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ボーグル3号機が営業運転開始 米国初のAP1000
米ジョージア・パワー社は7月31日、ジョージア州内のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中だった3号機(PWR、110万kW)が、同日付で営業運転を開始したと発表した。同機は今年3月に初臨界に達した後、4月に送電網に接続されていた。建設費の高騰やスケジュールが6年以上遅延するなど難産ではあったが、米国でようやくウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000が本格稼働した。米国で新たに着工した商業炉としては、約35年ぶり。建設工事と各種試験が最終段階に入った同型の4号機は、早ければ年末に起動できる見通しだ。ボーグル3、4号機はジョージア州内の4社が共同保有しており、ジョージア・パワー社が45.7%、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%それぞれ出資。米エネルギー省(DOE)から83億3,000万ドルの政府融資保証適用を受けた唯一の新設プロジェクトとして、3、4号機はそれぞれ2013年の3月と11月に本格着工しており、当時は2017年と2018年の完成を予定していた。一方、サウスカロライナ州では、これらとほぼ同時期にスキャナ社とサンティー・クーパー社がV.C.サマー原子力発電所で、同じくAP1000を採用した2、3号機を着工したが、2017年3月のWH社の倒産申請を受けて同プロジェクトは中止となった。ボーグル発電所では、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転会社となるサザン・ニュークリア社が、WH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続。この間、ジョージア・パワー社は2020年4月、新型コロナウィルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減している。また2021年7月末に3号機の温態機能試験が完了したものの、翌8月に原子力規制委員会(NRC)から「安全系に係わる電気ケーブルの配管が正しく設置されていない」と指摘されたこともあり、運転開始スケジュールは徐々に先送りされている。3号機ではその後、安全性と品質に関する398項目の厳しいチェックが行われ、サザン・ニュークリア社のチームは2022年7月、「(同機が)運転開始前の検査や試験、解析等に関する基準(ITAACs)をすべて満たした」とする文書をNRCに提出した。NRCは同文書およびその他の提出物を厳格に審査した結果、「3号機が建設・運転一括認可(COL)とNRCの規制どおりに建設され、運転も行われる見通し」と確認。同年8月にその確認事項書「103(g)」をサザン・ニュークリア社に送付し、同機の燃料装荷と起動を許可していた。ジョージア・パワー社は今回、4号機についてもサザン・ニュークリア社が前の週にNRCから「103(g)」を受け取ったことを明らかにしている。4号機は今年5月に温態機能試験を完了しており、建設サイトにはすでに同機用の初装荷燃料集合体157体も到着。現在の日程では、今年の第4四半期後半、あるいは2024年の第1四半期に同機の運転を開始する見通しである。 (参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Aug 2023
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WH社 英政府補助金で燃料工場を拡張へ
米ウェスチングハウス(WH)社は7月27日、英国スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレード用として、英国政府の「原子燃料基金(NFF)」の中から総額1,050万ポンド(約19億1,200万円)の補助金を獲得したと発表した。2025年3月末までに交付される見通しだ。WH社はこの補助金を次世代原子炉関係の3つの用途に使用する予定で、まず第3世代+(プラス)の同社製PWRであるAP1000、およびその出力縮小版のAP300など、様々な軽水炉に使用する原子燃料を同工場で製造。英原子力産業界が将来にわたって、最新の燃料を供給できるようにする。また、英国での新規炉開発に備え、WH社は同工場でのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造検討に補助金を活用する。同社はさらに、カナダのテレストリアル・エナジー社および英国立原子力研究所(NNL)との協力に基づき、テレストリアル社製の小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)に使用する4フッ化濃縮ウラン(UF4)燃料と熔融塩燃料の試験製造にも補助金を活用する方針だ。NFFは2022年7月、英国内の原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が発電用原子燃料の国内製造拡大を目的に、7,500万ポンド(約136億5,700万円)の予算で設置した。これは、2050年までに国内の民生用原子力発電設備を2,400万kWまで拡大(現在は653.4万kW)して、英国のエネルギー供給を保証するには、しっかりとした燃料サプライチェーンを国内で確保・維持することが重要との認識に基づいている。英国政府はすでに2022年12月、NFFの7,500万ポンドのうち最大1,300万ポンド(約23億6,700万円)をWH社のスプリングフィールド・サイトに提供すると決定した。英国内で稼働する既存のガス冷却炉(AGR)用として、回収ウランと新たに採掘されたウランの両方を転換する能力の開発を目的としたもの。これにより、現時点でロシア以外の国では不可能な回収ウランの転換を可能にし、国際社会がロシアの燃料供給から脱却することを目指している。今年1月には、英国政府はNFFに残っている約5,000万ポンド(約91億円)の中から、資金提供するプロジェクトの競争入札を開始した。ここでの目的は、SMRを含む軽水炉用として英国産の燃料サプライチェーンを新たに構築するとともに、2030年代以降に運転開始が見込まれる先進的モジュール炉(AMR)用のHALEU燃料など、新しいタイプの燃料製造プロジェクトを支援すること。BEISのエネルギー政策を今年2月に引き継いだエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月18日、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、今回総額2,230万ポンド(約40億6,200万円)の補助金をNFFから拠出するすると発表した。WH社の燃料製造工場に交付する1,050万ポンド以外では、カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に950万ポンド(約17億3,000万円)を拠出し、低濃縮ウランおよびHALEU燃料の製造を支援。また、AMRの一つである熔融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEX社に120万ポンド(約2億1,800万円)以上を交付し、バーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転を支援するとしている。(参照資料:WH社、英国政府①、②、③の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Jul 2023
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スロバキア WH社製原子炉の建設可能性模索で覚書
スロバキアの国営バックエンド企業であるヤビス(JAVYS)社は7月17日、国内で米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000や小型モジュール炉(SMR)AP300を建設する可能性を探るため、同社と2件の了解覚書(MOU)を締結した。スロバキアでは現在、WH社製原子炉を導入して国内の原子力発電設備容量を拡大できるか評価中。1件目のMOUで技術面やビジネス関係の詳細協力の枠組みを設定し、もう一件では、これらの原子炉の将来的な建設プロジェクト実施に向けた道筋を模索する。経済省が100%出資するヤビス社は、スロバキアで放射性廃棄物の管理を担当するほか、原子力施設の廃止措置のみならず増設と運転にも責任を負っている。同社はボフニチェ原子力発電所(ロシア型PWR×2基、出力各50万kWの3、4号機のみ稼働中)で将来的に5号機を増設するため、2009年にチェコ電力(CEZ社)との共同出資で建設および運転を担当するJESS社を設置。その際、ヤビス社が51%を出資した。ヤビス社はJESS社の親会社としてスロバキアの国益のため、利用可能な原子炉をすべて評価し、スロバキア政府が新たな原子炉の炉型や出力、立地点を最終決定するに当たり、選択肢を提示することになっている。今回の覚書で、ヤビス社は特にSMR建設プロジェクトの実施を念頭に置いており、このような新技術に関する情報をWH社と幅広く交換し、スロバキアのエネルギー供給網に加えられるかの適性を精査する。100万kW級のAP1000の出力縮小版となるAP300(出力30万kW)について、同社はWH社から「AP1000と同じ実証済みの技術を採用しているため、同様の許認可手続きが適用され、サプライチェーンも同じものが利用可能。同じく受動的安全系や負荷追従運転の能力も備えている」と説明されており、その建設と運転・メンテナンスを通して両設計の間でかなりの相乗効果が期待できると考えている。WH社は今年5月にAP300を発表。今回新たに、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し2030年までに初号機の建設を開始、2033年までに運転開始するとの見通しを明らかにした。WH社との協力について、ヤビス社のP.シュトレル会長兼CEOは、「ボフニチェ原子力発電所1、2号機の廃止措置など、WH社とは以前から長期的な協力関係にある」と指摘。これに加えて、WH社はスロバキアで稼働するロシア製原子炉向けに新燃料を提供するなど、燃料の調達先多様化にも貢献している。在スロバキア米大使館のG.ラナ大使は、「2件の了解覚書を通じて両国の企業が民生用原子力部門で商業レベルの協力を一層緊密にする基盤が築かれた」と歓迎している。(参照資料:WH社、ヤビス社(スロバキア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Jul 2023
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ポーランド政府 PEJ社のAP1000建設計画にDIP発給
ポーランドの気候環境省は7月11日、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉建設について、「原則決定(DIP)」を発給した。これは、原子力発電所の建設計画でポーランド政府が下した最初の主要な行政判断。同県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)のPWR「AP1000」を最大3基建設する計画が、エネルギー政策等の国家政策に則したものであり、国民の利益にも適うと正式に認めた。事業者となるPEJ社は今後、立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。ポーランド政府としても、国家のエネルギー供給ミックスがより良い方向に向かい、供給が強化される節目になったと強調している。ポーランドでは改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)を建設する。最初の3基、合計375万kWをポモージェ県内で建設・運転する場合の環境影響を評価するため、PEJ社は2022年3月にルビアトボ-コパリノ地区のほか、近隣のクロコバとグニエビノの両自治体が管轄するジャルニビエツ地区でも影響分析を実施。政府は同年11月、最初に建設する3基の採用炉型としてWH社製のAP1000を閣議決定した。PEJ社は今年4月に提出したDIP申請書で、このような建設計画の概要を明記。最大設備容量のほかに、2026年に初号機を着工して2033年の完成を目指す等の建設スケジュールや、採用されたAP1000技術の詳細等の記載もあった。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ-チェジャコフスカ首相府担当相は、「国内のエネルギー供給を強化しながらポーランド政府は脱炭素社会への転換を進めており、原子力開発計画はそのために同時進行している数多くのプロジェクトの一つだ」と説明。「今回のDIPの決定により、ポーランドは初の原子力発電所の実現に近づいており、将来の発電システムの基盤として適切な発電量を確保できるようになる」と強調している。ポーランドではこのほか、鉱業大手のKGHM銅採掘会社が米ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)を、また化学・石油合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が米GE日立・ニュクリアエナジー社のSMR「BWRX-300」を国内で建設すべく、今年4月にDIPを気候環境省にそれぞれ申請した。また、同国中央部のポントヌフでは、韓国水力・原子力会社(KHNP)が韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指しており、国有資産省(MOSA)が一部出資するエネルギー企業のZE PAK社は今年3月、PGE社と合弁の特別プロジェクト企業を設立する方向で予備的合意に達している。(参照資料:ポーランド政府、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jul 2023
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米印首脳 インド・コバダにおけるAP1000建設計画を確認
米国のJ.バイデン大統領と、国賓として訪米したインドのN.モディ首相は6月22日、ホワイトハウスにおける首脳会談で「世界規模の包括的戦略パートナーシップ」の強化で合意。その際発表した共同声明では、両国が半導体や重要鉱物、技術、防衛等の分野で協力を深めるとともに、インドのコバダで計画されている米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000の建設を進めていくことを改めて確認した。両国政府は、インドにおける電力不足の緩和と米国からの原子力輸出という双方の目的に向け、2008年に米印原子力協力協定を締結。その際、原子力資機材や技術の輸出を管理している国家間組織の「原子力供給国グループ(NSG)」は、米国の働きかけにより核不拡散条約(NPT)に未加盟のインドを特例扱いとする決定を下した。また、2009年にインド内閣は、西海岸グジャラート州のミティビルディをWH社製100万kW級PWR×6基の建設用地に、東海岸アンドラ・プラデシュ州のコバダをGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製100万kW級BWR×6基の用地に暫定指定した。しかし、メーカー側に一定の賠償責任を盛り込んだインドの原子力賠償法がネックとなり、これらの計画は進展して来なかった。また、机上のみでモデルプラントがまだ建設されていないGEH社製ESBWR(高経済性・単純化BWR)の建設にインド政府が難色を示したこともあり、コバダのサイトは2016年に正式にWH社製AP1000の建設用地に変更された。今回の共同声明で米印両国の首脳は、世界規模の脱炭素化において原子力が重要な役割を担うことを強調するとともに、地球温暖化への対処とクリーン・エネルギーへの移行、エネルギーの供給保証という側面から、原子力が両国にとって必要なエネルギー源であることを確認。インド原子力発電公社(NPCIL)とWH社が現在も6基のAP1000建設計画について交渉中であることから、インド原子力省(DAE)と米エネルギー省(DOE)がコバダでの建設実現に向けた協議を加速していることを歓迎した。両首脳はまた、次世代の原子炉である小型モジュール炉(SMR)の米国内での建設や輸出に向け、両国が協議中である点に言及。インドのエネルギー政策には現時点でSMRの導入計画が含まれていないが、同国が将来的にNSGに加わり先進的原子力技術の受領国となれるよう、米国は引き続き支援していくと約束している。インドでは現在、22基、678万kWの原子炉が営業運転中のほか、1基、70万kWが試運転中。このうち2基、200万kW分がロシア型PWR(VVER)で、2基、32万kW分は1960年代に米GE社が建設したBWR。残りはすべて国産の加圧重水炉(PHWR)で、出力は最大でも70万kWである。(参照資料:米ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Jun 2023
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ウクライナ原子力発電所のバックフィット契約受注 WH社
米ウェスチングハウス(WH)社は6月13日、ウクライナのリウネ原子力発電所1、2号機(各44万kW級ロシア型PWR=VVER-440)を近代化する計画の一環として、「格納容器長時間冷却システム(LCCS)」を設計・製造・納入する契約を、同国の原子力発電公社であるエネルゴアトム社と交わした。この契約締結はエネルゴアトム社側の要請に基づくもので、先進的LCCSを導入することで過酷事故時のVVER-440の安全性を大幅に向上させるのが目的。WH社はVVER-440用に取得した特許技術を用いてLCCSを製造し、来年にもリウネ発電所に納入する。リウネ原子力発電所には100万kW級VVER(VVER-1000)の3、4号機も設置されており、これらの格納容器や安全系は基本的に西側諸国の安全要件を満たすとされている。しかし、VVER-440シリーズの原子炉は格納容器がない等、安全上の欠陥もいくつか認められている。「VVER-440の過酷事故管理」支援のため、WH社がLCCSを製造するのは今回が初めてになる。WH社によると、LCCSの導入によって事故時に格納容器内の熱が確実に除去され、効果的な減圧が可能になる。エネルゴアトム社が所有するVVER-440では、今後数十年にわたる安全性確保で、同発電所全体の安全裕度も大幅に上昇。これらを通じて、WH社はウクライナが安全・確実で信頼性の高いエネルギーを得られるよう支援していく考えだ。両社はすでに2000年代から協力関係にあり、エネルゴアトム社は2021年8月、建設工事が中断しているフメルニツキー原子力発電所4号機も含め、合計5基のWH社製AP1000の建設を視野に入れた契約をWH社と締結。2022年6月の追加契約ではこの基数が9基に増加したほか、ウクライナに設置されている15基のVVERすべてにWH社製燃料が供給されることになった。なお、WH社はウクライナの原子炉も含め、欧州連合(EU)域内で稼働するVVERの燃料を緊急に確保するため、3年計画の「Accelerated Program for Implementation of secure VVER fuel Supply (APIS)」プログラムを今年1月から主導している。ロシアのウクライナ侵攻に起因するもので、同計画にはEUが2023年~25年までの「ユーラトム(欧州原子力共同体)作業プログラム」を通じて共同出資中。同プログラムでは、WH社が燃料製造工場を置いているスウェーデンの支社を調整役とし、パートナーとしてECの科学・情報サービス機関である合同研究センター(Joint Research Centre)やスペインのウラン公社(ENUSA)、ウクライナのエネルゴアトム社、スロバキアの原子力研究所(VUJE)とスロバキア電力、チェコの原子力研究機関(UJV)とチェコ電力(CEZ)、ハンガリーのパクシュ原子力発電所、フィンランドのフォータム社など11の機関/企業が参加。VVER-440用燃料の早期出荷に向けて同燃料の設計作業を完了することや、VVER-440とVVER-1000用に改良型燃料の開発などが主な作業項目となっている。(参照資料:WH社、エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Jun 2023
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WH社とブルガリア企業 AP1000建設に向けFEED契約締結
米ウェスチングハウス(WH)社は6月14日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWRの5、6号機のみ稼働中)における同社製AP1000の建設に向け、プロジェクト企業のコズロドイ原子力発電所増設(KNPP-NB)会社と「基本設計(FEED)」契約を締結した。今年3月に両社が結んだ了解覚書の合意事項に基づくもの。WH社はこの契約で、AP1000の建設に必要な同発電所の既存インフラや、ブルガリア産業界の現状等を評価し、詳細設計の予備的作業や建設工事の準備を進めていく。3月の覚書で両社はAP1000の建設計画の立案に向け、共同作業グループの設置を決めている。同グループは現在、ブルガリアにおける原子力規制や許認可手続き、設計要件などを評価するとともに、ブルガリア政府が今年1月に発表した新しいエネルギー戦略に沿って、建設プロジェクトを合理的に進める方法等を検討。FEED契約で実施する課題や概算経費などの評価作業は、その最初のステップとなる。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟した際、これと引き換えに2006年までに安全上問題のあるコズロドイ1~4号機(各ロシア型PWR、44万kW)をすべて閉鎖し、現在5、6号機だけで総発電量の約35%を賄っている。追加の原子炉建設は1980年代から継続的に検討しているが、採用炉型はその時々の政権の意向により、2012年に頓挫したベレネ原子力発電所建設計画の製造済み機器を再利用する案や、WH社製AP1000を新たに建設する案など二転三転した。今年1月の新エネルギー戦略の中で、ブルガリア政府は既存のコズロドイ発電所と新規のベレネ発電所で原子炉を2基ずつ建設する方針を表明。同国議会はその数日前、コズロドイ発電所にAP1000を導入することを念頭に、米国政府と政府間協定(IGA)の締結交渉を開始する方針案を可決していた。また、KNPP-NB社の親会社であるコズロドイ原子力発電所は昨年12月、5号機用の燃料を2024年から10年間確保するためWH社と長期契約を締結。同発電所がこれまでロシアから購入していた燃料を、スウェーデンのバステラスにあるWH社の燃料製造工場で製造・納入することになった。WH社によると、同社のAP1000は受動的安全系やモジュール工法など最新の技術を用いた第3世代+(プラス)設計であり、中国ではすでに4基が稼働中のほか、同技術を用いた6基がさらに建設中である。米国でも1基が送電開始するなど、習熟した技術であることから、WH社はブルガリアでは建設作業の一部を地元企業に発注する考えを明かにしている。(参照資料:WH社、KNPP-NB社(ブルガリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Jun 2023
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WH社 北欧2か国でのAP1000とAP300建設に向けフォータム社と協力
米ウェスチングハウス(WH)社とフィンランドのエネルギー企業フォータム社は6月7日、WH社製の大型炉AP1000と小型モジュール炉(SMR)のAP300を、フィンランドとスウェーデン両国で建設する可能性を共同で探るため、了解覚書を締結した。同覚書は、今後両社が実施する技術面や商業面の詳細協議など、協力の枠組みを定めたもの。北欧の両国でWH社製原子炉を実際に建設する際、必須となる前提条件の特定を目的としており、フォータム社は新規の原子力発電所建設で最終的な投資判断を下すのは、後の段階になると説明している。フィンランド政府が株式の約51%を保有するフォータム社は、ロシア型PWR(VVER)2基で構成されるロビーサ原子力発電所を国内で運転する一方、スウェーデンではオスカーシャムとフォルスマルク両原子力発電所にも一部出資している。2022年11月から、両国での原子力発電所新設に向けて2年計画の実行可能性調査(FS)を開始しており、その背景として「社会全体が直面しているエネルギーの自給や供給保証、CO2排出量の実質ゼロ化という課題を解決するには原子力が有効だ」と説明していた。このFSで、同社は大型炉やSMRの新規建設にともなう技術面と商業面の前提条件とともに、政策面や法制面、規制面などの社会的条件についても調査中。新たなビジネス・モデルの構築や関連企業との連携協力も進めており、これまでに英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)のほか、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社、フィンランドの最大手ステンレス鋼生産企業のオウトクンプ(Outokumpu)社、ヘルシンキ市営のエネルギー企業のヘレン(Helen)社とも同様の協力合意に達している。一方のWH社は今年5月、第3世代+(プラス)の大型炉であるAP1000の電気出力を30万kWに縮小したAP300を発表した。1ループ式でPWRタイプのSMRとなる同炉は、設置面積がサッカー・コートの4分の1ほど。その利点として同社は、数あるSMR設計の中でも唯一、すでに中国や米国で稼働中のAP1000で実証済みの技術を用いている点を強調した。同炉はまた、AP1000と同じく負荷追従性に優れ、モジュール工法が可能。主要機器や構造部品もAP1000と同一で、これには受動的安全系や燃料、計装制御(I&C)系も含まれる。このほか、AP1000と同じサプライチェーンを利用でき、許認可手続きの手順も同じになるため、サイトでの工期も短縮されると指摘している。WH社は2027年までにAP300の設計認証(DC)を米原子力規制委員会(NRC)から取得し、2030年までに初号機の建設工事を開始、2033年には運転可能とすることを目指している。同社のD.ダーラム社長は「フォータム社の原子力発電所にはこれまでも、原子燃料その他のサービスを提供しており、当社の重要な顧客である。同社とのさらなる協力により、受動的安全性を備えた原子炉など、当社の先進的で実証済みの技術を北欧諸国に提供し、今後の世代に一層確実なエネルギー供給を保証していきたい」と述べた。(参照資料:WH社、フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Jun 2023
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WH社 マイクロ炉の宇宙利用でアストロボティック社と協力へ
米ウェスチングハウス(WH)社は6月1日、マイクロ炉の宇宙利用を視野に航空宇宙局(NASA)や国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムで協力する可能性を探るため、宇宙用輸送サービス機器の開発企業アストロボティック(Astrobotic)社と了解覚書を締結した。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、WH社は現在、マイクロ原子炉「eVinci」(最大電気出力0.5万kW)の縮小版を開発している。これらの星で行われる研究等の活動に電力を継続的に供給する際、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的。今回の覚書を通じて、両社は宇宙における原子力技術の適用や輸送サービス・システムの開発に集中的に取り組んでいく。また、両社が本拠地を置いているペンシルベニア州のほか、オハイオ州やウエストバージニア州で、宇宙用原子力サプライチェーンの構築や人材の育成を進める方針だ。WH社は昨年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとエネルギー省(DOE)から、月面で稼働可能な核分裂発電システムの設計概念を提案するよう要請された。NASAの主導で有人宇宙飛行と月面着陸を目指す「アルテミス計画」では、2025年に有人宇宙探査機の月面着陸を予定していることから、NASAとDOEはこれに間に合うようWH社を含む3社を選定したもの。3社は月面環境下で少なくとも10年間稼働可能な40kW級核分裂発電システムの予備的設計概念を開発するため、DOE傘下のアイダホ国立研究所と12か月契約を締結、それぞれが約500万ドルの交付を受けていた。NASAによると、核分裂発電システムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でこのようなシステムの能力を実証できれば、火星等への長期ミッションに道を拓くことができる。一方のアストロボティック社は月面着陸船や惑星探査機等の開発産業を牽引しており、これらの機器に電力供給する商用電力サービス「LunaGrid」を月の南極付近に設置する方針。2018年11月に「アルテミス計画」の支援プログラムの一つである商業月面輸送サービスの入札に参加した後、2019年5月に同契約を獲得した3社の一つに選定されていた。(参照資料:WH社、NASAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jun 2023
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WH社とベクテル社 ポーランドでのAP1000建設に向け前進
ポーランド初の大型原子炉としてAP1000を建設予定の米ウェスチングハウス(WH)社とベクテル社の企業連合は5月25日、ポーランドの原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)を交えた3社間協力の主要原則についてPEJ社と合意した。これらの原則は、過去数か月に及んだ両者の集中協議の結果、今年後半に締結されるエンジニアリング・サービス契約への適用条件として、双方の責任範囲や順守しなければならない重要ルールなどを定めたもの。この合意はまた、原子力施設の設計や作業スケジュール、プロジェクト管理、品質保証など、WH社とベクテル社間の協力分野も特定しており、設計段階ではWH社がプロジェクトを主導する一方、建設段階のリーダーはベクテル社になるとしている。PEJ社の発表では、この合意は実質的にエンジニアリング・サービスの契約締結に先立つ最終ステップになる。また、WH社によると、同プロジェクトではすでに一部の許認可手続きやエンジニアリング作業が始まっている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっている。同国政府は2022年11月、これらのうち最初の3基、375万kW分として、安全かつ実証済みの技術を用いた第3世代+(プラス)のPWR設計AP1000を採用すると発表。建設に最適の地点として2021年12月に選定した同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す方針である。採用炉型を決定した翌月、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は、AP1000の建設に向けた実施取り決めについてWH社と合意。今年2月には、設計に先立つフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動について、WH社と実施契約を結んでいる。4月になると、PEJ社はこのプロジェクトの「原則決定(DIP)」発給を気候環境省に申請。DIPの発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると正式に確認したことを意味している。今回の合意について米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使は、「最良の技術でポーランド初の原子力発電所を建設し、後の世代に安価でクリーンな電力を提供するという目標の達成をともに目指すワン・チームとして3社が結束した」と指摘した。WH社のP.フラグマンCEOは、ベクテル社と組んだチームの能力は、米国初のAP1000が4月に送電を開始し、後続の1基も間もなく完成するという事実からも明らかだと強調。世界ではこのほか4基のAP1000が営業運転中であることから、「当社とベクテル社のチームはこのような経験を通じて、ポーランドが環境に優しい確実なエネルギー・ミックスを効率的に確保できるよう協力していく」と述べた。ポーランド気候環境省のA.モスクヴァ大臣は、「2033年の送電開始がいよいよ現実味を帯びてきた」と表明。「このまま行けば、ポーランドは2040年にエネルギーの四分の一までを原子力で賄うという目標の達成も可能だ」と指摘している。なお、ポーランドでは韓国水力・原子力会社(KHNP)も、中央部のポントヌフで韓国製の大型PWR「APR1400」の建設を計画しており、ポーランドの国有資産省(MOSA)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2022年10月末に協力覚書を締結。PGE社とMOSAが一部出資するエネルギー企業のZE PAK社、およびKHNP社はその際、企業間協力意向書(LOI)を締結している。(参照資料:WH社、PEJ社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 May 2023
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米WH社 AP1000のSMR版「AP300」を発表
米ウェスチングハウス(WH)社は5月4日、同社製AP1000の電気出力を30万kWに縮小したPWRタイプの小型モジュール炉(SMR)「AP300」を発表した。今後10年以内に初号機を完成させ、稼働させることを目指している。同社は現在、電気出力が最大でも0.5万kWというヒートパイプ冷却式のマイクロ原子炉「eVinci」を開発中だが、「AP300」はすでに稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000設計に基づいており、いわば「実証済み」のテクノロジー。AP1000はまた、米国と英国、および中国で設計認証を取得したほか、欧州の電力事業者が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」の認証審査をクリアしている。このため同社は、「AP300」では許認可手続き上の利点も備わるなど、顧客にとってはリスクが最小限の提案になると強調している。「eVinci」は2020年12月、米エネルギー省(DOE)が推進する「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2032年の商業化を目指すカテゴリーの炉に分類された。これに対して、WH社は「AP300」では2027年までに原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し、2020年代末に同炉の初号機でサイト関係の認可手続きを完了し建設工事を実施する方針。同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「数あるSMRの中でも『AP300』は唯一、実際の建設・運転経験に裏付けられた設計であり、明確に見通せる建設スケジュールとコストの実証性を兼ね備えた先進的原子炉として世界中の顧客のニーズに応えていく」と述べた。WH社の説明によると、「AP300」は1ループ式の超コンパクト設計で、設置面積はサッカー・コートの4分の1ほど。AP1000と同じくモジュール工法が可能で、同一の主要機器や構造部品を使用、これには受動的安全系や燃料、計装制御(I&C)系も含まれている。また、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用出来るほか、建設にともなう課題への対応策もこれまでの経験から得られている。さらに同炉には、負荷変動に速やかに追従する能力があり、運転管理・保守点検(O&M)の手順もAP1000の18炉・年に及ぶ運転実績から確認済みである。「AP300」で得られる安全でクリーンな電力は、地域暖房や海水の淡水化に利用できるほか、間欠性を持つ再生可能エネルギー源の補完電源としても理想的。将来的には、クリーンな水素を製造する安価な手段としても活用が可能だとしている。 なお、WH社は「AP300」開発チームを率いる上級副社長として、R.バランワル最高技術責任者(CTO)を任命した。同氏はDOEの原子力次官補経験者であり、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」では担当ディレクターを務めるなど、原子力発電分野で数10年の経験を有している。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 May 2023
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ブルガリアでのAP1000建設プロジェクトが前進
米ウェスチングハウス(WH)社は3月2日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWR=VVER-1000×2基)にAP1000を1基以上建設することを視野に、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB社)と協力覚書を締結した。KNPP-NB社は、既存インフラや認可を活用して1~2基の原子炉増設計画を管理するため、コズロドイ発電所が設立したプロジェクト企業。この覚書に基づき、WH社とKNPP-NB社はAP1000の建設計画を立案する共同作業グループを設置する。両社間の協力を拡大して、ブルガリアにおけるエネルギー供給の強化や気候変動防止目標の達成を推進。また、同国の原子力規制に則した建設計画を合理的に進めるため、共同作業グループは同国の設計面や許認可関係の規制体系に改めて取り組んでいく方針だ。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟する際、設計上の安全性に懸念が表明されていた同発電所1~4号機(各44万kWのVVER)を2006年までにすべて閉鎖した。現在は5、6号機の2基だけで総発電量の約35%を賄っているが、追加の原子炉建設は1980年代から継続的に検討中。採用炉型は、その時々の政府の意向により二転三転している。2012年に経済的理由でベレネ原子力発電所建設計画を中止した際、代わりにコズロドイ発電所でWH社製AP1000を採用した7号機の建設案が浮上したものの、資金不足のためWH社との当時の協力合意は期限切れとなった。2020年に政府が7号機の建設を再検討した時点では、規制当局が建設サイトの環境影響声明書の中でWH社製AP1000とロシアのVVERの両方を承認していたが、2021年1月に政府は最終的に、「ベレネ発電所用に購入済みのVVER機器で7号機を建設するのが経済的で合理的」と表明。その一方では、同年2月にKNPP-NB社が米国のニュースケール・パワー社と協力覚書を締結しており、コズロドイ発電所では小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性も出てきた。今年1月には、エネルギー省が2050年までカバーする新しいエネルギー戦略を公表し、コズロドイ発電所と計画中のベレネ発電所で2基ずつ建設する方針を明示している。同国議会はこれに先立ち、コズロドイ発電所の増設計画について票決を行っており、WH社製AP1000の導入に向けて、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針が確定。これにともない、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成を迅速化するため、3月1日までに必要な措置を講じることになっていた。WH社はすでに昨年12月、コズロドイ発電所5、6号機の1基に対し、2024年から10年間にわたり燃料供給する契約を獲得している。今回の覚書について、同社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長は、「当社の技術でブルガリアに経済面や環境面の利点をもたらしつつ、エネルギーの供給保証にも貢献していきたい」と抱負を述べた。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Mar 2023
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米国初のAP1000 ボーグル3号機が初臨界達成
米ジョージア州で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3号機(PWR、110万kW)が3月6日、初臨界を達成した。同機は米国で約30年ぶりの新規炉であり、国内初のウェスチングハウス(WH)社製AP1000となる。同機では今後、起動試験を引き続き実施して、一次冷却系や蒸気供給システムで設計通りの性能が得られることを実証する。出力を徐々に上げて送電網に接続した後は、複数の出力レベルで試験を行いフル出力の達成を目指す。営業運転の開始までにすべてのシステムの機能と運転手順を確認する方針で、同機が供用を開始するのは2月中旬の発表通り5月か6月になる見通し。後続の4号機については、今年の第4四半期後半~2024年第1四半期の終わり頃を見込む。ボーグル3、4号機の建設工事はそれぞれ、2013年3月と11月に開始されており、サザン社傘下のジョージア・パワー社はこの建設プロジェクトに45.7%出資。このほか、オーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)およびダルトン市営電力がそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資している。これら2基の運転は、同じくサザン社傘下のサザン・ニュークリア社が担当する。ジョージア・パワー社の会長と社長を兼任する C.ウォマックCEOは、「今後も起動試験のあらゆる段階で課題の解決に取り組み、3号機を安全に稼働させる」と表明した。WH社のP.フラグマン社長兼CEOも同日、「ジョージア州でこれから数世代の州民に安全で信頼性の高い電力を供給していく重要な一歩になった」とコメント。同社のAP1000により、米国の原子力開発利用に新たな時代が到来したとしている。同社は第3世代+(プラス)のAP1000について、受動的安全系を全面的に採用しておりモジュール工法が可能な省スペース型の設計だと説明。中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中であるほか、ポーランドは最初に建設する大型炉3基にAP1000の採用を決定した。ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中の様々なサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 07 Mar 2023
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ポーランドのPEJ社 設計に先立つ初期活動でWH社と契約
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業子会社Polskie Elektrownie Jądrowe (PEJ)社は2月22日、同国初の大型原子炉の建設に向け、米ウェスチングハウス(WH)社とフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動を実施する契約を締結した。ポーランド政府は国内の複数のサイトで、2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設する計画で、2022年11月には最初の3基、小計375万kW分に採用する設計として、WH社製の第3世代+(プラス)PWRであるAP1000を選定した。同国北部のルビアトボ-コパリノ地区で2026年にも初号機の建設工事を開始し、2033年の完成を目指している。2022年12月には発電所のレイアウトなど、プロジェクトの細かな取り決め事項についてWH社と合意している。今回結ばれた契約は、建設プロジェクトの実施契約締結に先立ち、WH社が進める10項目の準備作業を定めたもの。発電所の詳細な開発モデルの作成や予備的リスク評価に先立つ準備作業が含まれるほか、AP1000技術を現地の要件すべてに適合させるため投資の実施要件をリスト化し、ポーランドのサプライヤーを中心とした資機材調達戦略の枠組みを設定、建設プロジェクトに対する外部資金の調達についても原則を定める。PEJ社によると、このような作業は建設プロジェクトの実施スケジュールを維持していく上で重要であり、これまで世界中で行われてきた原子力発電所建設プロジェクトの教訓に基づいている。同社はすでに2022年、建設許可の取得に向けてプロジェクトの環境影響評価報告書をポーランド気候環境省に提出しており、関係インフラを建設する計画の策定やサイト周辺自治体との交流なども始めている。今回の契約締結について、気候環境省のA. モスクヴァ大臣は、「原子力はエネルギー・ミックスの重要な構成要素となり、ポーランドのエネルギー供給を保証する」と説明。「このような戦略的投資により、将来の電力価格が低く抑えられるだけでなく、クリーンで安全な国産エネルギーを確保できる」とした。また、この計画で数多くの国内企業が刺激を受け、関係サプライヤーやパートナー企業になるなど、国家経済や雇用にも良い影響があるとしている。一方、WH社の発表によると、同社はすでにポーランドの国内企業35社と提携契約を結んでおり、同国内で大規模なエンジニアリングセンターの設置も計画している。追加の産業投資を通じて、ポーランドの人材育成や機器供給基盤の構築も支援していく方針である。同社はまた、本格的な受動的安全系を備えたAP1000はモジュール方式で建設することができ、クリーンな電力や蒸気、水素も製造可能だと指摘。米ジョージア州では現在、2基のAP1000が建設中だが、中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中だとした。さらに、ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中のサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Feb 2023
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ポーランド SMR量産に向け6つの工科大で原子力プログラム設置へ
ポーランドの石油化学企業PKNオーレン・グループは1月31日、同国内で小型モジュール炉(SMR)を建設するため、国内6つの工科大学および教育科学省と技術スタッフの教育・訓練プログラム設置に向けた基本合意書に調印した。同プログラムの設置は教育科学省が支援しており、調印式も同省内で行われた。PKNオーレン・グループは自社事業の展開にともなうCO2の排出量を削減するため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」の国内建設を決定。そのための合弁企業として、2021年12月、化学素材メーカー大手のシントス社と折半出資で、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立した。OSGE社は2026年にも初号機の建設を開始し、2033年以降、数10基のSMRを完成させていく計画である。原子力分野の専門家の育成は、ポーランドにおける原子力産業の発展にとって最も重要な課題の一つとなっている。そのため、同社とOSGE社はグダンスク工科大、AGH科学技術大、ポズナン工科大、シレジア工科大、ワルシャワ工科大、およびブロツワフ科学技術大に原子力分野の教育・訓練プログラムの設置を提案。2023年と2024年の学年度を皮切りに、修士コースも含めた2学期分のプログラムの設置で、条件整備の共同アクションを取ることになった。グダンスク工科大ではまた、「グダンスク原子力技術センター」の設立準備も進められている。グダンスク工科大の説明では、「BWRX-300」を1基備えた原子力発電所では、約100名分の労働力が必要。これらの手配は喫緊の課題となっている。また、原子力産業が新たな産業分野として成り立つためには、原子力の専門家だけでなく化学者や化学技術の専門家、電気技師、安全性の確保と環境保全関係の専門家、サイバーセキュリティや危機対応サービス関係の専門家も必要になる。これらのことから、OSGE社の「BWRX-300」建設計画は、少なくとも数千人規模の雇用創出を意味するという。新たな教育・訓練プログラムで育成された専門家は、将来も安定した収入が保証されると強調している。PKNオーレン社のD.オバイテク社長は、「SMRはエネルギー効率が高い技術なので、当社の事業で排出されるCO2を2050年までに実質ゼロ化する上で非常に有効だ」とコメント。CO2を排出しない電源として同グループの他の発電設備を補完できるため、その専門スタッフの育成はポーランド経済とエネルギー供給保証の強化にもつながると指摘した。教育科学省のP.チャルネク大臣は記者会見の席で、「産学がともに発展するためには相互協力が欠かせない」と表明。低炭素エネルギーの開発はポーランド経済にとって重要課題であるとした上で、「ポーランドが世界をリードする科学者やエンジニアを輩出できるよう、当省としても別途、原子力関係の人材育成プログラムを計画中だ」と述べている。(参照資料:グダンスク工科大学、PKNオーレン・グループ(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Feb 2023
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ブルガリア 新しいエネルギー戦略に新規の原子炉建設を明記
ブルガリアのエネルギー省は1月17日、今年から2050年までをカバーする新しいエネルギー戦略を発表し、同国唯一の原子力発電所であるコズロドイ発電所(100万kWのロシア型PWR=VVER-1000の5、6号機のみ稼働中)と計画中のベレネ発電所で、原子炉を2基ずつ建設する方針を明確に示した。ブルガリアの国民議会(一院制)ではこれに先立つ12日、コズロドイ発電所で原子炉を新設する計画について票決が行われ、同発電所にウェスチングハウス(WH)社製のAP1000を導入するため、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針案が112対45、棄権39で可決された。この方針に基づき、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成の迅速化に必要な措置をすべて、3月1日までに講じることになった。同省のR.フリストフ大臣によると、ブルガリアのエネルギー部門は昨年、120億kWh以上の電力を近隣諸国に輸出して約30億ユーロ(約4,200億円)の利益を得るなど、同国経済全体に大きく貢献。このため、今後も同国が欧州の発電および電力輸出分野で主導的地位を維持するとともに、国家の安全保障やエネルギー供給を保証し、国内のエネルギー源を継続して活用していくことは同戦略における優先事項となる。このことはまた、欧州連合(EU)が目指す「2050年までにカーボンニュートラルを達成」への貢献とエネルギーの安定供給は同戦略の主要事項だと説明している。同相は具体的に、主力電源である褐炭火力を2030年まで継続的に使用するが、それ以降は使用量を徐々に減らしていき2038年で使用を停止すると表明。EUの脱炭素化目標達成を阻まぬよう、あらゆる方策を通じてCO2の排出量を削減していくとした。原子力を中心とする電源の新設もその一環であり、コズロドイ5、6号機が閉鎖された後の代替電源となる7、8号機を新たに建設するほか、2012年に一旦頓挫したベレネ原子力発電所計画を復活させ、新規に2基を建設するとした。同相は、ブルガリアには原子力関係のインフラ設備のほかに、経験豊富な人材や認可済みのサイトなど、原子力開発に必要な条件はすべて整っていると強調している。同国では現在、コズロドイ発電所の2基で総発電量の約35%を賄っている。ロシアとの協力により、1980年代からベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基、各100万kW)の建設計画を進めていたが、2012年当時のブルガリア政府はコスト高を理由に同計画を中止した。その代わりとして、WH社製AP1000を採用した7号機の建設案を一時的に検討したが、資金不足のため進展せず、この件に関する関係者の合意は期限切れとなっていた。その後2019年3月、ブルガリア電力公社(NEK)はベレネ計画を再開するため、戦略的投資家やプロジェクト企業への出資企業を国内外から募集すると発表。同年12月にはエネルギー省が戦略的投資家の候補企業として、米GE社を含む外国企業5社に絞り込んでいる。同国政府はまた、2019年11月に米国政府と原子力を含む様々なエネルギー分野の協力を拡大することで合意しており、翌2020年10月には米国政府と民生用原子力発電分野における戦略的協力を加速するため、了解覚書を締結。コズロドイ7号機の建設については、閣僚会議が2021年1月、改めて検討する方針を承認していた。(参照資料:ブルガリア政府(ブルガリア語)、ブルガリア議会の発表資料、原子力産業新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Jan 2023
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米国で建設中のボーグル3号機 送電開始は4月に
米ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、3、4号機(各ウェスチングハウス社製のAP1000、110万kW)を建設しているジョージア・パワー社は1月11日、今年の第1四半期(2023年1月~3月)中に予定していた3号機の送電開始を4月に延期すると発表した。これは、同社および親会社のサザン社が証券取引委員会(SEC)に提出したレポートの中で明らかにしたもの。延期理由としては、同じくサザン社の子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア・オペレーティング社が、3号機の運転開始前試験と起動試験で冷却系配管の一部に振動を認めたため。同社は現在、修理作業を実施しており、原子力規制委員会(NRC)に対し、この作業を迅速に進めるため運転認可の修正を要請する方針である。この延期にともない、同プロジェクトに45.7%出資しているジョージア・パワー社は、これまでの建設費や試験費に加えて月額で最大1,500万ドルの(税引き前)資本コストを負担する必要がある。また、同プロジェクトにそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資しているオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力にも影響が及ぶと思われる。ボーグル3、4号機の増設計画は米国で約30年ぶりの新設計画であり、それぞれ2013年3月と11月に本格着工した。同様にAP1000設計を採用したサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機建設計画は、2017年3月のウェスチングハウス社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル計画ではサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続してきた。3号機では2021年7月に温態機能試験が完了し、燃料の装荷も2022年10月に完了した。今後のスケジュールは主に、機器類の最終試験や運転前試験、および起動試験の進展状況に左右されるが、サザン・ニュークリア社は現在、ベンダーや契約企業、請負企業の管理や現場労働者の生産性監督、コストの上昇問題等に取り組んでいる。同型炉が中国で運転を開始してまだ数年ということから、新たな技術を導入した一部のシステムや構造物、機器類で設計変更や修理が必要になる可能性もあり、その場合はスケジュールのさらなる遅延やコストの上昇もあり得るとしている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Jan 2023
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デンマーク企業が小型熔融塩炉で英国の設計審査を申請
英国原子力産業協会(NIA)の1月5日付発表によると、デンマークの原子力技術開発企業であるコペンハーゲン・アトミクス社が、第4世代の小型トリウム熔融塩炉(MSR)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、申請書を英国政府に提出した。審査に先立ち現在、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が、設計者に同審査を受ける能力が備わっているか確認中と見られているが、同社の英国法人であるUKアトミクス社はすでに、フルサイズの原型炉を建設済み。今年から様々な試験を実施して、この炉が英国の安全・セキュリティ面の厳しい基準をクリアしていることを示す「設計承認確認書(DAC)」を原子力規制庁(ONR)から取得する予定。環境保護と放射性廃棄物の管理面については「設計承認声明書(SoDAC)」を環境庁(EA)から取得し、2028年にも最初の商業炉を英国内で完成させる予定である。MSRは燃料として熔融塩とトリウムなどの混合液体を使用する設計で、北米では1950年代に米オークリッジ国立研究所を中心に開発が始まった。CO2を出さずにクリーンな電力を発電できるほか、既存の軽水炉から出る長寿命放射性廃棄物を大量に燃焼出来る等の利点があり、「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」は2002年に溶融塩炉を国際共同研究開発が可能な6種のコンセプトの1つに選定している。UKアトミクス社のMSRは、減速材として重水を使用するコンテナ・サイズのモジュール炉(SMR)で、熱出力は10万kW。560°Cの熱を顧客に供給する。また、燃料としてトリウムや既存炉の使用済燃料を使用するなど、ウラン燃料ベースの既存炉を根本的に改善した革新的な原子炉技術であると同社は強調。最終的に排出される廃棄物は大幅に削減され、廃棄物の貯蔵期間も10万年から300年ほどに短縮できるとした。同社はすでに8年前から、英国の複数の大学と同炉の主要技術や機器類の開発・試験と実証を進めている。今後は、自動車や飛行機の製造と同様に同炉を工場で大量に製造し、先進的原子炉開発分野を牽引したい考えだ。UKアトミクス社としては、将来的に数千基規模のMSRを製造・所有・運転することを計画しており、関連設備や技術など付随するサービスも含めた総合的なエネルギー・ソリューションの提供というビジネス・モデルを検討中。同モデルでは開発リスクが軽減される一方、コスト面の効果が高い。また、顧客は設備投資などの資本支出を必要としない上、同炉の運転にともなう支出も非常に小さく済むことから、同社はMSRで競争力の非常に高い電力を安価で提供し、クリーンエネルギーへの移行を世界レベルで加速することができるとしている。BEISは2021年5月、GDAの審査対象としてSMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社も2022年12月に同社製SMRをGDAにかけるため、申請書を提出している(参照資料:NIA、BEIS、UKアトミクス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Jan 2023
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ポーランド企業とWH社 AP1000建設の実施取り決めで合意
ポーランドのPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は12月15日、最初の大型炉発電所の採用炉型であるウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」の建設について、細かな取り決め事項でWH社と合意したと発表した。同国政府は先月、最初の3基、375万kW分の採用炉型としてAP1000を選定しており、今回の枠組み合意はその具体化の手続きとなる。建設プロジェクトの準備作業の概要を定めたもので、両社は今後のエンジニアリング・サービス契約締結に向けて、発電所のレイアウトなど初期段階の設計作業のほか、WH社が提供する許認可手続き関係の支援や建設サイトでのサービス業務、資機材等で合意。次の段階では詳細作業や商業契約に進む方針で、AP1000発電所の設計開始契約については、来年半ばにも別途結ぶとしている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万kW~900万kW建設することになっている。ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は2021年12月、最初の原子力発電所の最も有望なサイトとして、バルト海に面した同国北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年に入っては、政府の環境保全管理局に建設プロジェクトの環境影響声明書(EIS)を提出しており、現時点では2026年に初号機の建設工事を開始し、2033年に完成することを目指している。AP1000は第3世代+(プラス)の設計として、欧州加圧水型炉(EPR)と同様に稼働実績があり、中国で2018年以降に世界初のAP1000が4基運転を開始したほか、今年になって新たに2基が着工した。米国でも2013年から2基が建設中であり、ウクライナでは合計9基のAP1000建設が決まっている。同設計の特長として、WH社は本格的な受動的安全炉であることや、モジュール方式で建設可能な点などを挙げている。今回、WH社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長とPEJ社のT.ステピン社長が協力合意文書に調印。調印式には、ポーランドのA.モスクヴァ気候環境相と戦略的エネルギーインフラを担当するM.ベルゲル政府全権委員、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使などが同席した。ポーランド政府のベルゲル委員は、「WH社の炉型を選定した際、M.モラビエツキ首相が記者会見で強調していたように、ポーランドが経済面でさらなる成長を遂げるには安価でクリーン、安定した電力供給が不可欠。その意味で原子力を選択したことは当然の結果」と指摘。原子力発電所によってポーランドはロシアなどからの化石燃料を必要としなくなり、国家のエネルギー供給保証を速やかに強化できると述べた。米国のブレジンスキー大使は、「今回の枠組み合意により、ポーランドは信頼できるパートナーから安全で信頼性の高い原子力エネルギーを得るという目標の達成に向け大きく前進した」とコメント。両国間協力の主要な柱でもあるこの合意により、ポーランドはCO2の排出量を削減しながら、エネルギーの供給を一層確実にすることができると指摘した。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Dec 2022
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チェコ ドコバニ5号機の増設で3社が応札 中露は除外
チェコの国営電力(CEZ社)は11月30日、同国南東部のドコバニ原子力発電所で増設するⅡ期工事(5、6号機、各120万kW級PWR)の最初の1基について、100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)が大手のベンダー3社から最初の入札文書を受領したと発表した。5号機建設の競争入札は今年3月に開始され、EDU II社は安全・セキュリティ面の資格審査をクリアした米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)を正式に招聘。ロシア国営のロスアトム社と中国広核集団有限公司(CGN)も参加を希望していたが、K.ハブリーチェク副首相が大臣を兼ねる同国の産業貿易省がこれら2社を除外した。EDU II社は今後、これらの入札文書の検討およびベンダーとの交渉を開始し、提案されている原子炉設計の技術面や商業面の妥当性を検証する。2023年9月までに最終入札文書を3社から受け取る予定で、これらの評価結果に関する報告書をチェコ政府が承認すれば、2024年にも選定ベンダーと契約を締結し、既存ユニットの隣接区域で2029年に5号機を着工、2036年の試運転開始を目指す。CEZ社は将来的に、Ⅱ期工事の2基で既存の1~4号機(ロシア型PWR、各51万kW×4基)を代替する方針。チェコ政府はそのため、この増設計画に対して今年初頭に成立した低炭素法に基づいてEDU II社に低金利融資を提供するほか、同炉が発電する電力の売買契約も交わすとしている。入札に参加した3社はこれまで、契約の獲得に向けて周到に準備を進めてきており、地元の関係企業と強力なチームを結成、ドコバニ発電所サイトを訪問するなどした。WH社の今回の発表によると、同社は原子炉建設のパートナー企業であるベクテル社と協力して、同社製の第3世代+(プラス)炉「AP1000」をドコバニ5号機として建設することを提案。その際、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所の増設計画についても、ベクテル社とともに請け負う提案をしている。一方のEDFは、今年6月にチェコの首都プラハにEDFの原子力支部を開設。中国で完成し、また欧州で現在建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」より出力の小さい、120万kW級の「EPR1200」をEDU II社に提案する方針を明らかにした。またKHNP社は、アラブ首長国連邦(UAE)への輸出に成功した、韓国製の第3世代の140万kW級「改良型加圧水型炉(APR1400)」を提案したと見られている。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力の発電シェアを2040年までに60%に引き上げると明記。同戦略をフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいてドコバニ発電所の2基増設計画を進めている。同国の環境省は2019年9月にⅡ期工事建設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的判断を下しており、EDU II社はこれを受けて、2020年3月に同計画の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請、SUJBは2021年3月にこの許可を発給した。CEZ社は原子力発電の最大の強みとして、エネルギー・セキュリティの高さを挙げているほか、運転コストの低さや長期的な電力価格の安定性を指摘した。同社はまた、チェコの市場調査会社である「国際ビジネス研究サービス(IBRS)」が10月末から11月初旬にかけて実施した調査の結果に言及。同国では過去一年で原子力に対する国民の支持率が7%上昇し、1993年以降の最高値である72%に到達したが、この上昇は主に最近のエネルギー危機が原因だと指摘している。(参照資料:CEZ社、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Dec 2022
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