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長崎大が双葉町と協定締結へ、サテライトオフィスを設置し復興支援
長崎大学は福島県双葉町と包括連携協定を12月1日に締結する。締結式は長崎大学・河野茂学長、双葉町・伊澤史朗町長らの臨席のもと、東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)で行われる予定。同学はこれまでも、川内村、富岡町、大熊町と包括連携協定を締結し、各町村内に設置したサテライトオフィスを拠点として住民に寄り添った復興支援活動を行ってきた。〈長崎大発表資料は こちら〉双葉町仮設庁舎起工式、鍬を持つのは西銘復興相(右)と内堀福島県知事(復興庁ホームページより引用)福島第一原子力発電所を立地する双葉町は、2020年3月に避難指示解除準備区域とJR常磐線双葉駅周辺の帰還困難区域の一部で避難指示が解除。来春の避難住民の帰還開始を目指し、2021年11月15日には町役場仮設庁舎の建設工事起工式が行われた。同町との連携協定締結について長崎大学が発表したところによると、「町は現在、本格復興のスタートを切るための基盤作りを進めており、その中でも放射線量の検査などによる安全・安心の担保が重要な課題」との現状。川内村、富岡町、大熊町での活動を通じて培った経験を活かし、専門的観点から町の復興と活性化に資するよう、緊密な連携・協力を図るとしている。今後、双葉町役場内にサテライトオフィスを設置し、(1)環境放射能評価や個人被ばく線量の測定を通じた外部被ばく線量の評価、(2)食品の放射性物質測定を通じた内部被ばく線量の評価、(3)健康相談や講演活動――などに取り組んでいく。避難指示区域概念図(2021年3月末時点、資源エネルギー庁発表資料より引用)現在、避難指示(帰還困難区域)が設定されているのは、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、南相馬市、飯舘村の7市町村。2020年3月以降、解除の動きはない。双葉町他の避難指示一部解除を前に都内で行われたシンポジウムの場で、伊澤町長は、他の自治体の状況から「避難指示解除が遅れるほど、帰還率が低くなっている」と懸念したことがある。福島の復興支援に主体的に取り組んできた長崎大学原爆後障害医療研究所の高村昇教授は、原子力産業新聞のインタビューで、川内村、富岡町、大熊町での活動経験を振り返り、「地域ごとに復興のフェーズが全然違う。その違いを尊重しながら支援活動を行うことが重要」と話している。
- 25 Nov 2021
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復興推進委、浜通り地域に整備する「国際教育研究拠点」で研究内容示す
政府の復興推進委員会(委員長=伊藤元重・学習院大学国際社会科学部教授)は11月18日、「創造的復興の中核拠点」として福島県浜通り地域への整備を検討している「国際教育研究拠点」について、具体的な研究内容案を示した。〈復興庁発表資料は こちら〉「国際教育研究拠点」は、新たな産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」とともに、浜通り地域の復興に向けて研究開発と人材育成の中核となる拠点を創設するもので、2020年12月に関係閣僚らからなる復興推進会議が報告書を取りまとめたのを受け、現在、年度内にも基本構想を策定すべく関係省庁や自治体などにより検討が進められている。既に県内に立地している研究施設とも一体的な運用を図りつつ、同拠点には、研究開発と人材育成の機能を持たせ、研究分野としては、(1)ロボット、(2)農林水産業、(3)エネルギー、(4)放射線科学、(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――を想定。政府全体の科学技術・イノベーション政策との整合性も図りつつ具体化していく。18日の委員会では、経済産業省、文部科学省、農林水産省がまとめた具体的研究内容のイメージを復興庁が整理。経産省は、CO2排出源のネガティブエミッション技術(炭素除去・植物固定など)の実証、ロボット・ドローン活用の高度化、空飛ぶクルマの開発、超大型X線CT装置による非破壊シミュレーションの他、IAEAと連携した廃炉研究者の育成などを提案。文科省からは、福島県立医科大学を軸とした次世代がん治療研究(RI医薬品開発)や、放射線医学人材育成などが提案された。
- 19 Nov 2021
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東京電力、福島第一ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価を発表
東京電力は11月17日、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の海洋放出に係る放射線影響評価について発表した。〈東京電力発表資料は こちら〉ALPS処理水の処分に関する政府基本方針の決定(2021年4月)を受け、同社は風評影響を最大限抑制するための対応を徹底すべく具体化を進めてきた設備の設計や運用など、検討状況について8月に公表。今回の評価で、放出を行った場合の人および環境への影響について、国際的に認知されたIAEA安全基準文書、ICRP勧告に従う評価手法を定め、評価を実施したところ、「線量限度や線量目標値、国際機関が提唱する生物種ごとに定められた値を大幅に下回り、人および環境への影響は極めて軽微である」ことを確認したとしている。評価は、実際のALPS処理水に基づくものに加え、「非常に保守的な評価」として、トリチウムの他、被ばくの影響が相対的に大きい核種だけが含まれるとした「仮想ALPS処理水」の2つのモデルを用い、環境中の拡散・移行については、米国で開発された領域海洋モデル「ROMS」(Regional Ocean Modeling System)を福島沖に適用し、発電所周辺南北約22.5km×東西約8.4kmの海域を最密約200mメッシュの高解像でシミュレーション。人の外部被ばくについては、「年間120日漁業に従事し、そのうち80日は漁網の近くで作業を行う」、「海岸に年間500時間滞在し96時間遊泳を行う」とし、内部被ばくについては、厚生労働省の国民健康・栄養調査報告を参照し、魚介類を平均的に摂取する人と多く摂取する人(平均+標準偏差×2)の2種類で評価。生物に関する評価として、ヒラメ、カレイ、ヒラツメガニ、ガザミ、ホンダワラ、アラメの各魚介・海藻類を選定。海洋における拡散シミュレーション結果で、現状の周辺海域の海水に含まれるトリチウム濃度(0.1~1ベクレル/ℓ)よりも濃度が高くなると評価された範囲は、発電所周辺の2~3kmの範囲に留まった。放出を行う海底トンネル(全長約1km)出口直上付近では拡散前、30ベクレル/ℓとなる箇所もあったが、その周辺で速やかに濃度が低下。30ベクレル/ℓは、 ICRP勧告に沿って定められた国内の規制基準(6万ベクレル/ℓ)やWHO飲料水ガイドライン(1万ベクレル/ℓ)を大幅に下回るレベルだ。人の被ばくについては、「仮想ALPS処理水」による非常に保守的な評価でも、一般の線量限度(年間1mSv)の約2,000分の1~約500分の1、自然放射線による被ばく(年間2.1 mSv)の約4,000分の1~約1,000分の1、魚介類についても、ICRPが提唱する誘導考慮参考レベル(生物種ごとに定められ、これを超える場合は影響を考慮する必要がある線量率レベル)の約130分の1~約120の1程度となっていた。福島第一を視察するIAEA関係者(測定・確認用設備となるK4タンク群、東京電力発表資料より引用)東京電力では今後、評価結果を取りまとめた報告書について、IAEAの専門家によるレビューや各方面からの意見などを通じ見直していくとしている。なお、12月にIAEAによるALPS処理水の海洋放出に係る安全性評価、国際専門家の観点による助言を目的としたレビューが予定されており、11月16日にはその準備に向けて評価派遣団による現地視察が行われた。
- 18 Nov 2021
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萩生田経産相、福島第一原子力発電所事故発生後10年のIAEA国際会議でメッセージ
IAEA国際会議にメッセージを送る萩生田経産相(経産省発表資料より引用)萩生田光一経済産業相は11月10日、IAEAが福島第一原子力発電所事故発生から10年を機に開催した国際会議の中で、ビデオメッセージを通じ挨拶を述べた。〈経産省発表資料は こちら〉同国際会議は、11月8~12日にウィーンにてハイブリッド形式で開催され、事故発生後10年の間に各国・国際機関がとった行動に基づく教訓・経験を振り返り、今後の原子力安全のさらなる強化に向けた道筋を確認することを目的とし、日本の他、各国から規制当局を含む政府関係者、電気事業者らが参加。萩生田経産相は、「事故の教訓や経験を世界の原子力安全の専門家と共有し、今後の原子力安全の強化に活かしていくことはわが国の責務」との認識を改めて示した上で、福島第一原子力発電所のALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の処分に当たっては、日本政府が4月に発表した基本方針を踏まえ、高い透明性をもって対応するとともに、IAEAによる安全性に係るレビューを受け、その結果を幅広く発信していくとした。IAEA・グロッシー事務局長(IAEAホームページより引用)今回の国際会議は、折しも英国グラスゴーで開催されたCOP26の会期と重複したが、IAEAのR.M.グロッシー事務局長は、閉会に際し、「皆にとって安全な原子力発電は気候変動の解決策の一部となる」と強調した。IAEAによるALPS処理水の安全性レビューに関しては、9月にリディ・エヴラール事務次長らが来日し今後のスケジュールやレビュー項目について検討が始まったのに続き、現在、11月15~19日の日程で、12月の評価派遣団来日に向けて日本側関係者との準備会合、現地視察が行われているところだ。
- 16 Nov 2021
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ブルーイノベーション、原子力発電所用球体ドローンの販売開始
原子力用ドローン「ELIOS 2 RAD」(ブルーイノベーション発表資料より引用)インフラ設備点検、災害対策、物流などのソリューション事業を展開するベンチャー企業のブルーイノベーションは10月26日、原子力発電所用に放射線の検知・計測や漏えい位置の特定ができる屋内点検用球体ドローン「ELIOS 2 RAD」(エリオス・ツー・ラド)の販売を開始したと発表した。〈ブルーイノベーション発表資料は こちら〉放射線センサーを搭載したこの「ELIOS 2 RAD」は、下水管やトンネルなど、作業員が立ち入ることが困難な場所の点検で実績のある球体ドローン「ELIOS 2」をベースに、原子力発電所の施設内点検に特化して新たに開発されたもの。放射線の検知・計測の他、飛行経路を3D点群マップで可視化し放射線の漏えい個所を特定するとともに、動画撮影により現場の状態をリアルタイムで把握することができる。「ELIOS 2」シリーズは、カーボン製の保護フレームが球状に本体を囲んでおり、回転翼による施設内の損傷を防ぎ、狭あい箇所での使用時にも人の安全を守る構造。原子力発電所への「ELIOS 2 RAD」導入の利点として、同社では、通常点検時における作業員の被ばく低減の他、事故発生時にはがれきが散乱したエリアで自走式ロボットに替わり狭あい空間を自在に飛行できることをあげ、放射線の漏えい位置と線量を正確に把握し、速やかな補修計画の策定・実行が可能となるとしている。「ELIOS 2」シリーズは、スイスのフライアビリティ社が開発したドローンシステムで、ブルーイノベーションは日本においてその独占販売契約を締結しており、工場、発電所、下水道などを中心に150か所以上の屋内施設での導入実績を有している。ブルーイノベーション社長の熊田貴之氏は、「ELIOS 2 RAD」の販売開始に際し、福島第一原子力発電所事故発生時のがれきが散乱した中での懸命な収拾作業を振り返った上で、同社のソリューション事業を通じ「原子力発電所に携わる方々の安全が確保され、緊急時に即応した点検フローの確立に貢献したい」と述べている。
- 28 Oct 2021
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福島大がシンポ、原子力災害発生後10年の環境修復から復興について議論
福島大学は10月11、12日、国際シンポジウム「原発事故から10年後の福島の“森・川・海”と“食” ~復興に向けて残された課題~」を福島市内で開催(オンライン併用)。国内外専門家による口頭・ポスター発表に続き、12日には市民向けのセッションが行われ、学長の三浦浩喜氏は、開会挨拶の中で、2013年に設置された同学環境放射能研究所の「地域とともに歩む」強み・責務を改めて強調し、「福島の復興に向けた科学的知見や思いを皆様と共有したい」と先鞭を付けた。森林の放射能汚染に関して、国立環境研究所福島地域協働研究拠点グループ長の林誠二氏は、宅地や農地と異なる環境修復の実態を説き、再生に向けたポイントとして、(1)森林生態系モデルの開発と活用、(2)地元が主導する地域資源としての活用、(3)将来の災害に対する備えとしての森林管理――をあげ、アカデミアによる積極的な参画の必要性を強調。河川における放射性物質の動態については、福島大環境放射能研究所特任助教の五十嵐康記氏が、阿武隈川での調査から、近年の水害や農作業による季節影響、中流部と上流部の濃度形成の違いなどを例示した。また、福島大環境放射能研究所准教授の和田敏裕氏は、「海と川の魚は語る」と題し、水産物の放射能汚染の推移・分析結果から漁業復興に向けた課題を示唆。海産魚種の放射性セシウム濃度については、事故後の指数関数的な減少傾向を図示し、その要因として、(1)物理的な減衰、(2)浸透圧調節に伴うセシウムの能動的な排出、(3)底生生態系(エサ)におけるセシウム濃度の低下、(4)成長に伴うセシウム濃度の希釈、(5)魚類の世代交代、(6)魚類の季節的な移動――をあげた。一方で、淡水魚については、一部の水系で出荷制限が続いており、「事故による影響は内水面(河川・湖沼域)では長引いている」と指摘。同氏は、内水面魚種の放射性セシウム濃度が「特に2017年以降で低下が鈍っている」要因の解明に向け実施した赤宇木川(浪江町)のイワナ、ヤマメの分析結果から、エサとなる陸生昆虫からの放射性物質の取り込みが継続していることを示し、「除染の困難な森林生態系とのつながりが主要因」と述べた。環境放射能に関する発表を受け、福島第一原子力発電所事故の発生直後から被災地支援に取り組んでいる長崎大学原爆後障害医療研究所教授の高村昇氏は、福島県の県民健康調査結果などから、「放射線に対する不安を持つ人は発災当初から減ってはきたものの、まだ一定数残っている」と、メンタルケアの課題を指摘。東日本大震災・原子力災害伝承館館長の立場から若者への啓発に努める同氏は、放射線に関する知識の普及とともに、「段々と事故を知らない世代も増えてくる」と、事故の記憶・教訓を次世代に伝えていくことの重要性を強調。さらに、浜通り地域8町村の今後の帰還者予測を示し、「事故後10年が経ち、自治体レベルで見て復興のフェーズが大きく異なっている。それぞれの地域に合った復興支援が求められており、住民と専門家が一体となった取組が必要となる」と訴えかけた。総合討論では、市民・オンライン参加者も交え、福島第一原子力発電所のALPS(多核種除去設備)処理水取扱いに伴うトリチウムの影響、山菜類の安全性、福島産食品の流通回復に関する質疑応答が交わされたほか、今回シンポジウムのテーマに関連し「永遠に『復興』を言い続けるのか。復興のイメージとはどういうものか」という問いかけもあった。これに対し、「今回シンポの登壇者では一番若手。バブル景気を知らない」という五十嵐氏は、「今、日本全体をみても人口が毎年30万人ずつ減っており、これは福島市の人口に相当する。復興は、『元へ戻す』というより、『新しい概念を創っていく』ことではないか」と、今後もさらに議論を深めていく必要性を示唆した。
- 22 Oct 2021
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上坂原子力委員長がIAEA総会出張報告、グロッシー事務局長らと会談
上坂原子力委員長(左)とグロッシーIAEA事務局長(外務省ホームページより引用)原子力委員会の上坂充委員長は10月12日の定例会で、第65回IAEA総会(9月20~24日)出席に伴うウィーン出張報告を行った。今回のIAEA総会では、日本政府代表としての出席。一般討論演説は、井上信治・内閣府科学技術政策担当大臣(当時)のビデオ録画映写となった。〈原子力委員会発表資料は こちら〉上坂委員長は会期中、政府代表として、IAEAのR.M.グロッシー事務局長、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のフランソワ・ジャック長官、米国国家核安全保障庁(NNSA)のジル・フルービー長官とそれぞれ会談。グロッシー事務局長とは、IAEAとの関係強化に向けた具体的方策、福島第一原子力発電所の廃炉やALPS処理水(トリチウム以外の放射性物質が規制基準値を下回るまで多核種除去設備等で浄化処理した水)の取扱いに係る協力について意見交換。フランス、米国の各長官とは、それぞれ高速炉開発、核不拡散・核セキュリティ分野での協力関係をさらに拡大していくことで一致。また、原子力委員長として、IAEAの幹部9名、OECD/NEAのW.マグウッド事務局長ら、計11名との個別会談を行った。その中で、ALPS処理水の安全性レビューで9月初旬に来日したリディ・エヴラールIAEA事務次長(原子力安全・核セキュリティ局担務)とは、対外的な情報発信のあり方について意見交換。ミハイル・チュダコフIAEA事務次長(原子力エネルギー局担務)との会談では、「JAPAN-IAEA エネルギーマネジメントスクール」(今年は9月27日~10月15日にオンライン開催)について説明し、若い世代への原子力分野に関する教育・啓発の重要性などを確認した。この他、内閣府主催の医療用ラジオアイソトープに関するサイドイベントに登壇。アルファ線放出核種薬剤の製造・供給に係る国際機関・各国の取組や放射線治療の途上国展開に関して議論がなされた。定例会で上坂委員長は、今回の出張を振り返り「タイトなスケジュールだった」と所感を述べた上で、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関しては、「日本が責任を持って実施し、IAEAと国際専門家グループにチェックしてもらう。このプロセスが国際社会における受容性を確保する上で非常に重要だと改めて認識した」と強調。また、小型モジュール炉(SMR)を始めとする革新炉の国際連携に関し、IAEA、フランス、米国との会談を通じ「ものづくりの観点から日本との技術協力への期待を実感した」とした。
- 14 Oct 2021
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東京電力、「発見!ふくしま」キャンペーンを明日より実施
東京電力は10月2日より、首都圏を対象に福島県産品の美味しさや魅力を伝える「発見!ふくしま」キャンペーンを実施する。〈東京電力発表資料は こちら〉「ふくしま!海と大地の収穫祭」と銘打ち、前回に続いて新型コロナまん延による影響にも配慮し、12月17日までの期間、首都圏や福島県内の小売店における県産品の販売促進イベント、飲食店とコラボしたグルメフェアなどを展開。収穫時期を迎える農産物の他、水産物の販売促進にも積極的に取り組み、事故の当事者として風評被害の最大限抑制、払拭に努める。東京電力では4月に、福島第一原子力発電所の処理水取扱いに係る政府の基本方針決定を踏まえた対応の中で、風評被害対策として、福島県産魚介類「常磐もの」の販路開拓を強化・拡充していくとしている。今回のキャンペーンでは、「常磐もの」料理20,000食を提供し美味しさ・魅力を伝える「お魚フェスティバル」を、11月19~21日に東京・日比谷公園で開催する予定(新型コロナ感染拡大の状況により開催方法に変更が生じる場合あり)。この他、キャンペーン期間中を通じ、飲食店や百貨店・スーパーと連携し、福島県産食材を使用したメニューを提供するキッチンカーの出店(首都圏各地)、福島県産米、福島牛、「常磐もの」の販売促進を行うほか、11月からはオンラインストア「ふくしま市場」の割引キャンペーン、首都圏の飲食店と連携したグルメフェアなども予定されている。
- 01 Oct 2021
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環境省、除去土壌の再生利用に係る理解に向け第2回「対話フォーラム」開催
政井マヤさん(檀上左端)司会による「対話フォーラム」の模様、画面には学生参加の京都府立大院・浅野育美さん(右)と新潟大・遠藤瞭さん(フォーラム事務局提供)東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から丁度10年半となる9月11日、今後の福島の復興・再生に向けた取組について考える環境省主催の「対話フォーラム」がオンラインで開催された。除染に伴い発生する土壌の減容・再生利用の必要性・安全性に関し全国レベルでの理解醸成を目指すもので、5月の開催に続き2回目となる。フリーアナウンサーの政井マヤさん(司会)、小泉進次郎環境相、タレントの岡田結実さん、長崎大学原爆後障害医療研究所の高村昇教授、東京大学大学院情報学環総合防災研究センターの関谷直也准教授が登壇。フォーラムにはおよそ400名のオンライン参加者が集まり、寄せられた意見・質問をもとに意見交換を行った。除去土壌再生実証事業により造成された飯舘村の農地ではホウレンソウも栽培(環境省発表動画より引用)福島県内で除染に伴い発生する放射性物質を含む土壌や廃棄物は、中間貯蔵施設で安全に集中的に管理・保管し、貯蔵開始後、30年以内(2045年3月まで)に県外で最終処分を完了することが法律で定められており、最終処分量を低減するため、除去土壌の減容・再生利用に係る技術開発が進められている。例えば、飯舘村の長泥地区では、再生資材を利用して農用地を造成する実証事業が2018年度より行われており、2020年度には食用作物も栽培された。県内には仮置きされている除去土壌が今なお残っており、環境省では2021年度末までの中間貯蔵施設への概ね搬入完了を目指している(帰還困難区域のものを除く)。中間貯蔵施設を立地する大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊澤史朗町長は、フォーラムにビデオメッセージを寄せ、それぞれ震災前の町の活況ぶりを振り返りながら、施設の受入れは非常に苦渋の判断だったことを訴えかけた。小泉環境相、大熊町産のイチゴジャムを手に(フォーラム事務局提供)除去土壌の再生利用について、小泉環境相は、大臣室の鉢植えなどを例にあげ、まず国が率先して取り組む必要性を繰り返し強調。県外での再生利用実証に強い意欲を示し、「『福島県だけの問題』と考えられていることを変えねばならない」と、若い世代を含め多くの人たちの理解が進むよう今後もフォーラムを継続的に開催する考えを述べた。高村氏、除去土壌の安全性について説明(オンライン中継)参加者からの「再生土が利用された場所は安全なのか?」との質問に対し、環境省の「除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」の委員を務める高村教授は、(1)施工中の追加被ばく線量が1mSv/年を超えないよう放射能濃度を設定、(2)再生利用可能濃度は8,000ベクレル/kgを原則とし用途ごとに設定、(3)覆土による遮蔽や飛散・流出の防止――といった適切な管理により作業者・利用者の健康が守られていることを説明。また、X線検査や航空機旅行などに伴う身の回りの放射線被ばく線量の比較を図示し、「放射線は音も臭いもないが測ることができる。得られたデータをいかにわかりやすく比較するか」と、放射線を身近なものとしてとらえてもらう必要性を述べた。岡田さん、登壇後に再生土栽培の花束をもらったとツイート(フォーラム事務局提供)今回のフォーラムは当初、関西在住の学生たちも集め大阪開催を予定していたが、感染症対策のためオンライン開催となり、岡田さんは大阪府出身の若手タレントとして登壇。除去土壌の問題について岡田さんは、開会時の挨拶で、「同じ日本で起きていることなのに、まったく他人事のように思っていた」と話していたが、各登壇者の話を終始熱心に聞き、「知ろうとすることは誰かを大切に想うことだと実感した」と、感想を述べた。関谷氏、除染に関する認知度を示し「理解した上で議論することが大前提」と(オンライン中継)参加者からは、除去土壌関連の他、放射性廃棄物処分問題、クリアランス制度との相違、福島第一原子力発電所の処理水による風評被害、原子力教育の実情など、幅広く疑問が寄せられ、「正しい情報をどのように得ればよいのか?」との問いに対し、原子力災害における心理的・社会的影響について研究する関谷准教授は、「事実を正確に知ってもらう、きちんとした判断ができるリテラシーを養うことが極めて重要」と強調した。
- 24 Sep 2021
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第65回IAEA総会開幕、井上科学技術大臣が一般討論演説
IAEAの第65回通常総会が9月20~24日の日程で、ウィーンにおいて開催されている。ビデオ録画で演説する井上科学技術相開幕初日の20日、前回に引き続き日本からは井上信治・内閣府科学技術政策担当大臣がビデオ録画により一般討論演説を行った。冒頭、井上大臣は、新型コロナウイルス感染症への対応という挑戦も続く中、専門性を活かした取組を促進しているIAEAのR.M.グロッシー事務局長のリーダーシップに敬意を表した上で、IAEAが行う感染症対策事業に対する日本の支援にも言及。東日本大震災による事故発生から10年の節目を経過した福島第一原子力発電所の廃炉に関し、今後、ALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の安全性や規制面、海面モニタリングについてIAEAによるレビューが行われることに触れた上で、日本として、国際社会に対し科学的根拠に基づき透明性を持って同発電所の状況を継続的に説明し、各レビューの実施に向けてIAEAと協力していくと強調した。展示会・日本ブースを訪れた上坂原子力委員長(左から2人目)また、IAEA総会との併催で展示会も行われている。前回は新型コロナウイルスの影響で中止されたため、2年ぶりの開催となった。日本ブースでは、「2050年カーボンニュートラル」を見据えた原子力イノベーションと、福島復興における10年間の歩みを主なテーマに、「NEXIP(Nuclear Energy × Innovation Promotion)イニシアチブ」に基づく官民の取組や、ALPS処理水に関するQ&Aなどをパネルで紹介。展示会初日には、IAEA総会出席のためウィーンを訪問中の上坂充原子力委員長、更田豊志原子力規制委員長、OECD/NEAのW.マグウッド事務局長ら、国内外関係者がブースを訪れた。今回、日本政府代表として総会に出席した上坂委員長は20日、内閣府主催のサイドイベント「アルファ線薬剤の開発とアイソトープの供給」に登壇したほか、グロッシー事務局長、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のフランソワ・ジャック長官と会談を行った。その中で、グロッシー事務局長は、「日本とIAEAとの間には取り組むべき多くの重要な問題やプロジェクトがある。ともに未来志向で協力していきたい」と強調。上坂委員長からは、IAEAによる福島第一原子力発電所の廃炉に向けた協力に対する謝意の他、北朝鮮・イランの核不拡散問題に関する取組への支持などが示された。
- 21 Sep 2021
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電工会「電機工業技術功労者表彰」、東芝ESSが福島第一3号機燃料取り出しで最優秀賞
福島第一3号機燃料取り出しのイメージ(東京電力発表資料より引用)日本電機工業会は9月13日、2021年度の「電機工業技術功労者表彰」の受賞者を発表した。〈電工会発表資料は こちら〉重電、家電、ものづくりの各部門において、新製品・新技術開発などの優れた成果を通じ電機工業の進歩・発達に貢献した技術者らを表彰するもので、今回は、重電部門で、「福島第一原子力発電所3号機使用済燃料取り出し環境整備方法の確立」で廃炉の進捗に貢献した東芝エネルギーシステムズの3名が最優秀賞を受賞。受賞者は、林弘忠氏(原子力化学システム設計部)、髙倉恵太氏(同)、伊藤悠貴氏(原子力機械システム設計部)。福島第一原子力発電所で、4号機に続いて行われた3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しは、燃料取り出し用カバー、燃料取扱設備を設置した後、2019年4月に開始され、2021年3月末に全566体(新燃料52体を含む)の取り出しを完了した。受賞者の一人、東芝ESS・伊藤氏(2018年、福島第一の燃料取扱遠隔操作室にて)電工会発表の功績概要によると、3号機の燃料取り出しに際し、(1)原子炉建屋が水素爆発により大きく損傷、(2)高いリスク源を除くべく速やかな取り出しが必要、(3)取り出しには新たな燃料取扱設備を有人作業で設置する必要、(4)作業を行う空間の線量率は非常に高く人のアクセスが困難な環境――という厳しい背景のもと、「作業前の2012年時点で最大756mSv/hだった線量を、1mSv/h程度にまで低減し環境整備を完遂した」と評価。遠隔による線量低減作業を計画し実行した東芝エネルギーシステムズの受賞者らは、「建屋の損傷度合がエリアごとに大きく異なっており、各エリアの材質や汚染形態に合わせて除染装置を開発する必要があった」などと述べている。
- 17 Sep 2021
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福島第一処理水の安全性レビューに向け、IAEAエヴラール事務次長らが来日
IAEAと経産省の幹部が会談(経産省提供)福島第一原子力発電所に保管されたALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の安全性に関するレビューの本格実施に向け、IAEAのリディ・エヴラール事務次長ら、原子力安全・核セキュリティ局の幹部が9月6~9日に来日し、経済産業省他、関係省庁と、今後のスケジュールやレビュー項目について議論した。〈経産省発表資料は こちら〉政府は4月に「2年程度後にALPS処理水の海洋放出を開始する」とする基本方針を決定しており、今回の議論を踏まえ、(1)放出される水の性状、(2)放出プロセスの安全性、(3)人と環境の保護に関する放射線影響――について、IAEAの安全基準に照らした評価が行われる。IAEAよるレビューは数年間にわたる見込みだが、まずは12月を目途に評価派遣団が来日することで日本側と合意した。会見を行うエヴラール事務次長(オンライン)エヴラール事務次長は9日、フォーリン・プレスセンターにてオンラインを通じ記者会見に臨み、中国、フランス、ドイツ、インドネシア、ロシア、シンガポール、韓国、英国、米国の海外メディアを含む計78名の記者に対し、来日の成果について説明。同氏は来日中、江島潔経済産業副大臣、鷲尾英一郎外務副大臣他、環境省や原子力規制委員会の幹部との会談とともに、福島第一原子力発電所の視察を行い、「コロナ禍にもかかわらず対面での討議を通じ内容の濃い議論ができ、非常に貴重な経験となった」とした。今後、IAEAでは専門家で構成されるタスクフォースを立上げ、数週間以内にも東京電力による海洋放出実施計画に関し、規制、安全性、環境モニタリングの面からのレビューに着手し、最初の評価報告書を放出開始前までには公表するとしている。福島第一のタンクエリアを視察するエヴラール事務次長(東京電力ホームページより引用)ALPS処理水の取扱いに係る(1)大量の水がタンクに保管されている、(2)長期間をかけて海洋に放出していく、(3)地域の関心が高い――という特殊性を備えたIAEAとしても前例のないレビュー実施に向けて、エヴラール事務次長は、「包括的に客観性・透明性を持つことにコミットし、国際的にも明瞭に情報発信を行っていきたい」と強調した。今回のIAEA幹部の来日は、8月19日に行われた梶山弘志経産相とR.M.グロッシーIAEA事務局長との会談で合意に至ったもの。同合意のもと、福島第一原子力発電所廃炉全般に関するレビューミッションが8月末に来日したところだ。梶山大臣は、9月10日の閣議後記者会見で、「IAEAによる評価を丁寧に発信し国際社会の理解を得ていきたい」と述べた。
- 10 Sep 2021
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政府、2020年代の住民帰還に向け避難指示解除の考え方示す
政府の復興推進会議と原子力災害対策本部会議の合同会合が8月31日に開かれ、避難指示解除に関する新たな考え方を決定した。〈配布資料は こちら〉福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示は、帰還困難区域を除き2020年3月までに、双葉町に設定されていた避難指示解除準備区域を最後にすべて解除されているが、双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、南相馬市に残る帰還困難区域については、5年前の2016年8月31日、両会議は線量の低下状況を踏まえ避難指示を解除し居住可能となることを目指す「特定復興再生拠点区域」を設定する方針を示し、現在、6町村の同拠点区域で除染やインフラ整備などが進められているところだ。福島県浜通り12市町村の状況(復興庁発表資料より引用)このほど示された新たな考え方は、「拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除の方針を早急に示して欲しい」との地元からの要望を踏まえ、帰還意向のある住民が2020年代に帰還できるよう避難指示解除の取組を進めていくため、帰還意向確認(すぐに判断できない住民にも配慮し複数回実施)、除染開始時期・範囲、予算・財源確保などに係る基本方針について定めたもの。今回の方針決定に関連し、福島県の内堀雅雄知事は、同日まとめられた政府の2022年度概算要求に対し発表したコメントの中で、「特定復興再生拠点区域」外に係る調査事業が新たに盛り込まれた(事項要求)ことなどに言及し、「各省庁が本県の復興・創生を真摯に検討した結果と認識」としている。
- 01 Sep 2021
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福島第一廃炉に関するIAEAレビューミッションが評価レポート、2018年以来の来日
IAEA・グゼリ氏(右)より評価レポートを受取る江島経産副大臣(経産省ホームページより引用)福島第一原子力発電所の廃炉に関するIAEAのレビューが8月27日に終了し、26の評価事項と23の助言を示した評価レポートが、来日中の同レビューミッションで団長を務めたIAEA核燃料サイクルの廃棄物技術部長・クリストフ・グゼリ氏より江島潔経済産業副大臣に手渡された。〈経産省発表資料は こちら〉IAEAによるレビューミッション来日は、2018年11月以来5回目となるが、今回は感染症対策のため、チーム全員の来日ではなく、6月末から8月初めにかけて週2回のオンラインを通じた討議を経た後、福島第一原子力発電所の現地視察についてはグゼリ氏を含む2名が23、24日に行う形となった。福島第一を訪れALPS処理水を手にするグゼリ氏(東京電力ホームページより引用)処理水の安全性に関しては、別途9月にIAEAの担当幹部が来日し専門的評価が行われる予定だが、27日にフォーリン・プレスセンターにてオンラインを通じ記者説明を行ったグゼリ氏は、4月の日本政府による処理水処分に関する基本方針決定について、廃炉計画全体の実行を促進するものとして「評価すべき点」と述べた。2018年の前回レビューミッションからの主な進展としては、3号機使用済燃料プールの燃料取り出し完了(2021年2月)、汚染水発生量が約170㎥/日(2018年度)から約140㎥/日(2020年度)に低減したことなどがあげられるが、グゼリ氏は、「東京電力の福島第一廃炉推進カンパニーは詳細な計画を示しており、安全に対する強いリーダーシップも発揮されている」と、組織・プロジェクトマネジメント力を評価。2020年4月に完了した1/2号機排気筒の解体作業にもみられた地元産業の活用についても、「地元の雇用創出や経済活性化につながるもの」などと、肯定的な見方を示した。また、2022年に2号機より着手予定の燃料デブリ取り出しについては、「包括的に性状把握を行っていく必要がある」と、7月に英国より日本に到着したロボットアームによるサンプリング調査の意義を強調したほか、廃棄物の管理や最終的な処分までを見据えた研究開発の必要性も指摘した。
- 27 Aug 2021
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政府、福島第一処理水に関わる風評影響で水産物の一時買取り含む「当面の対策」まとめる
福島第一原子力発電所の処理水の取扱いに関する関係閣僚会議が8月24日に開かれ、(1)風評を生じさせないための仕組み、(2)風評に打ち勝ち安心して事業を継続・拡大できる仕組み――の構築に向けて10項目からなる「当面の対策」を取りまとめた。〈配布資料は こちら〉ALPS処理水(多核種除去設備等によりトリチウム以外の放射性物質を安全に関する基準値以下に浄化した水)の処分方法として、4月に「海洋放出を選択する」との基本方針が決定。関係閣僚会議では、年内を目途に放出後も含めた中長期的な行動計画を策定する。今回取りまとめられた「当面の対策」では、未だ残る風評影響や安全性への懸念を払拭すべく、IAEAやOECD/NEAによる監視・透明性の向上、風評影響の実態把握と適正な商取引の実現を図るとともに、「万一の需要減少に備えた機動的な対策」として、冷凍可能な水産物の一時的買取り・保管や、冷凍できない水産物の販路拡大に係る基金創設を盛り込んだ。今後、関係省庁にて具体的支援内容・予算措置を詰めていく運び。基本方針決定を受け福島県を始め各地で行われた関係者の意見を聴取するワーキンググループでは、漁業者より「安心して漁業を継続できる仕組みが必要」として、政府による水産物の買取りや次世代継承に関する意見も多く出されていた。関係閣僚会議の議長を務める加藤勝信官房長官は、会議終了後の記者会見で、「政府一丸となって必要なことはすべて実行するという姿勢で、スピード感を持ち、今回取りまとめた各施策を確実に実行していく」と述べた。復興庁は20日に行われたタスクフォース会合で、「消費者等の安心と国際社会の理解に向けて」とする情報発信施策パッケージをまとめたところだが、関係閣僚会議に出席した平沢勝栄復興相は「徹底した風評対策に取り組む」と改めて強調。「当面の対策」では、「安心が共有されるための情報の普及・浸透」として、若い世代を対象とした出前授業や教育現場での副読本活用が盛り込まれており、萩生田光一文部科学相は「文科省が制作してきた放射線副読本にALPS処理水に関する記載を追加するとともに、修学旅行の福島県誘致にも取り組んでいく」などと述べた。また、被災地における観光誘客促進・交流人口拡大に関して、赤羽一嘉国土交通相は、東北自動車道の相馬~福島間開通(4月)や常磐自動車道のいわき中央~広野間開通(6月)に触れ、「一人でも多くの方々に福島に足を運んでもらえれば」として、メディアを通じたPR効果にも期待。小泉進次郎環境相、井上信治内閣府消費者担当相は、それぞれ地元との意見交換、風評被害に関する消費者意識調査結果を踏まえ、「重要なのは信頼性」、「正確な情報発信が重要」との認識を示し、所掌の施策を具体化していく考えを述べた。「当面の対策」取りまとめについて、東京電力の小早川智明社長は、「大変重く受け止める。安全確保を大前提に風評影響を最大限抑制するため、モニタリングなどの具体的検討を進めるとともに、損害が生じた場合の賠償も早期に準備する」との考えを示した。
- 24 Aug 2021
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経産相とIAEA事務局長とが会談、福島第一レビューミッション来日で合意
8月18~20日の日程でオーストリアを訪問中の梶山弘志経済産業相は19日、R.M.グロッシーIAEA事務局長と会談し、日本側の要請に応じ福島第一原子力発電所の廃炉、および処理水の安全性に関する各レビューミッションの来日について合意した。〈経産省発表資料は こちら〉福島第一原子力発電所の廃炉全般に関しては、政府・東京電力による中長期ロードマップに基づく取組の進捗状況に対する国際レビューとして、これまで4回にわたりIAEA専門家で構成されるレビューミッションを受け入れている。直近のミッションは、2018年11月に来日しており、日本に対し、17の評価事項と21の助言を提示した。今回の会談で、5回目となるミッションが8月23日の週に来日することが決まり、梶山大臣は、グロッシー事務局長に対し、厳正で透明性のあるレビュー実施を依頼した。また、処理水の安全性に関するレビューについては、9月にIAEAの担当幹部が来日し開始することで合意。処理水の放出時における周辺環境への影響を含む安全性について、IAEAの安全基準に照らした専門的評価がなされる予定。福島第一原子力発電所の処理水に関しては、梶山大臣がグロッシー事務局長と4月にTV会談を行った際、(1)レビューミッションの派遣、(2)環境モニタリングの支援、(3)国際社会に対する透明性の確保――で協力を要請しており、7月にはIAEAの支援について日本政府・IAEA間で署名が行われている。この他、会談で、梶山大臣は、カーボンニュートラルの実現に向けた原子力の持続的な利用に関して、原子力分野の人材育成と正確な情報発信に関する新たな取組について提案。IAEAが加盟国に対し実施する原子力人材の育成事業で、事故の教訓を踏まえ福島第一原子力発電所を専門教育の場として活用することを提案するとともに、若手女性研究者の原子力科学・技術分野でのキャリア構築支援を目的として創設された「IAEAマリー・キュリー奨学金」などへの支持を表明した。「IAEAマリー・キュリー奨学金」は、2020年の国際女性デー(3月9日)に、マリー・キュリー博士の功績を顕彰して、グロッシー事務局長が立上げを表明したもので、日本も50万ユーロの支援を行っている。
- 20 Aug 2021
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東北発の優れた映像作品が公開中、震災復興や福島産品紹介も
東北発の優れた映像コンテンツを表彰するコンテストで地域振興コンテンツ部門大賞「東北経済産業局長賞」を受賞した「Changing Minamisanriku 震災から10年間の変革」((株)はなぶさ)など、2021年の優秀賞受賞計10作品が「東北映像フェスティバル」(主催=東北映像製作社協会)の特設サイトにて公開されている。「Changing Minamisanriku 震災から10年間の変革」は、東日本大震災で被災した宮城県南三陸町で大学や企業の研修を受け入れている「南三陸ラーニングセンター」が発災後10年間の変化を踏まえ次の10年を考えるというテーマで制作したもの。復興支援のアルバイトをきっかけに南三陸町に移住し竹の栽培・活用に取り組む東京出身の若者、地元に観光果樹園と直営のカフェを開くことを夢見る若手就農者と師匠、都会での会社員生活を辞しUターンして漁業を継いだ漁師らへのインタビュー映像を通じ、10年を経過し南三陸町で働く人たちに生じた価値観の変容を描いている。ワカメ、ホヤ、ホタテ、カキなどの養殖に従事してきた漁業者は、養殖棚を競うように増やしていったかつての状況が震災後、漁師仲間との議論も経て「海を守り質の高いカキを生産するため養殖棚の数を3分の1に減らす決断」により変化した経験を述懐。不安もあったが水揚げまでの期間が以前より短くなり生産コストも下がってきたとした上で、「自然の海から恩恵をもらって仕事していたことに気付いた」と語っている。フルーツピークス福島西店を紹介する「福島にイクンジャー」隊員ことJR福島駅・鈴木さん(右、東北映像フェス特設サイトより引用)この他、地域振興コンテンツ部門の優秀賞として、「福島のイイところ教え隊『福島にイクンジャー』タベルンジャー出動篇!」(JR東日本企画、デンタ・クリエイティブワークス)を紹介。東日本大震災発生から10年の節目をとらえJRグループが4~9月にかけ実施している東北観光の魅力発信・誘客の取組「東北デスティネーションキャンペーン」のPRとして制作されたシリーズ動画の一つで、JR福島駅の若手社員らが駅長が率いる観光戦隊「福島にイクンジャー」に扮し、福島市内の観光物産館やグルメスポットを案内する。番組部門では大賞「東北総合通信局長賞」を、「『日本のチカラ』なりたい自分になるって決めたんだ!」(東北映音)が受賞。事故で車いす生活を余儀なくされているYou Tuberの渋谷真子さん(山形県鶴岡市)の日常を取材したもので、「真子さんやご家族、友人の人柄や思いが表情からも十分に伝わってくる」などと評価されている。また、CM・PRキャンペーン部門の大賞では、岩手県のクラフトビール「ベアレンビール」のイメージCM「ベアレンフアンになろう」((有)哲学堂)が紹介されている。
- 17 Aug 2021
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福島県・内堀知事、東京オリンピックの所感述べる
会見を行う福島県・内堀知事(インターネット中継)福島県の内堀雅雄知事は8月11日、記者会見を行い、コロナ対策として134億円を計上した2021年度8月補正予算について説明後、東日本大震災からの復興を世界に発信する「復興五輪」を掲げ8日に17日間の日程を終了した東京オリンピックの所感を述べた。内堀知事はまず、「『光と影』が混ざり合った『復興五輪』だった」と回想。その上で、「明るい光」として、(1)3月に聖火リレーがJヴィレッジをスタートし浜通り地域を巡り大会期間中には聖火台で浪江産の水素により輝き続けた、(2)県内で野球・ソフトボールの計7試合が開催された、(3)選手村で福島県産の農産物が活用された――ことをあげ、「これらが『復興五輪』の一つの形につながっていると思う」とした。一方で、「深刻な影」として、(1)聖火リレースタート直前の開催延期決定、(2)無観客での競技開催、(3)根強く残る風評被害――を指摘。特に、今回のオリンピックが無観客開催となったことに関し、内堀知事は、「『復興五輪』の重要な部分は、世界各国からの観客・報道陣が福島の地に来て、見て、感じてもらうことだ」と強調し、「一番根幹の部分が失われてしまった」と、無念の意をあらわにした。また、福島県産の農産物・花きに対する誤解・偏見に基づく風評が一部にみられたことを振り返り、「福島第一原子力発電所事故発生から10年5か月が経過したが、今なお根強く風評被害が続いている」とし、県産品の輸入規制を講じている国々の温度差に言及しながら「愚直に粘り強く事実を訴え続け、この状況を変えていかねばならない」と強調。内堀知事は、ソフトボール金メダリストの上野由岐子選手の言葉「あきらめなければ夢はかなう」を紹介。続くパラリンピアンの活躍に期待するとともに、「福島へのエール、『復興五輪』のレガシー」と受け止め、引き続き途上にある福島の復興、今回のオリンピックでなし得なかったインバウンドの集客にも取り組んでいく考えを述べた。
- 11 Aug 2021
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2020年度版原子力白書が発表、福島第一原子力発電所事故発生から10年で特集
原子力委員会定例会の模様原子力委員会は7月27日の定例会で2020年度版の原子力白書を決定、発表した。今回は、3月に福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎えたのをとらえ、特集として、10年を経た「福島の今」、事故の検証と教訓、福島の復興・再生について整理。これを踏まえ、原子力委員会として、「すべての原子力関係者が忘れてはならないこと」、「すべての原子力関係者が協働して取り組まなければならないこと」を述べている。白書の冒頭で、上坂充委員長は、「福島の着実な復興と再生、様々な改善に真摯に取り組むことは、わが国の原子力利用にとって必須であるとともに、世界に誇ることのできる活力ある日本を再生していくために必要不可欠な要素」と、今回特集の意義を強調。白書は今後、閣議配布となり諸々の政策立案に供されるものとなるが、定例会での決定に際し、上坂委員長は、「わかりやすくまとまっている」と、所感を述べた上で、9月に開催予定のIAEA総会他、OECD/NEAなどの国際機関に紹介する考えとともに、人材育成の観点から大学の講義で活用されることにも期待を示した。原子力委員会がまとめた福島第一原子力発電所事故に関する見解(原子力白書より引用)福島第一原子力発電所事故発生から10年を過ぎ、白書では、「10年以上の長期にわたって住民や地域社会にここまで大きな被害をもたらすことを誰が予想していただろうか」と自省。福島が直面している課題の一つとして、「風評」と「風化」をあげ、原子力関係者に対し、「二度と事故を起こさないために、原子力災害に関する記憶と教訓を忘れないこと」、「事故によって生じた風評が固定化され、福島の人たちを苦しめている」と、改めて強調。風評問題が復興・再生の壁となっていることを指摘し、「専門的な取組だけでなく、福島を知ること、行ってみること、食べてみることといったシンプルな取組を続けることも重要」などと、各人による地道な努力の必要性を述べている。白書では随所にコラムを設けており、世界的な新型コロナウイルスの拡大を踏まえた経済回復や環境保全における原子力の役割に関し、OECD/NEA、世界原子力協会(WNA)が2020年に発表した政策文書について取り上げている。
- 28 Jul 2021
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福島第一2号機燃料デブリ取り出しのロボットアームが英国より到着
東京電力福島第一原子力発電所2号機における燃料デブリ取り出しの試験的取り出し装置(ロボットアーム)が7月12日、英国より神戸市内に到着した。福島第一廃炉の中長期ロードマップでは、燃料デブリ取り出しの先陣として、同2号機での2021年内の試験的取り出し開始を目標としており、国際廃炉研究開発機構(IRID)と英国VNS社がロボットアームの開発を行っていたが、新型コロナウイルスのまん延状況や技術者の入国制限などに伴い、日本への輸送時期を精査し一部の性能確認試験が英国内での実施となった。2号機燃料デブリ取り出しのイメージ(エンクロージャ:アームを内蔵する箱、東京電力発表資料より引用)ロボットアームは英国で予定された作業を終了し、今後、日本国内で性能試験、モックアップ試験、訓練が行われる。これと並行し福島第一2号機では2021年後半よりX-6ペネ(格納容器貫通孔)のハッチ解放・堆積物除去、ロボットアーム設置が進められ、2022年後半にも内部調査・試験的取り出し作業に入る計画だ。英国で開発されたロボットアーム(東京電力発表資料より引用)英国企業との協力により開発されたロボットアームは、伸ばしてもたわまない高強度のステンレス鋼製で、長さ約22m、重さ約4.6トン、耐放射線性約1メガグレイ。先端に取り付ける燃料デブリ回収装置先端部(金ブラシ型、真空容器型)で原子炉格納容器内の粉状の燃料デブリ(1g程度)を取り出す。2号機の燃料デブリ取り出しに向けては、2018、19年に釣りざお型調査装置による原子炉格納容器内部調査が行われており、小石状の堆積物が動かせることを確認している。
- 13 Jul 2021
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