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カナダ原研、USNC社製SMRの燃料製造研究等で協力協定締結
カナダ原子力研究所(CNL)は2月26日、昨年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する最初の小型モジュール炉(SMR)研究プロジェクトとして、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)のSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(=右図)を選定し、同社の子会社であるUSNC-パワー社と協力協定を締結したと発表した。この協力では主に、MMRで使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造研究やMMR用黒鉛炉心の照射プログラム策定、CNLチョークリバー・サイトにおける燃料分析検査室の設置などをカバー。カナダのプロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに昨年4月、USNC社のパートナー企業として、MMRをCNLチョークリバー・サイト内で建設するための「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。今回の協力では、チョークリバー・サイトでのFCM製造施設建設に向けた実行可能性調査の準備活動や、MMRの炉心や燃料の設計妥当性を確認する試験プログラム開発が含まれる。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにオンタリオ州にあるチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を設定。関連企業からは、SMR原型炉や実証炉の建設で15件以上の関心表明書を受け取った。これに続いてCNLは2018年4月、チョークリバーを含むCNLの管理サイトで実際にSMR実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集。第1回目となるこの募集で、同年6月にはスターコア・ニュークリア社やU-バッテリー・カナダ社など国内外のSMR開発企業4社から提案があったという。CNLはこのほか、SMR開発を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブとして、CNRIを2019年に設置している。1年単位のCNRIプログラムを通じて、CNLは世界中のSMRベンダーにCNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供。カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、SMR技術の商業化を加速する計画である。USNC社はCNLが昨年11月、CNRIの初回の支援対象候補に選定した4社の1つで、残り3社(英モルテックス・エナジー社、米Kirosパワー社、加テレストリアル・エナジー社)の提案に関してCNLは現在、審査と交渉の様々な段階にあるとした。今回の協力取り決めにより、USNC社とCNLはMMRの多様な側面の中でも特に、燃料の開発・試験を検討。CNL側からは150万カナダドル(約1億2,000万円)相当の現物出資が行われ、2021年春までに完了する予定である。CNLとの協力に関してUSNC社のF.ベネリCEOは、「当社製SMR設計の実行可能性とFCM燃料の特殊な優位性を実証する重要な機会になる」と説明している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Feb 2020
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フィンランド国立技術研究センターが地域暖房用SMRの開発を開始
フィンランドの国立技術研究センター(VTT)は2月24日、地域暖房用の熱供給を目的に国内で小型モジュール炉(SMR)の開発に乗り出すと発表した。同国では2019年に、地域熱供給用の設備だけでCO2排出量が400万トンを越えたが、政府は2029年までに発電部門で脱石炭火力を達成する方針。熱供給システムの脱炭素化は地球温暖化防止に向けた最も重要な課題の1つであり、VTTは第一段階として国内の熱供給ネットワークに適したSMRの概念設計を開発する。また、これに必要な機器類の製造技術で新たな産業部門を国内に創出するとしている。VTTは雇用経済省が管轄する北欧最大の研究機関で、エネルギー分野を含む幅広い科学技術分野で最先端の技術的知見を蓄積。独自の研究施設と海外に幅広いネットワークを保有しており、過去5年間はSMRの導入機会を探る複数のプロジェクトに携わってきた。欧州レベルでは特に、欧州原子力共同体(ユーラトム)が資金提供して昨年始まった「ELSMOR」プロジェクトで、VTTはリーダーとして欧州における軽水炉型SMRの許認可手続きに向けた調整作業を進めている。発表によると、原子力は国内総発電量の約3分の1を賄うフィンランド最大規模の電源であり、CO2排出量は風力発電などと同程度。発電部門におけるCO2排出量は少ないとしても、「実質ゼロ化」を達成するにはエネルギー産業の他の分野で排出量を大幅に削減する必要があり、SMRは低炭素な原子力発電を熱供給に利用拡大するのに適した設備である。これに関してVTTのV.トゥルッキ研究チームリーダーは、「スケジュールがタイトな上、低コストな代替選択肢はわずかだ」と指摘。その上で、目標の達成に向けて新たな技術革新と新しい技術の導入が必要であるとし、原子力による地域熱供給はCO2排出量の大幅な削減に繋がると強調した。VTTはまた、海外で多くのSMR開発プロジェクトが許認可段階に達したものの、それらの多くは発電用あるいは産業プロセス用の高温エネルギー源だと説明。約100度Cの熱湯を必要とする地域熱供給では、一層経済的でシンプルなソリューションを利用できるため、VTTとしてはこの目的に合わせたプラントを開発し、都市部の一般家庭や人口密集エリアの暖房用としてコスト面の効果が高いものを目指す方針である。実際のSMR開発にあたり、VTTとしては保有する計算コード等、多分野の総合的能力を活用する。VTT原子炉安全分野のJ.レッパネン研究教授は、「炉心のモデリングを例に取るなら、ハイファイ数値シミュレーション手法が適用できる」と指摘。同教授が開発した「連続エネルギー・モンテカルロコードSERPENT」は、すでに44か国・250もの大学や研究機関における原子炉のモデリング等に活用されている点を強調した。(参照資料:VTTの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Feb 2020
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米TVA、クリンチリバーで建設するSMRの経済的実行可能性改善でオークリッジ研と協力
米テネシー州にあるエネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)とテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月19日、TVAが州内のクリンチリバー・サイト(=写真)で建設する小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉設計について、コスト面での有効性などを評価するため、協力覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、同サイトで2基以上、合計電気出力80万kW以下のSMR建設を想定した「事前サイト許可(ESP)」を米原子力規制委員会(NRC)から取得。ESPは20年間有効だが、現時点で採用設計が確定していないため、今回の覚書の下で両者は協力して、可能性のある先進的原子炉設計について許認可手続と建設、運転・維持にともなう経済的実行可能性の改善方法を探る。実際に原子炉建設が決まった場合、TVAはNRCに対して別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。両者の今回の協力は、双方の原子力関係能力や資産を活用するこれまでの協力関係に基づいている。TVAのワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始した際、ORNLはコンピューターのモデリング技術を用いて同炉における最初の6か月間の運転をシミュレートした実績がある。両者の発表によると、評価対象とする原子炉設計は具体的に、工期が短くて柔軟な運転が可能、かつ低コストでCO2を排出しないもの。評価を行う重要分野としては、先進的な建設技術の開発やサイト・インフラ支援のための総合的開発能力、経済的な建設を促進する様々な機能の基盤、先進的製造技術における技術革新、規制要件や安全要件を一層効果的に遵守できる技術基盤を挙げている。ORNLはこれまでDOEの国家プログラムの中で、新しい材料物質やプロセス、最先端技術の開発と活用によって、多くの電気事業者が発電技術を改良したり技術革新を図れるようにする研究活動を続けてきた。今回の覚書を通じてTVAは、ORNLの保有する科学的知見のほかに、「高中性子束・同位体生産炉」や世界最速のスーパーコンピューターが置かれている「オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング施設(OLCF)」、「製造実証施設(MDF)」といった世界最先端の施設を利用することが可能になる。ORNLのT.ザカリア所長は、「世界を牽引するORNLの研究能力とTVAの運転経験を組み合わせて、コスト面の効率性が高い次世代の原子力発電を促進したい」と表明。「原子力は長年にわたって米国のエネルギー構成における重要な要素であり、CO2を出さない発電技術への要望の高まりは、我々が今後も安全で効率的かつ価格も適切な原子力発電を取り入れることを求めている」と述べた。(参照資料:ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Feb 2020
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ウクライナ、国内でのSMR建設に向けホルテック社に続きニュースケール社とも覚書
ウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)は2月14日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(=断面図)を建設・運転する際の規制上、設計上の課題を評価するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。 覚書の調印式は今年1月、ニュースケール社の事務所があるオレゴン州コーバリスで行われており、これには両者の代表者に加えて米国務省やエネルギー省(DOE)、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)の代表者らが参加した。ウクライナはすでに2018年3月、国内で米ホルテック・インターナショナル社製SMRの建設計画を進めつつ同技術の一部国産化を目指すため、ウクライナの原子力発電公社(エネルゴアトム社)がホルテック社との協力覚書に調印。2019年1月には、これらにSSTC NRSを交えた3者が国際企業連合を正式に結成し、国内でSMRの建設計画を促進している。 ただし、ホルテック社のSMRは今の所、米国内の設計認証(DC)手続が正式に始まっていない。これに対してニュースケール社製のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)がSMRに関して唯一実施している全6段階の設計認証審査のフェーズ4まで終了。すでにカナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書が結ばれているほか、2020年代半ばには米国初のSMRとしてDOE傘下のアイダホ国立研究所内での運転開始が見込まれている。 今回の覚書によりSSTC NRSは具体的に、米国で行われているニュースケール社製SMRのDC審査経験に基づき、ウクライナの建設・運転許認可プロセスにおける米国との隔たりについて分析・調査を実施する。SSTC NRSはウクライナでSNRIUが新たな原子力技術を審査・承認する際、主要アドバイザーとして機能している。SNRIUが原子力安全の基準や規制・規則に対するコンプライアンスを確認し、データ分析や報告を行うにあたり、独立の立場の評価結果や技術的助言をSNRIUに提示していることから、SSTC NRSは同覚書を通じてSMR技術がウクライナのエネルギー需要を満たす上でどれほど有効であるかなど、関連する様々な疑問に答える一助になると指摘。評価結果をSMRの許認可プロセスに統合して、国内での将来的な建設につなげたいと述べた。 ニュースケール社も「SSTC NRSは経験豊富かつ評判の高い科学技術支援組織」と評価した上で、「当社のSMR技術をウクライナの将来エネルギーに組み込む最良の方法を探し出してくれるはずだ」とコメント。ウクライナとの覚書は、同社がSMR技術の開発リーダーであるとともに技術革新企業であることを示しており、今後も潜在的顧客となり得る世界中の組織と同様の合意を得るべく協議を続けていきたいとしている。(参照資料:ニュースケール社、SSTC NRS(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Feb 2020
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ATENAフォーラム開催、米NEIのコーズニック会長が講演
原子力事業者・メーカー・関係団体で構成される「原子力エネルギー協議会」(ATENA、理事長=門上英・三菱重工業特別顧問)が活動状況を報告し今後の課題について話し合う「ATENAフォーラム2020」が2月13日に都内で開催された。ATENAは、原子力発電のさらなる安全性向上に向けて産業界全体で知見結集・共通課題の抽出を図る組織として2018年7月に設立された。フォーラムで門上理事長は、(1)原子力発電所の共通課題への対応、(2)規制当局との積極的な対話、(3)様々なステークホルダーとのコミュニケーション――を柱とする活動方針のもとに実施されているATENAのこれまでの活動について説明。ATENAでは現在15件の技術課題に取り組んでいるが、その中で発足間もない2018年9月に作業を開始した「サイバーセキュリティ対策導入ガイドライン」作成については、2020年1月までにドラフト版に関する原子力規制委員会との対話も行われており、今後、自主ガイドとして発行し事業者・メーカーへと展開することとなっている。今回のフォーラムに来賓として訪れた原子力規制委員会の更田豊志委員長(=写真下)は挨拶の中で、「ATENAは申請者でも被規制者でもない。意見や反論が寄せられることを期待する」と、ATENAとの対話に積極的な姿勢を示したほか、原子力災害発生時の防護措置準備・実施に向けプラントの状況に応じて定める緊急時活動レベル「EAL」を例に、「現場を持つ事業者の知見が不可欠」とも述べた。ATENAは海外の原子力関係組織との連携も行っており、去る6月には米国原子力エネルギー協会(NEI)と技術協力協定を締結するなど、知見・技術の収集・活用に努めている。今回のフォーラムには、NEIのマリア・コーズニック会長が出席し講演を行った。その中で、コーズニック会長は、まず「気候変動は世界で喫緊の課題」として、地球温暖化問題の解決につながるクリーンエネルギーとして原子力に取り組む日米両組織による協力の意義を強調。さらに、「原子力以上に明るい未来に対応できる産業はない」とも述べ、米国における小型モジュール炉(SMR)の開発状況や、原子力規制委員会(NRC)による許認可の合理化に向けた動きなどを紹介した。コーズニック会長を交え、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)をモデレータとして行われたパネルディスカッション(=写真上)には、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員長)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、山﨑広美氏(原子力安全推進協会理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。意見交換の後、玉川氏は、「しっかりと受け止め、今後のATENAの活動に活かしていきたい」と、引き続き安全性向上に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
- 14 Feb 2020
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「原子力人材育成ネットワーク」報告会、ジェンダーバランス改善の取組も
「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=高橋明男・原産協会理事長)の報告会が2月12日に都内で開催され、2019年度の活動状況を紹介するとともに、笹川平和財団会長の田中伸男氏他による特別講演や、原子力分野におけるジェンダーバランス改善の取組に焦点を当てたセッションを通じ、今後の原子力人材確保・育成を巡る課題について産官学の参加者らが意見交換を行った。「持続可能なエネルギー安全保障戦略」と題し特別講演を行った田中氏は、国際エネルギー機関(IEA)が毎年まとめる「世界エネルギー見通し」(WEO)に基づき、2040年までの中国とインドの石油需要増や、最近の産油国を巡る地政学的な緊張などについて説明。IEAが11日に発表した世界のエネルギー起源CO2排出量の推移も紹介し、「石油の時代から電気の時代への転換期にある」とした。その上で、原子力発電に関しては、風力や太陽光との比較から建設コスト面の厳しさを指摘しながらも、運転期間をできるだけ延長することで市場競争力が上がることを強調。さらに、炉型の標準化に関し、「安全性や核不拡散性の高い小型モジュール炉(SMR)の開発への早急な着手が必要」とも述べた。続いて「女性研究者の養成に関わる取組と全国ネットワーク」と題し特別講演を行った東京農工大学副学長の宮浦千里氏は、同学理工系分野のジェンダーバランス改善について、2009年設置の「女性未来育成機構」によるキャリア支援から、女子トイレなどの学内施設改修に至るまで、地道に取り組んできた結果、工学系の女子学生比率が2割を超え全国トップレベルとなったことを披露。さらに、女性研究者を取り巻く環境整備に向け、140超の大学・研究機関が参画する全国ネットワークを組織し情報交換を進めているという。同氏によると、日本の研究者に女性が占める割合は約15%と、OECD加盟国では最低レベルにあり、その背景として研究者の仕事の魅力が女性に伝わっていないことや、キャリア形成の難しさなどをあげている。OECD/NEAでは、12月にパリでジェンダーバランス改善に向けた会合を開催しており、今回の報告会では、原産協会国際部の上田欽一氏が同会合への参加報告を行った。世界の原子力部門における女性従事者の割合は22.4%とのデータをまず示し、各国参加者からの取組紹介や討議を通じ原子力部門への女性進出を妨げる要因として、「ジェンダーへの先入観」、「ワークライフバランスの問題」、「原子力に対する悪いイメージ」があげられたとしており、引き続き、データ収集やコミュニケーションを図っていく必要性を強調。また、「男女の職業選択は既に15歳で分岐している」とも述べ、初等中等教育での取組の重要性も示唆した。続いて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グループの野原薫子氏は、OECD/NEAとの共催で8月に開催した女子中高生を対象に理工系分野への進路を喚起するイベント「Joshikai in Fukushima」(福島県三春町)について紹介した。「原子力人材育成ネットワーク」では、日本全体として整合性を持った効果的・効率的な原子力人材確保・育成に向けて戦略立案が必要との考えから、2019年度に「戦略ワーキンググループ(WG)」を立ち上げており、今後同WGのもと、既存活動のPDCAや関係省庁との人材育成における連携を強化していくこととしている。これらの報告を受け、高等教育の立場から東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は、「『もんじゅ』跡地に研究炉を建設する構想もあり、学生に設計の絵コンテを描かせては」と提案。中学・高校で使われる理科・社会科の教科書を調査してきた九州大学名誉教授の工藤和彦氏は、「技術者としての倫理観も求められる。『技術者像』のあり方についても考えるべき」などと意見を述べた。
- 13 Feb 2020
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フィンランド規制当局、SMRの安全評価と許認可の体制準備
フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月30日、一般に「小型モジュール炉(SMR)」と呼称される原子炉の安全な運転条件について取りまとめた報告書を公表した。SMRに対して国内外の関心が高まっていることから、その安全性評価など特有の課題を議論する内容であり、許認可体制についても原子力法の改正等を対象項目とすることを検討中だとしている。 フィンランドでは今のところSMRを建設する具体的な計画は存在しないものの、STUKは今後のことを考慮した準備体制を整える方針である。STUKのP.ティッパナ長官は「我々は新型の原子力プラントに適用される安全要件についても関係者に考慮すべき内容を通達できるようにしておかねばならない」と説明。そうしたプラントの安全評価に関してもSTUKが状況に応じて対応できるようにしておく必要があると述べた。 発表によると、この件については現在、同国の経済雇用省が作業部会を設置して調査を実施中。課題の1つは原子力施設に関する既存の法定許認可システムを、どのようにしてSMRの許認可や放射線安全モニタリング等に適合させるかであるとした。また、世界では近年、SMR開発に莫大な投資が行われており、伝統的な原子力発電企業に加えて市町村の自治体、プロセス産業なども新たにSMRの電力とプロセス熱の利用に関心を表明しているとした。STUKは今後10年以内に、国内市場にもSMRなどの新型原子力プラントの投入が予想されることから、今回の報告書ではSMRの安全性評価や許認可、モニタリング等で持続可能な条件を設定するため、当局や政策立案者、科学コミュニティ、エネルギー企業らが行う議論に対してガイドラインを提示。技術の進展にともない、当局の規制環境では社会の期待に直ちに応えられないようなリスクも生じることを想定した上で、そうした状況への対策については次のような認識の共有を図りたいとしている。すなわち、(1)SMR向けに法体系を修正する必要性を見極める:既存の許認可手続きや安全要件は主に軽水冷却方式の大型炉向けに設定されている。今こそ政府が原子力法を包括的に改正する準備を進め、これらとは大幅に異なるSMR用の許認可システムを策定する好機である。(2)関連の国際協力に参加することが重要:SMR製造業者の主な目的は国際市場向けにSMRを量産することにあるが、ここでの課題は国毎の安全要件が少しずつ異なる点。様々な国の安全規制当局が協力してSMRの安全要件を調和させれば、適切な許認可システムや実行可能な良好事例が明確になるため、STUKはこの作業に積極的に関わっている。(3)研究と経験に基づく知見がSMRの安全性の基盤になる:SMRの性質はそれぞれに異なり、いくつかのSMRでは現在世界で稼働中の原子炉とも違っている。このため、SMRの安全性は実地で証明しなければならず、それぞれの安全確保対策を設計・評価する際も、膨大な量の研究や経験に基づく知見、実験・計算などが必要になる。(4)SMRの安全性は全体的な評価が必要:SMRは地域暖房用のプロセス熱を供給する目的のものがあるため、住宅地に比較的近い地点での設置がしばしば検討されるが、緊急時に備えた予防的防護措置の準備区域については適切に配慮する必要がある。(5)放射性廃棄物の管理を確実に:フィンランドでは世界に先駆けて放射性廃棄物の地層処分場を建設中であり、軽水炉方式のSMRについては同様の措置が有効と考えられる。ただし、SMRの放射性廃棄物管理用に新たな責任体制や組織モデルが必要になるかも知れない。 (参照資料:STUKの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Feb 2020
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米GEH社の「BWRX-300」、チェコでの建設に向けた実行可能性調査で覚書
米ノースカロライナ州ウィルミントンを本拠地とするGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は2月3日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」をチェコで建設した場合の経済的・技術的な実行可能性を探るため、チェコの国営電力会社(CEZ)と覚書を締結したと発表した。CEZ社はすでに昨年9月、SMR設計として唯一米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査が行われているニュースケール・パワー社製パワー・モジュール(NPM)について、国内での建設可能性を模索する覚書を同社と結んでいる。「BWRX-300」では今のところDC審査の日程が発表されていないものの、同設計の建設に向けた実行可能性調査の実施でGEH社はバルト三国のエストニア、東欧のポーランドと覚書を締結済み。先月30日には、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた同設計の技術文書(トピカルレポート)をNRCに初めて提出したと発表、NRCの正式な許認可プロセスとして先行安全審査が始まったことを強調している。チェコではテメリンとドコバニの2つの原子力発電所で総発電電力量の約3分の1を賄っているが、国営送電会社は昨年秋、これらの運転期間満了や経年化した石炭火力発電所の閉鎖にともない、同国は2030年初頭から次第に電力を輸入するようになるとの予測報告書を公表した。チェコ政府は近い将来、このような石炭火力発電所を新規の原子炉や再生可能エネルギーで代替することを計画しており、同国のA.バビシュ首相は昨年11月、ドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR×4基)(=写真)で2036年にも新たな原子炉を完成させる方針を表明した。GEH社による今回の発表の中でも、チェコのK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易相が「チェコ政府にとって技術革新は最優先事項であり、SMRは原子力発電の将来を担う可能性がある」と強調。原子力発電分野の研究開発におけるCEZ社の集中的な取り組みに満足の意を表するとともに、「GEH社との協力により世界でも最高レベルにあるわが国の原子力研究がさらに進展する」との見方を示した。また、CEZ社のD.ベネシュCEOは「新たなエネルギー技術やソリューションには、当社も重点的に取り組んでいる」とした。その上で、同社グループの中でも特に「主要な関係機関の国立原子力研究機関(UJV Rez)がSMR関係の研究を進めており、SMRは将来的に無視できない重要選択肢になり得る」と指摘。このような背景から、GEH社との共同作業は同社にとって自然な展開だと説明している。 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Feb 2020
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南アの国営ESKOM社、傘下のPBMR社の売却先を募集
南アフリカ共和国の国営電力会社ESKOM社は1月31日、ペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の商業化を目指して、かつて設立したPBMR社を売却するため、前日付で同設計の商業化に対する関心表明(EOI)を産業界から募集したと発表した。南アにおけるPBMR開発計画はすでに中止されているが、小型モジュール炉(SMR)の1つであるPBMRの設計開発・製造・建設技術に加え、PBMR以外でも様々な原子炉設計に利用出来る3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料の製造技術も売却することになったもの。売却先となる企業には、知的財産権保持のため保存整備(C&M)状態にあるPBMR社の株式購入や、関係技術の商業化への投資を求める方針で、これにより市場には無制限の自由オプションが提供されるとESKOM社は強調した。また、EOIを募集する具体的な目的は、PBMRへの関心の質を厳しく見極める市場調査であり、次のステップとして提案募集(RFO)や情報依頼書の募集(RFI)をかける際、その範囲を特定するためだと説明。提出締め切り日は2月28日となっている。PBMRは電気出力16.5万kW(熱出力40万kW)の小型ガス炉で、これに加えて750度Cの水蒸気を供給可能な蒸気発生器とで構成される。炉心溶融の心配が無いなど安全性の高さが特長で、大型炉と比べて初期投資が少なくて済むほか、送電線が本格的に整備されていない地域にも適したプラントと位置付けられている。PBMR社はESKOM社が大株主となって1999年に設立したもので、株式の一部は米国のエクセロン社やウェスチングハウス社が一時期保有。日本の三菱重工業も2001年にガス・タービン発電機のフィージビリティ・スタディでPBMR開発計画に参加したほか、2010年2月には熱出力を20万kWに半減させた実証炉の共同開発を検討することでPBMR社と合意していた。2010年9月に南ア政府がPBMR開発計画の中止を発表した際、理由として同炉の潜在的顧客や投資パートナーの確保に行き詰まったことや、計画を継続した場合に少なくとも300億ランド(約2,200億円)の追加投資が必要になること、近年の経済不況により開発の優先順位が変更されたことなどを指摘。南ア政府はまた、PBMR計画のその後に関して(1)PBMR社をC&M状態に置き、その資産と知的財産権を保護する、(2)南ア核燃料公社の燃料開発工場で廃止措置を取り、冷却材であるヘリウムの試験施設は密封管理下に置く――などを勧告していた。(参照資料:ESKOM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Feb 2020
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米GEH社、同社製SMR「BWRX-300」設計で規制委の先行安全審査開始
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月30日、同社製小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」設計について、米原子力規制委員会(NRC)の許認可プロセスが昨年12月30日付けで正式に始まったと発表した。この日、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた技術文書(許認可トピカルレポート:LTR)を初めてNRCに提出したもので、これによりNRCは同設計の先行安全審査を開始する。本格的な許認可プロセスの1つである設計認証(DC)審査の実施についてGEH社は何も言及していないが、LTRは顧客となる事業者が後に予備安全解析書(PSAR)を作成・提出する際、基礎的な文書になると説明している。発表によると「BWRX-300」は、2014年にNRCから設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化(BWR)」がベースになっており、自然循環技術や受動的安全システムなど画期的な技術を採用した電気出力30万kWの軽水炉型SMR。原子燃料としてはすでに承認された設計を利用するほか、機器類やサプライチェーンも技術的に実証済みのものを取り入れている。また、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、同社は設計開発の全段階を通じてコストを目標内に収めるアプローチを採ったという。具体的には、設計の大幅な簡素化等によって「BWRX-300」の資本コストは従来型の大型炉やその他の軽水炉型SMRと比べて大幅に削減され、コスト的にコンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギーより競争力を持った設計になると強調している。「BWRX-300」で許認可プロセスが始まったことについて、GEH社のJ.ボール上級副社長は「商業化に向けた重要な節目になった」と指摘。CO2を排出しないエネルギー源への需要は世界的に高まりつつあるとした上で、「当社はSMRの画期的な技術に強い関心を抱いており、米国で許認可を取得する努力を継続していく」との決意を述べた。同社製「BWRX-300」については、これまでに北欧バルト三国のエストニアや東欧のポーランドが国内での建設に関心を表明、可能性調査の実施に向けた覚書がすでに現地企業との間で結ばれている。GEH社はまた、同設計をカナダでも建設可能にする方針で、カナダ原子力安全委員会が提供する許認可申請前設計審査(ベンダー審査)が始まったことを昨年5月に明らかにしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 Jan 2020
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規制委が原電と意見交換、村松社長「パイオニア精神」を強調
原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
- 30 Jan 2020
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エストニアのSMR建設プロジェクトにフォータム社とトラクテベル社が協力
北欧バルト三国の1つ、エストニアのエネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は1月28日、同国初の原子力発電プラントとなる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた調査で、原子力発電所を運転するフィンランドの国営電気事業者のフォータム社、およびベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル・エンジー社の3者で協力覚書を締結したと発表した。フェルミ・エネルギア社は第4世代炉の導入を目的に、エストニア原子力産業界でSMR開発/建設を支持する専門家らが起ち上げた企業である。同国が加盟する欧州連合は(EU)2018年6月、バルト三国とポーランドを2025年末までに旧ソ連・東欧圏をカバーする旧ソ連の総合電力システム「IPS/UPS」から切り離し、欧州24か国が共同管理する「大陸欧州送電網」に統合するという政策ロードマップに全関係国が調印したと発表。ロシアからの電力輸入停止まで期限が迫っていることから、同社はSMRの形で原子力発電を国内に導入してEUの「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」目標の達成に貢献するとともに、エストニアのみならずバルト三国全体において、天候に左右されることなく信頼性の高いCO2排出ゼロのエネルギーを供給する体制を確立したいとしている。フェルミ・エネルギア社はすでに昨年9月、GE日立・ニュクリアエナジー社が開発中のSMR「BWRX-300」を国内で建設するための可能性調査の実施で同社と協力覚書を締結した。このほか、英国のモルテックス・エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社、米国のニュースケール・パワー社それぞれが開発するSMRについても、国内で建設する選択肢として検討中と伝えられている。同社はまた、今回の発表のなかで使用済燃料の管理やSMR建設のスケジュール、計画立案等について、詳細に検討するための了解覚書締結に向け、欧州の原子力企業2社と協議中だと表明。これらの調査検討を年内に完了し、2021年初頭に公表する方針だ。今回の3者の協力覚書で最も意義深い側面として、同社は原子力発電事業者との実際の共同作業を通じて相互理解が得られる点を挙げた。原子力発電を導入するには様々な要素を徹底的に分析し、他のエネルギーオプションより競争力が備わるよう開発する必要があるとした上で、同社はすでに最良の解決策を見つける作業の初期段階にあり、後の段階で相互理解は一層深まることになると述べた。また、協力覚書の結果、同社はEU域内で最初のSMR建設プロジェクトを主導する企業となり、その建設ノウハウと能力でエストニアを支援する協力モデルが構築されると説明。SMRに適した許認可体制や軽水炉型SMRの事前立地調査等についても、3者で集中的に研究していく方針を明らかにした。(参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)、フォータム社、トラクテベル・エンジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Jan 2020
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英ロールス・ロイス社、2029年までにSMR初号機の完成目指すと表明
英国で小型モジュール炉(SMR)の開発企業連合を率いるロールス・ロイス社のP. ステイン最高技術責任者は1月24日、同国の公共放送局BBCのインタビューに答え、2029年までに同社製SMR初号機の完成と運転開始を目指していることを明らかにした。同社の企業連合には、国内の大手エンジニアリング企業や建設企業であるアシステム社やアトキンズ社、レイン・オルーク社などが参加。発表によると、英国原子力産業界はSMRのような小型原子炉であれば、工場で大量生産して設置場所までトラック輸送ができ、洋上風力発電のような再生可能エネルギーと競合できるレベルまで低コスト化が可能と認識している。ステイン氏は、ヒンクリーポイントC原子力発電所の大きさの16分の一程度というSMRを約10エーカー(約4万平方メートル)の敷地で建設できるとしており、カンブリア地方やウェールズ地方など、閉鎖済みの原子力発電所も含めた3地点で10~15基のSMR建設を計画中だと述べている。英国ではエネルギー気候変動省(DECC)(当時)が2016年3月、英国にとって最適なSMR設計を特定するためのコンペを開始し、SMR技術の開発業者や電気事業者、潜在的投資家等から関心表明(EOI)を募った。2017年12月に同コンペの終了後、DECCを改組して発足したビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、先進的モジュール炉(AMR)の実行可能性・開発(F&D)プロジェクトで改めてコンペを実施。2018年6月に民生用原子力部門との戦略的パートナーシップとなる「部門別協定」を発表した際、BEISはAMRの研究開発資金として5,600万ポンド(約79億8,000万円)を充てるとしたほか、同年9月にはこの中から400万ポンド(約5億7,000万円)をコンペの第1フェーズで選定した企業8社の実行可能性調査用に提供するとしていた。この8社の中にロールス・ロイス社は含まれなかったが、同社はこれとは別枠で2019年11月、BEIS傘下の戦略的政策研究機関「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」から、英国政府の「産業戦略チャレンジ基金」の中から初回の共同投資金として1,800万ポンド(約25億6,000万円)を受けることが決定。同社はまた、ヨルダンで同社製SMRを建設するための技術的実行可能性調査実施に向け、2017年11月にヨルダン原子力委員会と了解覚書を締結した。2018年2月には、風力や太陽光よりも競争力のある英国型SMRの実証モジュールを開発するため、ロールス・ロイス社が産業界側の窓口を勤める英国政府の「先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)」と契約を結んでいる。今回の発表でロールス・ロイス社は、「過去数年間に複数の大型炉建設プロジェクトが資金調達問題により凍結されたが、再生可能エネルギーのコストが急落するなか、SMRでコスト削減の可能性があることは、資金面で苦戦を強いられてきた原子力産業界にとって珍しく明るいニュースだ」と指摘。コスト削減の秘訣は、先進的デジタル溶接法やロボット組立等で予め製造したパーツを建設サイトで組み立てることであり、このように原子炉建設費を大幅に削減することで、電気料金を一層安く抑えることができると強調した。同社はまた、SMRの輸出で大量生産によるスケールメリットを実現し、コスト面の障害を克服したいと表明。これに関しては地元メディアの情報として、2,500億ポンド(約35兆6,000億円)規模の輸出市場で出力44万kWの同社製SMRの建設コストを約17億5,000万ポンド(約2,500億円)と試算した上で、は1MWhあたり60ポンド(約8,500円)を下回ること、すでに複数の外国政府から書面で関心表明があり、交渉中であると同社が述べたことが伝えられている。(参照資料:BBCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月24日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Jan 2020
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ロシアが開発した世界初の海上浮揚式原子力発電所、極東ペベクで送電開始
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月19日、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)「アカデミック・ロモノソフ号」(=写真)が極東地域北東部のチュクチ自治区管内、ペベクの隔絶された送電網に送電を開始したと発表した。同社のA.リハチョフ総裁は「これにより、このFNPPは世界で初めて小型モジュール炉(SMR)技術に基づく原子力発電所になった」とコメント。ロシアのみならず、世界の原子力産業界にとって記念すべき節目になったと評価、極東地域でペベクという新たなエネルギーの中心地を生み出す大きな一歩を踏み出したとしている。FNPPは2018年4月、建設場所であるサンクトペテルブルクのバルチック造船所から、燃料を装荷しない状態で出港。同年10月に経由地である北極圏のムルマンスクで燃料の初装荷を完了し、運転開始前の包括的な試験を実施した。今年3月、FNPPに搭載されている出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」2基で出力100%を達成し、同ユニットの主要機器と補助機器、および自動プロセス制御システムで安定した運転性能を確認。8月下旬には、砕氷船1隻と曳船2隻にともなわれて、最終立地点のペベクに向けてムルマンスクを出発しており、9月初旬に到着していた。初併入に先立ち、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)はFNPPに対して、運転許可と送電網への接続許可を発給している。また、これに至るまでにロスアトム社は、FNPPからチュクチ自治区の高圧送電網に電力を送る陸上施設を完成させたほか、熱供給システムの建設で膨大な作業を実施したと説明。このシステムにFNPPを接続する作業は、2020年に完了予定だと述べた。ロスアトム社によると、「アカデミック・ロモノソフ号」は将来、一群のFNPPを陸上設備とともに建設するパイロット・プロジェクトに相当する。出力30万kW以下のSMRであれば、ロシア北部や極東地域における遠隔地、送電網の規模が小さい場所、あるいは送電網自体が来ていない場所であっても、電力供給が可能になるとした。SMRはまた、燃料交換なしで3年~5年間運転を継続できるため、交換コストをかなり削減することができる。遠隔地でよく用いられる再生可能エネルギーの場合、出力の変動を高額で環境汚染度の高いディーゼル発電や燃料電池で補わねばならないが、SMRは電力多消費ユーザーに対しても途絶することなく、確実に電力の供給が可能。このような利点からロスアトム社は、SMRの輸出も視野に入れていることを明らかにした。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Dec 2019
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米規制委、TVAのSMR建設用クリンチリバー・サイトに事前サイト許可発給
米原子力規制委員会(NRC)は12月17日、テネシー峡谷開発公社(TVA)がテネシー州オークリッジ近郊で管理しているクリンチリバー・サイトについて、原子炉建設の「事前サイト許可(ESP)」発給を承認したと発表した。正式発給は数日以内に行われるとしている。このESPは、TVAが2016年5月にNRCに申請していたもので、2基以上の小型モジュール炉(SMR)で合計の電気出力が80万kWを越えないものの建設を同サイトで想定。採用設計は特定しておらず、ニュースケール・パワー社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール」、ホルテック・インターナショナル社の「SMR-160」、ウェスチングハウス社製SMRなど、4種類の軽水炉型SMR設計のパラメーターを技術情報として活用する「プラント・パラメーター・エンベロープ(PPE)」方式を取っていた。TVAは現時点で原子炉建設の具体的な計画を立てていないが、ESPの有効期間である20年間(*延長することも可能)に、「将来のエネルギー需要に備えて柔軟なオプションを取ることが可能になった」とコメントした。地元メディアのインタビューでは、TVAの総裁兼CEOが「今後2年以内に採用設計を選定する」と答えた模様。実際の原子炉建設に際しては、NRCに別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。ESPを取得する主な狙いは、電力会社が原子炉の建設で資金投入を決断する前に、サイト特有の安全性や環境影響、緊急時計画についてNRCから事前承認を得ることにある。ESP取得後にCOLを申請した場合、サイト関係の審査期間が短縮されるが、ESPを取らずに直接COL審査を受ける場合は、ESP審査と同等の情報をNRCに提出しなければならない。これまでにイリノイ州のクリントン、ミシシッピー州のグランドガルフ、バージニア州のノースアナ、ジョージア州のA.W.ボーグル各原子力発電所の敷地内サイト、およびニュージャージー州で立ち並ぶセーレムとホープクリーク両原子力発電所の隣接区域に対してESPが発給されている。NRCは2016年12月に8,000ページものTVAの申請書を正式に受理した後、2017年1月からESP審査を開始した。2019年4月に環境影響声明書の最終版(FEIS)を発行した後、同年6月に安全性評価報告書の最終版(FSER)を発行。8月にはこれらの文書に関する公聴会を開催し、NRCスタッフによる申請書の審査結果は妥当との判断を下していた。SMR建設を想定したクリンチリバー・サイトのESPは、NRCが緊急時対応で規制を実施する際の分析方法の承認など、いくつかの追加条項を明記。これにより同サイトで将来、原子炉の建設・運転を申請する事業者は、従来の大型原子力発電所用の緊急時計画区域(EPZ)よりも小さい区域の適用を要請することが可能になるとしている。(参照資料:米規制委、TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 18 Dec 2019
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米エネ省、オクロ社の小型高速炉建設用にアイダホ研の敷地使用を許可
米エネルギー省(DOE)は12月10日、カリフォルニア州を本拠地とする超小型原子炉の開発企業、オクロ(Oklo)社が設計した小型高速炉「オーロラ」(=完成予想図)を、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可すると発表した。これは、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環となる措置であり、DOEはこれまでにユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)に対しても、INLの敷地を使ってニュースケール・パワー社製・小型モジュール炉(SMR)の初号機を建設することを許可している。オクロ社は、「非軽水炉型の先進的原子炉設計として、INLサイトの使用許可が下りたのは初めて」と強調しており、2020年代初頭から半ばにかけての「オーロラ」着工を目指す。同社は今のところ、「オーロラ」の設計認証(DC)審査や建設・運転一括認可(COL)などを申請していないが、その商業化に向けた重要な一歩になったとしている。オクロ社によると、「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることが可能。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すこともできる。米原子力規制委員会(NRC)はすでに2016年から、X-エナジー社の「小型モジュール式・高温ガス炉(Xe-100)」やテレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」などと同様、「オーロラ」設計に対して「認可申請前活動」を適用。許認可申請のガイダンス提供や、潜在的な課題の事前の指摘などで、オクロ社が申請書を提出する準備作業を支援していた。今回、DOEが発給したサイト使用許可は「オーロラ」が運転を終了するまで有効なもので、着工前にオクロ社がクリアしなければならない様々な要件や許認可手続きを明示。使用したサイトは最終的に元の状態に戻して返還しなければならないが、DOEは同許可の発給により、新しいクリーン・エネルギー技術、中でも特に、先進的核分裂技術の商業化という誓約を明確にしたとオクロ社は評価している。(参照資料:DOE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 13 Dec 2019
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カナダのNB州政府、既存原子力発電所敷地内でのARC社製SMR建設を支持
カナダ東部ニューブランズウィック(NB)州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発大臣は12月9日、米ARCニュークリア社が開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」(電気出力10万kW)について、州内唯一の原子力発電設備であるポイントルプロー発電所敷地内で、商業規模の実証炉を建設するという同社カナダ法人(ARCニュークリア・カナダ社)の計画を支持すると発表した(=写真)。大型炉から出る使用済燃料のリサイクルも可能という「ARC-100」は、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づいており、今年10月にはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価サービス(ベンダー設計審査)の第1段階を完了した。ホランド大臣は、安全で信頼性が高く、経済的にも競争力のある低炭素なエネルギー源となるSMRの商業化をARC社が目指しているとした上で、優れた安全運転実績を持つポイントルプロー発電所には経験豊かな運転員もいることから、SMR実証炉の建設サイトに適していると指摘。同サイトで「ARC-100」を少なくとも2基、引き受けることが可能との考えを表明している。カナダの連邦政府はSMRのような次世代原子力技術について「国民が低炭素経済におけるエネルギー需要を満たしつつ、一層クリーンで安全な社会を構築する一助になる」と認識しており、将来は世界のSMR市場でリーダー的立場を得ることを目標としている。 カナダ国内のオンタリオ州、サスカチュワン州、NB州の州政府も今月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的のSMRをカナダ国内で建設するため、3州が協力していくとの覚書を締結。NB州はこの中でも、世界水準のSMR開発で国内リーダーとなる目標を示しており、すでに2018年7月、英国籍のMoltexエナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」について、商業規模の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設すると発表した。ARCカナダ社との協力に関してもNB州は同じく2018年の7月、州営電力のNBパワー社を通じて協力することで合意。NBパワー社はポイントルプロー原子力発電所の所有者であることから、同発電所敷地内で「ARC-100」初号機の建設可能性を探るとしていた。NB州のホランド大臣は、SMR技術導入の意義に触れ、たとえ送電網につながれていない遠隔地のコミュニティに対してもクリーンで低コストな電力を供給することであり、エネルギー多消費産業には低炭素で安定したエネルギー供給を約束できるとした。また、この技術がカナダ全土のみならず世界中で採用されれば、カナダは経済成長と輸出機会の拡大チャンスを得ることになると述べた。 州政府としては、SMR技術から同州が多大な恩恵を得ると考えており、ARCカナダ社のような企業との協力でSMR建設への道を拓くとともに、SMR開発を支援する世界的なリーダーとなる方針。また、世界レベルのSMR供給チェーンを構成する主要要素となる態勢も整いつつあると強調した。(参照資料:NB州政府、ARCカナダ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Dec 2019
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カナダの3州の首相がSMR開発で協力覚書
カナダ・オンタリオ州のD.フォード首相、ニューブランズウィック州のB.ヒッグス首相、およびサスカチュワン州のS.モー首相は12月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた、多目的の小型モジュール炉(SMR)をカナダ国内で開発・建設するため、3州が協力覚書を締結したと発表した(=写真)。 3人の首相はともに、原子力発電は炭素を出さず信頼性が高く、安全で価格も手ごろな発電技術と認識しており、SMRは遠隔地域などを含むカナダ全土において、経済面の潜在的可能性を引き出す一助になると明言した。同覚書に法的拘束力はないものの、今後は3州のエネルギー大臣が2020年1月から3月の間に冬季会合を開催して、最良の開発・建設戦略を議論。国内の主要な発電事業者には、費用対効果検討書も含めたフィージビリティ報告書の作成で協力を求める方針であり、同年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定するとしている。 SMRの利点について3首相は具体的に、送電系統とつながっていないコミュニティに対してもクリーンで低コストなエネルギーを供給できるとしたほか、鉱山業や製造業などエネルギー多消費産業に対して便宜を図れるなどと指摘。また、SMR技術がカナダのみならず世界中で採用されれば、カナダの経済成長を促すとともに輸出機会を拡大することにもつながるとした。こうしたことから、3州の政府はそれぞれに特有の必要性や経済面の優先事項に見合う方法で経済を成長させ、温室効果ガスの排出量を削減するために協力体制を敷く方針。力を合わせて革新的なエネルギー・ソリューションを開発し、地域の雇用や成長促進に向けた最良のビジネス環境を創出していくと述べた。今回の覚書によると3州は、カナダ連邦政府の天然資源省が昨年10月に公表した「カナダにおけるSMRの開発ロードマップ」とともに、付託された「行動要請文」の策定に貢献した。カナダは原子力産業の全領域を備えるなど最上位に位置する原子力国家であり、SMR開発で先駆的国家となることにより、このように高度な革新的技術分野で戦略面や経済面、および環境面の利益が得られるとした。3州は世界でも有数の原子力企業が多数所在する地域であり、3州それぞれが州内でSMRを導入することに関心を抱いている。このような背景から、3州は以下の点について合意し、相互協力を行うことになったもの。(1)地球温暖化や州内のエネルギー需要、経済開発などに取り組むため、それぞれの必要性に応じたSMRの開発と建設を3州が協力して進める。(2)SMR開発における重要課題――技術的な準備状況、規制上の枠組整備、経済性と資金調達、放射性廃棄物の管理、国民および先住民との関わり合い――などに一致協力して取り組む。(3)「原子力のようにクリーンなエネルギーは地球温暖化への取組みの一部として必要」という明瞭明解なメッセージが発せられるよう、3州が連邦政府に積極的に働きかける。(4)3州内のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー社、ニューブランズウィック・パワー社、およびサスクパワー社のCEOから要請されたように、開発ロードマップで特定されたSMR開発への支援提供を、3州が協力して連邦政府に働きかける。(5)原子力やSMRが有する経済面や環境面の利点について一般国民に情報提供するため、3州が協力する。――などである。 (参照資料:オンタリオ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Dec 2019
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カナダ原研、SMR開発支援イニシアチブの候補企業4社を選定
カナダの国立原子力研究所(CNL)は11月15日、同国内で小型モジュール炉(SMR)の研究開発と建設を促進するため、今年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」の候補となる企業4社を選定したと発表した。CNRIは世界中のSMRベンダーに対し、CNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供する新しいプログラム。対象分野としては市場分析や燃料開発、原子炉物理、モデリングなどを指定しており、これらに関するプロジェクトの提案企業を毎年募集することになっている。参加企業はCNLが提供する資源を最大限に活用するとともに、技術的知見を共有。開発中のSMR技術の商業化に向けた支援を、出資金あるいは現物出資の形でCNLから受けることができる。次回の募集についても、CNLは来年初頭を予定していることを明らかにした。同イニシアチブで最初の受益者に選ばれたのは、(1)英国の原子炉開発企業モルテックス・エナジー社のカナダ支社、(2)米カリフォルニア州のKairosパワー社、(3)米ワシントン州のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、(4)カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社。CNLは今後、研究開発費の分担等について、これら4社との最終交渉を開始する。モルテックス社は現在、カナダのニューブランズウィック大学と共同で、カナダ型加圧重水炉(CANDU)の使用済燃料をピン型溶融塩炉(SSR)の燃料に転換する試験装置について、建設と合理化を進めている。また、Kairos社の提案プロジェクトは、高温のフッ化塩で冷却する「KP-FHR」設計を実現するため、トリチウムの管理戦略を策定するというもの。片やUSNCは、同社製「Micro Modular Reactor(MMR)」の開発で浮上する様々な技術的課題について、解決に向けた作業プロジェクトを提案した。テレストリアル社は、同社製「一体型溶融塩炉(IMSR)」等に対して、安全・セキュリティや核不拡散関係の技術を適用する可能性を評価したいと提案。CNLが保有する設備の中でも特に、「ZED-2原子炉」の利用機会を得たいとしている。CNLのM.レジンスキー所長兼 CEOは今回の選定について、「CNLが実施した市場調査の結果や、カナダのSMR開発ロードマップの判明事項からも、原子力産業界がCNLの知見や設備を一層必要としていることが明確に示された」と説明。CNLのCNRIプログラムは、そのような利用機会を実現する方法として設置されたと強調した。CNLのK.マッカーシー科学技術担当副所長も、「カナダをSMR研究のハブとするため、CNLが過去3年間に実施した作業は大きく前進した」と指摘。SMRに共通する主要な技術分野で、CNLが膨大な知見を蓄積してきたという事実に言及した。SMR開発についてCNLは、2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにCNLの管理サイト内で少なくとも1基、実証炉を建設するという目標を明示した。2017年中にSMRの開発企業から19件の関心表明を受けており、2018年4月に開始した全4段階の審査プロセスにより、提案企業の募集と選定作業を進めている。今年2月には、USNCが開発したMMR設計が同審査で唯一フェーズ3に進んだほか、テレストリアル社のIMSRもフェーズ2に移行している。MMRについては、エネルギー関係のプロジェクト開発企業グローバル・ファースト・パワー(GFP)社が今年4月、CNLのチョークリバー・サイト内で建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。CNLの審査プロセスは、CNSCの許認可プロセスから完全に独立していることから、許認可段階に進展した建設プロジェクトには法的規制要件が課され、提案企業は一般国民や先住民コミュニティなどとプロジェクトの重要事項に関する協議を行わねばならない。 (参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Nov 2019
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英国の戦略的研究機関「UKRI」がSMR開発企業連合に初回の資金投資
英国で小型モジュール炉(SMR)開発の企業連合を率いるロールス・ロイス社は11月5日、同国の準自治的非政府組織で戦略的政策研究機関の「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」から、英国政府の「産業戦略チャレンジ基金」のうち1,800万ポンド(約25億2,000万円)を受領したと発表した。これは、国内初のSMRを予備設計している同企業連合への、4年にわたる共同投資金の初回分となるもの。ロールス・ロイス社は英国全体の計画として、2050年までに最大で16のSMR発電所を国内で建設できると考えており、これにより最大4万人分の雇用が創出されるとともに、英国経済に対する貢献は520億ポンド(約7兆3,000億円)、輸出への貢献は2,500億ポンド(約35兆円)にのぼるとした。また、必要な法制やサイト選定プロセスなど、許認可手続や支援措置が順調に進めば、2030年代初頭から最初のSMRで信頼性の高い低炭素なエネルギーを得られるとしている。UKRIは2018年4月、革新的技術開発企業に研究開発費などの助成を行う英国政府機関「イノベートUK」、科学政策を調整する政府外公共機関である国内7つの「英国研究会議(RCUK)」、および大学の研究活動や知識交換活動への助成を担当する「リサーチ・イングランド(RE)」を統合して設立された。UKRIの投資金は、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の科学予算を通じて提供されている。英国では今年6月、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとするための法案が可決・成立した。この目標を達成するには、政府と産業界との協力が不可欠であるとの認識から、BEISは7月、新規原子力発電所建設プロジェクトの資金調達モデルとして検討中の「規制資産ベース(RAB)モデル」について、実行可能性の評価結果をパブリック・コメントに付した。また、革新的技術を用いたSMR原子力発電所の建設に対し、政府資金の中から最大で1,800万ポンドの投資を提案していた。ロールス・ロイス社の企業連合は、国際的な原子力エンジニアリング・研究開発サービス企業のアシステム社とアトキンズ社、建設土木企業のBAMナットル社とレイン・オルーク・グループに加えて、英国溶接研究所(TWI)、国立原子力研究所(NNL)、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などで構成される。ロールス・ロイス社によると、同企業連合が計画しているコンパクト設計の原子力発電所であれば、既存の原子力サイトへの輸送前に機器類を工場で製造し、サイト内の雨よけのある場所で迅速に組立てることが可能。天候による作業の中断を回避できるためコストの削減につながり、標準化・合理化された機器製造プロセスの活用により効率性も徐々に向上していくとした。また、各発電所の目標建設コストとして、同社は5つ目までは18億ポンド(約2,500億円)を設定、それぞれの運転期間は60年を想定している。今回の投資金は、規制当局が実施する包括的設計審査(GDA)の準備に宛てられるほか、革新的技術の開発推進と実現に向けた最終意思決定に活用される。ロールス・ロイス社のP.ステイン最高技術責任者は、「官民が連携することで、2050年までのGHG排出量実質ゼロ達成に向け、持続可能で適正価格かつ効率的な方策を見つけることができる」と強調。「政府との連携作業は、英国経済の低炭素化に向けた、また、英国社会にとって極めて重要な電力需要量を満たすための重要な一歩になる」と述べた。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Nov 2019
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