海外NEWS
14 Aug 2025
277
韓国古里4号機が運転停止 運転期間延長を審査
海外NEWS
14 Aug 2025
351
米テキサス州 次世代AI向けの原子力発電導入で韓国企業と提携
国内NEWS
13 Aug 2025
342
除染土の県外処分 月内にロードマップを策定へ
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13 Aug 2025
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中東欧 BWRX-300の導入で連携
海外NEWS
13 Aug 2025
16649
米国 核融合発電所の土木工事を開始
海外NEWS
12 Aug 2025
455
中国 金七門1号機が着工
国内NEWS
12 Aug 2025
482
全原協 発電所の新設に向け 環境整備などを要望
海外NEWS
12 Aug 2025
397
米製マイクロ炉 英国の審査クリアで前進
韓国水力・原子力(KHNP)は8月6日、古里原子力発電所4号機(PWR、103.3万kWe)を、40年の運転期間の満了に伴い、運転停止した。同機は、1985年8月7日に運転認可を受け、1986年4月29日に営業運転を開始。国内で5番目に営業運転を開始した原子炉である。KHNPは同機を引き続き運転するために、韓国の原子力規制機関である原子力安全委員会(NSSC)の承認審査を受けている。KHNPは2022年9月、NSSCに継続運転安全評価書を提出し、2023年7月、継続運転に関する放射線環境影響評価報告書に対する公聴会プロセスを完了。同年11月に継続運転の運転変更許可を申請した。政府は電力の需要や経済性などを考慮し、原子炉の設計寿命の終了後でも、法制度に基づき10年間追加で運転を継続する方針である。古里4号機の運転停止に先立ち、2023年4月に2号機、2024年9月には3号機がそれぞれ40年の運転認可期限を迎えて運転を停止しており、現在、継続運転のための審査手続き中である。2号機は早ければ今年後半、3号機と4号機は来年中にNSSCにより継続運転が承認される見込みだ。KHNPによると、古里4号機は今回の運転期間満了までに2,059日連続(5サイクル)の無故障運転を達成。米国ニュークレオニクスウィーク誌が発表する「年間稼働率」で世界400基以上の原子力発電プラントのうち何度も1位に輝いている。同機は運転期間中、約2,773億kWhを発電した。古里発電所のイ・サンウク所長は、「継続運転は、安定したエネルギー供給とカーボンニュートラル実現のカギとなる戦略。市民の安全を最優先に、透明で公正な手続きを通じて継続運転を推進する。徹底した安全審査、安全設備の強化、最新装備の改良を通じて、古里4号機はより安全で効率的な発電所に生まれ変わるだろう」と語った。脱原子力政策を進めた文在寅(ムン・ジェイン)前政権は設計寿命に達した原子炉の延長運転を原則的に認めなかった。古里4号機を含めて現在審査中の古里2、3号機も文在寅政権下で運転期間延長の申請が遅れたのが今回の発電中断の原因となっている。原子炉が中断なく稼働するには運転認可期限に達する3、4年前から延長運転のための手続きを始める必要があるが、文在寅政権下では手続きが行われなかった。古里2号機の場合、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領当選直後の2022年4月に継続運転の申請が行われたが、運転認可期限まで1年しかなかった。今年末にはハンビット1号機が40年の運転認可期限を迎え、停止する。今後、1980年代半ばにかけて運転を開始した原子炉が、2029年までに年1~2基停止していく。1978年4月に営業運転を開始した韓国最古の古里1号機(PWR、58.7万kWe)は、設計寿命30年に追加10年の運転期間延長を経て、2017年6月に永久閉鎖された。KHNPは2021年5月に同機の解体申請を提出、今年6月に承認された。8月からタービン建屋内の設備から順次解体作業に着手し、2031年に使用済み燃料を搬出後、放射性系設備の解体を経て2037年に解体を完了、サイトを復旧する計画である。
14 Aug 2025
277
米テキサス州を拠点とするフェルミ・アメリカ(Fermi America)社は7月28日、韓国の現代E&C(現代建設)社と覚書(MOU)を締結。テキサス工科大学(TTU)システム((テキサス州にある州立大学群))との提携によって実施される、次世代AIへ電力供給する民間送電網プロジェクトのうち、原子力コンポーネントの計画・開発において、現代E&C社と協力する。フェルミ・アメリカ社は、次世代人工知能(AI)の実現に不可欠なギガワット(GW=100万kW)規模の電力網の建設を主導する米国のエネルギー開発会社。R. ペリー元米エネルギー省長官・元テキサス州知事が共同創設者に名を連ね、TTUシステムに世界最大の統合エネルギーとAIキャンパス(ドナルド J. トランプ先進エネルギー・インテリジェンス・キャンパス)の建設を加速させている。フェルミ・アメリカ社のT. ノイゲバウアー共同創設者と現代E&C社のイ・ハンウCEOが韓国ソウルで「先進エネルギー・インテリジェンスキャンパス共同開発のための覚書(MOU)」に調印した。本MOUにより両社は、原子力ベースのハイブリッドエネルギープロジェクトの共同計画、プロジェクトフェーズごとに詳細な作業パッケージの開発、フロントエンドエンジニアリング設計(FEED)、および年内の設計、調達、建設(EPC)契約の締結など、プロジェクトのさまざまな分野で協力することとしている。フェルミ・アメリカ社が手がける同プロジェクトは、テキサス州アマリロ郊外の約2,335万m²の敷地に世界最大とされる民間初の電力網キャンパスを建設するもの。大型炉のウェスチングハウス社製AP1000×4基(4GW)、SMR(2GW)、ガス火力複合発電所(4GW)、太陽光発電とバッテリーエネルギー貯蔵システム(1GW)を組み合わせた計11GWの独立電力供給インフラと、この電力に連携される大規模なハイパースケールAIデータセンターを段階的に導入する計画であるという。既存の電力網よりも安定性の高いエネルギーキャンパスとして、次世代AI技術を支える特化システムと位置づけられている。フェルミ・アメリカ社は、現代E&C社が韓国国内で18基の原子炉を建設、アラブ首長国連邦のバラカ原子力発電所で4基の原子炉を手がけた実績を有する他、韓国で2基、ブルガリアで2基の原子炉も現在、建設・設計段階にある点に着目。特に、バラカ・プロジェクトでは、予定より早く、安全かつ予算内で全4基を稼働させたことを評価している。ノイゲバウアー共同創設者は、「現代E&Cチームと提携してAIの未来を支えていく。米国には練習している時間はない。実績あるパートナーと協力することが不可欠。現代E&Cは安全でクリーンな新型原子力を計画・建設してきた成功実績を持っている」と強調した。現代E&C関係者によると、同プロジェクトの初期段階から参加し、多様なエネルギーインフラを活用した世界最大の統合エネルギー・AIキャンパスの造成に貢献できるという点で意義があると指摘。これを重要な出発点として、米国だけでなくグローバル市場でも様々な新エネルギー分野のビジネスチャンスを積極的に確保し、競争力を持続的に強化していくとしている。なおフェルミ・アメリカ社は6月17日、AP1000×4基の建設に向けて、米原子力規制委員会に建設運転一括認可(COL)を申請。同申請は記録的な速さで審査受付されたという。現代E&C社と提携することで、来年にも原子力発電複合施設の建設を開始し、初号機を2032年までに稼働させたい考えだ。
14 Aug 2025
351
ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は7月30日、ハンガリーならびにスロバキアの原子力関係機関とそれぞれ、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kWe)の導入をめぐり協力することで合意した。SGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と50%ずつ出資し、2022年に合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立。OSGE社は国内6地点における合計24基のBWRX-300建設に向けて、許認可手続きの準備を進めている。なおSGE社はGVH社と合意に基づき、欧州地域でのBWRX-300建設においてプロジェクト開発者としての役目を担う。ハンガリーにおける導入計画SGE社はハンガリーのHunatom社(原子力発電に関連する技術・イノベーション強化を目的に設立)と、ハンガリーに最大10基のBWRX-300導入を評価する基本合意書(LOI)に調印した。LOIは、BWRX-300の導入に関連して、必要な技術、インフラ、ファイナンス、法的な側面での共同作業を開始する枠組みを確立するもの。LOI調印式には、ハンガリーのP. シーヤールトー外務貿易相、ポーランドのJ. シュラデフスキー臨時代理大使、米国のR. パラディーノ臨時代理大使が立会った。シーヤールトー相は、「我々は電力需要の増加に直面しているが、我々が自力で維持できる唯一の発電方法は、間違いなく原子力。大型炉をさらに建設することは国土の大きさからして現実的ではなく、SMRは理想的なソリューション。特に工業地域での設置に最適だ」と述べた。ハンガリーでは現在、パクシュ原子力発電所の増設プロジェクト(=パクシュⅡプロジェクトとして5、6号機を増設、各ロシア製VVER-1200、120万kWe)が進められている。パクシュⅡは国際プロジェクトであり、ロシア国営原子力企業ロスアトム、仏アラベル・ソリューションズ社のほか多くの西側サプライヤーと提携して実施。今年6月、米政府が同プロジェクトに対する制裁を解除し、建設プロジェクトに弾みが出ると期待されている。スロバキアにおける導入計画SGE社は、スロバキアの大手電力会社のスロバキア電力(SE)社とBWRX-300の導入プロジェクトで協力を模索するMOUを締結した。スロバキアおよびその他の欧州諸国(特にチェコと英国)におけるSMRプロジェクトに係わる投資、許認可手続き、共同開発の可能性を検討する。合弁事業の設立、資金調達の構築、地域サプライチェーンの開発のほか、データセンターなどのデジタルインフラへの活用も視野にいれている。SE社のB. ストリチェクCEOは、「SGE社とのパートナーシップにより、最先端のBWRX-300を詳細に分析し、スロバキアにおける導入可能性を適切に評価できるようになる。原子力発電所の建設・運転で培った当社の長年のノウハウを活かして、地域のSMR開発を支援していきたい」と語った。なおスロバキアは現在、米国と原子力分野における協力に関する政府間協定の締結の準備を進めており、D. サコヴァ副首相兼経済相はこのほど、欧州委員会(EC)が同協定について了承したと明らかにした。EU加盟国ではない国との政府間協定はEU機関による事前承認や審査を受けなければならない。R. フィツォ首相は自身のソーシャルメディアで、同協定の締結を契機に、ボフニチェ原子力発電所の新設に米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する計画について言及している。
13 Aug 2025
405
米ワシントン州に拠点を置く核融合エネルギー企業のヘリオン(Helion)社は7月30日、核融合発電所「オリオン」(Orion)の土木工事を開始した。建設地は、送電インフラへのアクセスの良さや、エネルギー技術革新の歴史を持つワシントン州シュラン郡。2028年までに少なくとも5万kWeの発電能力をもつ核融合発電所の稼働を計画している。大手IT企業のマイクロソフト社は2023年5月、自社のデータセンター向けに、世界初となる核融合発電による電力購入契約(PPA)をヘリオン社と締結。同契約では2028年までに電力供給を開始し、米電力大手のコンステレーション社が電力の販売を担当、送電を管理するという。ヘリオン社のD. カートリー共同創業者兼CEOは、「今日は、当社だけでなく核融合業界全体にとっても重要な日。創立以来、核融合技術を商業化し、電力網に供給することに専念してきた。今回の工事の開始により、そのビジョンに一歩近づいた」と述べた。マイクロソフト社のM.ナカガワ最高サステナビリティ責任者(CSO)兼バイスプレジデント(CVP)は「核融合は、世界が追い求めるクリーンで豊富なエネルギーの新たなフロンティア。商業用核融合に至る道のりは未だ発展途上だが、持続可能なエネルギーへの投資の一環としてヘリオン社の先駆的な取組みを支援していく」と語った。ヘリオン社は、シュラン郡公共事業区(PUD)から土地を借りて、同郡マラガで建設を開始した。このプロジェクトは、州の環境影響評価制度(SEPA)から「重要な影響なし」との評価を得て進められている。2023年以降、同社は州および地域の政府機関、市民らを含むステークホルダーと積極的に対話を重ねてきた。今後も、商業用核融合発電所の建設と運転に向けた許認可手続きを継続するとしている。ヘリオン社は、「迅速な反復とテスト」によるアプローチにより、商業用核融合装置の開発を進めている。第6世代プロトタイプ「トレンタ」(Trenta)は2021年、民間企業として初めて核融合発電に必要とされるプラズマ温度 1億℃の達成に成功した。第7世代プロトタイプ「ポラリス」(Polaris)は初期運転を2024年に開始。世界初となる核融合発電を実証する計画である。またヘリオン社は2023年9月、北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(Nucor)社と脱炭素化の加速を目的に、同社の製鉄所施設に50万kWeの核融合発電所を導入する契約も締結している。なお最新の資金調達ラウンドにより、ヘリオン社への投資総額は10億ドルを超えている。大口投資家には生成人工知能(AI)ChatGPTを手がける米オープンAI社のS. アルトマンCEOがいる。ヘリオン社は、磁場反転配位(Field-Reversed Configuration:FRC)型核融合を採用し、燃料には重水素とヘリウム-3を使用。装置の両端でドーナツ状のプラズマパルスを生成。プラズマを圧縮しながら加速器を用いて装置の中央部で衝突、核融合を非連続的に発生させ、その頻度を高めて取り出すエネルギーを増やす。プラズマ中の電子や荷電粒子が電磁誘導でコイルに電流を発生させ、電力として利用する仕組みだという。
13 Aug 2025
16649
中国の浙江省寧波市で8月10日、中国核工業集団公司(CNNC)の金七門(Jinqimen)第Ⅰ原子力発電所の1号機(120万kWe)が着工した。これに先立ち、国家核安全局(NNSA)が8月5日、同発電所1、2号機の建設許可を発給した。2024年2月には、同発電所の起工式を開催している。2023年12月、国務院常務会議は同発電所の1、2号機の建設計画を承認した。同発電所では、中国が独自開発した第3世代PWR「華龍一号」(HPR1000)を採用。同サイトではこの1、2号機を含め、計6基の「華龍一号」を建設予定である。浙江省ではCNNCの秦山、方家山、三門の各原子力発電所が運転中である。CNNCによると、金七門サイトの全6基が稼働すると合計設備容量は約720万kWとなり、年間550億kWhを発電、これは2024年の寧波市全体の電力消費量の半分に相当し、年間約4,500万トンのCO2削減に相当するという。1号機の運転開始は2028年末頃を見込む。CNNC傘下のCNNC浙江エナジー社が開発、建設を担当する。
12 Aug 2025
455
米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は7月29日、自社が開発するマイクロ炉「PWR-20」(2万kWe)が英国で予備設計審査(Preliminary Design Review:PDR)を完了したことを明らかにした。同社は英国の南ウェールズに同機を4基導入する計画であり、原子力サイト許可(NSL)の正式手続き入りをし、PDRを完了した初のマイクロ炉開発企業となった。PDRは、英原子力規制庁(ONR)、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)が実施。1年以上にわたる事前協議を経て、2025年2月から6月までの5か月間に実施された。PDRは、規制当局の期待に対して潜在的に重大なギャップを特定し、それらのギャップを解決するアドバイスの提供によって、申請者がNSLと環境許可に至るまでの手続きにおいてプロジェクトのリスクをより深く理解できるようにすることを目的としている。今回、組織計画と体制、環境および廃炉計画、安全性分析のプロセスと成熟度の3点からの評価に加え、PWR-20の「完全受動型で、事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)」も評価。ラスト・エナジー社はPDRの完了により、次段階の設計、安全性、セキュリティ、環境面での規制評価に向けて、個別に対応された規制ガイダンスを得たとの認識だ。なお同社は、包括的設計審査(GDA)を完了せずに、NSLと環境許可を直接申請する意向を示していた。ラスト・エナジーUK社のM. ジェナーCEOは、「原子力の大規模導入は、脱炭素化と英国全体の経済成長に不可欠。PDRの完了は、効率的な許認可プロセスの実施に必要な指針を与えるもので、英国初となる商用マイクロ炉を実現する準備が整った」と述べた。規制当局は、ラスト・エナジー社が掲げる「2027年12月までにNSLを取得する」という目標について、PDRで合意された基準とスケジュールに沿って、同社が申請を進めることを条件に達成可能としている。2024年10月、ラスト・エナジー社は、ウェールズ南東部のブリッジエンドにあるスリンビ(Llynfi)石炭火力発電所の跡地にマイクロ炉×4基を建設する計画を発表した。同月には用地を取得、同年12月には米輸出入銀行(US EXIM)から南ウェールズでの建設プロジェクト向けに、1.037億ドルを融資する意向表明書(LOI)を取得した(最終承認待ち)。今年1月にはNSLの正式手続き入りをし、英送配電網運営会社(NGED)から2.2万kWの電力供給の接続枠を獲得している。ラスト・エナジー社は、2019年に米国の研究機関であるエナジー・インパクト・センター(Energy Impact Center)からスピンオフした企業で、従来の原子力発電所建設プロジェクトが抱える時間面・コスト面の課題を解決することを目指している。同社の開発したマイクロ炉「PWR-20」は、加圧水型炉がベース。大量生産を前提としたモデルで、数十のモジュールから構成されており、工場での製造、輸送、サイトでの組立てを24か月以内に完了できるという。
12 Aug 2025
397
経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)はこのほど、小型モジュール炉(SMR)の世界的な開発・導入状況を体系的に評価した「NEA SMRダッシュボード」の最新版(第3版)を発表した。許認可、立地、資金調達、サプライチェーン、関係者とのエンゲージメント、燃料供給の6分野にわたる準備状況を詳細に分析し、世界各地で進むSMRプロジェクトの実証・商業化に向けた取り組みを紹介している。今回のダッシュボードでは、NEAが特定したSMR計127炉型のうち、公開情報が十分にあり評価可能とされた74炉型について分析を実施。そのうち7炉型はすでに運転中または建設段階にあり、また51炉型が事前許認可または許認可プロセスに関与している。評価にはNEAが独自に構築したSMRデータベースが活用されており、2025年2月14日時点の最新情報が反映された。なお、第3版では日本に関して、日本原子力研究開発機構(JAEA)、Blossom Energy社、東芝エネルギーシステムズ社がそれぞれ開発するSMR6炉型が紹介されている。SMRへの関心は、気候変動対策とエネルギー・セキュリティの両立をめざすなかで、世界的に高まっている。地域別に見ると、北米に本拠を置くデベロッパーが最も多く、欧州、アジア(OECD加盟国)、中国、ロシア、アフリカ、南米、中東と続く。評価対象となったSMRには、概念段階にあるものから初号機(FOAK)の実証に向けた準備が進むものまで、技術的成熟度にばらつきが見られるが、全体として拡大傾向にある。ファイナンス面でも動きが加速している。NEAによると、2024年版のダッシュボードと比較して、今回資金調達の発表が確認されたSMRは81%増加。NEAは、SMRに対する世界全体での資金流入を約154億ドルと試算しており、そのうち約54億ドルが民間からの出資と見ている。政府の補助金やマッチングファンドに加え、米国を中心に民間投資が存在感を高めているという。具体的には、グーグル、アマゾン、メタ、ダウ・ケミカルなどの米大手グローバル企業が、自社の環境目標に沿ったエネルギー需要を満たすために、積極的に投資している。また、SMRプロジェクトの立地候補地の大半が政府機関または公益事業体の所有サイトである一方で、近年では民間所有サイトも増加傾向にある。需要地近くでの建設や、廃止された(あるいは廃止予定の)石炭火力発電所サイトでの導入検討も進んでいる。事業モデルも従来の電力会社中心の枠組みから、建設・所有・運転(BOO)モデル、電力購入契約(PPA)など柔軟な形態へと多様化している。一方、NEAは技術面において、燃料供給の整備が依然として課題と指摘。SMR設計の多くは、現在商業レベルで利用できないHALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を必要としており、燃料形態の多様化も進んでいる。酸化ウランセラミック燃料が最も一般的だが、TRISO燃料(HALEU燃料を黒鉛やセラミックスで3重に被覆した粒子型燃料)や金属燃料、熔融塩燃料など、従来炉とは異なる技術も広く採用されつつある。これら新型燃料の商業規模の生産施設はないことから、NEAは新たなインフラ整備が不可欠としている。NEAは2025年中に、ダッシュボードのオンライン版「SMRデジタルダッシュボード」を立ち上げる予定で、SMRに関する情報をリアルタイムで把握できるプラットフォームを提供する。このインタラクティブなツールは、関係者がSMRの世界的な進展状況を即座に把握できるよう設計されており、NEAは今後の政策立案や事業戦略にとって重要な判断材料を提供していく考えだ。
12 Aug 2025
578
アラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)は、エネルギー安全保障と持続可能性の強化を目的に、原子力発電の迅速な供給体制の構築に向け、国内外での投資、協力、展開の機会の拡大に注力している。こうした中、同社は、韓国ならびに米国の企業と相次いで覚書(MOU)を締結。UAEの総電力需要の25%を供給するバラカ原子力発電所(韓国製APR1400×4基)の建設・運転で得た知見を活用し、原子力をクリーンエネルギー戦略に取り込もうとする各国・企業への支援、協力体制を強化している。韓・現代E&C、サムスンC&TとMOUを締結ENEC社は7月28日、韓国の現代E&C(現代建設)社とグローバルな原子力事業における協力機会の模索を目的とした戦略的覚書(MOU)を締結した。現代E&C社はバラカ発電所の建設の主要請負業者で、同建設プロジェクトにおいて、独自のリスク管理と建設能力を実証済み。本MOU締結により、知見の共有、プロジェクト参加の共同評価、戦略的投資機会の評価を実施するほか、相互の関心分野を特定し、共同作業部会を設置。両国が原子力を含むエネルギー分野での将来の協力へのコミットメントを深める中、現代E&C社はバラカ・プロジェクトで培った信頼と経験を基盤に、戦略的パートナーとしての協力を拡大する計画だ。翌29日には、ENEC社はサムスンC&T社(サムスン物産)とも、グローバル市場における原子力関連プロジェクトの共同開発を模索するMOUを締結。協力範囲は、米国における新設、運転再開、原子力インフラ関連の合併・買収(M&A)活動、原子力機器サプライヤーなどへの投資の検討が含まれている。さらに、小型モジュール炉(SMR)の共同開発と投資計画、原子力による水素製造の機会の評価、ルーマニアにおける原子力発電所の開発と資金調達に関する共同評価などが挙げられている。両社は、大型炉とSMR分野で築いてきた先進技術とグローバルネットワークを融合し、相乗効果をめざす。なお、サムスンC&T社は、2025年4月にルーマニアにおけるチェルナボーダ原子力発電所1号機(CANDU炉、70.6万kWe)の改修契約を獲得したほか、同国南部のドイチェシュティ(Doicesti)における米ニュースケール社製のSMR建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)にも共同参画している。スウェーデンとエストニアにおいてもSMRプロジェクトに取り組んでいるところだ。米ウェスチングハウス社とMOUを締結ENEC社は米ウェスチングハウス(WE)社と7月25日、米国における高度な原子力技術の展開検討に向けたMOUを締結した。米政府はAIやテクノロジー分野の拡大などに伴う電力需要の増加に対応するため、2030年までに10基の大型炉の建設開始、2050年までに米国の原子力発電能力を4倍に拡大するという目標を掲げている。両社は、WE社のAP1000の展開加速を含む、米国の新規建設と再開プロジェクト、燃料サプライチェーンの協力、バラカ発電所へのWE社の運転・保守の支援拡大の可能性などについて検討していくことで合意した。GVH社との連携、ENECの戦略推進なおENEC社は今年5月、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と、GVH社製のSMRであるBWRX-300の国際展開に向けて、包括的なロードマップの評価・策定で協力するMOUを締結している。同MOUは、ENEC社が次世代原子力技術の評価と潜在的な展開加速を目的に創設したADVANCEプログラムの一環。ENEC社は今回の一連のMOU締結により、国際的な原子力パートナーシップにおける役割を拡大し、原子力の成長を加速、世界の電力需要の高まりに応える戦略を推進したい考えだ。
07 Aug 2025
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ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下の鉱山化学コンビナート(MCC)において、7月25日、使用済み燃料の再処理を行う実験実証センター(PDC)の第2フェーズの施設が稼働を開始した。MCCは、クラスノヤルスク地方の閉鎖都市ジェレズノゴルスクに所在。冷戦時代は兵器級プルトニウム生産炉(全3基、閉鎖済み)が稼働し、使用済み燃料はすべてサイト内の放射化学プラントで再処理された。PDCでは、高レベルおよび中レベル放射性廃棄物の量を大幅に削減する第3世代+(プラス)の革新的技術を用い、VVER-1000の使用済み燃料を再処理する計画であり、将来的には高濃縮度燃料や高速炉の燃料など、その範囲を拡大していく方針である。PDCでは2015年に第1フェーズが完成。分析用ラボを備えた一連の研究用ホットセルで構成され、使用済み燃料の再処理技術と放射性廃棄物の取扱い方法の検証が実施された。今回稼働を開始した第2フェーズの施設は、第1フェーズの実験規模とは異なり、産業規模。使用済み燃料の再処理に加えて、MCCに建設予定の大規模な再処理工場(RT-2)を設計するためのデータ収集や設備の検証を実施する。第2フェーズは2024年11月に完成。技術開発と設計パラメータの達成により、世界初となる液体放射性廃棄物を発生しない再処理施設となることが期待されている。ロスアトムのA. リハチョフ総裁は、「第2フェーズの稼働により、天然ウランの使用を大幅に削減し、使用済み燃料の再処理によって得られる資源の再利用によって、産業規模のクローズド・燃料サイクルを実現する」と強調した。なおMCCでは、ベロヤルスク原子力発電所4号機(高速炉BN-800)用のMOX燃料(混合酸化物燃料)を製造。再処理で生成されるプルトニウムの蓄積を減らすために原子炉で利用される。またリハチョフ総裁は、第2フェーズの施設が設計通りの能力に達すれば、年間約200トンの使用済み燃料を再処理できると言及。チェリャビンスク州にある生産合同「マヤク」(再処理工場RT-1が1977年より操業中)と新たに計画している生産施設を考慮すると、今後15年以内に第4世代エネルギーシステム((安全性の向上、放射性廃棄物の削減、資源の有効利用、経済性向上を通じ、原子力発電所のライフサイクル全体を通じてより高い持続可能性を確保するシステム))の立ち上げが確実になるとの見通しを示した。なお、MCCの閉鎖原子炉の跡地で、放射性毒性の高い物質であるマイナーアクチノイド(MA)の最終処分の実証を目的に、研究用熔融塩炉の建設が予定されている。今年7月に設計の第一段階が完了。主要な技術的な方針に関する資料はすでに整い、次の段階では、炉本体と燃料準備施設の技術設計、さらに設計と予算に関する書類一式の作成が行われる。設計作業は2027年まで継続され、並行して、設計文書に反映される技術的方針を裏付けるための研究開発も進める。炉の運転開始後も、技術の実用化や規模拡張に向けた研究を継続するという。
06 Aug 2025
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米原子力規制委員会(NRC)は7月24日、パリセード原子力発電所に対する広範な技術審査を完了し、同発電所の運転再開に係る主要な許認可および規制措置を承認した。米国で閉鎖された原子力発電所が運転再開の承認を得るのは初。NRCの承認を受け、ホルテック・インターナショナル社のK. トライス社長は、「これは私たちのチーム、ミシガン州、そして米国にとって歴史的な瞬間。米国の原子力エネルギーにおける前例のないマイルストーンだ。当社は、今後数十年にわたって地元の雇用と経済成長を支援しながら、安全、確実に、米国のエネルギーの未来をサポートするためにパリセードの運転を再開する」と述べた。NRCは同社宛ての7月24日付の書簡で、正式に承認を通知。NRCは、予定通りに完了した技術審査に基づき、発電所および使用済燃料貯蔵施設の運転認可を、ホルテック・デコミッショニング・インターナショナル(Holtec Decommissioning International LLC)社からパリセード・エナジー社(Palisades Energy LLC)に移転することを承認。また、ホルテック社の申請により、停止前に運用されていた、技術仕様書や緊急時対応計画、品質保証プログラム、保守プログラムなどの各種文書やプログラムの復活も認められた。2025年5月、NRCは発電所の運転再開による重大な環境影響は発生しないと結論付けている。今回の承認が有効となり、発電運転体制(power operations licensing basis)に正式に移行するのは、ホルテック社の提案した2025年8月25日。これ以後、ホルテック社は燃料装荷が可能となるが、実際の運転再開のためには、まだ複数の許認可手続きがNRCで審査中であり、さらに幾つかの要件を満たす必要があるという。なお、発電所の運転は、当初の運転認可(2031年3月24日期限)の下で行われ、送電開始を今年末までに見込んでいる。パリセード発電所(PWR、85.7万kWe)は1971年に営業運転を開始。2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月に同発電所は所有者・運転者だったエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を運転再開する方針に転換。2023年9月、NRCに運転認可の再交付を申請していた。現在、安全で信頼性の高い発電事業再開を保証するために、NRCの監督下で厳格なテスト、検査、メンテナンスなど、タイムリーな運転再開に向けて広範な準備作業が進行中である。このほど運転、保守、化学、放射線防護、工学の全5分野の訓練プログラムが、米国原子力発電運転協会(INPO)から完全認定された。INPOの認定は、運転再開の前提条件であり、NRCや世界原子力発電事業者協会(WANO)も評価に関与する厳格なプロセス。米ウェスチングハウス社の主導により、新訓練組織のNEXA(Nuclear Excellence Academy)が設立され、18か月間の訓練を通じて運転再開に必要なすべてのタスクに応じて正式に訓練された社内のスタッフを揃えた。
05 Aug 2025
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米エネルギー省(DOE)は7月24日、人工知能(AI)データセンターおよびエネルギーインフラ開発に向けたDOEサイトを選定したことを明らかにした。エネルギーコストを削減する、信頼性の高いエネルギー技術の革新を促進し、AI分野における米国のリーダーシップと国家安全保障の強化を目指す。これは、7月23日の大統領令「データセンターインフラ整備の迅速化」のほか、「国家安全保障強化のための先進原子炉技術の導入」、「米国のエネルギー解放」に基づき、DOEサイトを活用したAIインフラ開発を加速する措置の一環。DOEは以下の4サイトを選定。大規模なデータセンター、新たな発電設備、その他の必要なインフラに最適な拠点であると指摘する。最先端のAIデータセンターおよびエネルギー発電プロジェクトを展開すべく、民間企業との連携を進める方針である。アイダホ国立研究所オークリッジ保護区(テネシー州)パデューカ・ガス拡散プラント(ケンタッキー州)サバンナリバー・サイト(サウスカロライナ州)DOEのC. ライト長官は、「DOEの土地資産を活用してAIとエネルギーインフラを展開することで、次なる『マンハッタン計画』を加速させ、米国がAIとエネルギーの分野で世界をリードする体制を築く」と語った。DOEは2025年末までに一部のDOEサイトでAIインフラの建設を開始し、2027年末までに運用を開始することを目標としている。今年4月にDOEは、情報提供要請(RFI)を実施、産学からDOEサイトへのAIインフラの確立について意見や提案を募っており、すでに多くの関心を集めていた。DOEは、州政府、地方自治体などと協議の上、データセンター事業者、エネルギー企業、一般市民と連携してこの重要な取組みをさらに推進していく計画。各サイトごとのプロジェクトの公募が数か月以内に開始される予定であり、DOEは今後、さらなる公募を実施する可能性のある追加拠点の検討も進めているという。
05 Aug 2025
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米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社はこのほど、2件の新たなパートナーシップを発表した。同社が開発中のマイクロ炉「オーロラ」発電所の商業展開を実現し、クリーンな電力で次世代データセンターや工場での大規模な電力需要に応えていくという。オクロ社は7月22日、デジタルインフラ向けの冷却システムを開発するヴァーティブ(Vertiv)社と、オーロラ発電所からの蒸気と電力を用いて、大規模データセンターと発電設備を併設したコロケーションに特化した、エネルギー効率の高い電力と冷却ソリューションを共同開発する提携契約を締結したことを明らかにした。オーロラ発電所の基本設計は変更せずに、原子炉から発生する熱をヴァーティブ社の得意とする冷却システムに利用。エネルギー効率を大幅に向上させ、このパイロット技術のオーロラ発電所初号機での実証を計画している。米国で急増する電力需要に対応するため、両社は電力と冷却を統合的に最適化することで、データセンターの運用の革新を目指す。加えて、オクロ社は7月23日、革新的なエネルギーサービスと技術を提供する、リバティ・エナジー(Liberty Energy)社と、データセンター、工業施設、公共事業規模のサイトなどの大規模かつ高需要の顧客を対象とした、段階的かつ統合型の電力ソリューションの導入を加速する戦略的提携について発表した。初期段階では、リバティ社の天然ガス発電と負荷管理ソリューションにより、即時に、信頼性ある電力を供給し、柔軟なエネルギーサービスを実現。最適化とレジリエンスの向上を目指したグリッド管理サービスも行う。オーロラ発電所が稼働すれば、クリーンで持続的なベースロード電源として、リバティ社の天然ガス発電を補完するという。オクロ社のJ. デウィットCEOは、「発電・バックアップ・グリッド管理・最適化をすべて単一のプロバイダーで完結するもの」と、提携の意義を強調した。リバティ社は、2023年にオクロ社に1,000万ドルを出資した初期の投資家。数ある先進的原子力企業から、オクロ社を選定した。オーロラは、高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。オクロ社は、2027年末までに米アイダホ国立研究所(INL)サイト内でオーロラ発電所初号機の導入を目標に、米原子力規制委員会(NRC)との間で許認可申請前活動を実施。7月17日には、建設運転一括認可(COL)フェーズ1に関する事前審査を完了したと発表。NRCによる評価では、オクロ社のCOL申請の受理を妨げるような重大な不備は見つからず、今後の申請の最終化に向けて有益な観察・助言も示され、効率的かつ効果的な審査を促す一助になったと評価。このNRCによる事前審査の完了は、規制プロセスを近代化し、先進原子炉のタイムリーな展開を可能にするというADVANCE法と最近の関連する大統領令によって強化されたNRCの広範な取組みを反映したものと捉えている。オクロ社は年内にCOLの申請を予定している。なおオクロ社は最近、INLサイトでのオーロラ発電所の筆頭建設業者として、キウィット ニュークリア ソリューションズ社(Kiewit Nuclear Solutions)を選定。同社は北米最大級の建設・エンジニアリング企業キウィット社の子会社。大規模な産業・インフラプロジェクトでの豊富な実績と経験を活かし、オーロラ発電所の設計、調達、建設を支援するという。建設準備を年内に開始し、2027年後半から2028年初めの運開を見込んでいる。
04 Aug 2025
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林芳正内閣官房長官は8月10日、就任後初めて福島第一原子力発電所や中間貯蔵施設を訪問し、廃炉に向けた取り組みを視察した。東京電力の小早川智明社長らとの意見交換会も実施し、「安全かつ着実な廃炉、福島の復興は政権の最重要課題。安全確保を最優先し、廃炉作業を一歩一歩進めてほしい」と発言した。その後、記者団の取材に対し、福島県に残る除染土の県外処分に向けたロードマップ(工程表)を、今月中に策定すると明らかにした。このロードマップには今後5年間で取り組むべき課題が盛り込まれ、候補地選定条件の具体化に入る方針だ。その上で「県外での最終処分に向けては、最終処分場の構造や必要な面積などをまとめた複数の選択肢を示しており、候補地の選定を進めたい。国民への理解醸成が特に重要で、政府を挙げて積極的な情報発信に取り組んでいく」と述べた。これらの除染土は、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で一時的に保管されているが、2045年3月までに福島県外にて最終処分することが法律で定められている。政府はこの最終処分量を減らすために、放射性物質の濃度が低い土を、全国の公共工事の盛り土などに用いて再生利用する方針だ。その除染土処分の第一歩として政府は、総理大臣官邸にて除染土を再生利用することをすでに発表している。7月19日~20日にかけて、中間貯蔵施設から除染土を積んだ10トントラックが官邸に到着し、前庭にて、除染土の上から普通の土をかぶせ、表面に芝生を張る作業を実施した。除染土事業を管轄している環境省は今後、1週間に1回程度、放射線量を測定し、ホームページなどで情報を発信する方針。官邸での再生利用をきっかけに除染土への理解醸成につなげる狙いがある。
13 Aug 2025
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原子力発電所の立地自治体などでつくる全国原子力発電所所在市町村協議会の首長らは8月8日、経済産業省を訪れ、原子力発電所の新設に向けた安全規制や資金調達に関する環境整備などについて、武藤容治経済産業大臣と会談し、要請書(原子力発電に関する要請書)を手渡した。要請書の冒頭には、「今年策定された第7次エネルギー基本計画で『原子力を最大限活用する』と明確に示されたことは、立地自治体にとっても大きな意義があると受け止め、安全確保を大前提に、計画に示された施策の着実な実行を求める」の一文が記載された。そして、同協議会の会員の総意に基づき、次の4点を重点項目として強く要請するとしている。福島の復興について被災地支援の継続や財源確保は国の責務であると強調した上で、燃料デブリの取り出し、多核種除去設備等処理水対策や廃炉作業を着実に推進すること。安全規制・防災対策について2024年1月の能登半島地震の被害状況を鑑み、インフラの整備・強靭化は立地自治体における喫緊の課題であり、原子力防災対策の実効性向上と財源確保、自衛隊との連携を含む安全確保体制を強化すること。原子力政策についてエネルギーの安定供給と2050年カーボンニュートラル達成に向けた原子力利用の着実な推進、原子燃料サイクルの早期具体化、バックエンド対策の加速、国民理解の促進を継続すること。立地地域対策について原子力発電の意義を理解し、協力してきた立地地域の持続的かつ自立的発展のため、地域の実情に応じて制度を改善もしくは拡充をすること。なお、面会の冒頭、同協議会の会長を務める福井県敦賀市の米沢光治市長は、関西電力が美浜発電所にて地質調査を開始したことについて触れ、「建設期間を考えると速やかに具体化していかなければならない」と事業者へのさらなる支援を求めた。これを受けて、武藤容治経済産業大臣は、「次世代革新炉への建て替えに向けた研究開発やサプライチェーンなどの事業環境整備に取り組む」と発言したほか、「地域産業や雇用の維持発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り具体化を進めていく」と国として全面的にサポートする姿勢を強調した。
12 Aug 2025
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自然科学研究機構核融合科学研究所(NIFS)と量子科学技術研究開発機構(QST)六ヶ所フュージョンエネルギー研究所は7月27日、共同で調達した新スーパーコンピュータシステム(以下:スパコン)を一般公開した。NIFSとQSTのそれぞれが保有していたスパコンを統合し、共同で調達することで、より高性能な機器の導入が実現。同スパコンは、1秒間に4京400兆回の計算が可能だ。設置場所は、QSTの六ヶ所フュージョンエネルギー研究所で、7月1日からすでに運用を開始している。NIFSとQSTが共同で運用する。同スパコンはNEC製で、計算能力は従来機の2.7倍。昨年12月13日の受注発表時に公開した受注額は、同社として過去最高の45億円。今後、核融合エネルギーの実現に向けたさまざまな研究に活用される予定だ。具体的には、国際プロジェクトの核融合実験炉「ITER」や、日本のトカマク型装置「JT-60SA」の実験予測、運転シナリオの作成に役立てられる。また、計算速度の大幅な向上により、核融合プラズマなどの複雑な現象をシミュレーションできるようになり、想定実験でのリアルタイム制御への応用も期待されている。また、同スパコンは、国内の大学や研究機関でも遠隔で利用可能で、核融合に関連した天体研究などにも活用されるという。
07 Aug 2025
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内閣府は、8月5日に開催した原子力委員会の定例会議にて、日本が2024年末時点で国内外に保有するプルトニウムの総量が約44.4トンであることを明らかにした。内訳は、国内の保管量がおよそ8.6トン、海外での保管量がおよそ35.8トン(英国に約21.7トン、フランスに約14.1トン)であった。2023年末時点の総量は約44.5トンであったため、わずかながらに減少した。減少は4年連続。海外に保管中のプルトニウムとは、国外(英仏)に再処理を委託しているが、まだ日本国内に返還されていないものを指す。これらは原則として、海外でMOX燃料に加工され、国内の発電プラントで利用されることになっている。日本政府は、プルトニウム利用の透明性の向上を図り、国内外の理解を得ることが重要であることから、国際原子力機関(IAEA)の管理指針(プルトニウム国際管理指針)に基づき、国内外において使用及び保管している未照射分離プルトニウムの管理状況を、1994年から毎年公表するとともに、IAEAに提出している。プルトニウムの削減が進まなかった理由として原子力委員会は、2024年は、日本がイギリスとフランスに委託してきた使用済み燃料の再処理が行われず、プルトニウムの回収がなかったことや、MOX燃料の装荷実績がある関西電力高浜発電所3・4号機(PWR、87.0万kWe×2)、四国電力伊方発電所3号機(PWR、89.0万kWe)にて、昨年、新たなMOX燃料が装荷されなかった影響だとしている。
06 Aug 2025
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2025年7月30日から8月6日にかけ、マレーシアのバンギで開催された「第2回国際原子力科学オリンピック(INSO)」において、日本代表の高校生4名が全員メダルを獲得する快挙を成し遂げた。金メダルを獲得したのは東海高等学校3年の田中優之介さん。さらに、筑波大学附属駒場高等学校3年の田部主真さんと武蔵高等学校3年の堀航士朗さんが銀メダルを、大阪府立北野高等学校2年の佐々木柚榎さんが銅メダルをそれぞれ獲得した。また、特別賞として、田部さんが実験試験最高得点賞を受賞し、佐々木さんは最優秀女性選手賞に輝いた。これらの代表選手は、文部科学省の事業として整備が進められている「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)」が提供するe-learningを通じて、INSOの7つの出題項目を日本語の動画で学び、その後2025年4月に実施された国内選抜会(日本語による遠隔試験)を経て選出された精鋭。選抜後には、専門用語に関する英語訓練を含む集中トレーニングを経て本大会へ参加している。本大会には、日本チーム出場支援委員会の代表として東京大学の飯本武志先生をはじめ、日本代表団のリーダーとして、京都大学の角山雄一先生と日本原子力研究開発機構の佐藤大樹先生が同行。リーダーたちは、現地で深夜におよぶ問題検討や設問の日本語訳、さらには採点作業(採点をめぐる各国間でのタフな交渉も含む)などを精力的に行った。日本代表団は、受賞の興奮も冷めやらぬまま、本日帰国する。国際原子力科学オリンピック(INSO)とは、国際原子力機関(IAEA)がアジア太平洋地域の20歳未満の学生を対象に企画した国際競技である。原子力科学技術は発電以外にも医療や農業、犯罪捜査、文化財保護など幅広い分野で活用されており、国連が提唱するSDGsの目標達成にも深く関わっている。INSOでは参加者が理論試験と実験試験を通じて高度な知識や技術を競い、原子力科学の可能性を深く考察し、「原子力科学技術の平和利用に対する認識を高めること」を目的としている。
06 Aug 2025
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クリアランス事業の運営管理を手掛ける新会社「福井県原子力リサイクルビジネス準備株式会社」が8月1日、福井県敦賀市で設立された。同社には、福井県や嶺南6市町、関西電力、日本原電、福井銀行、敦賀信用金庫、小浜信用金庫らが総額20億円を出資。代表取締役社長には来馬克美氏が就任した。原子力発電所の解体等に伴って発生した廃棄物の中で、放射能レベルが極めて低い金属(クリアランス金属)のリサイクルビジネスの確立が主たる目的で、これら廃棄物を活用するクリアランス制度の理解促進を図る狙いもある。福井県ではすでに同制度の理解促進活動が活発に行われ、これらクリアランス製品を公共施設に設置する活動(福井大学内のベンチ、若狭サイクリングルートのサイクルラック、福井南高校の防犯灯など)を行ってきた。これらの活動は、原子力や再エネ事業を活用し、嶺南地域経済の活性化を図る嶺南Eコースト計画(2020年に県が策定)の一部に位置づけられ、経済産業省の委託事業等を活用しながら、原子力発電所外でのクリアランス製品の活用を今後も進めていく。同社は、敦賀半島を候補地にクリアランス金属の集中処理施設を建設し、回収した金属を処理して一般用金属として販売する予定だ。国内でクリアランス金属のリサイクルを専門に行う会社は他にない。今後、集中処理施設の詳細設計や地質調査を行い、2027年頃には原子力規制委員会に事業許可を申請し、2030年代初めの操業開始を目指す。同施設の処理見込み量は20年間で4万トン、利益は約50億円(20年間)を見込んでいる。
05 Aug 2025
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環境省は7月31日、「令和7年度ぐぐるプロジェクト キックオフミーティング」を東京都内で開催した。同プロジェクトは、放射線に関する正しい情報発信を目的に2021年に始まった活動で、今年、最終年度となる5年目を迎えた。一般的に放射線はなじみが薄く、情報をアップデートする機会が少ないと言われている。そのため、過去に得た古い情報のまま、知識が止まっているケースが多々あり、放射線の健康影響に関する全国調査においても、「正しい知識を持つ人」の割合は未だ61.7%ほどに留まるという。こうした放射線の健康影響に関する誤解や風評、差別、偏見の解消を目指し、同プロジェクトでは、メディア向け公開講座や、ラジエーションカレッジ(全国の企業や学校での学びの場)によるセミナーの開催、学んだことを発信するための作品コンテストなど、幅広い活動を行ってきた。同プロジェクトでは、今年度までに「正しい知識を持つ人」の割合を80%にする目標を掲げ、昨年度発足した、福島の未来を担う若い世代で構成された「ふくしまメッセンジャーズ」による取り組みをパワーアップさせる方針だ。「ふくしまメッセンジャーズ」は昨年度、中高校生向けの絵本「木と鳥」やポスターの創作、福島県内でのフィールドワークやワークショップなど、さまざまな活動を通じて情報発信に努めてきた。今年度は活動の場を福島県外へと広げ、秋以降には全国8か所程度でのイベントにメンバーを派遣する。なお、活動の様子は動画にまとめられ、YouTube公式チャンネルなどで全国に発信される。早速、8/6(水)~8/7(木)には「こども霞が関見学デー」と題した小中学生向けの省庁見学イベント(環境省22階第一会議室で開催)にて、メンバーが先生役となって活動を紹介する予定だ。この日は、4名のふくしまメッセンジャーズのメンバーが登壇し、ロールプレイ形式で活動の様子が披露された。また、昨年度から同活動のサポーターに起用されている俳優・タレントとして活躍する箭内夢菜さん(福島県郡山市出身)も登壇。箭内さんは、「ふくしまメッセンジャーズの活動は、福島の今を知らない人たちの心を動かすきっかけになると思っています。私もサポーターとして、今年度も精一杯応援させていただきたいです」と意気込みを語った。
04 Aug 2025
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北海道電力は7月30日、原子力規制委員会から泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)の原子炉設置変更許可を受けた。同日午後、同社の勝海和彦取締役常務執行役員が、東京都内の原子力規制庁を訪れ、再稼働に必要な「設置変更許可」の許可書を受け取った。2013年に策定された新規制基準の審査には、これまでに17基が合格しており、今回が18基目の許可事例となった。泊発電所3号機は、2013年7月に設置変更許可申請を提出していたが、敷地内の「F-1断層」の活動性をめぐる議論が長期化し、許可の交付に約12年を要した。今後、発電所の設備の詳細設計に係る「設計及び工事計画の認可申請」および運転管理体制などを定めた「保安規定変更認可申請」に係る審査への対応、防潮堤などの安全対策工事を進め、2027年のできるだけ早期に再稼働を目指している。なお、審査中の1、2号機(PWR、57.9万kWe×2)は、2030年代前半の再稼働を目指している。同社の斎藤晋社長は、「大きな節目だ。不断の努力を重ねて世界最高水準の安全性を目指す」とコメントした。日本原子力産業協会の増井秀企理事長は同日、コメントを発表し、「道内における電力の安定供給をより強固なものとし、同時に、二酸化炭素の排出削減にも貢献すると期待される。データセンターや半導体工場の新増設に伴って今後の電力需要の伸びが著しいと予想される北海道において、原子力発電の役割は大きい」と、泊3号機の再稼働に期待を寄せた。林官房長官は同日午後の記者会見で、「政府としては、今後も自治体と連携しながら、地域の方々の不安を払拭できるよう、原子力災害対応の実行性向上に取り組んでいく。また、国も前面に立って、新規制基準の適合性審査の結果や再稼働の必要性・意義、原子力防災対策などについて、住民の皆様や自治体のご理解を得られるように、分かりやすく丁寧な説明・情報発信に粘り強く取り組んでいくことが重要であると認識している」と述べた。また、武藤容治経済産業大臣は、1日の閣議後記者会見で、同発電所3号機が原子力規制委員会の審査に合格したことを受けて、北海道の鈴木直道知事に、再稼働を進めていく政府方針を電話で伝えたと明らかにした。
01 Aug 2025
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東北電力は7月29日、女川原子力発電所の敷地内に新設を目指す乾式貯蔵施設について、宮城県および女川町と石巻市より、安全協定に基づく事前了解を得て、着工の了解を受けたと発表した。宮城県庁を訪れた東北電力原子力本部の阿部正信原子力部長に、県の担当者が「一時的に貯蔵するための施設であることを前提に了解する」とした回答書を手渡した。なお、同施設の基本設計に係る「原子炉設置変更許可申請」は、2024年2月28日に原子力規制委員会へ申請し、2025年5月28日に許可されていた。使用済み燃料乾式貯蔵施設とは、使用済み燃料を原子力発電所から搬出するまでの間、一時的に貯蔵するための施設で、「使用済み燃料乾式貯蔵建屋」と「使用済み燃料乾式貯蔵容器」で構成される。女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kWe)の使用済み燃料プールにて十分に冷却された使用済み燃料を、金属製の乾式貯蔵容器(キャスク)に収納し、空気の自然対流によって冷却する。同社の計画では、施設は鉄筋コンクリート造で2棟を建設し、最大で計約1,300体の燃料が入る。1棟目は来年5月に着工する予定だ。同社によると、昨年10月に再稼働した2号機原子炉建屋内の使用済み燃料プールは、7月29日時点で貯蔵率が79%を超えていた。
30 Jul 2025
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は7月25日、定例の記者会見を行い、美浜発電所をめぐる動きや、長期脱炭素電源オークションの一部見直しについて、コメントした。増井理事長はまず、関西電力が美浜発電所後継機の自主的な現地調査を再開したことについて、原子力産業界としての受け止めについて説明した。同発電所の地質調査の再開は、原子力開発全体に好影響を与え、関西電力が導入の念頭に置く、大型革新軽水炉をはじめ、さまざまな次世代革新炉の開発に良い影響を与えると指摘。国が策定した2050年を見据えた革新炉開発の技術ロードマップと合わせ、今後の開発・建設が進むことに期待を寄せた。次に、「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会」における中間とりまとめに対するパブリックコメントを提出したことについて言及。長期脱炭素電源オークションの一部見直しが行われたことを受け、同協会がコメントを提出したことを明らかにした。最も大きな変更箇所となった「入札後に発生した事業者に責任がない費用増加について、一部回収を認める」という制度の導入について、既設発電所の安全対策投資や、30万kWe未満の次世代革新炉もその対象に含むよう追加で要望したことを明かした。さらに、回収可能な範囲の上限が1.5倍と設定されているが、海外事例を踏まえて、この上限を緩和すべきと進言したと述べた。その理由について増井理事長は、「長期脱炭素電源オークション自体は、電源への投資をローリスク・ローリターンにする画期的な仕組みだと考えているが、既設の原子力発電所の一部が対象外であるほか、容量や出力に制限がかかっているなど、見直しの余地がある」と述べた。また、「1.5倍という上限は、事業者に帰責性のない事由でどれくらい費用が超えるのか判断がつきにくく、新規建設の観点からひとつの障害になる可能性があり、投資促進の観点から進言した」と説明した。
29 Jul 2025
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三菱重工業は7月2日、中国三大重電機器メーカーの東方電気グループ傘下にある東方電機(東方電機有限公司:Dongfang Electric Machinery Co.Ltd.)と共に、中国の三門原子力発電所5、6号機向けに4基の循環水ポンプを受注したことを発表した。受注額や工期は非公表。両社は今年3月、パートナーシップを締結しており、今回の受注は、両社の協業による初の受注。兵庫県の高砂製作所にて製造され、順次納入される予定だ。両社は今後、中国の原子力ポンプ市場でのシェア拡大を目指すという。循環水ポンプは、タービンから排出される蒸気を冷却して水に戻す復水系統で用いられる大型機器で、原子炉の安定運転を支える重要機器だ。同社は、これまでに500基超の納入実績がある。三門原子力発電所は、中国南東部の海岸沿いに立地し、今回、循環水ポンプを供給する5・6号機は、稼働中の1・2号機(PWR、125.1万kWe)、建設中の3・4号機(PWR、125.1万kWe×2)に次いで建設される予定で、PWRの「華龍1号/HPR1000」を採用している。
25 Jul 2025
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日立製作所と量子科学技術研究開発機構(QST)は7月23日、国際核融合実験炉「ITER」向けに、炉内機器のひとつであるダイバータの主要部品「外側垂直ターゲット」の試験体を製作し、ITER機構による認証試験に合格したと発表した。「ITER計画」とは、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7か国と地域が協力し、核融合エネルギーの実現に向けて科学的・技術的な実証を行うことを目的とした国際プロジェクト。現在、実験炉の建設がフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進められている。日本は、ダイバータやトロイダル磁場コイル(TFコイル)をはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTは、同計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。ダイバータは、トカマク型をはじめとする磁場閉じ込め方式の核融合炉における最重要機器のひとつ。核融合反応を安定的に持続させるため、炉心のプラズマ中に燃え残った燃料や、生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担っている。トカマク型装置の中でプラズマを直接受け止める唯一の機器で、高温・高粒子の環境にさらされるため、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされる。日立は、長年にわたる原子力事業で培った技術と経験を結集し、高品質な特殊材料の溶接技術と高度な非破壊検査技術を開発し、検証を重ねた結果、ITER機構から要求される0.5ミリ以下の高精度な機械加工と組み立てを実現。また、製作工程や費用の合理化を図るため、ダイバータ専用に最適化した自動溶接システムを開発した。2024年7月には、三菱重工業がすでにQSTとプロトタイプ1号機を完成させていたが、今回、日立の製作技術も正式に評価されたかたちだ。QSTはこの部品を全58基に納入予定。うち、18基は先行企業が製作を担当し、残る40基の製作企業は今後決定される見通し。
24 Jul 2025
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