「高レベル放射性廃棄物処分の実現は、原子力を利用するすべての国の共通課題」との観点から、日米を共同議長として原子力主要国政府が参加し行われた「最終処分国際ラウンドテーブル」(=写真、資源エネルギー庁発表資料より引用)の報告書が8月21日までにOECD/NEAより公表された。同ラウンドテーブルは、2019年6月のG20軽井沢大臣会合で立ち上げが合意されたもので、同10月と2020年2月と、2回の会合を開催し、各国における理解活動の経験・知見を共有するとともに、研究施設間の協力や人材交流のあり方について議論。政策面での経験を共有し国際協力をさらに進めることの重要性を認識した。最終処分に関する国際連携はこれまで専門家レベルでの技術連携が中心となっており、国家戦略レベルでの対話は十分に実施されてこなかった。今回OECD/NEAが取りまとめた報告書は、「ハイレベル政府代表からの国際協力に関するメッセージ」との位置付け。報告書では、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の経験は、「すべての参加国にとって学ぶべき教訓」となると、同ラウンドテーブルを通じた戦略強化を評価。最終処分の実現に向けて各国が直面する課題は、「技術的というより、社会的・政治的なもの」との議論から、報告書では、国民理解のための対話活動や意思決定プロセスに関する教訓・ベストプラクティスがあげられた。その中で、処分地選定に向けた日本の取組として、2017年7月公表の地域の科学的特性を全国地図で示した「科学的特性マップ」についても共有が図られたとしている。一方で、地元コミュニティのへの資金的なサポートに関し、「処分事業の信頼と成功を得るための最も重要な要素とは思われない」などと、単なる経済的支援にとどまらず「付加価値」がもたらされる重要性を指摘。また、若い世代の関与に向け、ソーシャルメディアや動画の活用の有用性もあげられた。技術分野での国際協力については、他国の地下研究施設の利用の有効性や、今後連携強化を検討すべき分野としてロボット・遠隔操作技術の実証などが提案された。
24 Aug 2020
3063
小型・軽量ポンプや2万種類を超す流体継手(カプラ)を製造・販売する日東工器はこのほど、全身画像診断・放射線医療用の患者体位固定具「メドー Vフィックス」(=写真、日東工器発表資料より引用)を発売した。ビーズを充填したマット内の空気を真空ポンプ(リニア駆動フリーピストン方式)で除圧することで患者の体型に合わせてマットを硬化、体位を固定させ、安定した画像診断を可能にするもの。「メドー Vフィックス」は、上半身をしっかり覆いながらもX線の透視画像に影響しないベルト素材を採用。真空ポンプが自動で動作・停止を繰り返し、マットを適切な真空圧で保持する。マットとポンプは、接続部に同社技術の接続・分離が簡単な迅速流体継手「キューブカプラ」を使用しており、ワンタッチボタン操作で着脱。また、本体、マット、接続ホースを合わせて約10kgとコンパクトな仕様だ。同社では、本製品の普及により医療事故の低減や医療業務従事者の業務環境の改善に貢献したいとしている。日東工器はこれまでも医療機器ブランド「MEDO」を立ち上げ、同社の持つポンプ技術を活かしたエアマッサージ器や在宅医療用の携帯型痰吸引器などを開発・販売してきた。空気圧で血行を促進し筋肉のコリをほぐすエアマッサージ器は、アスリートの疲労回復でも好評を博している。
21 Aug 2020
2858
原子力規制委員会は8月19日の定例会合で、2020年度より運用を開始した新たな検査制度の第1四半期(4~6月)実施状況について、原子力規制庁から報告を受けた。新検査制度は、2016年に受け入れたIAEA総合規制評価サービス(IRRS)による「さらなる実効性を確保すべき」などとする指摘から、事業者の活動全般を、いつでも、どこでも、広く確認・評価し(フリーアクセス)、その結果に応じた措置を講じていくよう従前制度への見直しが図られている。今回の報告によると、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、本庁の検査官が中心となる「チーム検査」は当初予定されていた18件中、実施は4件に留まった。 複雑な事象への対応は「事業者への刺激」となると強調する山賀氏(インターネット中継)また、事業者の日常的な安全活動を継続的に監視する「日常検査」に関しては、現地原子力規制事務所の所長として、柏崎刈羽の水野大氏(当時)、美浜の山賀悟氏、六ヶ所の服部弘美氏(当時)の3名が所感を述べた。その中で、水野氏は、「検査官の専門知識を活かし、原子力安全を包括した検査ができた」と、一定の評価を示す一方、検査対象の見極めに関し「空振り」よりも「見逃し」の心配をあげ、今後も事例の積み重ねや検査官の知識レベル向上などに努めていく必要性を強調。また、事業者の対応について、「フリーアクセスの実施にも非常に協力的だった」と、新検査制度への理解や考え方の変化を認めた上で、「納得いくものとなるには、まだまだ時間がかかる」などと、規制側・被規制側ともにさらなる継続的改善が図られるべきとした。山賀氏は、美浜3号機の海水ポンプ停止事象に関し事業者自らによる原因分析を深めさせたことに触れ、「スキルアップにつながった」との感触を受けたと評価。服部氏は、所管する核燃料サイクル施設の発電炉との違いに触れ、今後の効率的な検査の維持に向けて「検査官の育成・確保が重要な課題」と指摘した。
19 Aug 2020
2746
国立環境研究所はこのほど、福島県の大型立体地図の上に地理・社会情報や放射線量の推移などをアニメーションで映し出すプロジェクションマッピング「3Dふくしま」を開発・制作。同研究所福島支部が蓄積してきた地域の環境情報に関する調査・分析をわかりやすく「見える化」したもので、県環境創造センター交流棟「コミュタン」(三春町)に13日より常設展示されている。〈映像サンプルは こちら〉「3Dふくしま」では、高解像度の衛星画像、人口分布、放射線の空間線量率、野生動物の生息状況、温暖化の影響などに加え、昨秋の台風による浸水被害状況もコンテンツとして公開が予定されており、125,000分の1の縮尺でリアルに再現した立体地図の上に表現される超高解像度(WUXGA)情報を通じ、時間軸と空間軸の両方から福島県の姿を理解・再発見させる。「3Dふくしま」の制作に当たった地域環境創生研究室主任研究員の五味馨氏は、一般公開に際しメッセージを寄せ、「なぜ、会津若松市や福島市では特別に暑くなる日があるのか?」、「なぜ、水害に強い場所と弱い場所があるのか?」などと問いかけ、「そんな疑問の答えを『3Dふくしま』で見つけて欲しい」と呼びかけている。
17 Aug 2020
2701
東京電力は8月6日、福島第一原子力発電所廃炉作業に伴う敷地内、港湾内、周辺海域で採取した試料の化学分析について、分析結果報告書や公表用資料の作成に至る一連の業務のシステム化を9月より運用開始することを発表した。〈東京電力発表資料は こちら〉同社では昨秋より、分析業務の効率化と正確性の向上のため、化学分析データ収集装置の現場における操作端末としてディスプレイ機能を搭載したスマートグラスの運用を開始し、試料の受領に係る作業を画面上で行うことで所要時間が半分程度に短縮され、そのオリジナル性については3月に特許を出願した。分析業務に用いられるスマートグラスは、ヘッドホン、カメラ、マイクを搭載しており、作業者はQRコードで必要なデータを読み込み、グラスを通して映し出される情報に従いデータ評価室に音声入力・映像を送信。データ評価室はカメラ画像から化学分析データ収集装置(LIMS)に入力し、試料情報として登録、分析結果報告書・公表用データが作成される。従来は分析結果を各測定装置からプリントし手入力で取りまとめていたが、9月からは公表用資料の自動作成機能を導入した新システムを運用することにより、年間約150万件のデータ手入力を約8割削減、同80万枚(1日当たり10cmファイル3冊分)のチェックシートも廃止し、燃料デブリ取り出しなど、今後の廃炉作業の進捗に伴い必要となる新たな分野の分析業務にリソースを投入していく。
07 Aug 2020
2594
【国内】▽1日 エネ調基本政策分科会が10か月ぶりに開催、白石新会長のもと次期エネルギー基本計画策定に向け意見交換▽2日 経産相と電力会社社長らが意見交換、コンプライアンス徹底や使用済燃料対策など▽6日 福島県立医大、福島第一原子力発電所事故に伴う心理的影響で論文発表▽7日 政府、2050年の環境エネ技術確立に向け「グリーンイノベーション戦略推進会議」始動▽7日 学術会議、福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染調査で報告書▽17日 エネ庁、福島第一原子力発電所処理水の取扱いで県議会議長他より意見聴取▽21日 原子力学会、福島第一原子力発電所廃炉に伴う廃棄物対策で報告書▽28日 ITER組立開始、日本製作のトロイダル磁場コイルも▽29日 規制委、日本原燃の六ヶ所再処理工場に係る新規制基準適合性審査で変更許可発出▽31日 原子力船「むつ」が船舶海洋工学会「ふね遺産」に認定 【海外】▽2日 OECD/NEAが原子力発電所の建設コスト削減で報告書▽7日 英計画審査庁、サイズウェルCの開発合意書申請を受理と発表▽9日 WNAが白書を公表:「新型コロナ後の経済復興計画は原子力投資へのチャンス」▽10日 英国政府、WH社製高速炉など次世代の先進的原子炉技術開発に4000万ポンド投資と発表▽10日 中国で建設中の田湾5号機で燃料の初装荷が完了▽13日 トルコのアックユの原子力導入初号機で水圧試験が完了▽14日 英サプライチェーンの企業連合、サイズウェルC計画への支援を政府に要請▽14日 UAEのバラカ原子力発電所で2号機が完成 ▽15日 ルーマニアがチェルナボーダ3、4号機の完成に向けて戦略的運営委員会設置へ▽17日 メキシコ、国内唯一の原子力発電設備で運転期間を60年に延長▽21日 欧州理事会、新型コロナの復興計画で原子炉の廃止措置等に10億4,500万ユーロ▽22日 インドの70万kW級国産加圧重水炉、カクラパー3号機が初臨界達成 ▽23日 米国際開発金融公社、国外の原子力開発計画に対する資金提供の禁止措置を解除▽23日 米議会上院、原子力リーダーシップ法案を盛り込んだ次年度の国防予算法案を承認▽24日 米エネ省のアイダホ研、月面探査用の原子力発電技術開発で情報依頼書を発出▽27日 英NDA、放射性廃棄物の分類・分離で革新的技術の研究開発コンペ開始▽27日 中国で田湾5号機が初臨界達成、福清6号機は格納容器にドーム屋根設置▽29日 英ナショナル・グリッド社、ヒンクリーポイントCと変電所を結ぶ最初の鉄塔を一年後に設置へ ☆過去の運転実績
07 Aug 2020
2558
日本船舶海洋工学会は7月31日、産業・文化の発展に寄与した歴史的・技術的価値のある船舶や、関連する設備、史料類を広く周知する「ふね遺産」(Ship Heritage)の2020年度選考で、原子力船「むつ」(1992年退役)など、8件を認定したと発表した。「ふね遺産」は、2019年度選考より非現存船も認定の対象となり、今回の原子力船「むつ」については、「多くの技術的知見をもたらしたわが国初の原子力船」との技術的価値が認められたもの。同学会は、「むつ」の研究開発に着手した日本原子力船開発事業団の流れを汲む日本原子力研究開発機構に認定書を贈る。日本における原子力船の研究開発は、1961年に原子力委員会が策定した「原子力開発利用長期計画」で、貿易量の増加に伴う船舶の大型化・高速化への対応から、その必要性が示され、1963年の日本原子力船開発事業団設立で本格的に動き出した。第1船「むつ」の設計・製造は、原子炉を含め可能な限り国産技術で行うこととされ、1965年からの臨界実験などを経て、1968年に建造が開始し、1969年に進水に至ったが、1974年に遮蔽の不具合による放射線漏れを起こし計画に大幅な遅れが生じることとなる。「むつ」は、1978年より佐世保港で安全性総点検および遮蔽改修工事が行われた後、1988年に青森県むつ市の関根浜港に入港。1990年3月からの出力上昇試験、海上試運転を経て、1991年2月に原子炉等規制法および船舶安全法に基づく合格証を得て、原子力船として完成した。その後の4回にわたる実験航海では、東はハワイ諸島沖、南はフィジー諸島沖、北はカムチャッカ半島沖まで航行し、通常海域、高温海域、荒海域などにおける実験を進め、陸上では得られない貴重なデータを取得。「むつ」は原子力で約82,000km(地球2周強に相当)を航行し、原子炉の運転時間は2,252時間(100%出力換算)に達した。現在、「むつ」は解体され、原子炉は「むつ科学技術館」(むつ市)に保管展示。船体の一部分は海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」として活躍中だ。この他、今回の「ふね遺産」選考では、「第五福龍丸」(第五福龍丸平和協会、西洋型肋骨構造による現存する唯一の木造鰹鮪漁船)、「さんふらわあ」(商船三井、大型豪華高速カーフェリーの先駆け)などが認定されている。
05 Aug 2020
475
原産協会は8月3日、2020年度の定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2019年度の決算案および任期満了に伴う役員選任の承認とともに、2020年度の事業計画・予算の報告がなされた。開会に先立ち挨拶に立った今井敬会長はまず、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い深刻さを増した日本の医療や工業の現場における供給不足の現状に触れた上で、「社会を支える重要なインフラの一つである電力供給も同様のリスクを抱えている」として、エネルギー自給率の改善が喫緊の課題となっていることを強調。また、地球温暖化問題への対応も含め、「温室効果ガスを排出せず安定した電力供給が可能な原子力発電の最大限の活用が必要不可欠」として、可能な限り早期に再稼働が進展する必要性を述べた。その上で、政府において今後検討が行われる次期エネルギー基本計画については、「将来にわたる原子力の活用が明確に示されるもの」と期待。さらに、原子力産業界による安全性向上の取組に成果を認める一方、「『もう十分』というゴールはない」と、継続的な改善の重要性を強調し、これにより再稼働、運転期間延長、設備利用率の向上など、既存炉の活用が実現するとした。新たな技術開発による新増設・リプレースや、先般原子力規制委員会より新規制基準に係る変更許可が発出された六ヶ所再処理工場についても核燃料サイクルの完結に向け着実な進展を期待。原子力技術の有望性に関し、今井会長は、「何世代にもわたって人類の動力源となるほか、医療、工業、農業などでも大きな恩恵をもたらす」と強調し、産官学連携を通じた人材育成ネットワークの取組を通じて優秀な若者たちを惹きつける魅力的なイノベーション創出を図っていく必要性を述べた。総会では11名の理事の交替が承認。その中で、副会長には、車谷暢昭氏(東芝取締役代表執行役社長CEO)に替わり、宮永俊一氏(三菱重工業取締役会長)が、理事長には、高橋明男氏に替わり、新井史朗氏(東京電力ホールディングス理事/原子力・立地本部副本部長が就任することとなった。退任する副会長の車谷氏は在任中の2年間における福島第一原子力発電所廃炉に向けた技術開発の取組を振り返り、新任の宮永氏はBWRも含めた再稼働や核燃料サイクルが進展していく必要性を述べるなど、それぞれ今後の原子力産業発展への期待を語った。また、退任する理事長の高橋氏は、5年前の就任当時にまだ再稼働した原子力発電プラントがゼロだったことを振り返った上で、引き続き原子力産業界が抱える課題の解決に向け連携がさらに深まるよう期待。新任の新井氏は、東京電力東通原子力建設所に従事した経験を活かし「力を尽くしていきたい」と抱負を述べた。
04 Aug 2020
2899
梶山弘志経済産業相は7月31日の閣議後記者会見で、日本原燃の六ヶ所再処理工場が29日に原子力規制委員会による新規制基準適合性審査を経て変更許可に至ったことについて、「核燃料サイクル政策の大きな前進」との所感を述べた。六ヶ所再処理工場のこれまでの審査は、2014年1月に日本原燃より原子炉等規制法に基づく事業変更許可申請がなされてから約6年半を要したが、梶山経産相は、原子力発電所で発生する使用済燃料を再処理し回収したプルトニウムをMOX燃料として活用する核燃料サイクル政策において、「中核となる施設」との認識を改めて強調。その上で、「エネルギー基本計画に基づき、直面する課題を一つ一つ解決しながら核燃料サイクル政策を推進していく」政府の基本方針に変わりはないとして、「日本原燃には、規制委員会の指導のもと、安全確保を最優先にしゅん工に向けてしっかりと取り組んでもらいたい」などと述べた。また、MOX燃料を利用するプルサーマル炉は現在4基(伊方3号機、高浜3、4号機、玄海3号機)が再稼働しているが、6基のプルサーマル炉(新規制基準施行前にプルサーマル導入に係る設置変更許可を取得済みだったプラント)が稼働しておらず、MOX燃料工場も現在審査中にあることなどから、「核燃料サイクルを動かし、しっかりとしたエネルギーの安定供給を図っていく」との考えを示した。
31 Jul 2020
1963
原産協会の高橋明男理事長は7月28日、プレスブリーフィングを行った。新型コロナウイルス感染症拡大を受け5か月ぶりの開催となり、同日発表のメッセージ「パンデミックとエネルギー安全保障」を示し、医療器具不足やマスクの入手難などから感じられた「わが国の海外依存の大きさ」や「国の安全保障への不安」、エネルギー安全保障を支える原子力発電の重要性を強調。記者からは、新型コロナウイルス感染症が原子力産業に及ぼす影響の他、石炭火力に関わる非効率プラントのフェードアウトや輸出規制強化などを踏まえた今後のエネルギー政策について質問があった。これに対し、高橋理事長は、「来年にも見込まれるエネルギー基本計画改定に向け議論されるものと認識」とした上で、「供給に支障をきたしてはならない」と、ベースロード電源の重要性を述べ、その中で「原子力が3E(安定供給、地球環境、経済性)に優れている」ことが理解される必要性を述べた。新増設・リプレースに関し、小型炉については、「大型炉に比べスケールメリットが少なく経済的には厳しい」一方で、「固有の安全性を持ち、工場での量産で初期投資が小さくできる」として、高速炉、高温ガス炉、軽水炉小型化など、日本における開発・導入の可能性を提示。この他、運転期間延長の技術的側面に係る原子力エネルギー協議会(ATENA)の役割、廃炉の進展に伴う廃棄物処分の課題などに関する質疑応答があった。
29 Jul 2020
1872
原子力規制委員会は7月29日、日本原燃の六ヶ所再処理工場について、新規制基準に「適合している」との審査書を決定し、同社に対し原子炉等規制法に基づき変更許可を発出。2014年1月の審査申請から約6年半を要した。同案件については、2020年5月13日に審査書案が取りまとめられ、30日間のパブリックコメントが行われていた。また、再処理施設の運転に係る審査は同委として初めてのケースであることから、審査書の決定に際して行われる経済産業相への意見照会では、エネルギー基本計画との整合性を含め意見を求めており、これに対し、原子燃料サイクル推進の基本的方針から、六ヶ所再処理工場のしゅん工に関して「同計画と整合している」との回答があった。29日の規制委員会定例会合で、原子力規制庁の市村知也新基準適合性審査チーム長代理らがパブリックコメント結果について説明。計574件の意見が寄せられたとしている。これを受けて取りまとめられた審査書の最終案を、更田豊志委員長他、4名の委員いずれも決定することで了承した。更田委員長は、同日の定例記者会見で、「品質管理の問題で審査が一旦中断することもあり、共通の理解を得る上で結構な時間がかかった」と、長期にわたった審査を振り返った。今後、六ヶ所再処理工場の運転開始に向けて設備工事計画の審査などが必要となるが、膨大な数の対象機器類を擁することから、更田委員長は「非常にチャレンジングだ」と、かなり難航する見通しを示した。今回の変更許可を受け、日本原燃の増田尚宏社長はコメントを発表し、「再処理工場のしゅん工、その後の安全な操業に向けての大きな一歩」との認識を示した上で、安全性向上対策の確実な実施、継続的な改善に努める決意と、立地地域からの支援に対する謝意を述べた。同社では2021年度上期の再処理工場しゅん工を予定。また、電気事業連合会の池辺和弘会長も「再処理工場のしゅん工に向けた大きな節目であり、大変意義深い」とコメント。原子力発電のベースロード電源としての活用、原子燃料サイクルの重要性を強調し、今後も業界一丸となって日本原燃を支援していくとしている。
29 Jul 2020
4601
鹿児島県の塩田康一知事が7月28日、就任会見を行い今後の県政運営に向けての抱負を述べた。塩田知事は、目下の新型コロナウイルス感染症拡大に対する予防対策・医療体制の確保を講じ、安心・安全と経済活動の両立を図ることを最優先に掲げ、中央省庁で地方創生に係った経験を活かし、県が直面する少子高齢化や離島の交通や教育を巡る課題への対応などに、県民の声を吸い上げながら取り組んでいく考えを強調。エネルギー政策に関して、知事はマニフェストの中で、県内の再生可能エネルギー導入促進や、九州電力川内原子力発電所1、2号機の運転期間延長について「必要に応じて県民の意向を把握するため、県民投票を実施する」との基本的考えを示している。会見で、知事は、「原子力の問題は非常に複雑で難しい」と述べ、県民の意見聴取の方法に関しアンケート実施の可能性にも言及。川内1、2号機はそれぞれ2024年7月、2025年11月に運転開始から40年を迎えるが、原子炉等規制法で認められる20年間の運転期間延長に関して、前任の三反園知事が設置した「原子力安全・避難計画防災専門委員会」の構成を見直した上で、九州電力による申請の時期を目途に検討に着手し、科学的・技術的な検証結果を踏まえ、同社や原子力規制委員会に対し所要の対応を要請する考えも示した。また、鹿児島市出身の知事は、2003年に地元で多くの死傷者を出した花火工場の爆発事故を振り返り、「安全というのは非常に大事なもの」として、産業界における安全確保対策の重要性を改めて強調した。
28 Jul 2020
2507
福島第一原子力発電所事故に関する日本学術会議の分科会活動について紹介する講演会が7月21日、原子力分野の学識経験者の集まり「原子力システム研究懇話会」でオンライン会議を通じて行われた。講演では、学術会議の総合工学委員会で主に事故調査に関して報告書・提言の取りまとめに係ってきた松岡猛氏(宇都宮大学名誉教授)が登壇。事故から8か月後の2011年11月に設置された同委原子力事故対応分科会は2014年に、政府、国会、民間などによる事故調査報告書について学術的立場から検討を行い、報告「福島第一原子力発電所事故の教訓」を発表した。事故の進展に関し、松岡氏は、1号機非常用復水器(IC)の作動、2号機のベント操作、3号機高圧注水系(HPCI)停止の妥当性など、分析の経緯や得られた見解を紹介し、原子力の安全性向上に向けた科学者コミュニティの役割を強調。また、同氏は最近の活動として、6月末発表の提言「原子力安全規制の課題とあるべき姿」を紹介。原子力安全規制機関を主な対象として、(1)規制機関と被規制者・事業者の関係と双方の取組姿勢、(2)リスク情報の活用、(3)優先順位と迅速性(グレーデッドアプローチ)、(4)安全対策機器の増設に伴う課題、(5)規制基準の体系的かつ継続的な改善、(6)安全目標、(7)組織文化と安全文化の課題、(8)安全研究・情報基盤の確立・人材育成の統合的マネジメント――について提言している。原子力の安全性向上に関して今後は、検討中の提言「新知見への取組強化について」を取りまとめた上で、9月にはシンポジウムを開催するなど、さらに議論を深めていく考えを述べた。続いて、森口祐一氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が登壇し、同じく学術会議総合工学委員会による報告「福島第一原子力発電所事故による環境汚染の調査研究の進展と課題」(既報)について紹介。今回の講演会は福島第一原子力発電所事故から間もなく10年となるのを契機に行われたものだが、原子力委員長代理や日本原子力研究所理事長を歴任後、2013年に技術同友会で「過酷事故を二度と起こさないための対策と提言」を取りまとめた齋藤伸三氏は、学術会議の今後の活動に向けて、発表した提言に対するフォローアップなどを通じ、より存在感が示されるよう期待を寄せた。
27 Jul 2020
2484
日本原子力学会は7月21日、福島第一原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物管理対策に関する報告書を取りまとめ発表した。同学会の廃棄物検討分科会によるもので、2021年から開始予定の燃料デブリ取り出しの終了を前提に、エンドステート(サイトの最終的な状態)に至るまでの放射性廃棄物の取扱いに係るシナリオを設定、分析した上で、廃炉・サイト修復を安全かつ効率的に進めるための課題を提言している。報告書ではまず、原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の分類・発生量・処分方策、サイト修復、エンドステートについて、国内の現状や国際機関の文書に基づき説明。また、事故炉としての廃棄物管理対策検討に向け、エンドステートに至るタムライン、サイト領域区分、廃棄物特性などの見通しを示した。福島第一原子力発電所廃炉のエンドステートとしては、サイト内の機器・構造物および汚染土壌・地下水等の汚染に関し(1)すべて取り除かれた状態(全撤去)、(2)一部が管理・監視の可能な状態で残存する状態(部分撤去)――の2ケースを、廃炉方式としては、IAEAの分類に基づき「即時解体」と「遅延解体」(「安全貯蔵」の後に解体撤去)をあげ、これらを組み合わせた4つの放射性廃棄物取扱いシナリオを設定し検討。それによると、「全撤去・即時」のシナリオでは、サイトはクリーンな更地となるが大量の放射性廃棄物が短期間で発生。「部分撤去・即時」のシナリオでは、放射性廃棄物の発生量を低減できるが、保管施設設置のためサイト開放が一部に限られるなどとされた。また、「全撤去・安全貯蔵」と「部分撤去・安全貯蔵」のシナリオでは、廃炉作業に取り組む時期が遅くなるため、施設解体のための技術的準備や作業の容易化などが可能となるが、それぞれ解体廃棄物の取扱い、サイト開放が限定的となることが課題としてあげられた。これらの検討結果を踏まえ、(1)福島第一廃炉終了の定義に係る議論、(2)エンドステートに係る議論、(3)ステークホルダーによる討議機会の整備、(4)放射性廃棄物低減の取組の早期実施、(5)放射性廃棄物処分に係る制度の見直し――を提言。エンドステートに関しては、工程ごとの達成目標「中間エンドステート」の設定に言及したほか、海外におけるサイト修復・環境管理の事例として米国の「EM計画」を紹介している。
22 Jul 2020
3376
資源エネルギー庁は7月17日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市内で開催した。2月に取りまとめられた委員会報告を受け、政府としての取扱い方針決定に資するため4月以降行われているもので、5回目となる。今回は、福島県議会、福島県青果市場連合会、福島県水産市場連合会他より意見を聴取。福島県議会の太田光秋議長は、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外食産業の営業自粛やイベントの中止により生じた農林水産業・観光業への影響を、被災地として「より深刻なもの」と憂慮。処理水の取扱いに関し、県内市町村議会による海洋放出に反対する決議などを踏まえ、「国民の理解は十分に得られていない」として、(1)風評対策の拡充・強化、(2)幅広い関係者からの意見聴取と様々な観点からの検討、(3)取扱い方針を決定するまでのプロセス公開と丁寧な説明――を要望した。また、福島県青果市場連合会の佐藤洋一会長、福島県水産市場連合会の石本朗会長は、生産・出荷者と小売業の中間に位置する立場から、それぞれ「山菜・きのこ類(野生)が痛手を負っている」、「試験操業から脱せず苦しい思い」と、農産物の出荷制限や水揚量回復の遅れなど、実質的被害が継続している現状を訴えた。県漁業協同組合連合会との協調姿勢から、石本氏は「早急な海の回復が望まれる」と強調した上で、処理水の取扱い決定に際しては慎重を期するよう切望。川俣町在住の菅野氏、トリチウム分離技術の確立や全国レベルでの風評対策を強調(インターネット中継)この他、「福島原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」から4名が意見を述べた。その中で、川俣町在住の菅野良弘氏は、福島第一原子力発電所の汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)では取り除けないトリチウムを巡る課題に関し、「分離技術が確立するまで保管の継続を」と述べ、委員会報告で処理水取扱いの現実的な方法の一つにあげられている海洋放出には反対する考えを表明。また、同氏は、風評被害対策に関し「今海洋放出を行ったらこれまでの努力が水泡に帰す。これは、福島県民皆が持っている不安」とした上で、長期的観点からわが国全体の問題として考える必要性を訴えた。資源エネルギー庁は、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する意見募集を、7月31日にまで延長し実施している。
20 Jul 2020
2918
福島県立医科大学健康リスクコミュニケーション学講座の研究チームはこのほど、福島第一原子力発電所事故に伴う心理的影響に関する論文を発表した。6日にオンライン英文科学誌「PLOS ONE」に掲載されたもの。同研究では、マーケティングリサーチを手掛けるマクロミル社の協力を得て、2018年8月に福島県と東京都の各416人(20~59歳)にオンライン調査を実施。調査結果について、健康不安、精神的苦悩、放射線リスク認知、マインドフルネス(「今、この瞬間」を大切にする生き方)の関係を分析しモデル化した。その結果、福島県民、東京都民ともに、精神的苦悩に与えている影響は、放射線リスク認知よりも、全般的な健康不安の方が大きく、特に福島県民では学歴が高いほどその傾向が強く現れていた。また、東京都民では、放射線リスク認知と精神的苦悩との間に有意な関連性はみられなかった。これを踏まえ、研究チームの竹林由武助教は、「放射線への不安よりも、全般的な健康不安への支援が精神的苦悩の改善に有効では」などと述べている。今回の調査では、精神疾患者を見つける「ケスラー6」手法なども用いた詳細な解析を実施。これらを通じ、福島におけるコミュニティ支援の効果や、災害発生時におけるマインドフルネス強化の重要性を指摘している。
17 Jul 2020
1825
経済産業省と環境省は、地球温暖化対策計画(2016年5月閣議決定)の見直しを含めた気候変動対策について検討を開始する。8月にも産業構造審議会と中央環境審議会による合同会合を始動し、「ポストコロナ時代」を見据えた中長期の方向性を双方が協力・切磋しながら幅広く議論していく。パリ協定を踏まえ2020年3月に政府が国連に提出したNDC(国が決定する貢献)では、地球温暖化対策計画の掲げる中期目標「2030年度に2013年度比で26%減」の水準にとどまらない削減努力を追求すべく、同計画の見直しに着手し、エネルギーミックスと整合的に温室効果ガス全体の施策を積み上げ、「さらなる野心的な努力を反映した意欲的な数値」を目指すとしている。資源エネルギー庁長官に就任する保坂氏経産省は7月14日、20日付の幹部人事異動を発表。地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の関連では、エネルギーや産業技術・地球環境の政策分野で長く経験を積んだ保坂伸・貿易経済協力局長の資源エネルギー庁長官への起用他、技術系の登用、関連施策間の兼務を図るなど、エネルギー、環境、イノベーションの各施策を一体的に強化していく方向性がうかがえる。13日には総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会で、エネルギー安定供給に万全を期しながら脱炭素社会を実現すべく、非効率石炭火力のフェードアウトに向けた検討が開始。1日にはエネルギー基本計画の見直しに向け、同基本政策分科会が10か月ぶりに再開し、原子力発電の立地地域から2030年エネルギーミックスの掲げる「発電量比率20~22%」に遠く及ばぬ現状が指摘されたほか、新任の委員から小型モジュール炉(SMR)の将来展望が強調されるなどした。
15 Jul 2020
3436
福島県は7月15日より、県クリエイティブディレクター・箭内道彦氏監修、アイドルグループのTOKIOの出演による新作CMを通じ、旬を迎える県産の果物・野菜や魚介類の魅力を発信する。 このほど制作されたCMは、「桃篇」(城島茂さん出演)、「夏野菜篇」(国分太一さん出演)、「カツオ篇」(松岡昌宏さん出演)の3編あり、県内の他、首都圏、関西などでも放映予定。「桃篇」では城島さんと農家の人たちが桃をまるかじり。福島の子供たちも登場する「夏野菜篇」では、縁側で涼む国分さんが氷水で冷やしたきゅうり、トマトのおいしさをPR。「カツオ篇」では、松岡さんがしょうがをすりおろし、カツオの刺身を食べるが、盛り付け方法やおいしさの秘訣は県産農林水産物のPR特設サイト「ふくしまプライド。」でも紹介されている。福島県の内堀雅雄知事は7月13日の定例記者会見で、新作CMの見どころとして、「生産者の皆さんとTOKIOの皆さんの素敵な笑顔」、「ベコ太郎(郷土玩具赤べこをモチーフしたキャラクター)と『んだんだ』のリズム」、「正に今、旬を迎えた県産の農林水産物」を強調。これまでも国内外で食品や観光のトップセールスを積極的に行ってきた内堀知事は、震災から9年余りを振り返り「ハード面での復興は間違いなく前に進んできたが、風評の問題はやはり根強い」として、今後も県産農林水産物の品質の高さをアピールしていく考えを示した。
13 Jul 2020
3151
【国内】▽1日 原子力委が六ヶ所再処理工場の平和利用担保を「妥当」、規制委審査の意見照会で▽2日 内閣府が感染症流行下での原子力災害避難に関し考え方まとめる▽3日 規制委、原子力機構「HTTR」に対し新基準による原子炉設置変更許可▽5日 2020年度エネルギー白書が閣議決定▽11日 原子力機構が大気拡散予測を大幅に効率化する「WSPEEDI-DB」開発▽15日 慶大の研究グループがエネミックス選好に及ぼす社会的・経済的要因で研究成果発表▽17日 産業構造審が新型コロナ踏まえた今後の政策に向け議論、エネ基の着実な実施も▽19日 原子力学会会長に京大・中島氏が就任、福島第一事故から10年を機に来春のシンポ開催を表明▽22日 原子力防災会議が女川発電所に係る緊急時対応を了承、感染症対策も▽23日 茨城県議会が東海第二再稼働の県民投票条例案を否決▽24日 規制委、四国電力伊方発電所の使用済燃料乾式貯蔵で「審査書案」了承▽24日 内堀福島県知事が中央省庁を訪れ、復興・創生の加速化などを要望▽25日 規制委検討会が福島第一の水素爆発映像の分析へ、テレビ局の協力得て▽電力各社が株主総会開催▽26日 宮城県が女川発電所に関する住民説明会要綱発表、8月に7か所で開催▽30日 エネ庁、福島第一処理水の取扱いで4回目の意見聴取、小規模事業者・消費者団体より 【海外】▽1日 英HPC建設プロジェクトで2号機のベース・マット完成▽2日 仏フラマトム社、米BWXT社の原子力サービス事業買収完了▽3日 欧州の原子力関係企業ら、EC宛て公開書簡で原子力が経済復興に果たす役割強調▽4日 カナダのダーリントン2号機が約3年半の改修工事終え運転再開▽5日 米GLE社、サイレックス法ウラン濃縮施設の建設を念頭に米エネ省との契約を再調整▽8日 フェンノボイマ社、ハンヒキビ1号機の建設許可取得に先立ち管理棟着工へ▽9日 カナダ初の「サイト準備許可」申請中のSMRで関係企業がJV創設 ▽10日 フォーラトム、調和の取れた欧州原子力サプライチェーンへの支援をECに要請▽11日 IAEA:「パンデミックで停止を強いられた原子力発電所は皆無」 ▽13日 ベルギー規制当局、高レベルと長寿命低中レベル廃棄物の地層処分案を支持▽14日 南ア、合計250万kWの原子力新設計画の準備で情報提供依頼書を発出▽15日 米規制委、オクロ社製SMRの建設・運転一括認可(COL)申請を受理▽15日 ロシアが「ブレークスルー計画」で燃料製造ユニットへの機器設置開始▽18日 IEA:新型コロナ後の経済回復計画で原子力への投資も提案▽18日 ロスアトム社、ベレネ原子力発電所建設計画への投資家選定入札でGE社、フラマトム社と協力▽19日 IAEA理事会、イランに対し疑いのある2施設への査察求める決議を可決▽24日 英NIA、CO2排出量の実質ゼロに向け原子力ロードマップ作成 ▽24日 加サスカチュワン州政府、州内でのSMR建設に向け原子力事務局設置へ▽24日 英計画審査庁、サイズウェルCの開発合意書申請を受理▽25日 IEA:「新政策取られなければ2040年までに欧州の原子力設備は全体の5%に」▽26日 ロシア、最新設計のVVER-TOI含め4基の新規原子炉建設準備を開始▽26日 トルコのアックユ発電所建設計画で2号機のベース・マットが完成▽29日 仏EDF、フェッセンハイム2号機を永久閉鎖▽30日 WNA、技術政策方針書で原子力発電所の運転長期化に対する政府支援を要請▽30日 ハンガリーのパクシュⅡ期工事で建設許可申請 ☆過去の運転実績
10 Jul 2020
2417
日本学術会議の「原子力安全に関する分科会」(委員長=矢川元基・原子力安全研究協会会長)は7月7日、福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染の調査研究に関し報告書を取りまとめ発表。これまでの政府関係機関や学術界による取組を整理した上で、(1)事故進展解析分野と環境影響解析分野の連携、(2)事故からの経過時間に応じた環境動態モデルと環境モニタリングの継承、(3)情報や試料の散逸防止のための長期にわたる組織的対応、(4)アカデミアと行政機関との連携と役割分担、(5)放射線教育の定着、(6)研究進展の全貌把握・横断的解析――に取り組むよう提案した。福島第一原子力発電所事故時の炉内事象と環境放出との関連性について、報告書では、エネルギー総合工学研究所によるシビアアクシデント解析コードのSAMPSONと、原子力災害対策に用いられるWSPEEDI(世界版緊急時環境線量情報予測システム)との比較を紹介。セシウム137の放出量に関し、両者の解析結果に相違が見られたことから、今後の定量的な放出量評価に向け「甲状腺被ばくの点で重要度の高いヨウ素については高い評価精度が求められる」などとして、事故進展解析と環境影響解析との両分野間交流の意義を説いた。学際的な調査研究を通じ、事故から数年以内で、河川、ダム・ため池、海域、森林、農地、市街地など、水系や土地・土壌、そこにおける生態系に関し、放射性物質の環境動態の実測調査やモデル化が進展したことを評価した上で、今後も環境モニタリングの継承が重要な課題と指摘。さらに、情報の収集と蓄積について、ウェブサイト更新によるリンク切れ、測定試料のアーカイブ問題、住民個人による放射線測定データの活用の可能性にも言及。長期にわたる情報の散逸を防ぐため、「組織的対応を行う恒久的なアーカイブ機関が必要」などと提言した。また、「放射線に対する歴史上の経験を考えた場合、わが国は世界で最も充実した教育と人材育成をすべき」、「事故で明らかになったのは社会としての放射線に関連した知識の欠如」と述べ、放射線教育について、(1)初等中等教育で基本的な知識を系統的に取り入れる、(2)大学における総合教育として環境放射能や放射線の講義を行う、(3)学協会が中心となって関連分野の教員を派遣する――ことを提言。報告書では結びに、環境汚染調査と健康調査の連携が不十分などと、分野横断的な解析に係る課題をあげた上で、事故後10年の区切りを迎えるのに際し、「環境影響の全貌が把握でき、さらに包括的かつ緻密な報告」を、事故の当事国としてまとめる必要性を述べている。
09 Jul 2020
2555
パリ協定で掲げる温室効果ガスの排出削減目標実現に向け、環境エネルギーに関わる技術課題について議論する「グリーンイノベーション戦略推進会議」(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長)が7月7日、初会合を開催した。「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」を目指し、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定。2020年1月には、2050年までの確立を目指す具体的な行動計画「革新的環境イノベーション戦略」が策定された。同戦略では、(1)エネルギー転換、(2)運輸、(3)産業、(4)業務・家庭・その他・横断領域、(5)農林水産業・吸収源――の5分野・16技術課題について、コスト目標、開発内容、実施体制、工程などを整理した「イノベーション・アクションプラン」が示されており、このほど戦略実行に向けた府省横断(経済産業省、内閣府、文部科学省、農林水産省、環境省)の有識者会議「グリーンイノベーション戦略推進会議」が立ち上げられた。温室効果ガス排出削減総量約300億トン以上を目指すエネルギー転換の分野では、革新的原子力技術や核融合エネルギー技術の実現も含まれている。戦略推進会議では、ワーキンググループを設置し、これらの技術課題について専門的検討を進め、年内にも報告書の取りまとめを行う予定。戦略推進会議のキックオフに際し、松本洋平経済産業副大臣は、「高い目標達成のためには中長期的に多くの技術課題があり俯瞰的視点が重要」と、大所高所から幅広い議論がなされることを期待したほか、「地球温暖化は共通の課題」と、近年の環境イノベーションに関わる産学官連携の進展を歓迎。また、八木哲也環境大臣政務官も、新型コロナを踏まえた社会の再設計や、SDGs達成に向けた地域レベルでの実践的取組などに触れ、2021年のCOP26でアピールできるよう活発な討議を期待した。国際社会への発信に関し、前回のCOP25(スペイン)への参加経験から竹内純子氏(国際環境研究所理事)は、「環境政策はイメージが先行しがち、どのくらいの効果があるのか、エビデンスに基づいた説明も意識する必要」などと、メディアの役割に言及。また、橋本和仁氏(物質・材料研究機構理事長)は、太陽電池の世界的導入に結び付いた1970年代の「サンシャイン計画」を例に、日本がエネルギーの技術革新でいかに貢献してきたか、改めて見直す必要性を強調。一方、「日本はビジネスモデルを作っていくことが非常に苦手」、「成果をいかに社会へ還元していくか」、「将来の社会ビジョンを見据えながら有効な技術を考えていく必要」といった産業創出や社会実装に関する指摘もあった。
07 Jul 2020
3463
日本原子力学会はこのほど、小学校で使用されている社会科と理科の教科書のエネルギー・原子力関連の記述について調査し提言をまとめた。2009、11年に続く今回の同学会による小学校教科書調査では、新学習指導要領(2017年改訂)に基づいて編集され文部科学省の検定を受けた社会科14点(3~6年、上下巻などの分冊も含む)、理科24点(同)のうち、エネルギー資源や発電、原子力関連の記述が、社会科6点、理科6点で確認されたとしている。その上で、(1)資源・エネルギーについてわかりやすく、(2)日本の電力の状況について定量的に、(3)原子力発電の仕組みについても丁寧に、(4)原子力発電の特徴についてわかりやすく、(5)福島第一原子力発電所事故について適切に――説明を望むと提言。例えば、一部の社会科教科書で、日本における発電方式別(火力、水力、原子力)の発電量・比率をグラフで示しているものや、電力に関する単位(kW 、kWh)についても説明しているものがあり、他の教科書でも「積極的に取り扱われることを提言」などと推奨。また、資源・エネルギーについて考えさせる際、「S+3E」の観点について、「安全である」、「安定して利用できる」、「環境への影響(地球温暖化)が小さい」、「費用を抑えられる」などと、わかりやすく図示することを提言している。学習指導要領では6年の理科で発電について扱うこととなっているが、火力については、理科教科書6点いずれも「化石燃料を燃やして、その熱で蒸気を発生させ、タービンを回して発電機で電気を起こす」といった説明・図があるものの、原子力に関しては3点に記述がなく、「ウランを燃料とする。蒸気を発生させるまでの手段が異なるだけ」という火力との相違点を理解させるようと並列して示すべきと提言。原子力発電の特徴を箇条書きしたわかりやすい例としては、「少ない燃料で多くの電気を作ることができる」、「発電の時に二酸化炭素を出さない」、「燃料や廃棄物の扱いが難しく、安全のための十分な備えが必要になる」、「事故などで有害な物質が放出されると、広い範囲に長く影響を及ぼすことがある」などと、説明している社会科教科書(4年)があった。福島第一原子力発電所事故については、「津波の影響で電気の供給が止まり、原子炉を冷やすことができなくなった」発生原因、放射性物質や風評被害に関し適切に説明すべきと提言。福島の復興に関しては、避難指示区域の解除や富岡町の「桜まつり」復活を取り上げている社会科教科書(6年)があった。
06 Jul 2020
3615
梶山弘志経済産業相と電気事業連合会加盟各社社長らとの意見交換会が7月2日に行われ、電事連からは、関西電力の金品受領問題を受けた業界全体でのコンプライアンス徹底や、昨秋の大型台風襲来に伴う長期停電を踏まえた電力インフラのレジリエンス強化の取組について報告があった。今回の意見交換会は、使用済燃料対策推進協議会との併催となり、日本原子力発電、電源開発、日本原燃の各社社長も出席。同協議会は、現行のエネルギー基本計画が策定された2018年以来の開催で、電事連は引き続き、各事業者の連携を一層強化し、使用済燃料対策推進計画(2030年頃までに使用済燃料貯蔵容量の6,000トン程度の拡大)の実現、六ヶ所再処理工場とMOX燃料加工工場の早期竣工、プルサーマルの推進、高レベル放射性廃棄物最終処分や廃炉に伴う解体廃棄物への対応、地元の理解・地域振興に努めていくとした。その中で、プルサーマルに関しては、事業者間の連携・協力による、国内外のプルトニウム利用の推進と保有量の管理について検討を進めるとしている。原子力委員会は2018年に「プルトニウムを減少させる」ことを明記した「わが国におけるプルトニウム利用の基本的考え方」を策定。日本のプルトニウム保有量は国内保管分より海外保管分が多く、「事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む」としている。一方、電事連によると、現在までにプルサーマル発電で再稼働した四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機、関西電力高浜3、4号機のうち、伊方3号機で1月に商業炉として初めて使用済MOX燃料の取り出しが行われた。使用済MOX燃料の処理・処分の方策については、エネルギー基本計画で、その発生状況や保管状況、再処理技術の動向、関係自治体の意向を踏まえながら研究開発に取り組むとしており、経済産業省は今回、事業者に示した要望事項の中で、技術開発面での協力、具体的な貯蔵・運搬方法の検討を求めた。今回の意見交換会に先立ち、梶山経済産業相は6月30日と7月1日、青森県を訪れ、三村申吾知事ら、地元首長との会談に臨んだほか、日本原燃六ヶ所再処理工場、リサイクル燃料貯蔵(使用済燃料中間貯蔵施設)、東北電力東通原子力発電所を視察した。
03 Jul 2020
2644
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が7月1日に開かれ、新型コロナウイルス感染症拡大を起因とする国内外の情勢変化を踏まえ、次期エネルギー基本計画の検討に向けて意見交換を行った。現行のエネルギー基本計画は2018年に策定されており、間もなくエネルギー政策基本法に基づく「少なくとも3年ごと」の見直し時期を迎える。同分科会の開催はおよそ10か月ぶりで、冒頭、昨今の新型コロナウイルス感染症を起因とする情勢変化と、それを踏まえた課題と方向性について資源エネルギー庁が整理。IMFやIEAによる試算を示し、過去の第一次オイルショック(1973年)、第二次オイルショック(1979年)、リーマンショック(2008年)と異なり、物理的な行動が制限される「コロナショック」により、「2020年は世界的にGDPもエネルギー需要も大きく低下」などと見通した。また、国内においては、例えば電力需給で、4、5月は前年同月と比較し消費量がそれぞれ約3.6%(速報値)、9.2%(同)減少するなど、影響はあったものの、中央給電指令所や発電所での担当班が相互接触しないローテーション業務・バックアップ体制構築により、電力の安定供給に支障は生じていないと説明。その上で、今後の課題として、(1)新たな日常・生活様式・企業活動を踏まえたエネルギー需要高度化・全体最適化に向けた取組の検討、(2)エネルギー転換(電化・水素化など)の支援・推進、(3)資源・燃料の安定的な調達、(4)エネルギー・環境イノベーション投資に向けた環境整備・デジタル化の促進、(5)脱炭素エネルギー供給のさらなる導入、(6)レジリエンスの強化――をあげた。初出席の白石分科会長今回、分科会長として初めて会合に出席した白石氏は、2021年に見込まれるエネルギー基本計画の改定に向けて「大きな視点から方向性を議論して欲しい」と述べ、委員らに意見を求めた。これに対し、化石燃料に関して、豊田正和氏(日本エネルギー経済研究所理事長)は、石炭火力発電でのアンモニア混焼など、脱炭素化に向けた技術導入・国際協力の可能性を披露。原子力立地地域からは、杉本達治氏(福井県知事)が、「総発電電力量に占める比率は現在6%」と、2030年エネルギーミックスの掲げる「20~22%程度」に遠く及ばない状況を指摘し、次期エネルギー基本計画に向けて、MOX燃料の再処理、リプレース、廃炉の進展を踏まえた交付金制度のあり方、電力業界の不祥事なども「真正面から議論していく」必要性を強調。また、市民との対話活動に取り組む崎田裕子氏(ジャーナリスト)は、海洋プラスチック問題やレジ袋有料化など、SDGsを巡る最近の話題に触れたほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による水素社会構築の情報提供事業に対し若年層が高い関心を示していることを述べ、「社会との情報共有の定着化」の重要性を指摘。今回、委員として初出席した隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、官民一体となったイノベーション創出を図るべく「小型モジュール炉(SMR)のような安全性の高い原子力技術についても議論を」と主張した。資源エネルギー庁は「コロナショック」に伴うエネルギー需給への影響の一つとして、人流・物流の変化により「需要が集中型から分散型にシフト」したことをあげた。武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近のアンケート調査結果から「コロナ前後で一番の違いは地方中核都市への分散」と、住まい方に変化が生じつつあることを述べた上で、「コロナ以前から日本が抱えていた社会課題への投資、産業育成や雇用創出につなげていくことが重要」として、次期エネルギー基本計画で、生活者の行動変化を見据えながら中長期的方針を示す必要性を強調した。この他、中東の地政学的リスクへの対応、エネルギー教育・技術基盤の強化、原子力規制のあり方などに関する意見があった。
02 Jul 2020
3172