
九州電力は3月26日、純粋持株会社体制へ移行する方針を正式に決定したと発表した。グループを統括する親会社「キューデンホールディングス株式会社」を2026年10月1日に設立する。2026年6月に開催予定の定時株主総会での承認を前提に、段階的に体制移行を進めるという。キューデンホールディングスの社長には、九州電力の現代表取締役社長執行役員の西山勝氏が就任し、事業子会社へと移行する九州電力の取締役社長には中村典弘氏が就任する。大手電力9社のうち、純粋持株会社体制へと移行するのは九州電力が初。同日、記者会見には西山氏・中村氏の両社長が登壇。西山社長はキューデンホールディングスと名付けた理由について、「各所でお客様から『キューデンさん』と呼んでいただくことが多く、この名称自体が当社グループのブランドを象徴している」と説明。その上で、「今後は九州の電力事業にとどまらず、成長分野を含めた新たな事業にも挑戦し、九州の電力会社という枠にとらわれない姿勢を、この名称に込めた」と述べた。また、2027年4月にグループ再編を行うことも併せて発表し、九州電力送配電、九電みらいエナジー(再エネ)、QTnet(情報・通信事業)、キューデン・インターナショナル(海外事業)、九電都市開発(新設)の主要6社を中核とする体制を構築するという。新体制への移行は、「全体最適視点でのグループ経営」と「各事業の自律的かつ迅速な運営」の両立を狙いとしたもので、キューデンホールディングスの主な事業内容は、グループ全体の経営戦略策定や経営管理となる。事業子会社へと移行する九州電力は、原子力発電事業を含む国内の電気事業にフォーカスする。キューデンホールディングスの役割について問われた西山氏は、「グループ全体の成長を見据え、どのようにマネジメントしていくかが重要になる」とコメント。その上で、「経営管理にはアクセルとブレーキの双方が不可欠であり、どの分野を伸ばし、どこを抑えるかといったバランスを適切に取っていく必要がある」との考えを示した。なお、東京電力や中部電力も持株会社体制を取っているが、原子力事業はホールディングスが自ら担っている。一方で、キューデンホールディングスは同2社とは異なり、新体制へと移行後も、原子力事業を九州電力(子会社)が担う。このような事例も大手電力9社で初となる。原子力発電所を持つ主体が持株会社(キューデンホールディングス)ではなく子会社(九州電力)となることや、それに伴う責任のあり方について問われた西山社長は、「国内の電気事業を担う九州電力(子会社)が多様な電源を保有し、安定的に電力を供給するのが基本的な姿で、電源ごとに分ける必要はないと考える」との認識を示した。その上で原子力の安全性については、「事業者である九州電力が安全確保の責任を負うことは大前提」と強調。一方で、「キューデンホールディングスが別の視点から原子力の運転状況を監視・監督することで、チェック機能が強化される。監督する目が増えることはむしろ良いことだろう」と述べた。また、西山社長は、新たに九州電力の社外取締役にも就任する予定で、ガバナンスの実効性を確保していく方針を説明した。また、西山社長は、「今回の体制移行を通じて各事業に責任と権限を委ねることで、事業ごとの成長を促し、グループ全体としてキャッシュフローの積み上げを図ることができる」と説明。その上で、「各事業が成長すれば利益も積み上がり、その結果として原子力事業に投入できるリソースも拡大していくだろう」と述べ、新体制への移行は原子力発電事業を含めたグループ全体の持続的成長に繋がると強調した。
06 Apr 2026
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RX Japanが主催する国際エネルギー総合展示会「第25回スマートエネルギー WEEK春」が、3月17日から19日まで東京ビッグサイトで開催された。洋上風力や水素エネルギー、CCUS(CO2回収・利用・貯留)など、脱炭素社会の実現に向けた最新技術が一堂に会し、3日間で6万人超が来場した(主催者発表)。また、会期中にはエネルギー政策やカーボンニュートラルをテーマとしたセミナーが多数開催され、最終日の3月19日には、資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課長・多田克行氏が登壇。日本のエネルギー情勢と原子力政策の現状・展望について講演した。会場には多くの来場者が集まり、原子力に対する関心の高さがうかがえた。多田氏は、日本のエネルギー安全保障を取り巻く現状を踏まえ、既存の原子力発電所の最大限活用、次世代革新炉へのリプレース、事業環境整備、バックエンドプロセスの加速化の4点を軸に、日本の原子力政策の方向性について語った。多田氏はまず、日本のエネルギー自給率が低水準にとどまり、化石燃料への依存度が諸外国と比べて高いことについて言及。日本では、化石燃料の輸入額が年々増加しており、2024年度は約24兆円に達していることから、「高付加価値品で稼いだ外貨(2024年/28兆円)の大半が化石燃料の輸入費で消えている」と指摘し、警鐘を鳴らした。そして、エネルギー安定供給と脱炭素化を両立するうえで、原子力の活用が重要と強調した。また、生成AIの普及などを背景に、データセンターや半導体工場などにおける電力需要が急増していることから、安定的に供給できる脱炭素電源の確保が急務だと指摘。一方で産業界からは、脱炭素化の実現にはクリーン電力の安定供給と予見可能性が不可欠との指摘があることに言及。電力供給の不安定化は、生産拠点の海外移転を招き、国内産業基盤を揺るがしかねないとの見解を示した。多田氏は原子力政策の柱として、①既存発電所の最大限活用、②次世代革新炉へのリプレース――の2点が重要であると述べ、柏崎刈羽6号機(ABWR、135.6万kWe)や泊3号機(PWR、91.2万kWe)などの動向に言及しつつ、再稼働を進める重要性を強調。一方、次世代革新炉への建て替えも不可欠とし、革新軽水炉、小型モジュール炉(SMR)、高速炉などを挙げ、将来を見据えた開発・導入を進める考えを明らかにした。また、原子力を支える産業基盤(サプライチェーン)を維持し、人材を確保するために、経済産業省では、次世代革新炉の技術開発支援や安全性・信頼性向上に資する研究開発支援、プロセスのデジタル化支援などを進めていると説明。北米など海外プロジェクトへの参画支援を通じて、日本企業の技術力の維持・強化を図る方針だという。多田氏はバックエンド政策についても言及。六ヶ所再処理工場の2026年度中、MOX燃料工場の2027年度竣工を目標に、政府として事業者と一体となって支援する方針を示した。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分について、処分地選定は国家的課題だと強調。寿都町、神恵内村、玄海町で進む文献調査に触れつつ、全国的な理解醸成を通じて調査地域の拡大を図る方針を示した。そして、「原子力政策は発電所の建設・運転にとどまらず、原子燃料サイクルやHLWの最終処分等、バックエンドを含めた一体的な取り組みが不可欠」と述べ、講演を締めくくった。
03 Apr 2026
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高市首相は4月1日、訪日中のエマニュエル・マクロン仏大統領と迎賓館赤坂離宮で日仏首脳会談を執り行った。その後、署名式及び共同記者発表、そしてワーキング・ディナーを実施。その中では原子力協力に関する声明への言及がなされた。高市首相は同会談で、日仏両国がこれまで積み重ねてきた幅広い分野における戦略的連携を「一層深化・強化することで一致した」と述べ、両国のさらなる関係深化を歓迎した。今後、宇宙分野や重要鉱物のサプライチェーンの強靱化といった経済安全保障分野で協調を深めるという。また高市首相は、同日発表した4つの共同声明(日仏首脳共同声明・日仏原子力協力に関する共同声明・日仏AI分野の協力に関する首脳共同声明・グローバルヘルスに関する日仏共同声明)は、両国の戦略的連携を一層深化・強化する決意の現れだと強調。原子力分野について日仏両国は、高速炉の開発、原子燃料サイクルの推進などに加え、核融合に関するITER(国際熱核融合実験炉、仏カダラッシュ)やJT-60SA(核融合実験装置、茨城県)を通じた協力を強化していくという。両政府が発出した「日仏原子力協力に関する共同声明」では、原子力がエネルギー安全保障とカーボンニュートラルに貢献する重要な電源であるとの認識を再確認したほか、民生原子力協力が、日仏協力のロードマップ(2023~2027)に示されている日仏間の「特別なパートナーシップ」における主要な分野のひとつであることを強調。そして、核兵器不拡散条約(NPT)の枠組みを維持するとともに、とりわけ原子力の平和的利用に関する原則を重視する姿勢を強調した。そのなかで、以下の6つの分野における協力強化の重要性を強調した。 ①既存炉の運転期間延長②原子力新規導入国への支援及びサプライチェーン③燃料サイクル④廃炉⑤次世代炉⑥核融合既存炉については、安全かつ持続可能な長期運転に資する技術的知見の共有を進めるとともに、運転員や保守要員の訓練を含む人材育成の強化に取り組む。そして、研究機関と産業界の連携を通じ、次世代を担う専門人材の育成も重視する考えだ。また、原子力導入を検討する国々への支援については、国際原子力機関(IAEA)のマイルストーン・アプローチに則り、欧州やインド太平洋地域を含む各国に対する協力を強化する。これに合わせて、原子力サプライチェーンの強化にも取り組むという。原子燃料サイクル分野では、使用済みMOX燃料(SF-MOX)の再処理に関する実証研究を推進するほか、ウラン生産や新たな濃縮サービス、燃料製造などを含めたサプライチェーンの維持・強化を図る。廃炉分野においては、安全で責任ある廃炉の推進に向け、特に金属廃棄物の管理や処理に関する協力を進める。クリアランス金属など放射性廃棄物由来の物質のリサイクルや、再利用に関する取組みを進めるとともに、国民理解の促進に向けた知見の共有も図る。また、フランス電力(EDF)と福井県が進める嶺南Eコースト計画の枠組みを活用し、日本における廃棄物管理のあり方についても検討を進める方針だ。次世代炉分野では、高速炉の開発に寄与する燃料や炉の設計技術、安全評価に関する研究開発協力を加速させる。両首脳は、相互の協力を通じ、今世紀半ばまでに高速炉実証炉の開発を進めるという共通目標を確認した。さらに、核融合分野では、ITERやJT-60SAといった国際プロジェクトを通じた協力を継続する。JT-60SAの2026年後半の運転開始や、ITERの2034年の研究運転開始を見据え、開発を着実に進めるとともに、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)や国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)を含む幅広いアプローチ活動への貢献も再確認した。
03 Apr 2026
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は3月31日、第48回原子力小委員会に専門委員として出席し、①原子力人材育成の司令塔機能、②革新炉建て替えに関する手続きの明確化、③高レベル放射性廃棄物の処分の3点について意見を述べた。人材育成については、原子力人材育成ネットワークに司令塔機能を担わせる方向で検討が進んでいることを紹介し、自身もこれに賛同していると強調。「原子力の最大限活用に向けて、人材確保・育成は最大の課題の一つ」との認識を示した。現在は産官学に加え規制当局も参画するコアチームを組成し、制度設計の具体化に向けた議論を進めていると説明した。また、人材育成分野が政策の柱として位置付けられたことについて「極めて適切な見直し」と評価した。次世代革新炉の建て替え手続きについては、原子力規制委員会と原子力エネルギー協議会(ATENA)との意見交換が進展している点を評価する一方、原子炉設置変更許可申請以前のプロセスに不明確な点が残っていると指摘。公開ヒアリングの要否や運用の整理に加え、福島第一原子力発電所事故以前に手続きが進んでいた案件の扱いについても明確化が必要との認識を示した。また、プロセス全体の透明性向上と、過去の検討成果を合理的に活用できる制度整備を求めた。高レベル放射性廃棄物の最終処分については、国が3月に小笠原村に対し文献調査の実施を申し入れたことを「画期的」と評価。自治体の自発的応募に依存してきた従来の枠組みから一歩踏み出し、国が主体的に関与する姿勢を示した点に意義があるとした。そして今後、最終処分問題が「国民全体の課題」として全国的な議論が広がることに期待を示すとともに、原子力産業協会としても情報提供や出前講座を通じた理解促進に取り組む考えを示した。
02 Apr 2026
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原子力規制委員会の山中伸介委員長は4月1日の会合で、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限の延長を決定した。これまで特重施設は、原子力発電所の工事計画が認可されてから5年以内(猶予期間)の設置が求められてきたが、今後は設置期限を、「原子力発電所の運転開始から5年以内」に変更する。対象となるのは、現行規則で設置期限を迎えていない原子力発電所のみとなる。そのため、2026年4月16日に営業運転予定の柏崎6号機の特重設置期限は、2029年9月から2031年4月に延長される一方で、同7号機は設置期限(2025年10月13日)を過ぎており、対象外となる。特重施設は、テロ等により炉心の損傷が発生するおそれがある場合などに対し、放射性物質の放出を抑制するための施設だ。設置のための経過措置期間は、2013年の新規制基準施行時に5年と設定され、2016年の規定改正以後、起算点を新規制基準施行日から各プラントの設計及び工事計画の認可(設工認)日に変更されたが、設置までの猶予期間は引き続き5年であった。2月18日の定例会見で山中委員長は、制度の運用開始から約10年が経過したが、特重施設が完成している12基を検証した結果、実際に5年以内に完成した例がほとんどないため、経過措置そのものの考え方を議論する必要があるとの認識を示していた。この度、設置期限の延長を決断した背景について山中委員長は、「今回の見直しは単なる延長ではなく、10年間の運用実績に基づく規制の実効性の適正化である」と強調。「規制が現場の実態と乖離し、達成不可能なものとなっている場合、それは規制として十分に機能していない」との認識を示した。その上で、従来の「設置許可を起点とする仕組みから使用前確認を起点とする仕組み」へと見直すことで、安全対策の水準を維持しつつ、確実に施設を完成させる現実的な制度設計へ見直したと説明した。記者から経過措置が終了した施設を対象外とした理由を問われ、山中委員長は「特定の施設に配慮したのではなく、全体の実績を踏まえてルールを変更した。既に期限を超過した施設については、建設を優先する判断とし、速やかな設置を求める姿勢は変わらない」と述べた。
02 Apr 2026
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、3月30日に開催された「第40回原子力科学技術委員会」に委員として出席し、議題に上がった「ポストANEC(未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム)に向けた検討の方向性」や「今後の原子力科学技術に関する政策の方向性」について意見を述べた。議題1の「ポストANECに向けた検討の方向性」に関して増井理事長は、経済産業省から示された司令塔機能の創出について言及し、原子力人材育成ネットワークのこれまでの取り組みを紹介。同ネットワークは2010年11月に産官学の連携のもと発足し、現在は84機関が参加する自主的な枠組みとして運営され、増井理事長が運営委員会の委員長を務めている。また、今後の体制強化に向けては、コアチームの組成が進んでおり、4月からの本格始動を予定していると説明。原子力の最大限活用に向けては人材確保が重要課題であるとの認識を示し、司令塔機能の具体化に向けた制度設計や仕組みづくりを進めていく考えを示したほか、関係機関との連携の必要性について強調した。同委員会で、文部科学省が示した資料によると、現行のANEC事業は令和2年度から令和8年度までの7年間を対象としているが、ポストANEC事業においては、より長期的な事業実施期間(例:10年間)を視野に入れた制度設計を目指すという。また、安定的な運営に向けた間接経費(研究を実施するために必要な管理・運営費を補うため、競争的研究資金の一定割合を研究機関に配分する仕組み)の導入が検討事項として示されている。また、人材育成の基盤となる公開講義コンテンツや、大型研究施設を活用した実験・実習機会の提供についても、継続的に維持・発展させていく必要性が指摘されたほか、人材育成対象の拡大に向けて、プロジェクトマネジメント能力を有するグローバル人材の育成や、他分野の学生に対する教育機会の提供など、裾野拡大に向けた取り組みの強化について言及があった。そして、育成プログラムの選定プロセスについて、現行の公募形式でプログラムを募るのではなく、原子力学会などを通じた意見集約を踏まえ、トップクラスの専門人材の育成に必要な教育メニューをあらかじめ策定し、その実施機関を選定する方式へ転換するなど抜本的見直しが検討されていることが示された。これにより関係機関の連携・事務局機能の強化への期待が高まるという。議題2の「今後の原子力科学技術に関する政策の方向性」について増井理事長は、原子力損害賠償制度をめぐる議論に言及。次世代革新炉への投資検討が進む中で、現行制度では資金調達や投資判断の障害となりうるとし、「過去の議論にとらわれず、時間的余裕を持って事前検討を進めるべき」との考えを示した。
01 Apr 2026
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原子力事業者12社(北海道電力・東北電力・東京電力ホールディングス・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・日本原子力発電・電源開発・日本原燃)は3月30日、原子力災害時におけるオンサイトでの医療体制のさらなる強化を目的として、産業医科大学(北九州市)と「原子力災害オンサイト医療における産業保健支援対策に関する基本協定書」を締結した。緊急時の作業従事者の初期医療対応やメンタルケアなどの健康管理における支援を強化する。今回の協定締結の目的は、オンサイトでの迅速な医療支援体制の確保だけでなく、同大学を中心とした支援チームによる産業保健面(健康管理等)でのサポート体制の構築にある。同大学は、日本で唯一、産業医学に特化した「産業衛生学(大学院医学研究科)」を学ぶことができることで知られる。この産業衛生学専攻の専門領域に、「放射線衛生管理学」や「災害産業保健学」があり、同大学は、これらの領域における豊富な知見を有している。これまでも同大学では、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業に従事する作業員の低線量被ばく影響について、実データに基づく分析・研究を進め、同研究における中核的役割を担ってきた背景がある。そのため、原子力事業者12社は、同大学からの支援について、これまで協議を重ねてきた。同協定では、原子力災害が発生した際、事業者の要請に基づき産業医科大学が支援チームを現地に派遣し、迅速な初期医療対応を行うほか、メンタルケアなどの健康管理面も支援するという。原子力災害時には、過酷な作業環境下での労働衛生管理・産業保健の重要性が高まるため、緊急時の医療体制の実効性を高めるべく、双方が平時からの備えを進めることが狙いだ。
31 Mar 2026
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素粒子や宇宙線をテーマとした中高生の探究活動を支援する「加速キッチン」の進捗報告会が3月29日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。都内近郊の中高生ら約10人が参加し、自ら取り組んでいる探究活動の進捗を発表するとともに、今後の課題などについて議論した。普段は各自が自宅や学校で探究活動を行う中、研究内容を共有する場となった。加速キッチンは、早稲田大学理工学術院総合研究所の田中香津生准教授が主宰する教育プログラムで、2020年に活動を開始した。中高生に組み立て式の素粒子検出器を無償で貸与し、観測・解析やレポート作成を、研究者や大学生メンターの支援のもと進める。交流機会も設けているがオンラインを基盤としており、現在は全国や海外から約100人が参加している。進捗報告会は年2回開催し、春は対面、秋はオンラインで実施している。 報告会では、宇宙線と気象条件の関係や太陽活動との相関、放射線の遮蔽効果の測定など、生徒が自ら設定したテーマに基づく発表が行われた。探究の途中経過の共有を重視し、測定手法やデータ解釈、今後の展開についてインタビュー形式で議論が行われた。 都内から参加した女子中学生は、宇宙線の検出数の変化をもとに流星群との関連を探るため、昨年秋から自宅で観測を続けている。宇宙への関心をきっかけに参加したという。「学校の授業は方法が決められているが、ここでは自分で考えて進める必要がある。大変だが楽しい」と話す。データ解析に苦労しながらも、自ら課題を設定し、探究を進めている。 同じく参加者の電気工学を学ぶ国立高専生は、小学1年生の時に研究施設を訪れ、宇宙線が人体を通過する様子を可視化する展示を見たことをきっかけに関心を持った。目に見えないものが身近に存在し、物質を通り抜ける性質に魅力を感じたという。同プログラムに参加後は、他のメンバーと協力し、日本と英国での比較観測に取り組み、緯度や地磁気が宇宙線の到来に与える影響を検証している。「自分で組み立てた装置で宇宙線を測れるのは夢のようだ」と語り、留学も視野に入れるなど、活動を通じて関心が具体的な進路選択へとつながっている。 活動の目的について田中准教授は、「素粒子の専門家を育てることがゴールではない。6年間の取り組みの中で、放射線医療に関心を持って医学分野に進むケースや、国際分野に関心を広げる例もある。素粒子や放射線をきっかけに、自身の興味を起点として進路を選択することは、人材育成の本質に近い」と指摘する。その上で、「今後はより学際的な人材が求められる中、こうした関心を起点に人材が各分野に広がっていくことが重要だ」と話した。 同プログラムは募集期間を設けず、興味を持った時点で参加できる。参加のハードルを下げることで、探究を始めるきっかけを広げる取り組みとなっている。
31 Mar 2026
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高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分を巡り、経済産業省が東京都小笠原村の南鳥島を対象とする文献調査の実施を申し入れたことを受け、原子力発電環境整備機構(NUMO)では3月14日に同村の父島、21日に母島にて説明会を開催した。父島では237人、母島では71人が同説明会に参加。両会場とも多くの住民が出席し、関心の高さがうかがえる結果となった。両日ともに、小笠原村の渋谷正昭村長、経済産業省資源エネルギー庁とNUMOの関係者らによる調査概要の説明の後、質疑応答を通じて村民から多くの意見や質問が寄せられた。村民からは、風評被害への懸念や処分地選定方法の疑問等が寄せられ、最終処分場の受け入れに慎重な姿勢を示す意見が複数挙がった一方で、同事業の受け入れに理解を示す声もあったという。南鳥島は、国が公表している科学的特性マップにおいて、地層処分にとって「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」とされている。南鳥島で文献調査が実施された場合、北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町に続き全国で4例目となる。なお、NUMOはWebサイトを更新し、同村民説明会の開催結果および村民から寄せられたアンケートへの回答を一般公開している。父島・母島とも、処分地選定のあり方に対する疑問が寄せられた。「科学的特性マップの数ある候補地の中から、なぜ南鳥島が国の申し入れ第1号となったのか」など、同地域への負担の偏りを懸念する意見や、南鳥島周辺で検討が進むレアアース開発との関係性や、同島の安全保障上の位置づけとの関連など、地域の将来像全体に関わる問いが寄せられた。これに対し資源エネルギー庁とNUMOは、「南鳥島が地質的条件や土地利用の観点からHLWの最終処分地としての適性の可能性があることを踏まえ、渋谷村長と意見交換を重ねた。これに対し、村長から住民向け説明会の開催要請があり今回の申し入れに至った」と説明。処分地の数や規模については、「国として、ガラス固化体換算4万本以上のHLWを埋設できる施設を、まず全国で1か所整備する想定だ」と説明。現状のHLW量に対して最終処分地は1か所で対応可能としつつも、原子力発電の長期的な利用に伴う将来的なHLWの増加、今後の調査による地質条件の見通しを踏まえ、処分地の数や規模は、総合的に検討していく必要があると回答した。そして、南鳥島周辺で進むレアアース等の開発・国防上の安全保障面との両立については、「文献調査段階では現地調査を伴わないため、直ちに影響が生じるものではない」と説明。今後、調査が進む場合には、資源開発、防衛・港湾整備などの諸活動との両立可能性を段階的に評価していく考えを示した。その他、文献調査段階で交付金が支払われる仕組みに対し、「一度受け入れると後戻りしにくくなるのではないか」といった懸念や、「金額の問題ではなく、将来世代への影響をどう考えるかが重要」との指摘があった。これに対し資源エネルギー庁とNUMOは「文献調査段階の交付金は、過去の関連施設立地の実績を踏まえて設定されている」とし、「交付金を受け入れたからといって最終処分地に決定するものではない」と理解を求めた。また、交付金は国の課題に向き合う地域への謝意と社会全体への利益還元という位置づけであるとした。同説明会では、こうした多様な意見が示され、単なる賛否にとどまらず、村民の間で慎重かつ多角的に同事業について考えようとする姿勢が示された。主催者側(小笠原村・資源エネルギー庁・NUMO)は、こうした意見を真摯に受け止め、引き続き丁寧な説明と対話を重ねていくとしている。
30 Mar 2026
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青森県六ヶ所村と日本原燃、そして電気事業連合会(電事連)は3月17日、地域共創と原子燃料サイクル施設との共生に寄与することを目的に、「一般社団法人六ヶ所みらい共創プロジェクト」を共同で設立すると発表した。同新法人は、六ヶ所村内の企業の人材確保と育成、産業・経済基盤の整備、防災対策の強化、生活基盤の整備など、地域課題の解決に資する事業を担う。活動資金は六ヶ所村と日本原燃が拠出するが、当面6年間は日本原燃が総額30億円を負担するという。六ヶ所みらい共創プロジェクトは2026年4月中の設立を予定し、同月の事業開始を目指す。法人の所在地は六ヶ所村。設立時の会員は六ヶ所村、日本原燃、電事連の3者で、代表理事は日本原燃の代表者が務める。理事には3者に加え外部有識者が参画する予定となっている。3者(六ケ所村・日本原燃・電事連)はこれまで、再処理工場の竣工・操業を見据え、地域と原子燃料サイクル施設が共生する将来像の実現に向けた協議を重ねてきた。その中で、長期にわたる安全・安定操業を支えるためには、地元企業の人材確保・育成や防災機能の強化など、地域産業やまちづくりを含めた中長期的な取り組みが不可欠との認識を共有している。同法人を通じ、同地域と原子燃料サイクル事業の共生・原子燃料サイクル事業を支える産業の基盤づくりや街づくりに向けた取り組みを一体的に進める狙いだ。
27 Mar 2026
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電気事業連合会は3月13日と18日、小中学生向けのエネルギー教育コンテンツを、公式YouTubeチャンネルにて公開した。特に中学生向けのコンテンツについては、発電の仕組みを解説するだけでなく、電源構成やカーボンニュートラルといった課題について「自ら考える」構成とした点が特徴だ。動画はいずれも文部科学省選定を受けており、ワークシートや指導案もあわせて提供することで、教員が授業で活用しやすいよう設計したという。 今回公開した動画は計3本。小学校4~6年生向けの「電気ができるまで~いろいろな発電の仕組みを見てみよう~」に加え、中学生向けに「探究!どうする日本のエネルギー」「ニュースで学ぶ!気候変動と資源・エネルギー問題」を公開した。小学校4年生の社会科や6年生の理科、中学校の地理、公民、総合的な学習(探究)の授業などでの活用を想定している。中学生向け教材は第7次エネルギー基本計画を踏まえた内容で、資源に乏しい日本における安定供給と二酸化炭素削減の両立という課題を扱うとともに、エネルギーミックスのあり方を考えさせる構成とした。小学生向けは多様な発電方法の特徴を学ぶ基礎的な内容とし、現場の教員からの要望を踏まえて制作したという。担当者は「どの発電方法が良い・悪いではなく、特徴を知った上で子どもたち自身に考えてもらいたい」と説明する。火力発電についても「やめればよい」といった単純な議論に陥らないよう電気の安定供給の観点など現実的な役割を含めて示すなど、バランスの取れた理解に資する内容とした。今後は教材の認知拡大と活用促進が課題だという。エネルギー教育は独立した必修科目ではなく、授業で扱いにくい側面があるが、電事連では、同会が運営する教育支援サイト「ENE-LEARNING(エネラーニング)」において、各教科の学習単元に沿ったコンテンツを制作し、教育現場で活用しやすくなる工夫を進めている。具体的には、動画に加えパワーポイント資料やワークシート、指導案を無料で提供することで教員の負担軽減を図るとともに、タブレット端末を活用した学習との親和性も意識した。また、今後は民間の教育分野の外部ポータルサイトとの連携も視野に、発信強化を進める方針だ。 担当者は「エネルギー問題は科学だけでなく、経済や環境、資源、国際情勢など多面的な観点から捉える必要があり、探究活動のテーマとしても適している」とし、教材の活用拡大に期待を示した。
27 Mar 2026
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日本原子力文化財団(原文財団)は3月23日、2025年10月に実施した「原子力に関する世論調査」の結果を公表。原子力に対する肯定的評価は2018年度以降おおむね横ばいで推移している一方で、否定的イメージは2017年度以降、低下傾向が続いていることが分かった。また「信頼できない」との回答も減少し、福島第一原子力発電所事故前と同水準(12.0%)まで回復した。同調査は、全国の15〜79歳の男女1200人を対象に実施。2006年度から同一手法で継続している全国規模の調査で、今回で19回目。世論調査を経年的・定点的に実施し、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握し、原子力に関する知識普及活動のあり方などを検討するのが目的だ。エネルギー政策や社会動向の変化に対応するため、適宜新たな設問の追加や内容の見直しを行い、継続性と時勢の変化への対応の両立を図っている。なお、原文財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。例年通り同調査は、原子力や放射線に対するイメージ、関心、情報保有量、信頼、再稼働や利用に対する考え方など多岐にわたる項目で構成されているが、今年度はいくつかの新設項目が追加された。具体的には、「今後の原子力発電の利用に対する考え」といった将来のエネルギー選択に関する設問や、「核燃料サイクル・バックエンドに関する情報保有量」など、より専門的な領域に踏み込んだ設問がその例で、最新の世論動向を的確に把握できる設計となった。同調査によると2025年度に、最も関心が高かった原子力/エネルギー関連ニュースは「地球温暖化」で、70.3%に上った。これに「電気料金の値上げ」(56.4%)、「自然災害による停電」(53.9%)、「電力不足」(48.3%)が続いた。さらに「巨大地震・津波と原子力」(37.8%)、「ロシア情勢などとエネルギー安定供給」(33.8%)、「再生可能エネルギー拡大の影響」(33.1%)といった項目が上位に並び、「暮らしに直接的に影響する可能性」が高いテーマとなった。一方、原子力業界に関する個別テーマへの関心は相対的に低く、「女川原子力発電所の再稼働」が13.9%、「AI普及に伴う電力需要増加」が11.4%、「原子力発電所のリプレース」が10.8%、「第7次エネルギー基本計画」が4.5%にとどまった。経年で見た場合、「暮らしに影響を与える身近なニュース」に対する関心は低下傾向にあるものの、生活に密接に関わるテーマへの関心の高さと、業界個別テーマとの間に乖離がある実態が浮き彫りとなった。また、今後の原子力発電の利用に関する意識では、「使っていく」「どちらかといえば使っていく」を合わせた肯定的意見が42.0%、「やめていく」「どちらかといえばやめていく」を合わせた否定的意見が35.0%となり、肯定的意見がやや上回った。また、「わからない」は22.6%だった。属性別では、男性で肯定的意見が多く、女性では否定的意見が多い傾向が見られた。年齢別では25〜44歳で肯定的意見が比較的高い一方、24歳以下では「わからない」とする回答が目立った。また、原子力に関する情報保有量が多い層ほど肯定的意見が多く、保有量が少ない層では「わからない」とする割合が高い傾向が確認されるなど、情報量の差が意識形成に影響を与えている実態が浮き彫りとなった。また、経年変化では、再稼働に対する不安を背景とした否定的選択肢は減少傾向にあり、必要性や規制基準への適合といった観点から再稼働を評価する動きが増加しているが、「原子力発電をやめていく」とする層ほど、「災害対策」や「防災体制」、「大事故への不安」、「高レベル放射性廃棄物」、「福島第一原子力発電所の廃炉」といった項目に強い関心を示している。特に、高レベル放射性廃棄物への懸念が顕著となっていることがわかった。これらの結果から、再稼働に対する理解を得るためには、不安や否定的認識に関わる項目に対する情報提供の充実が重要であることが示唆された。原文財団では継続的な調査を通じて原子力を巡る社会認識の変化を把握し、今後の情報発信の在り方の検討に生かす考えだ。
25 Mar 2026
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日本独自のヘリカル型核融合炉の開発を目指すHelical Fusion(ヘリカルフュージョン)は3月17日、愛知県一宮市に位置する菱輝金型工業と協業し、実証段階を想定した装置「Helix HARUKA(ヘリックス・ハルカ)」向けの重要部品の一部製作を完了したと発表した。今回完成したのは、同装置で使用するコイルケースのパーツ全10点と、増殖ブランケットパーツ1点。いずれも試作品。同社は高精度な加工に成功したとしている。両社は2025年9月12日、ブランケットの加工に向けた事業連携をすでに発表しており、今回の成果はその取組みの一環となる。コイルケースは、10点すべてを接合することで、らせん状の高温超伝導マグネットの土台となる構造物だ。今後、「ヘリックス・ハルカ」の建設地である岐阜県土岐市の核融合科学研究所敷地内での組立てが計画されている。また、増殖ブランケットパーツは、他の部品と組み合わせて使用されるもので、今回の試作は今後の製作に向けた試作初期段階の部品として位置づけられる。なお、本試作は愛知県のディープテック推進事業「Aichi Deeptech Launchpad」に採択され、約4,000万円規模の支援を受けて実施された。大型構造物の一部を構成するブランケットは、誤差数ミリ以内の精度が求められるほか、ステンレスなど加工難度の高い材料を扱う必要がある。そのため、設計から加工まで一貫した高度な技術と経験が不可欠と言われている。同社によると、菱輝金型工業が培ってきた高精度な金属加工技術が今回の部品製作においても最大限活かされたという。
24 Mar 2026
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日本原子力産業協会はこのほど、愛知県知立市立 知立南中学校でエネルギーミックスをテーマとした同協会制作のボードゲーム、「エレクトロネーション」を活用した特別授業を実施した。公立中学校のエネルギー教育において、主体的な学びを引き出す新たな試みとして注目される。今回の授業は、同中学校で技術科を担当する矢田真士教諭が、「エネルギーや電力の問題を生徒にとって自分ごととして考えさせたい」との思いから、同協会に相談したことをきっかけに実現した。矢田教諭と同協会はエネルギー単元全体の授業の進め方の工夫やオリジナルのパズル教材の開発など準備に約1年を費やした。生徒は事前に教科書に基づく基礎学習とパズル教材を通じて、エネルギーに関する理解を段階的に深め、「エレクトロネーション」に臨んだ。当日は中学2年生約30人が参加し、2人1組のチームに分かれてゲームに取り組んだ。「エレクトロネーション」では、電力供給の確保と温室効果ガス(GHG)排出制約の両立を図りながら、発電設備の建設や資源調達、技術投資などを選択していく。資源価格の変動や自然環境が与える制約などの要素も組み込まれており、複雑な意思決定を体験できる設計となっている。ゲーム序盤はルール理解に戸惑う様子も見られたが、進行とともに生徒同士で活発な議論が生まれた。「再生可能エネルギーは発電が不安定だがGHG排出がない」「石炭はコスト面で有利」といった意見が交わされ、発電方式ごとの特性を踏まえた選択が行われていた。原子力についても、初期投資の大きさに慎重な姿勢を見せる一方、ゲーム終盤にGHG排出制約が強まる中で原子力の優位性を実感する場面もあり、エネルギーミックスの考え方への理解を深めていた。加えて、ゲーム内で登場する放射性廃棄物処分場の重要性も感じたようだった。授業後のアンケートでは、85%の生徒が「とても楽しかった」と回答し、「楽しかった」を含めると全員が肯定的に評価した。また、電力や エネルギーへの関心についても、約9割の生徒が「興味が高まった」と回答。「発電方法の長所と短所を考えて組み合わせることが大切だと分かった」「CO₂排出を抑える難しさを実感した」などの声が寄せられた。今回の取り組みはボードゲームを活用した体験型学習により、生徒の主体的な思考を促すエネルギー教育の一例を示すものとなった。単なる知識の習得にとどまらず、複数の選択肢の中で最適解を考える力を育む手法として、今後の展開が期待される。
24 Mar 2026
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原子力規制委員会の山中伸介委員長は、3月18日の定例会見で、原子力発電所などの敷地内に、小型無人機(ドローン)の検知機器の設置を義務付ける方針を発表した。今回の規則改正は、ドローンの技術的進歩や社会的な普及を踏まえ、核物質防護の実効性を一層高めることを目的としたもの。計22の原子力施設が対象。規制委がドローンに特化した規則の措置を明記するのは初。山中委員長は、「ドローンは誰でも入手可能で、性能が年々大きく向上している状況に対応する必要がある」と述べ、制度化に至った経緯を説明した。一方で、現時点においてドローンが原子力施設の安全に直ちに影響を及ぼす状況にはないと述べた。そして、「これまでも一定の対策は講じられており、安全上の課題が顕在化しているわけではない」との認識を示したうえで、今回の規則改正は「防護の実効性をさらに向上させるための措置と位置付けている」と述べた。ドローンをめぐっては、警察庁が飛行禁止区域を拡大するなど、規制を強化する流れが続いている。現在、小型無人機等飛行禁止法において、重要施設及びその周囲おおむね300mの周辺地域の上空におけるドローン等の飛行は禁止されており、原子力発電所もその対象だ。仮にドローン等が飛来した場合、検知設備がそれを検知し、警察など治安機関と連携し、対処する。山中委員長は「検知と対応を一体として進めていく必要がある」と説明したが、具体的な対処方法については、セキュリティ上の理由から言及を控えた。また、検知機器の選定や導入、審査手続き等に一定の時間を要することから、検知機器の設置までに2年程度の猶予期間を設ける考えを示した。山中委員長は、「実効性のある検知システムを確実に整備するために、準備期間が必要だと判断した」とコメントした。
23 Mar 2026
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環境省は3月19日、放射線の健康影響に関する情報発信事業「ぐぐるプロジェクト」の最終年度フォーラムを東京都内で開催した。2021年の発足から5年間の取り組みを総括するとともに、今後の情報発信のあり方について議論した。 「ぐぐるプロジェクト」は、放射線の健康影響に関する正しい情報の発信を目的に2021年に開始された。福島第一原子力発電所事故から15年が経過する中、最新の科学的知見の周知をはかるため、公開講座や企業・学校向けセミナー、作品コンテストなどを展開し、今年度で最終年度を迎えた。 フォーラムでは、5年間の取り組みを振り返るとともに、環境省による調査結果や有識者の分析が示された。同省は、福島第一原子力発電所事故の被災地における放射線の将来世代への健康影響について、「影響は低い、もしくは極めて低い」と認識する人の割合を80%まで高めることを目標に取り組んできたが、調査では2020年度の58.8%から2025年度は61.3%にとどまり、目標には達しなかった。一方で、「極めて低い」とする回答は12.3%から22.6%へと増加しており、一部では理解の深化もうかがえると指摘した。 大阪大学の大竹文雄特任教授は、行動経済学の観点から情報発信の手法について分析。プロジェクトでは当初、国連科学委員会など専門的知見に基づく発信を重視してきたが、調査の結果、福島に関わる人や現地で生活する人の声の方が、受け手の認識に影響を与える可能性があると指摘した。これを踏まえ、同プロジェクトでは発信のあり方を見直し、福島で暮らす若者が自らの言葉で伝える取り組みへ軸足を移してきた。2024年には福島県在住・在勤・在学の10~30代で構成される「ふくしまメッセンジャーズ」を結成し、活動を開始した。 フォーラムでは、「ふくしまメッセンジャーズ」の活動報告も行われた。メンバーは、地域でのフィールドワークや被災地住民との交流を通じて得た福島の実情を、全国でのイベントやSNSなどを通じて発信してきたという。参加した大学生からは、「学びを通じて認識が変わった」「国内にとどまらず世界にも伝える必要がある」といった声が聞かれたほか、SNS上には依然として福島に関するネガティブな情報も見受けられるが、実際には関心や理解を持つ人が各地にいると感じたとの意見もあった。 また、事故から15年が経過する中、関心の低下も課題として浮き彫りとなった。福島で医療に携わる専門家からは、震災直後は放射線に関して切実な関心が寄せられていたが、現在では「過去の出来事」として受け止められる傾向が強まっているとの認識が示された。 環境省は、5年間の取り組みは一定の成果を上げた一方で、関心の維持という課題も残るとし、同プロジェクトについて、形を変えながら来年度以降も継続するとしている。
23 Mar 2026
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IHIは3月13日、同社の横浜工場にて、米国のX-energy社(以下:Xエナジー社)と、高温ガス炉技術分野における協業の可能性を検討・推進することを目的とした非拘束の覚書(MOU)を締結した。同MOUは、翌3月14日~15日にかけて東京都内で開催されたインド太平洋エネルギー安全保障閣僚・ビジネスフォーラム(IPEM)にあわせた動き。今回のMOU締結は、Xエナジー社が開発を進める小型モジュール炉(SMR)の高温ガス炉「Xe-100」等のグローバル展開を見据え、原子炉系機器の設計、エンジニアリング、製造、サプライチェーン構築など、幅広く協業の可能性を検討する枠組みの構築が目的だ。IHIはXエナジー社との協業を通じて、先進原子力分野における技術開発とサプライチェーンの強靭化を進め、米国およびグローバル市場における先進原子力技術の商業化の推進に貢献していく考えだ。MOUの協業範囲の対象は、原子炉圧力容器や原子炉内構造物、蒸気発生器の圧力容器および内部構造物、クロスベッセルなどの主要機器。Xエナジー社はプレスリリースで、IHIは、現在の米国では商業規模での確保が難しい高度な原子力製造能力を有していると評価。同社のExecutive Vice PresidentのD. バティア氏は、「原子力の大規模展開には、単一のサプライヤーだけでは対応しきれない生産能力と専門性が求められ、これを前進させるには志を同じくする国際的なパートナーによる連携が不可欠だ」とコメント。そのうえで、「IHIとの協業機会を模索できること、そして日本の優れた製造技術と米国のイノベーションを組み合わせ、共通の目標の実現を目指せることを期待している」と意欲を示した。
18 Mar 2026
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3月14、15日に都内で開催されたインド太平洋エネルギー安全保障閣僚・ビジネスフォーラム(IPEM)の会期中、2つの原子力関連セッションが開かれ、今後の同地域での原子力の展開をめぐり日米産業界関係者による活発な議論が行われた。「インド太平洋地域のエネルギー安全保障と経済成長を支える原子力」と題する14日のパネルには、増井原産協会理事長、M.コースニック米原子力エネルギー協会(NEI)理事長、ウルバヌス米エネルギー省(DOE)次官補代理、Radiant Nuclear社のバランワルCEO、GEベルノバの田中ディレクターが登壇した。パネルの中で増井理事長は、日本の原子力には設計から運用に至る原子力バリューチェーン全体にわたる統合的な能力、約8万人の従事者に加え政府関係者や研究者を含む豊富な人的資源、100年にわたる原子力ビジネスサイクルに長期的にコミットできる能力の3つの優位性が備わっているとした上で、異なるステークホルダーが長期にわたり協力し合うことで、新規導入国に対して技術と専門知識の両面から包括的な支援を提供できる点を強調。インド太平洋地域で原子力の展開が成功するためには、地元産業をサプライチェーンに早期に取り込み、日米を始めとした同志国が支援することが重要としたほか、導入国が技術選択する際には、設計の成熟度、実際のプロジェクトの有無、サプライチェーンの準備状況の指標からなる「展開可能性」に基づき判断すべきと指摘した。コースニック氏は、世界的に原子力が特別な転換期にあるとした上で、データセンターやAI利用など、急速に増加する電力需要を満たせると述べ、インド太平洋地域の様々な市場規模に対応可能な原子力技術の拡張性について、「Nuclear for You(あなた方に適した原子力)」を提供できることが強みだと強調した。バランワル氏は、同社がTRISO燃料を使用した1,000kW出力の可搬型マイクロ炉をテネシー州の施設で年間50基製造可能だとしたほか、2029年までにインド太平洋地域に同炉を展開する見通しを示した。GEベルノバの田中氏は、原子力が単なる興味の対象から不可欠なものへと変わってきていると指摘。カナダOPG社がBWRX-300のSMRプロジェクトを進めていることで、インド太平洋地域の関心が大きく高まったと強調した。翌15日には、前日のパネルにおける議論の内容を深掘りし、出された意見をIPEM参加閣僚に報告することを目的した「ディープダイブ・セッション」が行われた。コースニックNEI理事長、増井原産協会理事長、日米のメーカー、エンジニアリング企業、燃料企業から関係者が参加した。セッションでは3つの質問が用意され、出席者がそれぞれ自社の経験をもとに回答する形で行われた。インド太平洋地域における原子力発電開発を加速させ、初期段階で成功したプロジェクトが継続するために、政府と産業界にはどのような役割がありどのように協力できるかとの質問に対しては、政府には適正な規制の実施、財政支援、人材育成、リスク軽減における役割が期待されるとの意見のほか、新規導入国への展開にあたっては、ステークホルダー間での建設リスク共有や規制のハーモナイゼーションが重要との意見も出された。続いて、原子力導入の急速な拡大を支援し地政学的リスクを軽減するため、同志国間でのサプライチェーン協力を加速させるには、どのような措置が必要かをめぐり意見が交わされた。日本には技術力のある中小企業サプライヤーが多く存在するため、将来のインド太平洋地域への小型モジュール炉(SMR)展開での日本のサプライヤーの貢献を期待しているとの発言のほか、インド太平洋地域における原子力サプライチェーンの発展を加速させるためには、段階的なアプローチが必要とした上で、初号機の納入を確実に成功させることが不可欠であり、資金調達やサプライチェーン開発など、あらゆる段階において最初からすべてを現地化するのではなく、初期段階ではリスク低減が不可欠との意見も出された。インド太平洋地域全体で原子力発電導入を成功させるために、政府、産業界、規制当局において必要となる最も重要な変化や対応は何かとの質問に対しては、各国政府が異なる種類の原子炉に関心があるとしても、標準化し同じアプローチで原子力発電所を建設することが重要との指摘がなされたほか、インド太平洋地域で高品質重視のサプライヤーパートナーを見つけられるかが地域全体の原子力展開の成功の鍵とする意見も出された。
17 Mar 2026
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原子力委員会は3月3日の第9回定例会議で、近畿大学の研究用原子炉「UTR-KINKI」を活用した教育・研究の取組みについて、同大学原子力研究所の若林源一郎副所長(教授)から説明を受けた。今回の報告は、同大学の取組みを共有し、エネルギーの安定供給やカーボンニュートラルの実現に向けた安全な原子力研究の在り方を検討するため、議題として取り上げられた。UTR-KINKIは、同大学原子力研究所が保有する実験用の原子炉であり、教育、訓練及び研究用に広く活用されている。「UTR」とは「University Teaching and Research Reactor」の頭文字を取ったもので、研究用として設計されたため、定格熱出力が1W(約0.24カロリー毎秒)という小出力の原子炉である。放射線量は非常に低く、運転中でも炉心を直接観察できるほか、周辺で見学や作業を行うことができる点が特長のひとつだ。1961年に運転を開始した日本初の教育用原子炉だが、元々は、1959年に東京・晴海で開催された東京国際見本市にて、米国原子力委員会が原子力の平和利用を紹介するデモンストレーションとして展示した教育用原子炉が原型となっている。この展示を見学した近畿大学初代総長の世耕弘一氏が、「日本の将来のエネルギー問題の解決には原子力が不可欠である」との強い信念から、大学で原子力技術者を育成する必要性を感じたことがきっかけとなり、同原子炉の導入が決まったという。現在、日本の大学が保有する研究・教育用原子炉は、近畿大学の同1基と、京都大学の研究用原子炉KURと臨界集合体実験装置KUCAの計3基のみ。さらに、2026年4月にはKURが運転停止となる予定であることから、若林氏は「今後、近畿大学の原子炉の役割がさらに重要になる」と述べた。若林氏によると、近畿大学では、他大学で原子力を専攻する学生らにもUTR-KINKIを活用する機会を提供しているほか、中高生を対象とした研修会、理科の教員向け研修、企業研修、外国人研修などで幅広く利用されており、年間の見学者は約1,000人にのぼるという。また、「特に中高生向けの研修会では、定員を大きく上回る応募があり、原子力分野に関心を持つ若者が多いことがうかがえる」と述べた。そして、UTR-KINKIは研究機関の研究者にも施設を開放しており、放射線検出器の開発研究での利用が多く、その他、医療用装置の開発や福島第一原子力発電所の廃炉研究などにも役立てているという。また、同大学では現在、UTR-KINKIにおける高濃縮ウラン燃料の撤去及び低濃縮化が進められていることにも言及。これは、2022年9月に、核不拡散・核セキュリティの更なる強化に向け、日米間が連携していくことで一致した声明に基づくもので、今後も近畿大学では、文部科学省と協議しながら、低濃縮化を進めつつ同原子炉の運転を継続する方向で進めているという。若林氏は、UTR-KINKIは日本の原子力教育にとって重要な教育インフラであり、「こうした施設を新たに整備することは容易ではない」と強調。そのうえで、「既存施設をできるだけ長く維持し、教育と研究に活用していくことが重要だ」と述べた。一方で、原子炉施設の維持は私立大学にとって大きな負担となっているほか、ANECなどの支援制度はあるものの、主に学生支援にとどまり、「施設維持や人員への直接的支援は十分ではない」とコメント。同インフラの維持は一大学だけの問題ではないと述べ、国全体の課題として、政府や産業界による支援が必要だと訴えた。
17 Mar 2026
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2026年3月7日、静岡大学の大矢恭久准教授らが企画した「STEAM教育手法を活用し、エネルギー・環境問題を基盤とした原子力人材育成」の2025年度の総合討論会が新潟薬科大学新津駅東キャンパスで開催された。同討論会は文部科学省国際原子力人材育成イニシアティブ事業の一環で、日本全国の教育系大学らが連携し、エネルギー・環境問題のリテラシーの高い教員の養成を目指すプロジェクトだ。今年度は教員(主に理科系)を目指す学生が26名参加した。学生たちは前日、柏崎刈羽原子力発電所を見学。その後、新潟市内で北海道教育大学釧路校の森健一郎教授による「STEAM教育の理論と実践」についての講義を受けた。STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、リベラルアーツ(Liberal Arts)、数学(Mathematics)の統合的なアプローチを重視するものであり、特に日本の教育現場においては、文系理系の垣根を取り払った、分野横断的な学びを強化する手法として注目されている。森教授によると、STEAM教育は元々STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育として広まった概念に、Art(芸術・リベラルアーツ)が加わることで、より社会的・文化的側面を含む枠組みとして発展したという。講義では、社会問題を考える際の姿勢として、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルの言葉「冷たい頭脳と温かい心」の考え方が紹介された。これは、科学的・論理的に分析する力と、人々の感情や価値観への共感を両立させることが重要だという考え方である。「例えば、ゴミ処理場の建設にあたって、科学的合理性だけでなく住民感情など多様な要素が絡み合うことが往々にしてある。そのため、複数の視点を往復する思考が必要だ」と森教授は述べた。さらに森教授は、主要教科という入試由来の見方にとらわれるのではなく、各教科が持つ本来の役割を理解することが教科横断的な学びにつながると指摘した。最後に森教授は、「教師の役割は完成された知識を与えることではなく、ものの見方というレンズを提供し、学習者の世界の見え方を変えることだ」と強調。冷静な論理と他者への共感を往復しながら社会課題を考える力を育てることこそ、STEAM教育の目指す方向だとまとめた。翌日のポスターセッションでは、26名の学生たちが前後半に分かれ、STEAM教育を活用したエネルギー教育の学習指導案を発表した。同紙では、原子力発電に関連する指導案を作成した学生らへのインタビューを試みた。まず、話を伺ったのが、宮崎大学教育学部の増岡直路さん。増岡さんは「原子力は怖いのか」と題した技術・家庭科の学習指導案を作成した。増岡さんは「原子力発電は、福島第一原子力発電所事故の影響などから、危険・怖いといった印象を持つ人も少なくない。しかし、自然界にはもともと放射線が存在しており、医療や温泉など、日常生活の中でも放射線は利用されている」と指摘。こうした事実を踏まえ、原子力発電をはじめとする各エネルギー技術の利点とリスクの両面について、気づきを与える授業構成を作成したという。そして、放射線の利用例としてラドン温泉などを取り上げることで、放射線と安全性の関係について考察を促し、適切な利用であれば健康に問題がない場合もあることを理解し、技術を感情的に捉えるのではなく、科学的根拠をもとに判断する力を育むことを目指す学習指導案を作成した。科学的には正しいと理解されていても、感情的には受け入れがたいと感じる人は少なくないが、理性と感情の間に生じるこのギャップに対し、どのように折り合いをつけていくのかを学べる授業となるという。感情やイメージだけに左右されるのではなく、科学的根拠に基づいて技術の安全性や社会的役割を考える姿勢が必要とされている。同じく宮崎大学教育学部の鎌田康輔さんは、「未来エネルギーを設計!データで考える原子力」と題した学習指導案を作成。各発電方法の原理を科学的に理解した上で、電力需要や予算、二酸化炭素排出量などの条件を設定し、エネルギーミックスの最適解を考えさせる授業だ。トレードオフや最適化の視点を学ぶことが可能で、将来のエネルギー計画を自分たちで設計する探究型学習になっている。鎌田さんによれば、同指導案を通じて、発電方法をめぐる議論を、感情や印象だけで判断するのではなく、データを基に合理的に考える力を養うことが狙いだという。宮城教育大学教職大学院の佐々木春花さんは、高レベル放射性廃棄物の処分問題を扱った学習指導案を作成。エネルギーミックスや原子燃料サイクル等の基礎知識から学習し、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法の調査・議論・発表を段階的に行う構成だ。佐々木さんは、大学在学中に青森県六ヶ所村を訪問し、日本原燃の職員から同事業に関する説明を受けた経験があり、それが当指導案の作成のきっかけになったという。「現地で話を聞いたことで、高レベル放射性廃棄物の処分方法が地層処分に至った経緯を深く理解することができた。その経験を活かして子どもたちが考えるきっかけにしたい」と展望を語った。島根大学教育学部の玉木愛梨さんは、「カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み 今後の日本の電源構成を考えよう」と題した学習指導案を作成。中学校の社会科(地理)の教科書に掲載された各国の電源構成や排出量のグラフを読み取り、国によって電源構成が大きく異なることに気づかせたうえで、「日本ではどのような電源構成が望ましいのか」を考える探究課題を設定した指導案になっている。各国の資源、地形、気候などの特徴を整理しながら電源構成の背景を分析する力を身に付ける狙いがあるという。その後、地形や気象条件の制約がある日本における実現可能な電源構成を言語化する段階的な思考プロセスを設計している。玉木さんは、島根県の発電事情に言及したほか、松江市に立地する島根原子力発電所があることから、同県ではエネルギーについて学習しやすい環境にあるのではないかと語った。そして、「私自身が好きだった教科のひとつである地理の視点を軸にしながら、STEAM教育の概念を取り入れて指導案を作成した」と説明。また、情報は集めるだけでなく再構築して初めて自分の考えになるという同STEAM教育の可能性を言及した。各学生とも、STEAM教育の要素・概念については、科学(Science)と技術(Technology)の区別が難しい場面があるといった意見や、A(アート)の扱いについて、感情や価値観、時には政治的な要素も関わるとし、科学や技術と比べると理解しづらい側面があるとの意見が挙がった。一方で、教育内容を構造的に整理する枠組みとして有効だと指摘する声や、理科に対して「計算が多くて難しい」「覚えることが多い」と感じる子供たちが他教科との関連を意識することで、理科への興味を高める契機になるとの声が寄せられた。多様な視点を取り入れることで、生徒の理解や関心、そして考える力を養う授業づくりにつながるのではないかとの期待が示された。今回の総合討論会では、STEAM教育の意義が改めて示され、実際に学習指導案に採り入れやすい概念だとの認識が多数を占めた。同原子力人材育成イニシアティブ事業のプログラムディレクターを務めた名古屋大学大学院工学研究科の山本章夫教授は講評で、当日のポスター発表について、「着眼点が多様で非常に興味深く、多くの気づきを得ることができた」と評価した。また静岡大学の大矢恭久准教授が主導する本プログラムには毎年参加し、「今年も大変楽しませてもらった」と述べた。また、福島第一原子力発電所の事故から約15年が経過し、エネルギー情勢や国際情勢の変化を背景に原子力に対する社会の受け止め方も変化しつつあるとの認識を示した上で、「重要なのは事実に基づいて議論できる資質を持つ学生を育てること」と強調した。一方で、科学的に正しいと考えられている事象だからといって、それを一方的に押し付ける姿勢では、社会の理解は得られにくいとも指摘。例えば、「放射線治療を避けて代替療法を選ぶ人が身近な家族に居た場合どう向き合うか」という問いを紹介し、「第三者として議論をするのと、自分の身近な問題として考える場合では状況は大きく異なる。唯一の正解があるとは限らない」と述べた。そのうえで、「自分の頭で考え、判断できる人材を育ててほしい」と参加した学生らに呼びかけた。原子力に対する立場についても「賛成でも反対でも構わないが、考え抜いたうえで自分の立場を持つことが重要だ」とし、今後、次世代の学生を育てる教育者としての役割に期待を寄せた。
16 Mar 2026
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インド太平洋エネルギー安全保障閣僚・ビジネスフォーラム(IPEM)に出席した日本原子力産業協会(原産協会)と米原子力エネルギー協会(NEI)は14日、インド太平洋地域における原子力発電の展開に向けた産業界の連携強化を目的とする協力覚書(MOU)を締結した。原産協会は1994年のNEI発足以来、長年にわたり交流・協力関係を築いてきた。2023年のG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、両団体が原子力関連サイドイベントを共催するなど実績を重ねている。近年、特に小型モジュール炉(SMR)技術を中心にインド太平洋地域で原子力発電への関心が高まっていることを背景に、今回、両組織間で正式な覚書を締結することとなった。覚書では、インド太平洋地域の協力に資する政策対話や情報交換の促進のほか、政府や国際機関などと連携し、同地域における原子力の開発・利用を支援することなどを盛り込んでいる。原産協会の増井理事長は「両者の協力は30年以上にわたり実りある関係を築いてきた。これまで正式なMOUがなくても協力関係がごく自然に発展してきたことの表れでもあるのだと思う」と述べたうえで、「今回、インド太平洋地域での協力を盛り込んだMOUの締結により、将来に向けてさらに緊密に連携していきたい」と語った。またNEIのM.コースニック理事長は「両者の正式な協力枠組みが整い、米国にとって戦略的に重要なインド太平洋地域に重点が置かれたことは、今後の活動にとって非常に有益なものになる」と述べた。
16 Mar 2026
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インド太平洋エネルギー安全保障閣僚ビジネスフォーラムが3月14、15の両日、東京都内で開催され、インド太平洋地域16か国のエネルギー担当閣僚や政府・企業関係者が参加した。日本と米国が共同で主催し、米国からはD.バーガム内務長官、L.ゼルディン環境保護庁長官、日本からは赤澤経済産業相が出席した。開会セッションでは、米通商開発庁(USTDA)のT.ハーディ副長官兼最高執行責任者(COO)が冒頭挨拶を行った。開会セッション後には覚書の署名式が行われ、企業間の協力覚書(MOU)が相次いで締結された。まず、三菱電機、米ホルテック・インターナショナル、韓国ヒュンダイE&Cの3社が、小型モジュール炉(SMR)の東南アジア展開に関する協力覚書を締結した。続いて、GEベルノバと日立製作所が、東南アジアにおけるSMR「BWRX-300」の導入に向けた市場開発や商業機会の検討で協力する覚書を締結した。両社はそれぞれの合弁会社を通じて協力し、同地域でのSMR導入の可能性を分析するとともに、日本企業を含むサプライチェーン構築を検討する。エネルギー需要の拡大が見込まれる東南アジアで、脱炭素電源としての原子力活用を後押しする狙いがある。日立製作所の稲田康徳常務執行役(原子力ビジネスユニットCEO)は「日立は長年にわたりGEベルノバとのパートナーシップを通じて培ってきた知見を生かし、原子力産業に貢献してきた。東南アジアにおけるBWRX-300の導入検討を進めることで、こうした取り組みをさらに発展させていきたい」と語った。
16 Mar 2026
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高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分を巡り、赤沢亮正経済産業大臣が東京都小笠原村の南鳥島を対象とする文献調査の実施を申し入れたことを受け、小笠原村議会では3月10日、同件に関する質疑が行われた。小笠原村の渋谷正昭村長は、今後の対応について「議員や村民の意見を踏まえ、総合的に判断したい」と述べた。南鳥島で文献調査が実施された場合、北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町に続き全国で4例目となる。同村では3月14日に父島で、15日には母島で、経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)らとともに住民向けの説明会を開催する。同議会では同日、平野悠介議員が国からの申し入れの経緯について質問。これに対し渋谷村長は、本土出張の際に国から地層処分の必要性や文献調査の内容について説明を受けていたとし、2月9日には南鳥島を対象とする文献調査の実施を小笠原村に説明したいとの要請があったことを明らかにした。その後、3月3日に経済産業省から正式な申し入れがあったという。渋谷村長は文献調査について、「将来的に候補地となり得るかどうかを確認する最初の段階の調査で、文献のみを用いて東京都(本土)で実施するものであり、いきなり小笠原村の地面を掘削するものではない」と説明した。そして、「文献調査は対話活動の一環として位置づけている」と経済産業省から説明を受けたと語った。また、今週末に住民説明会が予定されていることから、「説明会が終わるまで自身の考えを表明することは控えたい」と述べ、メリット・デメリットについての見解の表明も差し控える考えを示した。そして平野議員の「住民説明会だけで十分な説明が果たせるのか」といった質問に対し、渋谷村長は、文献調査の申し入れを受けた直後からSNSなどで様々な情報発信があり「中には誤解が含まれていると感じるものもあった」と述べた上で、村民には地層処分の仕組みや必要性、文献調査の詳細について理解したうえで意見を寄せてほしいとの考えを示した。渋谷村長によると、小笠原村では情報提供の取組みとして、ホームページへの情報掲載や住民説明会の案内の配布を実施。そして、すでにNUMO担当者が来村しており、「住民説明会の開始前でも住民の質問や意見に対応できる体制を整えている」(渋谷村長)。また、同日の村議会では、文献調査の受け入れ後に概要調査や精密調査へと段階が進む可能性や、文献調査に伴う自治体電源立地地域対策交付金への同村の依存を懸念する意見も出された。これに対し渋谷村長は、自身の判断の基本姿勢について言及。広大な海域に複数の島を抱える自治体の首長として、国の政策への貢献も考える必要があるとの認識を示した。また南鳥島については、近年レアアースの話題などで注目されることはあったものの、村民にとっては遠い存在だった側面があると指摘。今回の申し入れを契機に、南鳥島について理解を深め、村民1人ひとりが村の将来像である「心豊かに暮らし続けられる島の実現」を考える契機になってほしいと語った。一方で、平野議員は、電源立地地域対策交付金が同村の住民の福祉の充実につながる可能性に言及したほか、原子力発電の商用運転開始から60年が経過し、社会のさまざまな活動が原子力による電力に支えられてきた現実を踏まえ、「小笠原村の住民にとっても無関係とは言えない」との考えを示した。そして、HLWの処分問題は「日本国民として避けて通れない課題」であり、社会全体で向き合う必要性を指摘する。一方で、同村として文献調査については、慎重な議論と判断が必要との認識も示した。
11 Mar 2026
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は3月5日、定例記者会見を行った。増井理事長は冒頭、経済産業省資源エネルギー庁が昨年12月に募集を開始した電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WGの取りまとめ(案)に関するパブリックコメントについて、日本原子力産業協会として同案に対する意見を2026年1月28日付で提出したことを紹介した。まず同件について増井理事長は、第7次エネルギー基本計画で、原子力発電を含む脱炭素電源への投資促進に向け、政府の信用力を活用した資金調達の仕組みを検討する方針が示されたことに言及。これを受け、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が資金を貸し付けるスキームの具体化が議論されていると説明し、こうした制度設計に関し、主に次の5点を要望したという。まず1点目は融資条件について。政府の信用力を活用する制度である以上、民間金融機関のように利潤確保を前提とする必要はなく、可能な限り低金利で資金を供給する仕組みとすべきだとした。2点目は融資額の上限について「事業費の3割程度」が目安とされているが、原子力発電は投資規模が極めて大きいことから、案件ごとの事情に応じて柔軟に条件を設定できるよう求めた。3点目は、事業者に帰責性のない事象や事業者が自主的な安全性向上を進めていく際には巨額の資金が必要と考えられることから、さまざまなケースに対応できる融資の仕組みを検討すべきだと進言した。4点目は債務保証制度の導入について、米国の一部の州では政府による債務保証制度が整備されている例を挙げ、日本でも同様の制度の導入を提案した。5点目は原子力損害賠償制度について、日本では事業者が原則として無限責任を負う制度となっており、事業者の予見可能性を向上させるためにも、早急な制度の見直しを求めた。次に、増井理事長は4月14日、15日の2日間にわたり開催する第59回原産年次大会の詳細を説明し、同席した記者に参加を呼びかけた。今年の同大会のテーマは「原子力の最大限活用を支える人材戦略」で、開会セッションの基調講演では、海外機関であるOECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)と共同開催することになっており、W.D.マグウッド事務局長が登壇する予定だという。また特別講演では、日本原子力産業協会の三村明夫会長が「未来を選択する会議」の共同代表として、日本の人口減少の現状と対応策について講演するほか、原子力委員会の上坂充委員長からも、原子力人材に関する講演が行われる。同大会では、原子力人材の確保・育成をテーマに複数のセッションを実施。原子力発電所の新規建設を進める場合に必要な人材の規模や職種について、各国の調査結果などを紹介しながら、人材需給のギャップの実態を共有する予定だ。また、人口減少により人員確保が難しくなる中、限られた人員で高品質な業務を維持するための取組み、また、業務の標準化技術の活用などについて議論する。そして、「廃炉に挑む原子力人材の叡智と情熱」と題した福島セッションでは、東京電力の副社長が福島第一原子力発電所の廃炉の進捗状況や人材育成の取り組みを紹介するほか、廃炉分野に関わる若手技術者や高専・高校の教員、学生らが参加し、今後の廃炉作業への思いや展望を共有するという。会見の後半、記者との質疑応答では、高レベル放射性廃棄物の最終処分を巡る南鳥島での文献調査の動きに関する質問が寄せられた。経済産業省から小笠原村への文献調査に関する申し入れについて、増井理事長は「大変注目すべき動きであり、今後の進展に期待している」と述べた。何より、国から申し入れが行われた点について、画期的な動きだと評価した。そして、文献調査に進んだ関係自治体が増えることで、全国的な議論に期待を寄せた。増井理事長は、南鳥島は人が居住する地域から離れていることや、太平洋プレート上に位置し地盤が比較的安定している可能性を指摘する専門家の見方を紹介。「日本で処分場を検討する際、まず検討すべき場所のひとつだとする意見もある」とコメント。一方で南鳥島は東京本土から約2000km離れており、輸送やコスト面の課題についても言及。建設資材などは海上輸送に頼る必要があり、他の候補地と比べて諸々のコストは高くなる可能性があるとした。また、高レベル放射性廃棄物の輸送には相応の警備体制が必要になると指摘している。そのうえで「本土から大きく離れた地点を処分場とすることには利点と課題の双方がある」との認識を示した。
10 Mar 2026
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