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原子力機構、核不拡散・核セキュリティを考える国際フォーラム開催
核不拡散・核セキュリティについて考える日本原子力研究開発機構主催の国際フォーラムが12月4日、都内で行われ、国内外の政府関係者や有識者らを招いた2つのパネルディスカッションを通じ、今後の課題や対応方策について議論した。核セキュリティは、「核物質、その他の放射性物質、その関連施設およびその輸送を含む関連活動を対象にした犯罪行為または故意の違反行為の防止、探知および対応」(2011年9月原子力委員会報告書)と定義されており、米国同時多発テロ発生以降、日本でも大規模イベントを控え、いわゆる「核テロ」の防止に向けた取組に関心が高まりつつある。前半のパネルディスカッションでは、米国エネルギー省国家核安全保障庁(DOE/NNSA)グローバルマテリアル安全保障局副局長補佐のエレノア・メラメド氏が、放射性物質の輸送時における不正取引や盗取の他、サイバーセキュリティやインサイダー脅威への対策など、近年のデジタル化進展に伴う問題を提起。各国で核セキュリティに関わるワークショップを開催している世界核セキュリティ協会代表のロジャー・ホーズリー氏は、ビデオメッセージを寄せ、「実効性のあるリソース配分」や「国境を越えた連携」の重要性を強調。これに対し、科学警察研究所主任研究官の土屋兼一氏は、「個人でもインターネットの動画を見て爆発物を作れる。脅威は時代とともに変わってきており、どのような対策が必要か継続的に評価していく必要がある」と述べた。また、大規模イベントをねらった「核テロ」として、爆発物と抱き合わせて放射性物質を拡散させる「ダーティ・ボム」や、人の集まる場所に致命的レベルの放射性物質を仕掛ける「サイレント・ソース・アタック」を例示。初動対応訓練を実施してきた経験にも触れ、地方警察部隊からの訓練用ダミーを求める要望に対し、スマートフォンのアプリに適確に反応するビーコン「ウソトープ」を開発したことを紹介した。原子力機構福島研究開発部門副ディビジョン長の鳥居建男氏は、福島第一原子力発電所事故後の広域モニタリングや、遠隔操作技術の研究に取り組んできた経験から、核セキュリティ分野におけるドローンや画像の3次元可視化に関する技術の有効性をあげ、事故の教訓や民間企業との協力の重要性に言及。IAEA原子力安全・セキュリティ局核セキュリティオフィサーのチャールズ・マッセィ氏は、「原子力安全と核セキュリティの対策には交わるところがある。双方が連携し有効性を高めていく必要がある」などと述べ議論をまとめた。後半のパネルディスカッションは、文部科学省原子力課長の清浦隆氏(進行役)、IAEA原子力エネルギー局INPRO課長ブライアン・ボイヤー氏、米国テキサスA&M大学院原子力専攻アシスタント研究生のマリオ・メンドーサ氏、東京工業大学先導原子力研究所准教授の相樂洋氏、原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門研究副主幹の川﨑信史氏が登壇した。ボイヤー氏は「革新的原子炉および燃料サイクルに関する国際プロジェクト」(INPRO)について、川﨑氏は「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム」(GIF)について、それぞれ国際協力の枠組を活用した取組状況を説明。次世代原子力システム開発に伴う制度的、技術的課題を踏まえ、将来の核不拡散・核セキュリティに関わる人材確保について議論が行われた。相樂氏は、東工大で2017年度より実施している体系的な教育カリキュラム「ANSET」(Advanced Nuclear 3S Education and Training)を紹介し、メンドーサ氏は、奨学金やフェローシップ制度の活用とともに、「政府省庁や研究機関が早い段階から学生に関心を持たせる」必要性を述べた。
- 06 Dec 2019
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原子力機構が2050年に向けた将来ビジョン発表
日本原子力研究開発機構は10月31日、2005年10月の発足から15年目を迎えたのに際し、2050年を見据えた将来ビジョン「JAEA2050+」を発表した。同機構が将来にわたって社会に貢献し続けるため、2050年に向けて「何を目指し、何をすべきか」を取りまとめたもの。原子力のポテンシャルの最大限追求、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち原子力安全の価値を再認識した「新原子力」の実現を標榜。取り組むべき研究テーマとしては、「安全の追求」、「革新的原子炉システムの探求」、より合理的な放射性廃棄物の処理処分などに向けた「放射性物質のコントロール」、安全・迅速・効率的な廃止措置技術開発に取り組む「デコミッショニング改革」や、原子力以外の分野とも協働した「高度化・スピンオフ」、「新知見の創出」を掲げ、横断的かつ戦略的に推進するとしている。この他、「組織づくりと人材確保・育成」、「国際協力・国際貢献」、「地域の発展」、「持続可能な原子力利用のための取組・挑戦」の各観点から将来ビジョンについて整理。原子力機構が目指す組織としては、「原子力コミュニティだけにとどまらず、他分野のセクターと連携・協働し、将来社会に貢献できる組織」をつくっていくとしている。また、人材像としては、「グローバルな活躍の成果を社会に還元・実装できる」、「新しい“モノ”や価値を創造できる」、「様々な分野で活躍できる」、「協働して施設の安全確保に貢献できる」、「対話により社会との相互理解を深められる」をあげ、幅広い分野から人材確保・育成を進めることを強調。
- 01 Nov 2019
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原子力機構とポーランド国立原研、高温ガス炉技術協力の具体化へ
日本原子力研究開発機構は9月20日、ポーランド国立原子力研究センター(NBBJ)と、「高温ガス炉技術分野における研究開発協力のための実施取決め」に署名した。 両者は2017年、日本・ポーランド外相間で合意した戦略的パートナーシップの行動計画に基づき、「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」に署名しており、これまでも高温ガス炉分野において、技術会合や人材育成などの協力を進めてきた。このほど署名された実施取決めにより、高温ガス炉の高度化シミュレーションのための設計研究、燃料・材料研究、原子力熱利用の安全研究など、さらに協力を具体化させていく。 また、原子力機構は、高温工学試験研究炉「HTTR」(現在、新規制基準適合性審査のため停止中)の建設・運転を通じて培った国産高温ガス炉技術の高度化、国際標準化を図り、ポーランドとの技術協力でさらなる国際展開の強化を目指す。 本件に関し記者団への説明に当たった同機構高速炉・新型炉研究開発部門次長の西原哲夫氏は、今回の実施取決めによる協力では、データの共有など、ソフト面が主となるとしており、今後に向けて「ものづくりの段階でメーカーの参画にもつなげていければ」と期待を寄せている。 電力供給の8割以上を石炭に依存するポーランドでは現在、その依存度を下げることが喫緊の課題となっており、石炭火力リプレースの候補とされる高温ガス炉導入の意義として、天然ガス輸入依存からの脱却、CO2排出の削減、競争可能なコストでの産業への熱供給などがあげられている。 高温ガス炉導入に関わる諮問委員会の報告書によると、現在設計段階にある研究炉(熱出力1万kW)に続き、商用炉(同16.5万kW)の予備設計も開始されつつあり、2026~31年の初号機建設を目指している。
- 24 Sep 2019
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