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加サスカチュワン州政府、州内でのSMR建設に向け原子力事務局設置へ
カナダ中西部に位置するサスカチュワン州政府は6月24日、同州の原子力政策・プログラムの調整を図るため、環境省の気候変動・対応局内に原子力事務局を設置すると発表した。同局では、クリーン・エネルギー源である小型モジュール炉(SMR)を州内に建設するという戦略計画の策定と実施が最優先事項になるとしている。サスカチュワン州には今のところ原子力発電所は存在しないもののウラン資源が豊富であり、2018年に世界のウラン生産量国別ランキングでカナダを世界第2位に押し上げた。こうした背景から、同州は昨年11月に公表した2030年までの経済成長計画の中に、発電部門におけるCO2排出量の削減と無炭素発電技術であるSMRの開発方針を明記。州内のウラン資源を活用して、2030年代の半ばまでに初号機の完成を目指すとした。翌12月には、商業用原子力発電所を州内に擁するオンタリオ州、ニューブランズウィック州の両政府とSMRの開発・建設に向けて協力覚書を締結した。この中で3州は、「遠隔地域も含めたカナダ全土でSMRは経済面の潜在的可能性を引き出す一助になる」と明言。国内の主要発電業者に協力を求めてフィージビリティ報告書を作成し、2020年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定する。今回の発表を行ったサスカチュワン州政府環境省のD.ダンカン大臣は、「SMRを開発してその恩恵を全面的に享受するには、複数のパートナーとの協力が不可欠だ」とコメント。SMRが内在する利点として、州内のウラン資源に経済的価値連鎖を付与できるほか雇用を促進、同州独自の気候変動対策策定にも寄与する点を挙げた。また、カナダでSMR開発が進展すれば経済・環境面の恩恵に加えて、安全で信頼性が高く価格競争力もあるクリーン・エネルギー源が同州に新たにもたらされると強調している。なお、カナダでは連邦政府もSMRの潜在的可能性に期待をかけており、2018年11月には天然資源省が「カナダにおけるSMR開発ロードマップ」を公表した。サスカチュワン州政府によると、カナダの全州および準州の電気事業者がこの構想への参加機会を模索しており、同州としてもSMRの利点を享受するためこれらとの協力を拡大していく考えである。(参照資料:サスカチュワン州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Jun 2020
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米規制委、オクロ社製SMRの建設・運転一括認可(COL)申請を受理
米原子力規制委員会(NRC)は6月15日、カリフォルニア州の原子炉開発企業オクロ(Oklo)社が今年3月に同社製の小型高速炉設計「オーロラ」(=完成予想図)について提出していた建設・運転一括認可(COL)の申請書を受理したと発表した。オクロ社は「先進的な原子炉は地球温暖化の防止対策としても重要なツールであり、そのための申請書が受け入れられたことは先進的原子力技術の商業化に向けたブレークスルーを意味する」と表明している。オクロ社による申請は非軽水炉型の先進的小型原子炉としては初のもので、米エネルギー省(DOE)はすでに昨年12月、「オーロラ」を傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可していた。同社は今のところCOLの発給に必要な設計認証(DC)審査を「オーロラ」で申請していないが、NRCは2016年から同社と認可申請前協議を行っており、許認可申請前のガイダンス提供や潜在的課題の事前の指摘などを通じて申請の準備作業を支援。申請書が受理されても最終的にNRCがCOLの発給を承認するとは限らないが、オクロ社としては2020年代初頭から半ばにかけてINLで初号機の着工を目指す考えである。「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、熱も供給する。同炉では米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用するほか冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱と電気の供給を続けることができる。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すことも可能。NRCの説明によれば、同炉の開発は安全確実な先進的原子炉の商業化という国益にかなうものであり、このことは先進的原子力技術改革への支援を促進する「原子力技術革新・規制最新化法(NEIMA)」の目的でもある。NRCは今後、審査の準備がし易い効率的な審査日程を同社に提示するため、審査の初期段階として同設計の安全面や主要設計部分の作業に集中する。また、COL発給の可否に関する公聴会への参加要項を近いうちに連邦官報に掲載する。COLの発給により影響を受ける可能性のある者や利害関係者として参加を希望する者は、連邦官報で告知された後60日以内に参加申請手続が必要である。なお、SMR関係の許認可手続としては、ニュースケール・パワー社が独自に開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」について、NRCが2017年3月からDC審査を実施中。全6段階ある安全性関係の審査は、昨年12月時点で第4段階まで完了した。NPMの初号機も「オーロラ」と同様、INL敷地内での建設が予定されている。(参照資料:NRCの発表資料①、②、オクロ社の声明文、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 Jun 2020
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学術会議が安全と安心の関係をテーマにシンポ
日本学術会議は5月28日、「安心感等検討シンポジウム」を開催。同会議の工学システムに関する委員会が主催するもので、安全と安心の関係に焦点を当て、市民の安心の実現に向けた課題・対応について議論した。シンポジウムでは冒頭、2019年度に文化勲章を受章した数理工学者の甘利俊一氏(東京大学名誉教授/理化学研究所名誉研究員)が特別講演を行い、趣味の囲碁の話も交えながら自身の取り組んできた研究について紹介。今回のシンポジウムは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインでの開催となり、チャット機能を通じた参加者との質疑応答では、人工知能が人間を超える「シンギュラリティ」に関する質問もあった。学術会議では毎年7月に多分野の学協会共催のもと「安全工学シンポジウム」を開催しているが、昨夏に「リスク共生社会の構築」を主張した野口和彦氏(横浜国立大学都市科学部教授)は、今回も「安心な社会の構築には、社会目的や他のリスクとの関係も含めて考える必要がある」と述べ、「社会総合リスク」を整理し、行政、企業、学界、市民の役割を改めて考えるべきと、議論に先鞭を付けた。続いて、モノづくりの視点から向殿政男氏(明治大学教授)が、安全目標と安心感の関係について松岡猛氏(宇都宮大学基盤教育センター非常勤講師)が講演。パネル討論に入りまず、電気学会から中川聡子氏(東京都市大学名誉教授)が発表。同氏は、2018年の北海道胆振東部地震による道内全域停電の教訓から、「事は起こるもの」としてのレジリエンスの視点で、4つの「R」、Robustness(頑強性)、Redundancy(多重化)、Rapidity(早期対応)、Resourcefulness(人材・投資の活用)の重要性を強調。「生活の安心感はインフラの確保」と述べ、道内に店舗展開するコンビニが、自動車からの給電によるレジ機能確保、ガス釜炊飯、重油の備蓄などにより、発災時にも95%が営業し市民生活を支えた好事例を紹介した。原子力安全研究協会会長の矢川元基氏は、タラゴナの考古遺産群として現存するローマ時代の水道橋のアーチ構造を図示し、「原理が自然で、フェールセーフ、ローテクだと、理解度・納得度が高く安心感が得られる」とした上で、小型モジュール炉(SMR)の自然循環による受動的安全システムをその一例としてあげた。さらに、「目で確かめられない」と人々の理解度・納得度は低くなるとして、放射線、溶接接合、新型コロナウイルスなどを例示。また、感性工学の立場から中央大学理工学部教授の庄司裕子氏は、安全・安心の問題と、親子間のギャップの類似性を述べた上で、「まず受け手の心を知ることで、信頼関係が回復し伝えたいことが伝わる」などと主張した。前半の講演では、辻佳子氏(東京大学環境安全研究センター教授)が、「課題解決のできる人材育成、社会実装」を図る実効的な安全教育の必要性を強調し、この他、発表者からはイノベーション、安全の定義、技術者への信頼、説明責任、マスコミの役割といった言葉があがった。これを受け参加者を交えた討論では、今後の教育のあり方や、「想定外」といった言葉の理解を巡り意見が交わされた。
- 29 May 2020
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米規制委、SMR等の緊急時対応要件策定に向け提案中の規則でパブコメ募集
米原子力規制委員会(NRC)は5月12日、小型モジュール炉(SMR)や非軽水炉型の新しい原子炉技術について、リスク情報やパフォーマンスに基づいた緊急時対応要件を策定するため、スタッフが提案中の規則(rule)と要件を実行する際のガイダンス案に対して一般からのコメントを7月27日までの期間に募集すると発表した。NRCはすでに数年前、SMRその他の新しい原子炉技術に関して将来実施することになる許認可手続きの検討を始めており、その際初めて、パフォーマンスに基づく緊急時対応策の可能性について検討を開始した。今回NRCスタッフが提案している規則に対しては、2016年6月にNRC委員がその制定計画を承認している。また2017年4月には、新たな規制要件を策定することになった規制上の論理的根拠を示した文書(規制根拠)について、NRCスタッフが案文をパブリック・コメントに付しており、同年11月に最終版を発行していた。今回の措置はこれらに続くもので、NRCは既存の緊急時対応プログラムが主に大型で軽水冷却型の原子炉を対象とする一方、提案中の規則と規制ガイダンス案は原子力施設の設計や安全研究の進展に対応し、SMRその他の最新原子炉技術の将来的な操業に向けた申請に取り組むものだと紹介。現行規制を修正してSMR等に対する緊急時対応の枠組みを代替選択肢として創出することを提案しているが、この新しい枠組みではリスク情報を活用するとともにパフォーマンスに基づいた技術包括的なアプローチを取る。一例として、放射性雲(プルーム)による外部被ばくの経路に関して緊急時計画区域(EPZ)の大きさを決定する際、拡大・縮小可能な柔軟性の高いアプローチを採用する方針だとした。NRCはまた、このような提案規則と規制ガイダンス案が最終的に有効になった場合、SMRや非軽水炉型原子炉の既存の事業者にも影響が及ぶと説明。合衆国連邦規制基準第10部50項(10CFR Part 50)に基づく既存の要件の代替要件として、事業者や申請者はパフォーマンスに基づいた緊急時対応プログラムの策定が選択肢の一つとして可能になる一方、これらの規則は大型の軽水炉や原子燃料サイクル施設、あるいは現在稼働中の(非発電型の)試験・研究炉には適用されないとしている。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 May 2020
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米ホルテック社、同社製SMR用の燃料調達でフラマトム社を選択
米国のホルテック・インターナショナル社は4月28日、軽水炉方式の同社製小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」に装荷する燃料の供給業者として、仏国のフラマトム社を選定したと発表した。フラマトム社が広く販売している、技術面でも実証済みの燃料集合体「GAIA(17×17)」を利用するため、ホルテック社は必要となるエンジニアリング作業すべての実施契約をフラマトム社と締結。これにより同社は、新しい燃料を導入する際のエンジニアリング作業を大方削減できることになった。また、標準的なPWR燃料に「SMR-160」の炉心設計を適合させることで、ホルテック社は燃料関係で生じる可能性のあるリスクを実質的に排除。世界中の既存軽水炉で培われた燃料関係の運転経験を、同社製SMRに生かすことができる。「SMR-160」はポンプやモーターを必要としない受動的安全系を備えた電気出力16万kWのSMRで、ホルテック社は2026年末までに初号機の運転開始を目指している。開発チームには三菱電機の米国子会社が計装・制御(I&C)系の開発で参加しているほか、米国最大の原子力発電事業者エクセロン・ジェネレーション社やカナダのSNC-ラバリン社が協力。また、ウクライナの国営原子力発電公社が同SMRをウクライナで建設するとともに、一部機器の製造については国産化を目指す可能性があるため、ホルテック社は2019年6月、ウクライナ国立原子力放射線安全科学技術センターを交えた国際企業連合を設立している。発表によると、フラマトム社がホルテック社のSMR開発プログラムに加わったことから、同SMRの将来的なオーナーは実質的に、十分な実績をもつ燃料の国際サプライチェーンにアクセスしたことになる。燃料開発では、燃焼度の向上や中性子漏れの軽減、取り換えサイクルの(24か月まで)拡大、水化学上の難しい課題への取り組みなど、要求される条件が次第に絞り込まれていくなか、フラマトム社は「GAIA燃料集合体の開発において高い安全裕度と最適な性能の確保を保証。当社製SMRとは理想的な適合になることが実証されている」と強調した。ホルテック社は今のところ、「SMR-160」で米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査を受けていないが、カナダ原子力安全委員会が提供する全3段階構成の「許認可申請前設計(ベンダー)審査」については、2018年7月からフェーズ1の審査が進展中である。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Apr 2020
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カナダ原研、SMR開発促進イニシアチブで英モルテックス社を支援
カナダ原子力研究所(CNL)は4月23日、英国のベンチャー企業モルテックス・エナジー社が開発しているピン燃料型溶融塩炉「SSR(Stable Salt Reactor)-W」(出力30万kW)で、燃料も含む開発プロジェクトに支援・協力することになったと発表した。これは、CNLが昨年7月に設立した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する2件目の小型モジュール炉(SMR)研究開発プロジェクトとなる。同プロジェクトの下、CNLとモルテックス社およびカナダのニューブランズウィック大学(UNB)は協力して、燃料試験装置をUNBの原子力研究センター内で設計・建設し、最適化を図る計画。これと並行して、英国マンチェスター大学では補足活動が進められる。CNRIは1年単位・コスト分担方式の研究開発支援イニシアチブであり、カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、同技術の商業化を加速することを目的としている。このためCNLは、CNL傘下の国立研究所の専門的知見や世界レベルの研究設備を世界中のSMRベンダーに提供すると表明。初回の提案募集では、国内外の主要なSMR開発ベンダーの中からモルテックス社も含めて申請を4件に絞り込み、1件目の支援対象として米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)と同社製SMR設計を選定した。次回の募集は今年春に実施を予定しており、プログラムの詳細等を専用ウェブサイトで公表中だとしている。 今回のCNRIプロジェクトでCNLは具体的に、燃料試験用の特殊機器をモルテックス社が準備し、設置・起動する段階で支援を提供するとした。燃料試験はまず非放射性物質を使って行われるが、これらの機器を遮へい施設に移し実燃料や放射性物質で試験を完結させる際も、CNLはその専門的知見によって計画の立案やコスト計算、安全性分析などをサポート。このような試験で集められたデータは最終的に、モルテックス社が将来、カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州政府や州営電力のNBパワー社と共同でフル・スケールの燃料製造施設を同州内に建設する時、その設計や許認可活動に活用されることになる。NB州政府はすでに2018年7月、世界的水準のSMR開発で同州がカナダのリーダー的立場を確立することを目的に、モルテックス社のSSR-Wについて商業規模の実証炉を2030年までに州内のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する計画を発表している。CNLによると、カナダで開発・計画されているモジュール式の原子炉設計の多くが革新的な燃料と燃料製造プロセスを採用しており、このような技術の進展は原子炉で一層高いレベルの効率性と安全性を約束する。モルテックス社の場合、放射性廃棄物が少ない特性が期待できるが、そうした利点を現実化するにはコンセプトの実証や許認可プロセスの準備等で研究開発の実施が不可欠だとした。モルテックス社のR.オサリバン北米担当CEOも、「研究開発を進展させプロジェクトを成功させるには、CNLからの財政支援と技術的専門知識が重要になる」とコメント。間欠性のある再生可能エネルギーだけでは、現時点も将来的にも電力需要を賄えないのに対し、原子力発電は世界的なエネルギー問題に取り組む上で非常に重要との見方を強調している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Apr 2020
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IAEAが主催する「SMR規制者フォーラム」、SMRの安全性問題で新たな提言を発表
国際原子力機関(IAEA)は4月22日、同機関が2015年3月から主催している「小型モジュール炉(SMR)規制者フォーラム」が先月下旬の会合で、SMRの安全性に関する新しい提言を出したと発表した。同フォーラムによると、SMR開発では設計それぞれの新たな技術領域に関わる安全性問題で、柔軟な規制の枠組みが必要である。SMRに採用されているモジュール方式やコンパクト設計が発電所の安全性に影響を及ぼすかもしれないとしたほか、SMRの設計から建設、起動、運転、廃止措置まで、ライフサイクル全般の許認可の枠組みにも新たな課題をもたらすと指摘している。このフォーラムには、米国、英国、カナダ、仏国、中国、韓国、ロシア、フィンランド、サウジアラビアの原子力規制当局が参加し、出力30万kW以下の様々な新しいSMR設計を規制する際に課題となる点を協議。規制関係の知識や経験を共有するとともに、共通する安全性問題について解決策を特定・提案することなどを目的としている。IAEAによると、数多くの加盟国政府が温室効果ガスの排出量を最小化しつつ、多量の電気を使って経済の活性化を目指しており、SMRを含む先進的な原子炉設計はそうした目的の達成に重要な役割を担うことが期待される。しかし、SMRを設計・開発するための新たなアプローチは、既存の原子力規制の枠組みにこれまでとは違った観点の課題を突き付けることになった。IAEAが設定した原子力発電所の安全基準は、放射線の有害な影響から人々や環境を守る包括的規範として機能し、SMRにもほとんどの場合は適用可能。しかし、「SMR規制者フォーラム」の専門家は新しい概念の原子炉であるSMRに最適の規制を開発し、各国規制当局の一助とする考えである。同フォーラムはまた、SMRの許認可プロセスにおける課題や作業手続の現状について理解を深める方針。IAEA原子力安全・セキュリティ局のG. リジェットコフスキー原子力施設安全部部長は、「現時点でSMRに特化した安全基準を策定する計画はないが、特定の技術にこだわらない総体的な安全性の枠組みを設定する際、SMR関係の洞察を利用する」と説明した。そうした枠組みを新しい設計に適用するほか、IAEAの安全基準を活用して各国の様々なアプローチを調和させるのに役立てたいとしている。今回の提言のうち、SMRのモジュール方式に起因する安全性への影響について、同フォーラムはまず、複数のモジュールを接続することで電力供給などのサービス利用率や信頼性が向上する利点があると述べた。一方、複数ユニットで構成する既存の原子力発電所の運転経験から、安全面で明確な配慮を必要とする可能性が示されたと指摘。具体的には、福島第一原子力発電所で複数ユニットが関わった事故の教訓を挙げており、複数のシステムを共有することで設備同士が依存しあうなど、設計に脆弱性リスクがもたらされるかもしれないとした。また、SMRのコンパクト設計に起因する安全性問題に関しては、まずSMRを工場で製造しトラックで設置場所まで輸送するため、そのような設計になっていると説明。しかし、SMRで運転やメンテナンス、点検等を実施するとなると、SMRのコンパクト設計にはライフサイクル全般にわたって根本から考えなければならない点があると指摘。一例として、SMRの品質チェックのために機器の溶接部で点検や非破壊検査をどこでどのように行うかなどを検討課題として挙げている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Apr 2020
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米TVA、クリンチリバー・サイトにおけるSMR建設の評価についてテネシー大学と覚書
米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は4月7日、小型モジュール炉(SMR)など費用対効果の高い新世代の先進的原子炉設計をテネシー州クリンチリバー・サイトで建設することについて実証・評価を行うため、テネシー大学(UT)と了解覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、クリンチリバー・サイトについて原子力規制委員会(NRC)から「事前サイト許可(ESP)」を取得したが、審査を受ける際に採用する予定の炉型を特定しておらず、「2基以上のSMRで合計の電気出力が80万kWを超えないもの」を想定。ニュースケール・パワー社やホルテック・インターナショナル社、ウェスチングハウス社などが開発している4種類の軽水炉型SMR設計のパラメーターを技術情報として示していた。ESPは20年間有効だが、実際に原子炉を建設すると決定した場合、TVAは別途NRCに対して建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。今回の連携協力でTVAは、UT原子力工学部の専門的知見を活用して、原子炉設計の経済的な実現可能性を軽水炉型にこだわらず評価する方針。この協力を通じて同社はまた、将来の原子力産業を担う同部の学生達と交流する機会も得られるとした。TVAのJ.ライアシュ総裁兼CEOは、「原子力発電における技術革新という当社のミッション遂行において、UTはそれを支える特殊な能力を提供してくれる」とコメント。UTの先進的なモデリングやシミュレーションのツールを活用して、新たな原子力技術を模索したいと述べた。UTのW.ハインズ工学部長も、「我が学部の原子力部門は1957年に創設された米国で最も古く権威あるものであり、高度に効率的な先進的原子炉の建設に向けたTVAとの戦略的連携により、クリーンで信頼性の高い将来エネルギーの活用に道を拓きたい」としている。TVAはすでに今年2月、米エネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所と同様の協力覚書を締結。経済性や安全性、柔軟性の高い次世代技術を採用した先進的原子炉設計を検討するとしており、今回の覚書と併せて、TVAが最新の原子炉設計の建設見通しで初期段階の評価を下す重要なステップになると述べた。(参照資料:TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Apr 2020
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IAEA、様々なSMRの経済性評価で3年計画の協働研究 開始
国際原子力機関(IAEA)は3月25日、超小型炉を含む小型モジュール炉(SMR)の経済性評価に特化した3年計画の協働研究プロジェクト(CRP)を開始すると発表した。現在世界中で開発されている様々なコンセプトのSMR(約50設計)を実際に建設する際、必要となる経済性評価の枠組みや背景情報を加盟各国に提供することが目的。参加希望者は4月30日までに、研究契約や協定書の案をIAEAの研究契約管理部に提出するよう義務付けられている。IAEAが定義するSMRはモジュール毎の電気出力が最大30万kWであり、一部のものは予め製造したシステムや機器類を工場で組み立てるなどして建設コストや工期を削減。その安全性や設置方法、利用分野などで様々な設計が存在し、近年これらへの関心は急速に高まっている。また、新しい世代の原子炉は従来の100万kW級原子炉と比べて設計がコンパクトであり、1,000kW規模の超小型炉ならトラックや鉄道、船舶、航空機で容易に輸送することが可能。送電網の規模が小さい地域や遠隔地域にも信頼性の高い熱電供給を実現できるほか、出力が変化しやすい再生可能エネルギーや様々なエネルギー貯蔵システムに対応する進化型の送電網に、発電設備系統連系(アンシラリー)サービスを提供することも可能だとした。IAEAの認識では、現在開発中のSMR技術の成熟度はそれぞれ異なっており、建設に際してコストや納期を適切に評価・分析し、合理化する必要がある。市場のニーズに応えるにはSMR用のビジネスモデルを構築しなければならず、市場そのものについても、機器の需要や産業支援サービスが維持されるような規模の大きさが求められる。SMRの開発と建設にともなう経済面の効果を数値化し、社会的支援が得られるよう伝えていく必要があるとした。このためIAEAは今回のCRPで、①採用されている技術の成熟度の違い、②採用技術の詳細、③各設計コンセプトの潜在的なユーザー、および付随するリスク特性と収益への道筋――に集中的に取り組む方針。CRP参加者は以下の分野の調査を通じて、SMR開発プロジェクトの経済的評価に資する系統的アプローチを共同で開発することになる。調査分野とはすなわち、SMRの市場、SMRと非原子力による代替選択肢間の競争力分析、価値の高いプロジェクトの提案とその戦略的位置づけ、プロジェクト全体の企画経費予測と分析、プロジェクトの構成とリスク配分および財政評価額、経営計画とビジネス事例の実証、経済的な費用便益の分析-—など。評価の枠組みが完成した後は特に、SMRの量産に関する経済性評価に適用される予定で、既存の工場で量産する際の条件設定や、サプライ・チェーンを現地化する機会や影響の評価に使われる。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月26日付け「ワールド・ニュークリ ア・ニュース(WNN)」)
- 30 Mar 2020
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英ロールス・ロイス社、トルコで同社製SMRを建設する可能性調査で国営電力と覚書
英国のロールス・ロイス社は3月19日、開発中の小型モジュール炉(SMR)をトルコ国内で建設する際の技術面と経済面、および法制面の適用可能性評価を実施するため、関連企業や団体8社と結成した国際企業連合を代表して、トルコ国営発電会社(EUAS)の子会社のEUASインターナショナルCC(EUAS ICC)社と協力する了解覚書を締結した。同覚書ではまた、SMRをトルコ側と共同生産する可能性も探ると明記。トルコは大型原子炉に加えてSMRも建設し、クリーン・エネルギーによる経済成長を支えていく考えだ。ロールス・ロイス社とトルコ政府エネルギー部門との協力は2013年に遡り、その際はエネルギー天然資源省およびイスタンブール工科大学とともにサプライチェーンの調査に着手した。今回の発表はトルコに低炭素なエネルギーシステムを導入する一助となるほか、トルコと英国間の強力な連携関係構築に向けて新たな1ページが刻まれると強調しているロールス・ロイス社の企業連合には、仏国を拠点とする国際エンジニアリング企業のアシステム社、米国のジェイコブス社、英国の大手エンジニアリング企業や建設企業のアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社のほか、溶接研究所と国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)が参加している。今回の覚書で同企業連合は具体的に、SMR建設に関わる技術や許認可、投資等の状況および建設プロセスの見通しなどを重点的に調査、トルコのみならず世界中の潜在的な市場についても検討する。SMR用の機器はサイト内の全天候型施設で迅速に組み立てられるよう、規格化して工場内で製造する方針で、天候によって作業が中断されなければコストの削減につながるほか、作業員にも良好な作業条件が保証されると述べた。合理化された先進的な製造工程により効率性も徐々に改善されていき、結果的に初期費用の大幅削減と迅速かつ予測可能な建設と起動が確保されるとしている。ロールス・ロイス社のD.オル理事(=写真左)は、「地球温暖化への取組は最も差し迫った長期的課題であるとともに、経済的には重要なチャンスにもなり得る」と指摘。同社製SMRであれば迅速かつ適正価格で建設が可能であり、数万規模の雇用を創出する魅力的な投資機会となるほか、今後数十年間にわたってトルコの繁栄と生活の質の向上が約束されると述べた。EUAS ICC社のY.バイラクタルCEO(=写真右)は、「原子力で電源の多様化を図ることが我々の展望であり、そのためにトルコの社会経済に貢献する持続可能な原子力産業を開発したい」とコメント。トルコはすでに、パートナーであるロシアと大型原子力発電所(120万kW級PWR×4基)を地中海沿岸のアックユで建設中だが、価格面での競争力は重要な指標になるとした。またSMRの実行可能性については、その研究開発を継続的にモニターしていくとしている。なお、ロールス・ロイス社はすでに2017年11月、同社製SMRをヨルダンで建設する技術的実行可能性調査の実施に向け、ヨルダン原子力委員会と了解覚書を締結済みである。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 Mar 2020
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米オクロ社、先進的SMRで初の建設・運転一括認可(COL)を規制委に申請
米カリフォルニア州を本拠地とする原子炉開発企業のオクロ(Oklo)社は3月17日、同社製の小型高速炉設計「オーロラ」(電気出力0.15万kW)について、先進的な小型原子炉としては初となる建設・運転一括認可(COL)を、子会社のオクロ・パワー社が原子力規制委員会(NRC)に申請したと発表した。「オーロラ」では今のところ、COLの取得と実際の建設に必要な設計認証(DC)審査が申請されていないが、同設計の初号機についてはエネルギー省(DOE)が昨年12月、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可。オクロ社は2020年代初頭から半ばにかけて、「オーロラ」の着工を目指しており、それまでにDCを取得する考えと見られている。NRCでは現在、小型モジュール炉(SMR)として唯一、ニュースケール社製「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のDC審査を実施中である。発表によると、「オーロラ」では米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。原子炉の冷却用に水を使わず、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることができる。また、究極的には燃料のリサイクルや、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すことも可能だとしている。同社は2016年11月、許認可審査の円滑な進展を期すためNRCスタッフと申請前の諸活動を開始した。2018年には、現行規制に基づくCOL申請書の新たな内容構成についてNRCと協議しており、同社は今回、新方式を適用して申請を行った最初の例となった。従来方式では申請書の長さが数千ページ規模だったのに対し、新方式では千ページ以下に留まった模様。このやり方は今後の同様の申請書審査にフィードバックされ、効率性の改善に役立てられるとしている。同社はまた、今回のCOL申請書を初めてインターネット経由で提出した。「数十年前の古いプラント用ガイダンスに縛られることなく、これまでと根本的に異なる核分裂技術の申請書で規制基準を満たす方針であり、当社が先駆けとなった近代的な申請は、米国で先進的技術の商業化を進める重要な一歩になった」と強調している。同社はさらに、非軽水炉型原子炉技術の審査を効率的・効果的に実施するため、NRCが過去数年間にわたって数多くの措置を講じてきたと説明。世界をリードする原子力規制当局として、NRCは今後、先進的原子炉設計の評価を滞りなく進めていくことになると述べた。(参照資料:オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 18 Mar 2020
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カナダ原研、USNC社製SMRの燃料製造研究等で協力協定締結
カナダ原子力研究所(CNL)は2月26日、昨年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する最初の小型モジュール炉(SMR)研究プロジェクトとして、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)のSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(=右図)を選定し、同社の子会社であるUSNC-パワー社と協力協定を締結したと発表した。この協力では主に、MMRで使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造研究やMMR用黒鉛炉心の照射プログラム策定、CNLチョークリバー・サイトにおける燃料分析検査室の設置などをカバー。カナダのプロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに昨年4月、USNC社のパートナー企業として、MMRをCNLチョークリバー・サイト内で建設するための「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。今回の協力では、チョークリバー・サイトでのFCM製造施設建設に向けた実行可能性調査の準備活動や、MMRの炉心や燃料の設計妥当性を確認する試験プログラム開発が含まれる。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにオンタリオ州にあるチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を設定。関連企業からは、SMR原型炉や実証炉の建設で15件以上の関心表明書を受け取った。これに続いてCNLは2018年4月、チョークリバーを含むCNLの管理サイトで実際にSMR実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集。第1回目となるこの募集で、同年6月にはスターコア・ニュークリア社やU-バッテリー・カナダ社など国内外のSMR開発企業4社から提案があったという。CNLはこのほか、SMR開発を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブとして、CNRIを2019年に設置している。1年単位のCNRIプログラムを通じて、CNLは世界中のSMRベンダーにCNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供。カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、SMR技術の商業化を加速する計画である。USNC社はCNLが昨年11月、CNRIの初回の支援対象候補に選定した4社の1つで、残り3社(英モルテックス・エナジー社、米Kirosパワー社、加テレストリアル・エナジー社)の提案に関してCNLは現在、審査と交渉の様々な段階にあるとした。今回の協力取り決めにより、USNC社とCNLはMMRの多様な側面の中でも特に、燃料の開発・試験を検討。CNL側からは150万カナダドル(約1億2,000万円)相当の現物出資が行われ、2021年春までに完了する予定である。CNLとの協力に関してUSNC社のF.ベネリCEOは、「当社製SMR設計の実行可能性とFCM燃料の特殊な優位性を実証する重要な機会になる」と説明している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 Feb 2020
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フィンランド国立技術研究センターが地域暖房用SMRの開発を開始
フィンランドの国立技術研究センター(VTT)は2月24日、地域暖房用の熱供給を目的に国内で小型モジュール炉(SMR)の開発に乗り出すと発表した。同国では2019年に、地域熱供給用の設備だけでCO2排出量が400万トンを越えたが、政府は2029年までに発電部門で脱石炭火力を達成する方針。熱供給システムの脱炭素化は地球温暖化防止に向けた最も重要な課題の1つであり、VTTは第一段階として国内の熱供給ネットワークに適したSMRの概念設計を開発する。また、これに必要な機器類の製造技術で新たな産業部門を国内に創出するとしている。VTTは雇用経済省が管轄する北欧最大の研究機関で、エネルギー分野を含む幅広い科学技術分野で最先端の技術的知見を蓄積。独自の研究施設と海外に幅広いネットワークを保有しており、過去5年間はSMRの導入機会を探る複数のプロジェクトに携わってきた。欧州レベルでは特に、欧州原子力共同体(ユーラトム)が資金提供して昨年始まった「ELSMOR」プロジェクトで、VTTはリーダーとして欧州における軽水炉型SMRの許認可手続きに向けた調整作業を進めている。発表によると、原子力は国内総発電量の約3分の1を賄うフィンランド最大規模の電源であり、CO2排出量は風力発電などと同程度。発電部門におけるCO2排出量は少ないとしても、「実質ゼロ化」を達成するにはエネルギー産業の他の分野で排出量を大幅に削減する必要があり、SMRは低炭素な原子力発電を熱供給に利用拡大するのに適した設備である。これに関してVTTのV.トゥルッキ研究チームリーダーは、「スケジュールがタイトな上、低コストな代替選択肢はわずかだ」と指摘。その上で、目標の達成に向けて新たな技術革新と新しい技術の導入が必要であるとし、原子力による地域熱供給はCO2排出量の大幅な削減に繋がると強調した。VTTはまた、海外で多くのSMR開発プロジェクトが許認可段階に達したものの、それらの多くは発電用あるいは産業プロセス用の高温エネルギー源だと説明。約100度Cの熱湯を必要とする地域熱供給では、一層経済的でシンプルなソリューションを利用できるため、VTTとしてはこの目的に合わせたプラントを開発し、都市部の一般家庭や人口密集エリアの暖房用としてコスト面の効果が高いものを目指す方針である。実際のSMR開発にあたり、VTTとしては保有する計算コード等、多分野の総合的能力を活用する。VTT原子炉安全分野のJ.レッパネン研究教授は、「炉心のモデリングを例に取るなら、ハイファイ数値シミュレーション手法が適用できる」と指摘。同教授が開発した「連続エネルギー・モンテカルロコードSERPENT」は、すでに44か国・250もの大学や研究機関における原子炉のモデリング等に活用されている点を強調した。(参照資料:VTTの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Feb 2020
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米TVA、クリンチリバーで建設するSMRの経済的実行可能性改善でオークリッジ研と協力
米テネシー州にあるエネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)とテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月19日、TVAが州内のクリンチリバー・サイト(=写真)で建設する小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉設計について、コスト面での有効性などを評価するため、協力覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、同サイトで2基以上、合計電気出力80万kW以下のSMR建設を想定した「事前サイト許可(ESP)」を米原子力規制委員会(NRC)から取得。ESPは20年間有効だが、現時点で採用設計が確定していないため、今回の覚書の下で両者は協力して、可能性のある先進的原子炉設計について許認可手続と建設、運転・維持にともなう経済的実行可能性の改善方法を探る。実際に原子炉建設が決まった場合、TVAはNRCに対して別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。両者の今回の協力は、双方の原子力関係能力や資産を活用するこれまでの協力関係に基づいている。TVAのワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始した際、ORNLはコンピューターのモデリング技術を用いて同炉における最初の6か月間の運転をシミュレートした実績がある。両者の発表によると、評価対象とする原子炉設計は具体的に、工期が短くて柔軟な運転が可能、かつ低コストでCO2を排出しないもの。評価を行う重要分野としては、先進的な建設技術の開発やサイト・インフラ支援のための総合的開発能力、経済的な建設を促進する様々な機能の基盤、先進的製造技術における技術革新、規制要件や安全要件を一層効果的に遵守できる技術基盤を挙げている。ORNLはこれまでDOEの国家プログラムの中で、新しい材料物質やプロセス、最先端技術の開発と活用によって、多くの電気事業者が発電技術を改良したり技術革新を図れるようにする研究活動を続けてきた。今回の覚書を通じてTVAは、ORNLの保有する科学的知見のほかに、「高中性子束・同位体生産炉」や世界最速のスーパーコンピューターが置かれている「オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング施設(OLCF)」、「製造実証施設(MDF)」といった世界最先端の施設を利用することが可能になる。ORNLのT.ザカリア所長は、「世界を牽引するORNLの研究能力とTVAの運転経験を組み合わせて、コスト面の効率性が高い次世代の原子力発電を促進したい」と表明。「原子力は長年にわたって米国のエネルギー構成における重要な要素であり、CO2を出さない発電技術への要望の高まりは、我々が今後も安全で効率的かつ価格も適切な原子力発電を取り入れることを求めている」と述べた。(参照資料:ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Feb 2020
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ウクライナ、国内でのSMR建設に向けホルテック社に続きニュースケール社とも覚書
ウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)は2月14日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(=断面図)を建設・運転する際の規制上、設計上の課題を評価するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。 覚書の調印式は今年1月、ニュースケール社の事務所があるオレゴン州コーバリスで行われており、これには両者の代表者に加えて米国務省やエネルギー省(DOE)、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)の代表者らが参加した。ウクライナはすでに2018年3月、国内で米ホルテック・インターナショナル社製SMRの建設計画を進めつつ同技術の一部国産化を目指すため、ウクライナの原子力発電公社(エネルゴアトム社)がホルテック社との協力覚書に調印。2019年1月には、これらにSSTC NRSを交えた3者が国際企業連合を正式に結成し、国内でSMRの建設計画を促進している。 ただし、ホルテック社のSMRは今の所、米国内の設計認証(DC)手続が正式に始まっていない。これに対してニュースケール社製のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)がSMRに関して唯一実施している全6段階の設計認証審査のフェーズ4まで終了。すでにカナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書が結ばれているほか、2020年代半ばには米国初のSMRとしてDOE傘下のアイダホ国立研究所内での運転開始が見込まれている。 今回の覚書によりSSTC NRSは具体的に、米国で行われているニュースケール社製SMRのDC審査経験に基づき、ウクライナの建設・運転許認可プロセスにおける米国との隔たりについて分析・調査を実施する。SSTC NRSはウクライナでSNRIUが新たな原子力技術を審査・承認する際、主要アドバイザーとして機能している。SNRIUが原子力安全の基準や規制・規則に対するコンプライアンスを確認し、データ分析や報告を行うにあたり、独立の立場の評価結果や技術的助言をSNRIUに提示していることから、SSTC NRSは同覚書を通じてSMR技術がウクライナのエネルギー需要を満たす上でどれほど有効であるかなど、関連する様々な疑問に答える一助になると指摘。評価結果をSMRの許認可プロセスに統合して、国内での将来的な建設につなげたいと述べた。 ニュースケール社も「SSTC NRSは経験豊富かつ評判の高い科学技術支援組織」と評価した上で、「当社のSMR技術をウクライナの将来エネルギーに組み込む最良の方法を探し出してくれるはずだ」とコメント。ウクライナとの覚書は、同社がSMR技術の開発リーダーであるとともに技術革新企業であることを示しており、今後も潜在的顧客となり得る世界中の組織と同様の合意を得るべく協議を続けていきたいとしている。(参照資料:ニュースケール社、SSTC NRS(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Feb 2020
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ATENAフォーラム開催、米NEIのコーズニック会長が講演
原子力事業者・メーカー・関係団体で構成される「原子力エネルギー協議会」(ATENA、理事長=門上英・三菱重工業特別顧問)が活動状況を報告し今後の課題について話し合う「ATENAフォーラム2020」が2月13日に都内で開催された。ATENAは、原子力発電のさらなる安全性向上に向けて産業界全体で知見結集・共通課題の抽出を図る組織として2018年7月に設立された。フォーラムで門上理事長は、(1)原子力発電所の共通課題への対応、(2)規制当局との積極的な対話、(3)様々なステークホルダーとのコミュニケーション――を柱とする活動方針のもとに実施されているATENAのこれまでの活動について説明。ATENAでは現在15件の技術課題に取り組んでいるが、その中で発足間もない2018年9月に作業を開始した「サイバーセキュリティ対策導入ガイドライン」作成については、2020年1月までにドラフト版に関する原子力規制委員会との対話も行われており、今後、自主ガイドとして発行し事業者・メーカーへと展開することとなっている。今回のフォーラムに来賓として訪れた原子力規制委員会の更田豊志委員長(=写真下)は挨拶の中で、「ATENAは申請者でも被規制者でもない。意見や反論が寄せられることを期待する」と、ATENAとの対話に積極的な姿勢を示したほか、原子力災害発生時の防護措置準備・実施に向けプラントの状況に応じて定める緊急時活動レベル「EAL」を例に、「現場を持つ事業者の知見が不可欠」とも述べた。ATENAは海外の原子力関係組織との連携も行っており、去る6月には米国原子力エネルギー協会(NEI)と技術協力協定を締結するなど、知見・技術の収集・活用に努めている。今回のフォーラムには、NEIのマリア・コーズニック会長が出席し講演を行った。その中で、コーズニック会長は、まず「気候変動は世界で喫緊の課題」として、地球温暖化問題の解決につながるクリーンエネルギーとして原子力に取り組む日米両組織による協力の意義を強調。さらに、「原子力以上に明るい未来に対応できる産業はない」とも述べ、米国における小型モジュール炉(SMR)の開発状況や、原子力規制委員会(NRC)による許認可の合理化に向けた動きなどを紹介した。コーズニック会長を交え、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)をモデレータとして行われたパネルディスカッション(=写真上)には、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員長)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、山﨑広美氏(原子力安全推進協会理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。意見交換の後、玉川氏は、「しっかりと受け止め、今後のATENAの活動に活かしていきたい」と、引き続き安全性向上に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
- 14 Feb 2020
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「原子力人材育成ネットワーク」報告会、ジェンダーバランス改善の取組も
「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=高橋明男・原産協会理事長)の報告会が2月12日に都内で開催され、2019年度の活動状況を紹介するとともに、笹川平和財団会長の田中伸男氏他による特別講演や、原子力分野におけるジェンダーバランス改善の取組に焦点を当てたセッションを通じ、今後の原子力人材確保・育成を巡る課題について産官学の参加者らが意見交換を行った。「持続可能なエネルギー安全保障戦略」と題し特別講演を行った田中氏は、国際エネルギー機関(IEA)が毎年まとめる「世界エネルギー見通し」(WEO)に基づき、2040年までの中国とインドの石油需要増や、最近の産油国を巡る地政学的な緊張などについて説明。IEAが11日に発表した世界のエネルギー起源CO2排出量の推移も紹介し、「石油の時代から電気の時代への転換期にある」とした。その上で、原子力発電に関しては、風力や太陽光との比較から建設コスト面の厳しさを指摘しながらも、運転期間をできるだけ延長することで市場競争力が上がることを強調。さらに、炉型の標準化に関し、「安全性や核不拡散性の高い小型モジュール炉(SMR)の開発への早急な着手が必要」とも述べた。続いて「女性研究者の養成に関わる取組と全国ネットワーク」と題し特別講演を行った東京農工大学副学長の宮浦千里氏は、同学理工系分野のジェンダーバランス改善について、2009年設置の「女性未来育成機構」によるキャリア支援から、女子トイレなどの学内施設改修に至るまで、地道に取り組んできた結果、工学系の女子学生比率が2割を超え全国トップレベルとなったことを披露。さらに、女性研究者を取り巻く環境整備に向け、140超の大学・研究機関が参画する全国ネットワークを組織し情報交換を進めているという。同氏によると、日本の研究者に女性が占める割合は約15%と、OECD加盟国では最低レベルにあり、その背景として研究者の仕事の魅力が女性に伝わっていないことや、キャリア形成の難しさなどをあげている。OECD/NEAでは、12月にパリでジェンダーバランス改善に向けた会合を開催しており、今回の報告会では、原産協会国際部の上田欽一氏が同会合への参加報告を行った。世界の原子力部門における女性従事者の割合は22.4%とのデータをまず示し、各国参加者からの取組紹介や討議を通じ原子力部門への女性進出を妨げる要因として、「ジェンダーへの先入観」、「ワークライフバランスの問題」、「原子力に対する悪いイメージ」があげられたとしており、引き続き、データ収集やコミュニケーションを図っていく必要性を強調。また、「男女の職業選択は既に15歳で分岐している」とも述べ、初等中等教育での取組の重要性も示唆した。続いて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グループの野原薫子氏は、OECD/NEAとの共催で8月に開催した女子中高生を対象に理工系分野への進路を喚起するイベント「Joshikai in Fukushima」(福島県三春町)について紹介した。「原子力人材育成ネットワーク」では、日本全体として整合性を持った効果的・効率的な原子力人材確保・育成に向けて戦略立案が必要との考えから、2019年度に「戦略ワーキンググループ(WG)」を立ち上げており、今後同WGのもと、既存活動のPDCAや関係省庁との人材育成における連携を強化していくこととしている。これらの報告を受け、高等教育の立場から東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は、「『もんじゅ』跡地に研究炉を建設する構想もあり、学生に設計の絵コンテを描かせては」と提案。中学・高校で使われる理科・社会科の教科書を調査してきた九州大学名誉教授の工藤和彦氏は、「技術者としての倫理観も求められる。『技術者像』のあり方についても考えるべき」などと意見を述べた。
- 13 Feb 2020
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フィンランド規制当局、SMRの安全評価と許認可の体制準備
フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月30日、一般に「小型モジュール炉(SMR)」と呼称される原子炉の安全な運転条件について取りまとめた報告書を公表した。SMRに対して国内外の関心が高まっていることから、その安全性評価など特有の課題を議論する内容であり、許認可体制についても原子力法の改正等を対象項目とすることを検討中だとしている。 フィンランドでは今のところSMRを建設する具体的な計画は存在しないものの、STUKは今後のことを考慮した準備体制を整える方針である。STUKのP.ティッパナ長官は「我々は新型の原子力プラントに適用される安全要件についても関係者に考慮すべき内容を通達できるようにしておかねばならない」と説明。そうしたプラントの安全評価に関してもSTUKが状況に応じて対応できるようにしておく必要があると述べた。 発表によると、この件については現在、同国の経済雇用省が作業部会を設置して調査を実施中。課題の1つは原子力施設に関する既存の法定許認可システムを、どのようにしてSMRの許認可や放射線安全モニタリング等に適合させるかであるとした。また、世界では近年、SMR開発に莫大な投資が行われており、伝統的な原子力発電企業に加えて市町村の自治体、プロセス産業なども新たにSMRの電力とプロセス熱の利用に関心を表明しているとした。STUKは今後10年以内に、国内市場にもSMRなどの新型原子力プラントの投入が予想されることから、今回の報告書ではSMRの安全性評価や許認可、モニタリング等で持続可能な条件を設定するため、当局や政策立案者、科学コミュニティ、エネルギー企業らが行う議論に対してガイドラインを提示。技術の進展にともない、当局の規制環境では社会の期待に直ちに応えられないようなリスクも生じることを想定した上で、そうした状況への対策については次のような認識の共有を図りたいとしている。すなわち、(1)SMR向けに法体系を修正する必要性を見極める:既存の許認可手続きや安全要件は主に軽水冷却方式の大型炉向けに設定されている。今こそ政府が原子力法を包括的に改正する準備を進め、これらとは大幅に異なるSMR用の許認可システムを策定する好機である。(2)関連の国際協力に参加することが重要:SMR製造業者の主な目的は国際市場向けにSMRを量産することにあるが、ここでの課題は国毎の安全要件が少しずつ異なる点。様々な国の安全規制当局が協力してSMRの安全要件を調和させれば、適切な許認可システムや実行可能な良好事例が明確になるため、STUKはこの作業に積極的に関わっている。(3)研究と経験に基づく知見がSMRの安全性の基盤になる:SMRの性質はそれぞれに異なり、いくつかのSMRでは現在世界で稼働中の原子炉とも違っている。このため、SMRの安全性は実地で証明しなければならず、それぞれの安全確保対策を設計・評価する際も、膨大な量の研究や経験に基づく知見、実験・計算などが必要になる。(4)SMRの安全性は全体的な評価が必要:SMRは地域暖房用のプロセス熱を供給する目的のものがあるため、住宅地に比較的近い地点での設置がしばしば検討されるが、緊急時に備えた予防的防護措置の準備区域については適切に配慮する必要がある。(5)放射性廃棄物の管理を確実に:フィンランドでは世界に先駆けて放射性廃棄物の地層処分場を建設中であり、軽水炉方式のSMRについては同様の措置が有効と考えられる。ただし、SMRの放射性廃棄物管理用に新たな責任体制や組織モデルが必要になるかも知れない。 (参照資料:STUKの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Feb 2020
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米GEH社の「BWRX-300」、チェコでの建設に向けた実行可能性調査で覚書
米ノースカロライナ州ウィルミントンを本拠地とするGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は2月3日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」をチェコで建設した場合の経済的・技術的な実行可能性を探るため、チェコの国営電力会社(CEZ)と覚書を締結したと発表した。CEZ社はすでに昨年9月、SMR設計として唯一米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査が行われているニュースケール・パワー社製パワー・モジュール(NPM)について、国内での建設可能性を模索する覚書を同社と結んでいる。「BWRX-300」では今のところDC審査の日程が発表されていないものの、同設計の建設に向けた実行可能性調査の実施でGEH社はバルト三国のエストニア、東欧のポーランドと覚書を締結済み。先月30日には、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた同設計の技術文書(トピカルレポート)をNRCに初めて提出したと発表、NRCの正式な許認可プロセスとして先行安全審査が始まったことを強調している。チェコではテメリンとドコバニの2つの原子力発電所で総発電電力量の約3分の1を賄っているが、国営送電会社は昨年秋、これらの運転期間満了や経年化した石炭火力発電所の閉鎖にともない、同国は2030年初頭から次第に電力を輸入するようになるとの予測報告書を公表した。チェコ政府は近い将来、このような石炭火力発電所を新規の原子炉や再生可能エネルギーで代替することを計画しており、同国のA.バビシュ首相は昨年11月、ドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR×4基)(=写真)で2036年にも新たな原子炉を完成させる方針を表明した。GEH社による今回の発表の中でも、チェコのK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易相が「チェコ政府にとって技術革新は最優先事項であり、SMRは原子力発電の将来を担う可能性がある」と強調。原子力発電分野の研究開発におけるCEZ社の集中的な取り組みに満足の意を表するとともに、「GEH社との協力により世界でも最高レベルにあるわが国の原子力研究がさらに進展する」との見方を示した。また、CEZ社のD.ベネシュCEOは「新たなエネルギー技術やソリューションには、当社も重点的に取り組んでいる」とした。その上で、同社グループの中でも特に「主要な関係機関の国立原子力研究機関(UJV Rez)がSMR関係の研究を進めており、SMRは将来的に無視できない重要選択肢になり得る」と指摘。このような背景から、GEH社との共同作業は同社にとって自然な展開だと説明している。 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Feb 2020
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南アの国営ESKOM社、傘下のPBMR社の売却先を募集
南アフリカ共和国の国営電力会社ESKOM社は1月31日、ペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の商業化を目指して、かつて設立したPBMR社を売却するため、前日付で同設計の商業化に対する関心表明(EOI)を産業界から募集したと発表した。南アにおけるPBMR開発計画はすでに中止されているが、小型モジュール炉(SMR)の1つであるPBMRの設計開発・製造・建設技術に加え、PBMR以外でも様々な原子炉設計に利用出来る3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料の製造技術も売却することになったもの。売却先となる企業には、知的財産権保持のため保存整備(C&M)状態にあるPBMR社の株式購入や、関係技術の商業化への投資を求める方針で、これにより市場には無制限の自由オプションが提供されるとESKOM社は強調した。また、EOIを募集する具体的な目的は、PBMRへの関心の質を厳しく見極める市場調査であり、次のステップとして提案募集(RFO)や情報依頼書の募集(RFI)をかける際、その範囲を特定するためだと説明。提出締め切り日は2月28日となっている。PBMRは電気出力16.5万kW(熱出力40万kW)の小型ガス炉で、これに加えて750度Cの水蒸気を供給可能な蒸気発生器とで構成される。炉心溶融の心配が無いなど安全性の高さが特長で、大型炉と比べて初期投資が少なくて済むほか、送電線が本格的に整備されていない地域にも適したプラントと位置付けられている。PBMR社はESKOM社が大株主となって1999年に設立したもので、株式の一部は米国のエクセロン社やウェスチングハウス社が一時期保有。日本の三菱重工業も2001年にガス・タービン発電機のフィージビリティ・スタディでPBMR開発計画に参加したほか、2010年2月には熱出力を20万kWに半減させた実証炉の共同開発を検討することでPBMR社と合意していた。2010年9月に南ア政府がPBMR開発計画の中止を発表した際、理由として同炉の潜在的顧客や投資パートナーの確保に行き詰まったことや、計画を継続した場合に少なくとも300億ランド(約2,200億円)の追加投資が必要になること、近年の経済不況により開発の優先順位が変更されたことなどを指摘。南ア政府はまた、PBMR計画のその後に関して(1)PBMR社をC&M状態に置き、その資産と知的財産権を保護する、(2)南ア核燃料公社の燃料開発工場で廃止措置を取り、冷却材であるヘリウムの試験施設は密封管理下に置く――などを勧告していた。(参照資料:ESKOM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Feb 2020
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