キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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G7でルーマニアのSMR計画に合計2.75億ドルの支援を決定
米国務省は5月20日、米国が日本と韓国、およびUAEの官民パートナーとともに、ルーマニアが進めている米ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の導入計画に共同で最大2億7,500万ドルの支援を提供すると発表した。これは昨年6月のG7エルマウ(ドイツ)サミットの際、設立された発展途上国へのインフラ投資を促す枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」に基づく具体的な活動で、PGIIでは2027年までに世界中で6,000億ドル規模のインフラ投資を目指している。米国では今回、輸出入銀行(US EXIM)が「エンジニアリング波及プログラム(EMP)」の中から、最大9,900万ドルの支援をルーマニアに提供するという「意向表明書(LOI)」を発出。米国からはこれに加えて、EXIMがさらに30億ドル、および政府の独立機関として民間の開発プロジェクトに資金提供を行っている国際開発金融公社(DFC)が10億ドルの資金提供を行う可能性に向けて、LOIを発出している。ルーマニアでは、国営原子力発電会社(SNN社)が南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)にある石炭火力発電所の跡地で、ニュースケール社のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(出力7.7万kW)を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)の建設を計画。同計画のプロジェクト企業として、SNN社は2022年9月に民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁でロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社を設立しており、2029年までに同設備を完成させる考えだ。この計画に対し米国政府はすでに2021年1月、貿易開発庁(USTDA)を通じてSNN社にSMR建設サイトの選定作業支援金約128万ドルを交付。前回サミットではPGIIの下で、「(予備的な)基本設計(FEED)調査」を実施する費用として1,400万ドルの提供を約束していた。今回、米国の EXIM、DFCとともに同計画への支援を表明したのは、日本国際協力銀行(JBIC)と韓国の資産運用会社であるDSプライベート・エクイティ(DSPE)社、UAEの原子力導入計画を主導している首長国原子力会社(ENEC)、およびルーマニアのEXIMとSNN社、ノバ・パワー&ガス社である。具体的な支援項目としては、長期を要する資機材の調達、ロパワー社がニュースケール社と実施している第1段階のFEED調査の完了作業(第2段階)、プロジェクト管理関係の専門的知見の提供、サイト特性と規制に関する分析評価、建設スケジュールと予算の正確な見積もりなどを挙げている。UAEのENECは原子力関係の専門家派遣等を通じて同計画に協力する方針で、これは昨年11月にUAEが米国と結んだ「クリーン・エネルギー加速のためのパートナーシップ」に基づく原子力関係の最初の活動である。米国務省によると、安全・確実な民生用原子力技術に対する今回の多国間の支援協力によって、世界規模のクリーン・エネルギーへの移行と地球の気温上昇を1.5℃に抑える上で、原子力が果たす重要な役割が明確に示された。米国としては、脱炭素化への世界的な動きに力を与える革新的なクリーン・エネルギー技術の活用を引き続き支援し、世界中のパートナー国にエネルギーの供給保証と自立をもたらしたいとしている。ロパワー社の社長を兼務しているSNN社のC.ギタCEOは、「チェルナボーダ原子力発電所で26年以上積み重ねてきた安全運転の経験に基づき、ルーマニアが原子力発電所の戦略的開発プロジェクトを進められることを誇りに思う」と表明。ルーマニアがニュースケール社製SMRを建設する米国に次ぐ2つ目の国として、また欧州では初の国として世界中の金融機関から信頼と支援を勝ち取ったこともまた、大きな誇りであると強調した。(参照資料:米国務省、US EXIM、SNN社、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 May 2023
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米鉄鋼大手ニューコア社 SMR導入へ
北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(Nucor)社は5月16日、ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。ニュースケール社が明らかにしたもので、ニューコア社は「NPM」を複数備えた発電設備「VOYGR」をベースロード電源とし、製鋼所の電気アーク炉(EAF)にクリーンな電力の供給を計画。今回の覚書に基づいて、ニュースケール社とその可能性を模索していく。具体的に両社が実施する作業は、立地点の適性評価のほかに「VOYGR」建設にともなう送電網との接続方法や資本コストの確認など。これに加えてニュースケール社側は、NPMの製造工場をニューコア社施設の近隣に建設する事例についての実行可能性も調査する。両社はまた、この協力関係をさらに拡大することも検討中。ここでは、ニューコア社のCO2排出量実質ゼロ製法による鋼製品「Econiq」を、ニュースケール社のその他のSMRプロジェクトに適用していくことを念頭に置いている。両社は2022年時点ですでに協力関係にあり、ニュースケール社が同年4月、「NPM」の商業化を加速するためスプリング・バレー社と合併した際、ニューコア社はこの合併を促進するため、ニュースケール社に1,500万ドルの民間投資を行っていた。「NPM」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することが可能。顧客の要望に応じて、接続基数を変えることで出力調整が行える。受動的安全系を全面的に採用しているため、主要な安全機能は外部電源を必要としない。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は7.7万kW版のモジュールについても、2023年1月にSDAを申請している。一方、ニューコア社は電力集約型産業ならではの課題解決に取り組んでおり、「Econiq」ブランドでは100%再生可能エネルギー源による電力で鋼製品を製造。ニュースケール社との覚書締結について、同社のL.トパリアン社長兼CEOは、「この協力を通じてCO2排出量が実質ゼロのエネルギー社会に向けて道を拓くとともに、最もクリーンな製造方法による鋼製品を世界中に広めたい」と述べた。「NPM」の初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が電気出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた「VOYGR-6」(出力46.2万kW)を、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。「NPM」導入に向けた動きは米国にとどまらない。ルーマニアでは、国営原子力発電会社(SNN)が「NPM」を国内で建設するため、民間エネルギー企業と共同でプロジェクト企業の「ロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社」を設立。ロパワー社は2022年11月に国内鉄鋼メーカーのドナラム(Donalam)社と協力覚書を交わし、CO2排出量を低減した「グリーン・スチール」を製造する方針である。ポーランドでは、鉱業大手のKGHM銅採掘会社(KGHM社)が「NPM」の導入計画を推進中。同社は今年4月、この計画に対する「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 May 2023
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米ダウ社 X-エナジー社製SMRの立地点を選定
米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社は5月11日、X-エナジー社製の小型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」(電気出力8万kW)を建設する地点として、テキサス州のメキシコ湾沿いに位置するシードリフト(Seadrift)市を選定した。同社とX-エナジー社は「Xe-100」を4基備えた出力32万kWの発電所を2026年に着工し、2020年代末までに完成させることを目指しており、今後は原子力規制委員会(NRC)に「Xe-100」の建設許可申請の準備を共同で開始する。シードリフト・サイトには、ダウ社が2001年に吸収合併したユニオン・カーバイド社の製造施設が立地。「Xe-100」発電所で温室効果ガスを排出せずに安全かつ信頼性の高い電力と蒸気を確保できれば、ダウ社は同施設の温室効果ガスをCO2換算で年間約44万トン削減出来る。「Xe-100」は熱電併給可能な第4世代の非軽水炉型・先進的SMRで、ベースロード用電源としての役割に加えて、水素製造や海水脱塩など幅広い用途に適用出来る。米エネルギー省(DOE)は2020年10月、X-エナジー社を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」での支援対象企業の一つに選定。実証炉建設のための支援金8,000万ドルがDOEから交付され、その一部は「Xe-100」で使用する3重被覆層・燃料粒子(TRISO燃料)の製造施設建設にも活用可能である。2022年10月に同社の100%子会社であるTRISO-X社は、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」の起工式を行っている。X-エナジー社は2022年8月に「Xe-100」の基本設計を完了、同じ月にダウ社と基本合意書を交わし、ダウ社がメキシコ湾沿いに保有する施設の一つで同炉を建設することになった。両者はその後「共同開発合意書(JDA)」に調印しており、その中で最大5,000万ドルを「Xe-100」のエンジニアリングに充てると明記。その半分までを、DOEとX-エナジー社が結んだARDP協力協定の支援金から再配分、残り半分はダウ社が提供する。ダウ社のシードリフト・サイトは面積が約19km2で、電線の絶縁体や太陽光パネル用の薄膜など、年間180万トン以上の化学製品を製造している。同社のJ.フィッタリング会長兼CEOは、「設置面積が小さくコストも割安な先進的原子炉は、その他のクリーン電源と比べて大きな強みを持っている」と指摘。同社が追及する持続可能な開発目標の達成では、同サイトが重要な役割を果たすとした。X-エナジー社のC.セルCEOは、「当社の革新的な技術により、シードリフト・サイトが必要とする電力や熱を効率的かつ確実に脱炭素化できる」と強調している。「Xe-100」の実際の建設については、米ワシントン州の2つの公益電気事業者が同州内での共同建設を目標に、2021年4月にX-エナジー社と覚書を締結。メリーランド州のエネルギー管理局も2022年6月、「Xe-100」で州内の石炭火力を代替可能かについて、経済面や社会面の実行可能性を調査すると発表した。国外では、カナダ・アルバータ州の外国投資誘致機関が今年1月、「Xe-100」の州内建設を通じて同州経済を活性化する可能性を探るため、X-エナジー社のカナダ法人と了解覚書を締結している。(参照資料:ダウ社、X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 May 2023
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ウクライナ 最大20基のSMR建設に向け米ホルテック社と協力協定
ウクライナ民生用原子力発電公社のエネルゴアトム社は4月21日、米ホルテック・インターナショナル社製・小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」(電気出力16万kW)の初号機を、2029年3月までにウクライナで送電開始するというパイロット・プロジェクトの実施に向け、同社と協力協定を締結した。同協定で、エネルゴアトム社は最終的に最大20基の「SMR-160」の国内建設を視野に入れ、「SMR-160」に使用する様々な専用機器の製造施設建設など、同技術の一部国産化も検討している。両社はこれら20基の運転と機器製造施設の操業開始を早期に実現するため、効率的な実施計画を共同で策定する。ホルテック社はウクライナで使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CSFSF)の建設計画を請け負うなど、20年以上にわたりエネルゴアトム社と協力。同CSFSFは、2022年4月に操業を開始している。SMR関係では2018年3月に協力のための了解覚書を締結しており、両社はウクライナ北西部のリウネ原子力発電所で6基の「SMR-160」建設を目指すとしていた。2019年6月には、これら2社にウクライナ国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)を加えた3者が「SMR-160」の国内建設を進めるため、国際企業連合を設立している。今回の協定への調印は、エネルゴアトム社のP.コティン総裁がウクライナの首都キーウで、同時にホルテック社のK.シン社長兼CEOが米ニュージャージー州のカムデンにおいて、オンラインで行った。このほか、ウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣、ホルテック社でウクライナ事業を担当するR.エイワン副社長らも調印式に参加した。今回の協定を通じて、エネルゴアトム社はウクライナにおけるエネルギー供給保証の強化に向け、一層広範な協力関係をホルテック社と確立する方針である。SMRはウクライナのエネルギー部門全体の脱炭素化とエネルギーの自給促進に有効であるだけでなく、専用ハイテク機器の製造業創業にも有効だと同社は指摘。ロシアによる軍事侵攻の終了後を見据え、SMRを通じて破壊された火力発電所などエネルギーインフラの再構築を図るとともに脱炭素化も進めていく。具体的には双方の活動を調整するため、両社は同協定の下で「共同プロジェクト事務所」を設置する。石炭火力発電所の跡地等を中心に、ウクライナ全土で「SMR-160」を設置するのに必要な作業や許認可手続き等を協力して遂行。同事務所には両社のスタッフに加えて、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)やエネルギー省、SSTC NRS、ホルテック社のSMR事業に協力している三菱電機や韓国の現代E&C社(現代建設)のスタッフも常駐する見通しである。エネルゴアトム社のコティン総裁は、「クリーンエネルギーへの移行に有効な革新的技術の実証をウクライナはこれまで懸命に進めてきたが、エネルギーの自給や多様化を進めるには先進的な原子力技術が不可欠。原子力はウクライナの総電力需要の55%以上を賄う重要電源であることから、今回の協定を通じてウクライナは安全でクリーンかつ信頼性の高い有望なSMRを建設し、主要なクリーンエネルギー国になる」と表明。同時に、経済開発や雇用の創出、製造施設や訓練施設の建設も進め、ホルテック社の原子力技術を世界中に普及させる地域ハブとする考えを明らかにしている。(参照資料:エネルゴアトム社、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Apr 2023
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ポーランドの銅採掘企業 ニュースケール社製SMRでDIP申請
ポーランドの鉱業大手KGHM銅採掘会社(KGHM社)は4月14日、米ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の国内建設に向け、この計画に対する「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請した。「DIP」の発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると政府が確認し、正式承認したことを意味している。事業者がそれ以降、立地点の決定や建設許可など様々な行政承認を申請していく上で必要な大枠の手続きとなる。この前日には、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)も、北部ポモージェ県における同国初の大型原子炉建設に向けて「DIP」の発給を気候環境省に申請した。政府が株式の約4割を保有するKGHM社は、ポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床で採掘を行っており、持続可能な開発というコンセプトに沿った活動も展開中。2050年までに同社が排出するCO2の実質ゼロ化を目指しており、事業に必要な電力や熱エネルギーの約半分を2030年までに自社で賄うため、SMRや再生可能エネルギー源の設置プロジェクトを進めている。ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能である。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は7.7万kW版のモジュールについても、2023年1月にSDAを申請している。2022年2月にKGHM社は、7.7万kW版の「NPM」を複数基備えた発電設備「VOYGR」の建設に向けて、ニュースケール社と先行作業契約を締結した。早ければ2029年にも同プラントを完成させる計画で、2022年7月には5万kW版の「NPM」について、国家原子力機関(PAA)に事前の安全評価を要請。これは原子力法に規定された予備的な許認可手続きの一つであり、PAA長官は約9か月かけて見解を取りまとめる。政府の出資企業が国のクリーンエネルギーへの移行に参画することは、J.サシン副首相兼国有資産相も奨励しており、「原子力は安全でクリーンかつ安価なエネルギー源であり、ポーランドのさらなる発展に寄与する」と明言。国内企業がポーランドのエネルギー供給保証に関われば、より効率的に国を強化できると指摘した。KGHM社のT.ズジコット社長はSMRを建設する理由として、「当社は国内最大規模の企業であると同時に、最大のエネルギー消費企業でもある」と説明。同社は最重要プロジェクトと位置付けるSMRの建設を通じて、今後の企業運営を安定化する方針であり、原子力も含めた同社のクリーンエネルギーへの移行は、ポーランド全体のエネルギー・ミックスの重要な柱になるとしている。(参照資料:KGHM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Apr 2023
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ポーランドで大型炉とSMRの建設計画が進展
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は4月13日、北部ポモージェ県内における同国初の大型原子炉建設に向けて、「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請した。また、同国内で小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は、4月17日に建設候補の7地点を公表している。PEJ社の「AP1000」建設計画気候環境省による「DIP」の発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると正式に確認したことを意味している。建設サイトとなるポモージェ県ルビアトボ-コパリノ地区の承認やその後の建設許可など、PEJ社が今後様々な行政承認を申請していく上で必要な手続きの大枠としての承認となる。このためPEJ社は今回、原子力施設と関係インフラの開発と実行に関する改正特別原子力法が発効するのに合わせて、このDIP発給の申請書を提出したもの。ポーランド政府は現在、改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内複数のサイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。2022年11月には最初の3基、計375万kW分に採用する設計として、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWR設計である「AP1000」を選定した。2026年にも初号機の建設工事を開始し、2033年の完成を目指している。PEJ社によると「DIP」の申請書には、設置される設備の最大容量や稼働期間、採用設計の詳細など、プロジェクトの諸条件を記した文書が含まれる。また、ポーランドの電力確保に原子炉建設が必須である理由など、プロジェクトとしての正当性を示すことが不可欠の要素。この申請はさらに、2021年2月に決定した「2040年までのエネルギー政策」など、政府の戦略文書との整合性も要求される。OSGE社の「BWRX-300」建設計画一方のOSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と、同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資する合弁事業体(JV)である。SMRのなかでもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」の建設に絞り込んでおり、2030年の初号機完成を目指している。同社は17日にPKNオーレン社の本部で記者会見を開き、数十の候補地点の中から最も有望な7地点を選定したと発表。具体的には首都ワルシャワ、オストロウェンカ(Ostrołęka)、 ブウォツワベク(Włocławek)、スタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、およびタルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区である。今後は、これらの地点でさらなる地質調査を実施し潜在的な可能性を確認、それぞれの地域コミュニティとは予備的な協議を開始する。これらを終えた後、2年ほどかけて最初のSMRの建設可能性を徹底的に分析し、合意が得られた場合にのみプロジェクトの実施判断を下す方針である。OSGE社によると、SMRへの投資はクリーンエネルギーへの移行を効率的かつ早いペースで進めることができる。最先端の技術を採用しているため最大限の安全性が保証されており、世界では数多くのSMRが都市部やその周辺での建設が計画されている。同社は一例として、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション社が、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所内で「BWRX-300」の建設を計画している事実に言及。同発電所は、同州有数の商業都市で14万人の人口を抱えるオシャワから5kmの地点にある。なお、OSGE社が建設する「BWRX-300」の最初の複数基に対しては、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)が最大30億ドル、国際開発金融公社(DFC)が最大10億ドルの財政支援提供の意思を表明した。17日に拘束力のない声明文である意向表明書(a letter of interest)に署名したもので、既定の輸出取引で申請書が提出された場合に、財政支援を行う用意があることを示している。OSGE社によると、ポーランド国内の主要な3銀行も同様に資金提供を表明している。(参照資料:PEJ社の発表資料、OSGE社の発表資料①、②、US EXIMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Apr 2023
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カナダの2州がSMR建設で協力
カナダのニューブランズウィック(NB)州とサスカチュワン(SK)州の両政府は4月17日、両州で第4世代小型モジュール炉(SMR)の建設を念頭に置いた協力の強化で合意し、了解覚書を締結した。この覚書は、両州およびオンタリオ州がカナダ国内におけるSMRの開発と建設に向けて、2019年12月に交わした「協力覚書」に基づくもの。同覚書には2021年4月にアルバータ州も参加し、2022年3月には4州で「SMR開発・建設の共同戦略計画」を策定している。今回の覚書により、双方の州営電力であるNBパワー社とサスクパワー社は、SMRの建設計画や関係するサプライチェーンと雇用環境の構築、規制等に関する知見や経験を共有する。具体的には、NB州が州内の複数地点で建設を計画している米ARCクリーン・テクノロジー社製の第4世代SMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を、SK州にも建設する方向での協力になる。SK州はすでに2022年6月、2030年代半ばまでに州内で建設する最初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。同炉については、オンタリオ州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社がそれよりも先に2021年12月、州内のダーリントン原子力発電所内で、早ければ2028年初頭までに完成させるSMRとして選定。SK州は、オンタリオ州の方針に追随すれば初号機建設にともなうリスクが回避されるなど、カナダ全体で多数のSMRを建設していく上で多くの利点があると説明していた。一方のNB州では、2018年にNBパワー社が同社のポイントルプロー発電所内で、第4世代のSMR実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。第4世代のSMR開発は同州の「気候変動アクション計画」に盛り込まれており、同州が2035年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す上で重要な部分を担う。第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づく「ARC-100」はこの2種類の1つであり、2029年の運転開始が見込まれている。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が2022年11月、北部地域の経済成長に向けて開発中の「グリーン・エネルギー・ハブ特別区」における活動の一環として、「ARC-100」の導入を目指すと発表していた。NB州は今回、SMR開発は両州のみならず世界中で、安全かつ信頼性の高い無炭素エネルギーを提供できると指摘。その中でも、第4世代の先進的なSMRは電力のみならず高温熱を生産できるため、様々な産業プロセスの脱炭素化やクリーンな水素の製造には理想的だと述べた。NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、「原子力発電所の運転では40年の経験があるので、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーの開発でNB州はカナダのみならず世界中で主導的役割を担っていく」と明言。原子力は今後、低炭素な社会に移行する際の重要電源になると指摘している。SK州のD.モーガン・サスクパワー社担当相は、「SMR関連で両州はここ数年間に強力な協力関係を築いており、今後は国内外のSMR事業で互いに利益を得ていきたい」と表明。SMR技術の活用で脱炭素化が加速されると述べた。なお、「ARC-100」については、アルバータ州政府も今年3月、州内での建設と商業化に向けてARCクリーン・テクノロジー社と協力する考えを発表している。(参照資料:NB州政府、SK州政府、ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Apr 2023
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加アルバータ州 ARC社製SMRの建設に向け覚書締結
カナダ中西部アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は3月23日、米ARCクリーン・テクノロジー社のカナダ法人(ARCカナダ社)と了解覚書を締結、同州内でARC社製の第4世代小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」の建設と商業化に向けて協力することになった。「ARC-100」はナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉で、電気出力は10万kW。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」で確認済みのものである。アルバータ州は天然資源豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスの資源に恵まれており、州内には重工業やエネルギー企業の本社が多数置かれている。今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、水素製造や医療用放射性同位体の生産、オイルサンドからの燃料抽出、化学製品の製造、鉱山業、海水脱塩といった産業の脱炭素化を推進。低炭素社会への移行に際しても、エネルギー生産州としての立場を維持していく方針だ。ARCカナダ社によると、「ARC-100」の小規模な設計や熱電併給可能という柔軟性、化石燃料に対するコスト面の競争力の高さは、同州にとって理想的な無炭素エネルギー源となる。そのためIACは、今回の覚書を通じて州内複数地点での「ARC-100」建設に向けた支援を行うとしており、間欠性のある再エネをSMRで補うことで同州の脱炭素化戦略を進める。一方のARCカナダ社は、IACによる支援の下で同州の関係者や産業界との連携を深め、複数の「ARC-100」の製造・建設と運転に不可欠のサプライチェーンを構築し、関連サービスを提供していく考えだ。アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック(NB)州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を締結。今年1月には、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて同州経済活性化の可能性を探るため、IACが同社のカナダ法人と了解覚書を締結している。ARC社の社名は元々、アドバンスド・リアクター・コンセプツ社だったが、その後はARCニュークリア社、ARCクリーン・エナジー社と変更していき、現在はARCクリーン・テクノロジー社と呼称している。ARC社は2018年7月、カナダ東部NB州の州営電力であるNBパワー社と協力合意しており、同社が州内で運転するポイントルプロー原子力発電所内で、2029年までに「ARC-100」を完成させる計画だ。これにともない、同社はNB州セントジョンに初のカナダ事務所を設置している。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が2022年11月にARCカナダ社の提案を受け入れ、「ARC-100」の建設に向けて米国のプロジェクト開発企業と協力することになった。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Mar 2023
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GEH製SMRの標準化に向け国際連携
カナダ、米国およびポーランドで、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画している各事業者は3月23日、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、チームを組んで「BWRX-300」の標準設計開発に協力することで合意した。これら4者の協力合意は同日、関係3か国の政府代表が参加した米ワシントンDCでのイベントで明らかにされた。カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、ダーリントン原子力発電所で2028年末までに「BWRX-300」初号機を完成させることを計画中。2022年10月にカナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可申請を行うとともに、サイトの準備作業も実施している。米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は、テネシー州クリンチリバー・サイトで「BWRX-300」を建設する可能性に基づき、2022年8月に予備的な許認可手続きを開始した。ポーランドのシントス・グリーン・エネルギー(SGE)社は同国のPKNオーレン社との合弁企業により、2033年以降の完成を念頭に「BWRX-300」初号機の建設サイトの選定作業を始めている。「BWRX-300」の原子炉容器や炉内構造物など、主要機器の標準設計開発や詳細設計にかかる約4億ドルと見積もられる費用の一部をこれら3事業者が負担。カナダや米国、ポーランドも含め、様々な法制が敷かれている複数の国で、「BWRX-300」の許認可手続きや建設工事が可能になるよう、標準設計開発のための「設計センター作業グループ」を共同で設置する方針である。GEH社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「今回の協力体制によってチームのメンバーそれぞれに利益がもたらされるだけでなく、エネルギーの供給保証や脱炭素化を推進するその他の国においてもSMRが果たす役割の有効性が実証される」と指摘。GEH社はSMRの開発と製造にかかるコストの管理に体系的に取り組んでいることから、この協力を通じて「BWRX-300」のコスト面の競争力も強化されるとしている。「BWRX-300」は出力30万kWの次世代原子炉で、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)型炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。カナダではすでに今月15日、「BWRX-300」はCNSCが提供している任意の予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査(VDR)」の主要部分をクリア。VDRは対象設計がカナダの規制要件に適合しているか、正式な許認可手続きに先立ち評価するもので、GEH社はこの直後の同月21日、「BWRX-300」の原子炉圧力容器(RPV)のエンジニアリング契約を、BWXテクノロジーズ(BWXT)社のカナダ支社に発注した。ポーランドでは、SGE社とPKNオーレン社の合弁企業であるオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が2022年7月、「BWRX-300」に対する国家原子力機関(PAA)の包括的な評価見解を求めて、GEH社の技術文書に基づいてまとめた文書を提出している。GEH社はこのほか、同炉を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、昨年12月に申請書をビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に提出した。同国の原子力規制局(ONR)と環境庁(EA)は約5年をかけて、対象設計が安全・セキュリティ面と環境影響面で英国の基準を満たしているか評価中である。(参照資料:GE社、OPG社、TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Mar 2023
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ロールス・ロイスSMR社 北欧とウクライナでのSMR建設に向け覚書
英国のロールス・ロイスSMR社は3月21日、フィンランドとスウェーデンで同社製小型モジュール炉(SMR)の建設機会を共同で模索していくため、フィンランドの国有エネルギー企業フォータム社と協力覚書を締結した。同社はまた、ロシアと戦争中のウクライナで住宅や電力設備を再建する動きがあることから、将来的な戦後の復興支援として同国でSMRを建設することを念頭に、20日付でウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社とも協力覚書を交わしている。フォータム社は、フィンランド国内でロビーサ原子力発電所を所有・運転する大手エネルギー企業。2022年11月からは、同国とスウェーデンの両国で大型炉やSMRなど原子炉の新設に向けた2年計画の実行可能性調査(FS)を開始した。原子炉の新設を可能にするための必須条件を、これら2か国で技術面や商業面、社会面から特定する方針。同社の戦略的優先事項として、北欧諸国に原子力で信頼性の高いクリーン・エネルギーをもたらし、産業界の脱炭素化を促すとしている。同社がロールス・ロイスSMR社と結んだ協力覚書はこのFSの一部であり、フォータム社は新しいパートナーシップやビジネスモデルに関する調査も実施する。ただし、フォータム社はロールス・ロイスSMR社のほかに、独自のSMRを開発中のフランス電力(EDF)やスウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社、およびフィンランド・ヘルシンキ市営のエネルギー企業であるヘレン社ともSMR建設に向けた協力覚書を締結済み。フォータム社としての最終的な投資判断は、後の段階で下すとしている。ロールス・ロイスSMR社は、英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社として2021年11月に設立された。同社製SMRは既存のPWR技術を活用した出力47万kWのモジュール式SMRで、少なくとも60年間稼働することができる。同炉はベースロード用電源としての役割を果たすほか、間欠性のある再生可能エネルギーを補うことで、再エネ電源の設置容量拡大を支援。英国では2030年代初頭にも、SMR発電所を送電網に接続することを目指している。ロールス・ロイスSMR社とエネルゴアトム社の協力覚書 ©Energoatomエネルゴアトム社と結んだ協力覚書では、ロールス・ロイスSMR社はSMRの建設を通じて、ウクライナの100万戸以上の世帯に十分な無炭素電力を60年以上にわたり供給し、エネルギーの自給と供給保証の再構築を支援すると表明。同社のT.サムソン社長兼CEOは、「英国の原子力技術でウクライナの速やかな再建を後押ししていきたい」と述べた。これに対してエネルゴアトム社のP.コティン総裁は、「ウクライナは引き続きエネルギーの自給に向けた努力を続けていくが、先進的な原子炉技術が無ければ難しい」と指摘。「今回の協力覚書を通じて、ウクライナは戦後のエネルギー・インフラを高品質なものに作り替え、有望なSMR技術を導入した最初の国の一つになる」と表明している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社、フォータム社、エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Mar 2023
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BWRX-300 カナダの事前審査の主要段階をクリア
米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は3月15日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)で実施している「ベンダー設計審査(VDR)」で、主要部分である第1、第2段階が完了したと発表した。CNSCは19の審査分野についてGEH社が提出した200以上の文書を審査した結果、「BWRX-300」には正式審査の際に根本的障害となるような課題は認められなかったと指摘。「GEH社はCSNCがカナダの原子力発電所に課している要件の意図を正しく理解している」と結論づけた。最終段階にあたる第3(フォローアップ)段階では、カナダの規制要件を厳格に順守できるよう、GEH社はCNSCが第2段階で指摘したいくつかの技術分野について詳細に検討を加え、建設に向けた設計準備で追加の策を講じるとともに、この策に対するCNSCの評価も得ていく考えだ。VDRはベンダーの要請に基づき、CNSCが提供している任意の設計評価サービス。第1段階では主に、カナダの規制要件に対する適合性を評価する一方、第2段階では根本的な課題の有無について、正式な許認可プロセスの申請に先立ち審査する。当該設計や技術に致命的な欠陥があれば、それを早い段階で特定し解決につなげていくことになる。これら2つの段階の審査を同時に進めることも可能で、CNSCは2019年12月にGEH社と交わした合意文書に基づき、2020年1月からこれらの審査を並行して開始。GEH社からは「BWRX-300」の概要のほか、制御システム等の設備、研究開発、設計プロセスなどに関する文書の受け取りを開始していた。出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)型炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用。受動的安全系を採用しており、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で、外部電源や人の介在なしに燃料を冷却することができる。GEH社で先進的原子力技術を担当するS.セクストン上級副社長は、「当社の『BWRX-300』はVDRの主要2段階の審査を完了した最初のSMRになった」と指摘。「BWRX-300」の建設に向けた重要ステップとして、指摘された事項を同炉にフィードバックしていくと述べた。「BWRX-300」の実際の建設に関しては、2021年12月にカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所内で建設するカナダ初のSMRとして「BWRX-300」を選定。2022年10月には「BWRX-300」の建設許可申請書をCNSCに提出しており、同サイトで取得済みの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、2028年第4四半期の完成を目指して準備作業を始めている。同社はまた、GEH社やSNC-ラバリン社などの関係企業3社と、今年1月に6年契約でチームを組む協力協定を締結している。GEH社によると「BWRX-300」に対する関心は世界中で高まっており、カナダではこのほか、中西部サスカチュワン州のサスクパワー社が昨年6月、同州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同炉の採用を決定した。米国ではテネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始している。北米以外では、エストニアのフェルミ・エネルギア社が先月、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初のSMRとして選定。ポーランドでも、大手化学素材メーカーのシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁で2033年以降に「BWRX-300」を建設する方針である。(参照資料:CSNC、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Mar 2023
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英政府 原子力を同国のグリーン・タクソノミーに分類へ
英国財務省のJ.ハント大臣は3月15日、議会下院で新年度の予算案を公表。その中で、原子力を環境上の持続可能性を備えたグリーン事業とみなし、英国グリーン・タクソノミーの投資対象に含める方針を明らかにした。同相はまた、小型モジュール炉(SMR)関係で政府が最初のコンペの実施を計画しており、このコンペを通じて年末までに国内外のベンダーの優れたSMR炉型をいくつか選定。建設の実行可能性が実証されたものは、政府が共同出資するとしている。同相はまず、国内で原子力を強力に支持している自治体として、かつてガス冷却炉が稼働していたウェールズのアングルシー島や現在も稼働中のイングランド北東部ハートルプール、地層処分場の受け入れを検討中のイングランド北西部カンブリア州のコープランド、国立原子力研究所の分室が存在しSMRの誘致にも関心表明している同州ワーキントンを列挙。これらの自治体が、「CO2排出量の実質ゼロ化という目標を英国が達成するには、原子力設備の拡大が極めて重要」と述べている点を指摘した。その上で同相は、国内原子力プログラムへの民間投資を促すだけでなく、公開協議という手続きにより原子力を英国のグリーン・タクソノミーに含めていくことを確認したと表明。再生可能エネルギーと同様に、原子力も投資対象となるよう促すとした。この関係で、同相はビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が昨年11月、サフォーク州のサイズウェルC原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)建設プロジェクトに、政府として初めて6億7,900万ポンド(約1,089億円)の直接投資を行うと発表した事実に触れた。同相はまた、政府がこれまでの約束を踏まえ、2022年4月の「エネルギー供給保証戦略」で明示していた「大英原子力(Great British Nuclear)」を立ち上げると述べた。同組織は、明確な費用対効果を確認しながら、原子力発電施設の開発プロセスの各段階で事業者に支援を提供。これにより開発コストを削減し、原子力サプライチェーン全体にビジネス・チャンスをもたらすもので、2050年までに英国の総発電量の四分の一までを原子力で賄えるようにする考えだ。英国では、SMR関係でBEISがすでに2021年11月、ロールス・ロイスSMR社製のSMR(PWR、47万kW)に対し、民間部門の投資に対するマッチング・ファンドとして2億1,000万ポンド(約337億円)の提供を約束。2022年3月には、同SMRの包括的設計審査(GDA)の実施を原子力規制庁(ONR)に要請しており、同年4月から審査が始まった。その後ロールス・ロイスSMR社は、同年11月にSMRの建設候補地としてイングランドとウェールズの旧原子力発電サイトなど、4地点を選定している。政府の今回の予算案に対しては、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長が同日、歓迎のコメントを発表。英国のグリーン・タクソノミーに原子力を加えることで、英国のエネルギー供給保証は一層強化され、CO2の排出量も実質ゼロ化に向けて大きく前進するとした。新たな原子力開発プロジェクトに極めて重要な投資が行われることで、原子炉開発プロジェクトへの資金調達は一層容易になり、建設コストも抑えられると指摘した。同理事長はまた、「大英原子力」が始動して新たな原子力発電所開発プロジェクトのサイト選定が進めば、発電所建設の効率性が飛躍的に増すとともにサプライチェーンの受注ルートも明確になると表明。SMRコンペにより、英国原子力産業界は世界レベルの競争に返り咲くことになり、国産その他の技術を通じてビジネス・チャンスや新たな雇用、投資の機会を確保、世界的な巨大市場に輸出するチャンスも得られると強調している。(参照資料:英政府、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Mar 2023
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米ニュースケール社 SMR発電所の長納期品を発注
米国のニュースケール・パワー社は3月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を備えた最初の発電所建設に向けて、昨年末に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注しことを明らかにした。これは昨年4月に両社が締結した契約に基づくもので、その際ニュースケール社はLLM発注の準備として、原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュール製造に必要な鍛造金型の作製を斗山エナビリティ社に依頼。その後この鍛造金型が完成したことから、斗山エナビリティ社は今回の受注でRPV上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器(SG)の配管、溶接材など、6基分の総重量2,000トンを超える機器を製造する。ニュースケール社初のSMR発電所は、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が米アイダホ国立研究所(INL)の敷地内で、1モジュールの出力が7.7万kWのNPMを6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)として建設する。最初のモジュールを2029年までに完成させるため、UAMPSは2024年の第1四半期を目途に建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請し、2026年前半に認可を受け着工したいとしている。NRCは出力5万kWのNPMについて、2020年8月にSMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」を発給した。その後、最後の規制手続として「最終規則」の策定が完了したことから、今年1月にはSMRとして初の「設計認証(DC)」を発給している。ニュースケール社も同月、出力7.7万kWのNPMでSDAの取得申請をNRCに対して行った。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOはLLMの発注が最終決定したことについて、「当社のSMR開発がモジュールの製造段階に移行したことを意味しており、2020年代終わりまでに最初のNPM完成が現実的となるなど、SMR市場における当社の主導的地位が一層鮮明になった」と強調している。両社はまた、将来的に実施する「VOYGR」建設プロジェクトについても、今回と同様の納期でモジュール製造が可能になるよう調整中であることを明らかにした。(参照資料:ニュースケール社、斗山エナビリティ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Mar 2023
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仏EDF SMR等で伊企業と協力
フランス電力(EDF)とそのイタリア法人であるエジソン社、イタリアのアンサルド・エネルギア・グループ、およびその100%子会社のアンサルド・ヌクレアーレ社は3月6日、欧州で小型モジュール炉(SMR)等の原子炉開発や建設で協力する可能性を探るため、基本合意書(LOI)に調印した。この合意は、脱原子力国であるイタリアで将来的に、エネルギー政策変更の可能性があることを見越したもので、同国での原子力発電所建設を念頭に置いている。アンサルド・ヌクレアーレ社がイタリアで主導する原子力発電部門の知見を活用し、EDFグループの新規原子力プロジェクトをともに推進。イタリアがクリーンエネルギーに移行する際、原子力発電が果たす役割についても4社は議論の口火を切る方針だ。イタリアでは1973年の石油危機を契機に原子力発電開発が加速し、1963年以降4基の商業炉が稼働したものの、チョルノービリ原子力発電所事故の影響で1990年までにこれらはすべて閉鎖された。2008年に発足したS.ベルルスコーニ政権は原子力発電の再開を試みたが、福島第一原子力発電所事故が発生したため国民投票では9割以上が原子力発電所の建設に反対、新たな国家エネルギー戦略では原子力が排除された。しかし近年は、原子力発電所が国内に存在しないにも拘わらず、原子力コースを選択する学生数が徐々に増加している。4社の協力に向けた今回の合意にともない、各社はそれぞれの技術力が生かされる協力方法を模索していく。アンサルド・エネルギア・グループが原子力を含むエネルギー分野で、関係機器の開発やサービスの提供に携わる一方、EDFは世界最大の原子力発電事業者として、新たな原子炉の開発プロジェクトも実施。これにはSMRの「NUWARD」が含まれており、アンサルド・ヌクレアーレ社とEDFは最近、同設計のエンジニアリング調査の実施契約を交わしている。また、出力120万kWの中型欧州加圧水型炉(EPR)や、通常の大型EPR(165万~175万kW)もこれに含まれている。4社はまた、イタリア国内でエネルギーの供給保証と輸入に依存しない電力供給システムの必要性が高まっていることから、同国で新しい原子力発電所の建設可能性を評価していく。イタリアでは総発電量の4割を再生可能エネルギーで賄う一方、依然として6割を天然ガス等の化石燃料で発電している。今回の協力を通じて、再エネ設備を新しい原子力発電所で補い、電力供給システムの安定性や環境面の持続可能性を確保。欧州全体やイタリアが掲げる「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」という意欲的な地球温暖化防止目標の達成を目指す。4社はともに、原子力が最良の低炭素電源の一つであり、設備容量あたりの設置面積も小さいと認識。さらに、SMRのような革新炉では、安全性が非常に高い上に必要とされる投資額が少ない。熱電併給も可能なことから、エネルギー供給上の様々な要求にも柔軟に対応できると考えている。アンサルド・ヌクレアーレ社のR.カサーレCEOは、「今回の合意の正当性を当社は信じており、イタリアの産業界や研究機関とともに、欧州諸国の様々な原子力プロジェクトに積極的に参加する」とコメント。欧州の原子力発電に寄せられている新たな関心に対し、イタリアが提供できる高い付加価値を実証していくと表明した。(参照資料:EDF、アンサルド・エネルギア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Mar 2023
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チェコ 石炭火力発電所サイトをSMRでリプレースへ
国営のチェコ電力(CEZ社)は2月27日、国内で2基目と3基目の小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた予備的評価の結果、候補サイトとして北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と、北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定した。同社は大型炉が稼働する国内2つの原子力発電所のうち、ドコバニ発電所の増設計画を進める一方、SMRの導入プログラムも進めている。これまでにSMRデベロッパーである米国のニュースケール・パワー社やGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ウェスチングハウス(WH)社、ホルテック・インターナショナル社とSMR関係の協力覚書を締結したほか、英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とも同様の覚書を結び、建設の実行可能性等を調査中である。チェコ初のSMRについては、CEZ社は2022年3月に既存のテメリン原子力発電所の敷地南西部を建設サイトとして選定。同発電所が立地する南ボヘミア州の州政府、および傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)とともに、SMR建設を加速する「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクトを始動させており、CEZ社のD.ベネシュCEOが非公式に「2032年の完成を目指す」と述べたことが伝えられている。後続SMRの建設が検討されているジェトマロヴィツェとトゥシミツェは、ともにCEZ社の石炭火力発電所が立地しており、SMRでこれらをリプレースする計画である。同グループは「2030年代の事業ビジョン」の中で、2040年代以降に合計100万kW以上のSMR建設に向けた準備を進めるとしているが、2、3号機については早ければ2030年代後半に完成する可能性を指摘。SMRを通じて、無炭素なエネルギーを長期にわたり安定供給する方針である。CEZ社のT.プレスカッチ再エネ担当理事は、SMRについて「大型炉の代用品という位置付けではなく、石炭等の大型火力発電所を代替する適切な電源として役割を担っている」と説明。SMRの建設プログラムでは、機器の製造やサプライチェーンに参加する機会や、関係地域にサービス・訓練センターを設置する可能性があるなど、チェコ経済の発展に向けた大きな機会になると述べた。CEZ社は今後、これら2か所の候補サイトの最終決定に向けて、今秋までさらなる調査やモニタリングを継続する。このような活動も含め、許認可申請までに3~5年を要すると同社は説明している。(参照資料:CEZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Mar 2023
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加政府 SMRのサプライチェーン構築等で資金援助
カナダ政府は2月23日、小型モジュール炉(SMR)の商業化を支援するため、サプライチェーンの構築や燃料の確保、放射性廃棄物の安全な管理に資する研究開発プロジェクトに、今後4年間で総額2,960万加ドル(約29億6,200万円)の資金援助を実施すると発表した。連邦政府の天然資源省(NRCan)は2018年、SMRをカナダ国内で開発・利用するだけでなく、将来世界のSMR市場で主導的地位を占めることを目指し、州政府や産業界、電気事業者などを交えた協議を10か月にわたって実施。その結果をSMRの戦略ロードマップとして取りまとめており、2020年にはCO2排出量の削減と国内原子力産業の拡大を図るため、SMR開発の努力目標やSMRが発電分野で果たす役割などを示したSMR行動計画を公表している。政府は今回、2022会計年度(2022年4月~2023年3月)予算から支援金を拠出し、SMR開発・利用への支援を継続すると改めて表明。カナダが世界のクリーンエネルギー開発でトップランナーに位置付けられるよう、同プログラムではニューブランズウィック州やサスカチュワン州などと同じく、各州の送電網の脱炭素化を推進する。また、CO2を大量に排出する産業の脱炭素化も進め、遠隔地域のコミュニティに対してはディーゼル発電からSMRへの転換を促す方針である。支援金として研究開発プロジェクト一件につき、期間や規模等に応じて平均50万加ドル~250万加ドル(約5,000万円~2億5,000万円)を交付する予定。原則として総コストの75%まで、500万加ドル(約5億円)を上限とする。受給資格は営利・非営利を問わず、カナダ国内で登録された電気事業者やその他企業、州政府や地方自治体、大学および学術機関など。申請書の受け付けは4月7日までとなっている。今回の政府発表によると、カナダが低炭素経済に移行するには、クリーンで低価格な電力の需要拡大のため、原子力のようにCO2を排出しない安全で安定した発電技術も含め、様々な無炭素エネルギー源が必要である。その中でも、次世代の原子力技術は重要な役割を担っており、中でも従来の大型炉と比べて構造がシンプルで操作し易く、安価なSMRは大いに貢献すると見込まれる。連邦政府はすでに、地球温暖化の影響緩和を目的としたSMR開発の支援活動を行っており、カナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)は2022年10月、オンタリオ州のダーリントン原子力発電所で世界初のSMRを建設するというプロジェクトに過去最高規模の9億7,000万加ドル(約970億円)の融資を約束した。今月6日には、政府機関のカナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)がNRCanとの協力により、独自の補助金プログラムの下でSMR開発プロジェクトを募集すると発表。サプライチェーンの構築や廃棄物の管理に取り組む大学からの申請に資金を提供するとしており、次世代の原子力技術者の養成や大学の能力拡大などで、NRCanの今回の資金援助プログラムを補完する。 (参照資料:NRCanの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Feb 2023
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カナダとポーランドの規制当局 SMR関係の協力強化で合意
カナダ原子力安全委員会(CNSC)とポーランドの国家原子力機関(PAA)は2月13日、両者のこれまでの協力関係を補足・強化し、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉に関する活動を共同で進めるため、協力覚書を締結した。この覚書は両者が2014年9月、原子力安全分野の一般的な協力について締結した情報交換のための了解覚書に基づいている。これらの原子炉に関係する審査で、規制上の良好事例や経験の共有を一層拡大するとしており、中でもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)に関する情報を交換、共同で技術審査を行うことを目指している。「BWRX-300」の初号機については、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、ダーリントン原子力発電所サイト内で2028年第4四半期までに完成させることを計画。CNSCが提供する「ベンダー設計審査(VDR)」では第2段階の審査が行われており、OPG社は2022年10月に同炉の建設許可を申請した。一方ポーランドでは、大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業が、石油化学企業大手のPKNオーレン社と合弁でオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立しており、2033年以降の完成を目指して「BWRX-300」の建設を進める方針である。OSGE社は同設計を選択した理由として、許認可手続きや建設・運転に至るまでOPG社の経験を参考にできると説明。PAAに対しては2022年7月、「BWRX-300」建設計画に関する予備的な評価見解の提示を要請していた。今回の協力覚書は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで国際原子力機関(IAEA)が規制関係の国際会議を開催したのに合わせ、PAAのA.グウォヴァツキ長官代理とCNSCのR.ヴェルシ委員長が調印した。両者が協力を進める主要事項は以下のとおり。先進的原子炉とSMRの技術に関する審査アプローチを共有し、共通する技術的課題の解決を促進する。審査の効率的な実施に向けて双方が確実に準備を整えるため、申請の前段階の活動を共同で実施する。安全性を確保するため、これらに特有の全く新しい技術的問題点に取り組めるような規制アプローチを共同で研究・開発し、研修も行う。PAAのA.グウォヴァツキ長官代理は今回の協力覚書について、「規制審査関係の経験を共有することで許認可手続きの合理化が進み、双方の規制アプローチの調和が図られる」とコメント。ポーランドのみならず、その他の国でもこのような原子炉の建設が一層効率的に進むことになると指摘している。(参照資料:PAA、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Feb 2023
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米ホルテック社 SMRの機器製造で英企業と提携
米ホルテック・インターナショナル社の英国法人は2月9日、同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」の機器製造協力で、英国の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と了解覚書を締結した。シェフィールド・フォージマスターズ社は、世界中の民生用原子力プロジェクトに鍛造品を供給している。今回と同様の覚書をすでに、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英ロールス・ロイスSMR社と締結済み。米ニュースケール・パワー社とは2016年、同社製SMRのベッセル・ヘッドを共同で実証鍛造する計画を発表している。ホルテック社との協力では、SMR機器が実際の製造工程に適合するよう設計に改良を加える作業を実施するほか、特定の機器の鍛造品について、機械加工や組み立て、溶接、供用期間中検査時の要件や仕様を詳細に記した「購買仕様書」を作成する。同社はこれまでの実績を足掛かりに、ホルテック社が2050年までに英国で計画している32基、合計512万kWの「SMR-160」建設に向けて、機器の最適な製造工程を特定し英国のSMR機器サプライチェーンの頂点に立つ方針だ。 ホルテック社の「SMR-160」は電気出力16万kWのPWR型SMRで、事故時に外部からの電源や冷却材の供給なしで炉心冷却が可能な受動的安全系を備えている。開発チームには三菱電機の米国子会社が計装制御(I&C)系の開発で参加しているほか、カナダのSNC-ラバリン社や米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社が協力、燃料はフランスのフラマトム社が供給する予定である。同SMRは2020年12月、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2034年頃の実用化を目指すSMRに分類されている。ホルテック社は2022年7月、米国内で同SMRを4基建設する計画に政府の融資保証プログラムの適用を求めてDOEに申請書を提出。建設予定地としては、同社が保有する閉鎖済みの旧オイスタークリーク原子力発電所や、原子力発電事業者であるエンタジー社のサービス区域内などが検討されている。国外では、チェコやウクライナが建設に向けた評価作業や準備作業を実施中である。英国については、ホルテック社が昨年12月、「包括的設計審査(GDA)」の申請書を2023年初頭にも英国政府に提出すると発表。早ければ2028年にも、初号機の建設工事を開始する考えを表明している。今回、ホルテック社で国際プロジェクトを担当するR.スプリングマン上級副社長は、「盤石な安全性を備えた当社のSMRを英国で多数建設し、900万世帯にクリーンな電力を24時間休まず供給する」と表明。シェフィールド・フォージマスターズ社のD.アシュモア戦略・事業開発部長は、「核融合炉の実現可能性や大型炉の建設とともに、SMRは英国の将来的な民生用原子力プログラムを構成している。今回の覚書を通じて当社が同プログラムで引き受けている作業の多くが補われる」と指摘した。(参照資料:シェフィールド・フォージマスターズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Feb 2023
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英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを建設へ ポーランド
ポーランド国営の産業開発会社(ARP)に所属する産業グループ「インダストリア(Indsutria)」は2月8日、低炭素な電力を用いたエネルギー・プロジェクトの実施に向け建設する小型モジュール炉(SMR)として英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを選定した。同日に交わした協力のための趣意書(MOI)に基づき、両社は今後、最大3基のSMRを建設して、ポーランド南部地方のエネルギーインフラの脱炭素化と、低炭素な製造方法による水素を年間5万トン製造することを目指す。また、2030年代に同地方で合計出力800万kWの石炭火力発電所をSMRで代替する可能性を探り、ロールス・ロイスSMR社製SMRのパーツやモジュールを製造するサプライチェーンも、同地方で構築する方針である。インダストリアはポーランド南部地方シフェントクシシュ県の産業グループで、2021年11月に同県で設立された水素製造クラスターを主導してきた。同じ月にポーランド政府の閣僚会議で「ポーランドにおける2030年までの水素戦略」が採択され、同国全土の地方自治体や企業が新たに水素製造に参入してきたことから、「シフェントクシシュ水素製造クラスター」は2022年7月に名称を「中央水素製造クラスター」に変更。CO2を排出しない電源で水素を製造し、複数の関係企業が連携し合うエコシステムを構築する考えだ。ARPのC.レシス社長はロールス・ロイスSMR社との協力について、「シフェントクシシュ県や当社の傘下企業にとって、SMR用ハイテク産業の基盤を築く大きなチャンスになる」と指摘。「産業界がSMR等により新たな能力を獲得することに積極的なのは、ポーランドがエネルギー供給保証の強化とクリーン・エネルギー経済に向かっていることの表れだ」と述べた。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「SMRを使ってポーランドのエネルギー多消費産業の脱炭素化を進め、後世のためのクリーン電力発電計画をインダストリアと共同で策定していく」と表明。出力47万kWの同社製SMRは工場で製造可能であり、クリーン電力を安価で供給できることから、ポーランドは戦略的に重要な国際市場の一つだと述べた。また、「今回の連携協力を通じて、ポーランドと英国では数千人規模の長期雇用がサプライチェーンで確保されるなど、経済的に大きな可能性を秘めている」と強調した。ポーランドではこのほか、政府が大型原子炉の導入計画として、2022年11月に最初の3基、375万kW分に米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を採用すると決定。国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社PEJ社が翌12月、細かな取り決め条件でWH社と合意している。小型炉関係では、化学素材メーカーのシントス社が2021年12月、石油化学企業のPKNオーレン社と合弁事業体を設立し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設計画を進めている。また、鉱業大手のKGHMポーランド採掘会社は2022年2月、米ニュースケール・パワー社のSMRを複数備えた「VOYGR」発電設備を2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を締結した。リスペクト・エナジー(Respect Energy)社も今年1月、とフランス電力(EDF)らが開発しているSMR「NUWARD」のポーランド国内での共同建設に向け、協力協定を締結している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Feb 2023
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エストニアのフェルミ社 GEH社のBWRX-300を選定
エストニアの新興エネルギー企業フェルミ・エネルギア社は2月8日、2030年代初頭の完成を目指して同国で建設する最初の小型モジュール炉(SMR)として、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」を選定した。今後は、原子力発電の導入に対するエストニア議会の承認や、適切な建設サイトの確保、原子力関係の法整備が必要になる。フェルミ社は、「必要な作業の分析はすべて終えており、現実的に見ても2031年のクリスマスまでに、我が国初の原子力発電所で信頼性の高いクリーン・エネルギーを低価格で供給することが可能だ」と指摘。SMRの建設は地球温暖化防止に向けたエストニアの目標達成に資するだけでなく、同国経済にとっても有益だと強調している。フェルミ社は、エストニアで第4世代のSMR導入を目指して、同国の原子力科学者やエネルギー関係の専門家、起業家などが設立した企業。2019年から様々なSMR設計について、実行可能性調査を実施していた。2022年9月には、再エネとは違い天候に左右されずに長期的な固定価格で確実に電力供給が可能な第4世代のSMRの導入を目指し、フェルミ社は最終選考に残った米国のGEH社とニュースケール・パワー社、および英国のロールス・ロイス社に入札の招聘状を送付した。選定基準としては、発電技術としての成熟度や経済的な競争力、サプライチェーンにエストニア企業を含めることなどを挙げていた。折しも2021年12月には、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が、州内のダーリントン原子力発電所で建設するSMR初号機として「BWRX-300」を選定した。フェルミ社はOPG社の設計・建設経験に基づいて、エストニアでもSMR計画を徐々に進めていくことができると説明している。フェルミ社のK.カレメッツCEOは、OPG社がすでに2022年10月、「BWRX-300」の建設許可申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出したことや、ポーランドのPKNオーレン社が化学素材メーカー大手のシントス社と共同で、「BWRX-300」も含めて合計74基のSMRを建設すると表明した事実に言及。ポーランドやスウェーデンに加えて、その他の欧州諸国も「BWRX-300」を選択すれば、その性能は保証されたものとなり、欧州内で十分なサプライチェーンも確保されると指摘している。GEH社によると、出力30万kWの次世代原子炉である「BWRX-300」は、原子炉上部に設置した大容量冷却プールの水で外部電源や人の介在なしに燃料を冷却できるなど、高い安全性を備えている。同社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「簡素化したプラント構造や確証技術を用いた機器、すでに認可済みの原子炉設計などを組み合わせており、有力なSMR設計であることが今回の選定ではっきりした」と表明。「BWRX-300」は短い工期で、コスト面の競争力も備えた無炭素な発電が可能だと強調した。両社の協力関係は、2019年にフェルミ社が「BWRX-300」の建設可能性を探るため、GEH社と交わした合意文書により始まった。2021年には、同炉の許認可手続きやサプライチェーン開発など重要事項について協力チームを結成することで合意していた。GEH社の説明では、「BWRX-300」に対する関心は米国でも高く、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した。カナダではダーリントン発電所での建設計画に続き、サスカチュワン州のサスクパワー社も2022年6月、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして同設計を選定している。スウェーデンではプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社が2022年3月、同国内で複数の「BWRX-300」を建設していくため、GEH社と了解覚書を締結した。GEH社はこのほか、英国でも同炉の建設が可能になるよう、昨年12月に包括的設計審査(GDA)の申請書を英国政府に提出済みである。(参照資料:フェルミ・エネルギア社、GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 09 Feb 2023
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