~900万kW分、建設することを確認した気候・環境省の決議が正式に認められ、最新の原子力開発プログラムは近日中に官報に掲載されることになった。同省のM.クルティカ大臣は発表の中で、「原子力発電によってポーランドは国内のエネルギー供給を確実に保証できる」と表明。世界原子力協会(WNA)が先月に開催したパネル討論会では、「2033年に初号機の運転を開始した後は2~3年毎に後続の原子炉を起動、2043年までに原子力開発プログラムの6基すべての建設を終える」と述べており、CO2を排出しない強靱な電力供給システムを作り上げる方針を明らかにしていた。同国の原子力発電開発利用では主に3つの目標の達成を目指すとしており、それらは①「エネルギーの供給保証」、②「気候変動対策と環境の保全」および③「経済性」である。①の説明として気候・環境省は、「供給保証を強化するため、原子力でエネルギー源となる燃料の多様化を図るとともに、CO2を大量に放出する古い石炭火力発電所を高効率のものに置き換える」としている。②については、「発電部門から大気中に放出される温室効果ガスの量を原子力で劇的に削減し、環境保全面のコストを抑える」と説明。仏国やスウェーデン、カナダのオンタリオ州など、原子力発電開発が進んだ大規模産業国/地域の例を挙げ、「これらの国の原子力発電は、発電部門の効率的かつ早急な脱炭素化に貢献している」と指摘した。同省はまた、③の説明として「原子力は顧客のエネルギー料金が増加するのを抑えるだけでなく、削減することさえ可能だ」と強調。投資家関係やシステム、送電網、地元住民の健康面や環境保全など原子力発電に関わるすべてのコストを考慮した場合、最も廉価な電源になるとしたほか、減価償却後も長期にわたって利用可能であるという事実に言及した。こうした背景から、原子力は個人顧客と企業顧客のどちらにも適しており、製鋼業や化学産業といったエネルギー多消費産業の発展には特に欠かせないとの認識を示している。同省はさらに、世界では長年にわたって原子力発電所の運転が続けられている点から、原子力設備への投資は重要だと説明。例えば、1つの原子力技術に絞ったプロジェクトへの投資モデルではスケールメリットを享受できるほか、財務省が引き続き原子力開発プログラムの実施を監督することが可能だとした。このほか同省は、国有企業が実施する政府プロジェクトでは、安全性や運転経験などで広範な実績のある100万kW級PWRの利用が可能になると指摘。建設サイトについては、2014年の原子力開発プログラムで特定したのと全く同じ地点(北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区とジャルノビエツ地区)を明記したと説明している。(参照資料:ポーランド気候・環境省(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 12 Oct 2020
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ポーランド:導入計画中の原子炉6基のうち2033年に初号機の運転開始
英国ロンドンに本拠地を置く世界原子力協会(WNA)は9月9日から11日まで、原子力関係の政府高官や原子力産業界の幹部を招いたパネル討論会「Strategic eForum」をネット上で開催しており、その中でポーランドのM.クルティカ気候相が発表した「2040年に向けたエネルギー政策案(PEP2040)」の概要を9日付けで公表した。同国では建設・導入を計画している原子炉6基(合計出力600万~900万kW)のうち、初号機については2033年の運転開始を目指すとしている。同相の発表によると、ポーランドは原子炉6基によって国内電力システムの基盤を強化するとともに、エネルギー部門からのCO2排出量を削減。これと同時に、石炭火力など効率性の低い発電所を高効率のものと取り換える考えで、2040年までにCO2を排出しない強靭な電力供給システムを作り上げる方針である。原子力の導入初号機では出力100万~160万kWを想定しており、2033年に同炉が運転開始した後は2~3年毎に後続の原子炉を起動、2043年までに原子力プログラム中の6基すべての建設を終える。同相の考えでは2043年という区切りは、電力需要量の増加にともない電力不足が発生することを考慮したもの。原子力発電を導入すれば、大気汚染の原因となるCO2を排出せずに安定したエネルギー供給が可能になるほか、エネルギー供給構造を合理的なコストで多様化することも可能だと述べた。同相はまた、近年の原子力産業界では第3世代と第3世代+(プラス)の原子炉技術が主流であり、そうした技術と国際的に厳しい基準で発電所の安全性を確保していると指摘。同相としては原子力プログラムの大半に国内企業を参加させる方針だが、その前に関係する法の整備や資金調達モデルの決定が必要になるほか、原子力発電所の建設サイトを選定し、また低・中レベル廃棄物の処分場も操業させねばならない。さらには、発電所の建設や運転、また監督のために必要な人材の養成活動も実施すると表明した。同相はこのほか、大型軽水炉の建設計画とは別に、ポーランドでは高温ガス炉を導入する計画があると説明。高温ガス炉は将来的に、化学産業などの産業用熱供給源として使われる可能性が高いとしている。ポーランドでは石炭や褐炭など化石燃料資源が豊富だが、欧州連合(EU)がCO2排出量の削減目標を設定したこともあり、石油と天然ガスの輸入量を削減するとともにエネルギー源の多様化を推進中。チェルノブイリ事故によって一度は頓挫した原子力発電導入計画も復活しており、2009年に原子力を導入するための開発ロードマップを作成した。その後、2014年に計画全体を4~5年先送りする改訂を行った。この段階で合計600万kWの原子力発電設備建設を目標に掲げていたが、2015年に発足した政権は経費が掛かりすぎるとして見直しを行った模様である。2017年以降は現首相のM.モラビエツキ氏が政権を握っており、原子力導入計画を維持した上で新たなエネルギー政策を模索している。クルティカ気候相が今回発表した「PEP2040」はそうしたエネルギー政策案の最新版で、①クリーン・エネルギーへの移行、②CO2排出量ゼロのエネルギー供給システム、③大気汚染の改善、が主な柱。ポーランド経済は現在、天候に左右されない電源も含め確実な発電技術を必要としており、今後20年間で新たなエネルギー供給システムを構築しなければならない。同相は「顧客にエネルギーを供給する際の安定性と持続性は、そのための投資を引き寄せる不可欠の要素だ」と明言。2040年時点で国内発電設備の半分以上を無炭素電源にする予定だが、それに至る過程のなかで洋上風力発電の導入と原子力発電所の起動は重要な役割を担う。これら2つの分野こそ、ポーランドがこれから構築する新しい戦略的産業であると同相は強調している。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Sep 2020
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ポーランドの原子力導入計画、米国との協力を確認
米エネルギー省(DOE)は2月26日、ポーランド政府の代表とエネルギーに関する第三回目の戦略的対話をワシントンで開催した。同省のD.ブルイエット長官はこの中で、ポーランドのエネルギー供給保証強化に向けた協力方策として、クリーンで信頼性が高く、送電網の一時的な機能不全からの回復力(レジリエンス)も高い原子力発電所をポーランドで建設することに、米国の原子力産業界が引き続き関心を抱いていると表明した。この認識はポーランド代表側も確認・共有しており、この対話に出席したポーランドのP.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官は自身のホームページで、「ポーランドとしてはCO2を排出しない原子力は国内のエネルギー供給ミックスにおける重要要素になると考えている」と説明。これは地球温暖化防止のための欧州連合(EU)目標とも合致していると述べた。同特任長官はまた、リンク付けした現地報道記事の中で「わが国との長期的な協力を望む数社の潜在的パートナーが米国におり、我々は原子力発電所の建設で現実的な解決策に近づきつつある」と指摘。大型原子力発電所の導入を目指して早ければ数か月以内、遅くとも一年ほどで建設パートナーを選定すると伝えている。ポーランドでは石炭や褐炭といった化石燃料資源が豊富である。しかし、EUが2020年までのエネルギー政策目標の中でCO2排出量を2005年比で14%削減などを設定したため、ロシアからの石油と天然ガスの輸入量削減とエネルギー源の多様化を推進中。チェルノブイリ原子力発電所事故により、一度は頓挫した原子力発電の導入計画も進めている。ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官によると、ポーランドの現在の原子力導入プログラムでは、2040年から2045年頃に出力100万kW以上の大型炉を少なくとも6基、合計設備容量で900万kW分を約20年間に3段階に分けて建設する計画。これらの原子炉によって安全かつ安定的なエネルギーを20数%程度、60年にわたって確保する方針であり、いずれ同プログラムのパートナー企業を正式に招聘すると述べた。両国のエネルギーに関する戦略的対話は、2018年9月に米国のD.トランプ大統領とポーランドのA.ドゥダ大統領が定期的に開催することで合意した。これを受けてDOEのR.ペリー長官(当時)は同年11月、ポーランドのK.トゥホジェフスキ・エネルギー相と会談し、この対話構想の下で民生用原子力協力に向けた作業グループの設置を決めるなど、先進的原子力技術を含めた両国間のエネルギー供給保証協力の強化で共同宣言に署名。その後、2019年中にすでに二回、戦略的対話を実施している。(参照資料:DOEの発表資料、ナイムスキ長官HP(ポーランド語)、同リンク付け記事(1)、(2)(ポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Mar 2020
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GEH社、ポーランドで「BWRX-300」の建設可能性を探るため現地企業と覚書
GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は 10月21日、ポーランドで同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設する可能性を探るため、同国最大の化学素材メーカー「シントス社(Synthos SA)」と協力していくことで合意し、了解覚書を締結したと発表した。シントス社は合成ゴムなどの製造で知られる大手企業で、CO2を排出しない発電技術による電力を需要に応じて適正価格で、信頼性の高い専用電源から得ることに関心を持っている。今回の覚書で両社は具体的に、「BWRX-300」の建設可能性調査をポーランドで共同実施することで合意。また、同国におけるエネルギー部門の近代化や現実性を踏まえた脱炭素化達成など、ポーランドが抱えるエネルギー問題への取組みでSMRが果たす役割に期待をかけるとしている。一方、ポーランド政府は昨年11月、公開協議に付した「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」(ドラフト版)の中で、2033年までに出力100万~150万kWの原子力発電初号機の運転を開始し、その後2043年まで2年毎に、追加で5基(合計出力や600万~900万kW)建設していくと発表。これらの原子力発電設備で、国内電力需要の約10%を賄うとしていた。GEH社の発表によると、「BWRX-300」は自然循環を活用した受動的安全システムなど、画期的な技術を採用した出力30万kWの軽水炉型SMR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっており、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、開発設計の全段階を通じてコストが目標内に収まるよう管理するアプローチを採ったという。これにより同設計は、コンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギー、その他の発電技術に対しても、コスト面で競争力があるとGEH社は強調。1MWあたりの資本コストも、既存の大型炉やその他の軽水炉型SMRとの比較で最大60%削減するとしており、このようなSMR技術に注目し、ポーランドでクリーン・エネルギーの利用オプションも提唱しているシントス社への期待を述べた。シントス社側も、「クリーンなSMRを活用することで石炭火力から脱却する機会が増し、産業界やポーランド全体に良い影響が出る」とコメントしている。なお、GEH社は今年5月、同設計についてカナダで申請していた許認可申請前ベンダー審査が始まったと発表した。今月初旬には、バルト三国の1つであるエストニアでも同SMRが建設可能かを調査するため、同国のエネルギー企業フェルミ・エネルギア社と協力覚書を締結している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Oct 2019
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原子力機構とポーランド国立原研、高温ガス炉技術協力の具体化へ
日本原子力研究開発機構は9月20日、ポーランド国立原子力研究センター(NBBJ)と、「高温ガス炉技術分野における研究開発協力のための実施取決め」に署名した。 両者は2017年、日本・ポーランド外相間で合意した戦略的パートナーシップの行動計画に基づき、「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」に署名しており、これまでも高温ガス炉分野において、技術会合や人材育成などの協力を進めてきた。このほど署名された実施取決めにより、高温ガス炉の高度化シミュレーションのための設計研究、燃料・材料研究、原子力熱利用の安全研究など、さらに協力を具体化させていく。 また、原子力機構は、高温工学試験研究炉「HTTR」(現在、新規制基準適合性審査のため停止中)の建設・運転を通じて培った国産高温ガス炉技術の高度化、国際標準化を図り、ポーランドとの技術協力でさらなる国際展開の強化を目指す。 本件に関し記者団への説明に当たった同機構高速炉・新型炉研究開発部門次長の西原哲夫氏は、今回の実施取決めによる協力では、データの共有など、ソフト面が主となるとしており、今後に向けて「ものづくりの段階でメーカーの参画にもつなげていければ」と期待を寄せている。 電力供給の8割以上を石炭に依存するポーランドでは現在、その依存度を下げることが喫緊の課題となっており、石炭火力リプレースの候補とされる高温ガス炉導入の意義として、天然ガス輸入依存からの脱却、CO2排出の削減、競争可能なコストでの産業への熱供給などがあげられている。 高温ガス炉導入に関わる諮問委員会の報告書によると、現在設計段階にある研究炉(熱出力1万kW)に続き、商用炉(同16.5万kW)の予備設計も開始されつつあり、2026~31年の初号機建設を目指している。
- 24 Sep 2019
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