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IAEA ALPS処理水の「第6回安全性レビュー」を開始
国際原子力機関(IAEA)の職員と専門家で構成されるIAEAタスクフォース※1がこのほど来日し、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関する安全性及び規制面のレビュー(安全性レビュー)を、5月11日に開始した。また、同日、外務省にてオープニングセッションが開かれ、日本側から、外務省、原子力規制委員会、経済産業省、東京電力の関係者が出席した。安全性レビューは5日間の日程で実施され、今回はALPS処理水に関連するモニタリング活動に重点を置いたレビューが行われるという。2023年8月のALPS処理水の海洋放出開始後、IAEAタスクフォースによる「安全性レビュー」はすでに5回(2023年10月、2024年4月、2024年12月、2025年5月、2025年12月)実施されており、今回で6回目となった。オープニングセッションでは冒頭、外務省の松本恭典氏(軍縮不拡散・科学部審議官)が、「ALPS処理水の海洋放出が安全かつ着実に進められていることを、大変心強く感じている。また、IAEAが中立的かつ客観的な立場で継続的にレビュー活動を実施していることに対し、深く感謝申し上げる」と述べ、改めて謝意を表明した。また、経済産業省の宮﨑貴哉氏(大臣官房福島復興推進グループ原子力事故災害対処審議官)は、今後もIAEAによる同レビューを通じ、国際安全基準に沿ったALPS処理水海洋放出の安全確保に万全を期す考えを改めて表明。あわせて、IAEAと連携しつつ、国内外に向けた透明性の高い情報発信を継続し、理解促進に努めていく方針を示した。東京電力の佐藤学執行役員は、「2023年8月以降、計19回のALPS処理水放出を実施してきたが、いずれも安全かつ計画通りに進めてきた」と説明。また、IAEAによる同レビュー活動に加え、SNSを通じた情報発信や、IAEA常駐検査官・職員による監視活動が「透明性向上につながっている」と述べた上で、客観性と透明性の維持に向け、今後も常に改善に努めていく姿勢を強調した。同レビューを総括しているIAEAのグスタヴォ・カルーソ調整官は、今後もIAEAがALPS処理水の放出に関する独立した監視機関の中心的役割を担うと説明。モナコやオーストリア・ザイバースドルフ、ウィーンのIAEA環境研究所およびIAEA福島ALPSラボにおいて、各種試料(処理水、希釈水、海洋環境サンプルなど)に関する分析、検証を継続し、分析・検証結果を国内外へと発信すると述べた。またカルーソ調整官によると、2025年から海洋環境、地下水、気象条件に関する追加モニタリングも開始しており、2026年には追加措置プログラムも本格化すると説明した。カルーソ調整官は、「IAEAは今後も、独立性、科学的根拠、透明性に基づくモニタリングを継続していく」と述べた上で、福島で行われているALPS処理水の放出が関連するすべての国際安全基準と整合していることを、引き続き検証していく考えを示した。※1 IAEAタスクフォースには、IAEAからは独立した立場で参加するアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、英国、米国、ベトナム出身の11名の専門家が含まれる
- 13 May 2026
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カザフスタン SMRや第4サイトも検討へ
カザフスタンのK.-J. トカーエフ大統領は4月15日、2050年までの原子力産業の国家戦略を承認した。エネルギー安全保障の強化、持続可能な経済成長、脱炭素対応、技術力向上を目的とする同戦略では、具体的な建設計画として、2050年までに少なくとも3サイトで原子力発電所の稼働を想定。小型モジュール炉(SMR)の導入に加え、第4サイトの検討も行っていくとしている。同国では電力需要の増加と供給不足が顕在化しており、統一電力システムによる見通しでは、2026~2032年に追加で最大約266万kWの設備容量が必要となる可能性がある。特に南部および西部で不足が顕著とされ、安定供給には地域特性を踏まえた複数の原子力発電所の段階的整備が不可欠と位置づけている。戦略では、①原子力発電の拡大、②ウラン資源の活用、③研究開発、④廃棄物・使用済み燃料管理、⑤核セキュリティ強化、⑥人材育成・産業育成、⑦デジタル化――を柱に掲げる。建設計画としては、第1、第2サイトは、同国の南部エリアに計画。第1サイトでは、ロシア国営原子力企業ロスアトムとの協力により、アルマティ州のジャンブール地区にて、ロシア製VVER-1200×2基の建設が決定しており、2025年8月にエンジニアリング調査が開始されている。第2サイトでは、最大出力240万kWeの導入を計画しており、第1サイトと同じ、ジャンブール地区がすでに候補として特定されており、中国との協力が有望視されている。第3サイトでは、最大合計出力120万kWeの小型モジュール炉(SMR)の導入を計画。さらに、電力消費量の増加が予測される中、有望な地域に4番目の原子力発電所の建設プロジェクトを実施する計画を示している。SMR導入については、地域的な特性、プロジェクトの技術的・経済的な妥当性を考慮し、SMRの適用可能性に関する技術経済分析を行い、SMRの設置優先地域の特定(エネルギー不足地域や電力網インフラが未整備な地域を含む)、および老朽化した石炭火力発電所の代替可能性を検討していくとしている。安全面では、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、外部電源なしでも機能する受動的安全システムを採用、国際基準に基づく廃棄物管理を実施すると強調した。この戦略の推進により、建設段階(1つの原子力発電所の建設ピーク時には最大1万人)だけでなく、エンジニアリング、科学、教育、サービス分野においても、数千の雇用の創出が想定されている。送電線などのインフラ整備、教育・人材育成の強化によるスキル向上、原子力クラスター形成で国内産業を活性化させて国際競争力を高め、エネルギー安全保障と経済・技術の自立性を長期的に向上させる考えだ。
- 28 Apr 2026
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中国 太平嶺1号機が営業運転開始
中国の広東省恵州市で4月20日、中国広核集団(CGN)の太平嶺(Taipingling)原子力発電所1号機(PWR=華龍一号、112.6万kWe)が営業運転を開始した。広東・香港・マカオ大湾区初となる「華龍一号」である。年間発電量は90億kWhを超えると見込まれている。華龍一号は、中国が独自開発した第3世代炉で、別名「HPR1000」。中国の主力輸出炉としても位置付けられている。太平嶺原子力発電所プロジェクトでは、3期に分けて建設が進められ、最終的に6基の華龍一号を建設する計画。総投資額は1,200億元(約2.8兆円)を超えると見込まれている。太平嶺サイトでは、同2-3号機がそれぞれ、2020年10月、2025年6月に着工している。2号機では、近日中に燃料装荷が開始される予定である
- 21 Apr 2026
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最終章に入った「パックス・アメリカーナ」
柄にもなく大風呂敷を広げてコラムを始めたい。米国がイスラエルと始めたイラン攻撃は、トランプ大統領が期待した体制転換も無条件降伏も絵に描いた餅のまま、今ではホントは早く止(や)めたいのに止められない状況に陥っているかのようである。イランが危機であるのは当然だが、米国も危機だ。私たちは「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」の最終章を目撃している──というのが風呂敷包みの中身である。渦中にいる時は分らないが、後になって「そうそう、あの時がそうだった」と振り返るエポック。歴史の分岐点と言い換えても良い。この世に永遠不滅なんて事態は、そうそうない。始まりがあれば終わりがある。自然の理だ。パックス・アメリカーナが現れる前の「パックス・ブリタニカ(大英帝国)」がそうだった。ナポレオン戦争が終わった1815年に始まり、「太陽の沈まぬ国」とまで言われた、輝けるブリタニカのピークは第1次世界大戦勃発の1914年までの100年とされる。2度の世界大戦、経済の疲弊、米独の台頭、植民地の相次ぐ独立等々。衰退は続き、最後の一撃は1956年のスエズ動乱(第2次中東戦争)だった。ナセル大統領のエジプトがスエズ運河の国有化を宣言すると、英国はフランス、イスラエルと共に軍事作戦を敢行した。しかし運河閉鎖による石油供給の停止や国際金融市場の混乱、国際社会からの強い非難に作戦は1週間で中止に追い込まれ、撤退し完敗。1968年にはスエズ運河以東のアジア駐留英軍も撤退し、大英帝国は世界の舞台から消えて行った。ブリタニカが興隆する前の、朝貢と冊封の華夷秩序によって東アジアを治めた漢、唐や清によるパックス・シニカ(中華帝国)も、清が大英帝国の仕掛けたアヘン戦争(1840~42)に敗れたことを以て終わった。1912年、清は中国史上最後の王朝として歴史の中に収まった。「パックス・ロマーナ(ローマ帝国)」も同様だ。アウグストゥス即位の紀元前27年から、マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝死去の180年まで、地中海世界の支配はブリタニカよりは長かったが、それでも約200年で終わった。皇帝の乱立、指導力の不足、経済の停滞、対外的には異民族・ゲルマン人の侵攻などによる軍事費の増大などが終焉の原因とされる。こうしてざっと振り返ると、戦争、経済苦境、指導者の劣化が、時代を超えて共通する要因であることが分かる。パックス・アメリカーナに再び戻ると、終わりが俎上に上るのは今に始まったわけではない。バイデン前政権下のアフガニスタン駐留米軍の撤退(2021年)でも、米国の影響力の低下が盛んに論議された。ただアフガンとイランは同じ失敗でも、ダメージの大きさが桁違いだ。イラン攻撃は短期決戦による勝利の目算が狂い、トランプ氏自らの体制転換の呼び掛けも無視され、イランに足元を見透かされ、ホルムズ海峡の開放をめぐってはG7の残るすべての国から協力を断られた。米国の威信や面子がこれほど蔑ろにされたことは、かつてあっただろうか。さらに、もっと深刻に思えるのは、米国への信頼や信義、信用が大きく損なわれたことだ。これらは軍事力や経済力と共に、「パックス・アメリカーナ」を支える重要な要素だった。同盟国や国際社会は、強大な軍事力や富だけになびいたのではなかったはずだ。これらの修復は可能なのか、可能としてもどれほどの時間がかかるのか、今は誰にも分からない。イラク攻撃で延期された米中首脳会談は5月14、15日に北京で行われる。習近平氏はこれをパックス・アメリカーナからさしずめ「新型のパックス・シニカ」への移行式にと、密かに企んでいるかもしれない。習近平・国家主席はじめ中国がこの間、一貫して掲げてきた中華民族の復興とは、アヘン戦争で嘗めさせられた屈辱へのリベンジであると同時に、パックス・シニカの夢よ再びに違いないからだ。しかし野望は白昼夢に終わるだろうし、そう願う。では次にはどのような世界が開けるのか、残念それにはもう一枚大風呂敷が要る。
- 08 Apr 2026
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中国 三澳1号機が送電開始
中国の浙江省温州市で3月12日、中国広核集団(CGN)の三澳(Sanaocun)発電所1号機(PWR=華龍一号「HPR1000」、120.8万kWe)が送電を開始した。今後、出力上昇試験や各種性能試験を経て、今年前半の営業運転開始をめざす。三澳プロジェクトは2007年にサイト調査を開始し、2015年に国家能源局が計6基の「華龍一号」を建設するサイト取得・整備作業等の実施を承認。I期工事の1-2号機はそれぞれ2020年12月、2021年12月に着工し、Ⅱ期工事の3号機も2025年11月に着工した。1号機については、2025年12月に国家核安全局(NNSA)が運転認可を発給し、今年2月14日に初臨界を達成していた。同プロジェクトが完成すると、温州市の現在の総電力消費量に近づく年間540億kWh超の電力供給が見込まれている。毎年、標準石炭換算で約1,635万トンの削減に貢献するという。現在、長江デルタ地域ではDeepSeekなどの世界有数のAI関連企業が集積し、スマート経済の急速な発展に伴い計算能力需要が急増し、エネルギー消費を継続的に増大させている。今年の全国人民代表大会では、「計算能力と電力の協調(算電協同)」が初めて政府活動報告に盛り込まれ、大規模なAI計算クラスターなど新インフラ整備の推進方針が明確に示された。三澳プロジェクトでは、作業現場の可視化・自動化を実現し、年間で約70万時間の作業工数を削減したほか、国内初となる全工程のデジタル化を導入。原子炉建屋では4万枚以上の配管検査用放射線フィルムをデジタル管理し、AIによる解析評価により欠陥検出率・重複検査の検出精度はいずれも95%以上を達成したという。また、原子炉冷却材主配管の溶接用設備や工法の国産化や、「レゴ式」の分解可能なプレハブ擁壁モジュール工法の導入により、建設コストの削減と工期短縮を図っている。
- 19 Mar 2026
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中国 徐圩原子力発電所第1期が着工 熱供給主目的に
中国・江蘇省で1月16日、中国核工業集団(CNNC)の徐圩(Xuwei)原子力発電所第1期プロジェクトが開始された。同プロジェクトは、「華龍一号(HPR1000)」×2基(PWR、各122.2万kWe)と、高温ガス炉(HTGR)×1基(約66万kWe)で構成される。工業用熱(高温蒸気)の供給を主目的とし、余剰の熱エネルギーを電力供給にも活用する複合型の原子力施設となる。このうち同日、「華龍一号」を採用した1号機で先行して原子炉関連施設の初のコンクリート打設が行われた。徐圩第1期プロジェクトは、2024年8月に中国国務院常務会議で承認された。従来の、発電を主とし余剰熱を利用する方式とは異なり、工業用蒸気の需要(加熱負荷)を起点に運転条件を設定するのが特徴だ。発電量は蒸気需要に応じて調整されることになる。華龍一号で大量の蒸気を生成し、これを高温ガス炉の熱で再加熱することで、工業用熱として十分な温度を確保すると同時に、発電にも利用する設計としている。第1期プロジェクトが完成すれば、近隣の連雲港石油化学工場に対し、大規模な熱供給を行う計画だ。石油化学工場では従来、化石燃料によるボイラー熱が主流であったが、同プロジェクトは低炭素電源による大規模な熱供給を実現する試みとなる。CNNCによると、完成後は年間約3,250万トンの工業用蒸気と115億kWh超の電力を供給する見込みで、約1,960万トンのCO2排出量削減効果が見込まれている。なお、華龍一号の出力については、1月16日のCNNCによる公告で、過去に公表されていた120.8万kWeから122.2万kWeへの変更が発表された。
- 02 Feb 2026
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日本原子力学会 SMRに関する記者向け勉強会を開催
日本原子力学会は1月9日、報道関係者を対象とした交流会を開催した。交流会は、同学会の社会・環境部会が毎年実施しているもので、今年は、近年注目が高まる小型モジュール炉(SMR)をテーマに設定。エネルギー総合工学研究所・原子力技術センター原子力チームの都筑和泰氏を講師に招き、世界のSMRの開発動向や技術的特徴、導入を巡る課題に関する解説が行われた。SMRについて都築氏はまず、現地で一から組み立てるのではなく、工場で製造し、現地で据え付ける方式を採ることで、建設コストの低減や工期短縮が期待できる点を強調した。モジュール化の程度は設計によって異なるものの、近年では原子炉本体も工場で製造する設計が登場していることや、ロシアの浮体式原子炉のように、船舶に搭載して運用する方式などが紹介された。また、軽水炉の小型化自体に特段の技術的な革新性はないとしつつも、安全性と経済性を両立させる工夫がSMR普及の鍵になると指摘。「既存技術の活用や設計改善、量産効果などを通じたコスト低減が重要になる」とコメントした。さらに、開発の方向性については、「安全性を前面に打ち出す設計」と「構造を簡素化してコスト低減を狙う設計」という2つの流れがあると説明した。SMRの開発計画は2025年時点で100件超に増加しているものの、現在、多くは初期検討段階にとどまっていることを踏まえ、新たな産業としてはまだ立ち上がり段階にあるとも指摘する一方、中国やロシアでは実証段階に近い案件が多く、米国では設計の検討が活発化しているなど、各国の開発状況に違いがある現状を説明した。将来展望については、日本のように既に送電網が整備された国の大型原子力サイトにおいては、SMRの優位性が限定的になる可能性があるとも指摘した。その一方で、大型炉では電力供給が過剰となる地域や途上国、工場における熱・電力・水素の複合利用、データセンター用途などではSMRの適性が高いと述べた。特にAI向けデータセンターについては、都市近郊に立地する必要がなく、送電制約も踏まえれば、SMRを設置して直接電力を供給する形は合理的だとの見方を示した。その一方で、原子力安全に対する社会的な懸念や核セキュリティ対策が大きな課題であるとも指摘。そのうえで、成功事例が生まれれば、そこから普及が広がる可能性は十分にあるとの見通しを示した。さらに、SMRや原子力への社会的理解を広げるためには、「安全性の強調だけでは不十分だ」と述べ、エネルギー安全保障や脱炭素、コストといった観点を総合的に示し、日本にとって原子力が果たす役割を丁寧に説明する必要があるとした。原子力によって一定の電力供給を確保できれば、エネルギー自給率の低さに起因する非常時においても、医療や決済インフラなど社会の基盤機能を維持できる可能性があるとして、こうした現実的な視点に基づく議論の重要性を強調した。
- 20 Jan 2026
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新年に高市・メローニ 日伊「同盟」のススメ
2026年はトランプ旋風が吹き荒れた昨年にもまして、波乱のスタートとなった。1月3日(現地時間)、米国は戦闘機や無人機で南米ベネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束連行した。筆者にはまるでデジャブだ。麻薬問題から対米対立を深めていた中米パナマの最高実力者マヌエル・ノリエガ将軍に単独会見した1か月あまり後の1989年12月、米軍はパナマに侵攻。逮捕連行されたノリエガ氏は、その後の人生の大半を米刑務所で送った後に病気と高齢を理由にパナマに戻され、亡くなった。会見の最後に「パナマと将軍の今後はどのように?」と尋ねると、「国家は永遠に不滅である。私については『神のみぞ知る』とさせて頂く」と運命を覚悟していたかのようだった。今、マドゥロ氏の脳裏を過るものは何だろう。独裁者連行の報に多くのベネズエラ市民が街頭に飛び出し、歓喜したのもパナマと同じだ。不正選挙で大統領の椅子に居座り続けたマドゥロ氏には、そもそも統治者の資格はなかった。しかしデュープロセスを無視したばかりか、ベネズエラの国家運営も石油権益も当面、米国が握ると公言するドナルド・トランプ大統領も、剥き出しの権力行使と米国益優先が過ぎて、大義がない。気に入らぬ相手は軍事力で排除し、自分の支配下に置くという点で、これではウクライナを侵略したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と変わらぬことになる。トランプ大統領と電話会談し、「緊密な日米協力」で一致したばかりの高市早苗首相は、国際政治のリアルを実感したことだろう。ただここは持ち前の即決即行より熟慮断行の時。同志国と連携し、冷静に着々と政治日程を進めていく他ない。今月中旬、イタリアのジョルジャ・メローニ首相がVIPのトップを切って来日するのは、その意味でタイムリーだ。今年は日本とイタリアの外交関係樹立160周年の節目にあたる。大政奉還前年の1866(慶応2)年、日本は安政5か国条約の一環でイタリアとの修好通商条約を締結した。その160年後、いずれも初の女性宰相が両国を率いるとは、偶然以上の歴史の采配を感じるのは筆者だけだろうか。しかも2人には共通点が意外に多い。親の七光りとは無縁の叩き上げの政治家であること。政治信条も保守で共通すること。特にメローニ氏は若い頃にネオファシズムのイタリア社会運動や国民同盟に属し、「極右・国家主義者」のレッテルも貼られた。しかし2022年の首相就任後は移民排斥や反EUなど過激な主張を封印、経済問題などに手堅い手腕を発揮し、伊政界としては珍しい長期政権も視野に入っている。高市首相も自他共に認める保守派だが、今は思想信条より「強い経済」を政策の前面に押し出し、高い支持率を維持する。さらにフェミニズムやジェンダーに殊更肩入れしない点も似ている。また首相がコロコロ変わる政治的不安定さや、文化・芸術の伝統など、国柄に共通点の少なくないことも付け加えるべきだろう。首脳会談では二国間関係の強化はもちろん、日英伊3国で行う次期戦闘機の共同開発など安全保障問題が話し合われる予定だ。加えて筆者が望むのは、6月に仏エビアンで開かれるG7に向けて、高市・メローニ「同盟」への取り組みである。女性宰相が複数揃うのは半世紀を超えたG7史上でも初めてのことで、それ自体画期的だ。しかもG7は独裁・権威主義国の台頭で今、衰退か再興かの岐路にある。G7を牽引すべきトランプ氏が、中国の習近平国家主席やプーチン氏との二国間・個人外交に執心し、G7に無関心、時に否定的なことが大きい。トランプ氏は目下、4月の訪中成功に頭が一杯だ。歴代米大統領が注意深く排して来たのを知ってか知らずか、G2(米中)の用語を連発して習氏を喜ばせ、関税交渉もその術中に嵌った感がある。ウクライナ和平を巡ってもプーチン氏にあしらわれているように見える。そこで2人の出番である。トランプ氏との相性が良い点でも共通する2人には、トランプ氏を中ロへの傾斜から、G7へと引き戻す役割を期待したい。トランプ2.0が戦後国際秩序の破壊と再編を促していることは、ますます明らかになって来た。2人のG7「工作」が多少とも功を奏するようなら、高市氏の「世界の真ん中で咲き誇る」日本外交も、夢物語から現実へと一歩踏み出せるかもしれない。
- 08 Jan 2026
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中国 漳州2号機が送電開始
中国核工業集団公司(CNNC)が福建省で建設を進める漳州(Zhangzhou)原子力発電所2号機(PWR=華龍一号「HPR1000」、112.6万kWe)が11月22日、送電を開始した。同発電所では今年1月に1号機が営業運転を開始しており、2基体制での本格稼働により年間約200億kWhの電力供給を見込んでいる。これにより、年間1,600万トン規模のCO₂排出量削減効果が期待されているという。2号機は2020年9月に着工。2025年10月11日より燃料装荷を実施し、11月3日に初臨界を達成した。今後は性能試験を進め、年内の営業運転開始を予定している。漳州原子力発電所は、中国独自の第3世代炉「華龍一号」を計6基整備する計画で、現在3・4号機が建設中、5・6号機は予備工事を進めている。6基体制により、福建省南部の主要都市である厦門(Xiamen)市と漳州市の電力需要の約75%を賄えるという。
- 09 Dec 2025
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東洋炭素グループ 米Xエナジーから高温ガス炉向けの構造材を受注
東洋炭素株式会社は11月7日、同社の子会社であるTOYO TANSO USA, INC.(TTU)が、米国のX-energy社(以下:Xエナジー社)から高温ガス炉用黒鉛製品(黒鉛製炉心構造材など)を受注したと発表した。今回受注したのは、Xエナジー社が開発を進める小型モジュール炉(SMR)の高温ガス炉「Xe-100」(8.0万kWe)向けの製品で、炉心構造材として同社の等方性黒鉛材「IG-110」が用いられる。納品は2028年を予定しており、現在は部品試作・材料認定等を行っている。来年中には最終設計を決定した上で、製造および加工を開始するという。売上高は約50~60億円規模と見込んでいる。「IG-110」がXe-100の炉心構造材等に採用された背景として同社は、優れた熱的・機械的特性と耐中性子照射特性等を備えた信頼性や、日本や中国、フランスの高温ガス炉の試験炉・実証炉・商業炉において採用実績を有していることなどを挙げた。高温ガス炉は、黒鉛を中性子減速材に、ヘリウムガスを冷却材に使用する次世代型の原子炉で、約950℃の高温熱を得られることが特長だ。発電のみならず、水素製造や化学プラントなど幅広い分野への応用が期待されている。高温環境・高線量下で使用されるため、炉心構造材には極めて高い耐熱性と放射線耐性が求められるが、同社の「IG-110」は、長期間にわたり安定した物性を維持し、優れた耐熱衝撃性や高純度・高強度を備える。国内外の公的機関と共同で実施した照射試験データにより、その信頼性が科学的に裏付けられている点も大きな強みだという。今年2月に策定された第7次エネルギー基本計画では、次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合)の研究開発を進める必要性が示され、世界的にも次世代革新炉の開発・導入が加速する中で、日本製の黒鉛材料が国際的な次世代炉プロジェクトに採用されたことは、原子力サプライチェーンにおける日本企業の存在感の高まりに繋がっている。Xe-100をめぐっては、米化学大手のダウ・ケミカル社が、テキサス州シードリフト・サイトで、熱電併給を目的にXe-100の4基の導入を計画中。同社は今年3月、建設許可申請(CPA)を米原子力規制委員会(NRC)に提出し、5月に受理された。2026年に建設を開始し、2030年までの完成をめざしている。そのほか、Amazonが出資するワシントン州で計画中の「カスケード先進エネルギー施設(Cascade)」でも、最大計12基のXe-100を導入する計画が進められており、2030年末までの建設開始、2030年代の運転開始を想定している。さらに、Xe-100の展開加速に向けて、韓国の斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)および韓国水力原子力(KHNP)が協力し、米国内でのXe-100の展開を支援している。
- 12 Nov 2025
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増井理事長 高市新政権に“一貫性のある原子力政策”を期待
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は10月24日、定例記者会見を行い、電気事業連合会による将来リプレース試算への所感や、「原子力産業セミナー2027」と「第11回東アジア原子力フォーラム」への参加報告などについて語った。会見の冒頭、増井理事長は第46回原子力小委員会で電気事業連合会が提示した「将来的に必要な原子力発電所のリプレース規模に関する試算」について、「試算は穏当なもの。その上で、産業界が未来に希望を持てるよう、中期・長期それぞれの見通しを2段階で提示することが適切だろうと進言した」と述べた。また、同委員会で日本電機工業会が示した原子力産業の基盤維持・強化の取組みに関して、「人材の確保と定着、シニア人材の活用など、原子力産業の基盤維持対策の必要性」について進言し、「限られた人員でも現在と同じ成果を維持すべく、自動化・デジタル技術の活用が重要になる」と発言したことを報告した。続いて、原子力産業界の人材確保を目的とした合同企業説明会「原子力産業セミナー2027」の実施を報告。今年は初めて福岡市でも開催し、参加者は3会場(東京・大阪・福岡)で計564名、出展企業数が前年より約10%増加したという。また、電気電子系や文系学生の参加が増えたことを受け、「参加学生の専攻分布や傾向について、今後さらに分析を進めたい」と述べた。次に、韓国・慶州で開催された第11回東アジア原子力フォーラムへの参加を報告。ここでは、日本、中国、韓国、台湾の関係者が一堂に会し、原子力産業の現状と展望をテーマに意見交換した。韓国からは原子力を維持する国家エネルギー政策の重要性と、安全性強化・資源の制約克服に向けた東アジア地域内での協力の必要性が説かれた。中国からは海外向け原子力事業の拡大方針が示された。台湾からは金山原子力発電所の廃止措置計画の進捗など、将来的な具体的なマイルストーンが発表されたという。日本からは増井理事長が「日本の新規建設プロジェクトにおける重要課題」と題して登壇し、新設に向けた課題と展望を発表した。また同フォーラムの翌日から2日間にわたり、慶州市隣接地域の原子力関連施設などを訪問し、関係者と活発な意見交換を行ったと述べ、今後の同地域の関係者間の連携強化に期待を寄せた。その後、記者から就任直後の高市首相に関連する質問が飛んだ。「次世代革新炉やフュージョンエネルギーの早期の社会実装を目指す」と所信表明演説で発言した高市首相について、「原子力に対する理解が深く、原子力の事業環境整備の進展にも意欲を示されており、非常に力強い存在だと感じる」と述べた。特に、事業環境整備の重要性を長らく進言している同協会にとって、同じ志を持った新首相への信頼は大きく、「政府には今後も一貫性のある原子力政策の推進を期待している」と述べた。
- 31 Oct 2025
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「独裁の世紀」― 独裁トリオと予備軍たち ―
「独裁が近づいている」――こんな謎めいたセリフと共に1990年12月、ソ連外相を辞任し、国際政治の表舞台から消えたのは、銀髪と射るような眼差しがトレードマークの故シェワルナゼ氏だった。それから約35年。プーチン・ロシア大統領の独裁の見事な予言となっただけでなく、今や世界は「独裁の世紀」と呼びたいほど独裁・権威主義体制が跳梁跋扈している。最近のニュース映像が脳裏から離れない。中国・北京で9月3日に行われた「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利80周年記念式典」の記念行事で、習近平・国家主席を真ん中に、向かって右に北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記、左にプーチン大統領の独裁トリオが天安門へと行進する、あのシーンだ。国連制裁や国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているお尋ね者が、白昼堂々揃い踏みをするなんて、かつては考えられなかった。世界も見て見ぬふり。人々がいかに独裁慣れしてしまったかを物語っている。3人の後に続く独裁予備軍の多さにも驚く。スウェーデンの民主主義研究機関V-Demの「民主主義リポート2025」によれば、独裁体制の国・地域は一昨年の35から昨年は45に増えた。ゾロゾロと歩く面々の明日を思うと、何だか悪い夢を見ているような気分になる。小柄ながらサングラスと頭の黒いペチが存在感を放っていたインドネシアのプラボウォ大統領には、とりわけ懸念が増した。国内の治安事情を理由に「欠席」を表明していたのに、ドタキャンとは真逆で急遽、「抗日」式典に駆けつけたのだ。「中国側の必死の巻き返し。きっと首脳会談開催とか投資とかお土産を一杯約束したのでしょう」とは外交筋の解説である。真相は分からない。しかしインドのモディ首相は先立つ上海協力機構(SCO)首脳会議には出席したが、反日色の強い「抗日戦争勝利80周年」は欠席し、日中間を巧みに泳いだ。共にグローバルサウスのリーダーながら、外交手腕はモディ氏の方が何枚も上手だった。日本とインドネシアは2年前、「戦略的パートナーシップ」から「包括的・戦略的パートナーシップ」へ関係を格上げした。東南アジア随一の大国との関係は日本にとって一段と重要になりつつある。なのにこれでは、高関税などで対米関係に苦慮するインドネシアは、中ロの独裁・権威主義体制へますます吸引されて行くだろう。独裁・権威主義体制の広がりは、民主主義陣営のオウンゴールもある。戦後、民主主義を代表して来た米国のトランプ大統領は、第2期政権発足後は内外で民主的規範や価値観を壊して廻り、むしろ独裁・権威主義体制との親和性が滲み出る。先の「民主主義リポート2025」に興味深いデータがあった。誰もが最初から独裁者だったのではない。独裁者45人中27人は民主主義による統治からスタートしているという。キューバの故カストロ首相やフィリピンの故マルコス大統領など独裁者たちへの、我が取材経験を思い起こしても頷ける話だ。独裁者はしばしば有能な統治者として出現する。有能だからこそ独裁者になると言えなくもない。国民も喝采し、歓迎する。ところが彼らの多くは途中から、あるいは徐々に変節し、終には国家や国民に致命的損害を与え舞台を降りる(降ろされる)。なぜ独裁化するか。ことは複雑だ。民主主義があるからと言って安心出来ない。世紀の独裁者、ヒトラーは当時もっとも民主的と言われたワイマール憲法の下、選挙によって合法的に登場した。折しも今年のノーベル平和賞は反独裁を掲げる南米ベネズエラの野党指導者マチャド氏に決まった。平和賞委員会も「独裁の世紀」化を憂慮している証拠だろう。かつて有数の産油国で豊かだったベネズエラは、大衆の圧倒的人気を得た故チャベス大統領の反米・独裁的統治により民主主義は死に、今や破綻国家も同然だ。国外脱出者はこれまでに約800万人にも上る。独裁政治のツケがもたらした最悪の事例の1つと言える。マチャド氏の戦いの強力な支援者は、ノーベル平和賞が欲しくてたまらなかったトランプ氏である。これを機にトランプ氏も反独裁・民主主義擁護に転じてはどうか。評価は確実にアップする。変身トランプを見たい。
- 16 Oct 2025
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第2回日中原子力産業セミナーを開催 福島県と茨城県への視察も
日本原子力産業協会は9月25日、中国核能行業協会(CNEA)と共催で「第2回日中原子力産業セミナー」を7年ぶりに対面で開催した。中国からは、CNEA、中国核工業集団有限公司、中国広核集団有限公司、中国華能集団有限公司、香港核電投資有限公司、清華大学など関連企業・機関から16名が参加。日本からは、日本原子力産業協会、日本原子力発電、電気事業連合会など、関連企業・機関から43名(オンライン傍聴を含む)が参加した。同セミナーでは「原子力発電所の運転および新規建設」をテーマに、両国の原子力産業界がそれぞれ知見を共有し、対話を通じて一層の交流促進と協業の可能性を探った。特に、中国で次々と進められる新規建設プロジェクトに関する実践的な知見について、日本側の参加者から「多くの学びを得られた」との声が上がった。また、中国の訪問団一行は、日本滞在中に、福島県および茨城県内にある複数の原子力関連機関・施設を訪問した。福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館への視察では、東日本大震災の発生から今日に至る復興への取り組みについて、映像や展示物を通じて説明があり、関係者との質疑を通じて現状理解を深める場が設けられた。東京電力福島第一原子力発電所構内の視察では、バスから乾式キャスク仮保管設備や多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水を保管するタンクなどを見学し、その後、展望デッキにて1~4号機の廃炉作業、さらに、ALPS処理水のサンプルを用いた海洋放出に関する説明が行われた。参加者からは、発電所構内での作業員の安全確保や放射線管理、今後の解体工程などに関する質問が多く寄せられ、現場の細部に至るまで強い関心が示された。福島県の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターへの視察では、同センターの設立の経緯や役割、国内外の機関との連携実績や技術実証事例についての紹介があった。そして、VR/AR技術を活用したシステムのデモンストレーションの実施、施設内の試験棟の視察が行われ、関係者との質疑応答の時間には、将来的な技術交流の可能性に関する話があがった。茨城県のJAEA原子力科学研究所の視察では、世界最大級の加速器施設として幅広い研究に利用されているJ-PARCの見学、また、中性子利用研究の中核拠点であるJRR-3の見学が実施された。それぞれの施設の運用体制や、各分野への活用・応用事例が示され、中国出身の研究者による中国語での解説を交えた活発な質疑応答が行われた。〈詳細はこちら〉
- 14 Oct 2025
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日本製ジャイロトロン ITERに初号機据付け完了
量子科学技術研究開発機構(QST)は8月21日、南フランスのサン・ポール・レ・デュランス市で建設中の国際核融合実験炉(ITER)にて、日本製の高出力マイクロ波源「ジャイロトロン」の初号機の据付けを完了したと発表した。「ITER」プロジェクトは、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドが協力し、核融合エネルギーの実現に向けて科学的・技術的な実証を行うことを目的とした国際プロジェクトだ。日本は、主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTが同計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。据え付けが完了したジャイロトロンの開発では、日本が高いプレゼンスを発揮しており、ITERで使用する全24機のうち8機が日本製だ(キヤノン電子管デバイス株式会社が製造)。QSTは、ジャイロトロンの研究開発を1993年に開始し、2008年に世界で初めてITERが要求する出力、電力効率及びマイクロ波出力時間を満たすジャイロトロンの開発に成功した。このほど、世界に先駆けて1号機を設置したことは、同分野における日本の技術的な優位性を改めて示す結果となった。ジャイロトロンは出力のマイクロ波を発生させる大型の電子管(真空管)で、磁力線に巻き付いた電子の回転運動をエネルギー源としている。名前の由来は、磁場中の回転運動(ジャイロ運動)から来ている。核融合反応を起こすために高温状態をつくりだす役割を担っており、電子レンジのようにマイクロ波を発生させて加熱する。装置の全長は約3メートルで、出力100万ワットは電子レンジの約2000倍に相当する。
- 27 Aug 2025
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三菱重工 中国の発電所向けに循環水ポンプ供給へ
三菱重工業は7月2日、中国三大重電機器メーカーの東方電気グループ傘下にある東方電機(東方電機有限公司:Dongfang Electric Machinery Co.Ltd.)と共に、中国の三門原子力発電所5、6号機向けに4基の循環水ポンプを受注したことを発表した。受注額や工期は非公表。両社は今年3月、パートナーシップを締結しており、今回の受注は、両社の協業による初の受注。兵庫県の高砂製作所にて製造され、順次納入される予定だ。両社は今後、中国の原子力ポンプ市場でのシェア拡大を目指すという。循環水ポンプは、タービンから排出される蒸気を冷却して水に戻す復水系統で用いられる大型機器で、原子炉の安定運転を支える重要機器だ。同社は、これまでに500基超の納入実績がある。三門原子力発電所は、中国南東部の海岸沿いに立地し、今回、循環水ポンプを供給する5・6号機は、稼働中の1・2号機(PWR、125.1万kWe)、建設中の3・4号機(PWR、125.1万kWe×2)に次いで建設される予定で、PWRの「華龍1号/HPR1000」を採用している。
- 25 Jul 2025
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日立とQST ITER向けダイバータ部品の試作に成功 認証試験に合格
日立製作所と量子科学技術研究開発機構(QST)は7月23日、国際核融合実験炉「ITER」向けに、炉内機器のひとつであるダイバータの主要部品「外側垂直ターゲット」の試験体を製作し、ITER機構による認証試験に合格したと発表した。「ITER計画」とは、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7か国と地域が協力し、核融合エネルギーの実現に向けて科学的・技術的な実証を行うことを目的とした国際プロジェクト。現在、実験炉の建設がフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進められている。日本は、ダイバータやトロイダル磁場コイル(TFコイル)をはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTは、同計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。ダイバータは、トカマク型をはじめとする磁場閉じ込め方式の核融合炉における最重要機器のひとつ。核融合反応を安定的に持続させるため、炉心のプラズマ中に燃え残った燃料や、生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担っている。トカマク型装置の中でプラズマを直接受け止める唯一の機器で、高温・高粒子の環境にさらされるため、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされる。日立は、長年にわたる原子力事業で培った技術と経験を結集し、高品質な特殊材料の溶接技術と高度な非破壊検査技術を開発し、検証を重ねた結果、ITER機構から要求される0.5ミリ以下の高精度な機械加工と組み立てを実現。また、製作工程や費用の合理化を図るため、ダイバータ専用に最適化した自動溶接システムを開発した。2024年7月には、三菱重工業がすでにQSTとプロトタイプ1号機を完成させていたが、今回、日立の製作技術も正式に評価されたかたちだ。QSTはこの部品を全58基に納入予定。うち、18基は先行企業が製作を担当し、残る40基の製作企業は今後決定される見通し。
- 24 Jul 2025
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日本政策投資銀行 SMRの動向と産業戦略に関する調査研究を公表
日本政策投資銀行は7月11日、「電力需要増加への対応と脱炭素化実現に向けた原子力への注目~海外で取り組みが進むSMRの動向と産業戦略~」と題した調査研究レポートを発表した。著者は同行産業調査部の村松周平氏。同レポートでは、電力需要の増加と脱炭素化の実現に向け、世界的に原子力発電の重要性が再認識されていると指摘。革新軽水炉・高温ガス炉・高速炉・小型モジュール炉(SMR)および核融合などの次世代革新炉の開発が加速するなか、それらの導入に向けた論点や日本の産業競争力強化に向けたあり方を提言している。特にSMRは、技術成熟度の観点から実現可能性が高く、大型軽水炉における課題を克服し得る特徴を有しており、米国などではSMR導入に向けた規制や政策的支援の整備が進んでいる。日本もこうした動きに呼応し、先行する海外プロジェクトへの参画が大きな意味を持つ、との見方を示した。一方で、次世代革新炉の初期の実装においては、多様な不確実性に対処する必要があり、サプライチェーンの整備、規制と許認可プロセスの合理化と確立、政府や電力需要家を含めた適切なリスクシェアなどの議論が不可欠と強調している。また、日本では2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画において、「原子力の最大限活用」が明記され、単一電源種に依存しない電力システムの構築が急務となっていることを指摘。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入が進む一方で、その発電量の不安定さから需給バランスの課題についても言及されている。さらに、西側諸国で長期間にわたり新規建設が途絶え、1,000万点にも及ぶ原子力サプライチェーンが崩壊の危機に瀕したこと、また、その間に中国とロシアは政府が主導して原子力サプライチェーンを戦略的・継続的に強化したことを踏まえ、原子力発電所の新設やサプライチェーンの維持・強化は自国の電力システムのみならず、国際的な安全保障や産業競争力にとっても重要な意味を持つとした。その他、同レポートでは、各種次世代炉の技術的特性、また、FOAKリスク(First of a Kind、初号機)への対応の必要性が記されている。同様に、諸外国のSMR開発・社会実装の動向を踏まえ、日本としても、中長期的なSMRの導入可能性を見据えて、海外プロジェクトへの参画や人材・部品供給の支援を通じて、競争力強化と安全保障上の優位性確保が急務であるとした。そして最後に、安全性への客観的な判断と丁寧な対話を通じた社会的受容も不可欠であり、脱炭素化やエネルギー安全保障の実現に向け、政治・産業界による継続的な支援の必要性を強調している。
- 18 Jul 2025
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原産協会・増井理事長 年次大会を総括
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は5月30日、定例の記者会見を行い、4月に開催された「第58回原産年次大会」の総括をはじめ、最近の海外出張の報告や今後の取組みについて説明した。増井理事長はまず、4月8日、9日に開催された原産年次大会の総括が30日に公表されたことを受け、その概要を報告。「原子力利用のさらなる加速―新規建設の実現に向けて」を基調テーマとして掲げた同大会について、「安定したサプライチェーンと人材確保、国による明確なビジョンと戦略が不可欠という認識が改めて共有された」と総括した。さらに、海外登壇者を招いたセッションでは、海外の成功事例や教訓を踏まえた課題と対応策の議論を通じて、「新規建設の重要性を改めて発信する機会となった」と振り返った。記者から、「国内外の若手技術者による講演や、学生パネリストを交えたグループディスカッションに特に大きな盛り上がりを感じたが、この熱気をどのように一般の人に伝えていくか」と問われたのに対し、増井理事長は、「当協会が長年実施している出前授業が果たす役割は大きい。エネルギー問題への関心が高まるような施策を、これからも進めていきたい」と今後に意欲を示した。 また、増井理事長は、4月15日~17日にカナダ・オタワで開催されたカナダ原子力協会(CNA)の年次大会に参加。さらに、4月29日~30日に韓国・ソウルで開催された「第40周年記念韓国原子力産業協会(KAIF)年次大会」にも出席し、それぞれの参加概要を報告した。韓国では、日本の原子力発電の現況を発信するとともに、国際展開を志向する会員企業を海外企業に紹介したことなどを説明した。このほか、中国核能行業協会(CNEA)主催の「中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春(CNESDS)」や、同時開催された「第16回中国原子力産業国際展示会(CIENPI)」にも参加。JAIFブースの出展に加え、CNEA協力のもと、中国の原子力関係施設への視察を行ったことも明らかにした。
- 02 Jun 2025
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トランプ大統領の「最大の脅威は中国」は本当か
トランプ米大統領の60か国・地域への相互関税発表(9日発動)以来、課せられた国々の反発、株式市場の暴落、インフレ・景気後退懸念など、予想を超える激震が続いている。しかしこれはまだ序の口である。もしかするとトランプ氏は、世界を未踏の領域へと道連れにしつつあるのかもしれない。それにしても中国(34%)にはもう少し高くても良かったのにと思う。先行の追加関税を加えた54%は各国の中では確かに高い。しかし商務省によれば昨年の米国の貿易赤字額は中国が2,954億ドルと断トツのトップである。なのに赤字額で言えば微々たるカンボジアの49%を筆頭に、ラオス48%、ベトナムに46%、ミャンマー44%はヒドイ。これでは小国いじめだ。タイ36%、インドネシアと台湾32%などを併せ考えると、これは東・東南アジアへの狙い撃ちも同然で、対中政策の要・インド太平洋をどうしようというのかと勘繰りたくなる。もっと言わせて頂けば相互関税は中国だけに絞れば良かったのだ。その方が問題が分かり易い。「暴論」かもしれない。しかしトランプ関税自体が暴論なのだ。暴論には暴論を。というのもトランプ氏が第1期政権以来一貫して「最大の脅威は中国」と言い続けて来たにしては、言葉と行動が未だ合致していないこともある。例は相互関税だけに留まらない。トランプ氏がウクライナ停戦を急ぎ、ロシアのプーチン大統領にすり寄るのも、デンマーク自治領グリーンランドを召上げようというのも、さらにはパナマ運河の再支配を目論むのも、すべては真の敵・中国との戦いに持てるリソースのすべてをつぎ込み、集中するためと解説されてきた。果たして本当にそうだろうか。トランプ戦線は「標的」が増えるばかり。これでは一体何時になったら本命・中国に立ち向かうのか?たとえ本当でも時間切れにならないか?トランプさん、貴方はそもそも中国とどうしたいの?疑問が次々と湧く。24時間で終わらせてみせると一時豪語したウクライナ戦争は、停戦協議が未だ進行中だ。ロシアのプーチン大統領は手練手管でトランプ氏の気を引きつつ時間を稼ぎ、ウクライナは一寸の虫にも五分の魂で粘る。協議が長引けば対中戦は遅れる。加えて米中和解に中ソ対立を利用したニクソン元大統領の逆張りを行くロシアへの接近と中ロ離反策も、肝心の中国との紐帯は揺らぐ気配はまったくない。おまけにカナダやデンマーク、パナマ、NATO(北大西洋条約機構)など同盟国や友好国へのつれない態度に比して、ライバル中国には思いの外に大人の対応だ。アベコベではないだろうか。今年1月、インドネシアがASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国では初めて中ロ主導のBRICS(新興5か国=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加盟、内外に衝撃を与えた。一昨年、サウジアラビア、イラン、エジプトなど6か国もの加盟承認を発表した際に、インドネシアのジョコウィ大統領(当時)は欧米中心の先進国クラブと言われるOECD(経済協力開発機構)加盟優先を理由に、加盟の誘いを断った。プラボウォ大統領が僅か1年余りで豹変したのは、BRICSの勝利と言えなくもない。ASEANではタイ、マレーシアも加盟希望を表明済みだ。マレーシアのアンワル首相は「もう米国は怖くない。気にすることはない」と言ったとか。真偽のほどは不明だが、ASEAN諸国の空気を代弁しているように感じる。今回のASEAN6か国への高関税は、米国頼むに足りずどころか不信感を増し、こうした流れに拍車を掛け兼ねないと懸念する。離米・反米の流れが世界に広がる可能性だってある。喜ぶのは中ロだ。トランプ氏の疲れを知らぬ獅子奮迅ぶりは持ち時間が限られていることもあると言える。再選はなく(当人はウルトラCを望んでいるが)、来年はもう中間選挙である。中間選挙で与党苦戦の通例を覆せず共和党多数派議会が崩れると、大統領は急速にレイムダック化する。トランプ氏を見ながら思い浮かぶ諺は「急いては事を仕損じる」である。以上、トランプ氏の「中国は最大の脅威」論を巡る疑問を呈してきた。ひょっとしてトランプ氏は米ロ中3極による世界3分割支配を考えているのではないかというのが、疑問への私なりの答えである。あくまで仮説だが、そう考えた方が腑に落ちる。トランプ氏は米国の世界への責任や支配などに関心は薄く、とにかくアメリカ・ファーストである。同盟国カナダにかくも攻撃的なのも、吸収して南北アメリカを手中に収めたいのだ。その先のグリーンランドも買収すればさらに結構。小国パナマは言うに及ばず。欧州はロシアに、アジアは中国に、それが嫌なら自分たちで戦って彼らに勝て。春眠暁を覚えず、何やら悪い夢を見てしまったのだろうか。
- 07 Apr 2025
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中国 漳州1号機が運開 基数でフランスを抜く
中国・福建省で昨年11月から試運転中だった、中国核工業集団公司(CNNC)の漳州(Zhangzhou)1号機(PWR、112.6万kWe)が2025年1月1日、営業運転を開始した。炉型は、中国開発のPWRである華龍一号(HPR1000)。同機は2019年10月に着工、国内の商業炉としては57基目となり、基数では世界第2位のフランス(56基)を抜いた。華龍一号としては国内5基目となる。漳州サイト内では、今回運開した1号機のほか、計3基が建設中。2号機が2020年9月に着工し、漳州第Ⅱ発電所1、2号機は、2024年2月と9月にそれぞれ着工した。さらに、CNNCは、華龍一号を2基採用した漳州第Ⅲ発電所を計画中である。総投資額1,000億人民元(約2兆1,500億円)超の漳州プロジェクトは、CNNC(51%)と中国国電公司(49%)の合弁企業である国電漳州エナジー社が運営している。華龍一号は、中国が知的財産権を有する第三世代の原子炉。設計上の運転期間が60年で、運転サイクル期間は18か月。安全系に動的と静的両方のシステムを装備し、格納容器は二重構造となるなど、中国は最高の国際安全基準を満たす原子炉と誇っている。また、中国の主力輸出炉としても位置付けられ、海外への輸出実績もある。既にパキスタンのカラチ原子力発電所で2021年5月に2号機が、2022年4月に3号機がそれぞれ営業運転を開始している。昨年末には、同じくパキスタンで、華龍一号を採用したチャシュマ5号機が着工したばかり。そのほか、2022年2月には、アルゼンチンの国営原子力発電会社(NA-SA)とCNNCが、アルゼンチンへの華龍一号の建設に向けてEPC(設計・調達・建設)契約を締結したほか、トルコなどへのプラント輸出の動きもある。
- 10 Jan 2025
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