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カナダとポーランドが原子力協力協定を締結
カナダのJ. トルドー首相は1月28日、ポーランドのワルシャワを訪問し、ポーランドのD. トゥスク首相と原子力協力協定に調印した。カナダ企業が原子力技術、燃料、サービスを提供することで、ポーランドのクリーンエネルギー部門を支援し、石炭火力発電の段階的廃止を加速させ、地域全体のエネルギー安全保障を強化することが期待されている。また、両国に高レベルの雇用機会を創出するとともに、原子力協力、不拡散、安全、安全保障に対する両国共通のコミットメント強化にも貢献するとしている。2023年2月、両国の原子力規制機関である、カナダ原子力安全委員会とポーランド国家原子力機関は、小型モジュール炉(SMR)に関する協力覚書を締結し、SMR技術に関連するベストプラクティスと技術レビューに関する交流を深める道を開いた。ポーランドはまだ商業規模での原子力発電を行っていないが、大型炉とSMRの両方を建設する計画である。カナダ輸出開発公社は2024年12月、ポーランド北部ポモージェ県のルビアトボ–コパリノに建設を予定する同国初の原子力発電所のプロジェクト向けに、カナダのサプライヤーによる製品およびサービスの提供への支援を目的とした、最大14.5億米ドルの融資可能性の意向書を発行した。加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は同社のダーリントン・サイトで、2029年末までにGE日立製のSMR「BWRX-300」の営業運転の開始を計画している。ポーランドもBWRX-300の導入を計画しており、カナダの状況を注視している。カナダ原子力協会(CNA)のJ. クリスティディスCEOは、「原子力エネルギーは、世界のエネルギー安全保障に対するカナダのコミットメントの礎。本協定締結は、カナダが経済成長とイノベーションを促進しながら、強靭で低炭素なエネルギーシステムを構築するために同盟国をどのように支援できるかを例示するもの」と述べ、カナダの原子力技術の輸出を促進し、両国における高レベルの雇用創出と原子力産業へのさらなる投資の可能性に期待を寄せた。
- 13 Feb 2025
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ポーランド 原子力発電所の完成に遅れ
ポーランド産業省のW. ヴロースナ次官兼戦略エネルギー・インフラ担当全権代表は12月11日、ワルシャワで記者会見を行い、ポーランドの第1原子力発電所の運転開始について、当初の予定より3年遅れ、初号機が2036年の営業運転開始を想定していることを明らかにした。同会見には、同省のP. ガイダ原子力局長も同席。2023年12月の政権交代を機に、これまで気候・環境省の所掌にあった原子力政策・開発分野が産業省に移管された。会見でヴロースナ次官は、2020年に閣議決定された原子力発電プログラム(PPEJ)の更新作業が最終段階にあり、更新版では、ポーランド初の原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を想定していると述べた。また、第2原子力発電所の建設計画は継続しており、競争入札によってパートナーを選定すると強調した。また、数週間以内に、欧州委員会(EC)による第1原子力発電所への国家補助の承認手続きが開始されるだろうと指摘。ポーランドは今年9月、ECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知していた。これに対してECは12月18日、ポーランドの計画がEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査の開始を明らかにした。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。ガイダ原子力局長は、第2原子力発電所の計画について、現在、旧石炭火力発電所の4サイトを建設候補地として検討していることを明らかにした。システム要件に合致し、閉鎖後の投資も呼び込みやすいため、だという。同原子力局長はまた、今年11月に産業省の委託により実施された原子力に対する国民の世論調査の結果について、回答者の92.5%がポーランドでの原子力発電所の建設を支持し、回答者の79.6%が原子力発電所が自分の居住地の近くに建設されることに同意していると言及。これは、2012年より毎年実施されている世論調査の中でも最高の数値を記録したという。現行のPPEJでは、総発電設備容量600万~900万kWeの、2サイトでの原子力発電所の建設を想定している。前政権は、第1原子力発電所のパートナーとして米国のウェスチングハウス(WE)社とベクテル社によるコンソーシアムを入札を経ずに指名した。第1原子力発電所(WE社製AP1000×3基、合計出力375万kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設が計画されている。第1原子力発電所の建設プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.3兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.3兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済取引(CfD)により、プロジェクトを支援するとしている。PEJによると今年12月に入ってから、第1原子力発電所のプロジェクト支援に向けて、カナダ輸出開発公社から最大14.5億米ドル(約60億ズロチ、約2,294億円)の融資可能性の意向書を受け取り、フランスの輸出信用機関のBpifranceや公共開発銀行であるSfilからも37.5億米ドル(約150億ズロチ、約5,736億円)もの融資への関心が示されたという。今年11月には、40億ズロチ(約1,530億円)規模の融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印。米輸出入銀行(US EXIM)も約700億ズロチ(約2.7兆円)相当の融資支援を実施することになっており、これまでにPEJが海外の融資機関から資金拠出の意向表明を受けた総額はおよそ950億ズロチ(約3.6兆円)になる。PEJは、機器供給国を中心とする、輸出ファシリテーターである各国の輸出信用機関と緊密な協力関係を築き、資金調達の構造における輸出信用機関のシェアを最大限に高めたい考えだ。
- 20 Dec 2024
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ポーランド企業 加企業とSMR導入に向けた調査を実施
ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は11月14日、ワルシャワで加ローレンティス・エナジー・パートナーズ社と、ポーランドにおける初の小型モジュール炉(SMR)の開発と導入に向けて、予備安全分析報告書(Preliminary Safety Analysis Report:PSAR) の作成支援に係る契約を締結した。契約額は最大4,000万加ドル(約44億円)。今回の契約は、OSGE社がポーランドで導入を検討している米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設の安全性の実証が目的。PSARは、ポーランドの原子力規制当局である国家原子力機関(PAA)が、建設許可申請の一環で要求する包括的な安全性分析報告書で、PSARの作成は許認可手続きにおいて最重要作業の一つである。PSARでは、提案されている原子炉のシステム、構造、機器の一般的な設計側面と詳細な説明の両方を提示。建設準備と管理体制、環境や地域の状況、核燃料管理を含む発電所の運転期間のほか、廃炉プロセスの説明も含んでいる。ローレンティス社は、環境条件、サイト特性、施設の建設、運転、将来の廃止措置に関する資料作成を担当。OSGE社は、BWRX-300発電所の所有者兼運転者として、分析のためのデータの準備や進行中の作業のマネジメントを担当する。今後2年をかけてPSARを作成し、2026年半ばに完成する予定。OSGE社はまた、GEH社からもPSAR作成の支援を受け、GEH社はBWRX-300の設計者として、技術面および安全関連の分析を担当する。OSGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、大手化学素材メーカーであるシントス社(Synthos SA)のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資し、2022年に設立された合弁企業。2023年12月に気候環境省から、国内6地点における合計24基のBWRX-300建設計画へ原則決定が発給され、OSGE社は現在、許認可手続きの準備を進めている。一方、ローレンティス社は、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社の100%子会社で、プロジェクト管理、許認可、運転準備、運転員支援などで、60年の経験とノウハウを有する。OSGE社に対しては2022年以降、SMRの導入に向けた初期的な計画立案などを支援しており、OPG社のダーリントン・サイトにおけるBWRX-300建設プロジェクト支援の実地経験を活用できるのが強み。OPG社は、2029年にBWRX-300初号機の稼働を計画している。OSGE社のR. カスプロウ会長は、「今回締結された契約は、これまでの一連の契約を締め括るもの。建設許可申請の重要要素であるPSARの作成にあたり、OPG社の一部であるローレンティス社との契約により、カナダの知識とノウハウを最大限に活用できる」と語り、両社間の協力への期待を滲ませた。「BWRX-300」は電気出力30万kWの次世代原子炉のBWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
- 22 Nov 2024
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米開発銀行 ポーランド初の原子力発電所への融資に関心表明
ポーランド国営PEJは11月12日、ポーランド初となる原子力発電所の建設プロジェクトへの融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印した。融資額は、40億ズロチ(約1,515億円)規模。PEJは、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転の実施主体で、国営の特別目的会社(SPV)。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000を3基、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する。初号機は2033年に運転開始予定だ。DFCは、低所得国および中低所得国のプロジェクトを優先的に支援する米国の政府系開発金融機関。民間セクターと提携し、エネルギー、医療、重要インフラ、テクノロジーなど、開発途上国が直面する最重要課題の解決策に金融支援を実施している。PEJは、DFCの関与が米政府による本プロジェクトへの関心を裏付けるものであり、ポーランドをはじめ、世界のエネルギー移行に関心を持つ米国市場の主要機関とPEJとの数か月間にわたる協議の結果であるとの考えを示す。DFCは、中・東欧全体の地域エネルギー安全保障の強化に取組んでおり、今回のLOI締結をロシア産エネルギーへの依存を削減するとともに、経済成長の強化、雇用の創出に向けた一歩であると評価する。米WE社と米ベクテル社はコンソーシアムを結成し、PEJによる原子力発電所の建設プロジェクトに協力している。米輸出入銀行(US EXIM)もWE社との数年にわたる交渉の末、同プロジェクトに対して、約700億ズロチ(約2.6兆円)相当の融資支援を実施することになっている。
- 20 Nov 2024
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経産省 ポーランドの原子力開発に向け政府間覚書
日本とポーランドにおける原子力分野での協力が進展している。経済産業省の竹内真二大臣政務官は11月3~9日、エネルギー関連企業など、計23社とともに、ルーマニアおよびポーランドを訪問。7日のポーランド訪問では、マジェナ・チャルネツカ産業相と会談し、原子力分野を中心に、両国間の協力可能性について議論した上で、覚書への署名がなされた。〈経産省発表は こちら〉会談には日本企業も同席。2040年までのポーランドのエネルギー政策に従い、同国におけるSMR(小型モジュール炉)を含む原子炉の開発・配備を通じて、「強固で強靭な原子力サプライチェーンを構築する」など、相互にとって有益な協力分野を開拓していく。ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が深刻な問題だ。そのため、エネルギーセキュリティ確保と環境保全の両立に向けて、同国政府は、原子力発電の導入を目指し、2043年までに大型軽水炉を6基導入する計画。2022年11月には、大型炉の米国WE社製AP1000を3基建設することを正式決定。また、産業振興も視野にSMR導入を目指す動きもみられている。既に2024年5月、東芝エネルギーシステムズと地元企業との間で、蒸気タービンや発電機の供給協業で合意に至っており、民間企業レベルでの協力も進みつつある。今回の覚書のもと、日本とポーランドは、人材育成、理解促進、原子力安全確保の分野で、情報交換、セミナー・ワークショップ、企業間マッチングなどの活動を実施。国際的基準・勧告に沿った放射性廃棄物管理・廃炉など、バックエンド対策も含めて、原子力発電導入に向けた理解活動に取り組んでいく。なお、日本によるポーランドへの原子力・放射線分野の協力は、エネルギー分野のみにとどまらず、これまでも、IAEAによる支援のもと、電子線加速器を利用した排煙脱硫や、その副産物として肥料生産も行われるなど、環境保全・食料安全保障の分野での実績も注目される。
- 12 Nov 2024
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ポーランド 原子力発電所建設準備に向け前進
ポーランドの国営PEJは8月28日、ポーランド初となる原子力発電所建設に向けた準備作業を、建設サイトの地元県知事に申請した。PEJは、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転の実施主体で、国営の特別目的会社(SPV)。米ウェスチングハウス(WE)社のAP1000を3基、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する。初号機は2033年に運転開始予定だ。準備作業の許可後、発電所の建設サイトでは、環境影響評価(EIA)で定められた条件に従い、植生の除去、植林、野鳥保護(巣箱設置)、測量作業、準備作業区域の柵設置などの準備作業を行う。PEJは今回、この作業許可申請と併せて、準備作業に係る環境影響の再評価報告書を提出した。報告書は、準備作業が環境に与え得る影響を分析したもので、2023年9月にポーランド環境保護総局(GDOŚ)がPEJに発給した、原子力発電所の建設・運転に関する環境決定の要件。準備作業は、約300 haのサイトで2段階に分けて行われ、実際の土木工事は、規制当局の国家原子力機関(PAA)およびポモージェ県知事が別途発行する建設許可の取得後に開始される。ポーランド政府は8月28日、2025年予算案で、46億ズロチ(約1,700億円)を原子力発電所の建設準備に割り当てると発表。また同月半ば、原子力発電所建設へのファイナンスに係る法案の中で、約600億ズロチ(約2.2兆円)を上限としたPEJへの資金供給計画について明らかにした。残りの資金は、機器供給国を中心とする外国輸出信用機関、米輸出入銀行(US EXIM)などから調達を計画している。
- 09 Sep 2024
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ポーランド SMR展開支援に向け北米企業と協業へ
ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は6月28日、米GE・日立ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)である「BWRX-300」(30万kW)のポーランドにおける展開支援に向け、「BWRX-300」のサプライチェーン・グループ3社と契約を締結した。今回契約を締結した3社は、アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン社)、建設大手エーコン(Aecon)社、GEH社で、OSGEはこれら3社と協業契約を締結、さらにアトキンス・リアリス社とエーコン社とは「BWRX-300」の建設分野に係る2つの枠組協定を結んだ。OSGE社は、ポーランドの建設・エンジニアリング企業にSMR建設に係る知識や技術が不足しているなか、経験豊富なカナダ企業のノウハウを活用していきたい考えだ。なお、エーコン社は、オンタリオ・パワー(OPG)社のダーリントン・サイトでの「BWRX-300」建設プロジェクトの建設を担当しており、さらにアトキンス・リアリス社とともに、現在OPG社とブルース・パワー社が保有するCANDUプラントでの大規模な改修工事も手がけている。今回の契約について、エーコン社のT. クロシャー原子力担当副社長は、エネルギー移行において、SMRの導入は重要な役割を果たすとし、「ポーランドにおけるクリーンで信頼できる安価な電力供給に貢献する」と今回の協働の意義を強調。一方、アトキンス・リアリス社のI. エドワーズ社長兼CEOは、世界の電力需要が2050年までに3倍に増加し、新たに1000基規模の原子炉市場が生まれると予測した上で、「大型原子炉だけでなくSMRが今後の新規建設の一画を担う」との見方を示した。ポーランドの大手化学素材メーカーとポーランド最大手の石油精製企業の合弁会社であるOSGE社は2023年4月、首都ワルシャワを除く国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設に関する原則決定(DIP)を気候環境省に申請。同省は同年12月、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは、原子力発電所建設計プロジェクトに対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが正式に認められたことを意味する。OSGE社は、2030年代初めにも「BWRX-300」の初号機を完成させたい考えで、今年に入って、ポーランド環境保護総局(GDOŚ)は同プロジェクトに関する環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示。これを受け同社は、ポーランド南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)地点での「BWRX-300」建設に向けた環境・立地調査を開始する。また、ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)は2023年5月、「BWRX-300」の安全評価に関する包括的な見解を長官名で公表し、同炉がポーランドの関係法に基づく安全要件に適合していることを確認した。「BWRX-300」は出力30万kWの次世代原子炉で、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
- 05 Jul 2024
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東芝ESS ポーランド初の原子力発電所に向け地元企業と合意
東芝エネルギーシステムズは5月30日、ポーランド初の原子力発電所向けの機器納入および保守に関し、地元企業2社と協業検討に合意した。今後、欧州現地法人の東芝インターナショナル・ヨーロッパ社とともに、蒸気タービンおよび発電機などの供給に向け、同国地元企業であるロックフィン社、エトスエナジー社の2社とそれぞれ、機器納入、保守に関する協業を検討していく。〈東芝発表資料は こちら〉ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が問題となっており、これまでもIAEAや日本政府・研究機関の協力で、浄化を行う加速器(電子線)を建設・運転するなど、対策を講じ、その副産物として肥料の生産にもつながってきた。2000年代に入ってからは、エネルギー安全保障の確保と石炭火力発電による環境負荷の低減のため、原子力発電の導入に向けた準備が進められ、同国政府は2022年11月に、国内初の原子力発電所を建設する決議を採択。エネルギー集約型の産業が中心のポーランドでは、昨今、小型モジュール炉(SMR)の導入を目指した動きも活発化している。今回の合意に際し、東芝ESSは、「建設・メンテナンスや、再稼働向け対策、福島第一原子力発電所の廃炉対策、廃止措置対策、燃料サイクル、さらには次世代炉・核融合の未来に向けたエネルギー開発など、幅広い事業領域に積極的に取り組んでいる」と、自社の原子力発電プラントに関する豊富な経験と技術力を強調。その上で、「グローバルでの電力の安定供給と環境負荷低減の両立に貢献していく」と、将来展望を述べている。東芝ESSではこれまでも、ポーランド初の原子力発電所の機器納入に向け、2022年に米国現地法人とともに、米国の建設会社であるベクテル社との協業で合意に達している。この他、最近の原子力・放射線分野での国際展開に関しては、2024年5月末に、韓国に納入した重粒子線治療装置の回転ガントリーによる治療が開始されており、同社の技術力発揮に注目が集まるところだ。
- 03 Jun 2024
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ポーランド 6地点の米社製SMR建設計画にDIP発給
ポーランドで米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は12月7日、国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設計画に、気候環境省が原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給したと発表した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりこれらのプロジェクトは国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今回の発表はOSGE社のR.カスプローCEOが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」の場で発表した。OSGE社は今年の4月中旬、数十の候補地点の中からSMRの建設サイトとして最も有力な7地点を選定。今回はこのうち、首都ワルシャワを除いた6地点─北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)とドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、タルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区─で「BWRX-300」の建設が認められた。同社はこれらのいずれかで2030年にも初号機の完成を目指しており、カスプローCEOは今回、「世界的に見てもポーランドはCO2の排出量が多いため、複数の『BWRX-300』で国内産業や暖房部門にエネルギーを安定供給しながらCO2排出量を実質ゼロ化し、ポーランド経済の脱炭素化を促していきたい」と述べた。OSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資して、2021年12月に設立した合弁事業体。同社は4月下旬、6地点の建設計画についてDIPの発給を気候環境省に申請した。同じ時期に、米ニュースケール・パワー社製SMRの建設計画でDIPを申請していた鉱業大手のKGHM銅採掘会社に対しては、気候環境省が今年7月にDIPを発給した。また、同じく7月に気候環境省は、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉(ウェスチングハウス社製AP1000)建設についてDIPを発給。11月には、同省はPGE社傘下のPGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa)社が同国中央部ポントヌフのコニン地区で計画している韓国製大型炉「APR1400」の建設プロジェクトに対しても、DIPを発給している。なお、OSGE社は11月9日、欧州諸国の石炭火力発電所をSMRに転換しクリーン・エネルギーへの移行を直接支援するという米国務省(DOS)の新しいイニシアチブ「プロジェクト・フェニックス」で、同社が支援対象に加えられたことを明らかにした。「プロジェクト・フェニックス」では同社のほかに、スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)とルーマニア国営原子力発電会社(SNN社)にも、SMR建設計画の実行可能性調査や技術支援等で資金が提供される予定である。(参照資料:OSGE社の発表資料(ポーランド語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Dec 2023
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ポーランド政府 ポントヌフの韓国製大型炉建設計画にDIP発給
ポーランドの気候環境省は11月24日、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下のPGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa)社が同国中央部ポントヌフのコニン地区で計画している韓国製大型炉の建設プロジェクトに対し、原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給した。PGE PAK原子力エネルギー社に50%ずつ出資しているPGE社と同国のエネルギー企業ZE PAK社が、同日付で明らかにした。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給により同プロジェクトは、国家のエネルギー政策に則し、国民の利益に適うと正式に認められたことになる。このポントヌフ・プロジェクトは韓国水力・原子力会社(KHNP)との協力で進められており、プロジェクト企業として今年4月に設立されたPGE PAK原子力エネルギー社は、6月に気候環境省にDIPを申請していた。今後は韓国製「APR1400」(PWR、出力140万kW×2基)の建設に向けて、実行可能性調査の実施準備やコニン地区における環境面などの調査、資金調達面の協議などを実施する。PGE社によると今回のDIPは、2022年10月の韓国・ポーランド両政府の計画支援了解覚書、またPGE社とZE PAK社およびKHNP社の「企業間協力意向書(LOI)」から13か月経たずに発給された。大規模な投資計画では異例の速さだが、これにより2035年までにポントヌフで初号機を完成させることが現実味を帯びてきた。同社は2基のAPR1400で年間220億kWh発電することを計画しており、これはポーランドの総電力需要の約12%に相当する。ポーランドではこのほか、2021年2月に内閣が決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、100万kW級の大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを並行して進めている。2022年11月に政府は最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を選定。PGE社傘下の原子力事業会社であるPEJ社は、北部ポモージェ県で3基のAP1000を建設する計画について、今年7月に気候環境省からDIPを取得している。ポントヌフにおけるプロジェクトは、政府の原子力プログラムを補完すると位置付けられており、副首相を兼任する国有資産省のJ.サシン大臣は今回、「ポントヌフのプロジェクトはクリーンで安価な電力を安定的に供給する点から政府政策に完璧に適合するものであり、DIPの発給はそれを裏付けている」と指摘。同計画が円滑に進展することを期待していると述べた。ポーランドではこのほか、鉱業大手のKGHM銅採掘会社が米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)を6基備えた発電設備「VOYGR-6」の建設を計画している。また化学・石油合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は米GE日立・ニュクリアエナジー社製のSMR「BWRX-300」を国内6地点で計画。今年4月にそれぞれDIPを気候環境省に申請しており、同省は7月にKGHM銅採掘会社の計画に対しDIPを交付している。(参照資料:PGE社、ZE PAK社の発表資料(ともにポーランド語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Nov 2023
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ポーランド AP1000の建設に向け米社とサイト設計等で契約
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は9月27日、同国初の大型原子力発電所建設に向けて、米ウェスチングハウス(WH)社およびベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結した。同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、WH社製のAP1000(PWR、125万kW)を3基建設するため、WH社らは18か月の同契約期間中、建設サイトに基づいたプラント設計を確定する。契約条項には、原子炉系やタービン系などの主要機器に加えて、補助設備や管理棟、安全関連インフラなどの設計/エンジニアリングが含まれており、両者はこの契約に基づく作業を直ちに開始。初号機の運転開始は2033年を予定している。ワルシャワでの同契約の調印式には、ポーランドのM. モラビエツキ首相をはじめ、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際問題担当次官補が同席。PEJ社のM.ベルゲル社長とWH社のP.フラグマン社長兼CEO、およびベクテル社のJ.ハワニッツ原子力担当社長が契約文書に署名した。今回の契約の主な目的は、建設プロジェクトの実施に際して順守する基準や、設計/エンジニアリング上の要件を特定すること。同発電所のスペックを満たす初期設計の技術仕様書作成など、両者は同契約の条項に沿って様々な許認可の取得で協力。同契約は、建設工事の進展に応じて次の段階の契約を結ぶ際のベースとなる。同契約はまた、建設プロジェクトがポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)や技術監督事務所(UDT)の規制に則して実施されるよう、PEJ社を支援するもの。ポーランドと欧州連合の厳しい安全基準に則して建設許可申請を行う際、同契約で実施した作業の結果が申請書の作成基盤になるほか、原子力法の要件に準じて安全解析や放射線防護策を実施する際は、事前評価を行う条項が同契約に盛り込まれている。同契約はさらに、WH社らとの共同活動にポーランド企業を交えていくと明記している。これにより、ポーランド企業の力量や需要を考慮した上で、出来るだけ多くの企業が建設プロジェクトに参加できるよう、原子力サプライチェーンの構築を目指す。このほか、同契約を通じてポーランド企業の従業員が米国を訪問し、最新原子炉の設計/エンジニアリングや運転ノウハウを習得することも規定されている。ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、ポーランド環境保護総局(GDOS)が今月19日に同プロジェクトに対して「環境決定」を発給した後、21日付でWH社とベクテル社がポーランドでの発電所設計・建設に向けて、正式に企業連合を組んだ事実に言及。「これらに続く今回の契約締結は、国内初の原子力発電所建設をスケジュール通り着実に進め、国内産業を活用しながら予算内で完成させるというポーランドの決意に沿うもの」と指摘した。同相はまた、WH社とベクテル社が米国のボーグル3、4号機増設計画でもAP1000の完成に向けて協力中であることから、「両社がボーグル・プロジェクトで蓄積した経験と教訓、先進的原子炉のエンジニアリング・ノウハウは、ポーランドのエネルギー・ミックスの根本的な再構築に生かされていく」と表明。ポーランドにおける原子力エンジニアの育成や、ポーランド経済の発展にも大きな弾みとなると強調した。WH社のP.フラグマン社長は、「ポーランドのみならず、今回の契約締結は当社とベクテル社にとっても転機となるが、安全かつ信頼性の高い原子力でエネルギー供給を保証し、脱炭素化を図ろうと考えている国々にとっても、モデルケースになる」と指摘している。参照資料:PEJ社、WH社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Sep 2023
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ポーランドのAP1000建設計画 環境面で一歩前進
ポーランド環境保護総局(GDOS)は9月19日、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が計画する同国初の大型原子力発電所(合計出力375万kW)建設に対し、「環境条件に関する意思決定(環境決定)」を発給した。これは、原子力発電所の建設に向けた重要な行政認可手続きの一つ。同決定により、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区における原子力発電所の建設・運転にあたり、環境保護上の要件などが確定したことになる。今後建設サイトへの投資決定や建設許可申請を行う際は、「環境決定」に明記された条件等と整合性を取る必要があり、建設許可申請時には改めて環境影響評価の実施が義務付けられることになる。気候環境省のA.ギブルジェ-ツェトヴェルティンスキ次官は、「環境防護の責任機関であるGDOSの専門家が評価した結果、CO2を大量に排出する我が国の経済活動に、ポーランド初の原子力発電所が環境面のプラス効果をもたらすことが明らかになった」と強調している。PEJ社はポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2040年頃までに国内複数のサイトで最大6基の大型炉(合計出力600万~900万kW)の建設を計画中。2021年12月に最初の3基、合計375万kWの立地点としてルビアトボ-コパリノ地区を選定した。これら3基に採用する炉型として、ポーランド政府は2022年11月にウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を閣議決定。今年7月には、気候環境省がこれら3基の建設計画に「原則決定(DIP)」を発給した。これに続いてPEJ社は翌8月、AP1000建設サイトとして同地区の正式な承認を得るため、ポモージェ県知事に「立地決定」を申請している。 「環境決定」を取得するにあたり、PEJ社は2022年3月末、GDOSにポモージェ県内の環境影響評価(EIA)報告書を提出した。原子力発電所の建設・運転にともなう環境上の利点を確認するため、GDOSが分析した文書は1万9,000頁を越えたという。また、PEJ社はその際、ルビアトボ-コパリノ地区のほかに建設候補地として名前が挙がっていたジャルノビエツ地区(クロコバとグニエビノの両自治体が管轄)についても、原子力発電所の建設と運転が及ぼす影響等を分析していた。さらに、ポーランド政府はこの件に関する国民の意見を聴取するため、今年7月から8月にかけて国内協議を開催したほか、近隣の14か国を交えた越境協議を2022年9月から今年7月まで実施。「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に基づく諸手続きの一環として、ポーランド政府はこれらすべての国と議定書を締結している。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「原子力でエネルギー・ミックスを再構築するという我が国の計画は欧州で最も意欲的なものであり、様々な課題への取組と急速な変化をともなうが、だからこそ大規模で複雑なこの投資事業をスケジュール通りに進めることが重要になる」と指摘した。ポーランドではこのほか、政府のPPEJを補完する大型炉プロジェクトとして、国営エネルギー・グループ(PGE)とエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力し、中央部のポントヌフで韓国製大型PWRの建設を計画中である。(参照資料:ポーランド政府(ポーランド語)、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Sep 2023
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韓国の現代E&C ポーランドの建設協会らと協力合意
韓国の現代E&C(現代建設)社は9月12日、ポーランドでの新規原子力発電所建設プロジェクト推進に向け、ポーランドの建設産業雇用者協会(PZPB)や国立原子力研究センター(NCBJ)などと協力覚書を締結した。ポーランドの様々な関係機関や企業と協力ネットワークを構築することで、ポーランドのみならず東欧全体で原子力などエネルギー・インフラの分野に進出していく方針。PZPBと結んだ「新規原子力事業協力のための了解覚書」では、ポーランドの建設関係政策や業界動向といった現地情報を入手し、技術面での交流を深める考えだ。同覚書は、ポーランド南部のクリニツァで開催されていた経済フォーラムへの、韓国官民合同使節団参加にともない、首都ワルシャワで締結された。調印は現代E&C社のユン・ヨンジュン社長兼CEOとPZPBのD.カジミエラク副会長が行った。NCBJとの「原子力発電所の研究開発と研究炉協力に関する了解覚書」も同じ日に結ばれており、両者は原子力発電所と研究炉分野の協力に加えて、原子力技術とその安全性、人材交流など全般的な協力体制の構築で合意している。これらを通じて現代E&C社はポーランドの原子力市場に参入する一方、同国の大手建設企業であるERBUD社およびUNIBEP社とも、新しい再エネ、新空港や都心インフラの整備、スマートシティ分野で協力するための業務契約を締結した。関係報道によるとUNIBEP社は、原子力プロジェクトについても現代E&C社と協力する意向を表明。現代E&C社はこれらの企業との連携協力に際し、東欧への進出の拠点となる現地事務所の設立もワルシャワで進めている。現代E&C社は、韓国で数多くの原子力発電所建設に携わった実績があり、アラブ首長国連邦(UAE)への大型原子炉の初輸出事業にも参加。これらに基づき、小型モジュール炉(SMR)開発や原子力発電所の廃止措置、使用済燃料の中間貯蔵施設建設など、原子力関係の全事業分野に対応・管理する能力の獲得を目指しており、世界的な原子力発電設備メーカーと戦略的な協力体制を固めている。放射性廃棄物の貯蔵設備やSMRを開発している米ホルテック・インターナショナル社とは特に、2021年11月に事業協力契約を締結しており、同社の主要EPC(設計・調達・建設)契約企業としてホルテック社製SMR「SMR-160」の商業化に向けた標準モデルの完成に協力。今年4月には、韓国の政府系輸出信用機関である韓国貿易保険公社(K-SURE)と韓国輸出入銀行(KEXIM)がそれぞれ、現代E&C社とホルテック社の企業チームと個別に協力協定を締結している。今回のポーランド訪問を通じて現代E&C社は、ポーランドに経済的発展のポテンシャルを確認。両国間の相互交流を促進してポーランドのエネルギー・インフラ拡充に寄与するとともに、民間レベルの連携協力を強化して実質的な成果を上げたい考えだ。ポーランドは政府の原子力プログラムとして、国内の複数のサイトで2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画。2022年11月には最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を選定した。同国ではこのほか、政府のこのプログラムを補完する計画として、PGEグループとエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)などとの協力により、中央部ポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」の建設に向けた活動を進めている。(参照資料:現代E&C社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Sep 2023
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UAEとポーランド企業 欧州全域でのSMR建設に向け協力合意
アラブ首長国連邦(UAE)で初の原子力発電所を建設・運転中の首長国原子力会社(ENEC社)と、ポーランド初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は9月11日、将来的に複数のSMRをポーランドのみならずその他の欧州地域で協力して建設していくため、了解覚書を締結した。建設が比較的容易でクリーンな電力を供給できるSMRへの投資を通じて、欧州のエネルギー部門や産業界の脱炭素化をともに支援。エネルギー・セキュリティと地球温暖化という二つの課題の解決に取り組む考えだ。ENEC社は2012年7月、北部のアブダビ首長国で韓国製の140万kW級PWR「APR1400」×4基で構成されるバラカ原子力発電所の建設工事を開始。1~3号機はそれぞれ2021年4月と2022年3月、および今年2月から営業運転中で、残る4号機の作業も佳境に入っている。もう一方のOSGE社は、カナダ・オンタリオ州のOPG社がカナダ初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設準備を進めているのに倣い、同じく「BWRX-300」をポーランドで建設することを計画。今年4月下旬には、候補地として絞り込んだ7地点のうち、6地点での建設計画について「原則決定(DIP)」を政府に申請している。OSGE社の「BWRX-300」初号機は2030年頃の完成を目標としているが、それ以降同社は、英国や中・東欧地域などその他の欧州大陸でも「BWRX-300」の建設を目指す方針。そのため今回、GEH社のパートナーとしてポーランド国内で同炉の独占使用権を持つOSGE社と、UAEで大型原子力発電所の建設を「スケジュール通り予算内」で進め、運転実績も有するENEC社が協力することになった。加えてENEC社は、「BWRX-300」の建設にファイナンス面での支援も視野に入れるとしている。協力覚書への調印は、世界原子力協会(WNA)が英国ロンドンで「世界原子力シンポジウム」を開催したのに合わせ、ENEC社のM.アル・ハマディCEOとOSGE社のR.カスプローCEOが実施した。同シンポでENEC社は、WNAと共同で「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブを立ち上げたと発表。NZNでは、エネルギー・セキュリティの確保とCO2排出量の実質ゼロ化の両立に原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指している。UAEはまた、今年11月に開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)のホスト国を務めることになっている。ENEC社は、原子力発電所の建設プロジェクトを成功に導くには、適切なパートナーの選定と高度な専門知識やスキルを持つスタッフの活用がカギだと強調。同社がバラカ発電所の建設と運転を通じて蓄積した様々な経験は、OSGE社の構想を支援する重要な要素になる。同社のM.アル・ハマディCEOは、「クリーン・エネルギー社会への移行とCO2排出量実質ゼロ化の推進で当社が培った知見と経験を共有し、世界中で原子力発電所の建設を加速していくという当社の計画は、覚書の締結により新たなステージに入った」と表明。「SMRの可能性については当社も綿密に検証中であるが、バラカ発電所の建設・運転経験はこのように新しい分野の研究開発や技術革新を大きく進展させるだけでなく、当社が様々な次世代原子炉を新たに建設していく機会になる」と強調した。OSGE社のカスプローCEOも、「ENEC社は、ポーランドその他で当社の複数の『BWRX-300』建設計画を支えてくれる心強いパートナーだ」と指摘。「SMR開発が原子力の将来に重要な意味を持つことをENEC社は理解しており、この協力によって我々は世界的規模のSMR建設に向けて大きな一歩を踏み出した」としている。(参照資料:OSGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Sep 2023
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ポーランド AP1000建設に向け「立地決定」申請
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は8月22日、同国初の大型原子炉となる米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000の建設サイトとして、ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区の正式な承認を得るため、「立地決定」申請書を同県のD.ドレリヒ知事に提出した。PEJ社は同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」に基づき、2040年頃までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)の建設を計画しており、2021年12月に最初の3基、合計375万kWの立地点として、同国北部のバルト海に面したルビアトボ-コパリノ地区を選定した。これら3基の採用炉型として、ポーランド政府は2022年11月にWH社製・第3世代+(プラス)のPWRであるAP1000を閣議決定しており、今年7月には気候環境省が同地区で3基のAP1000を建設するという計画に「原則決定(DIP)」を発給している。これに続く「立地決定」の申請は、原子炉の着工に向けた行政手続き上、最も重要なものの一つである。「立地決定」は、2011年6月に成立した「原子力施設と関連設備の準備と建設に関する法律」に基づき、県知事が発給する。発給されれば、PEJ社は建設に必要な土地や海上エリアに投資する権利を取得。また、投資を行う際の技術面や環境面の具体的な条件が決まる。この申請について、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「PPEJを着実に進めることにより、原子力発電でポーランド国民に安全かつ無炭素なエネルギーを安定供給できる日が近づく」と指摘した。「DIP」が発給された時点で、同計画は「ポーランドの国家政策に則しており国民の利益にも適う」と正式に認められた。また、ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)からは、同計画に関する安全分析の検証範囲が正確だったことを確認したとの包括的見解が得られている。同計画ではさらに、今後一層進んだ段階の環境影響面の手続きとして、環境上の条件決定も取得する必要があるとPEJ社は指摘している。ポーランドではこのほか、政府のPPEJを補完する大型炉プロジェクトとして、国営エネルギー・グループ(PGE)とエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)との協力により、ポーランド中央部のポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を計画中。現地の報道では、PGEとZE PAK社が折半出資する合弁企業のPGE PAK原子力エネルギー社が6月16日、この計画の「DIP」を気候環境省に申請したと伝えられている。(参照資料:PEJ社、ポモージェ県(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Aug 2023
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ポーランド 原子力人材育成に本腰
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は8月7日、原子力部門における人材育成や研究等で、ワルシャワ工科大学(WUT)と協力協定を締結した。同協定では双方が培ってきた経験を共有するとともに、WUTの学生や院生が同国の原子力部門で職を得るのに必要な知識とスキルを身に付けられるよう、PEJ社とWUTが共同でカリキュラムや奨学金プログラム、有給の実務研修制度などを開発。科学論文やプロジェクトのコンテストも共同開催する予定で、この協力を通じて同国初の原子力発電所の建設と運転、および同国の原子力産業界が必要とする人材育成を促進する方針だ。ポーランドは政府の原子力プログラムとして、国内の複数のサイトで2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。2022年11月には最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000を選定した。これらは、PEJ社が北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で建設することになっており、同社は今年4月に建設プロジェクトの「原則決定(decision-in-principle=DIP)」を気候環境省に申請、同省は今年7月にDIPを発給している。同国ではこのほか、政府のプログラムを補完する計画として、PGEグループとエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)などとの協力により、中央部ポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」の建設に向けた活動を推進中。また複数の民間企業が、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社やニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)の建設計画を進めている。化学素材メーカーのシントス社と共同で、GEH社製SMR「BWRX-300」の建設を計画する石油化学企業PKNオーレン・グループは今年1月、同国の教育科学省およびWUTを含む国内6つの工科大学と、技術スタッフの教育・訓練プログラム設置に向けた合意書に調印している。WUTのK.ザレンバ総長は今回、「本学では長年にわたって原子力分野のスタッフを教育し、傑出した専門家を数多く輩出してきたが、国内で原子力プログラムを実施するのにともない、熟練のエンジニアや専門家の需要が大幅に高まっている」と強調。「PEJ社との協力により、本学はトップクラスの専門家を国内で育成し、安全で先進的な原子力発電所の建設のみならず、その運転管理や維持など関係インフラ全体の運営を担う人材を育てていく」と述べた。気候環境省のA.モスクヴァ大臣は、原子力プログラム関係の投資により、ポーランドではGDPの約1%に相当する大きな経済成長が見込めると指摘。その上で、「初号機建設費用の少なくとも40%に国内企業が関わる見通しで、この金額はそれ以降の原子炉建設でさらに増加する」と述べており、プログラムが進展するにつれ、国内エンジニアがさらに必要になるとの見通しを示した。同省の調べによると、ポーランドではすでに約80社の国内企業が、世界中の原子炉ベンダーに原子力関連サービスを提供中。さらに300社が、ポーランドの原子力プログラムに沿って、サプライチェーンに加わる準備を整えている。(参照資料:PEJ社、ワルシャワ工科大の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Aug 2023
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韓国 原子力などでポーランドと経済協力強化
韓国産業通商資源部(MOTIE)は7月14日、ポーランドのワルシャワで「韓国-ポーランド・ビジネスフォーラム」を開催し、原子力など複数分野における両国企業の協力に向け、33件の了解覚書を交わしたと発表した。同フォーラムの開催はユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領のポーランド訪問に合わせたもので、両国の政府関係者や企業、経済団体等から約350名が参加した。MOTIEのイ・チャンヤン長官とポーランド経済開発技術省のW.ブダ大臣が同席して、バッテリーなどの先端産業やロボット、機械、鉄道などの製造業、研究開発等の分野で11件、原子力や水素製造などの低炭素エネルギー、ウクライナの再建協力、基盤施設等のインフラ関係の分野で13件、金融や観光、人材交流等の新しい分野で9件の覚書を締結した。これにより、韓国は原子力や先端産業など既存の協力分野で具体的な成果を目指すとともに、経済協力の多様化と高度化を図ることにより、将来的な互恵協力の基盤を築いたと強調している。原子力分野の了解覚書は合計6件で、これには斗山エナビリティ社や韓国水力・原子力会社(KHNP)など、ポーランド中央部ポントヌフにおける韓国製140万kW級PWRの建設プロジェクトに関係する企業が含まれるようだ。また、このうち1件は、ポーランドが計画する米国製小型モジュール炉(SMR)建設事業に現代E&C(現代建設)社が加わるというもの。ポーランドの化学品メーカーであるグルパ・アゾティ・ザクワディ・ヘミツィネ・ポリツェ(Grupa Azoty Zakłady Chemiczne Police S.A.)社は、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kW)の国内建設を計画しており、この日現代建設を加えた3社が、協力のための予備的合意文書を締結した。グルパ・アゾティ社は、ポーランド北西部の西ポモージェ県にあるポリツェ町を本拠地としており、窒素肥料の製造などポーランドの化学産業用および水素製造として、SMRに基づくエネルギー・システムを建設する。自社電源の脱炭素化を図りつつ、無炭素エネルギーを確保することは同社の2030年までの戦略にも明記されている。このように同社は、ポーランドでは政府レベルのみならず、製造業レベルでも化石燃料を無炭素電力に置き換えるなど、クリーン・エネルギーへの移行が進展中だと強調した。今回の3社合意により、ポーランドではMMR建設の許認可手続きの進展が期待される。現代建設は産業用エネルギー技術のインテグレーターでもあるため、USNC社およびグルパ・アゾティ社と緊密に協力して原子力の無炭素な電力で水を電気分解、水素の抽出技術を開発するとしている。(参照資料:MOTIE ①、②(韓国語)、現代建設(韓国語)、グルパ・アゾティ社(ポーランド語)、USNC社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Jul 2023
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ポーランド政府 PEJ社のAP1000建設計画にDIP発給
ポーランドの気候環境省は7月11日、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉建設について、「原則決定(DIP)」を発給した。これは、原子力発電所の建設計画でポーランド政府が下した最初の主要な行政判断。同県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)のPWR「AP1000」を最大3基建設する計画が、エネルギー政策等の国家政策に則したものであり、国民の利益にも適うと正式に認めた。事業者となるPEJ社は今後、立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。ポーランド政府としても、国家のエネルギー供給ミックスがより良い方向に向かい、供給が強化される節目になったと強調している。ポーランドでは改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)を建設する。最初の3基、合計375万kWをポモージェ県内で建設・運転する場合の環境影響を評価するため、PEJ社は2022年3月にルビアトボ-コパリノ地区のほか、近隣のクロコバとグニエビノの両自治体が管轄するジャルニビエツ地区でも影響分析を実施。政府は同年11月、最初に建設する3基の採用炉型としてWH社製のAP1000を閣議決定した。PEJ社は今年4月に提出したDIP申請書で、このような建設計画の概要を明記。最大設備容量のほかに、2026年に初号機を着工して2033年の完成を目指す等の建設スケジュールや、採用されたAP1000技術の詳細等の記載もあった。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ-チェジャコフスカ首相府担当相は、「国内のエネルギー供給を強化しながらポーランド政府は脱炭素社会への転換を進めており、原子力開発計画はそのために同時進行している数多くのプロジェクトの一つだ」と説明。「今回のDIPの決定により、ポーランドは初の原子力発電所の実現に近づいており、将来の発電システムの基盤として適切な発電量を確保できるようになる」と強調している。ポーランドではこのほか、鉱業大手のKGHM銅採掘会社が米ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)を、また化学・石油合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が米GE日立・ニュクリアエナジー社のSMR「BWRX-300」を国内で建設すべく、今年4月にDIPを気候環境省にそれぞれ申請した。また、同国中央部のポントヌフでは、韓国水力・原子力会社(KHNP)が韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指しており、国有資産省(MOSA)が一部出資するエネルギー企業のZE PAK社は今年3月、PGE社と合弁の特別プロジェクト企業を設立する方向で予備的合意に達している。(参照資料:ポーランド政府、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jul 2023
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加OPG社 同型SMRを建設予定のポーランド企業を支援
カナダのオンタリオ州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は6月2日、ポーランドで同社と同じくGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を追加支援するため、同社と基本合意書(LOI)を交わした。両社がこれまでに交わした複数の協力合意に基づくもので、OPG社とその子会社は同LOIを通じてSMR運転員の訓練など、関連サービスの提供に向けた協定をOSGE社と将来的に締結する。支援分野はこのほか、SMRの開発と建設、発電所の運転管理と保守点検(O&M)、起動と規制に関するサポートなど。LOIへの調印は、ポーランドのM.モラビエツキ首相がカナダのダーリントン原子力発電所を視察したのに合わせて同発電所で行われた。OPG社は2021年12月、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所内で建設するカナダ初のSMRとして「BWRX-300」を選定。2022年10月には「BWRX-300」の建設許可申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出しており、同サイトで取得済みの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、2028年第4四半期の完成を目指して準備作業を始めている。この計画を参照プロジェクトとして、OSGE社はポーランドやその他の欧州地域で複数の「BWRX-300」建設を計画している。初号機を2030年頃までにポーランド国内で完成させる方針で、建設サイトについては同社が今年の4月中旬、一連の「BWRX-300」建設候補地の中から有望な7地点を絞り込んで公表。同月下旬には、同社のD.ヤツキエビッチ副社長がこれらのうち6地点について、政府に「原則決定(DIP)」を申請したことをSNS上で明らかにしている。OSGE社との協力としては、OPG社傘下のコンサルティング企業であるローレンティス・エナジー・パートナーズ(Laurentis Energy Partners)社が2022年10月、OSGE社の親会社のSGE社と「マスター・サービス協定(MSA)」を締結しており、複数のSMRをポーランドで建設する際の初期的な計画立案を支援している。また、OPG社とSGE社は今年3月、米国で「BWRX-300」の建設を検討しているテネシー峡谷開発公社(TVA)とGEH社が結んだ技術協力協定に参加することで合意。「BWRX-300」の世界展開に向け、GEH社が発電所の標準設計や主要機器の詳細設計開発で予定している約4億ドルの投資について、残り3社が一部を負担することになった。また、米国の2つの政府系金融機関は、OSGE社がポーランドで複数の「BWRX-300」を建設する際、合計で最大40億ドルの資金を支援すると表明している。OSGE社のR.カスプローCEOはLOI締結に続くステップとして、ポーランドで建設する複数の「BWRX-300」用として運転員組織を共同で設置すると表明。その際、英国やその他の欧州連合(EU)加盟国で、同炉の建設をさらに拡大していく可能性も視野に入れていることを明らかにした。(参照資料:OPG社、OSGE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Jun 2023
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ポーランド規制当局 BWRX-300の安全性を確認
ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)は5月23日、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の安全評価に関する包括的な見解をA.グウォヴァツキ長官名で公表、同炉がポーランドの関係法に基づく安全要件に適合していることを確認した。PAA長官の見解発表は、ポーランド国内で同炉の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社の昨年7月の申請に対するもの。原子力安全と放射線防護の観点から、同炉の技術面や担当事業者の組織面で同国の要件を満たしているか確認するためのもので、原子力法その他の規制に基づく予備的許認可手続きの一つ。同国で建設されるSMRの一つとして今回初めてPAAの見解が示されたが、許認可手続きを進める上で必須というわけではない。また、評価の範囲は申請者の要望に沿ったものであるが、標準設計関係の詳細な手続きでは、PAA長官の見解が大きく影響する。出力30万kWの「BWRX-300」の設計は、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースになっている。受動的安全系を採用しており、原子炉上部に設置した大容量プールの水で外部電源や人の介在無しに燃料を冷却できるという。同炉については、カナダ原子力安全委員会(CNSC)がGEH社の申請に基づき、2020年1月から任意の予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査(VDR)」を実施中。対象炉型がカナダの規制要件に適合しているか、正式な許認可手続きに先立ち評価するもので、同炉は今年3月にVDRの主要部分をクリアした。PAA長官の見解を求めてOSGE社が提出した申請書は、VDRに向けてGEH社が準備した技術文書が元になっている。OSGE社が分析を要望した「BWRX-300」の技術項目は13分野にわたっており、それらは各種ハザードの脅威に対する原子炉の防護やシステムの安全セキュリティ上の等級分類のほか、中央制御室や原子炉の格納システム、およびその他の機器・システムと構造物の要件との適合性なども含む。放射性廃棄物と原子燃料の管理システムについても分析が行われた。PAAは今回、同炉がポーランドの原子力安全要件に適合していると結論づけたものの、一項目に関しては認可の取得に係わる正式な許認可手続きが始まる前に、PAAが改めて確認する必要があるとした。また、今回評価した項目の中で、一層詳細な要件への適合性評価を要請する場合は、詳細な関係データを提出すればよいとOSGE社に指南している。OSGE社のR.カスプローCEOは今回の評価結果について、「『BWRX-300』建設の許認可手続きに向けた道程の最初の一歩になった」と指摘。同社にとって、PAAとオープンかつ良好な関係を持つことは、建設プロジェクトを成功に導く重要ファクターの一つだと強調している。(参照資料:PAA、OSGE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 May 2023
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