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【第58回原産年次大会】原子力新設に向けた課題 欧州の事例を踏まえ議論
大会初日の午前中に開催されたFireside Chatでは、午後のセッション1、2で議論する原子力発電所の新設に向けた資金調達やサプライチェーン上の課題について、問題提起と欧州の事例に基づく課題共有が行われた。Fireside Chatとは、暖炉脇での会話を想起させるリラックスした雰囲気で行われる対話形式のトークイベント。原産年次大会では初めての試みであり、その後のセッションへの橋渡しとして実施された。初日の登壇者は、フラマトムジャパン株式会社のピエール・イヴ コルディエ代表取締役社長と日本原子力産業協会の増井秀企理事長。増井理事長は冒頭、日本の原子力産業の現状に触れ、2025年2月18日に策定された「第7次エネルギー基本計画」に関し、特に日本の原子力産業界が注目する重要な変化として、「原子力依存度の低減」から「原子力の最大限の活用」へと表現が改められ、既設炉の活用に加え、「新規建設」にも明確に言及されたことを挙げた。コルディエ氏は、欧州における原子力の現状について解説。欧州では130基以上の原子炉が稼働しており、世界全体の約3分の1に相当する規模を有している。近年では原子力への関心が再び高まり、新規導入や既存炉の運転期間延長が広く検討されていると述べ、欧州全体で原子力活用のモメンタムが拡大していると指摘した。コルディエ氏は、在英フランス大使館勤務時に関わった英国ヒンクリーポイントCやフィンランドのオルキルオト3号機のプロジェクトを例に挙げ、欧州の原子力プロジェクトがEUの政策動向に大きく左右される点を指摘した。特に環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準 である「EUタクソノミー基準」をめぐっては、原子力を推進する国々と、反対する国々の間で激しい議論があったが、最終的に原子力は2023年1月1日付でEUタクソノミーに含まれ、グリーンファイナンスの活用が可能となったことを紹介。休眠中のプロジェクト再活性化への期待を示した。日本における資金調達課題について増井理事長は、⽇本では原子力産業が民間事業であり、電力市場自由化が進んでいることから、新たな長期的投資回収が難しくなり、金融機関からの融資を受けることが困難である現状を説明。かつて存在した「レート・オブ・リターン(総括原価方式)」の仕組みがなくなったことで、原子力プロジェクトの資金調達環境が厳しくなっていると述べた。コルディエ氏は、欧州で採用されている多様な資金調達スキームの事例として、ヒンクリーポイントCで導入された「差金決済取引(CfD)」、英サイズウェルCに適用予定の「規制資産ベース(RAB)モデル」、フランスの改良型欧州加圧水型炉(EPR2)6基の建設プロジェクトにおける低利の政府融資とCfDの組み合わせを紹介した。また、欧州のプロジェクトで課題となった建設遅延やコスト超過についても触れ、その主要因としてサプライチェーンと人材の準備不足を指摘。こうした課題に対応するため、フランス電力(EDF)とフラマトムは2020年から2023年にかけて、プロジェクト管理やサプライチェーン標準化などを推進する「エクセル・プラン」を実施し、これにより改善が見られたと評価した。さらに、原子力産業が若年層に対して魅力あるキャリアとして欧州で再評価されていることを紹介。英国ヒンクリーポイントCでは、約8,000人の若者がスキル訓練を受け、地域の若年人口が大きく増加。また、フランスでは、高度な技能を持つ人材を育成するため、エクセル・プランの一環として、溶接訓練機関や原子力のための大学University for Nuclear Professionsが設立され、着実に成果を上げていると述べた。最後に増井理事長は、原子力の新設プロジェクト成功のカギとして「ファイナンス」「人材」「サプライチェーン」の3点を挙げ、欧州の経験から学ぶべき多くの教訓があると総括。コルディエ氏もこれに同意し、適切な制度設計と体制整備が整えば、日本においても”On Time, On Budget”での原子力新設が実現可能であると展望を語った。
- 09 Apr 2025
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【第58回原産年次大会】新規建設へ向けたファイナンスを議論
第58回原産年次大会・セッション1「新規建設に向けて:資金調達と投資回収」では、新規原子力プロジェクトを推進するための資金調達・投資回収スキームに関する課題や方向性が議論された。モデレーターの樋野智也氏(有限責任監査法人トーマツ)は冒頭で、第7次エネルギー基本計画において原子力発電所の新規建設推進が明記されたことを受け、その実現のためには事業リスクを官民で明確に分担し、事業環境の予見性を高める必要性があると強調した。また、長期脱炭素電源オークション制度の課題として、建設期間中の想定外コスト(設計変更、部品調達問題)や廃炉費用の不確実性、資本コストの上昇リスク、市場収益の約9割を還付するルールに伴う未回収リスク、供給力提供開始期限(17年)超過による収入減少などを具体的に指摘した。ファイナンス面では、東日本大震災以降の電力会社の信用力低下やGX投資負担増大が、資金調達リスクを高めていることを説明し、コスト回収面の施策と合わせて債務保証、低利融資、官民のリスク分担、資金調達多様化、建設期間中の資金回収を可能とする仕組みの整備などの制度措置が必要と提言した。続いて、ハントン・アンドリュース・カースのジョージ・ボロバス氏は、米国の事例を中心に、原子力プロジェクトの資金調達方法を紹介。特にA.W.ボーグル原子力発電所の建設費が320億ドルに達した例を挙げ、プロジェクトマネジメント能力の重要性に触れながら、シリーズ建設を提案。民間の投資を活用し、政府が積極的な支援策を提供することが重要だとした。また、米国政府による政権を超えた原子力支援策や、小型モジュール炉(SMR)に対するGoogle社やAmazon社など大手IT企業からの投資が活発化している現状を紹介し、民間企業の参加は既存発電所の再稼働プロジェクトの成功にも大きく寄与すると指摘した。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省のマーク・ヘイスティ-オールドランド氏は、英国の原子力政策について説明。英国政府は2050年までに原子力発電容量を2,400万kWに拡大する目標を掲げ、SMRを含めた原子力発電の開発を「Great British Nuclear(GBN)」を通じて推進していることを示した。特に「規制資産ベース(RAB)」モデルを採用するまでの歩みを説明しながら、建設期間中から投資回収を可能にする制度的メリットを強調した。また、核燃料サイクルの安全保障確立や、ロシア・中国依存を低減する取り組みが英国の原子力政策の重要な柱であると述べた。日本経済団体連合会の小野透氏は、産業界の視点から原子力の重要性を指摘。特に地域間の電気料金差(北海道と九州の差が月間10億円規模)が、企業の国内投資判断に大きく影響していると具体的な数字を示した。また、経団連が行ったアンケート結果(再稼働支持率9割、新増設支持率7割)を紹介し、第7次エネルギー基本計画により支持がさらに拡大する可能性を示唆した。さらに、原子力損害賠償における無限責任制度の見直しも提案した。みずほ銀行の田村多恵氏は、銀行や社債市場を通じた電力会社の資金調達について資金供給者の視点を示し、金融機関がファイナンスの対応意義、事業の継続性、キャッシュフローの安定性等を重視していることを説明した。また、継続的に原子力建設プロジェクトを実施することが、コストの上振れリスクの軽減につながると述べ、金融機関が資金供給できる事業環境整備の重要性を主張した。最後に経済産業省資源エネルギー庁の吉瀬周作氏は、国内の電力需要が今後も増加傾向にあり、脱炭素電源(原子力含む)の増強が不可欠だと具体的な数値を示して説明した。そして、2040年における原子力シェアを約2割とする方針を再確認し、海外の事例を参考に、日本の投資回収予見性を高める制度整備が必要だと強調した。後半のパネル討論では、こうした課題を踏まえた具体的な解決策や政策的対応が議論された。樋野氏はまず、米国における原子力プロジェクトの将来展望や、自由化市場における原子力発電の資金調達リスクについてボロバス氏に質問。ボロバス氏は、自由化市場で原子力プロジェクトを成功させるためには、長期的な収益予測可能性を高めることが重要であり、特に政府が支援の仕組みを作ることが必要になると強調した。一方、英国のRABモデルの詳細についてオールドランド氏は、英国では運転終了後の廃炉費用をあらかじめ計画に組み込み、投資回収を安全かつ透明に行う仕組みを導入していると指摘。これが金融機関や投資家のバックエンドに関する懸念を和らげ、安定的な資金調達を可能にしていると述べた。日本の制度設計に関連し、原子力産業におけるサプライチェーン維持の重要性と国のリーダーシップの必要性について問われた小野氏は、明確な原子力政策の提示がサプライチェーンの維持・強化に不可欠であり、特に最終処分場の選定などバックエンド問題に関し、国の積極的な関与を求めた。田村氏はファイナンス支援の必要性について問われ、公的信用補完に触れながら、個別プロジェクトの投資回収予見性だけではなく、事業者が継続的に投資できる環境が必要であり、それを支えるファイナンス側も継続的に資金提供できるような制度支援が必要だと強調した。リスク分担や投資回収の予見性をどのように制度設計に反映させるか問われた吉瀬氏は、初号機だけでなくシリーズ建設していくという考え方が参考になったとし、モラルハザードを防ぎ、コストダウンのインセンティブを取り入れながら、社会全体でリスクとコストをどう分担するか、これらのバランスを慎重に検討していることを明らかにした。セッション1では質疑応答を通じ、海外の先進事例を参照しつつも、日本固有の事情を踏まえた制度設計が求められることが明確となった。また、原子力への国民理解促進に向けた情報発信の重要性についても意見が交わされ、「情報を取りに来る層への情報発信は充実しているが、情報を取りに来ない層に対する発信が課題」とし、産業界、政府、金融機関の連携が強調された。最後にモデレーターの樋野氏は、原子力発電が安定供給とエネルギー安全保障、脱炭素社会の実現に不可欠であることを再確認した上で、制度設計の遅れは産業界に大きな損失をもたらすため、迅速な対応が必要だと指摘した。また、米英の先進事例を日本の実状に適切に修正・適用しつつ、単発のプロジェクトに終わるのではなく、継続性をもった長期的な取り組みの重要性を強調した。さらに、国民理解を促進するためには丁寧なコミュニケーションが必要であり、産業界、政府、金融機関が一体となって取り組みを進めていくことが求められると結論付けた。
- 08 Apr 2025
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【第58回原産年次大会】開会セッションで三村会長が挨拶
「第58回原産年次大会」が4月8日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約740名が参集し(オンライン参加を含む)、9日までの2日間、「原子力利用のさらなる加速 -新規建設の実現に向けて-」を基調テーマに議論する。開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、前回年次大会以降の1年間を振り返り、「世界では原子力活用のモメンタムがますます拡大している」と、原子力利用に向けた世界的趨勢を強調。海外の動きとしては、ブリュッセルにおける史上初の「原子力に特化した首脳会議」(2024年3月)の開催や、COP28で発表された「原子力三倍化宣言」(2023年12月)の署名国が、2024年11月のCOP29で新たに6か国が加わり、計31か国に上ったことなどをあげた。さらに、世界有数の金融機関によるファイナンス支援表明、大手IT企業による同宣言を支持する動きにも言及。今回大会の議論に先鞭をつけた。国内の動きとして、三村会長はまず、国内初の使用済み燃料中間貯蔵施設となる「リサイクル燃料備蓄センター」の事業開始(2024年11月)をあげ、「原子力発電事業に柔軟性をもたらすものであり、大きな意義を持つもの」と、原子力利用におけるバックエンド対策の重要性を示唆。再稼働に関しては、東北電力の女川2号機(2024年11月)、中国電力の島根2号機(2024年12月)の発電再開により、「再稼働したプラントは合計14基となり、待望のBWR2基の再稼働が実現したことは、大きな前進」と強調した。エネルギー政策の関連では、2月18日の「第7次エネルギー基本計画」閣議決定をあげ、「これまでの『原子力依存度低減』に代わり、『原子力の最大限活用』が謳われたことは、私たち原子力産業界にとって極めて重要な前進」と、その意義を認識。また、今回のエネルギー基本計画での特筆事項として、「次世代革新炉の開発・設置に取り組むとして、新規建設の方針も示された。資金調達・投資回収の予見性を高める事業環境の整備や、サプライチェーンや人材の維持・強化を進めることも明記されている」ことについて、「産業界にとって大変意義深いこと」と強調した。その上で、今大会の開催について、「新規建設の早期実現に向けた実効性ある事業環境の整備を念頭に、国内外産業界の取り組みと課題解決の方向性について議論を進める」と宣言。「新たなエネルギー基本計画のもと、原子力を持続的に最大限活用していく鍵は『新規建設』だ」と、議論に先鞭をつけた。続く来賓挨拶では、あべ俊子文部科学大臣と竹内真二経済産業大臣政務官が登壇。それぞれ原子力分野における人づくり・教育、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえたエネルギー政策の推進について、各行政庁としての姿勢を述べた。竹内政務官は、「特に若者に対する情報発信は不可欠だ」と強調。先に原子力産業協会と共催したサプライチェーンシンポジウムへの来場も振り返り、「サプライチェーンの課題解決に向けた取組をさらに進めていく必要がある」として、あらためて参集した原子力産業界に対し理解を求めた。基調講演では、十倉雅和・日本経済団体連合会会長が「国民生活・経済成長を支えるエネルギー政策」と題し発表。同氏は、資本主義の弊害として「格差の拡大、固定化、再生産」、「生態系の崩壊」をあげたほか、地球の歴史から、過去10万年の気温変動を振り返り、わずか1万年の「完新世」で人類が繁栄を築きあげてきたことを説いた。同氏は、こうした科学的見地から、「地球が悲鳴を上げている。GXは最重要課題」との姿勢を示し、経団連としての提言発信など、諸活動について述べ、議論に先鞭をつけた。この後、「バトン・スピーチ」として、グレース・スタンケ氏(コンステレーション社燃料設計エンジニア・クリーンエネルギー推進担当)、アーチー・マノハラン氏(マイクロソフト社原子力技術部長)が発表を行った。
- 08 Apr 2025
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「世界の原子力発電開発の動向2025」刊行
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は4月4日、記者会見を行い、「世界の原子力発電開発の動向2025年版」の刊行を発表。世界で発電可能な原子力発電所の合計設備容量が、約4億1,600万kWと、過去最高を更新したことを明らかにした。同書は、原産協会が毎年発行している出版物だが、今回より、見せ方の工夫として、インフォグラフィックを採用し、情報・データをビジュアル化している。増井理事長は、このインフォグラフィックをもとに説明。現在、世界の原子力発電所は、32か国で436基・4億1,698万kWが運転中、17か国で75基が建設中だ。今回の調査結果として、「エネルギー安全保障と脱炭素化、電力需要増を背景に、原子力への期待が高まっている」と概括した。世界の原子力発電利用国の設備容量は、上位順に、米国、フランス、中国、日本、ロシアで、基数の観点では中国が世界第2位だ。また、総発電電力量に占める原子力の割合が高い国はフランスがトップで64.8%となっている。増井理事長は、2024年の動きとして、営業運転を開始したプラントの総発電設備容量が706万kW、閉鎖になったプラントは同306万kWで、差し引きすると400万kW程度増えていると説明。さらに、新たに原子力発電所を着工した国・基数について、中国、ロシア、エジプト、トルコをあげる一方、「過去5年間に着工した42基は、全て中国とロシア製のプラント。西側諸国と体制の異なる2か国が原子力の新規建設を席巻している状態」と、中国とロシアの躍進ぶりを示した。この他、SMR(小型モジュール炉)については、カナダのダーリントン・サイトにおけるGE日立ニュクリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」の開発状況にも言及。産油国であるUAEによる原子力開発について記者から質問があったのに対し、増井理事長は「昨今の脱炭素化に向けた動きも要因では」などと応えた。また、国際エネルギー機関(IEA)がまとめたデータセンター・AIなどに伴う世界の電力需要推移から、高予測と低予測のいずれについても将来的に「増加する」との見通しを示し、海外のIT企業が原子力に注目する背景を説いた。「世界の原子力発電開発の動向2025」は、4月25日に刊行予定。〈ご購入は こちら〉この他、増井理事長は、来る4月8、9日に開催される「第58回原産年次大会」について紹介。今回は「新規建設の実現に向けて」をテーマとし、新規建設に向けた資金調達・投資回収等を議論することになっている。*「世界の原子力発電開発の動向2025年版」のWebコンテンツは、 こちら よりご覧ください。
- 07 Apr 2025
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原文財団「原子力に関する世論調査」の最新版を発表
日本原子力文化財団はこのほど、2024年の10月に実施した「原子力に関する世論調査」の調査結果を発表した。18回目となるこの調査は、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握することを目的として実施している。なお、同財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。今回の調査で、「原子力発電を増やしていくべきだ」または「東日本大震災以前の原子力発電の状況を維持していくべきだ」と回答した割合は合わせて18.3%となった。一方、「しばらく利用するが、徐々に廃止していくべきだ」との回答が39.8%となり、両者を合わせると原子力の利用に肯定的な意見は過半数(58.1%)を超えた。このことから、現状においては、原子力発電が利用すべき発電方法と認識されていることが確認できる。一方、「わからない」と回答した割合が過去最大の33.1%に達し、10年前から12.5ポイントも増加していることが明らかになった。「わからない」と回答した理由を問うたところ、「どの情報を信じてよいかわからない」が33.5%、「情報が多すぎるので決められない」が27.0%、「情報が足りないので決められない」が25.9%、「考えるのが難しい、面倒くさい、考えたくない」が20.9%となっている。この「わからない」と回答した割合はすべての年代で増加しているが、特に若年世代(24歳以下)の間で増加傾向が高かった。また、同調査は、「原子力やエネルギー、放射線に関する情報源」についても分析を行っている。その結果、若年世代(24歳以下)は、「小・中・高等学校の教員」(27.2%)を主な情報源として挙げており、また、SNSを通じて情報を得る割合が、他の年代と比較して高いことがわかった。原文財団では、若年世代には、学校での情報提供とともに、SNS・インターネット経由で情報を得るための情報体系の整備が重要だと分析している。また、テレビニュースは年代を問わず、日頃の情報源として定着しているが、高齢世代(65歳以上)においても、ここ数年でインターネット関連の回答が増加している。「原子力という言葉を聞いたときに、どのようなイメージを思い浮かべるか」との問いには、「必要」(26.8%)、「役に立つ」(24.8%)との回答が2018年度から安定的に推移している。「今後利用すべきエネルギー」については、2011年以降、再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱)が上位を占めているものの、原子力発電利用の意見は高水準だった2022年の割合を今も維持していることがわかった。再稼働については、「電力の安定供給」「地球温暖化対策」「日本経済への影響」「新規制基準への適合」などの観点から、肯定的な意見が優勢だった。しかし、再稼働推進への国民理解という観点では否定的な意見が多く、再稼働を進めるためには理解促進に向けた取り組みが必要であることが浮き彫りとなった。また、高レベル放射性廃棄物の処分についての認知は全体的に低く、「どの項目も聞いたことがない」と回答した割合が51.9%に上った。4年前と比較しても、多くの項目で認知が低下傾向にあり、原文財団では、国民全体でこの問題を考えていくためにも、同情報をいかに全国へ届けるかが重要だと分析している。
- 28 Mar 2025
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「原子力サプライチェーンシンポジウム」でパネル討論
原子力サプライチェーンの維持・強化策について議論する「原子力サプライチェーンシンポジウム」(第3回)が3月10日、都内ホールで開催された。経済産業省資源エネルギー庁が主催し、日本原子力産業協会が共催した。武藤容治経産相の開会挨拶(ビデオメッセージ)、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官の基調講演などに続き、「サプライチェーン強化に向けた取組」と題しパネルセッション(ファシリテータ=近藤寛子氏〈マトリクスK代表〉)が行われた。パネルセッションの前半では、三菱重工業、東芝エネルギーシステムズが、革新型軽水炉として、それぞれ取り組む「SRZ-1200」、「iBR」の開発状況を紹介。サプライチェーンとしては、岡野バルブ製造が自社の取組について発表。同社は、高温高圧バルブを90年以上製造している実績を活かし、2023年より次世代革新炉向けのバルブ開発に取り組んでいるという。パネルセッションの後半では、三菱総合研究所と日本製鋼所M&E、日立GEと四国電力がペアとなって発表し議論。それぞれ、次世代炉建設に必要な人材維持に向けた「技能者育成講座」、原子力発電所におけるAI活用の取組について紹介した。これを受け、原産協会の増井秀企理事長は、ものづくりにおける人材確保の重要性をあらためて強調。原産協会が行う就活イベント「原子力産業セミナー」など、学生・次世代層への働きかけを通じ、「多様な人材確保につながれば」と期待した上で、「情報に触れて自分の頭で考える機会を与える」ことの意義も述べた。また、「サプライチェーンの課題を解決するためには、産官学の緊密な連携が必要」とも指摘。引き続き広報・情報発信に努めていく姿勢を示した。増井理事長は、プレゼンの中でリクルートワークス社による労働需給シミュレーションを紹介し、「2040年に1,100万人の働き手不足が生じる」と危惧し、将来的に「人口減・仕事増の矛盾解消策、総合的な対策が必要」と指摘。同シミュレーションによると、2040年の労働人口不足率は、地域別に、東京都はマイナス8.8%と供給過剰の見通しだが、原子力発電所の立地道府県では、新潟県が34.4%と全国的に最も厳しく、女性の就業率が高いとされる島根県では0.9%と、地域間のギャップが顕著となっている。同シンポジウムの初開催(2023年3月)に合わせ設立された「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の会員企業は現在、約200社に上っている。パネルセッションの前半と後半の合間に、NSCP参画企業約20社によるポスターセッションが行われた。パネルセッションの締めくくりに際し、行政の立場から、文部科学省原子力課長の有林浩二氏がコメント。業種の枠を越え交流が図られたポスターセッションについては「いかに企業が若い人材を確保することが大変か」との見方を示した上、北海道大学で制作・公開が始まっている誰もが利用可能なオンライン型「オープン教材」の企業内教育における活用などを提案。また、資源エネルギー庁原子力政策課長の吉瀬周作氏は、国際展開の見通しにも言及し「若者に未来を示すことが出発点」、「しっかりと次世代にバトンをつないでいくことが必要」、「新たなチャレンジを」と所感を述べ、産官学のさらなる連携強化の必要性を示唆した。なお、電気業連合会の林欣吾会長は、3月14日の定例記者会見で、今回のシンポジウムに関し、先に決定されたエネルギー基本計画にも鑑み「サプライチェーンの維持には、事業予見性の向上はもとより、技術・人材を維持する観点から、国が具体的な開発・建設目標量を掲げることが重要だと考えている」とコメント。さらに、「将来にわたり持続的に原子力を活用していくには、いずれ新増設も必要になると考えている」とも述べている。
- 24 Mar 2025
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増井理事長 次期エネ基を高く評価
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は2月28日、記者会見を行い、同18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」に対する考え方について説明した。「第7次エネルギー基本計画」の閣議決定を受け、原産協会は2月21日に、 (1)原子力を最大限活用する (2)既設炉最大限活用する (3)次世代炉の開発・設置に取り組む (4)原子力発電の持続的な活用への環境整備――につき、方針が示されたとして、「高く評価する」との理事長メッセージを発表している。今回のエネルギー基本計画決定に際し、記者より「まず何から始めるのか」と問われたのに対し、増井理事長は、産業界として、原子力人材やサプライチェーン維持・強化を見据えた新規建設プロジェクトの必要性に言及。今回エネルギー基本計画を裏付ける電力需給見通しを踏まえ、「2040年までは猶予はあまりない」と述べ、政府による支援についても、早急な支援が図られる必要性を示唆した。また、原子力発電の再稼働をめぐって、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機がBWRとして新たに加わり計14基となった。折しも前日、柏崎刈羽原子力発電所のテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」の整備延期が発表されたことに関し、増井理事長は、審査期間、地理的要件、設計の問題、工事の量・人手の4点を指摘。原産協会が毎年公表する「産業動向調査」にも触れながら、2040年の電力需給見通しに向け「地元合意を経て再稼働すれば十分達成できる」との見方を示した。
- 04 Mar 2025
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原産協会・増井理事長 次期エネ基に向け意見
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は1月24日、記者会見を行い、現在検討中の次期エネルギー基本計画の策定に向け、協会としての意見について説明した。同計画は昨夏より経済産業省を中心に検討が進められ、12月26日に資源エネルギー庁で原案が取りまとめられパブリックコメント(1月26日まで)に付せられた。原産協会の意見としては、原子力産業の意思決定となる明確な指針を求め、 (1)原子力の価値と必要性を明記し「原発依存度低減」の記載を削除 (2)既設炉の早期再稼働、長期サイクル運転、運転中保全の拡大、出力向上など、既設炉の最大限活用に適切な支援を行うこと (3)原子力発電の新規建設を前提に新増設・リプレースの必要な容量と時間軸を示し、同一敷地内に限られた建設制限を解除 (4)原子力発電所の追加安全対策や新規建設の投資回収の予見性を回復し、投資家が投資でき、事業者が資金を調達できる事業環境整備を早急に整備 (5)革新軽水炉にかかる規制整備の早期進展の必要性に鑑み、規制整備のスケジュールを示すこと (6)原子力事業者が無過失・無限の賠償責任を集中して負うこととされている原子力損害賠償制度の見直しについて方向性を示すこと――を要望。昨今、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機がBWRとして再稼働を果たした。記者団からの質問に対し、増井理事長は、今後の設備利用率向上に向け、計画外停止回避のなどの必要性を述べるとともに、サプライチェーンの維持・強化の重要性を強調した次期エネルギー基本計画案では、これまでの「原発依存度の可能な限りの低減」の文言は削除された。新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での次世代革新炉への建て替え」を対象に具体化を進めていくとされている。2040年を見据えた同計画案に関し、増井理事長は予断を持たずに状況を注視していく見方を示した。また、会見では、「第58回原産年次大会」についても紹介した。同大会は、2025年4月8、9日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で、「原子力利用のさらなる加速-新規建設の実現に向けて」をテーマに開催される。
- 27 Jan 2025
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三村会長「経済的で安定したベースロード電源」の必要性を強調
「原子力新年の集い」(日本原子力産業協会主催)が1月8日、東京プリンスホテル(東京・港区)で開催され、会員企業・組織、国会議員、駐日大使館関係者ら、参加者は700名に上り新年の門出に際し親睦を深めた。冒頭、年頭挨拶に立った原産協会の三村明夫会長は、2024年を振り返り、国際的には、依然として深刻な状況にあるロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の混乱をあげ、「エネルギーをめぐる不確実性を増大」させるものと懸念。加えて、世界各国における「エネルギー安全保障を最優先課題とする」動き、新興国の発展、生成AIやデータセンターの事業規模拡大に伴う電力需要増から、「経済的で安定したベースロード電源が強く求められている」と強調した。〈会長年頭挨拶は こちら〉国際機関を通じた動きについても、3月にIAEAとベルギー政府との共催で行われた「原子力エネルギー・サミット」などに言及。直近では、11月のCOP29(アゼルバイジャン・バクー)で、前回のCOP28で発出された「原子力3倍宣言」に6か国が新たに加わり署名国が31か国に上ったことから、「エネルギー安定供給と脱炭素の両立を可能とする原子力活用のモメンタムがさらに拡大している」と、期待を寄せた。国内については、11月の東北電力女川原子力発電所2号機、12月の中国電力島根原子力発電所2号機と、東日本大震災後に施行された新規制基準をクリアし、これまでのPWRに続いて、BWRの再稼働も進み、「原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きい意義を持つもの」、「プラントが動く際の感動を、次世代を担う若者たちにもしっかりと受け継いでいきたい」と強調。再稼働プラントは現在、計14基となっている。((女川2号機は12月26日に営業運転再開、島根2号機は1月10日に営業運転再開の予定))また、核燃料サイクル・バックエンド関連の動きとしては、国内初の使用済み燃料中間貯蔵施設となるリサイクル燃料貯蔵「リサイクル燃料備蓄センター」の事業開始(11月)、高レベル放射性廃棄物等の処分地選定に向けた佐賀県玄海町による文献調査の受入れ表明(5月)、北海道寿都町・神恵内村における同調査報告書作成(11月、現在地元で報告書に関する縦覧・説明会が進行中)をあげた。一方で、再処理工場とMOX燃料加工工場の竣工時期変更(それぞれ2026年度、27年度に送り)に関しては、「今年は正に正念場」と強調。事業主体の日本原燃をはじめ、関係各社に対し「力を合わせてこれらの事業を前に進めて欲しい」と訴えかけた。エネルギー政策に関しては、昨年末、次期エネルギー基本計画の原案が取りまとめられ、現行計画に引き続き、福島第一原子力発電所事故の反省が原点とされている。三村会長は、2024年11月の同2号機における燃料デブリの試験的取り出し開始に言及し「今後も安全確保を第一に着実な視点を期待する」と述べた。その上で、次期エネルギー基本計画の原案で、原子力の依存度低減の文言が削除され、次世代革新炉の開発・設置が記載されたことを、「原子力産業界にとって力強い推進力になる」と歓迎。原産協会の来年度事業方針を「新規建設実現の推進と促進」とし、来る4月に開催予定の「第58回原産年次大会」のメインテーマとすることを表明した。続いて来賓として訪れた武藤容治経済産業相、城内実・内閣府経済安全保障相、電気事業連合会・林欣吾会長が挨拶。武藤経産相はまず、2024年元旦の能登半島地震に続き相次ぎ発生した自然災害に伴う被災者への見舞いの言葉とともに、電源車の手配など、電気事業者ら、関係企業による被災地復興支援に対し謝意を述べた。今年の海外の動きとしては第一に、米国トランプ新政権誕生に言及。その上で、「強固な経済関係は二国間関係の土台をなすもの」と、日米同盟の機軸を述べたほか、国内企業による投資促進に向けて、「安心して日本企業が判断できる環境を整えることが重要」と、産業基盤の強化を図っていく必要性を示唆した。城内経済安全保障相は、科学技術政策・原子力委員会も担務する立場から、昨年12月ASEAN諸国、中国、豪州を中心とする政策対話の枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の大臣級会合で、革新炉開発の重要性を力説したことを紹介。特に、核融合の推進については、ITER計画における日本の技術力発揮への期待、昨年発足した「J-Fusion」を通じた産業界の取組の他、本年3月にも核融合エネルギー実用化を見据え「安全確保の基本的考え方」を内閣府として策定することを明言した。電気事業者の立場から、林会長は、国内の原子力に関わる進展として、BWRの再稼働とともに、関西電力高浜発電所1号機の50年超運転入りにも言及。今後、新規制基準に係る審査途上若しくは未申請にある他プラントについても、「安全を最優先に再稼働につなげていきたい」と、原子力発電の安全・安定運転の継続に努めていく姿勢をあらためて示した。次期エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画の原案が昨年末に示され、今後は日本経済の将来を見据えた国家戦略「GX2040ビジョン」の年度末策定が見込まれている。東原敏昭副会長(日立製作所会長)は、「2050年カーボンニュートラル実現に向け、全体の最適化を考えると、原子力なくしてうまくはいかない。新規建設に向け大きな年としたい」と強調。同氏の音頭で一同は祝杯を上げた。
- 09 Jan 2025
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原産協会・増井理事長 産業動向調査について説明
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は12月6日、記者会見を行い、最近の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会での発言内容、同協会が毎年取りまとめている「原子力発電に係る産業動向調査報告」の最新版について説明した。増井理事長はまず、既に理事長メッセージとして公表済みだが、11月20日に行われた原子力小委員会での発言をあらためて紹介。現在、資源エネルギー庁において検討中の次期エネルギー基本計画に関し、 1.現行のエネルギー基本計画にある「原子力の依存度の低減」の記載を削除 2.新規建設を前提とした原子力の必要容量と時間軸を明記 3.資金調達、投資回収などの事業環境整備の方針を明記――することを要望事項としてあげた上で、「民間事業者の意思決定に大きく影響する重要なものになる」との認識を示した。「原子力発電に係る産業動向調査報告」については、原産協会が定期的に発行している「看板出版物の一つ」として、継続的に実施してきた意義を強調。今回公表の2024年調査版は、国内で12基が稼働していた2023年度を対象に、原産協会会員企業318社にアンケートを行い、243社から有効回答を得て集計・分析したもの。調査結果の概況として、増井理事長は、電気事業者の支出高について、2兆510億円と、対前年度比12%増となったことをあげた。また、会員企業の人材採用・配置計画、原子力事業の位置付けについては、事業拡大もしくは現状維持との回答がそれぞれ84%、94%と、いずれも「昨年並み」との認識を示した。原子力産業界を取り巻く景況感に関しては、「良い」、「普通」、「悪い」の選択肢のうち、「良い」が9%(前年度は8%)、「普通」が48%(同44%)となり、2020年度(調査対象年次)以降、両者の回答が右肩上がりで推移。安全保障対策・気候変動対策への関心増から、「少しずつ良くなっている」との見方を示した。さらに、増井理事長は、11月11~24日にアゼルバイジャン・バクーで開催されたCOP29についても紹介。前回COP28を振り返り、「原子力の低炭素電源としての価値が公式文書に書き込まれた歴史的転換点になった」と強調。今回のCOP29では会期中、複数のサイドイベントが開催され、前回のCOPに続き現地にて出席・登壇した植竹明人常務理事は、今回の会見に同席し、記者からの質疑に応じ、「昨年の原子力推進のモメンタムが維持された」と評価するとともに、「若手の活動も非常に活発だった」と、所感を述べた。〈理事長メッセージは こちら、原子力関係活動報告は こちら〉
- 06 Dec 2024
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原産協会 柏崎市で講演会
日本原子力産業協会は11月21日、柏崎市内のホールで、ユニバーサルエネルギー研究所社長の金田武司氏を招き、講演会「世界情勢から日本のエネルギー・経済問題を考える」を開催した。同協会が原子力施設の再稼働や運転開始を控えた地域に対する理解活動の一環として行ったもの。冒頭の挨拶で、原産協会の増井秀企理事長は、近年のエネルギーをめぐる価格上昇、需要増を懸念。生成AIの利用増やデータセンターの設置に伴い、日本についても「数年前は人口減少に伴い段々とエネルギー需要が減っていくと言われていたが、最近では増加していくとみられている」と指摘した。今回の講演会に際し、金田氏には「エネルギー資源に乏しい日本がたどってきた数奇な歴史を世界的な文脈で語ってもらう」よう期待。さらに、柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市での開催について、「エネルギーの一大生産地として、日本の産業および生活の発展の向上を支えてきた」と、あらためて感謝の意を述べた。金田氏は、「エネルギー問題を幅広い視点で見てみたい」と切り出し、まず、最近の世界のエネルギーをめぐる問題として、2021年2月に米国テキサス州を襲った大規模停電に言及。その中で、「一般家庭の電気料金が100倍に高騰した」要因として、記録的寒波により風力発電設備が凍結し予期せぬ大停電に至ったことから、自然ハザードに伴うエネルギー途絶や単一電源への依存の問題点を指摘した。日本の石油輸入に関しては、地政学的リスクを背景に「タンカーが狙われる」こと踏まえ、エネルギー資源を確保することの困難さを強調。同氏は、日本の風力発電に関し、「総設備容量は約500万kWだが稼働率は約2割。全部動かしても原子力発電所1基分程度にしか過ぎない」との規模感を述べた。また、近代を振り返り、ペリー来航にまつわる米国の石炭確保と捕鯨(油)の関係性、昭和に始まった日本の石油利用、オイルショックなど、エネルギーの歴史的背景を概観。あらためて「日本には自前のエネルギー源はない」として、日本が原子力発電開発を進めてきた意義を説いた。さらに、世界経済の仕組み、海外の産業事情、エネルギーと外貨相場との関連にも言及した上、「エネルギー問題は表面だけではなく、多面的に見なければいけない。」と指摘。常に「なぜでしょうか?」と問いかけながら話を進めるとともに、エネルギーに係る本質的な問題が知られていないことを懸念し、報道のあり方についても「事の重大さ、ヒストリーがわかっていないのでは」と、強く問題視した。会場には柏崎市民を中心に125名が参集。全国の原子力発電所立地地域の状況、電力消費地域を始めとする国民理解を求める声もあった。柏崎刈羽原子力発電所は現在、7号機の再稼働に向け、地元の理解が焦点となっている。なお、原産協会では、原子力立地地域への理解活動として、日本原子力発電との共催により、3月にも水戸市内で、主に親子連れを対象に「ざんねんないきもの事典」の著者である丸山貴史氏を招いたトークイベントを開催している。
- 05 Dec 2024
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女川2号機が発電再開 新規制基準施行後BWRで初
東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が11月15日、再稼働(発電再開)した。東日本大震災後、2013年の新規制基準が施行されてから、BWRの再稼働は初となる。今後、原子力規制委員会による総合負荷性能検査を経て、12月中にも営業運転復帰となる見通し。同機の発電再開は、2010年10月の定期検査入りから、およそ14年ぶり。2011年3月の東日本大震災時、起動作業中であったが、発災により自動停止した。女川2号機の新規制基準適合性に係る審査は2013年12月に申請。6年以上におよぶ審査期間を経て、2020年2月に原子炉設置変更許可に至り、同年11月には、宮城県知事他、立地自治体が再稼働への同意を表明。海抜29m高の防潮堤建設など、安全対策工事は、2024年5月に完了した。10月29日に原子炉起動となったが、11月3日に設備点検に伴い一旦停止。11月13日に再度、原子炉を起動し、11月15日18時に発電を再開した。東北電力では、今回の発電再開に際し、これまで自然ハザードに対処してきた経験を振り返りつつ、「発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めて『再出発』と位置付ける」と、コメント。東日本大震災の教訓を踏まえ、原子力発電所のさらなる安全性の向上を目指し取り組んでいくとしている。これに関し、武藤容治経済産業相は、東日本の電力供給の脆弱性、電気料金の東西格差などの観点から、「大きな節目であり、重要な一歩」とした上で、エネルギー安定供給を所管する立場から、立地自治体の理解・協力に謝意を表し、引き続き安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくとの談話を発表した。また、電気事業連合会の林欣吾会長は、11月15日の定例記者会見で、「長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変感慨深く感じている」と、女川2号機発電再開の意義を強調した上で、今後、立地地域の理解を得ながら、中国電力島根原子力発電所2号機など、電力業界を挙げて早期の再稼働に取り組んでいく姿勢を示した。〈電事連コメントは こちら〉日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、メッセージを発表し、「わが国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つもの」と強調している。〈理事長メッセージは こちら〉
- 19 Nov 2024
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原産協会・増井理事長 「原子力産業セミナー」の成果を強調
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は11月1日、記者会見を行い、10月に開催された「原子力産業セミナー2026」、「東アジア原子力フォーラム」について紹介し、質疑に応じた。「原子力産業セミナー」は、原産協会と関西原子力懇談会との共催により、「原子力産業界の人材確保支援と原子力産業への理解促進」を目的として、2006年度より毎年行われているもの。今回は、主に2026年春に大学・高専を卒業する学生を対象に、10月5、14日と、それぞれ大阪・梅田、東京・浜松町で開催され、両会場合わせて計433名(前年度は430名)が参加した。出展企業・機関数は、89社(同85社)に上り過去最大。新卒・若手の就職活動が売り手市場となる中で、企業の採用欲が高まっていることがうかがえる結果となった。〈既報〉来場者へのアンケート結果によると、原子力産業界への就業意欲、理解の深まりについては、それぞれ肯定的な回答が85%、96%に達しており、増井理事長は、「全般的に好意的な反応が見られている」と評価。さらに、出展企業ブースでの質疑応答の状況からも、「学生さんは結構よく勉強してきている」などと振り返った上で、今後も同セミナーを原子力人材確保の「重要な場」として活用していく考えを述べた。また、「東アジア原子力フォーラム」は、10月23、24日に中国・敦煌で開催。今回、10回目となり、原産協会、中国核能行業協会(CNEA)、韓国原子力産業協会(KAIF)、台湾核能級産業発展協会(TNA)の関係者ら約60名が参加。5年ぶりの対面開催となり、各国・地域の原子力エネルギーの現状、安全性向上の取組。気候変動対策における役割、放射性廃棄物管理などについて意見が交わされた。増井理事長は、セッションの内容とともに、会期中に行われたテクニカルツアーについて、高レベル放射性廃棄物の処分研究施設「北山地下研究所」、敦煌から西に約20km離れたゴビ砂漠にある100MW級溶融塩タワー型太陽熱発電所を紹介。同太陽熱発電所は、東京ドーム約124個分の敷地を有し、高さ260mのローソク状タワーに向け、12,000基ものミラーが太陽の動きに合わせ集熱する壮大な規模感で、「非常に興味深かった」と印象を述べた。増井理事長は、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会に、専門委員として参加しており、最近、行われた10月16、30日の会合での発言についても説明。〈発言内容 10月16日、30日〉いずれも、原子力産業界の立場から、サプライチェーンの維持・強化について意見を述べており、今後の課題に係る記者からの質問に対し、「代替品があるかどうか」、「数量を確保できるか」、「特定の技能を持つ人しか作れないものか」と、3点を指摘した。
- 05 Nov 2024
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総合エネ調原子力小委 核燃料サイクルで議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は10月16日の会合で、核燃料サイクル政策を中心に議論した。5月にエネルギー基本計画の見直しに向けた検討が始まってから、同小委員会は、ほぼ2か月に1回のペースで開かれている。〈配布資料は こちら〉冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、「DX・GXの進展による電力使用の増大は、世界的な傾向が見込まれており、エネルギーの安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現していくためには、脱炭素原電の確保が重要」と強調。国内の原子力発電の動きに関しては、「女川2号機、島根2号機の再稼働に、より具体的見通しが見えてきた」と期待を寄せるとともに、海外については、米国におけるTMI1号機の再稼働、その電力をマイクロソフト社に供給する計画など、データセンターとの連携にも言及。その上で、「世界では、原子力のあり方が見直されている」との認識を示した。今回の議事の関連で、久米氏は、8月末に日本原燃が発表した六ヶ所再処理工場・MOX燃料工場の竣工目標変更に関して、国の基本方針である核燃料サイクルの確立をあらためて述べ「竣工は必ず成し遂げねばならない重要課題」と強調し、議論に先鞭をつけた。最近の原子力をめぐる動向と課題・論点について、資源エネルギー庁より整理・説明がなされ、核燃料サイクルの確立に向けては、六ヶ所再処理工場の安全・安定的な長期利用が図られるよう、早期竣工に向けた取組とともに、中長期的課題として、メンテナンス技術の高度化、取替用部品の確保、サプライチェーン・技術の維持、使用済みMOX燃料の再処理技術などを指摘。官民での対応、運転経験で先行するフランスとの協力の重要性をあげた。使用済み燃料の中間貯蔵については、9月26日にリサイクル燃料備蓄センター(むつ市)に、規制上の使用前検査のため、東京電力柏崎刈羽原子力発電所からキャスク1基の搬入が完了している。これに関し、資源エネルギー庁は、7月に行われた青森県・宮下宗一郎知事との面談で受けた要望「中間貯蔵後の使用済み燃料の搬出先の明確化」を踏まえ、今回、「六ヶ所再処理工場を搬出先として想定」し、必要な取組を進めていく考えを示した。事業者からは、電気事業連合会の水田仁・原子力推進・対策部会長、日本原燃の増田尚宏社長が出席し説明。水田部会長は、六ヶ所再処理工場・MOX加工工場の竣工目標変更について、「稼働中のプラントに直ちに影響するものではない」としながらも、経営層への支援強化、技術・マネジメント面で、さらにオールジャパン体制で日本原燃を支援していく姿勢を強調。増田社長は、両工場の審査が遅延してきた原因として、「発電炉と異なり、唯一の施設であり、審査の前例がない。再処理工場は発電炉6~7基分の膨大な設備数。過去の認可を得ている設計を意識し過ぎて、基準適合性を説明する検討が不十分だった」などと省みた。今回、欠席のため、書面提出で意見を述べた杉本達治委員(福井県知事)は、再稼働が進む立地地域として、六ヶ所再処理工場の竣工目標変更に対し、「核燃料サイクルへの不安を生じさせるだけでなく、敷地内の貯蔵プールがひっ迫している全国発電所の安定運転、電力の安定供給に影響しかねない重大な問題」と、懸念を表明。さらに、高レベル放射性廃棄物の最終処分について、「電力の大消費地を始め、国民的な議論をより深めるべき」とも訴えた。専門委員として出席した日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、再処理工場のサプライチェーン維持、MOX燃料利用計画の着実な実施の必要性を指摘。これまでの新規建設に向けた事業環境整備に係る議論も振り返り、次期エネルギー基本計画の検討を行う同調査会基本政策分科会との連携を求めた。〈発言内容は こちら〉
- 18 Oct 2024
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原産協会・増井理事長 新規建設の重要性に言及
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は9月27日、定例の記者会見を行い質疑に応じた。増井理事長はまず、8月20日に行われた総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会における発言内容について紹介。6月の理事長就任後、専門委員として初の出席となった同日の小委員会会合では、国内における原子力発電所の新規建設の重要性をあらためて述べた上で、それに向けて、「資金調達・回収」と「革新炉の規制基準」の面で課題を指摘している。これに関して、記者から、将来の革新炉における規制整備に向け、産業界からの「仕掛け」を図る必要性について問われたのに対し、増井理事長は、原子力規制委員会の意見交換会(事業者の原子力担当によるCNO会議)で、原子力エネルギー協議会(ATENA)との議論が始まっていることを説明。実際、CNO会議では、3月の会合を皮切りに、ATENAが説明を行っており、最近の9月12日の会合では、三菱重工業が開発に取り組む革新軽水炉「SRZ-1200」を例に、「規制の予見性が十分でないと考える事項」に関し論点が提示されるなど、進展がみられている。また、増井理事長は、9月16~20日に開催されたIAEA通常総会に出席したことを説明。ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長、日本政府代表の原子力委員会・上坂充委員長らのスピーチについて紹介したほか、会期中に行われた「日本の最先端の原子力技術」をテーマとする日本ブースの展示に660名が来場し「盛況であった」と評価した。さらに、増井理事長は、IAEA総会に続いて出席したOECD/NEAよる第2回「新しい原子力へのロードマップ」会議における産業界共同声明の発表を紹介。その中で産業界として政府に行動を求めた8つの分野に関し、「資金調達、サプライチェーン、人材育成、規制、などが幅広くカバーされているという印象を持った」との所感を述べた。
- 30 Sep 2024
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原子力マネジメントスクール 15か国が参加
将来のリーダーシップ発揮が期待される国内外の若手人材を対象とした研修コース「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2024」が8月20日、開講した。ブラジル、ブルガリア、エストニア、ガーナ、インド、ヨルダン、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、スロバキア、スロベニア、ベトナムの海外14か国および日本から、32名(うち日本人13名)の研修生が参加。9月6日までの約3週間にわたり、東京大学本郷キャンパスでの座学、テクニカルツアーなどを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。NEMSは、2010年にイタリアで始まり、今回、日本での開催は12回目。ホスト機関の原子力人材育成ネットワーク、東京大学大学院工学系研究科、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会、原子力国際協力センターは、2023年までに海外も含めた計52回の開催で「104か国から2,000人以上が参加した」と、NEMSの実績を評価している。今回、開講式で挨拶に立ったNEMS2024実行委員長の出町和之・東京大学大学院工学系研究科准教授は、NEMSのメリットとして、講義やグループワークを通じ、最新の知見が得られることに加えて、研修生同士の親睦形成も強調。日本開催は2020、21年と、新型コロナの影響により延期・オンライン併用となったが、例年、研修期間は暑さの厳しい時期に当たることを踏まえ、今回も健康管理に留意し楽しく学んでもらうよう期待した。IAEAからはヘレナ・ジヴィツカヤ知識管理専門官らが挨拶に立ち研修生らを歓迎。原産協会の増井秀企理事長は、原子力人材育成ネットワーク運営委員会委員長の立場からも、「原子力エネルギー計画を成功裏に進めるための最も重要な要素」と、人材育成の重要性を述べ、研修生らに対し、「皆のコミットメント、積極的な参加姿勢、学ぶ意欲」が求められていると期待を寄せた。今回もテクニカルツアーで、研修生一行は福島第一原子力発電所他を見学するが、これに関し、NEMS前実行委員長で原子力委員会委員長を務める上坂充氏は「大変重要な機会だ」と述べ、実際に現場を自分の目で見て話し合う意義を強調した。
- 26 Aug 2024
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原産協会・増井理事長が初会見
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は8月1日、就任後初の記者会見を行った。〈就任挨拶は こちら〉増井理事長は、6月18日に行われた同協会2024年度定時社員総会で、前任・新井史朗理事長を引き継ぎ就任した。初会見では、現在、検討が行われている次期エネルギー基本計画について言及。IT需要や脱炭素化の進展に伴う電力需要の増加に備え、エネルギー安定供給の観点から、既存プラントの早期再稼働に加えて、リプレースや新増設の必要性、それらを実現するために必要な事業環境の整備について明記されることを求めた。さらに、国民理解が進むよう注力し、医療・工業・農業などにおける原子力・放射線利用の促進にも努めていく考えを強調。原子力政策に関しては、6月25日の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会において前任・新井理事長(特任フェローとして出席)が発言した4つのポイントとして、既設炉の最大限活用新増設・リプレースを含めた必要容量・時間軸の明記原子力事業者が適切な時期に新規建設の投資判断を可能とするための事業環境整備原子力の価値を広く国民に知ってもらうための官民挙げた理解促進――をあらためて説明した。〈発言内容は こちら〉記者からは、現在渦中にある日本原子力発電敦賀2号機の新規制基準適合性審査に係る質問も多く出された。会見前日の7月31日、原子力規制委員会は、同機について、地質関連の設置基準に照らし「適合しているとは認められない」との審査結果を了承している。増井理事長は、地震の多い日本の現状に触れた上で、8月2日に行われる規制委と同社経営幹部との意見交換に関し、「追加調査を含め対応をしっかり説明して欲しい」と述べた。また、「日本の原子力発電のパイオニア」である同社のGCR、BWR、PWRと多様な炉型開発の実績にも言及。原産協会として、同社は「重要なプレーヤー」との認識をあらためて示した。この他、エネルギー基本計画改定の中で発電コストの議論が始まったところだが、原子力発電については「パフォーマンスの向上」を、今後の新増設・リプレースに向けては日本のサプライチェーン維持・強化の課題を指摘。増井理事長は、就任前、東京電力原子力・立地本部副本部長を務めるなど、原子力発電における基盤強化・安全文化醸成に取り組んできたことから、記者より、柏崎刈羽7号機の再稼働について問われたのに対し、地元地域の信頼を獲得し安全第一に進めて欲しいことを強調した。同機については、現在、新潟県各地で国による説明会が行われている状況だ。
- 02 Aug 2024
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三村会長が「エネ基への新設明記」を 新理事長に増井氏
日本原子力産業協会は6月18日、定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2023年度決算および事業計画、2024年度の事業計画・予算案がそれぞれ承認、報告された。また、理事8名の改選を承認。総会終了後の理事会で、東原敏昭氏(日立製作所会長)が副会長に、増井秀企氏(東京電力原子力・立地本部副本部長)が理事長に就任することが決定された。総会の冒頭、三村明夫会長は、「原子力は優れた安定供給性と経済効率性を有しており、運転コストが低廉・安定な準国産の脱炭素電源であることから、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する、重要なベースロード電源」と強調。現在、検討が進められている次期エネルギー基本計画策定に向けては、「原子力の持続的かつ最大限の活用、ならびに早期の新規建設開始を明記するべき」とした。その上で、「産業界の声」として、既設炉の最大限の活用原子力サプライチェーンの維持・強化新規建設の投資判断を可能とするための事業環境整備国民理解の促進――の4点をあげ、既設炉の活用に関しては、再稼働の他、長期サイクル運転の導入、運転中保全の導入拡大、既設炉の出力向上など、設備利用率の向上に言及。新規建設に向けては、電力の事業予見可能性の著しい低下を懸念し、「投資回収面および資金調達面での課題に対処し、約20年にも及ぶ建設リードタイムを踏まえた適切な時期に事業者が投資判断できる事業環境整備が必要」と訴えた。核燃料サイクル事業をめぐっては現在、六ヶ所再処理工場の年内しゅん工が見込まれ、高レベル放射性廃棄物の地層処分地選定に向けた文献調査が佐賀県玄海町で開始されている。三村会長は、日本原燃の再処理工場・MOX燃料工場について「サイクルの要」との認識をあらためて述べ、しゅん工への取組を着実に進め、バックエンドに関しても「国・原子力発電環境整備機構(NUMO)と密接に連携していく」と、原子力産業界として着実に支えていく姿勢を示した。〈挨拶文は こちら〉来賓として訪れた齋藤健経済産業相は挨拶の中で、日本のエネルギー情勢をめぐり、化石燃料の輸入に伴う国富流出など、昨今の状況から、「戦後最大の難所を迎えている」との危機感を示した上で、エネルギー安定供給とGXの両立を実現するため、「原子力の活用が不可欠」と強調。一方で、「福島第一原子力発電所事故の反省を一時も忘れることなく、高い緊張感を持って安全最優先で万全を期すこと」をあらためて述べた上で、原子力産業界との連携に関し、サプライチェーンの維持・強化、人材育成、国際競争力の強化、事業環境整備などの課題を列挙。5月に開始した次期エネルギー基本計画策定の関連では、将来的な電力需要の増大、それに伴う大規模な脱炭素電源投資の必要性に鑑み、今後、「政府のみならず、電力・産業、金融など、官民の様々なプレイヤーが危機感を共有し、それぞれの役割を果たしていくことが重要」と、訴えかけた。続いて、本田顕子・文部科学政務官が挨拶。研究開発・人づくりを担う立場から、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」や「常陽」の活用とともに、現在、作業部会で検討が進められる「もんじゅ」跡地の試験研究炉設置にも期待を寄せ、産業界による理解・支援を求めた。新任の増井理事長は、19日に就任挨拶を発表。その中で「稼働する原子力発電プラントは12基と、現存する33基の約3分の1にとどまっている」と、原子力発電をめぐる現状を懸念。次期エネルギー基本計画の策定に向け、原産協会として、「IT需要や脱炭素化の進展で増加すると予想される電力需要に応えるため、既存プラントの再稼働はもとより、リプレースや新増設の必要性の明記、そしてそれらを実現するために必要な事業環境の整備について明示してもらうよう求めていきたい」と強調した。
- 19 Jun 2024
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原産協会・新井理事長 エネ基見直しに向け提言
日本原子力産業協会の新井史朗理事長は5月24日、記者会見を行い、「第7次エネルギー基本計画の策定に向けて」と題した理事長メッセージを発表した。エネルギー基本計画の見直しに向けては、5月15日に総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で検討が始まった。現行の同計画は、2021年に策定され、法令に定める3年後の見直し時期を間もなく迎える。関係筋によると、次期計画は年内にも原案がまとまり、年明け2月頃に閣議決定となる見通しだ。新井理事長はまず、「エネルギー政策は、わが国の経済と国民の暮らしの根幹であり、政府には丁寧な検討を期待する」との基本姿勢を強調。現行のエネルギー基本計画が策定された2021年以降を振り返り、「世界の地政学的情勢は大きく変化し、エネルギーの脱炭素化はもとより、エネルギー安全保障における原子力発電への期待は高まった」との認識を示した。また、海外に目を向け、英国での2050年までに最大2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させる計画や、昨年末のCOP28(UAE・ドバイ)での日本を含む25か国による「世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させる」宣言文への支持にも言及。国内においては、「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)による原子力を最大限活用する方針の一方で、電力自由化の進展に伴う様々な課題が指摘されていることをあげた。原子力については、現行計画に記載の「依存度を可能な限り低減する」との表現を見直し、新増設・リプレースの必要性を明記するなど、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略、2023年7月閣議決定)を踏まえ、「原子力の最大限活用の方針」が反映されるよう求めた上で、既設炉の最大限活用原子力サプライチェーンの維持・強化適切な時期に投資判断を可能とするための事業環境整備国民理解(原子力の価値の共有)――について、前向きに検討されることを要望した。その中で、国内でデータセンターや半導体工場の新増設により、増加が見込まれる電力需要を考慮するとともに、安定的に発電できる動力源、つまりベースロード電源としての原子力への期待を踏まえ、原子力の必要容量と時間軸を明記するよう要請。経済成長や産業競争力強化にも貢献する「原子力の価値」を広く国民と共有することについても、丁寧な議論がなされるよう期待した。今後、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会などを通じて、意見を表明していく考えだ。
- 24 May 2024
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トリノG7 原子力産業界が要望
4月28日から30日にかけて、イタリアのトリノでG7気候・エネルギー・環境閣僚会合が開催されているが、28日、同会合に先駆けて行われたイベントにて世界の原子力産業界が共同声明を発表。G7(=先進7か国)各国政府に対し、運転期間延長に最適な条件整備、多国間金融機関への働きかけ、サプライチェーンの発展や原子力研究への投資、原子燃料供給能力などについて果断な行動を取るよう要請した。共同声明は、イタリア原子力協会(AIN)、カナダ原子力協会(CNA)、フランス原子力産業グループ(Gifen)、日本原子力産業協会(JAIF)、米原子力エネルギー協会(NEI)、英原子力産業協会(NIA)、欧州原子力産業協会(nucleareurope)および世界原子力協会(WNA)の各代表によって署名され、イタリアのG.ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障大臣に手交された。フラティン大臣は気候・エネルギー・環境に関するG7閣僚会合の議長を務めている。署名各団体は、「常に安全かつ安心な原子力施設の運営に努め、手頃な価格でクリーンな低炭素電力と熱を供給し、再生可能エネルギーを補完して電力生成におけるネットゼロを達成し、重工業などの脱炭素化が難しい部門の脱炭素化を実現し、経済成長を促進する高品質で長期的な雇用を生み出すことを約束する」としている。また、共同声明は、UAEのドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のグローバル・ストックテイクで、気候変動緩和を支える原子力の役割が全会一致で合意され、COP28期間中に25か国が2050年までに世界全体で原子力発電設備容量を3倍にするという野心的な目標を設定したことに言及。今年3月にベルギーのブリュッセルで開催された原子力エネルギー・サミットではG7の6か国を含む30か国以上が温室効果ガスの排出を削減し、エネルギー安全保障と産業競争力を確保するために、原子力に重要な役割があることを改めて強調したと指摘している。その上で、G7各国政府に対し、COP28で設定された目標を達成するための原子力導入に関する明確な計画を策定するとともに、原子力に対するコミットメントを示し、市場や投資家に明瞭なシグナルを示すよう求めている。各国政府は、既存原子力発電所の最大限活用に加え、新規建設や、新たな原子力技術の開発・実証を加速することで、発電におけるネットゼロを達成するとともに、エネルギー分野以外の産業分野における脱炭素化を支援すべきとして、運転期間延長に最適な条件整備、原子力プロジェクトの資金調達と投資回収のメカニズムに関する投資家への情報提供、多国間金融機関への働きかけ、サプライチェーンの発展や原子力研究、原子燃料供給能力などについて、果断な行動を取るよう求めている。「原子力は世界にとって計り知れない可能性を秘めており、G7は将来にわたって戦略的優先事項として原子力活用を推進するべきである」と声明は結んでいる。
- 30 Apr 2024
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